12.2
林 正幸
物質とエネルギー(改訂)
実 験
目 次
実験1 まさつで湯沸かし
モデル実験1 熱運動
実験2 発熱変化と吸熱変化
実験3 ヘスの法則
実験4 メタノールの燃焼熱
演示実験1 蒸気機関車
発展実験
発展実験1 簡単燃料電池
発展実験2 簡単太陽炉の製作
知識と概念へ
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実験1 まさつで湯沸かし

備考:中部大の岡崎さんから譲渡された。
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モデル実験1 熱運動
9×7×5cmくらいの透明ポリ容器(ふた付き)にBB弾を2層になるくらい入れ、
マッサージ器に固定する。容器を水平にしてスイッチを入れ、左右方向と前後方向のBB
弾の運動の激しさに差があるか、観察する。
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実験2 発熱変化と吸熱変化
(a)使い捨てかいろ
(1)鉄粉30gが入った紙コップに食塩薬さじ1杯を加えてしばらく割りばしでかき混
ぜてみる。
(2)それだけでは発熱がないことを確認できたら、ビーカーに水をくんでピペットでそ
の2mLを加え、よくかき混ぜ続けて発熱を調べる。
(3)温度が下がり乾燥した状態になったら、もう一度水3mLを加えてかき混ぜる。
(4)終わったら紙コップごと教卓に返す。
(b)アンモニアの発生
- 1 -
(1)50mLビーカーに、塩化アンモニウム薬さじ2杯と水酸化カルシウム薬さじ2杯
を入れて、ガラス棒でよくかき混ぜる。
(2)アンモニアの発生を確認し、ビーカーの底に触ってみる。
(c)硫酸の水への溶解
(1)100mLビーカーに水約50mLを入れる。ガラス棒でかき混ぜながら濃硫酸
10mLを少しずつ溶解し、温度の変化を観察する。
注意:濃硫酸に水を加えると危険である。
(2)できたうすい硫酸はそのまま教卓に返す。
(d)酢酸ナトリウムの凝固
(1)液体状態の酢酸ナトリウムが入ったポリ袋を手で触り、常温であることを確かめる。
(2)チャックを開いて、結晶の酢酸ナトリウム1粒を投入する。
(3)凝固の様子と温度の変化を観察する。
(4)ポリ袋はそのまま返却する。
<記録>
<準備>
・鉄粉(#300)、食塩
・紙コップ、割りばし、温度計
・50mL三角フラスコ、5mLピペット
・塩化アンモニウム、水酸化カルシウム
・50mLビーカー、ガラス棒
・100mLビーカー、ガラス棒、温度計(かいろと別にする)
・濃硫酸、5mLピペット
・過冷却の酢酸ナトリウム三水和物
(500mLビーカーに結晶酢酸ナトリウム500gと水50mLを入れ、加熱して
融解する。すこし放冷して表面に膜ができ始めたら、チャック付きポリ袋(85×
60mm)に約30mLずつ注ぐ。チャックを閉じ、それを上にして放冷する。)
・小粒の固体の酢酸ナトリウム三水和物
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実験3 ヘスの法則
(イメージ)
同じスタート物質から、異なる2つのコースを通り、同じゴール物質に到達する。
- 2 -
コース1 コース2
水100mLに 水100mLに
過程a:水酸化ナトリウムを加える 過程c:五酸化二リンを加える
過程b:五酸化二リンを加える 過程d:水酸化ナトリウムを加える
そして各過程の温度上昇を計測する。
(薬品の準備)
注意:どちらの薬品も皮膚に激しい作用を持つ。また吸湿性なのでびんのふたを取りっ放
しにしない。
(1)水酸化ナトリウム4.0gを手早く計量し、薬包紙でおひねりにし、広口びんにしま
う。続いてもうひとつ同じおひねりをつくってびんにしまう。
(2)同様に手早く五酸化二リン2.4gのおひねりを2つ別の広口びんに準備する。
(過程a)
(1)乾いたポリコップを3つ重ね、これにメスシリンダーで水100mLを注ぐ。
参考:水酸化ナトリウムの溶解を早めるため、水温は20℃くらいが望ましい。
(2)温度計付きの発泡スチロールのふたをし、コップをまわすようにして振り混ぜ、温
度が安定したら読み取る。
注意:振り混ぜるときに水がこぼれ出ないように注意をする。
参考:温度は0.2℃刻みで(最小目盛りの1/5)読み取る。
コース1のスタート温度( )℃
(3)温度計付きのふたをとり、水酸化ナトリウムのおひねりをピンセットで取り出し、
薬品のみを残らず水に投入し、再びふたをする。
(4)コップをまわすようにして振り混ぜ、水酸化ナトリウムを溶解させる。そして上昇
し切ったときの温度を読み取る。
参考:コップの底から溶解状態が観察できる。
段階aの温度( )℃
(5)ふたをとってBTB0.2mLを加え、変色を確認する。
(過程b)
(6)続いて、五酸化二リンのおひねりをピンセットで取り出し、はさみで上の部分を切
り取ってすこし薬品が見えるようにする。そして薬包紙ごと水に浮かせて再びふたをし、
振り混ぜて五酸化二リンを反応させる。そして上昇し切ったときの温度を読み取る。
段階bの温度( )℃
(過程c)
(1)別のポリコップ(2重)に水道水100mLを注ぎ、振り混ぜて温度が安定したら
読み取る。
- 3 -
コース2のスタート温度( )℃
(2)同様に五酸化二リンを加えて、温度を読み取る。
段階cの温度( )℃
(3)ふたをとってBTB0.2mLを加え、変色を確認する。
(過程d)
(4)同様に水酸化ナトリウムを投入し、温度を読み取る。
段階dの温度( )℃
(かたづけ)
(1)器具を水洗いする。
<記録>
<準備>
・水酸化ナトリウム、五酸化二リン
・薬さじ、薬包紙、てんびん、ピンセット、はさみ
・広口びん ×2
・ポリコップ ×4
・温度計付きの発泡スチロールのふた(自作) ×2
・100mLメスシリンダー
・BTB
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実験4 メタノールの燃焼熱
(イメージ)
メタノールを燃焼させ、その熱エネルギーをアルミ片に貯め、水を加えて全体の温度上
昇を計測する。
(操作)
(1)菓子の缶(半径8.5cm)を断熱容器に収め、アルミ片523gを入れ、温度計を
差し入れてその温度を計測する。
( )℃
参考:菓子の缶は鉄製で154gあり、比熱を考慮するとアルミニウム77gに相当する。
つまり実質的にはアルミ片600gを用いることになる。
注意:温度は0.2℃刻みで読み取る。
(2)正確な目盛りを印したビーカーに水1Lを入れ、ときどきかき混ぜながら温度を計
測する。
- 4 -
( )℃
(3)メタノールを入れたアルコールランプの、キャップの内側を拭ってから被せて全体
の質量を計測する。
( )g
(4)アルミ片をならして丸い金網を被せ、三脚を入れて網を支え、全体を静かに逆さに
する。
(5)アルコールランプに点火して手に持ち、アルミ片をまんべんなく5分間加熱する。
注意:この加熱が結果を左右する。炎は先端が網からすこし離れるようにする。半径が3、
6cmの2つの同心円を頭に描き、順にくり返し炎でたどるように加熱する。
(6)時間が来たらキャップを被せてアルコールランプを消す。菓子の缶と三脚をそのま
ま元にもどして三脚を外し、水1Lを注ぎ、金網を除いて温度計を差し入れ、ガラス棒で
かき混ぜながら、到達温度を計測する。
( )℃
(7)合間を利用してアルコールランプの質量を計測して、燃焼したメタノールの質量を
求める。
( )g
(8)水を捨ててアルミ片を大型バットに取り出し、ブロワーで乾燥する。菓子の缶も乾
燥する。
(9)次のデータを使って、メタノール1molの燃焼熱を計算してみよ。
比熱 アルミニウム 0.88J/℃・g
水 4.2
メタノールのモル質量 32g/mol
<記録>
<準備>
・菓子の缶(「ゴーフル」(1500円)の缶が手ごろ 直径17cm、高さ9cm、質
量154g、鉄製)
・断熱容器(発泡スチロールで自作)
・丸い金網
(20meshステンレス網を切断し、周囲を折り曲げてつくる)
・三脚
・アルミ片 523g
(幅10mm、厚さ1mm、長さ2mのアルミLアングルを、電気のこぎりで2cm
- 5 -
幅に切断する。6本で予備もできる。)
・はかり(1kg用)
・電子天びん(200g用で、0.01gまでは計測できるもの)
・アルコールランプ(ガラス製)
(ランプの芯は短くして炎が小さくなるようにする)
・メタノール
・1Lビーカー
(正確な1Lの目盛りを印しておく)
・アルコール温度計、ガラス棒
・大型バット、ブロワー
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演示実験1 蒸気機関車
<準備>
・模型の蒸気機関車(ナカムラ)
・ミシン油、つまようじ、テッシュ
・注射器、水、プラスドライバー
・固形燃料、カッター、マッチ、軍手
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発展実験1 簡単燃料電池
(1)バットの底を上にして炭素板を乗せ、クッキングペーパー2枚を被せ、1mol/L
水酸化ナトリウム水溶液14mLを染み込ませる。
(2)もう1つの炭素板を乗せて手まわし発電機に接続し、2分ほど電気分解をして、す
ぐに発電機のクリップを外す。
参考:発電機は右まわしするとコンセントの上側が正極になる。
たとえば上の炭素板をプラス極になるように決めておく。
(3)そしてメロディテスターを接続する。
注意:テスターは極性があるので、プラス(赤コード)をプラス極に接続する。
(4)続いてソーラーモーターを接続する。
(5)終わったらクッキングペーパーは廃棄容器に捨てる。
参考:事後にクッキングペーパーはホウ酸で中和処理する。
<記録>
- 6 -
<準備>
炭素板(170×40×5mm ターミナル付き) ×2
クッキングペーパー(5×14cm) ×2
バット
1mol/L水酸化ナトリウム水溶液、5mLピペット
手まわし発電機
メロディテスター
ソーラーモーター、クリップコード
廃棄容器(バット)、ピンセット
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発展実験2 簡単太陽炉の製作
(イメージ)
等辺台形を貼り合わせてパラボラをつくる。台形は2段で、1段あたり8枚である。焦
点距離が10cmになるように設計されている。
(製作)
(1)工作用紙1枚と1/3に次の図形を描く。
等辺台形を8枚ずつ、合計16枚
1段目 上底:3.8cm、下底: 7.8cm、高さ5.0cm
2 7.8 11.4 5.0
参考:7.8 11.6 19.4 23.2 31.0 34.8 42.6 46.4
2.0 5.8 13.6 17.4 25.2 29.0 36.8 40.6 48.4
11.4 19.2 30.6 38.4
1.8 9.6 21.0 28.8 40.2
1段目を固定する長方形 4組
3.0×2.0cm、3.0×2.0cm
2段目の台形の支える長方形 4組
7.0×1.6cm、7.0×4.3cm、7.0×4.0cm
参考:1.6 5.9 9.9
台板
28.0×28.0cm
(2)台形部分の裏に、のりでアルミホイルをしわにならないように貼り付ける。
(3)すべての図形を切り出す。
(4)セロテープで1段目の台形を、1カ所を除いて貼り合わせる。
(5)1段目を固定する長方形2枚をつないで4組とし、1つおきに半分を台形に貼り付
ける。
- 7 -
(6)1段目につなげて、2段目の台形を、1カ所を除いて貼り合わせる。
(7)2段目の台形の支える長方形3枚を、上の順につないで4組とし、1つおきに台形
に貼り付ける。
参考:1段目を固定する長方形と同じ列にする。
(8)セロテープで貼り合わせて、パラボラを完成する。
(9)台板に固定する。
参考:1段目の台形の上底は、中心から4.6cmに来る。
2段目の台形を支える底面の外端は、中心から13.8cmに来る。
(実験)
(10)大陽に向け、焦点に手先をかざしてみる。
(11)先生が製作した大陽炉を使って、ゆで玉子(「ひかり玉子」)をつくる。
<記録>
<準備>
・工作用紙(51×37cm)と1/3(51×12cm)
・アルミホイル
・のり、はさみ、定規、セロテープ
<追記>
ポリカーボネートミラー(厚さ0.5mm)を使えば、すこし高価になるがしっかりして
いるので、パラボラを固定したり支えたりする必要がなく、したがって台紙も不要になり、
工作が簡単になる。
(1)ポリカーボネートミラーで上の寸法の等辺台形16枚を切り取る。
(2)セロテープで1段目の台形を、1カ所を除いて貼り合わせる。
(3)2段目の台形を1段目に貼り合わせる。
(4)1段目の残っている1カ所と、それに続く2段目を貼り合わせる。
(5)2段目の台形のすき間を貼り合わせる。
(6)ミラーの保護シートをめくる。
- 8 -
知識と概念
目 次
1.力学的エネルギー
2.状態とエネルギー
3.化学反応とエネルギー
4.ヘスの法則と生成熱
5.結合のエネルギー
6.物質のエネルギーの利用
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エネルギーという用語は身近である。「あの人はエネルギーがある」「エネルギーが切
れて動けない」とか、電気エネルギー、熱エネルギー、太陽エネルギー、あるいはエネル
ギー問題と言ったようである。しかし改めてエネルギーとは何かと尋ねられたら、どう答
えればよいだろうか。
1.力学的エネルギー
始めに高校物理学で出てくる力学的エネルギーについて説明する。
[a]力学的エネルギー
[1]力学的エネルギーには、運動エネルギーと位置エネルギーの2つの姿がある。
ある速度で運動している物体が持つエネルギーは「運動エネルギー」と呼ばれる。運動
エネルギー Ek は、物体の速度を v 、質量を m とすると次のように表される。
Ek = (1/2)mv2
つまり運動エネルギーは速度の2乗に比例する。
[2]位置エネルギーは初歩的には「高い位置にある物体ほど大きい位置エネルギーを持
つ」とされる。もうすこしレベルアップするには、図のように宇宙的視野で見直すとよい。

地面は地球である。物体が落下するのは、物体と地球が万有引力で引き合っているためで
ある。高いとは物体と地球の距離が大きいことである。
こうして「位置エネルギー」とは、ある距離に位置する引き合う物体「どうし」が持つ
エネルギーである。そして距離が大きいほど位置エネルギーが大きい。なお引力の種類は
万有引力だけでなく、電気的引力でも磁気的引力でも構わない。ちなみに、たがいに反発
し合う物体どうしにも位置エネルギーは存在するが、この講座では踏み込まない。
参考:高校では位置エネルギーは
Ep = mgh
と書かれる。これは地表付近という限られた領域でのことである。
- 9 -
[b]仕事とエネルギー保存則
[1]エネルギーを持つ物体(あるいは物体どうし)は、仕事をすることができる。そし
て仕事をした相手物体にそのエネルギーを与える。「仕事をする」とは相手物体に力を及
ぼし、その向きに移動させることである。たとえば位置エネルギーを持つ物体A(と地
球)は、左図のように滑車を使えば他の物体Bを持ち上げることができる。

こうしてエネルギー量は、仕事と同じ単位であるジュール[J]で表される。そしてエ
ネルギーとは「仕事をする能力」であるとされる。
[2]右図に示した振り子の運動を考えてみよう。A点では振り子(と地球)は位置エネ
ルギーのみを持つ。そしてB点に来ると、振り子は運動エネルギーを持つようになり、位
置エネルギーを減らす。さらにC点に来ると、再び位置エネルギーのみになり、その量は
A点における場合に等しい。こうして振り子では、位置エネルギー(の一部)と運動エネ
ルギーは入れ代わっており、かつ両方のエネルギーの合計は一定に保たれる。
このようにエネルギーは姿を変えても、全体の量は一定に保たれることは自然の根本原
理であり、エネルギー保存則と呼ばれる。そして滑車を使う例のように、仕事を通してエ
ネルギーをやり取りする場合にも、エネルギーの全体の量は一定に保たれる。
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2.状態とエネルギー
以上、イメージアップのために足早に説明をした。次の対象は熱である。
[a]熱
[1]常温の水をバーナーで加熱すると温度が上昇する。
実験1では、銅パイプに少量の水を入れ、パイプにヒモを巻いてこすると、やがて水が
沸とうした。仕事をしても水の温度は上がる(正確には銅パイプの温度が上がり、熱が伝
導して水の温度が上がる)。
熱を加えることと仕事をすることは同等である。熱量も仕事と同じ単位であるジュール
[J]で表される。
- 10 -
[2]熱とはよく使われる用語であるが、物理学では次のように定義される。
「温度が異なる2つの物体が接触するとき、高い温度の物体から低い温度の物体
に移動するエネルギー」
したがって「加熱する」は正しい表現であるが、「風邪を引いて熱がある」は間違った表
現になってしまう。つまり移動する前やその後ではそれは「熱」とは呼べない。
[b]状態と熱
講座プラン「物質の状態」では、固体、液体、気体の3つの状態について学習した。
−10℃の固体の水1mol(18gの氷)をバーナーで加熱していく場合を考える。
始めは熱量を37J吸収するごとに温度が1℃ずつ高くなる。つまり合計370Jの熱量
を吸収すると0℃の氷になる。次に加熱するとしばらくは、温度は0℃のままで氷が融解
して液体の水になっていく。6000Jの熱量を吸収するとそれが完了して0℃の液体の
水になる。
次は熱量を75J吸収するごとに温度が1℃ずつ高くなる。7500Jの熱量を吸収す
ると100℃の液体の水になる。続いて沸とうが起こり(圧力は1atmとする)、
40670Jの熱量を吸収するとそれが完了して100℃の水蒸気になる。
備考:ここでは固体や液体の表面からの昇華や蒸発は無視できるとしている。
最後は熱量を37J吸収するごとに温度が1℃ずつ高くなる。110℃になるまでの、
温度と吸収する熱量の関係は次のグラフのようになる。
参考:同じ「37J」は偶然に一致したのである。

- 11 -
これは110℃の水蒸気がまわりに熱を放出して冷めていくグラフでもある。37J放
出するごとに1℃下がり、40670J放出して凝縮が完了して100℃の水になり、
75J放出するごとに1℃下がり、・・・となる。
[c]熱エネルギー
[1]氷では分子間の引力によって分子どうしは引き合い規則的に配列している。と言う
ことは分子は位置エネルギーを持つ。また分子はそれぞれの格子点を中心に振動している。
と言うことは分子は熱運動により運動エネルギーを持つ。
このように物質はエネルギーを持つのである。もちろん物質のエネルギー量はその質量
や物質量に正比例する。
[2]物質のエネルギーのうち、熱運動に関係するエネルギーはとくに「熱エネルギー」
と呼ばれる。熱運動に関して講座プラン「物質の状態」で
「温度は熱運動の平均の激しさを示す」
と学習した。ここで「激しさ」はもうすこし正確にはエネルギーのことである。
熱運動は均等化する性質がある。これは化学の基本原理である。それは分子どうしが衝
突などを通して互いにエネルギーをやり取りするからである。氷ではたとえば、分子の
x−方向の振動とy−方向の振動の平均の激しさは同じになる。
モデル実験1では、マッサージ器に固定した、BB弾が入った容器を水平にして、スイ
ッチを入れると、左右方向と前後方向のBB弾の運動の激しさに差は見られなかった。
[3]熱伝導をイメージしてみよう。高温(熱運動が激しい)の物体と低温(熱運動が穏
やかである)の物体が接触すると、高温から低温へ熱が伝導する。これは2つの物体全体
の熱運動の激しさが均等化し、温度が等しくなる現象である。このとき高温の物体の熱エ
ネルギーの一部が低温の物体に移動する。熱の正体は「移動する」熱エネルギーである。
しかし[a]で学習したように、熱は熱エネルギーそのものではない。
備考:厳密には熱には放射エネルギーも関係する。
熱エネルギーという用語は使い勝手がよい。たとえば「熱エネルギーを加える(加熱す
る)」と「風邪を引いて(いつもより)熱エネルギーがある」は共に正しい表現である。
[d]物質のエネルギー
[1]大づかみに物質のエネルギーの内容を見てみよう。ただし4節[b][4]で重要
な付け加えがある。
−10℃の氷1molに熱エネルギーを加えると、分子の熱運動の平均の激しさが大き
くなり(温度が高くなり)、氷の熱エネルギーが1℃ごとに37Jずつ増加していく。
そして温度が0℃になると、熱エネルギーを加え続けても温度が上昇しない。つまり熱
運動の平均の激しさは変わらない。それなら6000Jの熱エネルギーは物質の中でどん
- 12 -
な姿になるか。それは位置エネルギーが増加する。固体から液体への融解という変化では、
分子の結び付きがゆるむ。つまり分子どうしの距離がいくらか大きくなる。このとき固体
が吸収する熱エネルギーは融解熱(1molの場合はモル融解熱)と呼ばれる。
ここで注意をしておく。上の2つの過程ではいずれも物質のエネルギーが増加する。そ
して[b]で確認したように、これらの過程はもどることができる。つまり凝固の過程で
は融解熱と同じ量の熱エネルギーを放出し、温度が下がる過程では、1℃ごとに37Jの
熱エネルギーを放出する。つまりここでもエネルギー保存則が成り立っている。
[2]水の昇温と沸とうも同じようである。
沸点において、融解熱よりはるかに大きい40670Jという蒸発熱を吸収する。これ
は液体から気体への変化では、分子どうしがばらばらになる、つまり距離が相当に大きく
なるためであり、それによって増加する位置エネルギーが大きいためである。
備考:この過程で、大気に対して気体がする仕事などには触れないでおく。
気体状態における、分子どうしの衝突をイメージしてみよう。話を同種の分子が正面衝
突する場合に限定する。それぞれ一定速度で接近する分子は引力圏に入ると互いに加速し、
運動エネルギーが増加し、その分だけ位置エネルギーが減少する。しかし衝突して跳ね返
ると位置エネルギーと運動エネルギーは元の大きさにもどる。そして分子はたがいに運動
の向きと運動エネルギーを交換する。
衝突は完全弾性衝突であり、それによって熱運動の平均の激しさが減少することはない。
このことは気体の温度が下がっていかないことから納得できる。
まとめをしよう。物質のエネルギーは運動エネルギーと位置エネルギーである。物質の
エネルギーは温度が高いほど大きい。また同じ温度でも固体より液体が、液体より気体が
大きいエネルギーを持つ。
[3]比熱について触れておく。状態変化を伴わないで、物質の温度が1℃上昇するごと
に吸収する熱エネルギーは比熱と呼ばれる。これには2つの単位がある。
物質1gあたりの場合 J/℃・g
〃 1mol 〃 J/℃・mol(モル比熱と言う)
前者の数値にモル質量(分子量)を掛ければ、後者の数値になる。
参考:J/℃・gのように、温度に絶対温度の単位ケルビン[K]を使うこともある。
講座プラン「気体状態」で学習したように、絶対温度 T はせっ氏温度 t と次の
ように関係する。
T = t+273
そして1刻みの温度幅は同じである。
比熱は講座プラン「モル単位(物質量)の世界」でも学習した。次にいくつかの物質の
比熱を紹介する。
水(液体 0〜100℃) 4.19J/℃・g
- 13 -
海水(17℃) 3.93
砂(20〜100℃) 0.80
空気(乾燥 20℃) 1.01(1atm下の数値)
鉄(0℃) 0.44
パラフィンろう(0〜20℃) 2.9
比熱は広い温度範囲では一定とは言えない。また水の比熱などは熱エネルギーの量を測る
のに利用される(4節[a]と「c」)。
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3.化学反応とエネルギー
[a]発熱変化と吸熱変化
[1]実験2のまとめをしよう。なお(c)(d)のように化学反応ではないものも含ん
でいる。
(a)では、鉄粉に食塩を混ぜてすこし水を加えてかき混ぜると、温度が90℃くらい
まで上昇した。このとき空気中の酸素を含めて次の反応が起きる。
4Fe + 3O2 + 6H2O ―→ 4Fe(OH)3
水酸化鉄(V)
ここで食塩は反応を促進する触媒のはたらきをする。
(b)では、塩化アンモニウムに水酸化カルシウムを加えてかき混ぜると、アンモニア
が発生してビーカーの底が冷たくなった。このとき次の反応が起きる。
2NH4Cl + Ca(OH)2 ―→ CaCl2 + 2H2O + 2NH3
塩化カルシウム
(c)では、水に少しずつ濃硫酸を溶解すると、沸とうするほどに熱くなった。
(d)では、液体状態の酢酸ナトリウムに固体の酢酸ナトリウム1粒を加えると、凝固
が起こって温かくなった。
液体を冷却すると凝固点以下になっても固体にならないことがある。凝固点以下の温度
で液体である状態は過冷却と呼ばれる。
[2](a)(c)(d)のように温度が高くなる場合は、時間が経つとまわりに熱エネ
ルギーを放出して、まわりと同じ温度になる。また変化前の物質もまわりと同じ温度であ
った。このように変化の前後で温度を同じにしたとき、まわりに熱エネルギーを放出する
変化は発熱変化と呼ばれる。
(b)のように温度が低くなる場合は、時間が経つとまわりから熱エネルギーを吸収し
て、まわりと同じ温度になる。変化の前後で温度を同じにしたとき、まわりから熱エネル
ギーを吸収する変化は吸熱変化と呼ばれる。
備考:厳密には圧力が1atmの定圧系を前提にする。
- 14 -
化学反応に伴って物質が放出ないし吸収する熱エネルギーは反応熱と呼ばれる。そして
熱エネルギーを吸収する場合はマイナスの符号を付ける。そして出てくる数値はとくに断
らない限り、変化の前後の温度が25℃におけるものである。
[b]熱化学方程式
[1]エネルギー保存則から考えると、変化前の物質のエネルギーが変化後の物質のエネ
ルギーより大きければ、変化に伴って余分になるエネルギーをまわりに放出する。逆に変
化後の物質のエネルギーの方が大きければ、不足するエネルギーをまわりから吸収するは
ずである。化学的変化ではまわりとやり取りするエネルギーは熱エネルギーであることが
多い。
ただし電池を組み立てれば、電気エネルギーを放出することもあり、燃焼反応では少し
ばかり放射エネルギー(光)を放出するので、留意しておこう。
備考:混乱を避けるため、変化に伴う仕事は無視している。
視点を変えると、発熱変化であれば変化前の物質のエネルギーが変化後の物質のエネル
ギーより大きく、吸熱変化であれば変化後の物質のエネルギーの方が大きいわけである。
[2]さらにくわしく説明しよう。水素と酸素が反応する場合を考える。水素1molと
酸素(1/2)molが反応して、液体の水1molが生成するとき、まわりに286kJの熱
エネルギーを放出する(25℃、1atmの下において)。このことは次のように書き表
される。
H2 + (1/2)O2 = H2O(液) + 286kJ
ここで H2 は水素を表すと同時に、水素1molのエネルギーの量を表す。つまり数学の
代数のように、H2 はある数値の代わりの記号でもある。同様に O2 は酸素と、酸素1
molのエネルギーを表す。したがって (1/2)O2 は酸素(1/2)molのエネルギーである。
そして H2O(液) は液体の水と、その1molのエネルギーである。
ちなみに水素や酸素は通常気体であるが、水は3つの可能性があるので、(液) というよ
うに状態を指定する必要がある。2節[d]で、物質のエネルギーは温度と共に状態によ
っても変化することを学習した。
すると上の式は、水素1molと酸素(1/2)molのエネルギーは、液体の水1molの
エネルギーに286kJを加算した量に等しいことを意味する。このような式は熱化学方
程式と呼ばれる。なお左辺と右辺が等号で結ばれることに注意しよう。
[3]それでは液体の水1molがまわりから44kJの熱エネルギーを吸収して水蒸気
になる、蒸発の熱化学方程式はどうなるだろうか。
H2O(液) = H2O(気) − 44kJ
つまり液体の水1molのエネルギーは、水蒸気1molのエネルギーから44kJを減
算した量に等しい。吸熱変化では右辺の数値の符号がマイナスになる。
- 15 -
備考:上の蒸発熱は圧力が0.0313atmの下における数値である。1atmとの差は
ここでは無視する。ちなみに25℃,1atmの仮想的な水蒸気ができるとすると、
近似的に蒸発熱は35.4kJ/molと計算される。
問1 次の変化を熱化学方程式で表せ。
(1)鉄1mol、酸素(3/4)mol、液体の水(3/2)molが反応して水酸化鉄(V)1
molが生成すると、まわりに403kJの熱エネルギーを放出する。
(2)塩化アンモニウム1molと水酸化カルシウム(1/2)molが反応して、アンモニア
1molが発生して液体の水などが生成すると、まわりから78kJの熱エネルギーを吸
収する。
[4]ここでもう一度物質のエネルギーについて考えてみよう。物質はその種類によって
も異なるエネルギーを持つことが分かってきた。
分子は原子が化学結合してできている。分子をつくる原子は引き合っている。と言うこ
とは分子はそれによって位置エネルギーを持つ。
分子とそれをつくるばらばらの原子では、後者のエネルギーの方が大きい。たとえば2
molの水素原子は、1mlの水素分子より436kJだけ大きいエネルギーを持つ。
2H = H2 + 436kJ
物質は色々な原子が化学結合してできているので、それぞれの物質は異なる位置エネル
ギーを持つ。
また2節[d]で学習したように、同じ物質でも温度や状態によって、異なるエネルギ
ーを持つ。
まとめると、物質は種類によって、温度によって、状態によって、それぞれ固有のエネ
ルギーを持つ。エネルギーとは、物質をして、その種類であり、その温度であり、その状
態であらしめる根源になるものである。エネルギーを持たずに物質が存在することはない。
言い換えると、物質がその温度を変えたり、状態を変えたり、化学反応で別の種類の物質
に変わったりするためには、エネルギー保存の法則が貫いているので、必ずエネルギーを
与えたり奪ったりする必要がある。
参考:深入りはしないが、物質のエネルギーは圧力によっても異なる。
アインシュタインの相対性理論によると、物質はエネルギーそのものである。質量が
m の静止する物質のエネルギー E は、光速を c とすると次のように表される。
E = mc2
- 16 -
備考:現代物理学によると、その正体がまだ解明されていない「暗黒エネルギー」が、宇
宙を加速的に膨張させている。
[c]エネルギー変化グラフ
[1]発熱変化や吸熱変化はグラフに描いても分かりやすい。上で取り上げた水素1
molが燃焼する変化では次のようである。

横軸は変化を表し、左の方は変化前を、右の方は変化後を意味する。別の講座プランでは
変化の最中を扱うこともある。縦軸は物質のエネルギーを表す。左の横線の高さは水素1
molと酸素(1/2)molのエネルギーを示し、右の横線の高さは液体の水1molのエネ
ルギーを示す。右の横線が低く、落差は286kJである。右の横線の方が低い場合は発
熱になる。
なお物質のエネルギーは、エネルギーを計測する基準によって変化する。しかしどのよ
うな基準を選ぼうとも落差は同じになる。こうして横線の高さそのものは明示しないこと
もある。
問2 問1の変化をエネルギー変化グラフで描け。
[d]熱化学方程式の演算
[1]熱化学方程式は代数式であるので、数学的な演算をして新しい方程式を導き出すこ
とができる。
たとえば上の水素1molが燃焼する反応の熱化学方程式は次のように変形できる。
H2O(液) = H2 + (1/2)O2 − 286kJ
この方程式から、液体の水1molが分解されて水素1molと酸素(1/2)molが生成す
ると、まわりから286kJの熱エネルギーを吸収することが分かる。
[2]次の2つの熱化学方程式がある。
C − CO + (1/2)O2 = 111kJ
- 17 -
C + O2 = CO2 + 394kJ
CO + (1/2)O2 = CO2 + 283kJ
上式から下式を辺々減算して整理してみよう。
C + (1/2)O2 = CO + 111kJ
この方程式から、炭素1molと酸素(1/2)molが不完全燃焼して一酸化炭素1molが
生成すると、まわりに111kJの熱エネルギーを放出することが分かる。
上の2つの熱化学方程式は実際の計測でも容易に得られるが、それから導き出される下
の方程式は計測が容易ではない。しかしこのように理論的に得ることができる。このこと
は次節で生成熱としてさらに深める。
[e]補 足
[1]実験2(c)では、硫酸1molが十分な水に溶解すると、まわりに95kJの熱
エネルギーを放出する。この熱化学方程式は次のようである。
H2SO4 + aq = H2SO4aq + 95kJ
ここでaqは十分な水を、 H2SO4aq は水に溶解した硫酸1molを意味する。もし
水が少ないと、その硫酸水溶液に水を追加するときさらに発熱する。講座プランでは十分
な水を使う場合のみを扱う。
[2]実験2(d)に関連して、「凍れば冷たい、だから水の凝固は吸熱変化ではない
か」と疑問に感じる生徒がいる。固体は加熱して液体になるから、液体のエネルギーは
固体のエネルギーより大きい。であれば、凝固が発熱変化であるのは当然のことである。
水を凍らせるにはまわりを0℃より低くして液体の水から熱エネルギーを奪う必要があ
る。はじめに液体の水の温度が下がり冷たくなっていく。このとき液体の水はまわりに熱
エネルギーを放出する。これは発熱の過程であるが、温度が変化するので発熱変化とは呼
べない。そして凝固では、0℃の水が0℃の氷になる。決して冷たくなっているわけでは
ない。このとき液体の水はまわりに熱エネルギーを放出する。これは発熱変化である。
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4.ヘスの法則と生成熱
[a]ヘスの法則
[1]3節では、物質は種類によって、温度によって、状態によって、それぞれ固有のエ
ネルギーを持つことを学習した。そしてエネルギー保存則がいつでも成り立つ。
同じスタート物質から、異なる2つのコースを通り、同じゴール物質に到達する場合を
考える。コースが異なっても、スタート物質のエネルギーとゴール物質のエネルギーは決
まっているので、まわりに放出ないし吸収する熱エネルギーは両方のエネルギーの差にな
り、同じになるはずである。これはヘスの法則と呼ばれる。この法則を検証してみよう。
- 18 -
[2]実験3のまとめをしよう。
スタート物質は次のようである。
水 H2O 100ml=100g
水酸化ナトリウム NaOH 4.0g=0.1mol
五酸化二リン P2O5 2.4g=(0.1/6)mol=0.017mol
途中の物質は次のようである。
コース1 五酸化二リンと、水酸化ナトリウム水溶液(塩基性)
コース2 水酸化ナトリウムと、リン酸水溶液(酸性)
ちなみに五酸化二リンと水からリン酸ができる反応式は次のようである。
P2O5 + 3H2O ―→ 2H3PO4
そして終わりの物質は次のようである。
リン酸ナトリウム Na3PO4 の水溶液 106.4g
水酸化ナトリウムと五酸化二リンの量は、過不足なくすべてリン酸ナトリウムになるよう
に計算してある。全体の反応式は次のようである。
P2O5 + 6NaOH ―→ 2Na3PO4 + 3H2O
[3]まわりと断熱して、どれだけ温度が上昇するかを計測した。次はその計測例である。
コース1 途中の温度上昇 9.8℃
全体の 〃 24.0
コース2 途中の温度上昇 7.4
全体の 〃 23.8
途中の温度上昇は異なるが、ゴールの温度上昇はほとんど一致する。できるリン酸ナトリ
ウム水溶液の量と濃度は同じであるから、断熱を解除してまわりと同じ温度になるように
すれば、つまり定温定圧変化において2つのコースとも同じ量の熱エネルギーを放出する。
山登りに例えてみよう。ふもとからどのコースで頂上に至ろうとも、登った高さは同じ
であり、頂上やふもとの標高が物質のエネルギーに相当する。これに対して歩いた距離は
コースに依って異なる。歩いた距離はまるで実験に要する時間のようである。ちなみに発
熱変化では山下りの方が適切である。
[4]計測例から、水酸化ナトリウムが十分な水に溶解する場合の熱化学方程式を求めて
みよう。水溶液の濃度が低いので、その比熱は水と同じ4.2J/℃・gとする。
水酸化ナトリウム4.0g=0.1molを、100ml=100gの水に溶かすと、温
度が9.8℃上昇した。したがってまわりの温度にもどるとき
4.2×104×9.8 = 4280[J]= 4.3[kJ]
の熱エネルギーを放出する。したがって
NaOH + aq = NaOHaq + 43kJ
となる。これは文献値45kJ/molとよく一致している。
- 19 -
問1 五酸化二リン2.4g=0.017molを100gの水に溶かすと、温度が7.4℃
上昇した。次の熱化学方程式のQを求めよ。
P2O5 + 3H2O(液) + aq = 2H3PO4 aq + QkJ
(答 Q=190)
[b]生成熱
[1]化学的変化における左辺の物質と右辺の物質の全体としての差だけでなく、個々の
物質1molのエネルギーを表す工夫をする。
このためにエネルギーを計測する基準を「すべての単体のエネルギーは0kJとする」
と定める。そして物質の生成熱を「物質1molがその成分元素の単体から生成するとき
まわりに放出する熱エネルギー」と定義する。
[2]たとえば3節の熱化学方程式
H2 + (1/2)O2 = H2O(液) + 286kJ
から、液体の水の生成熱は286kJ/molである。この変化を新しい基準でエネルギー
変化グラフに描くと左図のようになる。

つまり液体の水のエネルギーは−286kJ/molである。
エチレン C2H4 の生成熱は−52kJ/molである。マイナスの符号はエチレンが単
体から生成するときにまわりからエネルギーを吸収することを意味する。その熱化学方程
式は次のようである。
2C + 2H2 = C2H4 − 52kJ
またグラフは右図のようになり、エチレンのエネルギーは52kJ/molである。このよ
うに物質1molのエネルギーと生成熱は符号が反対になるので注意を要する。
[3]生成熱を利用して、次のようにさまざまな熱化学方程式をつくることができる。
[例題]エチレン、二酸化炭素、液体の水の生成熱は、それぞれ−52,394,286
- 20 -
kJ/molである。エネルギー変化グラフを描いて、エチレンが完全燃焼する場合の熱化
学方程式のQを求めよ。
C2H4 + 3O2 = 2CO2 + 2H2O(液) + QkJ

答 Q=1412
[c]燃焼熱
多くの物質ではその生成熱を直接に計測するのは難しい。そこで燃焼に伴う反応熱(燃
焼熱)を計測して、それから熱化学方程式を使って計算する。
実験4では、アルコールランプのメタノールを燃焼し、その燃焼熱をアルミ片(容器を
考慮して実質600g)に吸収させ、それに水1000mLを加えて温度を計測した。次
はその計測例である。
始めのアルミ片の温度 5.0℃
始めの水の温度 4.8
終わりのアルミ片と水の温度 9.4
燃焼したメタノール 1.26g
アルミ片が吸収した熱エネルギーは、その比熱0.88J/℃・gを使って
0.88×600×(9.4−5.0)= 2320[J]
水が吸収した熱エネルギーは
4.2×1000×(9.4−4.8)= 19320[J]
である。したがってメタノールが燃焼で放出した熱エネルギーは
2320+19320 = 21640[J]= 21.64[kJ]
メタノール1molの燃焼熱は、そのモル質量32g/molを使って
21.64×(32/1.26)= 550[kJ/mol]
である。ちなみに文献値は639kJ/molである。より正確な計測にはボンブ熱量計を
用いる。正確な熱化学方程式は次のようである。
CH3OH + (3/2)O2 = CO2 + 2H2O(気) +639kJ
- 21 -
問2 水素と炭素の燃焼熱(熱化学方程式)は次のようである。
H2 + (1/2)O2 = H2O(気)+ 242kJ
C + O2 = CO2 + 394kJ
上のメタノールの燃焼熱(文献値)と合わせて、メタノールの生成熱を計算せよ。
(答 239kJ/mol)
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5.結合のエネルギー
[1]原子どうしの結合の強さは、素朴には引き合う力の大きさで計れるように思える。
講座プラン「物質の状態」の1節[b]では、分子間の距離と分子どうしの力の関係をグ
ラフを使って学習した。実は原子どうしの結合も同じようである。原子間の距離によって
引き合う力は異なり、近づき過ぎると反発力に変わる。結合している原子どうしが平均の
距離にあるとき、両者の間には引力も反発力もはたらかない。
結合の強さは、結合している原子どうしを引き離すのに必要なエネルギーの大きさで計
るべきである。
参考:結合している原子どうしを引き離すとき、原子どうしの間には引力がはたらく。だ
から結合している原子どうしに対して仕事をする、つまりエネルギーを与える必要
がある。
それは結合が切れるときにまわりから得るエネルギーと言ってもよい。あるいは結合の強
さは、ばらばらの原子どうしが結合するときにまわりに失うエネルギーの大きさで計るべ
きである。両者は等しく、はらばらの原子が持つエネルギーと結合した分子が持つエネル
ギーの差である。この講座プランでは、後者のエネルギーを結合エネルギーと呼ぶことに
する。
備考:通常は前者のエネルギーを結合エネルギーと呼ぶ。
すでに講座プラン「化学結合」の5節[b]では、共有結合することはエネルギーのくぼ
地に落ちることと学習した。
[2]次の熱化学方程式の意味を考えてみよう。
2H = H2 + 436kJ
これはばらばらの水素原子2molと水素分子1molのエネルギー差が436kJとい
うことである。もちろんばらばらの原子の方が分子よりエネルギーが大きいことは言うま
でもない。水素分子には水素水素結合 H−H が含まれているので、この結合1molの
結合エネルギーが436kJである。
H−H の結合エネルギーは436kJ/mol
いくつかの単体の例を上げる。
- 22 -
2Cl = Cl2 + 242kJ
2O = O2 + 499kJ
2N = N2 + 946kJ
Cl−Cl の結合エネルギーは242kJ/mol
O=O 499
N≡N 946
さらに化合物の例を上げる。
2H + O = H2O(気) + 930kJ
C + 4H = CH4(気) + 1662kJ
水分子は水素酸素結合を2つ含むので
H−O の結合エネルギーは465kJ/mol
メタン分子は炭素水素結合を4つ含むので
C−H の結合エネルギーは416kJ/mol

図
[3]水素酸素結合や炭素水素結合は、別の分子の中にも含まれる。たとえばメタノール
CH3OH には、炭素水素結合が3つ、水素酸素結合が1つ、そしてさらに炭素酸素単結
合 C−O が1つ含まれる。そしてどの水素酸素結合もどの炭素水素結合も、似た数値に
なることが分かっている。そこでそれらを平均して表にすると次のようである。
結合エネルギー
H−O 463kJ/mol C−H 413kJ/mol
C−O 352 C−C 348
C=C 607 C≡C 828
C=O 724 H−N 391
H−S 130 H−Si 295
上の表を使って次の熱化学方程式の Q の値を求めてみよう。
C + 4H + O = CH3OH(気) + Q[kJ]
メタノール
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C−H 413×3 = 1239
C−O 352
H−O 463(+
2054 = Q
実際の数値は2040kJであり、よく一致する。
[4]イオン結合に移ろう。
Na + Cl = NaCl(固) + 813kJ (1)
Mg + O = MgO(固) + 999kJ
これは共有結合と同じようには扱えない。前者で見ると、固体の塩化ナトリウムはナトリ
ウムイオン Na+ と塩化物イオン Cl- が、それぞれ相手のイオンをまわりにいくつも
引き寄せる形で集合している。だから次の3つの過程に分けて考える。
@ナトリウム原子が電子を失ってナトリウムイオンになる(このとき得るエネルギーは
イオン化エネルギーと呼ばれる)。
Na = Na+ + e- − 496kJ
A塩素原子が電子を得て塩化物イオンになる(このとき失うエネルギーは電子親和エネル
ギーと呼ばれる)。
e- + Cl = Cl- + 347kJ
備考:電子親和力は誤解を避けるため、電子親和エネルギーとした。
まず2つの方程式の辺々をたし算すると
Na + Cl = Na+ + Cl- −149kJ (2)
つまりナトリウム原子と塩素原子が電子をやり取りしてナトリウムイオンと塩化物イオン
になるだけでは、むしろエネルギーを必要とする。イオン結合になるのは
Bナトリウムイオンと塩化物イオンが電気的引力で引き合って集合する。
Na+ + Cl- = NaCl(固) + Q'[kJ] (3)
という過程が不可欠である。方程式(2)と(3)の辺々をたし算すると
Na + Cl = NaCl(固) + Q'[kJ] − 149kJ
方程式(1)と比較して
813 = Q'−149
Q' = 962
となる。このように Q' の大きさがものを言う。
過程Bでは、イオンが小さいほどよく接近でき位置エネルギーが小さくなって Q’が大
きくなり、イオン結合は強くなる。つまりイオン半径が重要になる。またイオンの価数が
大きいほど引力が大きく位置エネルギーが小さくなって Q’が大きくなり、イオン結合は
強くなる。
酸化マグネシウムの場合は、第1イオン化エネルギーと第2イオン化エネルギーの合計
- 24 -
や、第1電子親和エネルギーと第2電子親和エネルギーの合計を扱うことになり複雑化す
る。
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6.物質のエネルギーの利用
[a]熱エネルギーの利用
[1]物質のエネルギーを利用するには、化学的変化によってエネルギーがより小さい物
質に変化させればよい。
人類は太古から物質を燃焼させ、熱エネルギーを取り出して利用してきた。このことは
現在も大きくは変わっていない。
18世紀になると、その熱エネルギーに仕事をさせることができるしくみが発明された。
それは蒸気エンジンであり、産業革命を引き起こす原動力になった。
[2]演示実験1では、模型の蒸気機関車(SL)に水を入れて固形燃料に火をつけると、
しばらくして動き出した。
このしくみは次のようである。

外から加熱して圧力容器中で水を沸とうさせて高温高圧の水蒸気をつくる。これを左の弁
Aからシリンダー内に注入してピストンを圧す。ピストンが右に動くと右側の温度が下が
った水蒸気は排気口Bから外に出る。そして連動して右の弁Cが開き、シリンダーの反対
側に水蒸気を注入してピストンを左に圧し返す。このくり返しである。
[3]続いてシリンダー内にガソリンのような燃料を吸気ないし噴射し、点火・爆発させ
て仕事をさせる内燃エンジンや、羽根車に高温高圧の水蒸気や燃焼ガスを噴射するタービ
ンエンジンが発明された。
他方で電磁誘導の法則を利用して発電機が発明された。この発電機を回すのには水力、
火力、原子力が使われる。このうち火力は燃焼反応に伴う熱エネルギーを利用する。水力
は位置エネルギーが大きい水を落下させ、運動エネルギーに変えて利用する。原子力は化
学反応ではなく原子核反応のうちの核分裂によって放出される放射線のエネルギーを、熱
エネルギーに変えて利用する。
- 25 -
[b]効率など
[1]熱エネルギーに仕事をさせるとき、熱エネルギーの一部は仕事に変わらずに失われ
る。自動車の排気ガスの熱エネルギーはその典型である。現在の普通の自動車の効率は
10%あまりである。
熱エネルギーに仕事をさせると、本質的な制約が隠れている。熱力学の理論では、高温
の熱源の絶対温度を T2 、低温の熱源の絶対温度を T1 とすると、その最大効率 e は
次の関係式で表される。
e=(T2−T1)/T2
蒸気エンジンを例にして分かりやすく言うと、高温の熱源の絶対温度とは圧力容器内の水
蒸気のそれであり、低温の熱源とはまわりの空気である。蒸気機関車では高温は 200℃
=473K ほどであり、低温を 15℃=288K とすると
e =(473−288)/473 = 0.39 = 39[%]
である。これより効率が高い蒸気機関車は存在せず、実際の効率は10%くらいであった。
これから高い効率を得るには、高温の熱源の温度を高くする必要があることが分かる。
例えば1000℃なら
e =(1273−288)/1273 = 0.77
となる。問題は高温に長く耐えられる材料を開発することである。最新の火力発電機(コ
ンバインド・サイクル)の効率は50%ほどになっている。
[2]人類はエネルギーを補給せずに動き続ける「永久機関」を夢見てきた。エネルギー
保存則だけで考えると、エネルギーは姿を変えてもその量は一定に保たれるので、いつま
でも使い続けれるように思える。
しかし最大効率の関係式から分かるように、熱エネルギーに仕事をさせるには、温度差
が必要である。しかし他方で自然は温度差が無くなる方向に変化していく。そしてエネル
ギーを利用すると、それはやがて熱エネルギーになっていく。つまりエネルギーは「使い
捨て」なのである。
ちなみに物質の方は、元素が不滅であるから、リサイクルが可能である。しかしリサイ
クルするにはエネルギーが必要であることを忘れてはならない。
[c]エネルギー問題
[1]そのエネルギーを利用できる、エネルギーがより大きい物質にはどんなものがある
だろうか。水力や原子力は除いて、化学物質で考えてみよう。
使い捨てかいろの鉄のように、多くの金属はエネルギーが大きい。しかし得られるエネ
ルギーは、鉱石から金属を精錬するときに与えたエネルギー(の一部)がもどってくるだ
けである。
現在私たちが主に利用しているのは、石油、天然ガス、石炭である。石油は炭化水素
- 26 -
( CnHm )、天然ガスは炭化水素の1種のメタン( CH4 )、石炭は主に炭素( C )
である。
これらは燃焼によってエネルギーを取り出すので燃料と呼ばれる。これらからエネルギ
ーを取り出すことができるのは、地球大気に酸素が含まれるおかげである。たとえば木星
は水素のかたまりであるが、酸素が無いため木星で燃焼によって水素からエネルギーを取
り出すことはできない。
そしてこれらの燃料を燃焼させると二酸化炭素が発生する。これによって大気中の濃度
は、産業革命前の2倍になろうとしている。二酸化炭素は地球温暖化を引き起こす。
さらにこれらの燃料は、現在の人類の膨大なエネルギー消費量の前で、枯渇が近づいて
いる。ちなみに2000年のエネルギー消費量はおよそ40京(きょう)kJであり、50
年後には3倍になると予測されている(1京=1000兆)。
[2]それではエネルギーが大きい物質で、大気の二酸化炭素濃度を増加させずかつ再生
可能なものは何だろうか。それはバイオマス(生物資源)である。これは植物の光合成に
よっており、次の熱化学方程式で示される。
6CO2 + 6H2O = C6H12O6 + 6O2 − 2802kJ
ブドウ糖
地球上で1年間に生産されるバイオマスは、エネルギーに換算するとおよそ500京kJ
である。そして光合成の元になるのは太陽エネルギーである。
しかしこれにも注意が必要である。バイオマスは食糧でもある。食糧生産と競合するよ
うなバイオマスのエネルギー利用は厳に慎まねばならない。
ちなみに水力は限られており、自然破壊につながることがある。そして原子力は、原子
炉で発生する高レベル放射性廃棄物を安全に廃棄する技術が確立していないと言う根本的
問題を抱えている。
問1 「水素のエネルギーが利用できるなら、水素を含む水は無尽蔵にあるので、エネル
ギー問題は解決できる。」という考えはどこが間違っているか。
[3]半永久的に地球にエネルギーを与えているのは太陽である。その量は1年間におよ
そ360000京kJである。
参考:雲による反射などで直接的に宇宙に失われる34%は除く。
地球は太陽エネルギーを利用して46億年進化してきた。そしてあと50億年ほどは太
陽が存在すると予測される。
ちなみに水力や風力は太陽エネルギーが姿を変えたものである。
現在の人類はエネルギー問題を背負っている。これをどのように解決していくべきか。
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その基本的視点は、地球環境のバランスを維持すること、そして現在の技術レベルに相応
する範囲にエネルギー消費を抑えることであろう。
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林 正幸と主万子の始めの
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