12.1
林 正幸
原子量と物質量
実験・実習
実験目次
実験1 マグネシウムの原子量
実験2 水素の原子量
実験3 硫黄の原子量
実験4 1molの物質
実験5 単分子膜によるアボガドロ定数
実験6 金属の比熱
発展実験1 結晶構造によるアボガドロ定数
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実験1 マグネシウムの原子量
(1)空の「鉄製るつぼ」の質量を化学天びんで測る。
るつぼの質量 ( )g
(2)るつぼを容器にして、マグネシウム粉末(か粒)0.25gほどを正確に測り取る。
マグネシウムの質量 ( )g
(3)マグネシウムが底全体に広がるようにし、三脚に乗せた三角架にるつぼを置き、バ
ーナーの中火で数分間加熱し、様子を観察する。
参考:強火にすると激しく燃焼して、酸化マグネシウムが白煙になって失われる。
(4)冷めたら、るつぼ全体の質量を測る。
るつぼ全体の質量 ( )g
酸化マグネシウムの質量 ( )g
(5)酸化マグネシウムの化学式は MgO である。マグネシウムの原子量を計算してみ
よ。
<記録>
<準備>
・「鉄製るつぼ」
甘露ひしゃく(底面の外径が30mm)の柄を切断してつくる。
・化学天びん
mgまで測れるもの
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実験2 水素の原子量
(1)200mLメスシリンダーに水を満たし、空気を入れないようにラップで包み、半
分ほど水を入れた水そうに倒立させ、ラップを外す。
(2)「導管部」の元をピンチコックで締め、ゴム管の先に水が入らないようにスチロー
- 1 -
ル球(φ5mm)で軽くせんをし、「捕集台」を通してメスシリンダーの最上部に差し入
れる。
(3)100mL三角フラスコに2mol/L塩酸15mLを入れる。
(4)マグネシウムリボン約13cmを、サンドペーパーで磨き、その質量を正確に測る。
マグネシウムの質量 ( )g
参考:リボンは0.16gくらいにする。
(5)リボンを巻いてゴムせんの下の銅線に引っかけ、落とさないようにゴムせんを三角
フラスコに締め、ピンチコックをガラス管の位置にもどす。
(6)リボンを落として水素を発生させる。
注意:スチロール球が外れる反動でメスシリンダーが倒れる可能性があるので、手で軽く
支える。
(7)数分放置し、その間に水温を測る。
水温 ( )℃
参考:三角フラスコを水そうに浸けて冷やすとよい。
(8)ゴム管を中の気体がメスシリンダーに入らないように指で押さえて手早く引き出し、
メスシリンダーの気体の体積を測る。
水素の体積 ( )mL
(9)フラスコの廃液は中和処理にまわす。
(10)水素の密度から水素の質量を計算する(1節[4]を参照)。
水素の質量 ( )g
反応式は次のようである。
Mg + 2HCl ―→ H2 + MgCl2
水素の原子量を、マグネシウムの原子量 24.3 を使って計算してみよ。
<記録>
<準備>
・「導管部」
5号ゴムせん、銅線、ガラス管(φ6、8cm)、ピンチコック、ゴム管(80cm)
・「捕集台」
ポリコップの底部を利用して作成
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実験3 硫黄の原子量
(1)100mLビーカーに約20mLの水を入れ、全体の質量を化学天びんで測る。
- 2 -
水の入ったビーカーの質量 ( )g
(2)濃硫酸(98%)を5mLピペットで20滴ほど加え、再び質量を測る。
濃硫酸の質量 ( )g
参考:濃硫酸は0.90gくらいにする。
(3)マグネシウムリボン約25cmを、サンドペーパーで磨き、その質量を測る。
マグネシウムの質量 ( )g
参考:リボンは0.28gくらいにする。
(4)リボンを4つに切り、始めに3つを投入する。反応がゆっくりになったら、温度計
で調べながら70℃まで加熱する。
(5)反応が終わったら4つ目のリボンを投入し、振り混ぜたりして反応が終わるのを待
つ。
(6)ほとんど気体が発生しなくなったら、リボンをピンセットで取り出し、水洗いして
ヘアドライヤーで乾燥し、その質量を測る。
残りのマグネシウムの質量 ( )g
反応したマグネシウムの質量 ( )g
(7)パーセント濃度から、硫酸自身の質量を計算する(2節[2]を参照)。
硫酸自身の質量 ( )g
反応式は次のようである。
Mg + H2SO4 ―→ H2 + MgSO4
できれば硫黄の原子量を、マグネシウム 24.3、水素 1.0、酸素 16.0 という原子
量を使って計算してみよう。
<記録>
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実験4 1molの物質
原子量は次のようである。
H=1.0 C=12.0 O=16.0 Na=23.0 S=32.1 Cl=35.5
硫黄原子 S
水分子 H2O
ブドウ糖分子 C6H12O6
塩化ナトリウム NaCl
の各1molを測り取れ。容器はポリコップを使う。
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実験5 単分子膜によるアボガドロ定数
ステアリン酸は水面に薄い膜をつくって広がる。単純に考えて、ステアリン酸分子は立
- 3 -
方体でありそれが図のように水面に並んで「単分子膜」をつくると仮定して、アボガドロ
定数を求めてみよう。

(1)バットを洗剤でよく洗い、水でよくすすぐ。
(2)50mLビーカーに、目盛りを利用してヘキサン50mLを注ぐ。
(3)ステアリン酸0.015gを化学天びんで測り、ガラス棒でかき混ぜてヘキサンに溶
かす。
参考:ステアリン酸の密度は0.94g/cm3であるが、おおまかに考えて1g/cm3と
すると、ステアリン酸0.015gは0.015cm3=0.015mLである。した
がってステアリン酸の体積はヘキサンの体積の
0.015/50 = 1/3300
である。あるいはステアリン酸の体積はヘキサン溶液の体積の1/3300と考えて
よい。
(4)2mLピペットで、上の溶液0.5mLを採り、滴下して何滴かを調べる。
0.5mL ( )滴
(5)バットに水を張り、マーブリング液1滴だけをフロートを使って水面に広げる。
(6)中央に上の溶液を20滴だけ滴下し、できる単分子膜の広がりを確認する。
参考:ヘキサンは揮発して失われる。
(7)方眼紙を被せて写し取り、新聞紙に挟んで水を吸い取り、1cm2 のます目がいく
つあるか数えて面積を求める。
単分子膜の面積 ( )cm2
参考:半分以上が白います目を数える。
(8)バットを再び洗剤で洗う。
(9)残った溶液は、燃焼処理にまわす。
(10)まず単分子膜の厚み、つまりステアリン酸分子の大きさ(立方体の辺の長さ)を
計算せよ。また分子の体積(立方体の体積)を計算せよ。
次にステアリン酸 C17H35COOH の分子量は284である(モル質量が284
g/mol)ことと密度を1g/cm3としたことを使って、1molの体積を計算せよ。
そしてアボガドロ定数を計算してみよう。
<記録>
- 4 -
<準備>
・バット
特大 325×445×70mm
・マーブリング液
マーブリングセット(墨雲堂)
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実験6 金属の比熱
(1)1円玉100枚の質量を台ばかりで測り、水切りネットに入れる。
アルミニウム ( )g
10円玉40枚、魚釣りのおもり10個も、同じように操作する。
銅 ( )g
鉛 ( )g
(2)300mLビーカーに水200〜250mLを入れて、バーナーで加熱する。
(3)275mLポリコップを二重にし、メスシリンダーで水100mLを入れる。これ
を3セット準備し、ひとつめにデジタル温度計を入れ、温度を測る。
水温 ( )℃
(4)水が沸とうしたら、1円玉ネットを沈め、3分ほど沸とう状態にする。
(5)手早くネットを取り出し、机の上で数回トントンと水を切り、すぐにコップに沈め、
上下させて最高温度を測る。
最高温度 ( )℃
注意:コップの水をこぼさない。
(6)10円玉ネット、おもりネットも、同じように操作する。
銅: 水温 ( )℃ 最高温度( )℃
鉛: 水温 ( )℃ 最高温度( )℃
(7)終わったら、コインやおもりはバットに広げて、乾燥する。
(8)水の比熱4.2J/g・℃を使って、それぞれの比熱[J/g・℃]を計算せよ。
また次のモル質量を使って
アルミニウム 27.0g/mol
銅 63.5
鉛 207
1molあたりの比熱[J/mol・℃](モル比熱)を計算せよ。
<記録>
- 5 -
<準備>
・おもり
釣り鐘状 10号
糸を通す真ちゅう部は無視する。
・水切りネット
再生PETがメインの質量が無視できるストッキング状のネット(17×20cm)
(大日産業 商品名「水切革命」)
・デジタル温度計
ナカムラ NT−390
備考:飯田さんの実験を参考にした。
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発展実験1 結晶構造によるアボガドロ定数
(a)結晶構造
(1)単位格子が立方体である次の物質の「結晶モデル」を詰め直すことで、いくつの原
子や化学式が含まれるかを調べる。
@鉄
体心立方格子で、1辺が2.87×10-8cmである。
含まれる Fe ( )個
Aアルミニウム
面心立方格子で、1辺が4.05×10-8cmである。
含まれる Al ( )個
B塩化ナトリウム
塩化ナトリウム型で、1辺が5.64×10-8cmである。
含まれる NaCl ( )個
参考:1辺は、エックス線解析で計測される(数値は化学便覧より)。
(b)モル体積
(1)台ばかりと定規を使って、鉄とアルミニウムのブロックの質量と体積を測る。
@鉄の質量 ( )g
体積 ( )cm3
Aアルミニウムの質量 ( )g
体積 ( )cm3
- 6 -
(2)B4用紙の上でカッターの刃と金づちを使って、天日塩をへき開して直方体を切り
出し、化学天びんとノギスでその質量と体積を測る。
参考:天日塩の中に直方体が隠れている。直方体は直交する2つのへき開面が分かれば切
り出せる(3つ目のへき開面は両者に直交する)。へき開面では結晶は容易に割れ
る。天日塩を注意深く観察し、見つからない場合は端近くを割ってみる。直方体は
3辺の合計が1.5cm以上になるようにする。
直方体の辺の長さ
( )cm ( )cm ( )cm
参考:ノギスは0.05cm単位で計測する。そして2回計測して、確認する。
B塩化ナトリウムの質量 ( )g
体積 ( )cm3
注意:天日塩の残がいは汚さないように回収する(飽和食塩水にする)。
備考:これは大阪教育センターの山本さんの方法である。
(3)モル質量を調べ、それぞれのモル体積を計算せよ。
@鉄 ( )cm3/mol
Aアルミニウム ( )cm3/mol
B塩化ナトリウ ( )cm3/mol
(c)アボガドロ定数
(1)それぞれの物質1molに単位格子がいくつ含まれるか。そして単位格子に含まれ
る原子や化学式の個数を考慮して、アボガドロ定数を計算してみよう。
参考:金属のブロックは単結晶ではなく、小さい単結晶の集合体である。
<記録>
<準備>
・結晶格子
「結晶模型の作成」を参照
・鉄とアルミニウム
5cm角のブロック
・天日塩
ジャパンソルト(株)東京支社(電話03−3538−1112)
- 7 -
知識と理論
目 次
1.原子量を測る
2.原子量と式量
3.物質量
4.モル量
5.現代の化学量論
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この講座プランでは、いろいろな単位、比例計算を扱うので、それが不安な生徒は、巻
末参考の「単位について」「比例計算」を手がかりに学習を進めてほしい。また誤差を伴
う数値の計算に対しては「数値の誤差と計算」も見てほしい。
1.原子量を測る
[1]物質は目には見えない小さい原子からできている。原子量とは、その原子の質量を
表す数値である。19世紀の始めにドルトンは、その原子量を次のように発表した。
水素 1 窒素 5 炭素 5
酸素 7 リン 9 硫黄 13
マグネシウム 20
彼は原子量を、一番小さい水素原子の質量を1とし、これに比べてその原子は何倍の質量
かという数値として示した。すぐに触れるように、原子量を測るには物質の化学式が必要
になるが、それがあいまいであったため、ドルトンの原子量は不正確であった。
その後ベルセリウリスが正確な計測を行い、やがて酸素が他の原子と化合物をつくりや
すいということで、酸素原子を基準にする原子量が使われた。それは
「酸素原子の質量を16とすると、その原子の質量はいくつかという数値」
である。
その利点のひとつは、そうすると水素の原子量が1になることであった。 原子量の基準
は時代と共にさらに変化していく。現在の基準については後で紹介するが、酸素原子の質
量を16とする基準は、それと0.005%以下の違いしかなく実質的には同じ基準と見な
せる。そしてこの基準は、化学実験を通して原子量を測ることができるという教育的利点
がある。なお原子量には単位を付けないことに注意しよう。
[2]それではどのようにして原子量は測ることができるのだろうか。現在の私たちは、
正しい化学式を使ってそれを測ってみよう。
実験1では、銀色のマグネシウムの小粒を空気中の酸素と化合させて、白色の酸化マグ
ネシウムにした。あるデータでは、0.253gのマグネシウムから0.419gの酸化マ
グネシウムが生成した。
まずマグネシウム0.253gと化合した酸素は
0.419−0.253 = 0.166
0.166gであり、化合物の中でマグネシウムの質量は酸素の質量の
0.253/0.166 = 1.524 倍
である。
他方で酸化マグネシウムの化学式は MgO であり、マグネシウム原子と酸素原子の個
- 8 -
数比は1:1であることを示す。したがってマグネシウムの原子量は、酸素原子の原子量
を16とすると
16×1.524 = 24.4
となる。
ちなみに正確な数値は24.305である。
[問1]自分のデータから、マグネシウムの原子量を求めてみよ。
[3]実験2では、十分な量の希塩酸にマグネシウムリボンを投入して発生する水素をメ
スシリンダーに捕集した。あるデータでは、0.158gのマグネシウムから、水温14℃
の下で(多少の誤差は許すとして、大気圧は平均値の101.3KPa(キロパスカル)と見
なす)、158mL(ミリリットル)=0.158L(リットル)の水素が発生した。
反応式は次のようである。
Mg + 2HCl ―→ H2 + MgCl2
塩酸 塩化マグネシウム
発生する水素の化学式(より細かくは分子式)は H2 であり、これは水素が、水素原子2
個が結合した水素分子からできていることを示す。反応式は、マグネシウム原子1個が反
応して水素分子1個が生成することを示す。つまりマグネシウム原子1個から水素原子2
個ができる。
したがって発生する水素の質量と反応するマグネシウムの質量の比
水素の質量/マグネシウムの質量
は、水素の原子量がマグネシウムの原子量の何倍かという数値の2倍になる。
[4]密 度
ちょっと待て! 水素の量は体積で計測した。密度を使って質量に換算する必要がある。
通常は気体の密度は
「体積1Lあたり、質量は何gか」
を表す。その単位はg/L(グラム毎リットル)である。
しかし気体は温度や圧力によって体積が大きく変化してしまう。上に書いたように圧力
は101.3KPaとする。その場合に、いくつかの温度における水素の密度のデータを上
げる。
水素の密度(101.3kPaの下 単位:g/L)
0℃ 5℃ 10℃ 15℃ 20℃ 25℃
0.0899 0.0883 0.0868 0.0853 0.0838 0.0824
これから14℃における密度は0.0856g/Lである。
- 9 -
つまり水素は体積1Lが、質量0.0856gである。そして
2Lが、 (0.0856×2=)0.1712g
したがって質量は次のように計算できる。
質量 = 密度×体積
だから発生した水素の質量は
0.0856×0.158 = 0.01352
0.0135gとなる。
参考:次のように計算することもできる。
密度0.0856g/Lから、1Lが0.0856g
2Lが(0.0856×2=)0.1712g
したがって体積と質量の比は一定である。水素の質量を x[g] とすると
1/0.0856 = 0.158/x
x = 0.0135
なお別解は毎回は示さない。
メスシリンダーで捕集した水素にはいくらか水蒸気も含まれ、正確な水素の質量はいく
らか小さいが無視する。
[5]これで[3]項の続きができる。発生する水素の質量と反応するマグネシウムの質
量の比は
0.01352/0.158 = 0.08557
となるので、水素の原子量は
24.3×(0.08557/2) = 1.04
となる。
ちなみに正確な数値は1.0079である。
[問2]自分のデータから、水素の原子量を求めてみよ。
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2.原子量と式量
[a]原子量を測る(その2)
[1]もうすこしチャレンジを続ける。実験3では、ある質量の硫酸を含む水溶液にマグ
ネシウムリボンが何gまで反応するかを計測した。あるデータでは、98%の濃硫酸
0.905gを含む水溶液が、0.220gのマグネシウムと反応した。
反応式は次のようである。
- 10 -
Mg + H2SO4 ―→ H2 + MgSO4
硫酸 硫酸マグネシウム
硫酸の化学式(分子式)H2SO4 から、硫酸分子は水素原子 H 2個、硫黄原子 S 1個、
酸素原子 O 4個からできている。反応式から、マグネシウム原子 Mg 1個が硫酸分子
H2SO4 1個と反応する。
求めたいのは硫黄 S の原子量である。
[2]パーセント濃度
ここで、反応した硫酸自身の質量を計算するためにパーセント濃度を勉強する。正確に
は質量パーセント濃度と言い
「溶液100gあたり、溶質が何g含まれるか」
を表す。その単位は%(パーセント)である。ここで溶質とは溶けている物質、溶媒とはそ
れを溶かしている物質、そして溶液はその全体を指す用語であることに注意する。ちなみ
にパーセント(per-cent)とは「100あたり」という意味である。
濃硫酸のパーセント濃度98%から
溶液100gでは、硫酸の質量が98g
200gでは、 (98×2=)196g
300gでは、 (98×3=)294g
・・・
したがって硫酸の質量は次の関係式で計算できる。
硫酸の質量 = パーセント濃度×(溶液の質量/100)
だから濃硫酸0.905gに含まれる硫酸の質量は
98×(0.905/100)= 0.887[g]
となる。
[3]分子量と化学式量
分子量の定義にも触れよう。それは
「酸素原子の質量を16とすると、その分子の質量はいくつかという数値」
である。つまり原子量と同じ基準で、分子の質量を表すのである。それなら原子量をたし
算すればよい。水素 H2 の分子量は
1.0×2=2.0
である。
分子にならない物質もあるので、考えを化学式量あるいは単に「式量」と呼ばれるもの
に進めよう。これは
「酸素原子の質量を16とすると、その化学式1個の質量はいくつかという数値」
である。考え方は同じである。たとえば酸化マグネシウムは分子にならない。そして
MgO 1個の式量は
- 11 -
24.3+16.0 = 40.3
である。
[例題1]次の物質の式量を計算せよ。原子量は次の数値を使え。
H=1 C=12 N=14 O=16 Na=23 Cl=35.5
Ca=40 Ag=108
@水 H2O
A窒素 N2
Bブドウ糖 C6H12O6
C塩化ナトリウム NaCl
D硝酸銀 AgNO3
E水酸化カルシウム Ca(OH)2
(答)@18 A28 B180
C58.5 D170 E74
[4]これで[1]項の続きができる。0.887gの硫酸自身が0.220gのマグネシ
ウムと反応したのである。したがって硫酸の質量とマグネシウムの質量の比は
0.887/0.220
となる。
すでに学習したように、Mg 1個が H2SO4 1個と反応する。したがって H2SO4
の分子量は
24.3×(0.887/0.220) = 98.0
となる。
硫黄の原子量を x とすると
1.0×2 + x + 16.0×4 = 98.0
x = 32.0
となる。
ちなみに正確な数値は32.06である。
[問3]自分のデータから、硫黄の原子量を求めてみよ。
[b]化学反応式
ここで、すでに一部出てきているが化学反応式について整理しておこう。化学反応式は
反応物質と生成物質を化学式で表し、プラス + と 矢印 ―→ で結んだものである。これ
- 12 -
は単に反応式とも呼ばれ、物質の化学式が正しく書ける、そして化学式の成り立ちが分か
ることが前提である。
反応式では、関係するすべての原子の個数が増減しないように書く。それは化学反応で
は原子は不滅であることに基づいている。原子の不滅はドルトンの原子説の重要な内容で
あり、ラボアジェの質量保存の法則を裏付けている。
たとえば水素と酸素が化合して水が生成する反応式を、化学式に置き換えるだけで次の
ように書いたとする。
H2 + O2 ―→ H2O
このままでは水素分子1個と酸素分子1個が反応して水分子1個がで生成することを意味
する。しかしそれでは、反応前には2個あった酸素原子が、反応後には1個になってしま
う。そこで化学式の個数(「係数」と呼ばれ化学式の前に大きい数字で書く)を次のよう
に変える。
2H2 + O2 ―→ 2H2O
これなら反応の前後で、水素原子が4個のまま、酸素原子が2個のままになる。なおすべ
ての係数を2倍、3倍しても原子の不滅は成り立つが、もっとも簡単なものを書くことに
なっている。
[例題2]次の反応式に係数を付けて完成せよ(1は書かない)。
@( )Al +( )O2 ―→( )Al2O3
A( )Na +( )H2O ―→( )NaOH +( )H2
B( )HCl +( )Ca(OH)2 ―→( )CaCl2 +( )H2O
(答)@4Al +3O2 ―→ 2Al2O3
A2Na +2H2O ―→ 2NaOH + H2
B2HCl + Ca(OH)2 ―→ CaCl2 + 2H2O
このように係数を付けることは、ほとんどの場合に原子の不滅に基づけばできてしまう。
備考:硫酸酸性の過マンガン酸カリウムと過酸化水素の反応式の係数は、原子の不滅だけ
では確定しない。
係数は反応する物質どうしや生成する物質の個数関係を示す。たとえば水素 H2 2個と反
応するのは酸素 O2 1個であり、そのとき水 H2O 2個が生成する。このように反応に
係わる物質の個数関係が導けるのは、原子説の大きな成果である。
[c]現代の原子量
[1]ドルトンはそれぞれの元素はただ1種の原子からできていると考えた。しかし現在
では数種の同位体の混合物であることが分かっている。たとえば炭素では
- 13 -
炭素12 98.89%
炭素13 1.11%
となっている。そしてまた質量分析器という装置が発達して、同位体の質量とその自然の
存在率などが正確に計測できるようになった。
そこで現在では、原子量の基準は
「炭素12の質量を12とすると、他の原子の質量がいくつかという数値」
として定義されることになった。そして同位体の混合物であるそれぞれの原子の原子量は、
同位体の原子量をその存在率を考慮して平均して求められるようになった(講座プラン
「元素と原子の発見」の6節[b]を参照)。たとえば炭素の原子量は12.011である。
また酸素の原子量は15.9994であり、これまでのように16としても実際的に問題は
ない。
ほとんどの場合に同じ原子の同位体は化学的な性質には差がないので、含まれる同位体
を考慮して平均した原子量を使う。実際の数値は巻末資料の「原子量」を参考にする。
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3.物質量
[a]物質量
[1]物質の量を扱うとすると、米5kgとか牛乳1Lのように、質量や体積を思い浮か
べる。もちろんこれらも有用であるが、学術的には mol(モル)という単位を持つ物質
量というものを使うのが合理的である。その意味を学習しよう。
酸素の原子量は16である。それなら、酸素16gにはいくつの酸素原子が含まれるだ
ろうか。原子は光学顕微鏡でも観察できないので、それはさぞかし大きな数値であろう。
これはアボガドロ定数と呼ばれるが、後で実験により計測してみよう。
さてそれなら、酸素16.00gに含まれる酸素原子の個数と、炭素12.01g(
12.01は炭素の原子量)に含まれる炭素原子の個数には、どんな関係があるだろうか。
@酸素原子の個数の方が大きい
A炭素原子の個数の方が大きい
B両方の個数は等しい

- 14 -
正解はBである。
水 H2O の式量(分子量)は18である(簡単のため厳密な数値は使わない)。それで
は酸素16gに含まれる酸素原子 O の個数と、水18gに含まれる H2O の個数すなわ
p
ち水分子の個数についてはどうだろうか。あるいは酸化マグネシウム MgO の式量は
40.3である。酸化マグネシウム40.3gに含まれる MgO の個数についてはどうだ
ろうか。
正解は「すべての個数は等しい」である。
[2]それなら、物質の量を測るのに「この個数」(アボガドロ定数)だけの量を単位に
してはどうだろうか。その単位が mol(モル)である。物質は原子や分子などの粒から
できているので、同じ個数を同じ量であると捉えるのである。
1molとはアボガドロ定数だけの個数の物質である。より厳密には現代の原子量の定
義を踏まえて、1molとは
「炭素12という同位体12gに含まれる原子数に等しい個数の物質の量」
である。
物質量は、国際単位系(SI)で選ばれた7種の基本単位のひとつである。
[3]ここでひとつ注意をする。酸素原子1molと酸素分子1molの質量は同じであ
ろうか。否である。酸素16gには酸素原子 O は1mol含まれる。しかし酸素分子
O2 は0.5molしか含まれない。酸素分子の個数を問題にするなら、その式量(分子
量)である32を元に考え、32gが酸素分子1molになるのである。「どの粒に注目
しているか」これをあいまいにすると、とんでもない間違いを犯す。だから考えるときは、
常に化学式を意識するとよい。
[b]モル質量
[1]モル質量とは
「物質量1molあたり、質量が何gか」
を表す。その単位は g/mol(グラム毎モル)である。これはもう簡単である。その数値
は原子量や式量である。まとめると次のようである。
モル質量は(原子量や式量)g/mol <1>
つまり酸素原子 O のモル質量は16g/mol、酸素分子 O2 のモル質量は32
g/mol、水分子 H2O のモル質量は18g/mol、酸化マグネシウム MgO のモル
質量は40.3g/molというようである。
言うまでもなくモル質量は、原子量や式量と同じように、それぞれの物質1粒の質量の
大小関係を正確に表している。
実験4では、1molの、硫黄原子 S 、水分子 H2O 、ブドウ糖分子 C6H12O6 、
塩化ナトリウム NaCl を、モル質量を頼りに測り取った。
- 15 -
[c]アボガドロ定数
[1]実験5では、わずかなステアリン酸を水面に広げて、その面積を計測した。あるデ
ータでは、ヘキサン溶液0.5mL=0.5cm3が25滴であり、膜の面積が482cm2
になった。単純に考えて、ステアリン酸分子は立方体でありそれが水面に並ぶと仮定しよ
う。
まずステアリン酸分子の大きさ(立方体の辺の長さ)を求める。ヘキサン溶液を20滴
垂らしたが、その体積は
0.5×(20/25) = 0.4
0.4cm3である。それに含まれるステアリン酸の体積は、実験における説明のように
0.4×(1/3300) = 0.00012
0.00012cm3である。したがって薄い膜の厚みは、体積を面積で割って
0.00012/482 = 0.00000025
0.00000025cm=2.5×10-7cmとなる。つまりこれが分子の大きさである。
また分子の体積(立方体の体積)は
(2.5×10-7)3=1.6×10-20
1.6×10cm3となる。
こうして実験によって、ステアリン酸分子のおおまかな大きさを計り、体積を求めるこ
とができたのである。
参考:指数の計算例
1000 = 103
0.01 = 1/100 = 1/102 = 10-2
1/10-8 = 108
102×103 = 105
103×10-4 = 10-1
(102)3 = 106
(10-8)3 = 10-24
[2]次に本題のアボガドロ定数である。ステアリン酸 C17H35COOH の分子量は
284であり、そのモル質量は284g/molである。そしてすでにステアリン酸の密度
を1g/cm3としており、1molの体積は、つまりアボガドロ定数だけの個数のステア
リン酸分子が占める体積は284cm3である。したがってアボガドロ定数は
284/1.6×10-20 = 1.8×1022
となる。
正確な数値は
アボガドロ定数は6.0220×1023個/mol <2>
- 16 -
である。指数を使わないで表現すると
602200000000000000000000
6022垓(がい)となる。
実験を振り返ると、指数計算が難しかったかもしれないが、これほど簡単にアボガドロ
定数の見当が付けられるのは興味深い。
目次へ
4.モル量
[a]モル体積
[1]一般にモル量とは
「物質量1molあたり、どれだけの量か」
という数値のことである。すでにモル質量を勉強した。
モル体積とは、固体や液体では
「物質量1molあたり、体積が何cm3か」
を表す。その単位は cm3/mol(立方センチメートル毎モル)である。すでに実験5で
ステアリン酸のモル体積の近似値を扱った。
参考:講座プラン「元素と原子の発見」の実習「メンデレーエフの周期表」の中の原子容
は、現代の用語に直すと元素のモル体積である。
ここでは気体の場合を学習する。そのモル体積は
「物質量1molあたり、体積が何Lか」
を表す。その単位は L/mol(リットル毎モル)である。これは気体の密度から計算でき
る。
[2]1節[4]では、温度0℃、圧力101.3kPaの下で水素の密度が0.0899
g/Lであることを示した。水素の分子量は
1.01×2 = 2.02
であり、水素分子のモル質量は2.02g/molとなる。したがって1molつまり
2.02gの体積を計算すればよい。
密度0.0899g/Lから、0.0899gが1Lである。
(0.0899×2=)0.0178gが2L
∴ 2.02/0.0899 = 22.46・・・
22.5Lである。だからモル体積は22.5L/molである。
[問4]次はいくつかの気体の0℃、101.3kPaの下での密度と分子量である。
@窒素 N2 1.25g/L 28.0
Aヘリウム He 0.178 4.00
B二酸化炭素 CO2 1.96 44.0
- 17 -
このデータを使って、それぞれの気体の0℃、101.3kPaの下でのモル体積を計算せ
よ(答は小数1位まで)。
(答) @22.4L/mol A22.5L/mol B22.4L/mol
[3]問2の結果は、どれも水素のモル体積と同じになる。これはアボガドロの法則、つ
まり
「気体は、同温、同圧の下で、同体積中に同数の分子を含む」
ことを、0℃、101.3kPaの場合で確認したのである。ちなみにこの法則は「同数の
分子は同体積を占める」とも言える。ちなみにヘリウムは一原子分子である。
温度0℃、圧力101.3kPaというのは「標準状態」と呼ばれてよく使われる。より
正確な数値は次のようである。
標準状態における気体のモル体積は22.41L/mol <3>
[b]モル比熱
[1]単に比熱と言うと、それは
「その物質1gの温度を1℃上げるとき得る熱エネルギー量」
を表す。物質の質量が大きいほど、また上げる温度幅が大きいほど、必要とする熱エネル
ギー量が大きいのである。これは物質1gの温度を1℃下げるとき失う熱エネルギー量で
もある。つまり比熱は
「質量1gあたり、温度1℃あたり、熱エネルギー量が何J(ジュール)か」
を表す。J(ジュール)は、熱エネルギーを含めてエネルギー全般の量を表すための単位で
ある。比熱の単位は J/g℃(ジュール毎グラム毎度) になる。
備考:絶対温度を学習する前は、J/gK という単位は使わない。
なお同じ物質でも比熱は、温度が大きく異なると変化するが、ここではそれが無視でき
るような比較的せまい温度範囲を扱う。
[2]実験6では、常温の水100ml=100cm3つまり100gに、100℃の1円
玉(アルミニウム)100gを投入した。あるデータでは、20.3℃の水の温度が
35.0℃まで上昇した。
まずアルミニウムの比熱を求めよう。水の比熱は4.2J/g℃である。水に関しては
1gを1℃上げるなら、 4.2J
2gを1℃上げるなら、4.2×2= 8.4J
2gを3℃上げるなら、8.4×3=25.2J
- 18 -
したがって必要な熱エネルギー量は次のように計算できる。
熱エネルギー量 = 比熱×質量×温度幅
比熱に質量と温度幅の両方をかけ算することを理解するのがポイントである。
だから水が得た熱エネルギー量は、温度上昇が14.7℃であるので
4.2×100×14.7 = 6174
6170Jとなる。
他方でアルミニウムが失った熱エネルギー量は、アルミニウムの比熱を x[J/g℃]と
すると、温度下降が65.0℃であるので、
x×100×65.0 = 6500x
エネルギー保存の法則から両者は等しいので、次の方程式が成り立つ。
6500x = 6170
これを解いて
x = 0.95
0.95J/g℃となる。
[3]次に本題のモル比熱である。これは
「その物質1molの温度を1℃上げるとき得る熱エネルギー量」
を表す。つまり
「物質量1molあたり、温度1℃あたり、熱エネルギー量が何Jか」
を表す。その単位は J/mol℃(ジュール毎モル毎度)である。
備考:モル比熱でなく、正確にはモル熱容量と呼ぶべきである。
すると比熱とモル比熱の違いは、1gあたりか、1molあたりかである。アルミニウ
ムのモル質量は27.0g/molであるので、そのモル比熱は
0.95×27.0 = 26
26J/mol℃である。
実験6の残りでは、あるデータは、10円玉(銅)180gは、19.8℃から32.2
℃まで上昇した。おもり(鉛)390gは、19.6℃から27.6℃まで上昇した。これ
から同じように計算すると、モル質量は銅が63.5g/mol、鉛が207g/molであ
るので
比熱[J/g℃] モル比熱[J/mol℃]
アルミニウム 0.95 26
銅 0.43 27
鉛 0.14 29
となる(アルミニウムも含めて)。
[問5]自分のデータから、アルミニウム 、銅、鉛のモル比熱を計算せよ。
- 19 -
[4]問5の結果から、金属のモル比熱はほぼ等しいと推測される。これはデュロン・プ
ティの法則と呼ばれる。より正確な数値は次のようである。
アルミニウム 23.7J/mol℃
銅 24.1
鉛 26.1
以上のように、物質量を使ってモル量を求めることは意味がある。
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5.現代の化学量論
[a]化学量論
[1]化学量論とは、化学に関係する量をどのように扱うかという理論である。現代の化
学量論は、50年前と比べても格段に進歩してきた。ここでは化学式や反応式に関係する
化学量を学習する。
これまでに学習した必要事項をまとめると次のようである。
@アボガドロ定数は6.0220×1023個/mol <2>
Aモル質量は(原子量や式量)g/mol <1>
B標準状態における気体のモル体積は22.41L/mol <3>
(0℃、101.3kPa)
参考:通常は22.4L/molとして計算する。
Cアボガドロの法則
[例題3]メタン(天然ガスの主成分)は酸素と次のように反応して二酸化炭素と水を生
成する。
CH4 + 2O2 ―→ CO2 + 2H2O
メタン
(1)メタン0.2molと反応する酸素は何molか。またそのとき何molの二酸化炭
素と水が生成するか。
(2)メタン6gが燃焼すると何g(答は小数1位まで)の二酸化炭素が生成するか。ま
たそのとき必要な酸素は0℃、101.3kPaの下で何L(答は有効数字3桁で)か。
(原子量:H=1 C=12 O=16)
(解)(1)について
反応式は関係する物質(化学式)の個数関係を係数として明示しており、粒子の
個数が同じなら同じ物質量である(@より)ので、反応式から
CH4 1molと O2 2molが反応し、そのとき CO2 1molと
- 20 -
H2O 2molが生成する
と分かる。
したがって直ちに
反応する酸素 0.4mol
生成する二酸化炭素 0.2mol
生成する水 0.4mol
となる。
(2)の前半について
CH4 1molから CO2 1molが生成することを利用する。
@まずメタン6gは何molか。
モル質量16g/molから(Aより)
質量16gが、物質量1mol
(16×2=)32gが、2mol
∴ 6/16 = 0.375
0.375molである。
参考:@の別解
質量と物質量の比は一定であるから、メタンの6gの物質量を x[mol] とする
と
16/1 = 6/x
x = 0.375
A次に CH4 0.375molから CO2 が何mol生成するか。
(1)で解いたように反応式の係数から、スピィディに
0.375molである。
Bそして CO2 0.375molは何gか。
モル質量44g/molから、1molが44g
2molが(44×2=)88g
∴ 44×0.375 = 16.5
16.5gである。
(2)の後半について
CH4 1molが O2 2molと反応することを利用する。
@略
A CH4 0.375molに、必要な O2 は(0.375×2=)0.75mol
B標準状態における気体のモル体積22.4L/molから(Bより)
O2 1molが22.4L
2molが(22.4×2=)44.8L
- 21 -
∴ 22.4×0.75 = 16.8
16.8Lである。
[2][例題3]を踏まえて、現代の化学量論の基本をまとめておこう。
@スタート物質を物質量に換算する。
A化学式や反応式から、ゴール物質の物質量を見い出す
Bゴール物質を必要とする量に換算する
この3段階である。段階Aは物質量を使うので、スピィディに答が得られる。これは物質
量が合理的な理由である。肝心な部分は物質量で考えるのである。
慣れてくれば問題に応じてもっと要領よく解ける場合もあるだろう。計算を最後にまと
めて行うこともできるし、方程式を活用することもできる。
くり返し注意する。これまでにモル質量、モル体積を始め、密度、パーセント濃度、比
熱、モル比熱などの量が出てきた。これらを計算するための「公式」を覚えることは止め
よう。その量の意味を単位を参考に考え、それからどのように計算すべきかを導こう。こ
のような地道な訓練を続けてこそ、比例概念が育つのである。
[3]原子量を測る実験は、見方を変えると、上の化学量論の確認実験になっている。例
えば実験1では、引用したあるデータによれば(1節[2]を参照)、マグネシウム
0.253gが酸素と化合すると何gの酸化マグネシウムが生成するか、という実験になる。
(原子量:O=16.0 Mg=24.3)
反応式は次のようである。
2Mg + O2 ―→ 2MgO
@ Mg のモル質量24.3g/molから、その物質量は
(0.253/24.3)mol
であり、
A反応式より、Mg 1molから MgO 1molが生成するので
生成する MgO も(0.253/24.3)molである。
B MgO のモル質量40.3g/molから、その質量は
40.3×(0.253/24.3) = 0.420
0.420gになるはずである。
この計算値は実際の0.419gとよく一致している。
実験2,3についても、自分で考えて確認してみよう。
[b]演習問題
[1]亜鉛1gに十分な量の希硫酸を加えると、0℃、101.3kPaの下で何Lの水素
が発生するか。またそのとき反応する硫酸は何gか(どちらも答は小数2位まで)。(原
子量:H=1 O=16 S=32 Zn=65) 反応式は次のようである。
- 22 -
Zn + H2SO4 ―→ H2 + ZnSO4
硫酸 硫酸亜鉛
[2]1kgの酸化鉄 Fe2O3 を製錬する(還元する)と、最大で何gの鉄が得られる
か(答は整数で)。(原子量:O=16 Fe=56)
ヒント:Fe2O3 1molから、Fe 2molができる。
[3]純度不明の炭酸カルシウム(石灰岩)1.22gに十分な量の希塩酸を加えたら、標
準状態において185mLの気体(二酸化炭素)が発生した。反応式は次のようである。
CaCO3 + 2HCl ―→ CaCl2 + H2O + CO2
炭酸カルシウム 塩酸 塩化カルシウム
炭酸カルシウムのパーセント濃度を求めよ(答は整数で)。ただし不純物は塩酸と反応し
ないものとする。(原子量:C=12 O=16 Ca=40)
ヒント:含まれる CaCO3 が x[g]として方程式を立てよ。純度はその上で計算する。
[4]空気中で無声放電すると、次の反応で酸素の一部がオゾンに変化する。
3O2 ―→ 2O3
空気1000mLが、無声放電によって全体の体積が970mLになった。このとき生成
したオゾンは何mLか。体積の計測はオゾンを含めすべて同温同圧の下で行うとする。
ヒント:アボガドロの法則を使う。体積減少に注目する。
[b']解答
[1]水素の発生量
@Zn のモル質量65g/molから
65gが1mol
(65×2=)130gが2mol
∴ (1/65)mol反応
- 23 -
A 反応式より、Zn 1molから H2 1mol
∴ H2 が(1/65)mol発生
B H2 のモル体積(標準状態で)22.4L/molから
1molが22.4L
2molが(22.4×2=)44.8L
∴ 22.4×(1/65) = 0.34
答 0.34L
硫酸の反応量
A 反応式より、Zn 1molと H2SO4 1molが反応
∴ H2SO4 が(1/65)mol反応
B H2SO4 のモル質量98g/molから
1molが98g
2molが(98×2=)194g
∴ 98×(1/65) = 1.51
答 1.51g
[2]@ Fe2O3 のモル質量160g/molから
160gが1mol
(160×2=)320gが2mol
∴ (1000/160)mol存在
A化学式より、Fe2O3 1molから Fe 2mol生成
∴ Fe が(1000/160)×2mol生成
BFe のモル質量56g/molから
1molが56g
2molが(56×2=)112g
∴ 56×(1000/160)×2 = 700
答 700g
[3]含まれる CaCO3 が x[g]とする。
@ CaCO3 のモル質量100g/molから
100gが1mol
(100×2=)200gが2mol
∴ (x/100)mol存在
A反応式より、CaCO3 1molから CO2 1mol発生
∴ CO2 が(x/100)mol 発生
B CO2 のモル体積(標準状態)22.4L/molから
1molが22.4L
- 24 -
2molが(22.4×2=)44.8L
∴ 22.4×(x/100)L発生
他方で、発生した CO2 が185mL=0.185L
方程式をつくって
22.4×(x/100) = 0.185
x = 0.8259・・・
CaCO3 が0.826g存在
パーセント濃度は、溶液100gあたり溶質が何g含まれるか
(全体) (注目部分)
全体1.22gに、CaCO3 が0.826g
100gに、y[g] 含まれるとして
全体と炭酸カルシウムの比を変えないように計算すべきなので
1.22/0.826 = 100/y
y = 67.7・・・
答 68%
[4]「同温同圧の下で」に注目し、アボガドロの法則を使う(C)。
反応式より、O2 3molから O3 2molが生成
この条件の下での気体のモル体積を V[L] とすると
O2 3V[L] から、O3 2V[L] が生成、そして体積は V[L] 減少
つまり
体積が V[L] 減少すると、O3 2V[L] が生成
これは一般的に成り立つので
(1000−970)×2 = 60
答 60mL
参考文献
・McGlashan著「SI単位系と物理・化学量」(化学同人)
巻末参考
単位について
比例計算
数値の誤差と計算
- 25 -
巻末参考へ
12.1
林 正幸
単位について
[1]量を表すには、基準になる単位と、その何倍かを示す数値が必要である。たとえば
1m(メートル)という単位がどれだけの長さかが定義されていれば、その3倍の長さは3
m、その4.5倍の長さは4.5mとなる。
[2]単位は時代や国によって変わってきたが、現在は国際単位系(SI単位系)が普及
している。それは次のような独立の7つを基本単位としている。
長さ m(メートル)
質量 kg(キログラム)
時間 s(秒)
電流 A(アンペア)
温度 K(ケルビン)
物質量 mol(モル)
光度 cd(カンデラ)
このうち温度は正確には熱力学的温度( T で表す)と呼ばれ、摂氏温度 t[℃] と次
の関係がある。
T = t+273.15 (通常は T = t+273 でよい)
注意すべきは、1℃と1Kの幅は一致することである。これについては講座プラン「気体
状態」で学習する。
また物質量は物質の量を表すが、講座プラン「原子量と物質量」でくわしく説明する。
[3]基本単位を組み合わせて様々な誘導単位が作られる。面積の単位は、縦横が1mの
正方形の面積を基準にして1m2(平方メートル)と表す。面積は長さを2つかけ算するので、
単位もそのように表される。また体積は縦横高さが1mの立方体を基準にして1m3(立方
メートル)と表す。
ここで非SI単位であるリットル[L]に触れておく。
1L = 1dm3(立方デシメートル)
参考:dm(デシメートル)については後で説明する。
と定義されているので、1dm3と表現すればよいのだが、あまりによく使われているので
dm3 の代用として一応認められている。化学でも L はよく使うが、学術的には dm3
に置き換えて考えるべきである。
組み合わせにわり算が関係することもある。たとえば密度は単位体積あたりの質量であ
る。具体的には1m3あたり何kgか、などが使われる。常温では水2m3は2000kg
- 1 -
である。すると密度は
2000kg/2m3 = 1000kg/m3
となる。この場合の密度の単位は kg/m3 であり、単位にわり算を意味する /(スラッ
シュ)が含まれる。
参考:講座プランでは半角のスラッシュを使うが、全角(/)を使ってもよい。
なお負の指数を使って、kgm-3 と表すこともできる。
誘導単位は、いちいち基本単位を組み合わせて書くのが面倒なので、新しい名称が使わ
れることも多い。たとえば1kgの物体に1m/s2の加速度を生じさせる力は
1kg×1m/s2 = 1kgm/s2
であり、この場合の単位は kgm/s2 である。この誘導単位は N(ニュートン)と名付け
られる。つまり
1N = 1kgm/s2
である。
参考:力は、質量と加速度をかけ算したものである(運動の第2法則)
[4]基本単位や名称を与えられた誘導単位には接頭語を付けることができる。たとえば
100000mと書く代わりに100km(キロメートル)と書く。この k(キロ) が接頭
語であり、1000倍を意味する。
1km = 1000m
だから1300Nは1.3kN(キロニュートン)と書ける。ただし質量だけは基本単位に
k が付いているので、1000kgを1kkg(キロキログラム)とは書かない。
参考:質量の基本単位を g(グラム)とすべきかもしれないが、歴史的経過があり変えら
れない
上に出てきた dm の d(デシ)も接頭語であり、10分の1(1/10倍)を意味する。
1dm = 0.1m
接頭語をまとめておく。
10=101倍 da(デカ)
100=102 h(ヘクト)
1000=103 k(キロ)
106 M(メガ)
109 G(ギガ)
10分の1=1/10= 1/101倍 d(デシ)
100 〃 =1/100= 1/102 c(センチ)
1000 〃 =1/1000= 1/103 m(ミリ)
1/106 μ(マイクロ)
1/109 n(ナノ)
- 2 -
これで上の1000kgは、1Mg(メガグラム)と書くべきことが分かる。
参考:Mg を t(トン)で代用することは一応認められている。
1mm(ミリメートル)= 0.001m
1cm(センチメートル)= 0.01m
だから
1cm = 10mm
となる。また
1g = 0.001kg
1mg = 0.000001kg
である。
接頭語によって、自分に使いやすい単位を作ることができる。
[5]最後に単位の換算に触れておく。たとえば1m2が何cm2かを換算したいとする。
1m = 100cm
であるので
1m2 = (100cm)2 = 10000cm2
というように、単位を含めた計算をすればよい(単位は数学の文字式の文字と捉える)。
あるいは1m3が何L(=何dm3)かは
1m = 10dm
1m3 = (10dm)3 = 1000dm3 = 1000L
となる。
また1mL(=0.001L)は何cm3かは
0.001L = 0.001dm3
1dm = 10cm
0.001dm3 =0.001(10cm)3
= 0.001×1000cm3 = 1cm3
∴ 1mL = 1cm3
となる。
- 3 -
巻末参考へ
12.1
林 正幸
比例計算
比例計算は科学の基礎である。にもかかわらず、比例計算が苦手な生徒が多い。大切な
のは、公式を丸暗記してごまかすのではなく
@計算に出てくる量の意味を理解し
A単位に注目し
Bその都度よく練習する。
ことである。実験と結び付け、実感が湧くように学習するのが有効である。
[1]小学校で出会う比例計算は次のようである。
「1分で80m歩く人がいる。3分で何m歩くか。」
(解)3分は1分の3倍だから、歩く距離も3倍になるので
80×3 = 240
答 240m
つまり
1:3 = 80:240
である。この計算ができない高校生はまれである。
[2]中学校になると次のようである。
[a]「速度80m/分で歩く人がいる。6分で何m歩くか。」
(解)速度80m/分の意味は、単位に注目して、時間1分あたり、距離80m歩くという
ことである。これから
時間1分で、距離80m歩く。
だったら
2分で、(80×2=)160m歩く。
3分で、(80×3=)240m歩く。
・・・
それなら距離は速度に時間をかけ算すれば求まる!
80×6 = 480
答 480m
付け加えて、単位を同じように計算してみよう。
(m/分)×分 = m
- 1 -
距離の単位になるので、計算法は正しい。
[b]「速度80m/分で歩く人がいる。280m歩くのに何分かかるか。」
(解)速度80m/分から
距離80m歩くのに、時間1分かかる。
だったら
(80×2=)160m歩くのに、2分かかる。
(80×3=)240m歩くのに、3分かかる。
・・・
2 = 160/80
3 = 240/80だから
それなら時間は距離を速度でわり算すれば求まる!
280/80 = 3.5
答 3.5分
単位を同じように計算すると
m/(m/分) = 分
となって計算法は正しい。
(別解)ここで異なる考え方で解いてみよう。
[a]や[b]の解の始めから、時間と距離の比、あるいは距離と時間の比は一
定であることに気付く。
時間/距離 = 一定 距離/時間 = 一定
そして後者の「一定」の数値が速度である。
どちらでもよいが、ここでは後者を利用して見よう。
280m歩くのに x[分] かかるとすると、次の方程式が成り立つ。
80/1 = 80 = 280/x
これを解いて
x = 3.5
答 3.5分
ここで3つ注意する。1つは、単位から計算法を探るようになると、これは公式の丸暗
記と同じことであり、比例概念は育たなくなる。
2つは、小数が出てきても、あるいは分数が出てきても、かけ算、わり算がきちんとで
きることである。高校では4.7×103などの指数を含む数値が出てくる。これを計算で
正しく扱えないと、比例計算の前提が整っていないことになる。
3つは、単位をそろえることである。たとえば上の問題で「1.6km歩くのに何分かか
- 2 -
るか」となっていたら
1.6/80 = 0.02
ではなく、1.6km=1600mだから
1600/80 = 20
と計算しないと意味がない。
[c]「400mを5分で歩く人がいる。この速度はどれだけか。」
(解)速度の定義は、単位時間あたりどれだけの距離を移動するか、問題に合わせると1
分あたり何m歩くかである。
これを理解していれば、速度は距離を時間でわり算すれば求まることが分かる。
400/5 = 80
答 80m/分
単位も同じように計算して
m/分
とすぐ分かる。誘導単位(「単位について」を参照)はこのように構成される。
[3]比例計算は[a]から[c]の3つのタイプしかない。数学では正比例の関係式は
y = kx
と至って簡単である。だから
[a]のように y を kx で求めるか
[b]のように x を y/k で求めるか
[c]のように k を y/x で求めるか
である。
なお [c]のように、速度の計算法が
速度 = 距離/時間
と分かれば、この式を数学的に変形して距離や時間を求めることもできる。しかし比例概
念を意識しないまま、数学に頼るやり方は勧められない。
ちなみに小学校での計算は次のようである。
x なら y であり、x' なら y’である。
だから
y = kx
y’= kx’
両式をわり算して
y/y’= x/x’
つまり比例定数 k を意識しないで計算していたのである。しかし高校ではそこに留まる
ことは許されない。
備考:上の式を変形すると
- 3 -
y/x = y'/x’
となるが、異なる量の比を考えることは飛躍である。当たり前のようにこの比例式
を使うと、混乱を招くと思われる([b]の別解を参照)。
[4]それでは化学でよく使う密度に関する下の問題を解いてみよう。
密度の定義は、ある物質に関して単位体積あたりどれだけの質量があるかである。ここ
では1cm3あたり何gかを扱うことにする。たとえば鉄とアルミニウムを例にしよう。目
の前の鉄の質量が30gで、アルミニウムの質量が50gであったとする。このことで鉄
よりアルミニウムの方が重いと捉えてどれだけの意味があるだろうか。物質の質量は、そ
の体積が大きいとそれに比例して大きくなる。だったら体積を1cm3にそろえて、そのと
きの質量を比べるのが合理的である。これが密度の意味である。
問1 鉄30gの体積が3.8cm3である。鉄の密度はいくらか。
問2 アルミニウムの密度は2.7g/cm3である。アルミニウム50gの体積は何cm3
か。
問3 空気の密度は平地では約0.00123g/cm3である。5m3の空気の質量は何
kgか。
(解答)
問1 この密度の定義は、1cm3あたり何gかである。
30/3.8 = 7.89・・ = 7.9
答 7.9g/cm3
問2 密度2.7g/cm3の意味は、2.7gが1cm3である。
だったら(2.7×2=)5.4gが2cm3
(2.7×3=)8.1gが3cm3
・・・
∴ 50/2.7 = 18.5・・ = 19
答 19cm3
問3 密度0.00123g/cm3の意味は
- 4 -
1cm3が0.00123gである。
だったら2cm3が(0.00123×2=)0.00246g
3cm3が(0.00123×3=)0.00369g
・・・
1m3=1000000cm3に注意して
∴ 0.00123×5000000 = 6150
つまり6150g
さらに1kg=1000g、つまり1g=1/1000kgに注意して
答 6.15kg
- 5 -
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11.2
林 正幸
数値の誤差と計算
[a]数値の誤差
[1]科学で扱う計測された数値には、誤差が含まれる。ただし多くの数値はかなり正確
に計測されている。たとえば銀の原子量は
Ag=107.868
である。しかしこれほど正確な数値が必要になることは少なく、通常は小数1位を4捨5
入して
Ag=108
という数値を使うことが多い。これから分かるように、最後の桁は±1くらいの誤差を含
む。
参考:+0.49から−0.50までの誤差を含むと言うべきかもしれないが、ここではそ
れは主要なことではない。
[2]実験で計測した数値には様々な誤差が含まれる可能性があるが、単純な場合は次の
ようである。たとえば100mLメスシリンダーで計測して、その体積が48.3mLであ
ったとする。このメスシリンダーの最小目盛りは1mLであり、通常はその1/10まで
読み取って計測値とする。したがって最後の桁は±1くらいの誤差を含むと考えられる。
参考:計測の経験が不足していると、もっと大きな誤差を伴い得るが、ここでは深入りし
ない。
だから計測値がちょうど50mLのときは、50.0mLと書くべきである。これを50
mLと表現すると、49mLから51mLまでの誤差を含む計測値と誤解される。もちろ
ん液面が泡だったりして正確な計測が困難な場合は、50mLという表現が適切になるこ
ともある。
[3]100kgまで計測できる体重計を使う場合を考える。この最小目盛りは1kgと
しよう。そしてこれで計測して0.3kgであったとする。これを300gと表現すると、
どういう問題があるだろうか。説明が無いと、±1gくらいの誤差を含むと誤解される。
だからこのような場合は次のように表現するとよい。
3×102g
物質1molに含まれる粒子数はアボガドロ定数と呼ばれる。通常は
6.0×1023
あるいは
6.02×1023
- 1 -
という数値を使う。前者を
6×1023
と表現すると、意味が違ってくる。最後の数値は
7×1023から5×1023までくらいの誤差を含むと誤解される可能性がある。
参考:正確なアボガドロ定数:6.0220×1023
[b]有効数字による計算
[1]誤差を含む数値を使った計算の結果に、どれくらいの誤差が含まれるかを見極める
ことには難しさが伴う。ここではもっとも大まかな考え方を紹介する。
有効数字とは、数値において意味のある数字のことである。また有効桁数とは、有効数
字の桁数のことである。上の例では次のようである。
数値 有効数字 有効桁数
108 108 3
48.3 48.3 3
50 50 2
300(3×102) 3 1
6.0×1023 6.0 2
6.02×1023 6.02 3
[2]加減法
加法や減法の計算をするときは、元になる数値の「有効数字の最後の桁の大きい方の
桁」が、結果の有効数字の最後の桁になる。たとえば次のようである。
4.76×103 + 58
4760
+) 58
4820(4.82×103)
5.348 − 0.2
5.34
−)0.2
5.1
元になる数値の「有効数字の最後の桁の大きい方の桁」より1桁下まで計算し、その結果
を4捨5入することに注意しよう。また正確な数値は、「有効数字の最後の桁の大きい方
の桁」より1桁下までの数値に丸めて計算すればよい。
[3]乗除法
乗法や除法の計算をするときは、元になる数値の「有効桁数の小さい方の桁数」が、結
果の有効桁数になる。たとえば次のようである。
- 2 -
0.02383 × 2.7
0.0238×2.7=0.06426
結果 0.064
7425 / 63
7430/63=117.・・・
結果 120(1.2×102)
元になる数値の「有効桁数の小さい方の桁数」より1桁多くまで計算し、その結果を4捨
5入することに注意しよう。また正確な数値は、「有効桁数の小さい方の桁数」より1桁
多いところまでの数値に丸めて計算すればよい。
[4]有効数字による計算には、粗さもある。最後の例で見てみよう。63は、±1くら
いの誤差を含む。これは
±1/63 = ±0.0158・・・
±1.6%の誤差を含む。これに対して1.2×102は、±0.1×102くらいの誤差を含
むことになる。これは
±0.1/1.2=±0.0833・・・
±8.3%の誤差を含むことになる。それなら結果は118と表現した方が良いかもしれな
い。これなら
±1/118=±0.0084・・・
±0.8%の誤差を含むことになり、この方が元の誤差に近い。
しかしそれを承知の上で、高校段階では有効数字による計算をすることにしよう。
[c]結果の有効桁数を指示する
[1]実際には化学では次のようなこともある。0.1mol/Lのシュウ酸水溶液を調製
する。化学天びんやメスフラスコを使い、できるかぎり正確に調製する。このような場合、
含まれる誤差や有効桁数が簡単には分からない。0.100mol/Lかもしれないし、
0.1000mol/Lかもしれない。そこでとりあえず0.1mol/Lと表現する。
このような水溶液を使い、たとえば中和滴定をする場合、結果を有効桁数いくつで表現
するかを指示することある。たとえば「結果は有効数字3桁で」とか「答は小数3位ま
で」というようにである。
[2]結果の有効桁数を指示するのは、有効数字にわずらわされ混乱してしまうことを避
けるために、教育的配慮から行うことも多い。また有効数字による計算の粗さをカバーす
るために行うこともある。
- 3 -
林 正幸と主万子の始めの
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