08.11
                                   林 正幸

 原子はどのように結合するか

     目 次
  
1.電気的引力
  2.原子価
  3.原子の構造
  4.化学結合
  5.量子力学
  6.分子間力

  実験、実習

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 これは講座プラン「元素と原子の発見」、たとえば組成式の決定や周期表など、を前提
にしている。

1.電気的引力

[a]原子説
[1]近代になると、目には見えないが物質が原子からできていることは確信になった。
それなら、原子はどのように結合するか。しかし原子はあまりにも小さく、他方で物質は
あまりにも多様で、始めは状況証拠に基づく追跡が右往左往しながら進んだ。その歴史か
ら始めよう。
[2]1808年に提唱されたドルトンの原子説は次のようにまとめられる。
・すべての物質はそれ以上分割できない原子と呼ぶ小さい粒からできている。
・それぞれの原子は特有の形と、決まった質量を持つ。
・元素(単体)は原子そのものである。
・化合物は原子が結合した分子からできている。
 しかしこの原子説に手がかりは無い。「それ以上分割できない」とは、原子がさらに細
かい部分を持たない、つまり原子には構造がないというわけだからである。
[b]電気分解
[1]1796年にボルタが電池を発明した。それまでは電気と言えば静電気である。こ
れに対して電池は電気を連続して流すことができ、また積み重ねれば(直列にする)高い
電圧も得られる。これを機に物質の電気分解が無数に実験されるようになり、原子の結合
には、正電気と負電気の電気的引力が関係していると感じ取られた。
 [2]実験1を簡単にまとめてみよう。
<塩化銅(U) CuCl2 水溶液>
 陰極では褐色の銅 Cu が析出した。陽極では気体が発生し、ステンレス板にヨウ化カ
リウム水溶液を垂らすと黒褐色なり、さらにデンプン水溶液を垂らすと紫色に変わり、塩
素 Cl2 であることが確認できた。
参考:ヨウ化カリウムとデンプンの組み合わせは、塩素やオゾンの検出に利用される。
   塩素は気体であるが、すこし水に溶ける。
<硫酸亜鉛 ZnSO4 水溶液>

                  - 1 -

 陰極では灰色の亜鉛 Zn が析出し、希硫酸をかけると水素が発生した。陽極では気体
が発生し、これは酸素 O2 である。
参考:陽極側のペーパーの変色は、ステンレスが酸素などと反応した結果である。
<ヨウ化カリウム KI 水溶液>
 陽極側のペーパーが黒褐色になる。これは生成したヨウ素 I2 が未反応のヨウ化カリウ
ム水溶液に溶けた結果である。陰極では気体が発生し、これは水素 H2 である。
<硫酸ナトリウム Na2SO4 水溶液>
 両方の電極で気体が発生し、陽極が酸素、陰極が水素である。混合気体にマッチで点火
すると爆発した。
[3]実験結果はそれほど単純ではない。ひとつには、水 H2O も電気分解されるからで
ある。しかしこれから、亜鉛、水素、銅などは正電気を帯びて結合し、酸素、塩素、ヨウ
素などは負電気を帯びて結合すると推測される。
 ちなみに融解塩の電気分解も行われた。
[c]2元論
[1]それでは当時はどのように考えられたろうか。ラボアジェ以来(18世紀後半か
ら)、物質は2元的であると考えられてきた。たとえば酸は非金属と酸素が結合しており
(当時は酸性酸化物を酸と考えた。酸素を含まない塩酸はよく理解されなかった)、塩基
(塩基性酸化物のこと)は金属と酸素が結合している。そして塩は酸と塩基が結合してい
る、と言った具合である。
[2]電気分解はこの考えに輪をかけることになる。ベルセリウスは(1820年頃)物
質はさまざまな割合で正電気と負電気を持つと考えた。元素では金属が正電気が多く、中
でもカリウムは正電気のみを持つ。他方で非金属は負電気が多く、中でも酸素は負電気の
みを持つ。そして硫黄と酸素が結合するのは、右図のように硫黄がいくらか正電気を持つ
ためであり、できる酸(酸性酸化物)は全体として負電気が多い。

    

これに対してカルシウムと酸素が結合するのは、左図のようであり、できる塩基(塩基性
酸化物)は全体として正電気が多い。したがって酸と塩基はさらに結合して塩ができる・
・・。
 実際のところ電気的引力以外に、物質を結合させる力は思い当たらなかった。万有引力
は小さ過ぎた。こうしてすべての物質は「性質が異なる2つのものが結合してできる」と
信じられた。このような考えは2元論と呼ばれる。

                  - 2 -

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2.原子価

[a]原子価の発見
[1]19世紀は有機化合物が次々に発見された時代でもある。ちなみにそれは生物に由
来する物質を指し、人の手によっては無機化合物から合成できないものであった。しかし
生命の神秘な力によってのみ合成されるという考えは、1828年にヴェーラーがシアン
酸アンモニウムから尿素を合成することで否定された。
 化学者たちは、これらも2元的に理解しようと次々に仮説を立てた。しかし有機化合物
は通常は電気分解されない。そしてこれまでの無機化合物に比べて実に多様であり、どの
仮説も新しい有機化合物や新しい化学反応の発見によって覆された。
[2]長年にわたる右往左往の中で、ついに化学者たちは2元的に捉えることから離れ、
新しい考えに近づいた。「それぞれの原子は、相手によらずどの原子とも、ある決まった
数の結合をつくる能力を持つ。」 結合する相手の原子を問わないこのような考えは1元
論と呼ばれる。
 水素は1価、酸素は2価であり、水の分子式は HO ではなく H2O である。炭素は4
価であり、炭素どうしは互いに結合して鎖をつくることができる・・・。1861年にケ
クレはこの新しい原子価説を教科書に書いた。
備考:ちなみに構造式を考案したのはクーパーである。
[3]次に具体的に勉強するように、原子価の考えは簡単明瞭で、その発見にどうしてそ
んなに手こずったかと思われる。その背景は原子量がなかなか確定せず、同じ物質に分子
式が2通りも3通りもあったことであろう。実を言うと原子量も、1860年の第1回万
国化学会議で確定し、化学は新しい飛躍を始める。
 原子価の考えは、下の[c]のように無機化合物にも適用できる。
備考:フランクランドは、不十分ながら無機化合物の原子価を考えた。
[b]原子価の勉強(その1)
[1]有機化合物など、分子になり分子式で記される物質から始めよう。分子式とは分子
1個に含まれる原子の種類と個数を示した記号である。例えばメタンの分子式 CH4 は、
この分子が炭素1個と水素4個からできていることを示す。
 次に関係する主な原子価を上げるので、記憶してしまおう。
    水素(H) 1価          炭素(C) 4価
    窒素(N) 3価          酸素(O) 2価
    塩素(Cl)1価
 原子価によると、メタンの結合の様子は次ページの左図のようである。結合を表す線は
価標、記号全体は構造式と呼ばれる。それでは分子式が C26 のエタンはどうであろう
か。
[2]ここで分子模型を紹介しよう。これは原子をボール、結合をスティックで示す。そ

                  - 3 -


    

して例えば炭素のボールには4つの穴があり、スティックを差し込める。
 さらに4つの穴は結合の向きに空いている。すこし説明しよう。1876年にファント
ホッフは図のように「炭素原子の4つの原子価は正四面体の各頂点方向に向いている」と
提唱した。これで分子の立体的構造まで考えられるようになった。また酸素原子の2つの
原子価や窒素原子の3つの原子価のなす角度も、正四面体で考えてそんなに誤差はない。

        

      (この場合、2つの結合のなす角は109.5°になる。)
[3]実習1では分子模型を作って原子価説を確認した。次にその構造式を書いておく。

    

[4]エチレンでは2本のスティックを曲げて結合させた。これは二重結合である。また
窒素には三重結合がある。
 分子式が C26O の物質には2つの構造式があり、それらはエタノールおよびジメチ
ルエーテルと呼ばれる別の物質である。
 原子価説によると、分子式が CH3 とか C27 といった物質は存在しないことが推定
できる。

                  - 4 -

[c]原子価の勉強(その2)
[1]無機化合物には分子にならない物質も多い。その理由は後ほど分かるが、そのよう
な物質は組成式で記される。組成式とはその物質をつくる原子の種類と個数比を示した記
号である。例えば塩化マグネシウムの組成式 MgCl2 は、この物質がマグネシウムと塩
素からできており、その個数比は1:2であることを示す。その記号が分子式か組成式か
は、今の段階では判別できない。
 次に主な原子の原子価を上げる。
      陽性原子            陰性原子
  ナトリウム(Na) 1価      窒素(N)  3価
  マグネシウム(Mg)2価      酸素(O)  2価
  アルミニウム(Al)3価      硫黄(S)  2価
  カリウム(K)   1価      塩素(Cl) 1価
  鉄(Fe)   2 or 3価
  銅(Cu)     2価
  亜鉛(Zn)    2価
  銀(Ag)     1価
[2]陽性原子と陰性原子が結合して物質ができる。その組成式は原子価が分かれば自動
的に正しく書ける。例えば塩化ナトリウムは NaCl であり、硫化亜鉛は ZnS であ
り、酸化アルミニウムは Al23 である。
 そしてヨウ化カリウムの組成式は KI であるので、カリウムの原子価に基づいて、
    ヨウ素は陰性で1価である
と分かる。また塩化カルシウムは CaCl2 であるので、
    カルシウムは陽性で2価である
と分かる。
 これは正しい組成式と自由な発想があれば、原子価の考えは容易に思い付き得ることを
示している。また組成式でこのようなチェックをしていけば、原子価は自然に記憶できる。
[問題1]次の物質の組成式を書け。
  酸化マグネシウム          塩化銅
  硫化ナトリウム           窒化銀
  ヨウ化亜鉛             酸化カルシウム
  塩化カリウム            硫化銅
  窒化マグネシウム          塩化銀
  酸化亜鉛              塩化アルミニウム
  硫化鉄(U)(2価の鉄と硫黄の化合物)
  塩化鉄(V)(3価の鉄と塩素の化合物)

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参考:物質の命名法に注意しよう。
[3]原子価の考えは、原子はどのように結合するかというテーマにおいて、ほんの入口
である。しかしこの考えは重要な手がかりであり、かつ現代においても物質を理解する武
器になる。後で補足も行う。
 同時に原子価の考えは不十分さを持つ。上の問題でも鉄に2つの原子価があり、そのど
ちらかを指定しなければ、組成式が書けなかった。より踏み込んだ領域では、ほとんどの
原子が複数の原子価を持つことに出会う。

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3.原子の構造

[a]電子の発見
[1]実験2では銅について、電気分解において流れる電気量とできる物質の質量の関係
を計測した。結果は次のようであった。
    質量/電気量 =(    )[mg/C]
参考:実験でも触れたが、電気量の単位は C(クーロン)である。
 この質量と電気量の比は、物質によって一定である。より正確ないくつかの数値は次の
ようである。
    銅     0.329  [mg/C]
    銀     1.118
    水素    0.01045
    酸素    0.0829
備考:原子価が複数ある場合は、質量と電気量の比も複数になる。
[2]これらの数値を吟味するために、原子量と原子価の数値を示す。
               原子量     原子価
    銅(Cu)     63.55     2価
    銀(Ag)    107.9      1
    水素(H)      1.008    1
    酸素(O)     16.00     2
参考:原子量とは、当時の定義では、酸素原子の質量を16としたときのそれぞれの原子
   の相対的な質量である。
 上の質量と電気量の比は、原子量が大きいほどそれに比例して大きい数値になっている。
また原子価が大きいほどそれに反比例して小さい数値になっている。
 ストーニーは電気分解において、物質をつくる粒子と「ある決まった量」の電気が結び
付いたり離れたりすると考え、その「ある決まった量」の電気を電子と呼ぶように提唱し
た。これはそれだけの量の電気を持つ小さい粒子かもしれない・・・。

                  - 6 -

[3]19世紀の終わりに物理学者は真空内の放電現象を研究した。通常は電気は金属な
どの中に隠れているが、真空放電ではその正体がさらけ出されるわけである。
 演示実験1では、真空放電でガラスの壁が緑色に輝いた。そして陽極の形が陰になって
写り、電気は陰極から飛び出していることが分かった(この電気の流れは陰極線と呼ばれ
る)。また蛍光板で見える道筋は磁石を近づけると曲がり、フレミングの左手の法則から
負電気を持つ粒子であることが分かった。
[4]1897年にトムソンは磁場と電場の両方をかけて粒子の速度を求め、次に電場だ
けかけたときや磁場だけかけたときの曲がり具合から、この粒子つまり電子の、質量と電
気量の比を計算することができた。彼の実験には誤差が伴っていたので、次に正確な数値
を示す。
    質量/電気量 = 0.000005686[mg/C]
これは陰極の材料を変えても同じである。
 電子も上の「ある決まった量」の電気を持つとすると、その質量は一番小さい水素原子
よりはるかに小さいことになる。
    0.01045/0.000005686 = 1838
つまり電子の質量は水素原子の 1/1840 である。彼は電子が原子をつくる粒子のひ
とつであると主張した。
 やがてミリカンが電子の電気量を計測した。それは次の数値であり、電気素量と呼ばれ
る。
    1.602×10-19[C]
[b]原子核の発見
[1]電子が発見されると、原子の残りの部分に関心が向く。それは正電気を持ち、原子
の質量の大部分を占めるはずである。ちなみにトムソンは種ありのすいかのようなイメー
ジを持った。つまり正電気を持つかたまりの中に負電気を持つ電子が埋め込まれている・
・・。
[2]マンチェスター大学で、図のような実験が行われた。金箔に正電気を持つアルファ
粒子を照射すると、ほとんどは通り抜けて後の硫化亜鉛の蛍光板が光る。しかしときどき

    

          (ポーリング「一般化学」より)

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大きく曲がってせん光を発する。それは金箔の厚さが0.5μm(マイクロメートル)のとき
は100000個に1個くらいである。厚さを2倍にすると、大きく曲がるのも2倍にな
る。
 ちなみにアルファ粒子は集めるとヘリウムになることが分かっていた。
[3]1911年にラザフォードは実験に基づいて「原子は中心にきわめて小さい、その
質量のほとんどを占め正電気を持つ原子核が存在し、それに比べればはるかに広いまわり
の空間を、負電気を持ついくつかの電子が運動している」ことを提唱した。そしてアルフ
ァ粒子はヘリウムの原子核である。
 実験によると原子核の大きさは原子の10万分の1ほどである。原子がドーム球場とす
ると、原子核はその中のごま粒くらいである。
[4]やがて原子核はいくつかの陽子と中性子からできていることが分かった。陽子は電
子と同じ量の、そして電子と反対の正電気を持つ。また中性子は名前のとおり電気を持た
ない。
 モーズレーは、クルックス管のいろいろな陽極から発生するエックス線を調べて、それ
が原子の種類によって特定の波長を持つこと、それから原子核の陽子の個数が分かること
を発見した。このエックス線は蛍光エックス線分析として利用される。
 原子核の陽子の個数は原子番号と呼ばれる。これは1番が水素、2番がヘリウムという
ように、原子の種類に対応している。そして原子はその原子番号と同じ個数の電子を持ち、
全体として電気的に中性になる。
[c]電子配置
[1]1913年にボーアは、後で実験する水素の原子スペクトルの研究に基づいて、原
子核のまわりの電子の運動に対して次のように提唱した。
参考:このあたりは高校の物理の教科書にもくわしく解説されている。
 太陽系のように、原子核のまわりには電子が運動する軌道がある。ただしとびとびの特
定の軌道のみが許され、その中間の軌道は存在しない。特定の軌道は内側からK殻、L殻、
M殻、N殻などと名付けられる。殻という文字は、その軌道を運動する電子が負電気の殻
をつくったようになるという意味であり、一般に電子殻と呼ばれる。そしてそれぞれの電
子殻に入ることができる電子の個数は制限されている。具体的には
    K殻:2個  L殻:8個  M殻:18個  N殻:32個 ・・・
という定員になっている。
参考:電子殻に入ることができる電子の個数は 2n2 で計算できる。
[2]ところで中間の軌道が存在しないことは、これまでのニュートン力学の常識に反す
る。それどころか、負電気を持つ電子がいつまでも原子核のまわりを運動すること自身が、
電磁気学の原理に反する。これらのことはやがて、新しく誕生しつつある量子力学によっ
て説明されることになる。

                  - 8 -

[3]軌道に入った電子が持つエネルギーは、原子核に近いほど小さい。これは地球から
離れた人工衛星ほど、打ち上げに大きなエネルギーを必要とすることからも納得できる。
そして通常の原子では、電子はより内側の軌道に入り、エネルギーが小さくなっている。
備考:エネルギーについては、講座プラン「物質とエネルギー」を参考にしてほしい。
 こうして図のような電子配置が確定する。

    

 原子核の中の数字は原子番号であり、陽子の個数を示す(だから + が付いている)と
同時に電子の個数も示す。電子は小さい黒丸(ドット)で表す。軌道は円になっているが、
あとで説明するように、立体的なイメージを持つべきである。
 この電子配置が頭に浮かぶようになるとよい。少なくとも原子番号を知ったら、その原
子の電子配置が書けるようにしよう。
[4]実験3で、手づくり分光器を使って水素の原子スペクトルを調べると
    赤色、青緑色、あい色、紫色
という特定の色の光のみ(これはバルマー系列と呼ばれるスペクトルの主要部分である)
が、そして水銀では
    黄色、黄緑色、あい色、紫色
という特定の色の光のみが観察される。これは太陽が虹の7色すべての光を含んでいるの
と対照的である。
参考:蛍光灯のスペクトルでは水銀の原子スペクトルとして観察された色が強い。これは
   蛍光灯に水銀が含まれていることを示している。
[5]光は波のような性質を持っており、それぞれの色は波長でいうと次ページの表のよ
うになる。
 そして光は粒のような性質も持っており、それは光子(こうし)と呼ばれる。波長が短い
光ほどより大きいエネルギーを持った光子からできている。日焼けのように、紫外線の化
学的作用が強いのはその一例である。
[6]放電管では電子が走り抜けるので、その中の原子は軌道に入っている電子がはじき

                  - 9 -

    赤外線(見えない)   770nm(ナノメートル)以上
    赤色          770〜640
    橙色             〜590
    黄色             〜550
    緑色             〜490
    青&あい色          〜430
    紫色             〜380
    紫外線(見えない)   380nm以下
参考:1nm=1/1,000,000,000m=1000万分の1cm

飛ばされたり、より外側の軌道に持ち上げられたりする。そして外側の軌道の電子がより
内側の空いた軌道に落ち込むときに光を放射する。
 エネルギー保存の法則から、放射する光子のエネルギーは2つの軌道のエネルギー差に
なる。したがって水素原子や水銀原子が特定の色の光のみを発生するというのは、電子の
軌道がとびとびであることを想起させる。

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4.化学結合

 原子の結合は化学結合と言われる。
[a]イオン結合
[1]1916年にコッセルは、希ガスが他の原子と結合せず、原子そのままで存在する
ことに注目した。希ガスは周期表の右端の18族の元素を指し、前図ではヘリウム、ネオ
ン、アルゴンが相当する。つまり希ガスの電子配置は「安定」であり、その他の原子は不
安定で希ガスの電子配置を目指すと考えた。
備考:ここでは「安定」の意味やイオン化エネルギーには踏み込まないことにする。
[2]たとえば塩化ナトリウムでは、ナトリウム原子は最も外側の電子殻(最外殻とい
う)の電子が1個減れば(電子が無くなれば)、ネオンと同じ電子配置になる。それは陽
子1個分の正電気を持つ粒子になることである。これは1価の陽イオンと言われる。他方
で塩素原子は最外殻に電子が1個増えれば、アルゴンと同じ電子配置になる。それは電子
1個分の負電気をもつ粒子に、つまり1価の陰イオンになることである。
 こうしてナトリウム原子と塩素原子は接近すると、電子1個をやり取りしてナトリウム
イオン Na+ と塩化物イオン Cl- になり、その電気的引力によって結合する。そして
組成式は NaCl になる。
注意:陰イオンの名称に注意しよう。
 塩化マグネシウムではどうだろうか。マグネシウム原子は最外殻の電子が2個減ればネ
オンと同じ電子配置になり、2価の陽イオンであるマグネシウムイオン Mg2+ になる。

                  - 10 -

 だからマグネシウム原子は2個の塩素原子とそれぞれ電子1個をやり取りして、マグネ
シウムイオンと塩化物イオンになってイオン結合し、その組成式は MgCl2 になる。
 これでナトリウム、マグネシウム、塩素などの原子価の秘密が解明された。
参考:Na+ 、Cl- 、Mg2+ のようなイオンの記号はイオン式と呼ばれる。その書き方
   を確認しておこう。
[3]このように原子が電子をやり取りして陽イオンと陰イオンになり、その電気的引力
によって形成される化学結合はイオン結合と呼ばれる。
 以上のことは、元素記号のまわりに最外殻電子のみをドットで表す電子式を使って次の
ように表現すると分かりやすい。

    

参考:電子を書く位置は上下左右の4カ所である。
   原子の場合は、対で書くのは最少にする(これはフントの規則による)。
[問題2]次の物質の電子式(左辺は不要)と、それから導かれる組成式を書け。
  (1)塩化リチウム       (2)酸化マグネシウム
  (3)硫化ナトリウム      (4)フッ化アルミニウム

    

[4]イオン結合する物質(イオン性物質という)が固体になるとき、陽イオンのまわり
にはいくつかの陰イオンが、陰イオンのまわりにはいくつかの陽イオンが近づく。それは
電気的引力は四方八方に及び、方向性がないからである。
 実習2では、塩化ナトリウム NaCl 、塩化セシウム CsCl 、フッ化カルシウム
(ホタル石)CaF2 の結晶模型を観察した。
 塩化ナトリウムでは、ナトリウムイオンのまわりには6個の塩化物イオンが、塩化物イ
オンのまわりにはやはり6個のナトリウムイオンが配位する。塩化セシウムでは、セシウ
ムイオン Cs+ と塩化物イオンにはたがいに8個の相手イオンが配位する。このようなわ
けで結晶の中に NaCl や CsCl という分子が存在することはない。しかしどちら
も陽イオンと陰イオンの個数比は1:1である。

                  - 11 -

 これに対してフッ化カルシウムでは、カルシウムイオン Ca2+ のまわりには8個のフ
ッ化物イオン F- が、フッ化物イオンのまわりには4個のセシウムイオンが配位する。そ
してカルシウムイオンとフッ化物イオンの個数比は1:2になる。
備考:結晶については別の機会にくわしく勉強しよう。
 イオン性物質は組成式で表される。ただしイオン性物質も気体にすると分子になる。た
とえば塩化ナトリウムでは、温度に応じて Na2Cl2 分子や NaCl 分子になる。
[b]共有結合
[1]それでは水素や水はどのように結合するだろうか。同じ1916年にルイスは「電
子の共有」という考えを提唱した。
 水素原子は最外殻(といっても1番内側の電子殻だが)に電子が1個増えればヘリウム
と同じ電子配置になる。そこで2個の水素原子が接近するとそれぞれの電子1個ずつを対
(つい ペア)にして共有し、これを互いに自分の電子と見なして希ガスの電子配置を実現
する。電子の共有は原子が接近した状態で可能であり、こうして2つの水素原子は結合し、
水素分子になる。そして分子式は H2 になる。
 酸素原子は最外殻に電子が2個増えればネオンと同じ電子配置になる。そこで酸素原子
は2個の水素原子とそれぞれ1対の電子を共有して結合し、その分子式は H2O になる。
 これで水素、酸素などの原子価の秘密が解明された。
 共有結合して分子になる物質(分子性物質という)は、分子式で表される。なおダイヤ
モンドのように、共有結合して分子にならない物質はここでは割愛する。
[2]このように、原子が電子を共有することによって形成される化学結合は共有結合と
呼ばれる。そして共有している電子の対を共有電子対と言い、対になっていない1個の電
子は不対電子と言う。
 以上のことは、やはり電子式で次のように表現すると分かりやすい。電子式では共有電
子対は2つの原子の間に書く。

    

参考:分子式、組成式、構造式、電子式などはまとめて化学式と呼ぶ。
[問題3]次の分子などの電子式(左辺は不要)と、それから導かれる構造式を書け。
  (1)塩化水素( HCl )     (2)硫化水素(H2S)
  (3)アンモニア( NH3 )     (4)窒素( N2
  (5)二酸化炭素( CO2 )     (6)水酸化物イオン( OH-

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[3]上の(6)水酸化物イオンはすこしむずかしい。これは何か陽イオンになる原子か
ら電子1個を得た酸素原子と水素原子からなり、水素と酸素が共有結合した陰イオンであ
る。イオン結合の相手は例えばナトリウムイオンである。似た例に次のアンモニウムイオ
ン NH4+ がある。これは電子1個を失った窒素原子と4個の水素原子からなる。

    

 よく登場する原子の集団は基(き)と呼ばれる。OH は水酸基、NH4 はアンモニウム基
である。それぞれは全体として陰イオンで1価および陽イオンで1価の原子価を持つ。
 さらに水酸基は水やメタノールなど(実習1を参照)にも含まれる。この場合に水酸基
は相手の水素や炭素と共有結合するが、やはり1価である。
[c]原子価の勉強(その3)
 実際の物質では、硫酸基 SO4 のように2価であることは確かだが、その内部の結合が
今の学習段階では理解できないものもある。このようないくつかの基は、全体としての原
子価を覚えてしまうのが実用的である。
    アンモニウム基( NH4 )    1価
    水酸基( OH )        1
    硫酸基( SO4 )        2
    炭酸基( CO3 )        2
    硝酸基( NO3 )        1
    リン酸基( PO4 )       3
    塩素酸基( ClO3 )      1
    亜硫酸基( SO3 )       2
アンモニウム基はイオン結合に限られるが、残りはすべて陰イオンとしてイオン結合した
り、共有結合したりする。これで原子価の考えは強力になる。
参考:有機化合物に含まれる多くの基は、別の機会に勉強する。

                  - 13 -

[問題4]原子価を使って、次の物質の組成式か分子式を書け。
  塩化アンモニウム          水酸化カルシウム
  炭酸ナトリウム           炭酸水素ナトリウム
  塩素酸カリウム           リン酸カルシウム
  硫酸                硝酸
  亜硫酸

参考:物質の命名法に注意しよう。
   水酸基は例外で、水酸カルシウムでなく、水酸化カルシウムである。
   酸では、たとえば硫酸水素でなく、硫酸である。

目次へ

5.量子力学

 化学結合の主役は電子である。ところがこの電子や、陽子、中性子、そして光子などの
極めて小さい粒子は、日常の考え(常識)が通用しない世界に住んでいる! このような
粒子を扱うのが量子力学である。ここでは敢えて量子の世界をのぞいてみよう。
[a]量子力学
[1]共有結合で出てきた「電子の共有」とはどのようなことだろうか。ルイスは次のよ
うな図を描いている。

    

          (久保昌二「化学史」より)
しかしこれでは三重結合を持つ窒素分子は説明できない。
[2]演示実験2では、最先端の技術によって光子を1粒ずつ観察することができた。日
常の考えからすると、2重のスリットの場合に積算された映像は2本のしまになるはずで
ある。しかし事実は数本のしま模様になった。
 19世紀の始めにヤングは、単色光を2重のスリットに通して、数本のしま模様をつく
った。そしてこれを光が「波」である根拠とし、しま模様の間隔などからその光の波長ま
で求めた。波なら、2つのすき間から出て干渉し合って、このようなしま模様ができる。
 しかし実験では光は1粒ずつ観察できた。そして現に第2スリットの一方を塞ぐと、し
まは1本になり、光は粒のようである。ちなみに2005年にアインシュタインが、光電

                  - 14 -

効果の実験から、光が粒の性質を持つことを示した。
参考:プランクは1900年に黒体放射の実験から、光のエネルギーは粒(量子)になっ
   ているという考えを最初に提唱した。
[3]実験の名前「光子の裁判」は、光が粒か波か、白黒をはっきりさせるという意味合
いである。しかし判決は出ない。
 光子や電子のような極めて小さい粒子は、ときに粒のように、ときに波のように振る舞
う。これは20世紀始めの科学者たちを戸惑わせた。そして1926年にシュレーディン
ガーは、このような粒子が従うべき運動方程式を提唱した。
 それは「波動方程式」と呼ばれ、それぞれの場合に応じた条件を付けて解くことになる。
そして他方で、その解がどれくらい実際に適合しているか、言い換えると付けた条件が適
切であったかを検討する必要がある。
 波動方程式の解を得るのは、高校の数学ではとても手に負えない。それどころか、代数
学的に解を得られるのは水素原子における電子の運動くらいである。ほとんどの場合は近
似的に解を求める。現代ではコンピュータが発達して、かなりくわしく計算できるように
なった。
 幸いにも原子価の考えは、量子力学によってかなり裏付けられるし、発展的な内容を付
け加えて活用することもできる(だからくわしく勉強した!)。
[4]私たちはとりあえず量子力学から導かれる結果を素直に受け入れることにしよう。
演示実験から、最初の光子がどの位置に来るか、そして2番目の光子がどの位置に来るか、
予測できないことが分かる。それは実験毎に異なる。同じように、たとえば原子核のまわ
りのK殻の電子が、あるときどの位置にあり、その後どこに移動するか、あるいは電子が
円運動をする、などと決めてかかることはできない。これは電子があまりに小さくて誤差
を伴うからではなく、電子がそういうことのできない存在であるという意味である。これ
は地球の公転、自転や月の運動が正確に分かっていて、日食や月食の時間を秒単位で予測
できるのと大違いである。
[5]原子や分子の電子の軌道を雲のように表現することがある。電子雲モデルである。
この意味は、電子が雲のように存在しているのではなく、濃い部分ほど電子が見つかる確
率が高いということである。そしてどのような雲になるかは波動方程式で計算できる。
 水素原子では次ページの図のように、K殻の電子雲はボール状(1s軌道と呼ばれる)
で、濃い部分は中心の原子核の位置にある。L殻の電子雲は4種ある。ひとつはK殻より
4倍大きいボール状(2s軌道)であり、濃い部分は2つあって原子核の位置と中間の球
面状の部分にある。残りは亜鈴状(2つのボールをくっつけた形)で、濃い部分は2つボ
ールの中心にあり、3つの向きがある(2px ,2py ,2pz 軌道)。つまりよりくわ
しくは、L殻は4つの軌道からできている。これらは原子に関係するので「原子軌道」と
呼ばれる。

                  - 15 -

 そして他の原子も類似の原子軌道を持つ。

  

    (線で描いてあるが、雲が広がったようにイメージしよう。)
[6]シュレーディンガーの1年前の1925年に、ハイゼンベルグは別の視点から、光
子や電子が従うべき運動方程式を「行列力学」としてまとめた。そしてそれから「不確定
性原理」を導き出した。これは極めて小さい粒子は、その位置と速度が同時に正確には決
まらない。位置に伴うあいまいさ Δs と速度に伴うあいまいさ Δv の積は、プランク
定数 h という小さな数値くらいか、それより大きいというのである。
    Δs×Δv >= h( = 6.63×10-34 J/s)
この原理は日常の物体を計測するには何ら支障にならない。しかし相手が光子や電子にな
ると重大であり、光を波のように捉えたり、原子や分子の電子の軌道を電子雲として表し
たりすることになるのである。
 考えてみると、位置や速度というのは日常の物体の観察からつくられた考え(概念)で
あり、これらが極めて小さい粒子の世界にそのまま通用するとは限らない。ところが私た
ちはものごとを理解しようとするとき、日常の考えをそのまま当てはめようとする。だか
ら異なる世界に踏む込むと戸惑うわけである。
[7]ちなみに不確定性原理は極めて小さい粒子の、エネルギーに伴うあいまいさ ΔE
と時間に伴うあいまいさ Δt に対しても成り立つ。
    ΔE×Δt >= h
これはごく短い時間なら、エネルギーは大きくなったり小さくなったりしており、エネル
ギー保存の法則が破れていることを意味する。エネルギーは質量と等価であることも分か
っているので、ごく短い時間なら、極めて小さい粒子は生まれたり消えたりしている。何
もないはずの真空が煮えたぎっている・・・。
参考:ディラックは1925年に、量子力学を「量子代数」と呼ばれる形にまとめた。ま
   た彼は、真空が物質と「反物質」で満たされていると提唱した。
[b]共有結合の理解
[1]波動方程式で計算すれば、たとえば2個の水素原子がほどよい距離に接近すると、
その原子軌道から「分子軌道」と呼ばれる2つの新しい軌道が生まれることが確認できる。
次ページの図のように、ひとつは元の電子雲が重なり合ったようになり、2つの原子核の

                  - 16 -


    

中間が濃くなる。これは結合軌道と呼ばれ、ここに2つの電子が入った状態は、元よりエ
ネルギーが小さい。もうひとつは元の電子雲が反発し合ったようになり、2つの原子核の
中間は電子が存在できない。これは反結合軌道と呼ばれ、ここに電子が入るためには元よ
り大きいエネルギーを必要とする(元よりエネルギーが大きい)。
[2]2個の水素原子が接近すると、それぞれ元の1s軌道にあった2つの電子は、新し
くできる結合軌道に入って分子をつくる。これが共有結合である。2つの原子核の中間に
電子が存在するようになり、またそれぞれの電子がたがいに相手の原子核のまわりにも存
在できるようになるので、共有というイメージに合っている。構造式において1本の価標
は1つの共有結合に対応している。この価標を結合軌道の電子雲で置き換えてみよう。
 電子を共有する過程はエネルギーが元より小さくなることであり、その分のエネルギー
をまわりに放出する。この過程はエネルギーのくぼ地に落ちることであり、その坂道で2
つの水素原子は互いに引き合うことになる。
 現代物理学は、すべての引力はこのように粒子の共有によって生まれると考える。湯川
は1935年に、原子核の中で陽子や中性子を結び付ける「強い力」を担っている中間子
という粒子が存在するはずであると提唱した。
(イオン結合の理解)
[3]ちなみにイオン結合では、一方の原子軌道から他方の原子軌道に電子が移動する。
電子が原子軌道から離れるにはエネルギーを必要とする(元よりエネルギーが大きい)が、
電子が原子軌道に入るとエネルギーは小さくなる。そしてできる陽イオンと陰イオンが近
づくとさらにエネルギーが小さくなる。このようにイオン結合もエネルギーのくぼ地に落
ちることである。
[4]結合の強さはくぼ地の深さで表され、結合エネルギーと呼ばれる。言い換えると結
合を切断するには、それだけのエネルギーを与える必要がある。
[c]ベンゼン環
[1]18世紀にもどって、ベンゼン C66 や類似の有機化合物が発見されると、ベン
ゼンの構造式が検討された。これに対してケクレは大胆にも次ページの左図のような構造
を提唱した。ベンゼンの炭素の部分はベンゼン環と呼ばれる。そして二重結合と単結合は

                  - 17 -


    

絶えず入れ代わっており、すべての炭素炭素結合は同じであり、ベンゼン環は正六角形で
ある。「師匠より賢い」と言われるほどに、これはさまざまな事実に適合した。しかし彼
は結合が入れ代わる理由は説明しなかった。
[2]1931年にポーリングは「共鳴」という考えを提唱した。構造式は波動方程式の
ひとつの解に対応する。波動方程式では、その解が複数あるときそれを足し合わせたもの
も解になることが分かっている。そしていくつかの条件の下では、足し合わせた解は元の
解より小さいエネルギーを持ち、実際の分子軌道により近い。
 ケクレによるとベンゼンでは右図の2つの構造式が考えられる(ベンゼンは簡略にした
構造式で表している。)。そして実際はその2つが重なり合ったものと考えられる。二重
結合と単結合が入れ代わっているわけではないが、両者が重なり合ったような1.5重結合
は存在する。それをポーリングは「2つの構造式が共鳴する」と表現した。
[d]金属結合
[1]4節ではイオン結合と共有結合を勉強した。それぞれはどのような原子の間でつく
られるだろうか。
 原子(元素)は金属と非金属に分類される。金属原子とは電子を失いやすく陽イオンに
なりやすいものである。非金属原子は金属でないものを指す。非金属原子の性質は単一で
はないが、希ガスを除くと、電子を電子を得やすいか電子を共有しやすいものである。
 大まかに言うと、金属原子と希ガスを除く非金属原子は、イオン結合する(非金属原子
は陰イオンになる)。そして、非金属原子どうしは共有結合する。
 それなら金属原子どうしはどのように結合するのだろうか。
[2]金属の大きな特徴は電気伝導性が大きいことである。これは電子が移動しやすいこ
とを意味する。他方で電子が金属原子を結合させる。
 ナトリウムを例にする。原子のときM殻の1個の電子は、よりくわしくは3s軌道に入
っている。量子力学の教えるところでは次ページの図のように、N個の原子軌道が接近す
ると、N個の原子全体に広がったN個の分子軌道ができる。このひとまとまりの軌道群は
「バンド(帯)」と呼ばれる。それらはエネルギーが最も小さい結合軌道から、エネルギ
ーが最も大きい反結合軌道まで近接して積み重なる。ひとつの軌道には電子が2個入るこ
とができるので、ナトリウムではエネルギーが小さい下半分の軌道群が電子で満たされ、

                  - 18 -

N個のナトリウムが結合する。これは金属結合と呼ばれる。
参考:非金属どうしではもっとエネルギーが小さい分子軌道ができ、通常はこのような軌
   道は意味を持たない。しかしたとえば超高圧の水素は金属の性質を持つ。

    

 ここでひとつ注意しよう。化学結合にとって希ガスの電子配置になることは必ずしも必
要でない。原子が結合するとは、エネルギーのくぼ地に落ちることである。
[3]金属結合のイメージは図のように、N個のナトリウムイオンの間にN個の電子が特
定のイオンに拘束されることなく存在するようである。このような電子は「自由電子」と
呼ばれる。

        

そして難しいことであるが、実はこれだけでは金属の電気伝導性を説明できていない。N
個の電子は言うなれば箱に収まった状態である。自由電子はこのままでは自由ではない。
 金属結合の特徴は、電子が入った軌道のすぐ上に、つまりエネルギー差がほとんど無い
ところに、たくさんの空いた軌道があることである。したがって常温でも熱運動のエネル
ギーを得て、多くの自由電子がこれらの軌道に上がっている。このような電子は電圧を掛
けるとプラス側に移動して電気伝導性を生み出すのである。
[4]金属結合する物質(金属)では、ひとつの原子はまわりにできるだけ多くの原子を
引き寄せて結晶になる。それは金属結合に方向性がなく、かつ1種の粒子からできている
からである。
 多くの金属は、「模型」で示した2種の最密構造のいずれかになり、どちらもひとつの
原子のまわりに12個の原子が配位する。
 純粋な金属は、ナトリウム Na 、鉄 Fe 、アルミニウム Al のように元素記号で

                  - 19 -

示す。これは組成式の一種と言える。

目次へ

6.分子間力

[a]電気陰性度
[1]演示実験3では、コンデンサーの容量変化を計測した。コンデンサーとは電気を貯
める道具であり、その原型は実験のように2枚の金属板の間に絶縁体(空気を含む)をは
さんだものである。
参考:水は絶縁体とは言えないが、両方の電極がショートしなければ電気は貯まる。実験
   では絶縁体のアクリル板の容器を使った。
 コンデンサーの容量とは電圧をかけたときの電気の貯まりやすさであり、1Vあたりに
何C(クーロン)の電気が貯まるかという数値で表す。その基本単位はファラッド(F)、
計測ではナノファラッド(nF)を使った。
参考:1nF=1/1,000,000,000F
 実験では、2枚のステンレス板の間のセルに入れる物質によって、容量の増加に差異が
生まれた。
    空気(     )nF ―→ 水       (     )nF
    空気(     )   ―→ ヘキサン    (     )
    空気(     )   ―→ トリエチルアミン(     )
[2]コンデンサーの容量の増加に差異が生まれるのはどうしてだろうか。双極子と呼ば
れるものがある。これは正電気の中心と負電気の中心がずれたもので、コンデンサーの間
では図のように配向して、金属板の電気を部分的に中和して電気が貯まりやすくする。

        

 分子にはもともと双極子になっているものがある。またそうでなくても分子は正電気を
持ついくつかの原子核と負電気を持ついくつか電子からできている。外部の正電気と負電

    

  (実習3でつくった「電気陰性度3D−ボックス」も参考にしよう。)

                  - 20 -

気の間にあると、原子核が負電気に引かれ、電子が正電気に引かれ、双極子になる。
[3]始めにもともと双極子になっている分子について検討しよう。そのような分子は、
共有結合の電子対が文字通りの共有になっていない。つまり異種原子の間では、共有電子
対は大なり小なり一方の原子に引き寄せられている。
参考:完全に一方に引き寄せられたのがイオン結合である。
 原子が共有電子対を引き寄せる程度を示す尺度として電気陰性度というものが考案され
た。前ページの表はポーリングの電気陰性度である。

    

[4]共有結合では関係する原子の電気陰性度の差に応じて、陰性度が小さい方の原子が
いくらか正電気を持ち、陰性度が大きい方の原子がその分だけ負電気を持つ。ここで「い
くらか」というのは、1価に相当する電気量より小さいと言う意味である。化学ではこの
ことを「共有結合が極性を持つ」と言う。それは次のように書き表される。
 ここで「分子が全体として極性を持つ」かどうかに注意する。それには実習1でつくっ
た分子の形を思い出す必要がある。二酸化炭素ではそれぞれの二重結合は極性を持つが、
分子全体では正電気の中心と負電気の中心が一致して極性がないのである。これに対して
水では、分子全体でも正電気の中心は負電気の中心とずれており極性を持つ(双極子にな
っている)。
[b]分子間力
[1]分子の間にも引力がはたらく。そうでなければ、液体や固体になれない。それは文
字通りに分子間力と呼ばれる。
 ただし近づき過ぎると強い反発力がはたらく。負電気を持つ電子どうしが接近して反発
し合うためである。
備考:背景にパウリの排他原理がある。
[2]共有結合が極性を持てば、その分子どうしの間には図のように引力が生まれる。こ
れは「配向による引力」と呼ばれ、磁石が引き合うのに似ている。

      

 ここでもう一度注意する。二酸化炭素は分子の極性はないので「配向による引力」はは

                  - 21 -

たらかないだろうか。そうではない。「模型」のように、二酸化炭素の結晶(ドライアイ
ス)では、いくらか正電気を持つ炭素原子といくらか負電気を持つ酸素原子が引力によっ
て接近して積み重なる。ただし分子内の逆向きの極性が邪魔するので、その引力は弱くな
る。
備考:「誘導による引力」は省く。
[3]共有結合が極性を持たない分子どうし、たとえば水素分子どうしや窒素分子どうし、
あるいは水素分子と窒素分子の間には引力がはたらくだろうか。これには深入りできない
が、「分散による引力」と呼ばれる。ただしそれは小さなものである。
[c]水素結合
[1]水 H2O は(大気圧の下で)100℃で沸とうする。当たり前に思えるが、次のグ
ラフを眺めると、その沸点が異常に高いことに気付く。

        

アンモニア NH3 とフッ化水素 HF の沸点も異常である。
 沸点が高いのは分子間力が異常に大きいことをうかがわせる。沸とうとは液体の分子が、
まわりの分子との引力を振り払ってバラバラの気体の分子になることだからである。温度
が高いほど分子の熱運動が激しいので、引力を振り払うことが容易になる。
[2]水を例にする。酸素の電気陰性度が特に大きいので、水素・酸素結合では、水素原
子の持つ正電気はかなり大きく、酸素原子が持つ負電気はかなり大きい。そして水素原子
は特に小さいため、となりの水分子の中の酸素原子にかなり接近して強い引力で引き合う。
これは水素結合と呼ばれる。その引力の強さは共有結合の1/10近くにもなり、通常の
分子間力の数倍もある。
備考:水素結合の上の説明は部分的である。
 水についてさらに見ると、ある水分子の水素・酸素結合の、延長線上にとなりの水分子
の酸素原子が来る。またひとつの水分子の酸素原子はとなりの2つの水分子の水素原子と
水素結合をつくることができる。そして酸素原子から見ると、2つの水素・酸素結合と、

                  - 22 -

2つの水素結合は、ちょうど炭素原子の4つの原子価のように、正四面体の各頂点に向か
う。ただし共有結合より水素結合の方が長い。したがって水分子どうしは左図のような立
体的配置をとろうとする。

    

 その結果として水の結晶つまり氷では、「模型」のように、大きな空間を含む。この空
間にはメタン分子 CH4 が入り込むことができ、こうしてできる物質はメタンハイドレー
トと呼ばれる。
 温度が上がって氷が融解し、分子の配列が乱れると、その空間の一部が失われ、液体の
水の密度は固体の氷より10%ほど大きくなる。だから氷が水に浮く。このようなことは
他の物質では見られない。
[3]アンモニアやフッ化水素にも同じように水素結合がはたらく。フッ化水素の水素結
合は水より強く、アンモニアのそれは水より弱い。しかしこれらは分子1個あたり1つの
水素結合しかつくれない。
 またたとえばアンモニア水では、水分子とアンモニア分子が右図のように水素結合をつ
くることもできる。
 まとめると水素結合とは、電気陰性度が特に大きい原子(通常はフッ素、酸素、窒素を
指す)と結合する水素原子と、他の分子(あるいは同じ分子の他の部分)の電気陰性度が
特に大きい原子との間にはたらく比較的強い引力であると言えるだろう。これは名称にも
拘わらず、分子間力の一種と捉えておくのが、整理しやすいであろう。
備考:学問的には、たとえば水では O―H‥‥O 全体を水素結合と呼ぶ。しかしこの用
   法では使い勝手が悪いので、あえて上のように記述してみた。

 とりあえず講座は終わろう。さらに勉強すべきことが山ほどあるのに気付いただろう。
なかでも量子力学は手強い。しかしそれは自然を深く理解するのに欠かせない。君たちが
これを機会に新たな挑戦に踏み出すことを期待する。





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主な参考文献
・久保「化学史」(白水社)
・ブロック「化学の歴史T」(朝倉書店)
・ワインバーグ「電子と原子核の発見」(日経サイエンス社)
・田村「物理化学(上)」(至文堂)
・カートメルら「原子価と分子構造」(丸善)
・グリビン「シュレーディンガーの猫(上・下)」(地人書館)
・菅野「科学は『自然』をどう語ってきたか」(ミネルヴァ書房)



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実験、実習

        目 次
  
実験1 簡単な電気分解
  実習1 分子模型
  実験2 質量と電気量の比(銅の場合)
  演示実験1 陰極線
  実験3 分光器の製作と原子スペクトルの観察
  実習2 詰め直しイオン結晶模型
  演示実験2 光子の裁判
  演示実験3 コンデンサーの容量変化
  
実習3 電気陰性度3D−ボックス(宿題)
  紹介模型

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実験1 簡単な電気分解
(a)サンプル水溶液
 それぞれ次のように試験管で水に物質を加え、ゴムせんをし振り混ぜて溶解させる。
  (ア)塩化銅(U)    CuCl2     6mlに0.6g
  (イ)硫酸亜鉛     ZnSO4     6mlに0.6g
  (ウ)ヨウ化カリウム  KI       6mlに0.2g
  (エ)硫酸ナトリウム  Na2SO4   12mlに0.4g
(b)サンプル(ア)〜(ウ)の電解
<共通の操作>
(1)トレイの底を上にして、1枚のステンレス板にクッキングペーパーを乗せ、サンプ
ル水溶液3mlを浸み込ませてセロハンを被せる。
注意:気体の発生が観察しやすいため、セロハンができるだけトレイに貼り付くようにす
   る。
(2)もう1枚のペーパーを乗せて水溶液2mlを浸み込ませ、もう1枚のステンレス板
を被せておもりを乗せる。
注意:ショートしないように、折れ曲がった角の位置を別にする。
(3)6V乾電池につないで電気分解し、気体の発生に注意を払う。
(4)2、3分経ったら、陽極部と陰極部に分け、電極板、ペーパーなどを観察し、テス
トする。
<サンプル(ア)>
・下のステンレス板を陽極にする。
・電解後、下のステンレス板に、サンプル(ウ)の1滴、続いて1%デンプン水溶液1滴
を垂らして観察する。
<サンプル(イ)>
・下のステンレス板を陽極にする。
・電解後、上のステンレス板に3mol/l硫酸を数滴かけて観察する。
参考:ペーパーなどは重金属処理にまわす。
<サンプル(ウ)>
・下のステンレス板を陰極にする。
(c)サンプル(エ)の電解
(1)短い試験管にサンプル水溶液をあと5mmまで注ぎ、シャーレの上で空気が入らな
いように電極のゴムせんを締め、シャーレの中に倒立して試験管ばさみで支える。
(2)6V乾電池につないで、電気分解する。

                  - 25 -

(3)気体が貯まったら、手早くゴムせんを外して指で押さえ、マッチで点火する。

<準備>
・試験管、ゴムせん、100mlビーカー、5mlピペット
・天秤
・塩化銅(U)、硫酸亜鉛、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム
・ステンレス板(5×5cm)、トレイ、おもり(木)
・クッキングペーパー(5×4.5cm)、セロハン(7×7cm)
・乾電池(6V)、クリップコード
・ピンセット
・1%デンプン水溶液、3mol/l硫酸
・短い試験管(φ18mm 長さ6.5cm)
・電極(ステンレスくぎとガラス管の付いたゴムせん)
・試験管ばさみ、シャーレ
・マッチ

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テキストの関連部分へ
実習1 分子模型
 次の物質の分子模型を組み立ててみよう。

  水素 H2   水 H2O   アンモニア NH3   エチレン C24
  窒素 N2   塩化水素 HCl   二酸化炭素 CO2
  メタノール CH4O   過酸化水素 H22
  塩化ビニル C23Cl   メチルアミン CH5
  分子式 C26O で表される物質

<準備>
・分子構造模型008(ナカムラ)

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テキストの関連部分へ
計測例へ
実験2 質量と電気量の比(銅の場合)
 電気分解において、できる物質の質量は流れる電気量に正比例する。この実験ではでき
る物質の質量と流れる電気量の比を計測する。この数値は物質によって決まっており、銅
について実験する。
 電流の1A(アンペア)とは、1s(秒)あたりに1C(クーロン)の電気量が流れる
ことを意味する。したがって流れた全体の電気量は
    電気量[C]= 電流[A]× 時間[s]

                  - 26 -

で計算できる。
(1)銅板をナイロンたわしで磨いて水洗いし、ヘアドライヤーで乾燥してから、常温に
もどったらその質量を正確に計る。
    (  .   )g
(2)トレイの底を上にして銅板をおき、1枚のクッキングペーパーを被せて5%硫酸銅
水溶液7mlを浸み込ます。
(3)セロハンを被せてもう1枚のペーパーを乗せ、さらに水溶液7mlを浸み込ます。
(4)これに炭素板を被せ、電流計とすべり抵抗器を直列に加えて3V(乾電池)につな
ぎ、時刻を確認する。
    (  )分(  )秒
(5)すぐに抵抗器を加減して電流を0.2Aに保つ。
(6)10分(600s)経ったら電気を切り、銅板を水洗いし、ドライヤーで乾燥し、
常温にもどったらもう一度その質量を計る。
   できた銅の質量  (  )mg
   流れた電気量  (   )C
(6)質量と電気量の比を計算する。
    ( .   )[mg/C]

<準備>
・銅板(45×150mm)
・時計(秒まで読めるもの あるいはストップウオッチ)
・炭素板
・クッキングペーパー(5×14cm)、セロハン(10×19cm)とピンセット
・5%硫酸銅水溶液と5mlピペット
・乾電池(単1を2本)とクリップコード
・天びん
・電流計(フルスケール500mA)
・ヘアドライヤー

追 記
 講座プラン「モル単位(物質量)の世界」の応用実験4「水の電解(アボガドロ定数)」
も、同趣旨の実験として利用できる。

目次へ
テキストの関連部分へ
演示実験1 陰極線
 陽極が十字形や、蛍光板の入ったクルックス管で、陰極線の性質を見せる。

<準備>
・クルックス管、電源、U字型磁石

                  - 27 -

目次へ
テキストの関連部分へ
実験3 分光器の製作と原子スペクトルの観察

 

          (縦長において印刷する)

                  - 28 -

(1)工作用紙に前ページの展開図を書き写す。
(2)実線を切り抜く。スリットとのぞき窓はカッターを利用する。
(3)破線に軽くカッターを入れてから、山折りする。
(4)セロテープで箱にする。このときすき間から光が入らないように注意する。
(5)回折格子レプリカをのぞき窓にセロテープで固定する。このとき予めレプリカを当
ててスリットの下にスペクトル(虹)が見える向きを確認する。
注意:セロテープがのぞき窓に被らないようにする。
(6)完成したら、太陽光、蛍光灯などを観察する。
(7)さらに暗室にして、水素、水銀の放電管の発光を観察する。
注意:調べたい光のみがスリットから入るように工夫する。
参考:水素放電管の発光を分光したものは、水素の原子スペクトルと呼ばれる。

<準備>
・工作用紙(37×51cmのサイズを半分に切る)
・回折格子レプリカ(905本/mm 15×15mm)
・はさみ、カッター、セロテープ
・水素、水銀などの放電管、スタンド、高圧変圧器

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実習2 詰め直しイオン結晶模型
 結晶は単位格子(こうし)の積み重ねとして捉えることができる。
 次の結晶模型(単位格子)を詰め直しながら、それぞれのイオンのまわりにいくつの相
手イオンが配位しているか調べよう。また持ち寄って積み重ねてみよう。

    塩化ナトリウム、塩化セシウム、フッ化カルシウム(ホタル石)

<材料、道具>
・スチロール球(φ35mm)
  NaCl:8個 CsCl:2個  CaF2:12個
・塩ビ板(厚み0.5mm)
  NaCl:69mm  CsCl:40mm  CaF2:80mm
・カッター、万能ばさみ、蛍光ペン(赤、青)、スチロールボンド、セロテープ
備考:詰め直し方式は、製作に比べて、少ない作業で能率的に実感を得られる利点がある。

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演示実験2 光子の裁判
 装置は次ページの図のようである。

                  - 29 -


  

 発光ダイオードから放射された光子は、第1スリットで絞られ、2重の第2スリットを
抜けて1.5mほど運動し、超高感度イメージ・インテンシファイヤーのスクリーンで電子
(光電子と呼ばれる)に変化し、始めの1億倍のエネルギーを持つように増幅され、CC
Dカメラに入り、モニターテレビに映し出される。リアルタイムの映像も、積算されてい
く映像も可能である。また第2スリットは一方を塞ぐこともできる。
備考:この装置は、中村、林ひろ、杉本、山田によって開発され、名古屋市科学館に保管
   されており、学校などに借りることができる。使用説明書もある。

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計測例と比誘電率へ
演示実験3 コンデンサーの容量変化
(1)内容積が幅2mm、面積16×16cmのセルを15×15cmのステンレス板
(厚さ0.5mm)で挟んでコンデンサーにする。
参考:ブロックを使って斜めに置き、上もブロックで押さえる。
(2)始めに空気の入った状態の容量を計測する。
備考:計測にはアデックスのLCRメーターAX6040を使用した。
(3)次にセルに水を満たして容量の増加を計測する。
(4)同じように別のセルで、ヘキサン、トリエチルアミンで容量の増加を計測する。
注意:すぐに容器はメタノールで洗浄し、ヘアドライヤーで乾燥する。

<セル>
下板    18×19cm      1mmアクリル板
上板    18×18cm         〃
枠     18×1cm       2mmアクリル板
      17×1cm 2枚       〃
スペーサ  1×1cm  16枚      〃
      6×1cm(上端中央)     〃

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実習3 電気陰性度3D−ボックス(宿題)
(1)図版を印刷したプリントと工作用紙(37×51cmのサイズを半分に切る)を受

                  - 30 -

け取り
(2)蛍光ペン(あるいはクーピーなど)、はさみ、のり、セロテープを準備し
(3)私のホームページを参考にして製作する。
    http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/masa/e10-4.htm

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紹介模型
・正方充填と最密充填(ビー玉)
・2つの最密構造のでき方
・立方最密と六方最密の単位格子
・二酸化炭素の結晶
・水の結晶



                  - 31 -

参 考

実験2「質量と電気量の比(銅の場合)」
<計測例>
  銅  30.565−30.525 = 0.039[g]=39[mg]
  電気量 0.2×600 = 120[C]
  質量/電気量 = 39/120 = 0.325[mg/C]
          理論値 63.5/96500/2 =0329

演示実験3「コンデンサーの容量変化」
<計測例>
  空気 0.096nF ―→ 水        0.252nF
  空気 0.094   ―→ ヘキサン     0.125
  空気 0.096   ―→ トリエチルアミン 0.139
備考:水とエタノールなどの差は出にくい。

比誘電率
 比誘電率は
  εr = ε/ε0 = C/C0
    ε:誘電率   ε0:真空の誘電率
    C,C0:コンデンサーの容量
分子の、分極率 α 、双極子モーメント μ との関係は
  ε0r−1) = NA(α + μ2/3kT )
    NA:単位体積中の分子数
    k:ボルツマン定数
    T:全体温度
ただし気体で成り立つ。液体と固体では分子間の相互作用が強いので取り扱いが困難。
 実際の数値は
    水         78.5(25℃)
    メタノール     32.6( 〃 )
    エタノール     24.3( 〃 )
    1−ブタノール   17.8(20℃)
    ヘプタン       1.9( 〃 )
    ベンゼン       2.3(25℃)
    クロロベンゼン    5.6( 〃 )
    ジエチルエーテル   4.3(20℃)

                  - 32 -

    ニトロベンゼン   34.8(25℃)
    アニリン       6.9(20℃)
    エチルアミン     6.9(10℃)



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追記(11.5)
 4節[a]イオン結合の最後に次を付け加える。

[5]電子のやり取りで生成したイオンは、イオンのまま相手を代えることがよくある。
たとえば硫化ナトリウム水溶液に塩化鉄(U)水溶液を混合すると次のように硫化鉄(U)が
沈でんする。
  Na2S + FeCl2 ―→ FeS + 2NaCl
       塩化鉄(U)   硫化鉄(U)
この場合にナトリウムイオンは陽イオンのまま、相手を硫化物イオンから塩化物イオンに
代えている。また硫化物イオンは陰イオンのまま、相手をナトリウムイオンから鉄(U)イ
オンに代えている。
 このようにイオン結合は電子をやり取りした相手との間にのみ形成されるとは限らない。
したがって原子からイオンが生成する過程と、陽イオンと陰イオンが引き合ってイオン結
合が形成される過程を区別して、イオン結合を「陽イオンと陰イオンが電気的に引き合っ
て形成される結合」と捉えることもできる。



追記(11.10)
 3節[a]の始めに、次の文を付け加える(実験2−2も)。

[1]後で詳しく学習するが、物質は主には、正電気を持つ粒子と負電気を持つ粒子で構
成されている。これらは互いに電気的引力で引き合って集まり、すぐそばは別として、あ
る程度以上離れたまわりに対する影響を打ち消し合う。これは電気的に中性の状態と呼ば
れ、まるで電気が存在しないかようである。だから私たちは、物質が電気を持つ粒子で構
成されていることを実感しにくい。
 冬期になると、しばしばまさつ電気に驚かされる。まさつ電気は上記のことをかいま見
せる現象である。異種の物質をこすり合わせる(接触させる)と、正電気と負電気のバラ
ンスがわずかに崩れて、一方が正に、他方が負に帯電するのである。このように帯電した
電気はまさつ電気ないし静電気と言う。
 実験2−2「静電気を調べる」では、異種の物質をこすり合わせて(接触させて)電気
的バランスを崩してやり、それぞれを静電気メーターの誘導容器に近付けてみることによ
って、物質が電気を持つ粒子で構成されている可能性が窺えた。
 また紙袋に入ったストローが電気的に中性の状態にあるとき、ストローを引き抜くと紙
袋は正に帯電していることが、そのストローを別の静電気メーターの誘導容器に差し入れ
るとストローは負に帯電していることが判った。そしてその電気量は同程度であった。続
いてストローを元の紙袋に収めると、電気的に中性の状態にもどった。これは正電気と負
電気が存在しても、互いに近くにあるとある程度以上離れたまわりからは、その存在を検
出できないことを確認したのである。

実験2−2 静電気を調べる(演示実験)
「静電気メーター」は、誘導容器に静電気を帯びた物質を近付けると、その静電気が正
(プラス)か負(マイナス)かが判り、かつおよその電気量がレベルメーターで表示され
る機器である。一度リセットボタンを押して、誘導容器を電気的に中性の状態にしてから
計測する。
注意:物質が誘導容器に触れると、条件によっては電気が流れて判定が逆になることがあ
   る。
(1)いろいろな物質(物体)をこすり合わせてから、それぞれを誘導容器に近付けてみ
る。
参考:手に持った方は体を通して電気が拡がり、他方と電気量のアンバランスを生じるこ
   とがある。
(2)ストローの紙袋を誘導容器にセロテープで固定し、ストローを静かに引き抜き、こ
れをもう1つの静電気メーターの誘導容器に差し入れる。続いてストローを元の紙袋に収
める。

備考:静電気メーターは田中さんが設計したものである。厳密にはアース端子を基準とす
   る物体につないで使用する。
   回路は、誘導容器(コンデンサーとしてはたらく)と1μFコンデンサーを直列に
   し、後者の電圧をオペアンプで増幅した後、レベル表示するものである。




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