11.11
林 正幸
化学反応の速度
実 験
実験目次
実験1 時計反応(演示実験)
(a)濃度の影響
(b)温度の影響
実験2 2−ブロモ−2−メチルプロパンの加水分解速度
実験3 酢酸エチルのケン化速度
実験4 ホース水素爆鳴気
実験5 粉じん燃焼ロケット
実験6 触 媒
(a)白 金
(b)ゼオライト
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実験1 時計反応(演示実験)
(a)濃度の影響
(1)A液、B液、水が、実験時に約10℃になるように、冷蔵庫から出す。
(2)3本の太い試験管に、メスシリンダーでB液60mLずつを入れ、1000mLビ
ーカーの10℃に調節した水に浸ける。
(3)[1]のラベルを貼った太い試験管にA液60mLを入れ、10℃の水に浸ける。
[1/2]の太い試験管にB液30mLと水30mLを入れ、10℃の水に浸ける。
[1/3]の太い試験管にB液20mLと水40mLを入れ、10℃の水に浸ける。
(4)2本の太い試験管にメスシリンダーでA液60mLずつを入れ、20℃に調節した
水と30℃に調節した水に浸ける。
(5)2本の太い試験管([1/2]のラベル)にそれぞれB液30mLと水30mLを入
れ、20℃の水と30℃の水に浸ける。
(6)10℃に調節した[1]のA液とB液を、300mLビーカーに一気に入れ、振り
混ぜて、青色に発色するまでの時間を計測する。
続いてA液と[1/2]のB液を混ぜて時間を計測する。さらにA液と[1/3]のB液
を混ぜて時間を計測する。
(b)温度の影響
(7)20℃に調節したA液と[1/2]のB液を、300mLビーカーに一気に入れ、振
り混ぜて、青色に発色するまでの時間を計測する。
(8)30℃に調節したA液と[1/2]のB液を、300mLビーカーに一気に入れ、振
り混ぜて、青色に発色するまでの時間を計測する。
<記録>
<準備>
A液(1Lあたり)
- 1 -
ヨウ化カリウム KI 50[g]=300[m mol]
チオ硫酸ナトリウム Na2S2O3 4.7[g]=30[m mol]
(五水和物では7.4g)
溶性デンプン 0.2〔g〕
(実際には1%溶液を20mL使う)
酢酸 CH3COOH 30[g]=500[m mol]
(実際には30mL使う)
酢酸ナトリウム CH3COONa 4.1[g]=50[m mol]
(三水和物では6.8g)
B液(1Lあたり)
過酸化水素 H2O2 34[g]=1000[m mol]
(実際は35%のものを100ml使う。)
チオ硫酸ナトリウムと過酸化水素は分解しやすい。つくり置きは避ける。
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実験2 2−ブロモ−2−メチルプロパンの加水分解速度
参考:反応式は次のようである。
(CH3)3CBr + H2O ―→ (CH3)3COH + HBr (3')
2−ブロモ−2−メチルプロパン 臭化水素
2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン
臭化水素の生成による導電率の増加を追跡して反応速度を調べる。
(0)「導電率計」をレンジ0.00〜7.00[mS/cm]にして調整しておく(補正機能
も使う)。
参考:導電率計は、市販品については有機溶媒に溶ける恐れがある。私が製作した「導電
率計」については、ホームページを参照する。
http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/masa/ne69-5.htm
(1)300mLビーカーに水300mL(ビーカーの目盛で)を入れ、温度計を差し入
れて20℃になるように加熱する。
注意:実験室の温度が20℃以下であること。
(2)50mLメスシリンダーでエタノール30mLをφ30mm試験管(エタノールの
ラベル)に注ぎ、20℃の水に浸ける。同じように水20mLをφ25mm試験管(水の
ラベル)に注ぎ、20℃の水に浸ける。
(3)20℃に数分保ったら、乾いた50mLビーカーに2−ブロモ−2−メチルプロパ
ン0.343g(0.0025mol)を秤り取り、すぐにエタノールを加えて溶かし、混
合溶液を元の試験管にもどして20℃の水に浸ける。
- 2 -
参考:2−ブロモ−2−メチルプロパンは揮発性である(沸点73℃)。
(4)数分後のスタート時刻を確認し、その時刻になったら手早く、エタノール溶液に水
20mLを注ぎ、続いてそれを「セル」に注ぎ、300mLビーカーに「台」を沈め、
「セル」を20℃の水に浸ける。そして20℃を保つようにする。
注意:事前にイメージトレーニングするとよい。
参考:この時点で2−ブロモ−2−メチルプロパンのモル濃度は、ほぼ0.05mol/L
になる。
スタート時刻( : )
(5)次の時間になったら、導電率を計測する。
0.5分 ( )mS/cm
1 ( )
1.5 ( )
2 ( )
3 ( )
4 ( )
5 ( )
30 ( )
参考:30分後の導電率は、反応が終了したときの導電率と見なす。時間が許せば1時間
後などの導電率を計測するとよい。
(6)データ処理はテキストに従う。5〜30分の間にも準備する。
<準備>
・「セル」は、50mLビーカーを利用している(ホームページ参照)。
・「台」は、ボトル缶を肩のところで切断してつくる(キャップは使わない)。
<備考>
インゴールドらが臭化アルキルの加水分解で、求核置換反応のしくみを調べたのは、エ
タノールが80%の溶媒であった。しかしこの濃度付近の反応速度は小さく、かつ導電率
測定には向かない。そこでエタノールが60%の溶媒にした。しかしこの領域では溶媒効
果が大きいのか、水のモル濃度変化よりも大きく反応速度定数が変化する。ちなみにアセ
トン・水溶媒も同じような傾向を示した。
それでもこの反応は1次であろうと考えてこのプランを作成した。だから「知識と理
論」では、深入りしないようにする。
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実験3 酢酸エチルのケン化速度
参考:反応式は次のようである。
- 3 -
CH3COOC2H5 + NaOH ―→ CH3COONa + C2H5OH (4')
酢酸エチル 酢酸ナトリウム エタノール
水酸化ナトリウムの消費量を中和滴定(逆滴定)で求めて反応速度を追跡する。
(0)(演示)
10mLホールピペットで0.08mol/L酢酸水溶液10mLを100mLビーカー
に入れ、フェノールフタレイン1滴を加える。これに10mLホールピペットで0.08
mol/L水酸化ナトリウム水溶液10mLを加えると、最後の1滴で赤色に変わることを
確認する。
(1)1000mLビーカーに水約500mLを入れ、加熱して20℃に調節する。
(2)200mLビーカーに、メスシリンダーで水100mLを入れ、1mLメスピペッ
トで酢酸エチル0.80mLを加え、ガラス棒でかき混ぜる。
参考:酢酸エチルは、98%、密度0.903g/mL、分子量88
0.80[mL] = 0.80×0.903×0.98/88[mol]
≒ 0.0080[mol]
したがって調製する水溶液は0.080mol/L
(3)4本の太い試験管に、ピペッターを使って10mLメスピペットで酢酸エチル水溶
液を10mLずつ入れる。
注意:太い試験管の2分、5分、10分、20分というラベルに注意する。
(4)0.080mol/L水酸化ナトリウム水溶液10mLが入った試験管4本を持って
いき、太い試験管と共に20℃の水に浸けてときどき振り混ぜ、10分ほど20℃に保つ。
参考:温度幅は±1℃以内に収める。
(その間に)
(5)0.080mol/L酢酸水溶液10mLが入った100mLビーカー4つに、それ
ぞれフェノールフタレイン1滴を加えて持っていく。これは常温で放置する。
注意:ビーカーの2分、5分、10分、20分というラベルに注意する。
(6)次の操作予定時刻を書き入れる(秒まで表示される時計を確保する)。
分と秒を書く
@スタート=「2分」の太い試験管に水酸化ナトリウム10mLを混ぜる( : )
A20秒後=「5分」の 〃 10mL 〃 ( : )
B40秒後=「10分」の 〃 10mL 〃 ( : )
C60秒後=「20分」の 〃 10mL 〃 ( : )
(=1分後)
D2分後= 「2分」の混合物を「2分」の酢酸10mLに混ぜる。( : )
E5分20秒後= 「5分」 〃 「5分」 〃 ( : )
- 4 -
F10分40秒後=「10分」 〃 「10分」 〃 ( : )
G21分後= 「20分」 〃 「20分」 〃 ( : )
(7)反応させる水溶液の温度が整い、予定時刻が近づいたら次のように操作する。
@〜C
予定時刻の数秒前に、太い試験管と水酸化ナトリウムを取り出し、予定時刻で水酸化ナ
トリウムを一気に加え、手早く振り混ぜて太い試験管を元のビーカーにもどす。
・温度調節
ときどき温度計を確認し、必要に応じて加熱する。
DからG
予定時刻の数秒前に、太い試験管を取り出し、準備しておいた酢酸に予定時刻で一気に
加え、振り混ぜる。
(8)Eを過ぎると時間に余裕ができるので、「2分」の酢酸から中和滴定していく。
・マグネットを入れてスターラーに置く。ピペッターを使って、10mLメスピペットに
0.080mol/L水酸化ナトリウム水溶液10mLを採り、滴下して赤色に変わるまで
の体積 V[mL]を調べる(最小目盛りの半分の0.05mLまで読みとる)。
2分 ( )mL
5 ( )
10 ( )
20 ( )
注意:大気中の二酸化炭素のため、着色がしばらくして消えてしまう。数秒着色したとこ
ろを中和点とする。
参考:スターラーがない場合は、ひとりがガラス棒でかき混ぜ、もうひとりが滴下を担当
するとよい。
(9)反応混合物中のスタート時における酢酸エチルと水酸化ナトリウムのモル濃度は共
に0.04mol/Lである。 それぞれの時間における残存濃度 C は次の式で計算できる。
この実験では、酢酸エチルと水酸化ナトリウムの濃度は常に等しい。
C = 0.04×(10−V)/10 = 0.004×(10−V)
0分 0.0400mol/L
2 ( )
5 ( )
10 ( )
20 ( )
(10)データ処理はテキストに従う。
<記録>
- 5 -
<準備>
・1mLメスピペット
キャップを被せる。
・太い試験管 φ30mm
・10mLメスピペット
10mL用のキャップを被せる。
・0.04mol/Lシュウ酸水溶液の調製
シュウ酸(2水和物)1.260gを水に溶かして全体を250mLにする。
・0.08mol/L水酸化ナトリウム水溶液の調製
水酸化ナトリウム3.40gを水に溶かして全体を1Lにする。
100mLビーカーに、ホールピペットで0.04mol/Lシュウ酸水溶液10mL
を採り、フェノールフタレイン1滴を加え、ビュレットに調製した水酸化ナトリウム
水溶液10mLを入れて中和滴定する。
この結果に基づいて、水酸化ナトリウム水溶液に水を加える。
・0.08mol/L酢酸水溶液の調製
酢酸4.65mLを水に溶かして全体を1Lにする。
100mLビーカーに、ホールピペットで調製した酢酸水溶液10mLを採り、フェ
ノールフタレイン1滴を加え、0.08mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定
する。
この結果に基づいて、酢酸水溶液に水を加える。
さらにホールピペットで調整した酢酸水溶液10mLを採り、フェノールフタレイン
1滴を加え、10mLホールピペットに0.08mol/L水酸化ナトリウム水溶液
10mLを採って加えていく。
その結果に基づいて、上の操作(0)のようになるようにさらに微調整する。
1滴=0.03mL
備考:最後の微調整は、主には演示目的である。
必要なら濃度が高い水酸化ナトリウム水溶液も利用する。
・水酸化ナトリウム水溶液の分配
4本の試験管にピペッターを使って10mLホールピペットで入れ、ゴムせんをして
おく(ゴムせんは分配時に外す)。
・酢酸水溶液の分配
4つの100mLビーカーにラベルを貼り、ピペッターを使って10mLホールピペッ
トで入れる。
- 6 -
・実験室の温度が20℃以下であること。
備考:試薬1級の水酸化ナトリウムの純度は94%である。試薬特級を使えば反応の終わ
りの方でもよいデータが得られる可能性がある。
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実験4 ホース水素爆鳴気(演示実験)
(1)「透明ホース」に水を詰め、一方をピンチコックで締めて素スタンドに固定し、他
方を約1Lの水が入った3Lポリ容器に浸ける。
(2)「点火用ゴムせん」の銅線の両端をやすりで磨き、「チャッカマン火花器」をつな
いで、火花が飛ぶことを確認し、火花器を外して透明ホースのピンチコック側にはめ込み
(銅線の先を水で濡らさない)、ビニールテープでしっかりと固定する。
(3)「かさ袋容器」に「つなぎ導管」を付けて、簡易ボンベの水素と酸素を2:1にな
るように詰める。
(4)かさ袋容器を透明ホースにつなぎ、ピンチコックをゆるめて混合気体を充填し(ポ
リ容器を上下させる)、かさ袋容器を外す(ピンチコックで締めたポリチューブは残す)。
(5)生徒たちに透明ホースを持たせ、観察の指示をする。
(6)再びチャッカマン火花器をつなぎ、点火する。
<記録>
<準備>
・透明ホース
外径16mm、内径12mm 10〜15m
10mの容積は1.13L ホフマン型ピンチコックを付属
・点火用ゴムせん
2号ゴムせんにφ6mm、6cmのガラス管を差し込み(内側にはみ出さない)、銅
線(#20)2本をすき間から差し入れ、内側で45°に折って両端の間隔を2mm
にする。

・チャッカマン火花器
- 7 -
チャッカマンのガスを抜き、クリップの付いたリード線をはんだ付けし、引き金を引
くとクリップの間で火花が飛ぶようにする。
・かさ袋容器
かさ袋(11.5×70cm)に4.8cmごとに印を付ける。これは約0.2Lの長さ
である。6号ゴムせんにφ6mm、6cmのガラス管を差し込み、これに袋の口を巻
き付けてビニタイで締める。ガラス管にポリチューブ(6cm)をつなぎ、モール型
ピンチコックを付属させる。
・つなぎ導管
φ6mm、8cmのガラス管に簡易ボンベ用ストローをビニールテープでつなぐ。
備考:これは後藤 道夫さんのアイデアを使っている。
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実験5 粉じん燃焼ロケット(演示実験)
(0)かたくり粉の山にバーナーの炎を近づける。
(1)「粉じん燃焼装置」のろうとの穴を小さい紙でふさぎ、これにかたくり粉を入れ、
45L透明ポリ袋をやぐらの半分までかぶせる。
(2)アルコールランプに点火し、手早くポリ袋をかぶせ切り、続いてポリチューブから
2秒ほどかけて息を吹き込み、かたくり粉を舞い上がらせる。
注意:頭は「粉じん燃焼装置」から離し、かつ低くして吹き込む。

<記録>
<準備>
・粉じん燃焼装置
底面が30×30cmくらいの段ボール箱の底を上にし、太い針金2本で高さが55
cmほどのやぐらを組む。
- 8 -
45Lのポリ袋の口の周囲は130cmなので、段ボール箱の周囲はこれよりいくら
か小さいものを選ぶ。針金はガムテープで段ボール箱に固定し、上はビニタイで締め
る。
底と側面に穴を開け、φ90mmのろうとポリチューブを通す。チューブの長さは
130cmくらいにする。
・かたくり粉
電気乾燥器などで乾燥させておく。
<備考>この実験は盛口さんに教わった。
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実験6 触 媒
(a)白 金
(1)1/3ほど水上置換された水素の入った口径25mmの試験管を、倒立したまま水
から引き上げて空気を入れ、ゴムせんをして数回上下をひっくり返し、倒立状態でスタン
ドに固定する。
参考:より正確には 水素:空気=2:5 にするとよい。
(2)白金線の先をリング状にし、バーナーで赤熱するまで加熱する。
(3)炎から取り出して赤熱状態が収まったら、試験管のゴムせんをとって差し入れて、
白金線の様子を観察する。
注意:途中で爆発する。
参考:細い針金で同じ操作をして比較するとよい。
(4)100ml三角フラスコにメタノール8mlを入れる。
(5)白金線のリング部分を(1)(2)のように加熱し、液面近くまで差し入れる。
(6)三角フラスコ内の気体に、ホルムアルデヒド臭があるか調べる。
参考:試験管に入ったホルマリンの臭いと比較する。
(7)別の100mlフラスコの濃アンモニア水8mlを入れる。
(8)透明ポリ袋にザルツマン試薬10mLを入れておく。
(9)同様にして、白金線を差し入れる。
(10)30秒ほど反応させたら、三角フラスコ内の気体を液体を注ぐようにポリ袋に移
し(液体は入らないようにする)、袋の口をひねって止め、ザルツマン試薬とよく振り混
ぜて様子を観察する。
注意:白金線は高価である。片づけるときに柄から抜け落ちていないか確認せよ。
<記録>
- 9 -
<準備>
・透明ポリ袋
No10 180×270mm
・ザルツマン試薬
A液:水500mLにスルファニル酸5gを加え、スターラーでかき混ぜて溶かす。
B液:水500mLに、リン酸6mLとN−(1−ナフチル)エチレンジアミン二塩酸
塩50mgを溶かす。
使用前に両者を同体積ずつ混ぜる。
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(b)ゼオライト
(1)試験管の底にカット綿をガラス棒で差し入れ、それにピペットでエタノール2mL
を浸み込ます。
(2)試験管を水平にして口の近くをスタンドに固定し、カット綿から3cmほどのとこ
ろにモレキュラーシーブ4Aを小さじ2杯(20粒ほど)置く。
(3)ポリチューブを付けたガラス管つきゴムせんを締め、水を入れて倒立させた試験管
4本を水槽に準備する。
(4)モレキュラーシーブ4Aの部分をバーナーの中火で加熱し、発生する気体を試験管
に捕集する。
はじめの2本の試験管は外に出して気体を捨て、残り2本に捕集できたら、ポリチュー
ブを外に出して火を消す。
(4)1本の試験管の口を指で押さえて取り出し、ピペットで0.001mol/L過マン
ガン酸カリウム水溶液2mLを素速く加え、指で押さえて激しく振り混ぜ、様子を観察す
る。
(5)同じようにもう1本の試験管を取り出し、指を離して点火してみる。
<記録>
<準備>
・カット綿
2.5cm四角に切る。
備考:この実験は藤田さんから教わった。
- 10 -
知識と理論
目 次
1.反応速度の表し方
2.1次反応
3.2次反応
4.化学反応のしくみなど
5.活性化エネルギー
6.不均一反応の速度
7.触 媒
この章は高校段階ではもっともレベルが高い。化学量論や数学の能力が要求される。覚
悟してチャレンジしてほしい。
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1.反応速度の表し方
[1]中和滴定をすると、たとえば酢酸と水酸化ナトリウムの中和反応は素速く進行して
いることが実感できる(あるいは、速すぎて中和反応にも速度があることを意識しないか
もしれない)。
CH3COOH + NaOH ―→ CH3COONa + H2O
酢酸
他方で、触媒として濃硫酸を溶かしたメタノールにサリチル酸を溶かし、メタノールがお
だやかに沸とうする程度に加熱を続けると、15分以上経ってから、突然に反応溶液が白
濁する。
C6H(OH)COOH + CH3OH ―→ C6H4(OH)COOCH3 + HO
サリチル酸 メタノール サリチル酸メチル
これはメタノールにやや溶けにくいサリチル酸メチル(サロメチール)が生成していき、
その時点で飽和濃度を越えたことを意味する。つまりこの反応はゆっくりと進行する。
化学反応の速度はどのように表せばよいだろうか。物体の速度なら、たとえば1秒あた
り何m進むかで表すことができる。つまり進んだ距離を所要時間で割れば速度になる(等
速度運動の場合)。化学反応では物質が変化して別の物質になるので、たとえば1分あた
り反応物質が何mol減少するかとか、1分あたり生成物質が何mol増加するとか表せ
ばよいだろうか。しかしこれでは不十分である。同じように反応していても反応混合物の
全体の量によって変化してしまう。つまり反応溶液が1Lの場合と2Lの場合では、後者
では前者の2倍の物質が変化するからである。

こうして反応速度は、反応混合物1Lあたり、1分あたり(反応が早い場合は1秒あた
り)、物質が何mol変化するかで表す必要がある。これは1分あたり物質のモル濃度が
どれだけ変化するかである。単位は[mol/L・分]になる。
[2]反応速度は反応物質の濃度によって変化するだろう。反応物質の濃度が高いときは
反応速度が大きく、反応が進行してその濃度が低くなると反応速度が小さくなると考えら
- 11 -
れる。したがってある時点での反応速度 v は、比較的短い時間( Δt と表す)に、物
質のモル濃度がどれだけ変化するか( ΔC と表す これも比較的小さい数値になる)を
計測し、後者を前者で割り算する必要がある。
v = ΔC/Δt
ただしこの式は生成物質のモル濃度の増加に注目して反応速度を表す場合である。反応物
質のモル濃度の減少に注目する場合は
v = −ΔC/Δt <1>
と表現するべきである。これは数学の問題であるが、変化量とは変化後の量から変化前の
量を引き算する。だから反応物質の変化量は負の数値になるからである。
具体的に見てみよう。次のデータはある仮想的な反応
A ―→ 2B
の、時間と反応物質および生成物質のモル濃度を示している。
反応時間 反応物質Aのモル濃度 生成物質Bのモル濃度
0[分] 0.1000[mol/L] 0 [mol/L]
1 0.0974 0.0053
10 0.0765 0.0471
20 0.0585 0.0831
21 0.0569 0.0861
30 0.0447 0.1106
40 0.0342 0.1316
41 0.0333 0.1334
50 0.0261 0.1477
60 0.0200 0.1600
(備考:次の速度式に依っている。
−d[A]/dt = 0.0268[A])
反応物質の初濃度は0.1000mol/Lである。まず反応物質 A に注目してスター
ト時(0〜1分の間)の反応速度を求めてみる。
モル濃度の変化量 ΔC 0.0974−0.1000=−0.0026[mol/L]
反応速度は −ΔC/Δt で表されるので
−(−0.0026)/1=0.0026[mol/L・分]
となる。
次に生成物質 B に注目してスタート時の反応速度を求めてみる。
ΔC=0.0053−0=0.0053
ΔC/Δt=0.0053/1=0.0053
0.0053[mol/L・分]
- 12 -
となる。ここで注意したいのは、数値が2倍(データの誤差を無視して)になっているこ
とである。これは反応式の係数を見れば納得できる。B は A の2倍の物質量になるので、
濃度変化も2倍になるためである。
このように反応速度は、どの物質に注目したものかを明示するべきである。
[例題1]反応物質 A に注目して、20分後と40分後の反応速度を計算せよ。
(答)
20分後 ΔC=0.0569−0.0585=−0.0016
−ΔC/Δt=−(−0.0016)/1=0.0016
0.0016[mol/L・分]
40分後 ΔC=0.0333−0.0342=−0.0009
−ΔC/Δt=−(−0.0009)/1=0.0009
0.0009[mol/L・分]
[3]上の例では、反応物質 A に注目する反応速度は次のようにその時点の反応物質 A
のモル濃度に正比例していることが分かる。
反応時間 反応速度 Aのモル濃度
スタート時 0.0026[mol/L・分] 0.1000[mol/L]
20分後 0.0016 0.0585
40分後 0.0009 0.0342
反応速度/モル濃度
0.0026/0.1000=0.026
0.0016/0.0585=0.027
0.0009/0.0342=0.026
したがってこの場合、次の関係式が成り立つ。これは反応速度式と呼ばれる。
−Δ[A]/Δt = k[A]
ここで [A] は物質 A のモル濃度を表す。そして k は比例定数であり、反応速度定数
(単に速度定数とも言う)と呼ばれる。この場合の速度定数の単位は[1/分]となる。
参考:次のように右辺の単位は、左辺の反応速度の単位と同じになる。
[1/分]×[mol/L] = [mol/L・分]
生成物質 B に注目する反応速度も、その時点の反応物質 A のモル濃度に正比例して
いる。だから
Δ[B]/Δt = k'[A]
ただしこの場合の速度定数 k' は、k の2倍になることに注意しよう。これからは反応
物質に注目する反応速度を中心に話を進める。
- 13 -
目次へ
2.1次反応
[1]前節の例のように、反応物質に注目する反応速度がそのモル濃度に正比例する反応
は、1次反応と呼ばれる。反応物質のモル濃度を C mol/Lとすると、次のような速度
式が成り立つ。
−ΔC/Δt = kC (k:速度定数) <2>
実験1「時計反応」(a)「濃度の影響」では、10℃において、A液60mLとB液
60mLを一気に混ぜ、青色になるまでの時間を計測した。B液の方は、濃度を原液のま
ま、その1/2、1/3と変えて次のようになった。
B液の濃度比 着色までの時間
1 16[秒]
1/2 31
1/3 49
時計反応のあらましを説明する。A液にはヨウ化カリウム KI 、チオ硫酸ナトリウム
Na2S2O3 、デンプンなどが含まれ、B液には過酸化水素 H2O2 が含まれる。過酸化
水素がヨウ化物イオンをヨウ素に変化させる(反応式はポイントのみを示す)。
2I- + H2O2 ―→ I2 (1)
そしてヨウ素はデンプンと反応して青色になるはずである。しかし着色がすぐに起こらな
いのはチオ硫酸ナトリウムが、生成するヨウ素を元のヨウ化物イオンに戻してしまうため
である。
I2 + 2Na2S2O3 ―→ 2I- (2)
(1)に比べて(2)の反応速度は桁違いに大きいので、チオ硫酸ナトリウムが無くなるまで
は青色にならないのである。

B液が原液(濃度比が1)の場合は、反応溶液120mL(=0.12L)の組成は上の
ようである(試薬がそのように調製してある)。反応式(1)と(2)を見比べると、チオ硫
酸ナトリウムは過酸化水素の物質量の2倍反応する。したがって青色になるまでの時間は、
過酸化水素が 0.5b mol(変化量としては −0.5b mol)反応するまで時間で
ある(ちなみにこの間は、ヨウ化物イオンの物質量は 10b molに保たれる)。これ
なら過酸化水素のモル濃度は一定と見なせ、これなら反応速度も一定とみなせて、その値
を計算する意味がある。そしてb液の濃度比が1/3の場合でも、過酸化水素の物質量は
11b molあり、この場合でも過酸化水素のモル濃度は一定と見なせる(変化量は5%
- 1 -
未満)。反応速度を示す式<1>において、比較的短い時間 Δt とは、具体的にはこのよ
うな意味である。
したがって過酸化水素に注目する反応速度は次の式で計算できる。
−ΔC/Δt = −(−0.5b/0.12)/T = (0.5b/0.12)/T
ここで T は青色になるまでの時間である。この場合に単位は[mol/L・秒]である。
参考:b の数値は、0.0018molである(実験1の<準備>より)。
これによって反応速度を計算してもよいが、b はつまりは分子全体が一定の数値であるの
で、3つの場合の T の逆数は、それぞれの場合の反応速度の比になることに注目しよう。
反応速度の比と過酸化水素の濃度比を整理すると
反応速度比(着色までの時間の逆数) 過酸化水素の濃度比
0.063 1
0.032 1/2
0.020 1/3
となり、反応速度が過酸化水素のモル濃度に正比例していることが確認できる。
[2]1次反応を表す速度式<1>は、微分を使ってより正確に表すと次のようである。
−dC/dt = kC
C:注目する反応物質のモル濃度
これを積分すると次のようになる。
−log(C/C0) = (k/2.3)×t <3>
log:常用対数(10を底とする対数)
C0:初濃度
そして1次反応の速度定数の単位は[1/分]になる。
残念ながら高校段階の数学では、この関係式を受け入れるしかない。これは反応物質の
その時点でのモル濃度と初濃度の比、その対数の符号を変えた量 −log(C/C0) が、
反応時間 t に正比例することを示す。そしてそのグラフの傾きから、反応速度定数を求
めることができる。
傾き = k/2.3
この関係式<3>を使って1次反応を見ていこう。これは小さい数値である ΔC や Δt
を扱わないので、計測が正確になる。
[3]実験2「2−ブロモ−2−メチルプロパンの加水分解速度」では
(CH3)3CBr + H2O ―→ (CH3)3COH + HBr (3)
2-ブロモ-2-メチルプロパン 2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン 臭化水素
20℃において、2−ブロモ−2−メチルプロパンのエタノール溶液に水を加えた。エタ
ノールと水の比は3:2であり、2−ブロモ−2−メチルプロパンのモル濃度はほぼ
0.05mol/Lである。
- 15 -
反応に関係するものでは生成物質の臭化水素のみが導電性を示す。そして濃度が低いの
で、その導電率はモル濃度にほぼ比例する。そこでスタートから0.5,1,1.5、2,
3,4,5分に,そして30分後(反応終了時と見なす)に導電率を計測した。
計測例(温度は20.3±0.2℃)は次の表の左2列目のようであった。
時間 HBrの導電率 C/C0 −log(C/C0)
0[分] 0[mS/cm] 1.000 0.000
0.5 0.50 0.868 0.061
1 1.04 0.726 0.139
1.5 1.46 0.616 0.210
2 1.80 0.526 0.279
3 2.30 0.395 0.403
4 2.64 0.305 0.516
5 2.92 0.232 0.635
30 3.80
関係式<3>から、最初に求めたいのは C/C0 、つまり反応物質である2−ブロモ−2
−メチルプロパンのその時点のモル濃度とスタート時のモル濃度の比である。これはどの
ように計算できるだろうか。反応式から分かるように、反応終了時の臭化水素の導電率
κ∞ は、スタート時の2−ブロモ−2−メチルプロパンのモル濃度に対応する。
参考:κはギリシャ文字で、カッパと読む。
そしてある時点の臭化水素の導電率 κ は、反応で消費されたこの反応物質のモル濃度に
対応する。したがって次の関係式が成り立つ。

図1 −log(C/C0) と時間のグラフ
- 16 -
C/C0 = (κ∞−κ)/κ∞
モル濃度自身でなく、その比を計算するのでこれでよい。それを上の表の3列目に示す。
そして4列目は −log(C/C0) の数値である。対数の値は関数電卓などで求められる。
−log(C/C0) と時間をグラフにすると、前ページの図1のようにほぼ直線になる。
直線の傾きは0.1276であり、
備考:最小2乗法で次の式が得られる。
−log(C/C0) = 0.1276t+0.010
これから速度定数(20℃における)は
0.1276×2.3 = 0.293[1/分]
と求められる。
[5]1次反応の特徴は、モル濃度が半分になるまでの時間 τ が、初濃度に依らないこ
とである。
参考:τ はギリシャ文字であり、タウと読む。
関係式<3>に 1/2 を代入すると
−log(C/C0) = −log(1/2) = 0.301
0.301= (k/2.3)×τ
したがって
τ = 0.693/k <4>
つまり反応速度定数によって決まるある一定の数値になる。この時間は半減期と呼ばれる。
[例題2]実験2の2−ブロモ−2−メチルプロパンの加水分解反応は1次反応である。
そしてこの反応物質の初濃度がほぼ0.05mol/Lであるので、計測例の場合は時間と
2−ブロモ−2−メチルプロパンのモル濃度の数値は次のようになる。
時間 2−ブロモ−2−メチルプロパンのモル濃度
0[分] 0.0500[mol/L]
0.5 0.0434
1 0.0363
1.5 0.0308
2 0.0263
3 0.0198
4 0.0153
5 0.0116
これを横軸が時間、縦軸がモル濃度のグラフに描き、次の半減期を求めよ。
@ 0.0500mol/Lが0.0250mol/Lになるまでの時間
A 0.0400 〃 0.0200 〃
また20℃における反応速度定数は0.293[1/分]であった。関係式<4>から半減期
- 17 -
を計算し、一致するか検討せよ。
(答)

@ 2.2分
A 2.2分
計算値:2.36分
放射性同位体の壊変(崩壊とも呼ばれる。原子核の反応であり、化学反応とは区別され
る。)も、本質的には1次反応である。この場合は濃度は使わず放射性同位体の個数に注
目するが、半減期という考えは利用できる。
たとえば原子炉(ウラン235の核分裂によってエネルギーを取りだす装置)で生じる
放射性廃棄物に多く含まれるプルトニウム239の半減期は24100年である。この放
射性同位体の量が1/16になるのは
16 = 24
24100×4 = 96400[年]
つまりおよそ10万年である。
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3.2次反応
[1]反応物質に注目する反応速度がそのモル濃度の2乗に正比例する反応は、2次反応
と呼ばれる。反応物質のモル濃度を C[mol/L] とすると、次のような速度式が成り立
つ。
−ΔC/Δt = kC2 (k:速度定数) <4>
そして2次反応の速度定数の単位は[L/mol・分]などとなる。
- 18 -
速度式<4>は微分を使うと次のようになる。
−dC/dt = kC2 <4'>
たとえば気体状態でヨウ化水素が分解する反応では
2HI ―→ H2 + I2 (4)
−d[HI]/dt = k[HI]2
となる。速度式<4'>を積分すると次のようになる。
1/C = kt + 1/C0 <5>
これは反応物質のモル濃度の逆数 1/C と、反応時間 t のグラフが直線になることを
示す。
積分自身はできなくても、これが正しいことは、この導関数を求めてみれば分かる。式
<5>を変形して
C = 1/(kt + 1/C0) <6>
Cを t で微分して
dC/dt = −k/(kt + 1/C0)2
この右辺に<6>を代入すると
dC/dt = −kC2
そして両辺に−1をかけ算する。また積分定数 1/C0 については、<5>において
t=0 を代入すると
1/C = 1/C0
つまりそのときの濃度は C=C0 つまり初濃度でつじつまが合っている。
[2]ここで反応物質が2種ある、次のような反応について考える。
A + B ―→ D + E
この反応速度は
−d[A]/dt あるいは −d[B]/dt
で表され、反応物質の係数が共に1であるので、両者は一致する。そして反応物質Aに注
目して、次の速度式が成り立つとする。
−d[A]/dt = k[A][B] <7>
つまり反応速度が2種の反応物質のそれぞれのモル濃度の積に正比例する場合を考える。
ちなみにこれも2次反応である。このまま積分することも可能であるが複雑になり過ぎる
ので、2種の濃度が等しい場合を扱うことにすると
−d[A]/dt = k[A]2
となり、速度式<4'>になる。
このような制限を付けて、関係式<5>を使って2次反応を見ていこう。
[3]実験3「酢酸エチルのケン化速度」では
- 19 -
CH3COOC2H5 + NaOH ―→ CH3COONa + C2H5OH (4)
酢酸エチル 酢酸ナトリウム エタノール
20℃において、0.08mol/L酢酸エチル水溶液10mLと0.08mol/L水酸化
ナトリウム水溶液10mLを加えた。スタート時の反応混合物中の両者のモル濃度は、元
の半分になるので
[CH3COOC2H5] = [NaOH] = 0.04[mol/L]
である。4つの試験管で反応させ、2分後、5分後、10分後、20分後に次のように処
理した。つまり反応混合物を0.08mol/L酢酸水溶液10mLに加えた。これで未反
応の水酸化ナトリウムは中和されるので、反応はストップする。
NaOH + CH3COOH ―→ CH3COONa + H2O
そして次の関係があることに注目しよう。
中和されず残る酢酸の物質量 = ケン化反応した水酸化ナトリウムの物質量
そこで中和されず残った酢酸を、フェノールフタレインを指示薬にして、0.08
mol/L水酸化ナトリウム水溶液で滴定して必要な体積 V[mL] を計測した。この体積
はスタート時(まだ反応していない時)には0mLになり、反応が完了した時には10
mLになるはずである。だからある時間後に残っている水酸化ナトリウム水溶液のモル濃
度は
C = 0.04×(10−V)/10 =0.004×(10−V)
となる。

計測例(温度は20℃)は次の表の左のようであった。
時間 体積V 水酸化ナトリウムの濃度C 1/C
0[分] 0 [mL] 0.04 [mol/L] 25
2 2.95 0.0282 35.5
5 4.95 0.0202 49.5
10 6.40 0.0144 69.4
20 7.75 0.0090 111.1
ちなみにスタート時の体積 V が0mLであることは、酢酸水溶液10mLと水酸化ナト
リウム水溶液10mLが過不足なく中和することで確認した。
- 20 -
そしてデータを処理すると上の右のようになり、1/C と時間のグラフは、図2のよう
にほぼ直線になる。

図2 1/C と時間のグラフ
直線の傾きは4.25であり、
備考:最小2乗法で次の式が得られる。
1/C = 4.25t+26.6
これから反応速度定数(20℃における)は
4.25[L/mol・分]
と求められる。
[4]さて酢酸エチルのケン化反応の速度式は
−d[CH3COOC2H5]/dt =
−d[NaOH]/dt = k[CH3COOC2H5][NaOH] <8>
として考えてきた。
ここで水酸化ナトリウムに比べて酢酸エチルの濃度を10倍大きくしたらどうなるであ
ろうか。この場合は水酸化ナトリウムが反応しても酢酸エチルの濃度はほぼ一定である。
したがって速度式<8>は次のようになる。
−d[CH3COOC2H5]/dt =
−d[NaOH]/dt = k'[NaOH]
(k'=k[CH3COOC2H5]でほぼ一定)
つまり擬1次反応として扱える。
実際に計測してみると、反応速度は水酸化ナトリウムのモル濃度にほぼ正比例すること
が確認できる。
- 21 -
参考:酢酸エチルの濃度を10倍にする場合は、温度を10℃とし、40秒ごとに120
秒後まで計測するとよい。
なお酢酸エチルは、この程度は水に溶ける。
こうして確かに速度式<8>が成り立つことが確認できる。つまりこの反応速度は、酢酸エ
チルのモル濃度の2乗だけに正比例するのではなく、また水酸化ナトリウムのモル濃度の
2乗だけに正比例するのでもないことが納得できる。
目次へ
4.化学反応のしくみなど
[1]講座プラン「変化はどちらに向かうか&化学平衡」において、平衡状態は正逆両方
の向きの反応の勢いがバランスしている。そして平衡状態では化学平衡の法則が成り立つ
ことを学習した。たとえば酢酸エチルのケン化反応では
CH3COOC2H5 + NaOH ―→ CH3COONa + C2H5OH
[CH3COONa][C2H5OH]/[CH3COOC2H5][NaOH] = K
(K:平衡定数)
である。すると勢いとは、正逆両方の向きのそれぞれの反応速度ではないのかという考え
が浮かぶ。
確かにそのように捉えても矛盾しない事例もある。気体状態でのヨウ化水素の生成と分
解がそうである。
H2 + I2 ←→ 2HI (2')
生成速度は
v = k[H2][I2]
と表せる。分解速度はすでに3節で紹介したように
v’= k'[HI]2
である。平衡状態では両方の反応速度が等しいはずだから
k[H2][I2] = k'[HI]2
となる。したがって
[HI]2/[H2][I2] = k/k' = 一定 = K(平衡定数)
となる。
しかし2−ブロモ−2−メチルプロパンの加水分解を振り返ってみよう。
(CH3)3CBr + H2O ←→ (CH3)3COH + HBr
化学平衡の法則は
[(CH3)3COH][HBr]/[(CH3)3CBr][H2O] = K’
であるが、分解速度は
v = k"[(CH3)3CBr]
であった。このように勢いと反応速度は「似て非なるもの」である。
- 22 -
おそらく化学平衡に近い領域では多くの場合に、正反応と逆反応の速度式はそれぞれ化
学平衡の法則から予測される形になるのだろう。そして正反応の向きに反応が進行するな
ら、その速度式は
正味の反応速度 = 正反応の速度式 − 逆反応の速度式
となり、複雑になる。これに対して逆反応が無視できる、つまり化学平衡から離れた領域
では、化学平衡の法則の制約から解き放たれるのではないだろうか。
[2]講座プラン「有機化合物の世界」では、「反応形式」として、付加反応、置換反応、
脱離反応などを学習した。これは構造式で書いた反応式を見て形式的に整理したもので、
実際の化学反応がそのように進行しているかどうかは問題にしなかった。しかしここでは、
化学反応が実際にどのようなしくみで進行するかについて検討してみよう。
2次反応では、2つの分子が出会って反応するというイメージが浮かぶ。出会いの頻度
(ひんど)は、それぞれの分子のモル濃度の積に正比例すると考えるのは自然である。この
ことは気体分子どうしの出会いつまり衝突ならいっそう明白である。
一定体積の容器の中に水素分子とヨウ素分子が1個ずつある場合に、1回衝突する平均
の時間を t とする。次に水素分子が2個、ヨウ素分子が1個の場合を考える。すると時
間 t の間に水素分子とヨウ素分子は平均2回衝突するだろう(水素分子どうしの衝突は
無視する)。次に水素分子が2個、ヨウ素分子が2個の場合を考える。この場合は平均4
回の衝突があるだろう。

だからヨウ化水素の生成速度は、水素分子とヨウ素分子のモル濃度の積に正比例する。ヨ
ウ化水素の分解の反応速度は、出合う分子が同じものだからヨウ化水素のモル濃度の2乗
に正比例する、と納得できる。
「3]それなら酢酸エチルと水酸化ナトリウムのケン化反応も同じであろうか。実はそれ
ほど単純ではない。出会っているのは、酢酸分子と水酸化物イオンであり次のように反応
している。
CH3COOC2H5 + OH- ―→ CH3COOH + C2H5O- (5)
エトキシドイオン
これはくわしくは次ページの左図のようである。
そしてエトキシドイオンは水分子と次のように
C2H5O- + H2O ―→ C2H5OH + OH- (6)
- 23 -

酢酸は水酸化物イオンと次のように
CH3COOH + OH- ―→ CH3COO- + H2O (7)
反応している。このようにある化学反応がいくつかの反応が組み合わさってできていると
き、元になるそれぞれの反応は「素反応」と呼ばれる。ヨウ化水素の生成と分解はいずれ
も1つの素反応であるが、多くの化学反応はいくつかの素反応で構成されている。
このケン化反応では、素反応(5)に比べて(6),(7)は桁違いに速く進むので、全体の
反応速度は遅く進む素反応(5)で決まってくる。だからこの反応速度は酢酸エチルのモル
濃度と、水酸化物イオンのモル濃度つまり水酸化ナトリウムのモル濃度の積に正比例する
わけである。このように他に比べて桁違いに遅くて進み、全体の反応速度を決める素反応
は律速段階と呼ばれる。
[4]2−ブロモ−2−メチルプロパンの加水分解のような1次反応はどう捉えればよい
だろうか。この化学反応は次の2つの素反応で構成されている。まず2−ブロモ−2−メ
チルプロパンが単独でイオンに解離する。生成するカルボニウムイオンは上の右図のよう
である。
(CH3)3CBr ―→ (CH3)3C+ + Br- (8)
トリメチルカルボニウムイオン
(カルボニウムイオン)
そしてカルボニウムイオンと水分子が次のように反応する。
(CH3)3C+ + H2O ―→ (CH3)3COH + H+ (9)
そして素反応(8)は、(9)に比べて桁違いに遅く進む。だからこの反応速度は2−ブロモ
−2−メチルプロパンのモル濃度のみに正比例する。
このように反応速度の研究は、化学反応のしくみを解明するのに役に立つ。より複雑な
しくみの化学反応ではその速度式も複雑になることがある。
目次へ
5.活性化エネルギー
[1]実験4「ホース水素爆鳴気」では、10mほどの透明ホースに水素と酸素が2:1
の混合気体を詰めた。そのままでは何も起こらない。しかし端で小さな電気火花を飛ばす
と、ほぼ一瞬に全体が化合して爆発し、他の端を浸けておいた水がホースに入ってきた。
これは何を意味するだろうか。
水素と酸素が化合する反応の平衡定数(25℃)は次のようである。
- 24 -
2H2+ O2 ←→ 2H2O(気)
[H2O]2/[H2]2[O2] = 3.1×1043
備考:数値はモル濃度単位のものである。
平衡定数が極めて大きいから、平衡が成立したときにはほとんど水ばかりであり、極めて
右に偏った反応であることが分かる。にもかかわらず、常温ではこの反応は事実上まった
く進行しない。
[2]考えてみると、2次反応では物質は出会うだけで反応するだろうか。いくつか条件
があるのではないだろうか。また1次反応ではどういう条件を持った物質が反応するのだ
ろうか。この節では素反応について考える。
ヨウ化水素の生成反応を例にすると、水素原子どうしヨウ素原子どうしの結合が切断さ
れて新たに水素原子とヨウ素原子の間に結合が形成される。反応の途中では結合が切れた
状態、あるいは図3のグラフ中央上のように元の結合が伸び、新しい結合ができ始めた状
態を通過する必要がある。

図3 活性化エネルギー
講座プラン「物質とエネルギー」では、結合が伸びたり切断されたりした状態は、しっ
かり結合している状態に比べて、より大きい位置エネルギーを持つことを学習した。つま
り物質が反応するためには、途中でよりエネルギーが大きい状態を通過する必要がある。
この状態は活性化状態と呼ばれる。そして活性化状態を通過するのに必要なエネルギーは
活性化エネルギーと呼ばれる。
このことはヨウ化水素の生成反応を例にして図3のグラフのように表すことができる。
横軸は変化、縦軸はエネルギーである。反応物質である水素とヨウ素のエネルギーの和や
生成物質であるヨウ化水素のエネルギーは低い状態であり、言わばそれはくぼ地である。
そして物質が反応するためには、途中で活性化エネルギー分だけ高い活性化状態という峠
を越えねばならない。そして
「活性化エネルギーが大きい反応ほどその速度定数は小さくなる」
のである。ヨウ化水素の生成反応では、活性化エネルギーは174kJ/molである。
- 25 -
参考:/mol とは、活性錯体1molあたりという意味である。
備考:衝突活性説によると
k=pZexp(−Ea/RT)
ヨウ化水素の生成反応の熱化学方程式は次のようである。
H2 + I2 = 2HI + 10kJ
この例では、反応物質のエネルギーが生成物質より大きい。そして逆反応を考えるとその
活性化エネルギーは、図3のグラフから分かるように、正反応の活性化エネルギーに反応
熱を加えた数値になる。つまりヨウ化水素の分解反応では184kJ/molである。
備考:ヨウ化水素の反応に関わるデータはある教科書を参考にしたが、その温度は不明で
ある。いくつかの本にはそれぞれ異なるデータが載っている。
[3]講座プラン「物質の状態」では、ある温度における気体分子の飛行速度には大きい
ものも小さいものもあり、温度と共にその分布が変化することを学習した。これは温度が
同じでも、運動エネルギーが大きいものも小さいものもあることを意味する。熱運動では、
分子のエネルギーにはばらつきがある。
このように説明してくると図3のグラフの補足が必要になる。グラフが示す反応物質と
生成物質のそれぞれのエネルギーは、反応する温度における平均値である。反応物質の中
にはもっと大きいエネルギーを持つ分子も存在する。そのような分子どうしが衝突すれば、
その運動エネルギーが位置エネルギーに転換して、それが活性化エネルギーを超えること
がある。このとき反応が起こる可能性が生まれるのである。
ただしそれは100%とは言えない。たとえば水素分子とヨウ素分子の端どうしが衝突
すると活性化状態にはなれず、跳ね返ったりする。当たり所が悪いと駄目である。また首
尾よく活性化状態になれても、その後で元にもどってしまう可能性もある。反応速度定数
はこれらをすべて包み込んだ定数である。
そして1次反応では、分子全体に散らばっていた熱運動のエネルギーが切れるべき結合
部分に集中すれば、反応する可能性が生まれる。
[4]実験1「時計反応」(b)「温度の影響」では、A液と濃度を1/2にしたB液を準
備し、温度を20℃、30℃にして青色になるまでの時間を計測した。結果は、10℃の
場合を加えて、次の表の左のようであった。
温度 着色までの時間 反応速度比(着色までの時間の逆数)
10[℃] 31[秒] 0.032
20 16 0.063
30 8 0.125
それを反応速度の比に直すと上の右のようになる。これから
「温度が高くなると速度定数は大きくなる」
ことが分かる。それは温度が高くなると熱運動が激しくなる。そして衝突回数も増加する
- 26 -
ためである。
その程度は反応の種類によって異なるが、活性化エネルギーが50kJ/mol程度なら、
常温付近では、温度が10℃上がるごとに速度定数は2倍程度になると言える。だから温
度が30℃上がれば、8倍程度になる。
備考:アレニウスの式
k = Aexp(−Ea/RT)
を2つの温度で書き
T0=300、T=310、「kが2倍になる」とすると
Ea ≒ 53000
ちなみに「kが3倍になる」なら、Ea≒85000 となる。
[5]実験4にもどろう。水素と酸素の化合の反応のしくみは解明されているが複雑であ
る。そして最初の素反応
H2 + O2 ―→ 2OH
の活性化エネルギーは163kJ/molである。反応が進行するためにはまずこの峠を越
えなければならない。これは常温における水素分子や酸素分子の熱運動では容易なことで
はない。
参考:常温(27℃)における分子の飛行運動の平均運動エネルギーは
3/2RT=(3/2)×8.31×300=3.7kJ/mol
(講座プラン「気体状態」を参照)
電気火花はエネルギーの量は小さいが密度は高い。火花が飛ぶと、付近のわずかな領域
の分子に必要なエネルギーが与えられ、反応が開始される。すると水素の燃焼は発熱反応
であり
2H2 +O2 = 2H2O + 572kJ
反応熱が放出される。そして活性化エネルギーとして使われた火花のエネルギーも放出さ
れる。これらのエネルギーはその隣の分子に与えられる。したがってわずかな領域でも反
応が始まってしまえば、その隣の分子に与えられるエネルギーはどんどん増加していき、
反応は継続するのである。それだけではない。与えられるエネルギーが増加すると分子の
温度が高くなる。温度が高くなると速度定数は大きくなる。
実験4では炎の面が形成されてそれが拡がっていく。炎の面の移動速度は1秒あたり数
10mまでになる。こうしてほほ一瞬にして化合は完了し、爆発となったのである。燃焼
は発熱反応の代表であり、マッチの炎のような小さいエネルギーで反応が開始されてしま
えば、後は自動的に反応が進行する。
しかし吸熱反応では、反応熱に相当するエネルギーを供給し続けないと反応が進行しな
い。たとえば水の分解は水素と酸素の化合の逆反応であり、吸熱反応になる。電気を流し
て、つまり電気エネルギーを供給し続けてこそ、反応が継続する。
- 27 -
[6]化学反応が起こるためには活性化エネルギーが必要なので、化学平衡の理論から見
て起こるはずの反応が事実上進行しないことはある。逆から言うと、活性化エネルギーが
無ければ、反応物質はすぐに生成物質に変化してしまう。それを妨げているのが活性化エ
ネルギーの壁である。化学平衡の理論は必要条件を提示するだけである。
備考:活性化エネルギーがゼロの反応も存在する。
他方で、化学平衡の理論から起こらないはずの反応あるいは変化は、実際にも起こらな
い。たとえば(大気圧の下で)−10℃の氷が融解して液体の水になったり、不飽和溶液
から結晶が析出したりすることはない。
目次へ
6.不均一反応の速度
[1]これまで均一反応(溶液や混合気体)を扱ってきた。この節では不均一反応に目を
向けよう。希硫酸に亜鉛片を投入して水素を発生させる反応では、希硫酸と亜鉛片に境界
面があり、亜鉛の表面でのみ反応が起こる。ろうそくの燃焼では、芯の表面から炭化水素
が気体になって供給され、まわりから空気(酸素)が供給されて、燃焼反応の場が炎とな
るが、炎の中は均一とは言えない。
不均一反応の反応速度は、反応物質の濃度や温度だけでなく、他の条件によっても変化
する。
実験5「粉じん燃焼ロケット」では、かたくり粉の山に炎を近づけても、なかなか燃焼
反応が進行しなかった。ところが、ポリ袋の中にかたくり粉をまき散らすと、アルコール
ランプの炎に触れた部分から燃焼が始まり、一気に拡がって火の玉となり、ポリ袋はロケ
ットのように天井に上がり、熱で縮んで落下した。
かたくり粉が1粒1粒ばらばらになってその表面が空気によく触れるようになると、つ
まり空気と触れるかたくり粉の表面積が大きくなると、燃焼反応が格段に起こりやすくな
るのである。一般に、固体と気体あるいは固体と液体(あるいは溶液)の反応では、同じ
質量の固体でも、その表面積が大きくなると反応速度が大きくなり、場合によって爆発と
なることもある(粉じん爆発)。
参考:爆発とは、激しい燃焼などにより短時間に狭い領域で、大量の気体が発生しまた燃
焼熱などで温度が上昇して大きな圧力が発生し、それによってまわりのものが吹き
飛ばされる現象である。
この効果は日常感覚からは意外なほど大きく、炭坑や製粉工場などではその予防に注意を
払う必要がある。またキャンプファイアなどでは、まきを井桁(いげた)に組んだりして、
空気に触れる表面積を大きくする。
もうひとつ、固体表面付近の液体(あるいは溶液)や気体の反応物質は、反応が進行す
るとその濃度が低くなる。これをかき混ぜや吹き込み(混合すること)によって新しい液
体(あるいは溶液)や気体で置き換えると、反応速度が大きくなる。実験5ではこの効果
- 28 -
も加わる。
[2]講座プラン「酸化剤と還元剤」では、テルミッット反応の実験をした。
Fe2O3+ 2Al ―→ Al2O3 + 2Fe
このときアルミニウムはかたまりではなく粉末を使った(酸化鉄(V)はもともと粉末)。
そして両者をよく混合してから、マグネシウムリボンで点火した。
固体どうしの反応では、反応は両者の接触部でしか起こらない。異種の粒子が混ざった
状態を想像してみよう。接触部は粒子の表面のうちの限られた部分である。したがってよ
く粉砕して表面積を大きくし、よく混合して接触面積を大きくすることが求められる。
またその講座プランでは、硝石(硝酸カリウム)に木炭の粉(主成分は炭素)と硫黄を
混ぜた黒色火薬にも触れた。これはそれぞれを粉砕し、そして注意深く混合する必要があ
る。このため現代の火薬であるニトログリセリン(硝酸グリセリン)やニトロセルロース(硝
酸セルロース)、TNT(トリニトロトルエン)は、1つの分子が燃料(還元剤)部と酸化剤
部を持つ。まさにこれは究極の粉砕と混合である。
参考:前2者を混合したのがダイナマイトである。

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7.触 媒
[1]すでに触媒についてはいくつもの事例を学習してきた。講座プラン「物質とエネル
ギー」では「使い捨てかいろ」で、鉄粉に食塩を混ぜてすこし水を加えてかき混ぜると、
空気中の酸素を含めて次の反応が起き
4Fe + 3O2 + 6H2O ―→ 4Fe(OH)3
水酸化鉄(V)
温度が90℃くらいまで上昇した。このとき食塩(塩化ナトリウム)は反応を促進する触媒
としてはたらいた。
「電子やり取りの化学反応」では、亜鉛粉末とヨウ素粉末を混ぜて水をかけると次の反
応が起き
Zn + I2 ―→ ZnI2
赤紫色の気体(昇華したヨウ素)が発生した。このとき水は反応を促進する触媒としては
たらいた。
「有機化合物の世界」では、酢酸に濃硫酸とエタノールを加えて加温すると、次の反応
が起き
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CH3COOH + C2H5OH ―→ CH3COOC2H5 + H2O (10)
酢酸 酢酸エチル
水に溶けにくい酢酸エチルが生成した。このとき硫酸は反応を促進する触媒としてはたら
いた。
このように触媒とは、目的とする化学反応の速度を大きくする物質であり、反応後には
元にもどり、全体としての反応式には登場しない。また触媒は少量でそのはたらきを示す
という特徴がある。
[2]しかし触媒は、反応の途中では別の物質に変化して反応を手助けする。たとえば酢
酸エチルの合成では、硫酸は水素イオンとなって@のように反応する。

そしてその反応中間体にエタノールがAのように反応し、最後にBのように水素イオンが
外れる。
参考:上の反応経路をよく理解するには、配位結合の概念などが必要になる。
硫酸が存在しない場合は、酢酸とエタノールが直接に反応する反応経路になるだろうが
、
その場合の反応速度はかなり小さい。言い換えると、その反応経路をたどる場合の活性化
エネルギーはかなり大きい。これから分かるように触媒は、より活性化エネルギーが小さ
い別の反応経路をつくり出す物質である。
そして(素反応においては)、逆反応にとっても超えるべき活性化エネルギーの峠は共
通である。だから触媒は、逆反応の速度も大きくする。触媒は、平衡状態から大きく離れ
て逆反応が無視できる場合、あるいは平衡状態に早く到達したい場合に意味がある。
[3]実験6「触媒」(a)「白金」では、水素と空気が入った試験管に赤熱状態が収ま
った白金線を差し入れていくと、再び赤熱状態になり、爆発した。温度が低くても、水素
と空気中の酸素の燃焼反応が始まったのである。
こうした白金線をメタノールの液面に近付けると、再び赤熱状態になった。そして燃焼
ガスにホルムアルデヒド臭は無かった。温度が低くても、揮発したメタノールと空気中の
酸素の完全燃焼が始まったのである。
2CH3OH +3O2 ―→ 2CO2 + 4H2O (11)
メタノール
参考:講座プラン「有機化合物の世界」では、メタノールを酸化銅(U)で酸化させるとホ
ルムアルデヒドが生成した。
そして、こうした白金線を濃アンモニア水の液面に近付けると、再び赤熱状態になった。
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これも温度が低くても、揮発したアンモニアと空気中の酸素の次のような燃焼反応が始ま
ったのである。
4NH3 + 5O2 ―→ 4NO + 6H2O (12)
一酸化窒素
そして続いて一酸化窒素は空気中の酸素と次のように反応する。
2NO + O2 ―→ 2NO2 (13)
二酸化窒素
実験では燃焼ガスをザルツマン試薬と反応させると、赤紫色になった。これは二酸化窒素
を検出したのである。ちなみに二酸化窒素は水と反応して硝酸を生成する。硝酸は工業的
にはこのように生産され、オストワルト法と呼ばれる。
それでは白金は、どのようにして触媒としてはたらくのだろうか。正確な説明は難しい
が、イメージは次のようである。金属の表面にある原子は、内部の原子と違って、表面の
外側には原子がないため、金属結合の原子価が余って突き出している。そのため金属の表
面は化学反応して別の物質に変化していることも多い。白金の表面に水素分子が近づくと、
左図のように余った原子価と新たな結合ができる。この状態は化学吸着と呼ばれる。

すると水素分子中の共有結合は弱くなる。場合によっては切断されるかもしれない。ここ
へ酸素分子がやってくると反応が起こりやすい。反応によっては、反応する分子の両方が
白金表面に化学吸着され、分子が結合する白金原子を換えて転がるように動き回り、右図
(エチレンへの水素の付加反応)のように好都合な位置関係になって反応が起こりやすく
なる。
ちなみに白金の微細粒子はその色から白金黒(こく)と呼ばれ、表面積が大きくなってい
るので、優秀な触媒としてはたらく。
なお最近では、複数の余った原子価を持つ1個の分子(金属錯体)の触媒としてのはた
らきも注目されている。
[4]実験6(b)「ゼオライト」では、カット綿に浸ませたエタノールとモレキュラー
シーブ4A(ゼオライトの一種)を加熱して、発生する気体を水上置換で試験管に捕集し
た。このとき次の脱離反応が起こり、エチレンが発生する。
CH3CH2OH ―→ CH2=CH2 + H2O (14)
エタノール エチレン
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ちなみにこの脱離反応は、エタノールに濃硫酸を加えて160℃以上に加熱しても起こる。
つまりこの反応では酸が触媒としてはたらく。
参考:講座プラン「有機化合物の世界」では、五酸化二リンにエタノールを加えてエチレ
ンを発生させた。五酸化二リンは酸性酸化物である。
実験では、発生した気体に薄い過マンガン酸カリウム水溶液を加えて振り混ぜると、赤
紫色が消え、褐色の沈殿が生成した。これは不飽和結合を検出したのである。また気体に
点火すると、すすを出さずに燃え、アセチレンではないことを示す。
ゼオライトは沸石と呼ばれる鉱物で、近年その触媒としてのはたらきが注目されている。
分子の大きさほどの小さい空洞があり、ここに水が含まれていて、加熱するとそれが吹き
出すのが名前の由来である。種類によっ空洞の口径が異なり、人工的に合成されたものも
ある。その口径によって中に入ることができる分子の大きさに制限が生まれ、「モレキュ
ラーシーブ=分子のふるい」の別名がある。水を追い出した空洞の中の「酸点」と呼ばれ
る部分が触媒としてはたらく。硫酸のような液体の酸に比べて、固体の酸は反応物質や生
成物質との分離が容易で、くり返して使用しやすいという利点がある。
[5]多くの化学反応はその速度が小さく、触媒なくしては利用できない。化学工業の発
展は、触媒の開発と切り離せない。歴史的には、肥料や火薬の原料であるアンモニアを水
素と窒素から合成するための、酸化カリウムを含む四酸化三鉄が有名である。 環境問題
でも触媒は重要である。オゾン層の破壊は、冷媒でかつてスプレー缶の噴霧剤としても使
われたフロン類(クロロフルオロカーボン)が、成層圏に達して紫外線を受けて生成する
塩素原子が触媒としてはたらくことが原因であると判明し、対策の方向が明確になった。
自動車の排気ガスは、窒素酸化物・一酸化炭素・炭化水素の3つの汚染物質を除去する必
要があるが、いわゆる三元触媒(白金、パラジウム、ロジウム)が実用化されている。
生命活動は数1000の化学反応によって構成されているが、ほぼすべてが「酵素」と
呼ばれる触媒によって制御されている。そして人類の課題である資源・エネルギー問題に
おいても、触媒の開発が鍵を握るであろう。
参考文献
・田村著「物理化学」(至文堂)
・大岩著「反応速度計算法」(朝倉書店)
・慶伊著「反応速度論」(東京化学同人)
・「化学便覧 基礎編」(丸善)
・植村・上松著「触媒のおはなし」(日本規格協会)
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林 正幸と主万子の始めの
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