09.6
林 正幸
変化傾向と化学平衡
実 験
実験目次
実験1 反応は完結するか(鉄(V)イオンとチオシアン酸イオンの反応)
実験2 塩化アンモニウムの生成と分解
実験3 化学平衡と濃度
(a)食塩の雪
(b)フェノールフタレインの変色
(c)浸 透
実験4 「平衡モデルボックス」
実験5 化学平衡と温度
(a)温度と二酸化窒素の色
(b)寒 剤
実験6 化学平衡と圧力(圧力と二酸化窒素の色)
実験7 水素イオン濃度の計測
(a)酢酸水溶液のpH
(b)緩衝溶液のpH
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実験1 反応は完結するか(鉄(V)イオンとチオシアン酸イオンの反応)
(1)2本の試験管にそれぞれ2%塩化鉄(V)水溶液4滴と2%チオシアン酸カリウム水
溶液4滴を入れ、どちらも水を3cmほど加える。
(2)一方を他方に注いで発色を観察する。
(3)もう2本の試験管を準備して、反応溶液を3等分する。
(4)1本の試験管には2%塩化鉄(V)水溶液2mLを、もう1本の試験管には2%チオ
シアン酸カリウム水溶液2mLを追加し、残りの1本の試験管と比べて発色を観察する。
<記録>
<準備>
・2%塩化鉄(V)水溶液
塩化鉄(V)六水和物2gを水98mLに溶かす。
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実験2 塩化アンモニウムの生成と分解
(a)生成
濃アンモニア水と濃塩酸が入ったスクリュー管のせんをとり、近づけて様子を観察する。
(b)分解
(1)乾いた試験管の底に塩化アンモニウム薬さじ半分を入れる。
(2)pH試験紙を水で湿らせ、ガラス棒を利用して試験管の内壁の口に近い方に貼り、
脱脂綿でせんをする。
試験紙:酸性で黄〜赤色 アルカリ性で青〜紫色
(3)試験管を水平に、試験紙が側面にくるように持って、2cmほどの炎で底を加熱し、
試験管内の変化を観察する。
注意:空気を入れないと試験管の底がすすで黒くなる。
(4)試験管は洗剤を使って洗う。
- 1 -
<記録>
<準備>
・10cmに切ったpH試験紙
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実験3 化学平衡と濃度
(a)食塩の雪
(1)固体の食塩が入った飽和食塩水に、濃塩酸を1mLピペットに取り、液面近くで1
滴、また1滴と加えて、様子を観察する。
<記録>
<準備>
・飽和食塩水
50mlビーカーに約40ml入れ、固体の食塩を加えておく。
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(b)フェノールフタレインの変色
(1)乾いた試験管にフェノールと無水フタル酸を小さじ1/5ずつ入れる。
注意:フェノールは皮膚にやけどを引き起こす。
(2)器壁に伝わらないように濃硫酸2,3滴を加える。
注意:試験管の口を指で軽く持って鉛直のなるようにして、口の付近で滴を落下させると
うまくできる。
(3)バーナーのごく小さい炎(1〜2cm)で間欠的に1分ほど加熱する。
注意:温度が上がり過ぎないように、数秒加熱したらその倍くらい炎の外に出す。
(4)赤色になり、それに黒みがかかってきたら加熱を止め、冷える前に水道水を試験管
の7分目まで加える。
(5)これを100mLビーカーに移し、水を加えて約50mlにする。
(6)1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を、ガラス棒でかき混ぜながら赤色になるまで
加える。
(7)次に1mol/l塩酸を加えて無色にもどす。
注意:色がきれいでない場合は、新しい試験管でやり直す。
(8)(6)(7)の操作をくり返す。
- 2 -
(9)試験管は洗剤を使ってていねいに洗う。
<記録>
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(c)浸 透
(1)側面の一方を切ったセルロースチューブを水に浸しながら広げ、しわにならないよ
うに中ぶたに被せ、フィルムケース本体を押し込んではめる。
(2)できた容器に1mol/Lショ糖水溶液を一杯まで注ぎ、これにガラス管の付いたゴ
ムせんをしっかり押し込む。そしてガラス管を斜め下に向けてケースを押して余分な水溶
液を捨て、その高さがゴムせんから数cmほどになるようにする。
注意:フィルムケース内に空気が入らないようにする。
ガラス管は押し込まない。
(3)200mLビーカーに水を2/5ほど入れ、外を水洗いした(2)のフィルムケー
スを漬ける。このとき一度全体を斜めにして、セルロースチューブ下の気泡が抜けるよう
にする。
注意:ビーカーの底から眺めて確認する。
(4)始めの水溶液の高さに輪ゴムを移動して、水溶液の動きを観察する。
注意:数分しても水溶液が上昇しないときは、セルロースチューブがうまく貼れていない
ので、器具を交換して最初からやり直す。
(5)器具、ビーカーはそのまま返却する。
<記録>
<準備>
・フィルムケース
底の部分を切り落とし、ふたは枠を残して円形に切り取る。口の部分にワセリンをう
すく塗っておく。
・セルロースチューブ(φ20)
5cmに切り、広げられるように側面の一方を切る。
・ガラス管(内径2.5mm、外径7mm、長さ25cm)付きゴムせん
ゴムせんは6.5ミリのドリルで穴を開ける。ガラス管に小さい輪ゴムをはめる。
備考:ワセリンはティッシュで拭き取り、洗浄する。
- 3 -
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実験4 「平衡モデルボックス」
(1)BB弾が入った「ボックス」を上下に振動させる。BB弾は反応物質であり、それ
が低い位置にあるとより小さいエネルギーを持つ物質を表し、それが高い位置にあるとよ
り大きいエネルギーを持つ物質を表す。そしてここのBB弾が移動することは、反応が起
こることを意味する。
(2)より激しく振動させる、つまり温度を高くすると、全体としてBB弾は高い位置に
移動するか、低い位置に移動するか。
(3)次によりゆるやかに振動させると、つまり温度を低くすると、BB弾はどうなるか。
<記録>
<準備>
・平衡モデルボックス
工作用紙で、たて9cm、横18cm、高さ7cmの箱をつくり、底の半分に高さ2
cmの台をつくる。BB弾約150個を入れて透明なプラ板を被せる。
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実験5 化学平衡と温度
(a)温度と二酸化窒素の色
(1)二酸化窒素と四酸化二窒素の混合気体を封入したアンプルを、用意され熱湯と常温
の水に交互にくり返し浸けて色の変化を調べる。
<記録>
<準備>
・二酸化窒素のアンプル
数本のアンプル用試験管に、二酸化窒素を次々に導き、それぞれ加熱して封入する。
・熱湯と水をそれぞれ500mLビーカーに入れておく。
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(b)寒 剤
(1)500mLビーカーに砕いた氷を2/3ほど入れる。
(2)食塩約50gを加えて割りばしでかき混ぜながら様子を観察する。ときどき温度計
を差し入れて温度を計測する。
(3)できた食塩水はそのまま回収する。
- 4 -
<記録>
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実験6 化学平衡と圧力(圧力と二酸化窒素の色)
(1)ドラフトで、試験管に銅線2cmと濃硝酸1mLを入れてゴムせんを乗せ、二酸化
窒素(と四酸化二窒素の混合気体)を発生させる。
(2)チューブを付けた5mLディスポーザブル注射器で混合気体約6mL吸い取り、チ
ューブを外して途中まで穴を開けたゴムせんをする。
(3)白い紙を背景にして、ピストンを素早く約1.5mLまで押し込んで、色の変化を観
察する。続いてピストンを素早く約6mLまで引いて、色の変化を観察する。これを納得
がいくまでくり返す。
<記録>
<準備>
・途中まで穴を開けたゴムせん
φ3mmのドリルを使う
・チューブ
内径3mmで約20cm
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実験7 水素イオン濃度の計測
(a)酢酸水溶液のpH
(1)1mol/L酢酸水溶液の調製
10mLのところに印を付けた試験管に1mLメスピペットで酢酸0.57mLを採り、メ
スピペットで吸ったり出したりして混ぜながら、水を加えて全体を10mLにする。
参考:酢酸 CH3COOH 1mol=60g=57mL(密度1.05g/mL)
(2)0.1mol/L酢酸水溶液の調製
メスピペットで(1)の水溶液1mLを印を付けた別の試験管に移し、同じように混ぜな
がら水を加えて全体を10mLにする。
(3)それぞれの水溶液のpHを、pHメーターで計測する。
(4)常温における酢酸のpKは4.8である。化学平衡の法則から実験結果を予測してみ
よ。
- 5 -
<記録>
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(b)緩衝溶液のpH
(1)10mLのところに印を付けた試験管に1mLメスピペットで酢酸0.29mLを採
り、酢酸ナトリウム0.41gを加え、メスピペットで吸ったり出したりして混ぜながら、
水を加えて全体を10mLにする。
参考:酢酸ナトリウム CH3COONa 1mol = 82g
(2)水溶液のpHを、pHメーターで計測する。
(3)常温における酢酸のpKは4.8である。化学平衡の法則から実験結果を予測してみ
よ。
<記録>
<準備>
・無水酢酸ナトリウム 特級試薬
・10mLのところに印を浸けた試験管
10mLホールピペットで試験管に水10mLを入れ、ビニールテープで印を付ける。
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知識と概念
目 次
1.化学的変化の本質
2.化学平衡
3.変化傾向と濃度
4.いくつかの確認
5.平衡定数
6.変化傾向と温度
7.変化傾向と圧力
8.平衡定数の応用
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講座プラン「物質の状態」、「物質とエネルギー(改訂)」、「酸と塩基」を前提にす
る。
1.化学的変化の本質
[1]ある温度で水に十分な量の固体の砂糖(正式名はショ糖ないしスクロース)を加え
ると、しばらく固体の砂糖が溶解して行き、やがて水に砂糖が飽和して(固体の砂糖の一
部は残って)それ以上の変化は見られなくなる。次により低いある温度にすると、水溶液
中の砂糖が析出して行き(固体の砂糖になる)、やがてそれ以上の変化は見られなくなる。
この現象を私たちは通常は次のように捉える。ある温度でしばらくは固体の砂糖の溶解
が進行し、やがてそれが停止する。次により低いある温度にすると、水溶液中の砂糖の析
出が進行し、やがてそれが停止する。
[2]実験1では、薄めた塩化鉄(V)水溶液とチオシアン酸カリウム水溶液を混ぜると、
薄い血赤色になった。これは鉄(V)イオン Fe3+ とチオシアン酸イオン SCN- が反応
して錯イオンを形成するためである。
Fe3+ + SCN- ―→ [Fe(SCN)]2+
参考:錯イオンの正確な化学式は [Fe(H2O)5SCN]2+ である。
そして反応溶液を3等分し、これに元の酸化鉄(V)水溶液を追加してもチオシアン酸カリ
ウム水溶液を追加しても、血赤色が濃くなった。
これは始めの反応溶液に、錯イオンが生成すると同時に、塩化鉄(V)もチオシアン酸カ
リウムも残存していたことを意味する。
これを私たちは通常は次のように捉える。塩化鉄(V)にチオシアン酸カリウムを加える
と、しばらく(と言ってもごく短い時間だが)錯イオンの形成反応が進行し、やがて(と
言っても「すぐ」だが)途中でその反応が停止する。
溶解にしろ、析出にしろ、錯イオンの形成反応にしろ、どうして変化が途中で停止する
のだろうか。
[3]実験2(a)では、濃塩酸と濃アンモニア水を近づけると、白煙が立ち上る。これ
は揮発した塩化水素とアンモニアによって次の反応が進行し
NH3 + HCl ―→ NH4Cl
塩化アンモニウムの細かい結晶が生成するためである。
実験2(b)では、塩化アンモニウムを試験管の底に入れて加熱すると、pH試験紙が
始めは深緑ないし緑色に、続いて黄ないし橙色に変化する。そして塩化アンモニウムが次
第に減っていく。これは次の反応が進行し
NH4Cl ―→ NH3 + HCl
- 7 -
塩基性のアンモニア(拡散が速い)と酸性の塩化水素が生成して、次々に試験紙を変色さ
せるためである。またこの実験では、器壁の温度が低い部分に白色の塩化アンモニウムが
生成した。
これは常温では塩化アンモニウムの生成が、高温ではその分解が進行することを示す。
振り返ってみると、溶解と析出はたがいに逆向きの変化である。水素と酸素の混合気体に
点火すると爆発的に反応して水ができるが、水は電気分解すると水素と酸素にもどる。一
般に化学的変化は条件によってある向きにもその逆の向きにも進行する。
[4]化学的変化が途中で停止したり、条件によって逆向きに進行したりすることは、ど
のように納得できるだろうか。
分子が見えるような[ミクロの世界」では、固体の砂糖分子が水に溶解しているとき、
同時に水溶液中の砂糖分子が析出している。塩化水素分子とアンモニア分子から塩化アン
モニウムが生成しているとき、同時に塩化アンモニウムが元の分子に分解している。つま
り
「化学的変化はある向きの変化とその逆向きの変化の両方から成り立ち、
互いにその変化傾向を競い合っている」
のである。
ここで「変化傾向」という言葉を使った。これはイオン化傾向で使われる「傾向」とい
う用語を、化学的変化全般に広げて活用しようと言うのである。平たく言えば、物質が変
化しようとする傾向である。
備考:高校の化学教科書では、これを「反応速度」で置き換えて化学平衡の初歩的概念を
捉えさせるのが普通であるが、正確ではない。
変化傾向は理論的には自由エネルギーや化学ポテンシャルのことであるが、いきな
りその用語を使うのは高校生には難しいと考える。
それぞれの「変化傾向」は条件によって大きくなったり小さくなったりするのである。
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2.化学平衡
[1]化学的変化の本質を踏まえれば、水に十分な量の固体の砂糖を加える事例は次のよ
うに理解できる。これは固体の砂糖が溶解する変化と、水溶液中の砂糖が析出する変化が

競い合っている。始めは溶解の変化傾向が優っていてその変化が目に見えて進行するが、
しだいに析出の変化傾向が大きくなり、やがて両方の変化傾向がバランスして溶解という
- 8 -
変化が停止したように見える。
塩化鉄(V)水溶液とチオシアン酸カリウム水溶液を混ぜる事例では、鉄(V)イオンとチ
オシアン酸イオンが反応して錯イオンを形成する変化と、錯イオンが分解する変化が競い
合っている。始めは錯イオンの形成反応の変化傾向が優っていてその変化が目に見えて進
行するが、しだいにこの変化傾向が小さくなり、錯イオンの分解の変化傾向が大きくなっ
て、やがて両方の変化傾向がバランスして錯イオンの形成反応が停止したように見える。
このように
「正逆両方の向きの変化傾向がバランスして、見た目には変化が停止した
ように見える状態は、化学平衡と呼ばれる。」
[2]誤解を恐れずに、仮想的な男女対抗玉投げゲームを考えてみよう。このゲームのル
ールは至って簡単で、ひたすら玉を相手コートに投げ返すのである。いくつかの事例を取
り上げる。

[事例1]玉をすべて男子コートに入れてスタートする。
全体として玉はしだいに女子コートに移っていくが、やがてそれぞれのコートの玉数は
ほとんど変化しなくなる。そして仮に男子チームの能力が優っていても、男子コートの玉
が無くなることはない。
[事例2]玉をすべて女子コートに入れてスタートする。
しばらくは玉は男子コートに移っていくが、やがて変化のないゲーム展開となる。そし
て男子コートの玉数と女子コートの玉数の比は事例1と同じになる。
[事例3]事例2に続いて、女子コートに玉を追加する。
しばらくは男子コートの玉数が増えていくが、やがて退屈な状態になる。このとき両方
のコートの玉数は事例1とは異なるが、その比はまたも事例1と同じになる。
[事例4]事例2に続いて、男子チームの人数を増やす。
しばらくは女子コートの玉数が増えていくが、やはりバランスがとれた状態になって、
観戦者は帰ってしまうだろう。ただしこの事例では両方のコートの玉数の比は事例1と異
なる。
[3]化学的変化の本質をどう受け止めたらよいのだろうか。私たちはともすると、恒常
的で安定した世界を夢見る。ここで講座プラン「元素と原子の発見」で学習した古代ギリ
シャ時代の哲学者エンペドクレスの言葉を思い出そう。
- 9 -
「万物は、昼と夜、夏と冬、生と死のように、対立して存在している。対立するものは、
昼は夜にそして夜は昼にというように、戦いによって絶えず変化している。つまり変化こ
そが自然の根本的なはたらき(性質)である。万物は変化によって生成し、また変化によ
って消滅していく。したがって戦いと変化の象徴である火が元素である。」
あなたなら世界をどのように捉えるだろうか。
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3.変化傾向と濃度
[1]2節[1]を読むと、変化傾向が物質の濃度に関係しているのではないかと推測さ
れる。化学熱力学によると
「物質の変化傾向は、温度が一定なら、モル濃度が高いほど大きくなる」
のである。ただし変化傾向とモル濃度は正比例するのではなく、モル濃度が高くなると変
化傾向が大きくなる(単調増加する)のである。
備考:μ = μ* + RTln(c)
μ:化学ポテンシャル(この講座プランでは「変化傾向」)
R:気体定数 T:絶対温度
ln:自然対数( =loge )
c:モル濃度(より厳密には、活量というものが使われる)
μ*:濃度が1mol/Lのときの化学ポテンシャル(温度が一定なら定数)
[2]再び水に十分な量の固体の砂糖を加える事例を見てみよう。溶解が進行するにつれ
て水溶液中の砂糖のモル濃度は高くなり、その砂糖が析出する変化傾向は大きくなる(最
初はモル濃度がゼロであるので、変化傾向も無限小である)。
これに対して固体の砂糖が溶解する変化傾向はどうだろうか。飽和水溶液ができ、(化
学)平衡が成立したときを考えると
固体の砂糖が溶解する変化傾向 = 飽和水溶液中の砂糖が析出する変化傾向
である。そしてこれは溶け残る砂糖の量には無関係である。つまり固体の砂糖の量の多少
に依らずそれが溶解する変化傾向は一定であり、飽和水溶液中の砂糖が析出する変化傾向
に等しいのである。一般に純粋な液体や固体の変化傾向は、温度が一定なら、量の多少に
よらず一定とである。ただし気体は含まれないので注意しよう(7節を参照)。
塩化鉄(V)水溶液とチオシアン酸カリウム水溶液を混ぜる事例では、錯イオンの形成反
応が進行するにつれて鉄(V)イオンとチオシアン酸イオンのモル濃度が低くなる。そして
鉄(V)イオンとチオシアン酸イオンが反応する変化傾向は、それぞれのイオンの変化傾向
の合計になる。したがってこの変化傾向は小さくなる。これに対して錯イオンのモル濃度
は高くなって、このイオンが分解する変化傾向は大きくなる。
ちなみに化学熱力学によると鉄(V)イオンの変化傾向は、それがチオシアン酸イオンと
結び付く場合でも、たとえば水酸化物イオンと結び付いて水酸化鉄(V) Fe(OH)3 にな
- 10 -
る場合でも、化学的変化によらず同じ値である。それはチオシアン酸イオンも同様である。
2つの事例を変化傾向と時間のグラフに描くと次のようである。

問1 より低いある温度にして水溶液中の砂糖が析出する事例について、同じように説明
せよ。ここで固体の砂糖が溶解する変化傾向は、温度が低くなっているので、前と同じで
い(実際には小さくなる)ことに注意せよ。
[3]実験3(a)では、固体の食塩を含む飽和食塩水に濃塩酸を滴下すると、白色固体
が降った。
水に溶けた食塩=塩化ナトリウム(強電解質)は次のようにすべて電離しているので
NaCl ―→ Na+ + Cl-
この化学的変化は
NaCl(固体) ←→ Na+ + Cl-
と書ける。ここで両矢印は正逆両方の向きの変化が起こることを示す。
固体の食塩を含む飽和食塩水では(化学)平衡が成立しており
固体の食塩が溶解する変化傾向 = 飽和水溶液中の食塩が析出する変化傾向
となっている。ここで「飽和水溶液中の食塩が析出する傾変化向」というのは、飽和水溶
液中のナトリウムイオンと塩化物イオンのそれぞれの変化傾向の合計である。
濃塩酸(強酸)も次のようにすべて電離している。
HCl ―→ H+ + Cl-
つまり濃塩酸を加えることは、水素イオンと塩化物イオンのモル濃度を高くすることであ
る。このうち後者が上の化学平衡に関係する。塩化物イオンのモル濃度を高くしたらどう
なるか。ナトリウムイオンと塩化物イオンの変化傾向の合計が大きくなるので、水溶液中
の食塩が析出する変化傾向が優ってその変化が進行する。こうして食塩の雪は降ったので
ある。
食塩の雪が降ると、ナトリウムイオンと塩化物イオンのモル濃度が低くなり、水溶液中
の食塩が析出する変化傾向が小さくなる。これに対して固体の食塩が溶解する変化傾向は
一定であるので、やがて両方の変化傾向がバランスして析出が停止する。つまり新たに平
- 11 -
衡が成立する。
[4]実験3(b)では、濃硫酸を触媒にして、フェノールと無水フタル酸からフェノー
ルフタレインを合成し、水に溶かした。これに水酸化ナトリウム水溶液を加えると赤色に
なり、塩酸を加えると無色にもどった。
フェノールフタレインの化学式は複雑なので、水素イオンになる部分と残りに分け、後
者を A で表すと H2A と書ける。これは弱酸であるので、水中で次のように少しだけ電
離し、途中で停止して平衡が成立している。
H2A ←→ 2H+ + A2-
H2A が電離する変化傾向 = H+ と A2- が結び付く変化傾向
そしてこの段階では A2- のモル濃度はごく小さいことに注意しよう。
これに水酸化ナトリウム(強塩基)水溶液を加えると、それはナトリウムイオンと水酸
化物イオンを加えることであり、後者が H+ と反応して水になるため
H+ + OH- ―→ H2O
結局 H+ のモル濃度を低くする。つまり H+ と A2- の変化傾向の合計が小さくなるの
で、H2A が電離する変化傾向が優ってその変化が進行する。 A2- のモル濃度が高くな
り、A2-は赤色なので、水溶液は赤色になる。そしてやがて新たに平衡が成立する。つま
り再び
H2A が電離する変化傾向 = H+ と A2- が結び付く変化傾向
になる(変化傾向の大きさは前と異なる)。
続いて塩酸を加えるとどうなるか。H+ のモル濃度が大きくなり、H+ と A2- が結び
つく変化傾向が優ってその変化が進行する。 A2- のモル濃度が低くなって、再び無色に
なる。これがフェノールフタレインが指示薬としてはたらくしくみである。
問1 水溶液中では、沈でん生成反応が起こりやすい。たとえば塩化ナトリウム水溶液に
硝酸銀水溶液を加えると、白色沈でんである塩化銀が生成する。
Cl- + Ag+ ―→ AgCl
しかし硝酸カリウム水溶液を加えても変化は起こらない。
× Cl- + K+ ―→ KCl
水溶液中で塩化銀のモル濃度が高くなれないことを使って、そのわけを説明せよ。
[5]実験3(c)では、1mol/Lショ糖水溶液を底がセルロースチューブのフィルム
ケースに入れて水に浸けると、水溶液の水面がガラス管内を上がっていった。セルロース
チューブは無数に小さい穴が開いており、小さい水分子は透過するが、その何倍もあるシ
ョ糖分子は透過しにくい。このような膜は半透膜と呼ばれる。
始めにケース内も水にして内外の水位をそろえた場合を考える。これは内外の水のモル
- 12 -
濃度が等しいので
内の水が外に透過する変化傾向 = 外の水が内に透過する変化傾向
となり化学平衡である。そこでケース内の水をショ糖水溶液と入れ替える。ケース内の水
のモル濃度は、ショ糖が溶けている分だけ低くなる。つまり内のショ糖水溶液中の水が外
に透過する変化傾向は小さくなる。すると外の水が内に透過する変化傾向が優って、その
変化が進行して水面が上がっていく。
濃度は溶質の方に目が向きがちであるが、このように溶媒の濃度にも注目するようにし
よう。
ちなみに、上の記述は3つの実験を統一的に説明しようとしている。もっと単純にケー
ス内外の水のモル濃度に注目して、外の方が高いので外の水が内に浸透する変化傾向が優
っていてその変化が進行すると考えてもよい。
[6]1節[3]では、一般に化学的変化は条件によってある向きにもその逆の向きにも
進行する、つまり可逆的であることをすでに学習した。しかし条件によって一方の向きの
変化傾向が圧倒的に大きくて、その向きに変化が進行して完結する(逆向きの変化が無視
できる)と見なせる場合がある。このような化学的変化は不可逆的であると言う。
ここでは塩化ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウムの電離、水素イオンと水酸化物イオ
ンから水ができる反応などがそうである。ただしこれは絶対的なことではない。たとえば
pHを考えるときには、水が水素イオンと水酸化物イオンに電離する反応を無視できない。
[7]1880年代にルシャトリエとブラウンは上のような事例を異なる視点から次のよ
うに捉えた。
「化学平衡であるとき、それを成立させている条件を変えると、
化学的変化はその影響を和らげる向きに進行し、新たに平衡が成立する。」
これはルシャトリエの原理と呼ばれる。
上の事例では、条件とは濃度(モル濃度)を指している。実験3(a)で言うと、塩化
物イオンのモル濃度を高くすると、その影響を和らげる向きに、つまりナトリウムイオン
と塩化物イオンが結び付いて食塩が析出する向きに進行するのである。実験3(b)では、
水酸化ナトリウム水溶液を加えて水素イオンのモル濃度を低くすると、それを補うように、
フェノールフタレインが分解して水素イオンが生成する向きに進行する。ただし条件の変
化を打ち消してしまうわけではないので注意しよう。
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4.いくつかの確認
[1]化学的変化において注目する範囲は「系」と呼ばれ、残りは「まわり」ないし環境
と呼ばれる。
物質の出入りがない系は「閉鎖系」と呼ばれる。3節では濃度によって変化傾向が変わ
ることに注目して、化学平衡が成立する過程を学習した。その場合に濃度を変化させるた
- 13 -
めに物質を追加したりするのだが、いつまでも物質を追加し続けたりするのではないこと
に注意しよう。それでは化学平衡は成立することはない。閉鎖系でないと化学平衡は成立
しない。
実験3(a)の「食塩の雪」では、濃塩酸を滴下し続けて様子を観察した。平衡が成立
しなくても、塩化物イオンの勢いが大きくなることで、起こる変化を説明することができ
る。しかし平衡が成立することを期待するなら、かき混ぜてしばらく時間を置き、その後
に次の1滴を加えるべきである。これは実験3(b)の「フェノールフタレインの変色」
でも同じことである。
備考:自由エネルギーには定圧系(ギブスの自由エネルギー)と、定積系(ヘルムホルツ
の自由エネルギー)があり、勢いは定温定圧系か、定温定積系を前提にしている。
[2]改めて真空の容器に少量の水を注入する事例(温度は30℃)を化学平衡で考えて
みよう。液体の水が蒸発する変化傾向は一定である。そして水蒸気のモル濃度が高くなる
につれて、水蒸気が凝縮する変化傾向は大きくなり、やがて
水が蒸発する変化傾向 = 水蒸気が凝縮する変化傾向
となる、つまり平衡が成立するのである。水蒸気が飽和するとはこのような意味である。
ちなみに気体の圧力とモル濃度にはどんな関係があるだろうか。気体の状態方程式
PV = nRT
(P:圧力 V:体積 n:物質量 R:気体定数 T:絶対温度)
の両辺を VPT で割ると
P/RT = n/V = c
(c:モル濃度)
である。このように気体では圧力はモル濃度に置き換えられる。
[3]もう一度、水に十分な量の固体の砂糖を加える事例を考えてみよう。飽和水溶液に
なり平衡が成立した時点で、飽和水溶液のみを別の容器に移したらどうなるだろう。固体
の砂糖が溶解する変化傾向は無限小になってしまうので、飽和水溶液中の砂糖の析出が進
行するだろうか。
実際には何も起こらない。これはどう捉えたらよいだろうか。水溶液中には固体の砂糖
の微粒子ができたり消えたりしている。すでに学習したように固体の砂糖が溶解する変化
傾向は量の多少を問わないので、微粒子でもそれが溶解する変化傾向は変わらない。この
ことは不飽和水溶液についても言えることである。
講座プラン「物質の状態」では、実験の中で注射器に水を吸い込んで針穴を指でふさい
だ。このとき水蒸気は存在しないので、少しは蒸発が起こるだろうか。
実際には何も起こらない。水中では水蒸気のごく小さい泡(「泡の子」と呼んでみよ
う!)ができたり消えたりしている。この泡の子の変化傾向を圧力に関係づけたのが蒸気
圧である。ピストンを引いて外からの圧力を蒸気圧に等しくすると、注射器内で水と水蒸
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気が共存するようになる。
[4]化学的変化が停止したら、あるいは停止していれば、いつでも化学平衡である(平
衡が成立している)だろうか。そうではない。
水に少量の砂糖を加えると、すべて溶解して停止する。しかしできる水溶液は不飽和で
あり、化学平衡ではない。水とエタノールはいくらでも溶け合うので、溶解に関して平衡
は成立しない。
真空の容器に注入する水が少な過ぎると、すべて蒸発して停止する。しかし水蒸気は不
飽和であり、化学平衡ではない。0℃の氷水は化学平衡である。これをより高いある温度
にすると、すべて融解して水になり変化が停止するが、これは化学平衡ではない。
2つの物質が反応する場合に、当たり前であるが、一方の物質だけでは平衡は成立しな
い。
振り返ると化学平衡とは、対立する2つの変化傾向がバランスする状態である。
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5.平衡定数
[1]化学的変化が進行する(そして停止する)間、温度が一定に保たれており、かつ閉
鎖系であるとする(定温の閉鎖系)。
弱酸である酢酸を水に溶かす事例を考える。次のように酢酸が少し電離し、
CH3COOH ←→ CH3COO- + H+
やがて反応が停止して平衡が成立する。このとき
CH3COOH が電離するの変化傾向 = CH3COO- と H+ が結び付く変化傾向
である。
平衡が成立しているとき、3種の物質のモル濃度の間にはどんな関係があるだろうか。
2節の「玉投げゲーム」のコート内の玉数の比も思い出そう。3種の物質のモル濃度を
[CH3COOH]、[CH3COO-]、[H+]とすると、次の値が一定になる。
[CH3COO-][H+]/[CH3COOH]= 一定 = K (1)
そしてこの値は一般には K で表し、平衡定数と呼ばれる。これは温度が一定なら同じ値
である。ちなみに逆数も一定になるが、反応式とペアで考え、右辺の物質のモル濃度を分
子にする約束である。これは化学平衡の法則(あるいは質量作用の法則)と呼ばれる。
参考:この法則は物質の勢いを表す関係式を演算して得られる。
ここで強調しておきたいのは、化学平衡の法則は平衡に関係する物質を加えたり減らし
たりしても、無関係な物質を加えたり減らしたりしても、変化が停止してその化学平衡が
存在する限り成り立つことである。さらに付け加えると、たとえば始めに酢酸そのものが
無くても、いくつかの物質の変化によって酢酸と酢酸イオンと水素イオンが存在するよう
になり、その間に平衡が成立していれば化学平衡の法則は成り立つのである。
[2]いくつか法則の書き方の例を上げておこう。
・反応容器内で窒素と水素からアンモニアを合成する反応が化学平衡である。
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N2 + 3H2 ←→ 2NH3
[NH3]2/[N2][H2]3 = K
反応式の係数との関係に注目せよ。
・酢酸とエタノールに触媒として濃硫酸を加え、酢酸エチルを合成する反応の平衡が成立
している。
CH3COOH + C2H5OH ←→ CH3COOC2H5 + H2O
[CH3COOC2H5][H2O]/[CH3COOH][C2H5OH] = K
後でもう一度触れるが、触媒は化学平衡には無関係である。
・塩化物イオンを含むサンプルに硝酸銀水溶液を加え、塩化銀が沈でんしている(この種
の課題を扱うときは、沈でんを左辺に書くことが多い)。
AgCl ←→ Ag+ + Cl-
[Ag+][Cl-] = K
固体の塩化銀は、3節[2]の固体の砂糖のように、その変化傾向は量の多少によらず一
定であり、化学平衡の法則の関係式には入ってこない。
Kの実際の数値はそれぞれで異なることに注意しよう。
[3]水素イオン指数 pH は、水のイオン積が一定であることから出発した。水はわず
かに次のように電離している。
H2O ←→ H+ + OH-
化学平衡の法則を適用すると
[H+][OH-]/[H2O] = K
となる。この数値は酸を加えても塩基を加えても一定である。
純粋な水の場合は水のモル濃度は(電離がわずかなので)
1L = 1000g = 1000/18 = 55.6mol
つまり55.6mol/Lである。そして水溶液の場合はそれが希薄なら、水のモル濃度は
ほぼこの値に保たれると言える。したがって
[H+][OH-] ≒ 一定 = 1.00×10-14[mol2/L2](温度25℃)
となるのである。
[4]平衡定数は、その化学反応がどれくらい偏って停止するかを示す。平衡定数が1な
ら、単純に言えば反応式の中間で停止する。そして1より大きいほど反応式の右に偏って
停止し、1より小さいほど左に偏って停止する。
酸の強弱は、それが水に溶けてどれくらい電離するかである。講座プラン「酸と塩基」
では、電離度という数値を使い「電離度が1ないしそれに近い酸は強酸と呼ばれる。これ
に対して電離度が0.01以下の酸は弱酸と呼ばれる。」と説明した。しかし電離度は酸の
濃度によって変化する。これに対して酸の平衡定数(電離定数とも言う)は一定の値であ
り、これを使った方が厳密な定義ができる。実際には
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pK(ピーケー 電離指数) = −logK
(log:常用対数)
を使う。
参考:常用対数の公式
log10a = a ( log1 = log100 = 0 )
logxy = logx + logy
log(x/y) = logx − logy
( log(1/y) = −logy )
マイナスの符号があることと対数であることに注意すると、pKが0なら、単純に言えば
半分電離する。そして0より小さいほど電離しやすく、0より大きいほど電離しにくい。
上の講座プランではpKは「水素イオン得失表」の右に掲げ「これは酸の強さを示し、小
さいほど水素イオンを失う傾向が大きい」と説明した。水素イオンを失う傾向が大きいと
は、電離しやすいという意味であった。そして強酸とはpKが3より小さい酸のことであ
る。
平衡定数が分かると、ある濃度条件の下でその化学的変化がどちら向きに進行するかが
予測できる。モル濃度を代入して左辺を計算し、それが平衡定数より大きければ左向きに
進行し、小さければ右向きに進行する。このことは7節[1]でも取り上げる。
さらに踏み込んだ化学平衡の法則の応用については8節で取り上げる。
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6.変化傾向と温度
[1]これまで、変化傾向と濃度の関係、および化学平衡であるときモル濃度を変えると
化学的変化がどちらに向かうか、そして平衡定数について学習した。それでは変化傾向と
温度の関係、とりわけ化学平衡であるとき温度を変えると化学的変化がどちらに向かうか、
について考えてみよう。
化学的変化は正逆両方の向きの変化から成り立つが、それぞれの変化傾向が温度によっ
てどのように変わるかは、高校生には簡単でない。
備考:dF = −SdT
(S:エントロピー)
そこでルシャトリエの原理の助けを借りよう。温度に当てはめると「温度を高くすると、
その影響を和らげる向きに進行する」となる。「その影響を和らげる向き」とは、温度の
上昇を抑える向き、つまり吸熱する向きのことである。熱化学方程式を思い出そう。アン
モニア合成を例にする。
N2 + 3H2 = 2NH3 + 92kJ
この反応は左向きに進行すると吸熱する。したがってこの例では、温度を高くすると左向
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きに進行するわけである。
備考:厳密には熱化学方程式の数値は、圧力が1atm、温度が25℃などという「標準
状態」におけるものである。
これだけでも間に合うが、私たちは対立する2つの変化の勢いに注目している。この例
では右辺のアンモニア2molである方が、左辺の窒素1molと水素3molであるよ
り小さいエネルギーを持つ(だからアンモニアが熱エネルギーを奪って分解する)。した
がって次のようには言える。
「化学平衡であるとき、温度を高くすると
よりエネルギーが小さい方の物質の変化傾向が優るようになる。」
温度を高くするとは、系にエネルギーを与えることである。したがってこれはたとえて言
えば、ある額の金を得ると貧乏人の方が大金持ちより元気になるとして、頭に入れておく
ことができる。これは対立する2つの変化傾向の絶対値ではなく、相対的な大小関係だけ
に注目している。なおここで物質とは左辺の物質あるいは右辺の物質を指し、複数のこと
もある。
そして同じように考えて
「化学平衡であるとき、温度を低くすると
よりエネルギーが大きい方の物質の変化傾向が優るようになる」
のである。ある額の金を失うと、大金持ちの方が貧乏人より平気で居られるわけである。
[2]実験4では、「ボックス」をゆるやかに振動させると、多くのBB弾が低い位置に
留まる。そこで振動を激しくすると、BB弾が高い位置に移動する。これは温度を高くす
ると、化学的変化はよりエネルギーが大きい物質が生成する向きに進行する。つまりより
エネルギーが小さい物質の変化傾向が優ることをうかがわせる。
続いて振動をゆるやかにすると、BB弾が低い位置にもどる。これは温度を低くすると、
化学的変化はよりエネルギーが小さい物質が生成する向きに進行する。つまりよりエネル
ギーが大きい物質の変化傾向が優ることをうかがわせる。
[3]実験5(a)では、二酸化窒素 NO2 と四酸化二窒素 N2O4 の混合気体を封入し
たアンプルを、熱湯に浸けると赤褐色が濃くなり、常温の水に浸けると薄くなった。
この熱化学方程式は次のようであり
2NO2 = N2O4 + 48kJ
NO2 2molである方よりN2O4 1molである方が小さいエネルギーを持つ。そして
NO2 は赤褐色で N2O4 は無色である。
常温で赤褐色の濃さが変化していないとき、2つの変化はバランスして、化学平衡であ
る。
NO2 2分子が結び付く変化傾向 = N2O4 が分解する変化傾向
そこで温度を高くすると、N2O3 が分解する変化傾向が優ってその変化が進行する。つま
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り NO2 が生成して赤褐色が濃くなる。それに連れて N2O4 のモル濃度が低くなってそ
の変化傾向は小さくなり、NO2 のモル濃度は高くなってその変化傾向は大きくなり、や
がてバランスして新たに平衡が成立する。
ここで温度を低くすると、逆のことが起こって赤褐色が薄くなる。
問1 液体の蒸気圧は温度が高くなると大きくなる。このことを、液体は蒸発熱を得て蒸
気(気体)になることを踏まえ、体積が一定の容器に水と水蒸気が入った例で説明せよ。
問2 硝酸カリウム KNO3 の水に対する溶解度は温度が高くなると大きくなる。硝酸カ
リウムが水に溶ける変化は、発熱変化であるか吸熱変化であるか。
[4]実験5(b)では、氷に食塩を加えてかき混ぜると、氷が融解し、温度がおよそ
−20℃まで降下した。
はじめに0℃における氷水を考える。これは化学平衡であり
水が凝固する変化傾向 = 氷が融解する変化傾向
である。この熱化学方程式は次のようであり
H2O(液) = H2O(固) + 6.0kJ
氷である方が水である方より小さいエネルギーを持つ。したがって温度を上げると、氷が
融解する変化傾向が優ってその変化が進行する。また温度を下げると、水が凝固する変化
傾向が優ってその変化が進行する。そして0℃では両方の変化傾向がバランスして、水と
氷が共存する。
すこし寄り道するが、どうして水が凝固する温度と、氷が融解する温度が同じになるだ
ろうか。 それは対立する2つの変化が競い合っており、その変化傾向がバランスして純
粋な水と氷が共存できる温度は一点でしかあり得ないからである。
さてこの氷水に食塩を加えるとどうなるか。食塩はもっぱら液体の水の方に溶け、水の
モル濃度を低くする。すると氷が融解する変化傾向が優ってその変化が進行する。
温度を0℃に保とうとするなら、まわりから熱エネルギーを与えて、氷の融解熱を補う
必要がある。そうでないときは、氷水は自らの熱エネルギーを融解熱に使う。したがって
温度が下がる。ここで温度を低くするとどうなるか、というこの節のテーマが出てくる。
その答はより大きいエネルギーを持つ水が凝固する変化傾向が盛り返してくることである。
そしてある温度で再び平衡が成立する。
問3 真水は0℃で凝固する(厳密には圧力の影響も受ける)。しかし海水は0℃より低
い温度で凝固する。この理由を説明せよ。
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[5]平衡定数は温度が変化すれば数値が変わってくる。それならある平衡定数が、温度
を高くすると大きくなるか小さくなるか、分かるだろうか。
A + B ←→ C + D
なる化学平衡の平衡定数は次のようになる。
[C][D]/[A][B] = K
もし左辺の物質が持つエネルギーが小さければ、温度を高くすると変化は右向きに進行し、
右辺の物質のモル濃度が高くなって新たに平衡が成立する。したがって温度が高くなると
平衡定数は大きくなる。もし右辺の物質が持つエネルギーが小さければ、温度を高くする
と平衡定数は小さくなる。
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7.変化傾向と圧力
[1]変化傾向と圧力(全圧)の関係はすこし複雑であり、2つのケースを取り上げる。
1つめのケースは、気体を含む化学的変化である。液体や固体あるいは溶液については圧
力を変えてもその体積が事実上変わらないので、モル濃度も変わらないと捉えられる。し
かし気体については圧力(全圧)を変えると、多くの場合にモル濃度が変わる。4節
[3]では次の関係式を確認した。
c = (1/RT)P
温度が一定なら、モル濃度は圧力に正比例する。つまり気体を含む化学的変化では、圧力
を変えることは、気体のモル濃度を変えることに置き換えて考えればよい。
[2]溶解度が小さい気体の溶解に関してはヘンリーの法則が成り立つ。たとえば気体の
溶解度を1Lの水に何molまで溶けるか(つまり事実上は飽和水溶液のモル濃度)で表
すと
「温度が一定なら、気体の溶解度は気体の圧力に正比例する。」
となる。
気体とそれに接する飽和水溶液中の気体(これは気体状態ではない)が化学平衡である
ので
[飽和水溶液中の気体のモル濃度]/[気体のモル濃度] = K
気体のモル濃度を表す上の関係式を代入して変形すると
[飽和水溶液中の気体のモル濃度]
= (K/RT)P = kP
(k:比例定数)
となり、正比例の関係を化学平衡の法則から説明できることが分かる。
対立する変化傾向に注目すると、ある圧力で平衡が成立しているとき
気体が溶解する変化傾向 = 飽和水溶液中の気体が揮発する変化傾向
である。圧力を高くすると、気体のモル濃度のみが高くなり、気体が溶解する変化傾向が
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優ってその変化が進行する。つまり溶解度が大きくなる。このことだけなら、化学平衡の
法則の世話になる必要はない。
[3]気体が複数の場合はどうであろうか。実験6では、注射器に二酸化窒素と四酸化二
窒素の混合気体を採り、ピストンを押して圧力を高くすると、それによって濃くなった赤
褐色はその後に薄くなった。ここで注意したいのは、体積が小さくなって赤褐色が濃くな
るのは当然のことであり、その後に薄くなったことが化学的変化がどちらに向かったかに
関係していることである。そしてピストンをゆるめて圧力を低くすると、それによって薄
くなった赤褐色はその後に濃くなった。
すでに6節[3]で取り上げたように、化学反応式は次のようである。
2NO2 ←→ N2O4
赤褐色 無色
体積を半分にして圧力を2倍に高くしたとすると、左辺の NO2 も右辺の N2O4 もその
モル濃度が2倍になる。そこで化学平衡の法則を使って判断する。
平衡が成立しているときは
[N2O4]/[NO2]2 = K
ところが圧力を2倍にすると左辺の値は
2/22 = 1/2[倍]
になってしまう。平衡定数を元の数値に保つためには、分子の N2O4 のモル濃度が高く
なり、分母の NO2 のモル濃度が低くなる必要がある。つまり圧力を高くすると、NO2
の変化速度が優るようになり、変化は右向きに進行し、赤褐色が薄くなる。
同様に体積を2倍にして圧力を半分に低くしたとすると
(1/2)/(1/2)2 = 2[倍]
したがって変化は左向きに進行し、赤褐色が濃くなるわけである。
ヨウ化水素の合成ではどうだろうか(温度が高くてすべて気体)。
H2 + I2 ←→ 2HI
[HI]2/[H2][I2] = K
体積を半分にして圧力を2倍に高くしたとすると、左辺の値は
22/2×2 = 1[倍]
つまり一般に圧力を高くしても、化学平衡のバランスは崩れなくて変化は起こらない。
[4]実験5(a)では、アンプルに封入した NO2 と N2O4 の混合気体を扱った。そ
して6節[3]では温度の影響に注目した。しかしアンプルを湯に浸けると、温度だけで
なくそれに伴って圧力も高くなる(変化に伴って気体の分子数が増えるから圧力が高くな
るというのではなく、変化前で考えているので注意!)。圧力の影響はどうだろうか。
アンプルの体積は変化しないので、NO2 も N2O4 もそのモル濃度は変化しない。こ
の場合は圧力を高くしても化学平衡のバランスは崩れない。
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これはルシャトリエの原理が、圧力に関しては成り立たない場合があることを示してい
る。しばしば「圧力を高くすると、気体の分子数が減る向きに」などとまとめられるが、
これは誤りを含むことになる。
[5]2つめのケースはやや特殊であるが、浸透現象である。実験3(c)では、浸透現
象を扱った。ケース内のショ糖水溶液はガラス管内を上がって行き、やがてある高さで停
止して平衡が成立する。この時点で半透膜付近の両側の水のモル濃度を比べると、ケース
内のショ糖水溶液中の水のモル濃度の方が低い。それでは平衡は成立しないではないか。
そうではなく、水圧が掛かって半透膜付近の水溶液中の水の変化傾向は大きくなり、真水
の変化傾向と等しくなるのである。
このように液体や固体あるいは溶液では、圧力を高くすると物質の変化傾向が大きくな
るのである。しかしこれ以上は深入りできない。
備考:dF = VdP
(V:モル体積)
[6]5節[2]では触媒についてすこし触れた。触媒とは、ある化学反応の反応速度を
大きくするが、自身は変化しない物質と定犠される。すこし踏み込むと、触媒を使うとそ
の化学反応の、反応途中で超えるべき活性化エネルギーというものが小さくなり、反応速
度が大きくなる。しかし逆反応から見てもその活性化エネルギーは小さくなり、逆反応の
反応速度も大きくなる。
参考:講座プラン「化学反応の速度」で学習する。
したがって触媒は、化学反応が化学平衡に至るまでの時間を短くする。
しかし触媒は変化傾向に影響することはない。このことは、反応熱が触媒の有無に関係
なく、反応物質と生成物質が持つエネルギーの差で決まることに似ている。
[7]ルシャトリエの原理に付け加えをする。平衡を「成立させている条件」とは、濃度
(モル濃度)、温度、圧力である。これらは平衡条件と呼ばれる。
この原理は、化学平衡である化学的変化には、その状態を維持しようとする性質がある
とも読み取れる。これは力学における慣性の法則に似ている。
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8.平衡定数の応用
[1]講座プラン「酸と塩基」では、「弱酸の塩に強酸を加えると弱酸と強酸の塩が生成
する」というタイプの反応を扱った。たとえば酢酸ナトリウムに希塩酸を加えると、酢酸
が生成する。この反応式は次のようである。
CH3COONa + HCl ―→ CH3COOH + NaCl
イオン反応式に直すと
CH3COO- + H+ ―→ CH3COOH
となる。酢酸イオンは酢酸ナトリウムの電離で、水素イオンは塩酸の電離で与えられる。
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5節[4]から分かるように、酢酸のpKは4.8であるので、次の電離反応は左に偏っ
て停止する。
CH3COOH ←→ CH3COO- + H+
ひとつ上の反応式は逆向きに書いてあるので、右に偏って停止する。つまりこの種の反応
は起こりやすいことが、平衡定数から分かる。
[2]平衡定数の数値があれば、平衡が成立しているときの物質の濃度が計算できる。
実験7(a)では、酢酸の1及び0.1mol/L水溶液を調製して、そのpHを測った。
参考:pH = −log[H+]
ある計測例は次のようであった。
1mol/L:2.3 0.1mol/L:2.9
常温における酢酸のpKは4.8である。この実験では、5節[1]の関係式(1)に
おいて[CH3COO-] と [H+] は等しい。したがって
[H+]2/[CH3COOH]= K
両辺の常用対数をとり、−1を掛けると
−2log[H+] + log[CH3COOH]= −logK
pHとpKに置き換え、式を整理すると
pH = (pK − log[CH3COOH])/2
ここで計算を簡単にするため、電離が少ししか起こらないと仮定すると、平衡が成立する
ときの [CH3COOH] は元のモル濃度にほぼ等しい。そこでpKの値と 1=100
mol/Lを代入して
pH = (4.8 − log100)/2 = 4.8/2 = 2.4
また0.1=10-1mol/Lを代入して
pH = (4.8 − log10-1)/2 = 5.8/2 = 2.9
となる。これらの値は電離が少ししか起こらないという仮定を満たしている。
参考:pH2.4 は [H+]=10-2.4=0.0040[mol/L]
pH2.4 は [H+]=10-2.9=0.0013
そして計測値は計算値にほぼ一致する。このことは、天下り的に学習した化学平衡の法則
が成り立つことを、実験でひとつ裏付けたことになる。
以上は、モル濃度が分かっている酸水溶液のpHを計測すると、pKないし電離定数
(平衡定数)が求められることも示す。
問1 講座プラン「有機化合物の世界」では、濃硫酸を触媒にして酢酸8mLとエタノー
ル8mLを反応させて酢酸エチルを合成した。反応は途中で停止して平衡が成立する。常
温における平衡定数は 4 である。酢酸エチルは何mL生成するだろうか。
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密度 分子量
酢酸 1.05g/mL 60
エタノール 0.79 46
酢酸エチル 0.90 88
(9.2mL)
[3]講座プラン「酸と塩基」では、酢酸と酢酸ナトリウムを水に溶かした緩衝溶液を扱
った。これは強酸や強塩基を加えてもpHがあまり変化しない。それでは元の緩衝溶液の
pHはいくつだろうか。
実験7(b)では、同じ物質量の酢酸と酢酸ナトリウムを溶かした緩衝溶液を調製して、
そのpHを計測した。計測例は4.8であった。
酢酸は弱酸であるので次のようにすこし電離して平衡が成立しており
CH3COOH ←→ CH3COO- + H+
化学平衡の法則が成り立つ。
[CH3COO-][H+]/[CH3COOH]= K
ここで [CH3COOH] は、[2]で確認したように、元の酢酸のモル濃度にほぼ等しい。
酢酸ナトリウム(強電解質)は次のようにすべて電離している。
CH3COONa ―→ CH3COO- + Na+
この電離による [CH3COO-] は、元の酢酸ナトリウムのモル濃度に等しく、これに比
べて酢酸の電離による [CH3COO-] は無視できる。
したがってこの実験では
[CH3COOH]=[CH3COO-]
である。これを上の関係式に代入すると
[H+] = K
両辺の常用対数をとり−1を掛けると
−log[H+] = pH = −logK = pK
となる。つまりこのような緩衝溶液のpHは、それを構成する弱酸の電離指数 pK に一
致するのである。酢酸のpKは4.8であり、計測結果と同じである。
参考文献
・田村著「物理化学(上)」(至文堂)
・アトキンス著「物理化学(上)」(東京化学同人)
・フランゼン&ガーシュタイン著「基礎化学熱力学」(培風館)
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追 記(11.2)
実験 濃度による蒸気圧の差
(1)約100mLの薬びんに、アクリル製枠を2つ入れる。
(2)短い試験管にエタノール6mLを入れ、液面の高さに輪ゴムをはめ、びん中の枠に
収める。
(3)もう1本の短い試験管に、エタノール2mLとエチレングリコール4mLを入れ、
ガラス棒でかき混ぜる。液面の高さに輪ゴムをはめ、さらに区別のためその上部にもう1
つ輪ゴムをはめ、びん中のもうひとつの枠に収める。
(4)びんの口にシーリングテープを巻き、ゆるくふたをし、200mLビーカーに入れ
る。
(5)湯をびんの肩まで加え、穏やかに沸とうするように加熱する。
(6)沸とうが始まって5分が経ったら手早く、びんを取り出してふたをしっかり締め、
また沸とう水にもどす。そして両方の試験管の液面が、輪ゴムに対してどの位置にあるか
を確認する。
注意:穏やかに沸とうするように、バーナーの炎を加減する。
(7)約20分が経過したら、液面の高さの変化を調べる。
(8)びんを取り出し、すぐにふたを外す。
<記録>
<準備>
・アクリル製枠
1mm厚のアクリル板をはさみで切り、ジクロロメタンで接着して、短い試験管が立て
られようにした枠(びんの大きさに応じて製作する)
・短い試験管
約5cmにカットした試験管
<結果>
純エタノールの液面が1mmほど下がり、エチレングルコール溶液の液面が1mmほど
上がる。
エタノールをメタノールに代えても、同じような結果になる。
エタノールを水の代えると、50分くらいで同じような結果になる。
<記述>
純エタノールはエタノールのモル濃度がもっとも高いので、その変化傾向も大きい。こ
れに対してエチレングリコール溶液のエタノールのモル濃度は約1/3であり、その変化
傾向はかなり小さい。
純エタノールから蒸気が発生し、エタノール蒸気の変化傾向は純エタノールの変化傾向
よりいくらか小さい。だから、純エタノールが蒸発していくと捉えられる。このエタノー
ル蒸気はエチレングリコール溶液の表面にも達する。蒸気の変化傾向は、溶液中のエタノ
ールの変化傾向より大きい。だから、ここではエタノール蒸気の凝縮が起こる。
林 正幸と主万子の始めの
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