07.7
                                   林 正幸

    有機化合物の世界

     実験目次
  実験1 リモネンの水蒸気蒸留
  実習1 分子構造と異性体
  実験2 不飽和結合の検出
  演示実験1 メタンと塩素の反応
  実験3 芳香族炭化水素の検出
  実験4 燃焼反応
  演示実験2 燃焼反応
  実験5 アルコールの溶解性
  実験6 光学異性体(簡単旋光計)
  実験7 アルコールの検出
  実験8 フェノール類の検出
  実験9 アルデヒドの検出(銀鏡反応)
  実験10 アルデヒド・ケトンのカルボニル基の検出
  実験11 メタノールの酸化
  実験12 2−プロパノールの酸化
  実験13 酸性・塩基性と塩の溶解性
  実験14 石けんの合成
  実験15 ジエチルエーテルの合成
  実験16 酢酸エチルの合成
  実験17 アセトアニリドの合成

    目次へ

    発展実験目次へ

実験目次へ

実験・実習

実験1 リモネンの水蒸気蒸留
(1)かんきつ類の果皮約20gと水約80mLをミキサーにかける。
(2)長いろうとを使って200mL枝付きフラスコに移し、水約20mLで容器を洗っ
てフラスコに加える。
(3)温度計の付いたゴムせんをし、図のように45°にレトルト台に固定し、9分目ま
で水を入れた500mLビーカーに浸けた試験管を導管に差し入れる。

  

(4)穏やかに加熱し、蒸気の温度を確認し、3cmほど留出液を集める。
注意:沸とうが始まったら火を弱め、バーナーを出し入れして吹き出さないように注意す
   る。
(5)留出液の上部に油層があることを確認を確認し、においを確かめ、ピペットで一部
を食品トレイ(発泡性ポリスチレン)にかけて様子を観察する。残りはゴムせんをして実
験2のために保管する。
(6)蒸留の残りはコーナーネットに流し、枝付きフラスコはブラシを使って水洗いする。
備考:残った汚れは、後で太い針金の切断エッジで削るようにして洗浄する。



                  - 1 -

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実習1 分子構造と異性体
 この実習で使う分子模型はボール&スティックタイプである。実際の分子においては、
単結合では一方の原子が結合を軸に自由に回転できることに留意しよう。

[a]分子構造
 次の分子式で表される分子を分子模型で組み立て、完成したらその構造式を書き、さら
にメタン、エチレン、アセチレンについてはその構造の特徴をメモしてみよう。

    CH4   C26   C38   C24   C22
    メタン   エタン  プロパン  エチレン  アセチレン




[b]異性体
 分子式が同じでありながら、その構造が異なりしたがって性質も異なる分子どうしは
「異性体」と呼ばれる。分子模型を組み立て構造式を書きながら、次のそれぞれの分子式
で表されるすべての異性体を探し出してみよう。
[1]C410(2種)





[2]C48(6種)










                  - 2 -

[3]C38O(3種)






[4]C242(12種)


























注意:分子模型をかたづけるときは、バーツの個数を確認する。

                  - 3 -


  


  

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実験2 不飽和結合の検出
(1)6本の試験管に臭素水を、また別の6本の試験管に中性過マンガン酸カリウム水溶
液を約3cmずつ入れる。
(2)次のサンプル1,2滴を加えてよく振り混ぜ、それぞれやまぶき色が脱色するか、
および赤紫色が脱色する(褐色に変化する)かを観察する。気体のエチレンとアセチレン
は(3)(4)のように発生させ、試験管の試薬中に吹き込む。
  (ア)エチレン  (イ)シクロヘキセン  (ウ)アセチレン
  (エ)ヘキサン  (オ)リモネン(実験1のサンプル)  (カ)ベンゼン
(3)乾いた試験管に五酸化二リン小さじ3杯を入れ、エタノール1mLを発熱に注意し
て少しずつ加える。導管の付いたゴムせんをしめ試験管ばさみで持って、穏やかに加熱を
続ける。やがて全体が溶け合い、エチレンの発生が始まる。
(4)乾いたY字試験管の一方にカルシウムカーバイド1片を、他方に水を5cm入れて
導管を付け、水を少しずつ流し入れてアセチレンを発生させる。
注意:アセチレンは反応が速くてすぐに発生する。少しずつ発生させて吹き込む。
   発生するアセチレンは、不純物のため臭いがする。
(5)試験管は洗剤を使って洗浄する。
<準備>
・臭素水  試験管に臭化カリウム小さじ2杯、酸化マンガン(W)小さじ3杯、硫酸(1:1)1
mLを入れ、導管を付けてから試験管ばさみで持って加熱し、100mLビーカーに水約
50mLを入れて発生する臭素を留出する。
備考:発生後は試験管にチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、「重金属廃液」に入れる。
 臭素の滴を含め全体を試薬びんに移し、適宜に水を加える。
参考:試験管に採ったとき、やまぶき色であること。
・中性過マンガン酸カリウム水溶液
 0.01mol/L過マンガン酸カリウム水溶液を約10倍に希釈する。

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演示実験1 メタンと塩素の反応
:実験はドラフトで行う。
(1)電気火花が飛ぶことを確かめ、「反応ポリ袋」にバーナーの空気ねじを外して都市
ガス(メタン)を1/4ほど充填し、レトルト台にゴムせん部を固定する。
注意:都市ガスは2回ほど出し入れして空気を追い出す。
参考:塩素がメタンの2倍以上ないと点火しない。
(2)この時点では火花で反応しないことを確認する。
(3)乾燥塩素をポリ袋が一杯になるように追加充填する。

                  - 4 -

注意:始めにすこし塩素を発生させて、塩化カルシウム管が塩素で置換されたら、反応ポ
   リ袋とつなぐ。
(4)すこし離れて電気火花を飛ばして爆発させる。
(5)Y字型気体発生器に10%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて処理する。
<準備>
・反応ポリ袋
 8号ゴムせんにガラス管と2本の銅線を通し、圧電素子(チャッカマン)で火花点火で
きるようにする。ガラス管にはポリチューブを付けピンチコックで締められるようにする
(銅線とポリチューブは反応の影響を避けるため15〜20cmにする)。そしてゴムせ
んのまわりに10×14cmのポリ袋をビニタイでしっかりと締めて取り付ける。
・乾燥塩素
 Y字型気体発生器にさらし粉薬さじ1杯と濃塩酸4mLを入れ、塩化カルシウム管を付
ける。

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実験3 芳香族炭化水素の検出
(1)5本の乾いた試験管にそれぞれ無水塩化アルミニウム小さじ1杯を入れ、斜めにし
て加熱し、器壁に白色固体として昇華させ、ゴムせんをして放冷する。
(2)ミニ容器(アルミ箔で簡単につくる)で、ジクロロメタン4滴に次のサンプル1、
2滴ないし小さじ半分を加えて溶かす。
  (ア)ベンゼン  (イ)ナフタレン  (ウ)トルエン
  (エ)ヘキサン  (オ)シクロヘキセン
備考:文献ではクロロホルムを使用。
(3)これを塩化アルミニウムに触れるように流し込み、発色の様子を観察する。
(4)試験管は洗剤を使って洗浄する。「ミニ容器」は不燃物に捨てる。

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実験4 燃焼反応
(1)乾いた短い試験管(13cmに切ったもの)に細いろうそく1本を入れ、試験管ば
さみで持って加熱・融解する。
さらに強く加熱して試験管の口から蒸気が吹き出すようにして、それに点火して燃焼を継
続させることを試みる。
注意:試験管ばさみが燃えないように試験管を斜めにして加熱する。
(2)一度バーナーから外し、燃焼していないことを確認してから、再び沸とうするまで
まで加熱する。
(3)再びバーナーから外して沸とうが収まったら(火は消えた状態で)、水を7分目ま
で入れた紙コップに一気に注いで様子を観察する。

                  - 5 -

注意:火柱と火災報知器に注意する。
(4)試験管が冷めたらヘキサン8mLを入れ、これにろうそくの小片を加えて、試験管
ばさみで持って穏やかに加熱して、溶解するかどうか調べる。
注意:ヘキサンは揮発性で引火しやすい。沸とうさせないように加熱する。
(5)短い試験管はそのまま教卓に返す。
(6)水そうに水を入れ、カーバイドをピンセットで持って水に浸け、発生するアセチレ
ンを水上置換で試験管に捕集し、ゴムせんをする。
(7)試験管をレトルト台に水平に固定し、せんをとって点火する。
(8)この試験管は洗剤を使って洗浄する。
  (以下は演示実験2に続く。)

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演示実験2 燃焼反応
(1)一方をゴムせんでふさいだポリチューブに、アセチレンを2目盛り、酸素を5目盛
り捕集して、点火する。
(2)ベンゼン1,2mLを蒸発皿に採り、点火する。

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実験5 アルコールの溶解性
(1)ヘキサン5mLの入った4本の試験管を確認し、別の4本の試験管にピペットでそ
れぞれ水5mLずつを入れる。
(2)次のアルコールを2mLずつを、水とヘキサンに加えて、振り混ぜて溶解性(溶け
やすい・溶けにくい)を調べる。
    (ア)メタノール        (イ)エタノール
    (ウ)1−プロパノール     (エ)1−ブタノール
(3)ヘキサンの入った試験管はそのまま返却し、残りはブラシを使って水洗いする。
<準備>
・ヘキサンは試薬特級を使う。

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実験6 光学異性体(簡単旋光計)
[a]偏光の確認
(1)2枚の偏光板を重ね、一方を回転して、暗くなる位置と明るくなる位置が90°ご
とにくり返されることを確認する。
参考:偏光板は図のようにある方向に振動する光(電磁波)のみを通過させる。偏光板を
   通過した光は偏光と呼ばれる。そして2枚目の偏光板が90°ずれると、光は通過
   できなくなる。

                  - 6 -


  

[b]旋光度の計測
(1)底に偏光板を貼った「セル」を白紙から数cm離し、偏光板を貼ったキャップを被
せて回し、キャップとセルの赤線が重なる位置がもっとも暗くなることを確認し、これを
0°とする。
参考:偏光板を重ねた場合に比べ、まわりから光が入って完全には暗くならない。
(2)セルに水を10cm入れて、やはりキャップとセルの赤線が重なる位置がもっとも
暗くなることを確認する。
(3)次にセルに2.5mol/Lブドウ糖(グルコース)水溶液を10cm入れて、もっ
とも暗くなる位置の角度を計測する。キャップの溝は1刻みが3°である。
参考:実験の結果はブドウ糖が偏光の振動方向を右に旋回させることを示す。その角度は
   旋光度と呼ばれる。ちなみに旋光度は、濃度とセルの長さに比例する。
<準備>
・「セル」
 底面が18mm四角で高さが13cmである。厚さ1mmのアクリル板をはさみで切り、
ジクロロメタンで接着する。そして底に偏光板を黒色ビニールテープで固定し(テープは
高さ10cmまで貼る)、口の周囲に白色テープを巻いて0°の赤線を入れる。キャップ
はペットボトル用を使い、30°ごとに印をつける(溝は1周で120ある。ひとつは赤
色にする)。そしてドリルで穴を開け、偏光板をセルテープで固定する。

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実験7 アルコールの検出
(1)試験管6本に、それぞれ水約2cmを採り、硝酸セリウム試薬0.4mLを加える。
(2)これに次のサンプル2,3滴ないし小さじ半分を加えて振り混ぜ、黄色が黄橙色か
ら赤橙色に変化するかを調べる。
参考:還元作用が強いサンプルでは退色するので、時間をおいての判断は避ける。
  (ア)メタノール  (イ)2−プロパノール  (ウ)フェノール
  (エ)酢酸  (オ)焼酎  (カ)砂糖
(3)試験管の溶液は「重金属廃液」に入れ、そしてブラシを使って水洗いする。

                  - 7 -

<準備>
・硝酸セリウム試薬
 硝酸セリウム(W)アンモニウム Ce(NH4)2(NO3)6 20gを2mol/L硝酸50
mLに溶かす。

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実験8 フェノール類の検出
(1)試験管5本に、それぞれ水約4cmを入れ、次のサンプル1,2滴ないし小さじ半
分を加えて振り混ぜる。
  (ア)フェノール  (イ)2−ナフトール  (ウ)サリチル酸
  (エ)エタノール  (オ)酢酸
(2)2%塩化鉄(V)水溶液2,3滴を加えて振り混ぜ、青から紫色に着色するかを調べ
る。
(3)試験管は洗剤を使って洗浄する。

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実験9 アルデヒドの検出(銀鏡反応)
(1)50mLビーカーに、5%硝酸銀水溶液12mLを入れ、3mol/L水酸化ナトリ
ウム水溶液0.3mLを垂らし、1mol/Lアンモニア水を振り混ぜながら、ちょうど沈
でんが消えるまで加える(トレンス試薬と言う)。
(2)これを試験管6本に分ける。
(3)次のサンプル1,2滴ないし小さじ半分加えて振り混ぜてしばらく静置し、試験管
の器壁に銀鏡ができ、黒褐色の沈でんが生成するかを調べる。変化がない場合はしばらく
約50℃の湯に浸けてみる。
  (ア)アセトアルデヒド (イ)ベンズアルデヒド  (ウ)アセトン
  (エ)メタノール  (オ)酢酸  (カ)ブドウ糖(グルコース)
参考:トレンス試薬は検出用であり、きれいな銀鏡ができるとは限らない。
(4)この実験の試験管はそのまますぐに教卓に返す
注意:検出に使ったトレンス試薬を放置すると、爆発性の雷酸銀 AgONC が生成する。
   講師がまとめて、すこし硝酸酸性にして「重金属廃液」に入れる。

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実験10 アルデヒド・ケトンのカルボニル基の検出
[a]しょうがエキスの抽出
(1)しょうが約10gをすり下ろし、はしで50mL三角フラスコに入れる。
(2)ジエチルエーテル15mLを加えて、2,3分振り混ぜる。
(3)しばらく放置してから、上澄液を50mLビーカーに注ぎ、無水硫酸ナトリウム小
さじ2,3杯を加えて振り混ぜる。

                  - 8 -

参考:粉末の乾燥剤は、振り混ぜて固まらない部分ができたら加えるのを止める。
(4)エーテル溶液を蒸発皿に移し、ドラフトで手のひらで温めてエーテルを揮発させ
る。
参考:ジエチルエーテルの沸点は35℃である。
(5)得られたもののにおいなどを調べ、エタノール2mLを加えて溶かし、試験管に移
して[b]の実験にまわす。
[b]カルボニル基の検出
(1)試験管5本に、それぞれエタノール1.5mLを入れ、次のサンプル1,2滴ないし
小さじ半分を加えて振り混ぜる。
  (ア)アセトアルデヒド  (イ)ベンズアルデヒド  (ウ)アセトン
  (エ)酢酸  (オ)2−プロパノール  (カ)しょうがエキス
備考:アセトアルデヒドの沸点は20℃であり、氷水で冷やした状態にする。
(2)それぞれに2,4−ジニトロフェニルヒドラジン試薬2mLを加え、振り混ぜてしば
らく放置し、黄色から橙色の沈でんが生成するか調べる。
(3)試験管の混合物は「危険物廃液」に入れ、そして洗剤を使って洗浄する。
<準備>
・2,4−ジニトロフェニルヒドラジン試薬
 2,4−ジニトロフェニルヒドラジン約3gを濃硫酸15mLに溶かす。エタノール70
mLと水20mLの混合溶媒に上の溶液を溶かす。

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実験11 メタノールの酸化
(1)200mLビーカーに約70℃の湯を半分くらい準備する。
(2)試験管にメタノール5mLをとり、湯に浸けてその蒸気がこもるようにする。
(3)銅線のコイル部を赤くなるまで加熱し、炎から取り出して黒くなるのを確認し、す
ぐに試験管内のメタノール蒸気に触れさせ、その変化を観察する。
(4)これを数回くり返したら、試験管内にできたホルムアルデヒドの臭いをかいでみる。
注意:ホルムアルデヒドは毒性があるので、強くかがないようにする。
(5)湯から取り出し、指でふたをして振り混ぜ、トレンス試薬5mLを加えて、室温で
しばらく放置して様子を見る。

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実験12 2−プロパノールの酸化
(1)太い試験管(φ30mm)に3mol/L硫酸15mLを入れ、二クロム酸カリウム
4gを加えてバーナーですこし加熱して溶かす。
(2)これを水が入った300mLビーカーに浸け、温度計を差し入れて40℃以下にな
ったら2−プロパノール2mLを静かに加え、60℃を越えないようにすこしずつ振り混

                  - 9 -

ぜて反応させるとアセトンが生成する。
参考:アセトンの沸点は56℃である。
(3)再び40℃以下になったら、3mol/L水酸化ナトリウム水溶液20mLを、50
℃を越えないように5mLピペットですこしずつ加えて振り混ぜる。
(4)導管の付いたゴムせんをし、30°弱にレトルト台に固定し、試験管を導管に差し
入れる。
注意:角度の都合で試験管の外部を水冷できないので、ときどきを濡れた布で包んで冷や
   すようにする。
(5)水浴で加熱し、1cmほど留出液を集める。
参考:水の沸点近くまで加熱する必要がある。
(6)アセトンの臭いを確認し、2,4−ジニトリフェニルヒドラジン試薬による検出と銀
鏡反応を試みよ。
(7)試験管の反応混合物は「重金属廃液」に入れる。


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実験13 酸性・塩基性と塩の溶解性
[a]酸性・塩基性
(1)50mLビーカーに水約40mLとBTB0.8mLを入れる。ごく薄いリン酸ない
しアンモニア水を加えてBTBの色を中性の緑色に整える。そして試験管8本に分ける。
参考:ごく薄いとは0.01mol/L程度である。
(2)次のサンプルを1,2滴ないし小さじ半分を加えて振りませ、変色を調べる。
  (ア)酢酸  (イ)安息香酸  (ウ)エタノール
  (エ)食酢  (オ)レモン汁  (カ)フェノール
  (キ)トリエチルアミン  (ク)アニリン
[b]塩の溶解性
(1)50mLビーカーに水約10mLを入れてBTB2滴を加え、クレゾール1mLを
加えてガラス棒でかき混ぜる。
参考:使うクレゾールはオルト、メタ、パラの混合物である。
(2)次に3mol/L水酸化ナトリウム水溶液4mLを加えてかき混ぜる。
(3)さらに3mol/L塩酸6mLを加えてかき混ぜる。
(4)別の50mLビーカーに水約10mLを入れてBTB2滴を加え、アニリン1mL
を加えてガラス棒でかき混ぜる。
(5)次に3mol/L塩酸4mLを加えてかき混ぜる。
(6)さらに3mol/L水酸化ナトリウム水溶液6mLを加えてかき混ぜる。
(7)2つのビーカーはそのまま教卓に返す。

                  - 10 -

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実験14 石けんの合成
(1)ラウリン酸5gをはかる。
(2)100mLビーカーにピペットで水13mLを入れ、水酸化ナトリウム1gを加え
て加熱し、溶解させてBTB0.2mLを加える。
注意:水酸化ナトリウムは潮解性なので、びんのふたをすぐにする。
(3)沸とうしたら火から下ろし、ラウリン酸を加えてよくかき混ぜる。
(4)水溶液が緑色(中性)にならない場合は、ラウリン酸小さじ1杯を追加してかき混
ぜる。
(5)水道水をかけて冷却し、固まったら取り出して手を洗ってみる。

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実験15 ジエチルエーテルの合成
(1)φ30mm試験管にエタノール8mLを入れ、濃硫酸4mLをすこしずつ振り混ぜ
ながら加え、さらに全体を振り混ぜる。
注意:かなり発熱する。順番を逆にしない。
(2)360℃水銀温度計とL字導管の付いたゴムせんをし、レトルト台に45°に固定
する。
(3)9分目まで水を入れた500mLビーカーに浸けた試験管を導管に差し入れる。
(4)穏やかな炎で加熱し、液温を140℃あたりに保ち、留出するジエチルエーテルを
集める。
注意:温度が上がり過ぎるならバーナーを外す。
参考:ジエチルエーテルの沸点は35℃であり、引火性である。ちなみに硫酸の沸点は
   300℃を越える。
(5)エーテルが1.5cmほどになったら、加熱を止め試験管を外し、臭いの変化を確か
める。
(6)試験管に水約2cmを入れ。BTB2滴を加える。これにエーテルを加えてよく振
り混ぜて様子を観察する。

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実験16 酢酸エチルの合成
(1)乾いた太い試験管に、酢酸8mLと濃硫酸2mLをこの順に入れて振り混ぜ、さら
にエタノール8mLを加えて振り混ぜる。
注意:反応物質の酢酸、エタノールのにおいを覚えておこう。
(2)200mLビーカーに約70℃の湯を7分目入れ、試験管を数分浸ける。
(3)300mLビーカーに15%炭酸ナトリウム水溶液40mLを入れ、氷1ブロック
を加える。
(4)これに、反応混合物をピペットで少しずつ、ガラス棒でかき混ぜながら加える。

                  - 11 -

注意:一度に加えると泡が激しく発生し、できた酢酸エチルが揮発して失われる。
(5)泡が収まったら、ユニバーサル試験紙で液性を確認する。
(6)全体をもとの試験管にもどし、2層に分かれたら、上層の酢酸エチルをピペットで
採って脱脂綿に染み込ませ、広告のカラー印刷を拭き取ってみる。においの変化も確かめ
る。
(7)器具はブラシを使って水洗いする。

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実験17 アセトアニリドの合成
(1)100mL三角フラスコに水20mLを入れ、アニリン2mLを加える。
(2)無水酢酸2.4mLを加えて1分ほど振り混ぜる。
(3)全体が白色でペースト状になったら、水30mLと沸とう石2粒を追加して沸とう
するまで中火で加熱して、ときどき振り混ぜて反応混合物を完全に溶解させる(途中に油
滴ができるが、それも加熱して溶解させる)。
(4)予め200mLビーカーに水約70mLを入れて置き、これに混合物を注ぎ、ガラ
ス棒でかき混ぜる。結晶が析出し始めたら水道水で冷却する。
(5)十分に結晶が析出したら、200mL三角フラスコを受器にしてろ過する。ろ紙上
の結晶がアセトアニリドである。


















                  - 12 -

知識と理論

     目 次
  1.有機化合物とその構造
  2.炭素と水素の有機化合物
  3.炭化水素の反応
  4.酸素、窒素を含む有機化合物
  5.酸素、窒素を含む有機化合物の反応
  6.縮合型の有機化合物

目次へ
 有機化学は広い。そこで「有機化合物の世界」「化学工業」「生命の化学」の3つの講
座プランに分ける。2つめには高分子化学を含め、もちろん無機化学の領域も加える。3
つめには食品や医薬などを含める。
 この講座プランでは、無機化学の基礎を前提にする。

1.有機化合物とその構造

[a]有機化合物とは
[1]物質は単体と化合物に分類され、化合物は大きく無機化合物と有機化合物に分類さ
れる。
 今から200年ほど前にはこの分類は明解であった。無機化合物は生命とは独立に存在
し、人間の技によって単体ないし他の無機化合物から合成できるものであった。これに対
して有機化合物は生命に深く関係し、神秘な「生命力」によってのみ生成するものであっ
た。
 有機とはもともと「生命活動という機能を有する」ということであり、それを可能にす
る複雑なしくみを持つことを意味する。そして生物は有機体とも呼ばれる。
[2]1828年にドイツのウェーラーは、尿に含まれる有機化合物の尿素を、無機化合
物とされていたシアン酸カリウムと硫酸アンモニウムの水溶液を混ぜて加熱することによ
り、人間の技によって合成できることをはっきりと示した。
    NH4OCN ―→ NH2CONH2
  シアン酸アンモニウム   尿素
参考:反応式の中の化学式の表現については後で学習する。
 しかし有機化合物には無機化合物にないいくつかの共通の特徴がある。そして有機化合
物は炭素を含む。そこで有機化合物とは「炭素を骨格とする構造を持つ化合物」と定義す
ることになった。ただし二酸化炭素 CO2 や炭酸カルシウム CaCO3 のような物質は
除かれる。
[3]実験1では、かんきつ類の果皮に水を加えてミキサーにかけ、枝付きフラスコに移
して蒸留すると、まわりを水で冷やした試験管に水と共に無色の油層が得られた。これは
かんきつ類の香りがし、発泡性ポリスチレンにかけるとへこんだ。
 これはリモネン C1016 という有機化合物であり、ポリスチレンを溶解する。3節で、
実験も通して構造式を示し、水蒸気蒸留の原理についても学ぶ。
 動植物や菌類は、そして食品も、水を除けば主に有機化合物からできている。また私た
ちのまわりには化学工業製品として、プラスチック、繊維、石油、洗剤、医薬などの有機
化合物があふれている。
[問]有機化合物の例を上げてみよう。

                  - 13 -




[4]やがて化学の進歩は、周期表上で炭素と同族(14族)のケイ素を骨格とする化合
物を合成できるようにした。このようなものを有機化合物に含めるかどうか、現代では定
義はより難しくなっている。考えてみると、ものごとは多様であり、分類にはあいまいさ
が伴うものである。そして他方では、有機化合物と無機化合物の境界を取り払った物質の
とらえ方が求められる。

[課題]発展実験1の「カフェインの抽出」に取り組んでみよ。

[b]立体的構造と異性体
[1]原子の結合はイオン結合、共有結合、金属結合に分類されるが、多くの有機化合物
は共有結合のみでできており、したがって分子として存在する。
 すでに学んだように炭素の原子価は4価である。そして1876年にオランダのファン
ト・ホッフは「炭素原子の4つの原子価は、正四面体の中心から各頂点に向いている」と
提唱した。数学的に計算すると2つの結合がなす角度(結合角)は 109.5°になるが、
この数値はメタン CH4 の炭素水素結合の結合角の実測値と一致する。また後で取り上げ
る異性体の存在も見事に説明できた。彼は目に見えない分子を立体的にとらえた科学者で
ある。
[2]多くの有機化合物に含まれる元素は限られており、主に
    炭素  C    4価
    水素  H    1価
    酸素  O    2価
    窒素  N    3価
である。
 水素原子は1価だから結合角は関係ない。そして酸素原子の結合角は水 H2O の場合に
104.5°であり、窒素原子のそれはアンモニア NH3 の場合に106.7°である。他
の化合物においてもこれらの結合角は似ているので、酸素原子の原子価は正四面体の2つ
の頂点に向いており、窒素原子のそれは3つの頂点を向いていると見なして、そんなに狂
いはない。これで有機化合物分子の立体的構造をイメージすることができる。すでに利用
したことがある分子模型を使えば直接に目で見ることができる。
注意:より進んだ化学結合理論を学ぶときには、別の視点も必要になる。
[3]実習1[a]では、5種の有機化合物の分子模型を組み立てた。その中でメタンは
正四面体型である。そしてエチレンでは6つの原子がすべて同一平面上にあり、アセチレ

                  - 14 -

ンでは4つの原子が同一直線上にある。これは実際の分子でもそうであることが確認され
ている。
 またスチロール球で作ったスチュワートタイプの分子模型を眺めて、原子が互いにめり
込むように結合している分子の姿の方も頭に入れておこう。
[4]実習1[b]については、プリント「実習の整理(異性体)」(これからは「整
理」と略す)を参照しよう。分子式が C410 の有機化合物は2種ある。C48 は6種、
38O は3種、C242 はなんと12種もある。このように分子式が同じでありなが
ら、その構造が異なりしたがって性質も異なる分子どうしは「異性体」と呼ばれる。
 この内容はすぐに記憶せよというのではない。2節以降においてこの内容がくり返し出
てくる。その都度このプリントを見返して、理解の手助けにしてほしい。
 この実習で扱ったのは、模型に過ぎない。それなら模型に対応する分子が実際に存在す
るか。その答は「ほとんど存在する」である。これは分子模型の背景にある、ケクレの原
子価理論やファント・ホッフの正四面体理論の威力を示している。こんな単純な理論が、
今では数1000万種に及ぶ有機化合物(人間が合成したものが多い)を包み込んでいる。
 ちなみに次のような分子も合成されている。

  

[c]示性式と名称
[1]構造式は分かりやすいが場所をとり手間がかかるので、それに代わって「示性式」
を使うことが多い。その書き方のルールは
  (1)骨格になっている炭素原子(など)を1つずつ区切り
  (2)それに結合している原子や基をまとめて書く
  (3)横向きの単結合は省略するが
  (4)二重・三重結合や、上下に向いた単結合は書く
などである。示性式の書き方には任意性があり、書き慣れることが大切である。プリント
「整理」では、示性式は名称の下に書いた。異性体が数多く存在する有機化合物は、分子
式でなく、構造式や示性式で表す必要がある。
[2]有機化合物の名称には、国際純正応用化学連合(IUPAC)が定めた組織名と、
従来からの慣用名がある。しかし混乱を避けるためできるだけどちらか一方を使うように

                  - 15 -

する。具体的な命名法はこれから少しずつ学習していく。
目次へ

2.炭素と水素の有機化合物

 炭素と水素の化合物は炭化水素と呼ばれる。炭化水素の名称は主に組織名であるが、3
節のアルコールからは慣用名が増えてくる。

[a]アルカン
[1]実習1[a]で取り上げたメタン、エタン、プロパン、そして「整理」の@のブタ
ンの構造式などを次に示す。メタンは天然ガスの主成分であり、都市ガスや火力発電所の
燃料として利用される。プロパンは家庭用燃料の液化石油ガス(LPG)の主成分である。
ブタンは卓上こんろなどの簡易ボンベの主成分である。

  

 すべての結合が単結合である。そして炭素数だけ −CH2−(2つの原子価は炭素のも
の)があり、さらの両端に −H が2つある。したがってこれらの分子式は炭素数を n
として Cn2n+2 という一般式で表される。このような炭化水素はアルカンと呼ばれる。
ここで −CH2− という基(原子の集団)はメチレン基と言う。プリント「整理」の参考
を見返そう。
 上の一般式で n=0 のときは水素 H2 になる。このように水素 H−H はアルカンと
関係づけられる無機物質(単体)である。
[2]ここで「整理」のAの2−メチルプロパン(慣用名:イソブタン)を思い出そう。
これは次のようにブタン分子中の水素とメチル基 −CH3(「整理」の参考)を置き換え
た構造になっている。

  

だからブタンと同じ分子式である。2−メチルプロパンもアルカンの仲間に含める。なお
この名称は、炭素に番号を付けて、2番の炭素に結合する水素がメチル基で置き換わった
プロパンという意味である。またメチル基や上のメチレン基のように、炭化水素から1つ

                  - 16 -

(あるいはいくつか)の水素を除いた基はまとめて「炭化水素基」と呼ばれる。そして炭
素炭素結合を鎖に見立てて、ブタンのような分子を「直鎖状」である、2−メチルプロパ
ンのような分子を「枝分かれ状」であると言う。ブタンと2−メチルプロパンは異性体で
ある。
[問1]分子式が C614 で表される炭化水素のすべての異性体の構造式を書け。



参考:問1で直鎖状の異性体はヘキサンと呼ばれる。

[b]アルカンの沸点
[1]同じ系列の物質の沸点に関しては、すでに講座プラン「原子はどのように結合する
か」で取り上げた。そして有機化合物こそ同じ系列の物質がそろっている。
[問2]直鎖状アルカンと水素について、次ページに横軸が分子量、縦軸が沸点のグラフ
を描け。
       直鎖状アルカン    分子量     沸点
      水素   H2        2   −253℃
      メタン  CH4      16   −161
      エタン  C26     30    −89
      プロパン C38     44    −43
      ブタン  C410     58     −1
      ペンタン C512     72     36
      ヘキサン C614     86     69
      ヘプタン C716    100     98
      オクタン C818    114    126
      ノナン  C920    128    151
      デカン  C1022   142    174

 常温(15℃)では水素からブタンまでが気体であることが分かる。融点のデータは載
せていないが、C5のペンタンからC15までが液体である。
 同じ系列の物質ではグラフは滑らかな曲線になる。そして「沸点は分子量が大きくなる
と高くなる」ことがうかがえる。これは分子間力が分子量にだいたい比例することを意味
している。


                  - 17 -


  

                  - 18 -

[問3]次の枝分かれ状アルカンの沸点について、同じ用紙にデータを目盛れ。分子量は
問2を参考にせよ。どんなことが言えるか。

  

 沸点に関しては、これからも検討していく。

[c]シクロアルカン
 「整理」のGのシクロブタンはリング状である。シクロプロパンとシクロヘキサンを加
えて、次に構造式、沸点などを示す。

  

このようにリングを1つを持つ炭化水素はシクロアルカンと呼ばれる。単結合のみである
が、対応するアルカンに比べて水素が2つ少ないので、その一般式は Cn2n となる。
「整理」のFはシクロプロパンの水素をメチル基で置き換えたものである。

[d]アルケン
[1]実習1[a]で取り上げたエチレンには二重結合がある。これにプロピレン、シク
ロヘキセンを加えて、次ページに構造式、沸点などを示す。エチレン、プロピレンはそれ
ぞれポリエチレン、ポリプロピレンの原料である(工業原料に関しては講座プラン「化学
工業」で扱うので、以後はできるだけ触れない)。
このように炭素炭素二重結合 >C=C<(「整理」の参考)を1つ持つ炭化水素はアルケ
ンと呼ばれる。対応するアルカンに比べて水素が2つ少ないので、その一般式は Cn2n

                  - 19 -


  

となる。アルカンに比べて水素が2つ少ない炭化水素は、リングを1つを持つか、炭素炭
素二重結合を1つ持つかのどちらかである。ちなみにエチレン、プロピレンは慣用名であ
り、組織名はエテン、プロペンである。
[2]「整理」のB,C,D,Eで分かるように、C4のアルケンには1−ブテン、シス−2
−ブテン、トランス−2−ブテン、2−メチルプロペンの4種の異性体がある。なお1−
ブテンや2−ブテンの数字は、炭素に番号を付けて、二重結合が始まる炭素の番号を表す。
 そして中2つはとくにシス・トランス異性体と呼ばれる。これは二重結合では、一方の
原子が結合を軸に自由に回転できないことによって生まれる異性体である。水素と置き換
わった原子や基が、二重結合の同じ側にあればシス、反対側にあればトランスと言う。シ
ス−2−ブテンは沸点が4℃、トランス−2−ブテンは1℃というように、これらは性質
が異なる別の物質である。
 ちなみに「整理」のKとLもシス・トランス異性体である。

[e]アルキン
[1]実習1[a]で取り上げたアセチレンには三重結合がある。これにメチルアセチレ
ンを加えて、次に構造式、沸点などを示す。アセチレンはガス溶接において酸素と混合し
て燃焼して3000℃以上の炎をつくり、鉄を融解する。

  

このように炭素炭素三重結合 −C≡C− を1つ持つ炭化水素はアルキンと呼ばれる。対
応するアルカンに比べて水素が4つ少ないので、その一般式は Cn2n-2 となる。ちなみ
にアセチレン、メチルアセチレンは慣用名であり、組織名はエチン、プロピンである。

                  - 20 -

[2]炭素炭素二重結合や炭素炭素三重結合は「官能基」と呼ばれる。官能基とは物質の
性質にアルカンとは異なるある特徴を与えるような基のことである。これは次節以降を見
れば具体的に分かる。そして有機化合物は基本的には官能基によって分類される。
 アルカンやシクロアルカンは「飽和」である。これに対してアルケンやアルキンは「不
飽和」であると言う。不飽和とは二重結合や三重結合を持つことであり、これらは不飽和
結合とも呼ばれる。不飽和とは分子の骨格を壊すことなく、さらに原子や基が結合できる
という意味である。これも3節でよりはっきりする。
[問4]シクロアルカン、アルケン、アルキンについて、分子量と沸点のデータを問2の
用紙に目盛り、同じ系列はグラフにせよ。分子量は H=1,C=12 として計算する。
そしてシクロペンタンと1−ブテンの沸点を予測せよ。



          (実測値は シクロペンタン:49℃、1−ブテン:−6℃)
目次へ

3.炭化水素の反応

[a]付加反応(不飽和炭化水素の検出)
[1]実験2では、臭素水に、シクロヘキセン、リモネンを滴下してよく振り混ぜたり、
エチレン、アセチレンを吹き込んだりすると、やまぶき色が脱色した。これに対してヘキ
サン、ベンゼンではそのような変化はなかった。ベンゼンについては[d]でくわしく学
ぶ。
 これはエチレンを例にすると、次のように臭素が反応するためである。
    CH2=CH2 + Br2 ―→ CH2BrCH2Br
     エチレン        1,2−ジブロモエタン
なお生成物質の名称は、1番の炭素に結合する水素と2番の炭素に結合する水素が、合わ
せて2つ(ジ)の臭素(ブロモ)で置き換わったエタンという意味である。
 この反応は次のように、炭素炭素二重結合の一方の結合と臭素の単結合が切れて、新た
に炭素臭素結合が生じて、エチレンに臭素が付け加わると捉えることができる。

  

このような反応形式は「付加」と呼ばれる。実際の反応のしくみはもっと複雑であるが、

                  - 21 -

高校の段階ではこのように化学反応を形式的に整理すると記憶しやくなるという利点があ
る。一般に、炭素炭素の不飽和結合には臭素が付加反応する。アセチレンのような三重結
合では次のように2分子の臭素が付加反応する。
    CH≡CH + 2Br2 ―→ CHBr2CHBr2
    アセチレン      1,1,2,2−テトラブロモエタン
[問1]エチレンに水が付加反応してエタノール CH3CH2OH が生成するときの変化
を示性式を使う反応式で示せ。



[2]視点を変えると、臭素水は炭素炭素不飽和結合を検出できる。ただし有機化合物は
多様であり、臭素水が脱色すれば不飽和結合があると断定することは避けたい。
 実験2では、中性過マンガン酸カリウム水溶液に、同じサンプルを加えた場合に赤紫色
が脱色した(褐色になった)。これも炭素炭素不飽和結合に特徴的な反応である。ただし
この反応は複雑なので深入りはしない。
 通常はこのように2つの検出反応が陽性の場合、そのサンプルが炭素炭素不飽和結合を
持つ可能性が高いと解釈する。
 実験1で得たリモネンはそのように振る舞った。これは炭素炭素二重結合を2つ含む次
の構造式で示される。

  


[b]置換反応
[1]演示実験1では、メタンと塩素を混合して電気火花を飛ばすと爆発的に反応した。
この反応のひとつは次のようである。
    CH4 + Cl2 ―→ CH3Cl + HCl
    メタン      クロロメタン
なお生成物質の名称で、クロロは塩素を意味する。この反応は次ページのように、炭素水
素結合と塩素塩素結合が切れて水素と塩素の一方が置き換わり、炭素塩素結合と水素塩素
結合が生じると捉えることができる。

                  - 22 -


  

このような反応形式は「置換」と呼ばれる。なおこれは塩素分子から見ても置換になるこ
とに注意しよう。
[2]生成するクロロメタン(沸点:−24℃)はさらに反応して、次のようなハロゲン
化炭化水素を生成する。

  

ついでに命名につかう数詞をまとめておく。
  1:モノ  2:ジ   3:トリ  4:テトラ 5:ペンタ
  6:ヘキサ 7:ヘプタ 8:オクタ 9ノナ  10:デカ
[問2]メタンと塩素からジクロロメタンが生成する変化を普通の反応式で書け。



 メタンやシクロヘキサンのような飽和炭化水素は、他の物質と反応しにくい不活性な有
機化合物である。しかし電気火花や、紫外線のような高エネルギーの光子にさらされると、
飽和炭化水素は塩素などと置換反応する。

[c]脱離反応
[1]実験2では、エチレンはエタノールと五酸化二リンが次のように反応して発生した。
    3CH3CH2OH + P25 ―→ 3CH2=CH2 + 2H3PO4
      エタノール           エチレン
エタノールについては4節でくわしく学ぶ。
 この反応式を次の2段階に分けて考えよう。
  1段目  CH3CH2OH ―→ CH2=CH2 + H2
  2段目  3H2O + P25 ―→ 2H3PO4
そして1段目の反応は、次ページのように隣り合った2つの炭素に結合する水素とヒドロ
キシ基が切れて、炭素炭素の結合が二重結合になり水素酸素結合が生じて、エタノールか
ら水が切り取られると捉えることができる。

                  - 23 -


  

このような反応形式は「脱離」と呼ばれる。脱離反応は、付加反応と逆向きの反応である。
ちなみに置換反応と逆向きの反応はやはり置換反応である。次のように三重結合が生じる
脱離反応もある。
    CH2ClCH2Cl ―→ CH≡CH + 2HCl
   1,2−ジクロロエタン   アセチレン
参考:アセチレンが発生する反応式
    CaC2 + 2H2O ―→ CH≡CH + Ca(OH)2
 カルシウムカーバイド

[d]芳香族炭化水素
[1]実験2では、ベンゼンは臭素水も中性過マンガン酸カリウム水溶液も脱色しなかっ
た。この分子式 C66 がヘキサン C614 より水素が8つも少ないことをどのように説
明するのか。
 すでに講座プラン「原子はどうのように結合するか」で学んだように、ケクレが次の左
のような構造式を提唱した。

  

そして二重結合と単結合は絶えず入れ代わっており、すべての炭素炭素結合は同じである。
つまり「ベンゼン環」は6つの炭素が正六角形である(ベンゼンの12個の原子はすべて
同一平面上にあり、6個の水素も正六角形である)とした。それはたとえばベンゼンの水
素1つを塩素で置き換えたクロロベンゼン C65Cl に異性体が存在しないという事実
を説明できた。
 しかしより正確にはポーリングの共鳴理論を待たねばならなかった。彼は上の右のよう
に2つが重なったような構造を提唱した。ちなみに右は「簡略にした構造式」で示してい
る。この書き方のルールは
  (1)線の角や端には炭素がある

                  - 24 -

  (2)炭素炭素二重結合は = で、三重結合は ≡ で示す
  (3)炭素が4価になるように水素がある
などであるが、高校ではベンゼン環以外に使用することは避ける。そして実際にはどちら
か一方を書けばよい。
[2]上のようなベンゼン環を持つ炭化水素は芳香族炭化水素と呼ばれる。次に代表的な
芳香族炭化水素の構造式(一部は示性式)などを示す。
備考:ベンゼン環は示性式では書きにくいので、次は示性式であると言ってもよい。

  

ナフタレン(分子式:C108 )は防虫剤として利用される。スチレン( C88 )はポ
リスチレンの原料である。ベンゼンの2つの水素をメチル基 −CH3 で置き換えたキシレ
ン( C810 )には、オルト(o−)、メタ(m−)、パラ(p−)の3種の異性体が存
在する。ちなみにベンゼン環を持たない炭化水素については、リングを持たないものは脂
肪族炭化水素と、リングを持つものは脂環式炭化水素呼ばれる。
参考:オルト:正規の メタ:間に パラ:反対側に(ギリシャ語由来)
[3]構造式の表現にも係わらず、ベンゼン環にはアルケンのような二重結合はない。そ
して通常は付加反応は起こらない。
 芳香族炭化水素の沸点は、分子量が同じくらいのアルカンより少し高い。これはベンゼ
ン環どうしの引力によるのだろうか。

[e]芳香族炭化水素の検出
[1]実験3では、昇華させた白色の無水塩化アルミニウム AlCl3 に、ベンゼン、ナ
フタレン、トルエンをそれぞれジクロロメタンに溶かして垂らすと、ベンゼンは黄橙色、
ナフタレンは黒褐色、トルエンは黄橙色に発色した。これに対してヘキサン、シクロヘキ
センは変化がなかった。

                  - 25 -

 これはベンゼンを例にすると、次の上のような反応が起こるためである。

  

なお上の反応式において、簡略にした構造式には水素が隠れていることに注意しよう。こ
の反応は下のように、ベンゼンの水素とジクロロメタンの −CH2Cl という基が置き換
わる。つまり置換反応が起こる。そして塩化アルミニウムは変化せずに反応を促進してお
り、このようなはたらきをするものは触媒(しょくばい)と呼ばれる。実際には生成物質が
さらに別のジクロロメタンと置換反応して、有色の物質になる。
 高校ではこれ以上この反応に深入りはできないが、まとめると、芳香族炭化水素は塩化
アルミニウム(や塩化鉄(V))を触媒にすると置換反応を起こす。これはフリーデル・ク
ラフツ反応と呼ばれ、芳香族炭化水素の検出に利用できる。
[問3]ベンゼンに2分子の塩素 Cl2 が置換反応してp−ジクロロベンゼン(防虫剤パ
ラゾールとして利用)が生成する変化を示性式を使う反応式で書け。




[f]燃焼反応
[1]実験4では、ろうそくのロウを融解し、続いて沸とうさせて、点火して燃焼させた。
 通常のろうそくのロウはパラフィンという、沸点が300℃以上(炭素数がおよそ17
以上)のアルカンの混合物である。ちなみにろうそくは簡単に点火できる。これは融解、
沸とう、燃焼が見事に制御された、すばらしい発明であることに気付くであろう。
 またアセチレンを発生させ、試験管に捕集して点火すると、めらめらと燃焼して試験管
にすす(炭素)が付いた。これに対して演示実験2では、アセチレンと酸素を体積比で2
:5に混合して点火すると、大きな音を立てて爆発した。またベンゼンを蒸発皿で点火す
ると、すすを上げてめらめらと燃焼した。
[2]これらの燃焼反応は、高い温度という過激な条件で引き起こされることに注意しよ
う。炭化水素はいずれも燃焼する。これは発熱反応であり、高い温度を自ら作り出して連
鎖的に反応が進行する。また現在私たちが利用しているエネルギーの多くは、炭化水素の
燃焼反応に依っている。
 炭化水素は十分に酸素が供給されれば、完全燃焼して二酸化炭素と水(水蒸気)が生成
する。アセチレンが完全燃焼する場合は次の反応式になる。

                  - 26 -

    2C22 + 5O2 ―→ 4CO2 + 2H2
これからアセチレンと酸素の混合比の秘密が解けるだろう。
 パラフィンの完全燃焼は、アルカンの一般式を使うと、次の反応式になる。
    2Cn2n+2 + (3n+1)O2 ―→ 2nCO2 + (2n+2)H2
 酸素が不足すると、不完全燃焼してすす(炭素)や一酸化炭素 CO などが発生する。
アセチレンのような不飽和炭化水素やベンゼンのような芳香族炭化水素は不完全燃焼しや
すい。
 ちなみにほとんどの有機化合物は燃焼させることができ、これは有機化合物の特徴のひ
とつである。
[問4]メタンとプロパンが完全燃焼するときの変化を普通の反応式で書け。



[3]実験4では、高温の液体パラフィンを水に注ぐと、吹き上がって発火する。
 これは接触する水がパラフィンに加熱されて一気に沸とうし、その水蒸気に乗せられて
パラフィンも蒸発して空気と混合するために発火するのである。これは天ぷらやフライを
揚げるときにも起こりうる危険な現象である(水が食用油より密度が大きいことに注目せ
よ)。
 別の視点では、水に溶けにくい沸点が高い物質を水と混合して加熱すると、100℃で
もよく蒸発させることができる。これが実験1において、沸点178℃のリモネンが水が
沸とうする温度で蒸留された理由である。この方法は空気中の酸素からも遠ざけられるの
で、分解しやすい物質の分離に有効であり、水蒸気蒸留と呼ばれる。
目次へ

4.酸素、窒素を含む有機化合物

 これまで炭化水素を中心に学んできたが、酸素や窒素を含む有機化合物に目を向けよう。
酸素を含むものはすでに実習1でかなり出てきた。

[a]アルコール、フェノール類
[1]アルコール
 「整理」のH,I,K,L,Mのように、炭化水素の水素をヒドロキシ基 −OH(「整
理」の参考)で置き換えた構造の化合物はアルコールと呼ばれる。ヒドロキシ基は官能基
である。言い換えるとアルコールは、ヒドロキシ基が炭化水素基と結合した構造の化合物
である。またPはアルコールであるが、分子にホルミル基 −CHO(「整理」の参考)も
持ち、後出のアルデヒドでもある。このように2つ以上に分類される有機化合物も多い。

                  - 27 -

 次に代表的なアルコールの構造式などを示す。

  

メタノールはアルコールランプの燃料として利用される。エタノールは酒類に含まれ、日
常会話でアルコールと言うとこれを指す。そしてエタノールはエネルギー代謝の発酵にお
ける生成物質である(生命に関することは「生命の化学」で扱うので、以後はできるだけ
触れない)。イソプロパノール(組織名は2−プロパノール)は消毒綿に利用される。エ
チレングリコールは不凍液に利用される。グリセリンは化粧品などの保湿剤として利用さ
れる。
 アルコールの組織名は、元になる炭化水素がアルカンの場合はアルカノールのように語
尾をオールに変える。プロパノールやブタノールでは、ヒドロキシ基が結合する炭素の番
号を加える。エチレングリコールやグリセリンは慣用名である。なおエタノールが持つ
−C25 という基はエチル基と呼ばれる。
 メタノールからメチレン基 −CH2− を差し引くと無機化合物の水 HOH になる。ア
ルコールの性質は水に似ている。まずアルコールは中性である。また水は次のようにナト
リウムと反応して水素を発生する。
    2H2O + 2Na ―→ 2NaOH + H2
  ( 2HOH+ 2Na ―→ 2HONa + H2 )
そしてアルコールも同じように反応する。エタノールでは次のようである。
  2C25OH + 2Na ―→ 2C25ONa + H2
 この視点からアルコールは、水の水素を炭化水素基で置き換えた構造の化合物であると
も言える。

                  - 28 -

[2]アルコールの沸点
[問1]上の7種のアルコール(グリセリンを除く)と水の、沸点と分子量のデータを2
節の用紙に目盛れ。  (原子量 H=1 C=12 O=16)

 すでに講座プラン「原子はどのように結合するか」で、分子間力の一種として水素結合
を学んだ。
・水素結合は、電気陰性度が特に大きい原子(通常はフッ素、酸素、窒素を指す)と結合
 する水素原子と、他の分子(あるいは同じ分子の他の部分)の電気陰性度が特に大きい
 原子との間にはたらく比較的強い引力である。
したがってアルコール分子でも水素結合がはたらき、同じくらいの分子量のアルカンと比
べるとかなり沸点が高い。
 メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールという同じ系列の物質の
グラフを見ると、分子量が大きくなると直鎖状アルカンのグラフに近づく。これは水素結
合の元になるヒドロキシ基が分子に占める割合が小さくなるからである。エチレングリコ
ールは分子が2つのヒドロキシ基を持つので、その沸点が際だって高い。水もそれに近く
沸点が高い。ちなみにグリセリンは1atmの下では沸点に達する前に290℃で分解し
てしまう。
[3]アルコールの溶解性
 実験5では、水とヘキサン C614 それぞれに、メタノール、エタノール、1−プロパ
ノール、1−ブタノールを溶かしてみた。水に対しては1−ブタノールが、ヘキサンに対
してはメタノールが溶け残った。
 溶解性については、溶ける方ではいくらでも溶けることはあるが、溶けない方は完全に
溶けないことはないので、溶けやすい・溶けにくいという表現を使うことにする。
 すでに「似たものどうしは溶け合う」という素朴な法則を元にして、水に対する溶解性
では、
・イオンは水に溶けやすい(水分子は極性が大きい)
・ヒドロキシ基を持つ分子は水に溶けやすい(水分子は水素結合をつくる)
ことを学んだ。
 実験1では、リモネン(構造式は3節[a])が次の構造式で示されるポリスチレンを
溶解した。

  

                  - 29 -

両者の構造が似ていることが確認できる。また実験4では、パラフィンがヘキサンには溶
けやすかった。
 「水と油」のことわざのように、油は水と正反対の性質を持つと言えるが、油の中でも
石油の方がその資格があり、代表としてヘキサンを選んで実験した。ヘキサンは、水と反
対に、極性が小さい分子であり、酸素や窒素のような水素結合に係わる原子を含まない。
 そして実験5では、ヒドロキシ基1つに対して炭化水素基の炭素数が4つ以上になると
水に溶けにくくなることがうかがわれる。ちなみにエチレングリコールとグリセリンはメ
タノールと似ており、水に溶けやすくヘキサンに溶けにくい。ただし溶解性は単純には割
り切れない面があることを心得ておこう。
備考:上の溶解度の基準は、溶媒5mLに溶質が2mLまで溶けるかどうかというもので
   ある。たとえば1−ブタノールは水に常温では10%ほどの濃度までは溶ける。無
   機化合物において水に溶けにくいというイメージは、例えば5%以下というように
   もうすこし緩やかである。
[4]フェノール類
 ベンゼン環の水素をヒドロキシ基で置き換えた構造の化合物は、後で実験するようにア
ルコールとすこし性質が異なり、フェノール類という別の分類にする。
 次に代表的なフェノール類の構造式などを示す。

  

サリチル酸はカルボキシ基 −COOH(「整理」の参考)も含み、後出のカルボン酸でも
ある。ナフタレンではリングの融合点の隣の炭素から番号を付ける。なおフェノールはフ
ェノール類の中の一種の化合物である。
[5]フェノール類の沸点と溶解性
 フェノール類の沸点は、分子量が同じくらいのアルコールより少し高い。これもベンゼ
ン環のどうしの引力のためであろう(3節[d]の[3]を参照)。
 溶解性については、フェノールが水に溶けやすい・にくいの境界にある。ベンゼンから
水素1つを除いた基はフェニル基と呼ばれるが、これは溶解性に関してだいたい炭素数が
4つの炭化水素基に相当する。2−ナフトールは水に溶けにくい。サリチル酸は温度が高
くなると水に溶けやすくなる。

[b]アルデヒド、ケトン

                  - 30 -

[1]アルデヒド
 「整理」のPとQのように、ホルミル基 −CHO を持つ化合物はアルデヒドと呼ばれ
る。ホルミル基は官能基である。示性式では表されないが、炭素酸素が二重結合であるこ
とを忘れない。そしてホルミル基は −COH とは書かないので注意する。Qはエステル
結合 −COO−(「整理」の参考)も持ち、後出のエステルでもある。ホルミル基が結合
する相手は炭素とは限らず、水素や酸素も含まれる。
 次に代表的なアルデヒドの構造式などを示す。

  

ホルムアルデヒドが水に溶けた溶液はホルマリンと言い、生物標本の防腐剤として利用さ
れる。
[2]ケトン
 −CO−(「整理」の参考 2つの原子価は炭素のものである)という基はカルボニル
基と呼ばれ、ホルミル基などにも含まれる。カルボニル基が2つの炭化水素基と結合した
構造の化合物はケトンと呼ばれる。
 次に代表的なケトンの構造式などを示す。

  

[3]二酸化炭素との類似性
 カルボニル基を持つ無機化合物は二酸化炭素 O=C=O である。アルデヒドやケトン
の性質は二酸化炭素に似ている。二酸化炭素は水とすこし反応して炭酸が生成する(炭酸
は不安定で水と分離することはできない)。
    CO2 + H2O ―→ H2CO3
これは次ページのように付加反応である。
つまり炭素酸素二重結合の一方の結合と水の水素酸素結合が切れて、新たに水素酸素結合
と炭素酸素結合ができる。できるのが水素炭素結合と酸素酸素結合でないのは、炭素酸素
二重結合は、炭素がいくらか正電気を、酸素がいくらか負電気を持ち、極性がある。そし

                  - 31 -


  

て水の水素酸素結合も極性があるためである。
参考:カルボニル基の極性は、炭素と酸素の電気陰性度の差から考えられる以上に強い。
 一般にアルデヒドやケトンの水溶液では、一部が次のように水が付加した構造に変化し
ている。ちなみに −R や −R’は炭化水素基を表す。

  

たとえばホルマリンでは、ホルムアルデヒドの多くが次のように変化した構造になってい
る。
    HCHO + H2O ―→ HOCH2OH
  ホルムアルデヒド
[4]沸点と溶解性
 カルボニル基を1つ持つアルデヒドやケトンの沸点は、分子量が同じくらいのヒドロキ
シ基を1つ持つアルコールとアルカンとの中間くらいである。これはカルボニル基の極性
がかなり大きいことを示す。
 溶解性については、アルコールに似ている。それはカルボニル基の極性がかなり大きい
こと、カルボニル基の酸素が水の水素と水素結合を形成すること、さらに一部が上記のよ
うにヒドロキシ基になることで、ヒドロキシ基に似ているからである。

[c]カルボン酸、アミン
[1]カルボン酸
 「整理」のOのように、カルボキシ基 −COOH を持つ有機化合物はカルボン酸と呼
ばれる。カルボキシ基は官能基である。なお示性式において、炭素に近い方の酸素はカル
ボニル基になっており、水素に近い方の酸素はヒドロキシ基になっている。つまり2つの
酸素の結合は異なるのでこの講座プランでは、カルボキシ基を −CO2H と表すことは避
ける。すでに紹介したサリチル酸もカルボン酸である。
 次ページに代表的なカルボン酸の構造式などを示す。
ギ酸は蟻(あり)やはちの毒であり、またアルデヒドでもある。酢酸は食酢に含まれ、酸味
の元である。乳酸はヨーグルトなどに含まれる。クエン酸はレモンなどに含まれる。乳酸
とクエン酸はアルコールでもある。ちなみに酢酸やラウリン酸のように、カルボキシ基が

                  - 32 -


  

ひとつで残りが脂肪族炭化水素基であるものは脂肪酸と呼ばれる。そしてラウリン酸のよ
うに炭素数の多いものは高級脂肪酸と呼ばれる。
 既に学習したように、カルボキシ基を持つ無機化合物は炭酸 HOCOOH である。カ
ルボン酸の性質は炭酸に似ている。
[2]光学異性体
 「整理」のRとSはとくに光学異性体と呼ばれ、これらは互いに鏡像の関係になってい
る。このような異性体が生じるのは、1つの炭素に結合する原子や基が4つとも異なる場
合である。このような炭素はとくに不斉(ふせい)炭素と呼ばれる。
 乳酸にはメチル基、水素、ヒドロキシ基、カルボキシ基が結合する不斉炭素がある。上
の構造式でははっきり示さなかったが、次のように2種の光学異性体が存在する。

  

2種の乳酸の性質はほとんど同じである。しかし光に対する性質は異なる。
[3]旋光性
 光は電磁波の一種で、進行方向と直角の面内において振動する横波である。そしてある

                  - 33 -

方向にのみ振動する光は偏光と呼ばれる。
 実験6[a]では、2枚の偏光板が90°ずれると、光は通過できなくなった。そして
[b]では、ブドウ糖水溶液が偏光の振動方向を右向きに27°旋回させた。
 偏光の振動方向を旋回させる性質は旋光性と呼ばれる。ブドウ糖(グルコース)は植物
が光合成で生産したものであり、右向きの旋光性がある。
参考:ブドウ糖分子は5節で構造式を示すように、複数の不斉炭素を持つ。
 筋肉中で生成する乳酸は右向きの旋光性がある。その構造は上図の左のようである(
(S)−乳酸という)。これに対して右の構造の乳酸は左向きの旋光性がある。ヨーグルト
に含まれる乳酸は旋光性がない。これは2種の光学異性体の等モル混合物になっている。
 ちなみに実験1でかんきつ類から得たリモネンも、光学異性体の一方の(R)−リモネン
(構造式は3節[a] *が不斉炭素)であり、これは右向きの旋光性がある。
備考:リモネンは「セル」材料のアクリル板を溶かすため、実験では旋光性を確かめなか
   った。
 実は光学異性体の性質の違いは光に対するだけではない。このことについては講座プラ
ン「生命の化学」で学ぶことにしよう。
[4]沸点と溶解性
 カルボキシ基を1つを持つカルボン酸の沸点は、分子量が同じくらいのヒドロキシ基を
1つアルコールよりさらに高い。ヒドロキシ基とカルボニル基の2つのはたらきが重なる
ためであろう。
 溶解性については、ヒドロキシ基を1つアルコールにだいたい似ている。ただしベンゼ
ン環にカルボキシ基が結合するものは単純でなく、テレフタル酸などは水には溶けにくい。
[5]アミン
 最後に窒素を含む有機化合物を取り上げよう。アンモニア NH3 の水素を炭化水素基で
置き換えた構造の化合物はアミンと呼ばれる。
 次ページに代表的なアミンの構造式などを示す。
メチルアミン、エチルアミン、アニリンが持つ −NH2 という基はアミノ基と呼ばれる
(ピペリジンが持つ −NH− という基はイミノ基と呼ばれる )。アミノ基は官能基であ
る。アミンの性質は無機化合物のアンモニア(沸点:−33℃)に似ている。
[6]沸点と溶解性
 アミノ基を1つ持つアミンの沸点は、アルデヒド、ケトンと同じように、分子量が同じ
くらいのヒドロキシ基を1つ持つアルコールとアルカンとの中間くらいである。アミノ基
はヒドロキシ基ほどの引力ではないが、水素結合を形成する。これに対してトリエチルア
ミンは、水素結合する水素がない。窒素が極性をいくらか大きくするが、その沸点は同じ
ような分子量のアルカンに近い。
 溶解性については、アミノ基を1つ持つアミンはヒドロキシ基を1つ持つアルコールに

                  - 34 -


  

だいたい似ている。トリエチルアミンもその窒素が水分子の水素と水素結合を形成できる
ことに注意しよう。しかしそれにしてもトリエチルアミンは水にいくらでも溶け、異常で
ある。
目次へ

5.酸素、窒素を含む有機化合物の反応

[a]検出反応
 すでに不飽和結合、および芳香族炭化水素の検出を学んだ。
[1]アルコールの検出
 実験7では、水で薄めた硝酸セリウム試薬に、メタノール、2−プロパノールを加える
と、黄色が赤橙色に変化した。これに対して、フェノールでは黒褐色に濁り、酢酸は変化
がなかった。これはこの試薬がアルコールを、言い換えるとアルコールのヒドロキシ基を
検出できることを示す。
 焼酎、砂糖でも赤橙色になった。焼酎にはエタノールが含まれる。砂糖の主成分はショ
糖(スクロース)であり、すぐ後で触れるがスクロースも、4節[c]の[3]で出てき
たグルコースも多数のヒドロキシ基を持つ分子である。なお硝酸セリウム試薬の反応式な
どには踏み込まない。
[2]フェノール類の検出
 実験8では、水に加えたフェノール、2−ナフトール、サリチル酸に、塩化鉄(V)水溶
液を滴下すると青から紫色に着色した。これに対して、エタノール、酢酸では変化がなか
った。つまりこの試薬はフェノールのヒドロキシ基を検出でき、アルコールやカルボン酸
のヒドロキシ基とは反応しない。なお塩化鉄(V)水溶液の反応式などには踏み込まない。

                  - 35 -

[3]アルデヒドの検出(銀鏡反応)
 実験9では、硝酸銀水溶液に水酸化ナトリウム水溶液とアンモニア水を加える。始めの
黒褐色沈でんは酸化銀 Ag2O であり、無色透明な水溶液になったときには、ジアンミン
銀イオン [Ag(NH3)2]+ が生成している。これはトレンス試薬と呼ばれる。
 これにアセトアルデヒド、ベンズアルデヒドを加えると、器壁の一部に銀鏡ができ、黒
褐色沈でんが生成した。これは銀鏡反応と呼ばれる。これに対してアセトン、メタノール、
酢酸では変化がなかった。つまりこの試薬はアルデヒドのホルミル基を検出できる。
参考:酢酸は多く加えると白色沈でんが生成する。
 ブドウ糖も銀鏡反応を示した。次にグルコース(ブドウ糖)とスクロース(ショ糖)の
構造式(一部は示性式)を示す。



        グルコース(ブドウ糖)         スクロース(ショ糖)
グルコースは水溶液中で3つの構造をとることができ、図の中央がホルミル基を持つ。ち
なみにスクロースの構造式にはそのような官能基はない。
参考:商品の砂糖はすこしグルコースなどを含み、ホルミル基が検出されることがある。
[4]アルデヒド・ケトンのカルボニル基の検出
 実験10[a]では、すり下ろしたしょうがにジエチルエーテルを加えて抽出し、上澄
液に無水硫酸ナトリウムを加えて含まれる水をとり除いた(このように水をとり除くこと
ができる薬剤は乾燥剤と呼ばれる)。そしてエーテルを揮発させると黄色で油状のしょう
がエキスが得られた。
 実験10[b]では、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトンをエタノールに
溶かして、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン試薬を加えると、黄色から橙色の沈でんが
生成した。これに対して2−プロパノールや酢酸では変化がなかった。
 つまりこの試薬はアルデヒドやケトンのカルボニル基を検出できる。そして同時に銀鏡
反応を示せばアルデヒド、そうでなければケトンと推定できる。
 しょうがエキスも橙色の沈でんが生成した。これには次ページに構造式を示すジンゲロ
ンと呼ばれる辛み成分が含まれる。
ジンゲロンはケトンである(フェノール類でもある)。

[課題]発展実験2、3の「バイルシュタインテスト」「ヨードホルム反応」に取り組
んでみよ。

                  - 36 -


  


[b]酸化反応
 有機化合物の反応には、酸化剤(や還元剤)を使うことが多い。酸化還元反応の全体像
は別の講座プランにゆずるとして、具体例をもとにまとめをする。すでに炭化水素の燃焼
反応については学んだ。
[1]実験11では、メタノールの蒸気に表面が黒色の酸化銅(U)になった銅のコイルを
差し入れると、表面があかがね色の銅にもどった。そして刺激臭がした。この気体の生成
物質をメタノールに振り混ぜ、トレンス試薬を加えると、銀鏡ができた。
 反応式は次のようであり、ホルムアルデヒドが生成する。
    CH3OH + CuO ―→ HCHO + H2O + Cu
    メタノール     ホルムアルデヒド
この反応を酸素のやり取りで見てみよう。酸化銅(U)は酸素を与え、酸化剤としてはたら
く。そしてメタノールは酸素を得て、ホルムアルデヒドと水になる。したがってメタノー
ルは酸化される。言い換えると、メタノールは酸素を奪い、還元剤としてはたらく。
[2]実験12では、希硫酸に二クロム酸カリウムを溶かし、2−プロパノールを加えて
静かに反応させた。反応混合物は水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性にし、水浴で蒸
留するとほぼ無色の液体が得られた。これは銀鏡反応は示さず、2,4−ジニトロフェニル
ヒドラジン試薬と反応した。
 反応式は複雑なので避けるが、次のようであり
    二クロム酸カリウム ―→ 酸化クロム(V) + 酸化カリウム
     K2Cr27        Cr23      K2
    2−プロパノール  ―→  アセトン + 水
   CH3CH(OH)CH3   CH3COCH3  H2
アセトンが生成する。この反応では二クロム酸カリウムが酸素を与え、酸化剤としてはた
らく。そして2−プロパノールは酸素を得てアセトンと水になる。言い換えると、2−メ
タノールは酸素を奪い、還元剤としてはたらく。
[3]2つの反応形式は次ページのように共通点がある。
つまりヒドロキシ基の水素と、それが結合する炭素に結合する水素が、得た酸素と水にな
る。アルコールの方から見ると、メタノールのようにヒドロキシ基が結合した炭素に2つ
以上の水素が結合していればアルデヒドが生成する。そして2−プロパノールのように1

                  - 37 -


  

つしか水素が結合していなければケトンが生成する。それなら2−メチル−2−プロパノ
ールのようにヒドロキシ基が結合した炭素に水素が結合していなければどうなるか。これ
は酸化されにくいのである。
 ここでアルコールを次のように分類する。メタノールやエタノールのように、ヒドロキ
シ基が結合する炭素に水素が2つ以上、つまり炭素が1つ以下しか結合していないものは
第一アルコール、水素が1つ、つまり炭素が2つ結合するものは第二アルコール、水素が
一つも結合しない、つまり炭素が3つ結合するものは第三アルコールである。

  

 これを使って、一般化してまとめると次のようである。
  ・第一アルコールは酸化されてアルデヒドになる
  ・ 二      〃    ケトン  〃
  ・ 三      酸化されにくい
[4]銀鏡反応をアセトアルデヒドを例にして見直してみよう。反応式はさらに複雑だが、
次のようであり
    アセトアルデヒド ―→ 酢酸
     CH3CHO    CH3COOH
酢酸が生成する。つまりアセトアルデヒドは酸素を得て酢酸になる。言い換えるとアセト
アルデヒドは酸素を奪い、還元剤としてはたらく。この反応形式はどうなるだろうか。そ
してその相手の酸化剤はアンモニア性の硝酸銀水溶液であるが、深入りはできない。
 これに対してアセトンは銀鏡反応を示さない。一般化してまとめると次のようである。
  ・アルデヒドは酸化されてカルボン酸になる
  ・ケトンは酸化されにくい
[5]実は塩化鉄(V)水溶液によるフェノール類の検出反応も、フェノール類が酸化され
やすいことに依っている。ただし反応は複雑であり、ここでは踏む込まない。
  ・フェノール類は酸化されやすい
言い換えると、フェノール類は還元剤としてはたらき、実際にも銀塩写真の現像における
還元剤や、食品の酸化防止剤として利用される。

                  - 38 -

 またアニリンのような芳香族アミンも酸化されやすい。
  ・芳香族アミンは酸化されやすい
 以上学んできたように、多くの有機化合物は酸化されやすい。そして第一アルコールは
酸化されてアルデヒドになるが、このアルデヒドはさらに酸化されてカルボン酸になる。
だから使用する酸化剤によっては第一アルコールは一気にカルボン酸になる。それどころ
か燃焼反応では、多くの有機化合物が二酸化炭素と水にまで酸化される。

[c]酸性・塩基性と塩の溶解性
[1]実験13[a]では、BTBを加えた水に、酢酸、安息香酸を加えると緑色が黄色
に変化した。これに対してエタノールとフェノールでは変化がなかった。これはカルボン
酸がその名の通りに酸であることを示す。食酢、レモン汁は黄色に変化したが、それぞれ
酢酸とクエン酸が含まれる。ここでカルボン酸は弱酸であるが、炭酸よりは強いことを確
認しておく。
 安息香酸を例にすると次の上のように電離して水素イオンを生じる。このような表現は
すでに酢酸で学んでいる。

  

また水酸化ナトリウムとの中和反応は下のようである。ちなみに次に学ぶアミンを除いて、
中和反応は置換という反応形式である。
 実験13[b]では、クレゾールは水には溶けにくかったが、水酸化ナトリウム水溶液
を加えると溶解した。そして塩酸を加えると、再び溶けにくくなった。
 これは次の反応が起きる(m−クレゾールの場合)。上の反応ではクレゾールが酸とし
て水酸化ナトリウムと中和反応する。

  

下の反応では生成する塩が強酸である塩酸と反応して元の酸にもどる。
参考:講座プラン「酸と塩基」の5節
   「弱酸の塩に強酸を加えると弱酸が生成する」

                  - 39 -

   「弱塩基の塩に強塩基を加えると弱塩基が生成する」
塩酸の代わりに二酸化炭素を吹き込んでも(炭酸を加えても)次のようにクレゾールにも
どるので、クレゾールは炭酸より弱い酸である。

  

一般にフェノール類は、アルコールと違って、微酸性である。これでフェノールがBTB
を変色させるまでに至らなかった理由が納得できる。酸の強さをまとめると
  ・塩酸など >> カルボン酸 > 炭酸 > フェノール類
となる。ちなみにフェノール類の構造が炭酸にすこし似ていることに注目しよう。
[2]実験13[a]では、BTBを加えた水に、トリエチルアミン、アニリンを加える
と緑色が青色に変化した。これはアミンが塩基であることを示す。アニリンを例にすると、
次のように電離して水酸化物イオンを生じる。

  

これはアンモニアの電離に似ている。
 実験13[b]では、アニリンは水には溶けにくかったが、塩酸を加えると溶解した。
そして水酸化ナトリウム水溶液を加えると再び溶けにくくなった。これは次の上の反応が
起きる。

  

この反応式はアンモニアの中和反応などと比べると分かりやすい。下の反応はアニリンが
水酸化ナトリウムより弱い塩基であることを示す。一般にアミンはアンモニアと同じくら
いの弱塩基である。塩基の強さをまとめると
  ・水酸化ナトリウムなど >> アンモニア、アミン
[3]水に溶けにくい、酸であるクレゾールや塩基であるアニリンが、塩になると水に溶
けやすくなる。これは4節[a]の[3]で確認したように、イオンは水に溶けやすいこ
とを改めて示す。またこのような酸や塩基の塩に、強塩基や強酸を加えるとと、元の酸や
塩基にもどり、溶けにくくなる。
 以上のことは有機化合物の酸や塩基を分離するのに応用できる。例えばクレゾールとア
ニリンの混合物は、始めに塩酸を加えるとクレゾールが水に溶けにくいので分離でき、次
に水酸化ナトリウムを加えるとアニリンが元にもどって水に溶けにくいので分離できる

                  - 40 -

(逆でもよい)。
参考:クレゾールやアニリンは、ジエチルエーテルに溶かして溶液として分離するとよい
   (6節[a]の[3]を参照)
[問1]2−ナフトールとサリチル酸を分離する方法を考えよ。



[4]実験14では、水酸化ナトリウム水溶液にラウリン酸を加えてかき混ぜると、しば
らくしてBTBの色が青色から緑色に変化した。
 これは次のような中和反応が完了したことを意味する。
  C1123COOH + NaOH ―→ C1123COONa + H2
   ラウリン酸          ラウリン酸ナトリウム
参考:−C1123 は構造を示しておらず、名称を付けて補う。
この中和反応はその速度を目で追えるくらいにゆっくりである。
 実験14では、水溶液が冷えて凝固したら、取り出して手を洗うと泡立った。
 ラウリン酸ナトリウムはカルボキシ基が塩に変化しイオンになっているが、同時にかな
り長い炭化水素基を持つ。このような分子は溶解性に関して矛盾がある。イオンの部分は
水に溶けやすく親水性であり、これに対して炭化水素基の部分は油に溶けやすく親油性で
ある(疎水性であるとも言う)。ラウリン酸ナトリウムは水に加えると、次の左のように
分子の集団(「ミセル」と呼ばれる)を形成して溶ける。ミセルの表面は親水性であり、
内部は互いに親油性の部分が溶け合っている。

  

 そして油汚れに対して右のように配列して全体を親水性にして、油汚れを水中に分散さ
せることができる。こうしてラウリン酸ナトリウムは洗浄作用を持つ。つまり油汚れの表
面の性質を変化させる。このように、物質の界面(境界面)に配列してその性質を変化さ
せる物質は界面活性剤と呼ばれる。そして高級脂肪酸のナトリウム塩は石けんと呼ばれ、
古来から利用されてきた。界面活性剤は洗剤に限らず、生物体内や食品でも有意義なはた
らきをしている。

                  - 41 -

目次へ

6.縮合型の有機化合物

[a]エーテル
[1]実験15では、太い試験管の中でエタノールに濃硫酸を加えて140℃あたりに保
つと、ジエチルエーテルが生成して気体になり、まわりを水で冷やした試験管に液体にな
って捕集された。
 この反応式は次のようである。
  2C25OH ―→ C25OC25 + H2
   エタノール  ジエチルエーテル

  

この反応形式は置換であるが、上のように捉えても分かりやすい。つまり一方のエタノー
ル分子からヒドロキシ基の水素が、他方からヒドロキシ基が切り取られて水になり、残り
が結合する。このように2つの分子から簡単な分子が切り取られ残りが結合するという反
応形式は縮合と呼ばれる。また切り取られる分子に注目すると脱水と言うこともできる。
ちなみに5節[c]の中和反応の多くは、脱水縮合である。
 硫酸の化学式は反応式に現れない。硫酸は変化せず、この反応を促進する触媒としては
たらく。濃硫酸は脱水縮合の代表的な触媒であり、次の酢酸エチルの合成でも利用される。
[2]アルコールやフェノール類が脱水縮合した構造の有機化合物はエーテルと呼ばれる。
そして −O−(2つの原子価は炭素に結合)という基はエーテル結合と呼ばれる。ちなみ
に「整理」のJ,R,S,(23)はエーテルである。
 次に代表的なエーテルの示性式などを示す。

  

ジエチルエーテルはかつて麻酔薬としてよく利用された。
[3]実験15では、生成したジエチルエーテルをBTBを加えた水に加えて振り混ぜる
と、2層に分かれてBTBは主にエーテル層に移った。
 これはジエチルエーテルが水に溶けにくいことを示す。このエーテルは炭化水素基の炭
素数が4つでかつヒドロキシ基を持たないから納得できる。またBTBのような有機化合

                  - 42 -

物を溶かしやすいことを示す(ちなみにBTBは水でない溶媒では変色する)。ジエチル
エーテルはヘキサンに溶けやすいが、ヘキサンに比べて酸素を持つので極性がほどよく大
きく、幅広い有機化合物が溶けやすく、有機溶剤(有機化合物を溶かすための溶媒)とし
て利用される。しかし揮発性が高過ぎて(沸点が低過ぎて)引火しやすく、また過酸化物
に変化して爆発につながる恐れがあるので、t−ブチルメチルエーテル(t−はターシャ
リィと読み、アルコールの分類で使う第三を、つまりエーテル結合の相手の炭素に3つの
炭素が結合するという意味である)も利用される。

[b]エステル
[1]実験16では、太い試験管で酢酸に濃硫酸とエタノールを加えて加温し、反応混合
物を炭酸ナトリウム水溶液に注ぐと二酸化炭素が泡立って発生した。これを元の試験管に
もどすと、酢酸エチルが上層になって分離した。
 この反応式は次のようである。
  CH3COOH + C25OH ―→ CH2COOC25 + H2
    酢酸              酢酸エチル
これも脱水縮合であるが、カルボキシ基のヒドロキシ基とヒドロキシ基の水素が切り取ら
れることが、同位体を使った研究から解明されている。
[問1]上の反応式を構造式を使って書き、脱水の様子を示
せ。


[2]実験16では、酢酸エチルを浸ませた脱脂綿でこすると、カラー印刷を拭き取るこ
とができた。
 酢酸エチルは、ジエチルエーテルに似て、水には溶けにくく、カラーインクのような有
機化合物を溶かしやすく、やはり有機溶剤として利用される。
[3]この実験では反応は完結せず、反応混合物には酢酸とエタノール、それに触媒の硫
酸が混在する。これらはどのように除去されるだろうか。硫酸と酢酸は炭酸に比べて強い
酸であり、炭酸ナトリウムと次のように反応する。
備考:厳密には「炭酸水素イオンおよび炭酸に比べて強い酸」と記述すべきである。
  Na2CO3 + H2SO4 ―→ Na2SO4 + H2O + CO2
  Na2CO3 + 2CH3COOH ―→ 2CH3COONa + H2O + CO2
硫酸や酢酸は水にも酢酸エチルにも溶けやすい。しかし塩になると酢酸エチルには溶けに
くくなる。このことは5節[c]の[3]の塩に関する記述と合わせて整理しておこう。
こうしてこれらは水層に移る。しかしエタノールは酢酸エチルにも溶けて混在し、十分に
は除去されない。

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[4]カルボン酸と、アルコールないしフェノール類が脱水縮合した構造の有機化合物は
エステル、より厳密にはカルボン酸エステルと呼ばれる。そして −COO−(少なくとも
右の原子価は炭素に結合)という基はエステル結合と呼ばれる。ちなみに「整理」のQは
エステルである。
 次に代表的なエステルの示性式などを示す。

  

エステルの多くは果物の香りの成分であり、酪(らく)酸イソペンチルや安息香酸メチルは
人工香料として利用される。これに対してアセチルサリチル酸(商品名:アスピリン)は
解熱薬として、サリチル酸メチル(商品名:サロメチール)は鎮痛用塗布薬として利用さ
れる。ちなみに三大栄養素の脂肪はエステルである。
 エステルは、カルボン酸のカルボキシ基の水素が失われており、中性である。
[問2]サルチル酸とメタノールからサリチル酸メチルを合成するときの変化を示性式を
使う反応式で書け。



[c]アミド
[1]実験17では、水にアニリンと無水酢酸を加えて振り混ぜるとアセトアニリドが生
成して白色のペースト状になった。
 はじめに無水酢酸について説明する。これは酢酸2分子が次のように脱水縮合した構造
の有機化合物である。
    2CH3COOH ―→ CH3COOCOCH3 + H2
                 無水酢酸
無水酢酸は (CH3CO)2O とも表される。そして CH3CO という基はアセチル基と呼
ばれる。
 アセトアニリドが生成する反応式は次のようである。
  (CH3CO)2O + C65NH2 ―→ CH3CONHC65 + CH3COOH
   無水酢酸     アニリン     アセトアニリド

                  - 44 -

この反応形式は次のように、酢酸が切り取られる縮合である。
参考:フェニル基は −C65 と表すことがある。この記号は構造を示しておらず、便宜
   的なものである。

  

なおアセトアニリドは次のように、酢酸とアニリンから触媒として濃硫酸を使っても合成
できる。
  CH3COOH + C65NH2 ―→ CH3CONHC65 + H2
           アニリン     アセトアニリド
この反応形式は脱水縮合である。
[2]実験17では、反応混合物に水を加えて加熱すると全体が溶解した。これを常温の
水に注いでガラス棒でかき混ぜると銀色で細かなうろこ状の結晶が析出した。
 これは再結晶と呼ばれる物質の分離法である。アセトアニリドは炭化水素基の炭素数が
5つに相当し、常温の水には溶けにくい。しかし温度が高くなると溶解度が大きくなるの
で、溶けた水溶液を常温に冷やす(実験では常温の水に加える)ことで結晶が析出する。
[3]カルボン酸と、アミノ基を持つアミンないしアンモニアが脱水縮合した構造の有機
化合物はアミドと呼ばれる(狭い定義)。そして −CONH− はアミド結合と呼ばれる。
 次に代表的なアミドの示性式などを示す。

  

アセトアニリドは解熱薬として利用される。尿素は広い定義でアミドであり、文字通り尿
に含まれ、体内で生じるアンモニアが毒性の小さい化合物になって排出される。
 アミド結合はカルボニル基 −CO− とイミノ基 −NH− の2つの官能基からなる。
いずれも極性が大きくかつ水素結合をつくるので分子間力を大きくすることに注目しよう。
またイミノ基はある種のアミンに含まれ弱い塩基性を示すようにも思われるが、カルボニ
ル基の影響を受け、実際にはアミドは中性の物質である。ちなみに生命活動を営むタンパ
ク質もアミドであるが、これは講座プラン「生命の化学」で学ぶ。

[課題]発展実験4、5の「サロメチールの合成」「ニトロベンゼンの合成」に取り組
んでみよ。

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発展実験

     発展実験目次
  発展実験1 カフェインの抽出
  発展実験2 バイルシュタインテスト
  発展実験3 ヨードホルム反応
  発展実験4 サロメチールの合成
  発展実験5 ニトロベンゼンの合成

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発展実験1 カフェインの抽出
 得られる白色の針状結晶はカフェイン C81042 という有機化合物である。
(1)100mLビーカーに水約50mLを入れてバーナーで加熱し、沸とうしたら紅茶
のティーバッグ2つ(4g)を入れ、火を弱めて穏やかに沸とうするようにして2分ほど
煮出し、火から下ろす。
(2)バッグを器壁にガラス棒で押さえて絞ってから取り出し、再び強火で加熱して約
10mLまで煮詰める。
(3)浸出液を水を入れた200mLビーカーに浸けて30℃くらいまで冷やし、無水炭
酸ナトリウム2gを加えてかき混ぜ、試験管に移す。
(4)5mLピペットでジクロロメタン2mLをビーカーに入れて振り混ぜ、試験管に加
える。さらに8mLをできるだけ少しずつ浸出液に滴下していく。
(5)続いて下のジクロロメタン層を数mLを、同じピペットで静かに吸い取り、できる
だけ少しずつ浸出液に滴下していく。これを10回ほどくり返す。
参考:(4)(5)は浸出液のカフェインをジクロロメタンに溶かし込む操作である。
   振り混ぜないのは、2層に分離しにくくなるためである。
(6)5mLピペットですこしずつジクロロメタン層を吸い取って乾いた蒸発皿に移す。
参考:ピペットに入った水層は元に戻し、改めてジクロロメタン層を吸い取るようにする。
(7)乾燥した無水硫酸ナトリウムの粉末を少しずつ加えて振り混ぜ、水分を吸収させる。
注意:混入した水滴部分に粉末をかけるようにする。粉末は固まらない部分ができたら加
   えるのを止める。
(8)上澄みを別の蒸発皿に移し、2cmほどの炎で加熱してジクロロメタンを穏やか
に追い出す。
注意:空気を入れた炎にする。バーナーはときどき外に外して火加減する。
   カフェインは昇華しやすい。
(9)残った白色固体をマイクロスパーテルで集め、φ18mm試験管に移す。なお残る
部分は指に付けてなめてみる。
(10)水を1/4入れたφ15mm試験管をφ18mmに差し入れ、その底を2cmほ
どの炎で注意深く加熱して昇華させる。
(11)φ15mmを取り出し、底をルーペで観察する。
(12)ガラス器具はスポンジやブラシを使って水洗いする。
備考:昇華で黒色固体が付いた試験管は、後で太い針金の切断エッジで削るようにして洗
浄する。

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参考文献:日本化学会「実験で学ぶ化学の世界1&3」(丸善)

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発展実験2 バイルシュタインテスト
  これは有機化合物に塩素など(塩素、臭素、ヨウ素)が含まれるかを検出する。これは
銅の炎色反応の応用である。
(1)数10cmの銅線の先を数mmの円にし、バーナーの酸化炎に入れたり、外に出し
て冷やしたりして、緑色の炎色反応が見られないことを確認する。
(2)円の部分にサンプルを付け、炎に入れて緑色になるかどうか検査
する。 注意:別のサンプルを調べるときは、銅線の黒くなった部分はニッパーで切り取る。

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発展実験3 ヨードホルム反応
 これはアセチル基 CH3CO− という構造を持つかどうかを検出する。生成するヨード
ホルム CHI3 は水に溶けにくく独特の臭いを持つ。
 ただしアセチル基は水素 H(この場合はアセトアルデヒドになる)か、アセトンのよう
に炭素 C に結合するものに限り、酢酸のように酸素 O に結合するものは反応しない。
そして試薬は酸化剤でもあるので、酸化されてそのようになる CH3CH(OH)− という
構造でも反応する。
(1)試験管に0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液5mLを入れ、サンプル4滴ない
し小さじ1杯を加えて振り混ぜる。
(2)ヨウ素溶液1mLを加えて振り混ぜ、黄色沈でんが生成するか黄白色にごりを生じ
るか調べる(検出される場合は臭いもかいでみる)。変化がない場合は約60℃の湯にし
ばらく浸けて様子を観察する。
<準備>
・ヨウ素溶液
 ヨウ化カリウム20gとヨウ素10gを水80mLに溶かす。

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発展実験4 サロメチールの合成
(1)200mLビーカーに湯を2/3入れて温度計を差し、加熱して90℃前後にして
それを維持する。
(2)乾いた太い試験管にメタノール10mLを入れ、これに濃硫酸4mLを少しずつふ
り混ぜながら加える。
注意:一気に入れると突沸して危険である。
(3)これにサリチル酸4gを加える。
(4)再びメタノール5mLを、今度は器壁に付いたサリチル酸を洗い落とすように加え、
ふり混ぜる(完全に溶けなくても次に進む)。

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(5)試験管に沸とう石2つを入れて(1)の水浴に浸けて加熱する。サリチル酸が溶け
ていないときは途中でふり混ぜて溶解させる。
(6)加熱のポイントは試験管の中の反応混合物が穏やかに沸とうを続けるようにするこ
とである。温度計は目安として利用する。先を読んだバーナーの出し入れによる火加減と、
温度が上がりすぎたときには試験管を持ち上げることで、15〜20分加熱をする。反応
混合物が白濁してさらに1分間加熱して終了する。
(7)ビーカーの湯を捨て、水約50mLを入れ、これに反応混合物を注ぐ。
(8)炭酸ナトリウム7gをすこしずつふり混ぜながら加える。
注意:一気に加えると泡が吹きこぼれて、できたサロメチールが失われる。泡に高さを
   1cm以下にする。
(9)できた油滴を1mLピペットで採って、手の甲に塗ってみよう。
(10)試験管とビーカーは、ブラシでクレンザーを使って洗浄する。

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発展実験5 ニトロベンゼンの合成
 得られる淡黄色の油状物質はニトロベンゼンという次の構造式を持つ化合物である。

  

(1)300mLビーカーに水を2/3入れて冷却用にする。
(2)乾いた太い試験管に濃硫酸7mLを入れ、温度計を差し込んで濃硝酸7mLを少し
ずつ加えて振り混ぜる。温度が60℃を越えるときはすこし冷却する。
(3)温度計を外に出してベンゼン7mLを加える。
注意:ベンゼンには発がん性がある。よく換気して実験する。
(4)次のことをくり返して10分ほど反応させる。
   振り混ぜる → 温度をチェックする → 60℃を越えるときは冷却する
注意:混合すると反応が進行して発熱する。始めは小刻みにくり返さないと温度のコント
   ロールができなくなる。後半は冷却の必要がなくなるのでもっぱら振り混ぜて反応
   を促進する。
   振り混ぜるときは必ず温度計を外に出す。球が割れると危険である。
(5)反応混合物をガラス棒を伝わらせて冷却用の水に注ぎ、かき混ぜるとビーカーの底
にニトロベンゼンの油滴が沈む。
(6)ニトロベンゼンはビーカーごと教卓にもどす。



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参考にした主な文献
・ハート「基礎有機化学」(培風館)
・Shriner etc "The Systematic Identification of Organic Compounds
                     a laboratory Nanual" (Maruzen)
・フィーザー/ウィリアムソン「有機化学実験」(丸善)
・日本化学会「化学便覧」(丸善)



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