08.9
林 正幸
気体状態
実験・実習
実験目次
実験1 気体の圧力と体積の関係
実験2 気体の圧力と温度の関係
実験3 気体の圧力と質量の関係
実験4 異なる種類の気体の比例定数
実験5 ミニ熱気球の製作
実験6 アンモニアと塩化水素の拡散
演示実験1 水素が水を吸い上げる?
演示実験2 気体の音速
発展実験1 シャルルの法則
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実験1 気体の圧力と体積の関係
温度と気体の量を一定にして、気体の圧力と体積の関係を計測する。
(1)「デジタル圧力計」は、0〜200kPaに調節されている。
参考:大気の圧力はすこし変動するが、実験では100kPaとする。
注意:圧力計のつまみやスイッチには触れない(以下同じ)。
(2)注射器を圧力センサーのチューブにしっかりと差し込み、ビニールテープをすこし
めくり穴が開いた状態で空気を40mL入れ、穴を塞ぐ。
(3)この時点での圧力はもちろん100kPaである(圧力計がそのように調整してあ
る)。テープの上から穴を押さえ、ピストンを押して空気の体積を30mL、20mLに
し、そのときの圧力を計測する。
参考:気体は圧縮したり膨張させたりすると温度が上がり下がりするので、10sほど待
って計測する。ちなみに手のひらで注射器を温めないように注意しよう。
注意:圧力センサーは、レンジを大きく外れる圧力を掛けると破壊される(以下同じ)。
(4)穴を開け、空気を20mLにして穴を塞ぐ。
(5)ピストンを引いて空気の体積を30mL、40mL、50mLにし、そのときの圧
力を計測する。
(6)(3)のデータと(5)のデータには、どんな関係があるか考えてみる。
<記録>
(3)のデータ
体積[mL] 圧力[kPa]
40 100
30
20
(5)のデータ
体積[mL] 圧力[kPa]
20 100
30
- 1 -
40
50
<準備>
・デジタル圧力計
私のホームページの「電源・デジタル表示装置の製作」を参照
http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/masa/ne69.htm
この実験では±1kgf/cm2(ゲージ圧)のセンサー(フジクラ製)に、2cmの耐
寒透明チューブ(内径3mm)をはめ、スズめっき線(φ0.5mm)で締めて(めっき
線がチューブ表面に揃うくらいに)使う。
・注射器
50mL注射器の針穴の横に小さい穴を開け、1cm角のビニールテープで塞ぐ。
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実験2 気体の圧力と温度の関係
体積と気体の量を一定にして、気体の圧力と温度の関係を計測する。
(1)デジタル圧力計は、50.0〜100.0kPaに調節して使用する(0.2刻み)。
(2)500mLビーカーに、おもりを付け空気が抜けるように軽くゴムせんをした
250mL試薬びんを入れ、水をあと数mmまで注ぎ、温度計を差し入れてバーナーで加
熱する。
参考:ゴムせんは水蒸気がびんの中に入らないためである。
(3)水の温度が90℃を越えたらバーナーを消し、ビーカーを机上に下ろし、圧力セン
サーの付いた「ゴムせん」を、できる範囲で強く締める。
注意:ゴムせんはシールテープの向きから、右に回して締める(外すときも同じ)。
試薬びんの口に水を付けない。
(4)続いて試薬びんを取り出し、雑巾で押さえて「ゴムせん」をさらに強く締め、湯に
もどす。
注意:ゴムせんをしっかり締めないと、空気が中に漏れて正確なデータが得られない。
(5)85℃から35℃まで10℃刻みで、圧力を計測する。
試薬びんをしばしば上下して温度が均一になるようにする。85℃が終わったら、5
mLピペットで湯を捨て水を加えて温度を下げる(2つの300mLビーカーを利用す
る)。ただし計測温度の2℃手前からは、自然冷却して(びんの上げ下げも)温度が均一
になるようにする。なお下げ過ぎたときは、それから2℃下の温度(記録する)で計測す
ればよい。
(6)最後に1Lビーカーに入った氷水にびんの肩上まで浸けてしばらく置き、温度と圧
力を計測する。
- 2 -
(7)得られたデータをグラフに描き、かつその直線を延長して圧力が0になる温度を求
める。
<記録>
温度[℃] 圧力[kPa]
85( )
75( )
65( )
55( )
45( )
35( )
氷水( )
<準備>
・「チューブ付きゴムせん」
5号ゴムせんに7cmの耐寒透明チューブ(外径6mm)を通し(ドリルはφ7mm)、
ガラス用接着剤(スコット3M)で気密にしたもの。
シールテープ30cmをゴムせんの下半分に、右に回して締まるように巻いておく。
・圧力センサーは±0.5kgf/cm2 を使う。7cmの「チューブ」の内体積0.5mL
を考慮して調整しておく。
・おもり
シャックル(12MM 190g)
・250mL試薬びん
首にシャックルがはまる小さ目のもの。口に少しワセリンを塗る。
・グラフ用紙
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実験3 気体の圧力と質量の関係
体積と温度を一定にして、気体の圧力と質量の関係を計測する。
(1)デジタル圧力計は、実験1と同じ0〜200kPaに調節して使う。
圧力センサーを「簡易ボンベ」に付ける。
(2)「注入ポンプ」で空気を200kPa付近になるまで簡易ボンベに注入し、正確な
圧力を読みとる。空気の出入りは頭のボタンを押したときのみ可能になるので、2人で協
力して取り組む(以下同じ)。
参考:圧縮による温度上昇があるので、1分ほど待って目盛りを読む。
(3)センサーのコネクターを圧力計から外し、簡易ボンベに巻き付けて輪ゴムで留め、
全体の質量を計測する。
- 3 -
注意:ボンベは指先で触れ、温度が上がらないようにする。
参考:実際に計測しているのはボンベの質量ではなく、それからボンベの浮力に対応する
質量を差し引いた数値である。しかし実験を通して浮力は一定であるので「ボンベ
の質量」という表現を使うことにする。
(4)コネクターをつないで、ゆっくりと160kPaになるまで空気を抜く。そして再
び外して質量を計測する。なお160kPaを過ぎた場合は、その圧力(記録する)の下
で計測すればよい(以下同じ)。
参考:「ゆっくり」とは、膨張による温度低下を防ぐためである。
(5)同じことを、120,100,80,40kPaに対して行う。なお後の2つは
「吸引ポンプ」で空気を抜き取る必要がある。
(6)得られたデータをグラフに描け。またその直線を延長して圧力が0になる質量を求
め、それから各圧力の下で「簡易ボンベ」に入っていた空気の質量を計算せよ。
<記録>
ボンベ全体の質量[g] 圧力[kPa] 空気の質量[g](計算値)
充填時( )
160( )
120( )
100( )
80( )
40( )
<準備>
・「簡易ボンベ」
市販の簡易ボンベ(約580mL 空になったもの)の側面下方に直径7mmの穴を開
け、10cmの耐寒透明チューブを2cmほど差し入れ、瞬間接着剤(DCM Japan
製)で固定する(チューブは銅線を巻き、それをボンベに固定する)。ノズルキャップに
は7cmの耐寒透明チューブを付ける。そして輪ゴムをセロテープで貼り付ける。
・「注入ポンプ」
50mL注射器の針穴の横に小さい穴を開け、内側から数mm角のビニールテープを被
せたもの。
・「吸引ポンプ」
実験3,4で使った注射器そのもの(ビニールテープを数mm角に換える)。
・グラフ用紙
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実験4 異なる種類の気体の比例定数
- 4 -
大気の圧力(100kPaとする)の下で室温において、同体積を占める3種の気体の
質量を計測する。
(1)室温を確認する。
室温 ( )℃ =( )K
(2)「注射器」のピストンをビスで固定したときの体積を読み取る。
注意:ビスの穴に遊びがあるので、ピストンを押した状態で測る。
体積 ( )mL =( )L
(3)「注射器」の針穴にゴムせんをしっかり締め、リングをスタンドの「はさみ」にひ
っかけシリンダーを(赤線が目盛りの側に向くように)引いて内部を真空にし、ビスを差
し込んで固定し、化学天びんで全体の質量を測る。
真空の場合 ( )g
参考:実験3(3)の「参考」と同じように、「注射器の質量」という表現を使うことに
する。
(4)注射器を元に戻し、簡易ボンベの酸素を注射器に詰め、ビスを差し込み、ピストン
を押してゴムせんを締め、全体の質量を測る。
酸素の場合 ( )g
(5)同様に二酸化炭素を詰めて、全体の質量を測る。
二酸化炭素の場合 ( )g
(6)最後に空気を入れて、全体の質量を測る。
空気の場合 ( )g
(7)酸素、二酸化炭素、空気の質量を求め、分子量(空気は平均分子量)を使って、物
質量を計算せよ。
参考:物質量の計算は、本文3節[2]の関係式(4)を利用する。
n = w/M
酸素 ( )g =( )mol(分子量:32.0)
二酸化炭素 ( )g =( )mol(分子量:44.0)
空気 ( )g =( )mol(平均分子量:28.9)
(8)それぞれの気体について、本文4節[1]の関係式(6)の比例定数の値を計算す
る。
k = PV/nT
酸素 k =( )[kPa・L/mol・K]
二酸化炭素 k =( )
空気 k =( )
<準備>
- 5 -
・「注射器」
50mL注射器に、50mmのビス(φ3)を使って約50mLで固定できるようにシ
リンダーとピストンを貫通する穴を開け、またカードリング(φ40mm)を通せるよう
にピストンの後部に穴を開ける。そして針穴を塞ぐための2号ゴムせんに途中まで穴を開
ける。ドリルはすべて4mmを使う。リングを通してから、その継ぎ目にセロテープを巻
く。
・化学天びん
注射器を計量するための風よけ円筒を工作用紙でつくる。
・簡易ボンベ
耐寒透明チューブを付けておく。
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実験5 ミニ熱気球の製作
(1)薄手のごみ袋(88×80cm)の口の外側にピアノ線(180cm)を、約20
cmおきにビニールテープ(2cm)を貼って固定する(ピアノ線の自然なわん曲でごみ
袋の口が円く広がるようにする)。
(2)アルミ箔を2重にし、100mLビーカーに押しつけて円筒にする。外して余分な
ところをはさみで切り取り、内に10mmほど折り返して高さが25mm、直径が50
mmの燃焼皿にする。
(3)これに千枚通しで端から5mmのところに穴をあけて30cmのエナメル線4本を
結び付け、これをごみ袋の口にビニールテープで貼り付ける(エナメル線はしごいたりし
て皿が傾かずかつバランスがとれるようにする)。
(4)同様に50cmのエナメル線4本を貼り付け、他端をまとめてたこ糸(1m)を結
び付ける。
(5)ひとりがごみ袋の底を水平に持ち、もうひとりが燃焼皿に丸めたティッシュを入れ
エタノール8mLをこぼさないように入れる。
(6)続いてマッチで点火する。しばらくして上昇し始めたらそっと放し、気球が傾いて
ごみ袋が熱で縮んだりしないように糸を持って制御する。鉛筆などをつり下げてみる。
注意(a)気球が流されるので窓は開けない。
(b)気球を火災報知器に近づけない(念のため、プラスチックのボウルとガムテー
プで覆っておく)。
(c)皿が不安定だったり乱暴に扱ったりすると、燃えているアルコールが下にこぼ
れることがある。決して燃焼皿の真下に体を置かない。
(d)もし炎上しても無理に消そうとしないで、放置して燃え終わるまで待つ。燃え
ている融解したプラスチックはひどいやけどをする危険がある。
(e)燃料は一度にたくさん使っても気球が重くなるだけである。なお「空中給油」
- 6 -
はピペットの方に引火して事故のもとになる。

備考:準備などくわしくはホームページの実験「ミニ熱気球をつくろう」を参考にする。
http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/masa/e7-1.htm
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実験6 アンモニアと塩化水素の拡散
(1)ゴムせんに固定した脱脂綿に濃アンモニア水5滴を浸み込ませて、スクリューびん
に締める。同様にもうひとつには濃塩酸を浸み込ます。
(2)ゴムせんを外し、すぐに2つ同時にアクリル管に締め直す。
注意:どちらがアンモニア水、塩酸か、確認する。
(3)2,3分して白煙が生成し始める位置とその様子を観察する。
(4)ゴムせんを外したら、脱脂綿はすぐに水で洗う。
<記録>
<準備>
・アクリル管
内径18mm 50cm
板に固定して転がらないようにする。
・脱脂綿
カット綿を1cm四角に切り、銅線で固定して4号ゴムせんに差し込む。
濃アンモニア水と濃塩酸は、互いに離れた場所で浸み込ます。
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演示実験1 水素が水を吸い上げる?
(1)「素焼き容器」と、その口にはまるゴムせん(短いガラス管を通し、透明のチュー
ブ(4mの長さ)を取り付けたもの)を準備する。
(2)チューブのもう一方の端を、水(アンモニア水少量とフェノールフタレイン数滴で
- 7 -
着色しておく)の入った0.5Lビーカーの水につけ、チューブの中央を2mくらいの高
さに持ち上げておく。
(3)素焼き容器内に水素ガスを吹き込み、すかさずゴムせんをする。
備考:この実験は杉山 正明さんに教わった。
<記録>
<準備>
・素焼き容器
・チューブ
内径6mm、4m
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演示実験2 気体の音速
(1)装置は左図のように、1mのアクリルパイプに、音を拾うセンサーとしてコンデン
サーマイクが2つセットされており、後のストップ用は距離が変えられる。マイクはアダ
プターを経て音速測定用の回路が差し込まれたデジタルストップウオッチにつながれてい
る。ストップウオッチは0.01msまで計測できる。

(2)室温を測る。
(3)パイプには右図(上方置換の場合)のように次の気体を詰め、ラップを張って横に
する。
@空気(これは詰める必要がない)
- 8 -
A二酸化炭素
B水素
(4)センサーの間隔を確認し、ラップの1m以上先で拍子木を打って鋭い音を送って計
測する。
備考:準備などくわしくはホームページの実験「種類と温度を変えた気体の音速」を参考
にする。
http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/masa/ne30.htm
<記録>
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発展実験1 シャルルの法則
(1)バットに入った「計測装置」一式を水平のまま静かに持っていき、ガラス管、封入
用水銀、定規、温度計を確認し、200mLビーカーとかき混ぜ板を外に出し、ゴム管の
他端は水が入らないようにバットの外に出す。
注意:「装置」を乱暴に扱うと水銀が分裂したりする。

(2)操作手順を確認したら、沸とうしている湯を2cmの深さ(ビニールテープの端)
まで注ぎ、絶えず水をかき混ぜて温度を一様にしながら、温度とそのときの定規上での水
銀の位置を計測する。温度が下がりにくくなったら、ビーカーで湯と水道水を入れ替えて
能率が上がるようにする。
注意:水銀の位置は気柱側である内側の端をミリメートルまで読み取る。気柱の長さはそ
の数値に5.0cmを加えたものになる(定規がそれだけずらしてある)。
90℃まで上がらないときは、最高温度とそのときの水銀の位置をデータとする。
10℃刻みで計測するが、温度が通過してしまった場合は近いところで温度とその
- 9 -
ときの水銀の位置を記録すればよい。
30℃ないし20℃まで計測する。
(3)計測が終わった装置は水の入ったまま教卓に返す。
(4)横軸を温度に、たて軸を気柱の長さにしてグラフを描き、体積と温度の関係を吟味
する。またグラフを延長して気柱の長さがゼロになる温度を求める。
備考:準備などくわしくはホームページの実験「この世の最低温度を調べる」を参考にす
る。
http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/masa/e7-3.htm
- 10 -
知識と理論
目 次
1.圧力と体積
2.圧力と温度
3.圧力と物質量
4.圧力と気体の種類
5.状態方程式の利用(その1)
6.状態方程式の利用(その2)
7.分子の平均飛行速度
8.実在の気体
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講座プラン「物質の状態」では次のことを学習した。
@気体では分子は広い空間にばらばらと存在し、分子と分子の間は真空である。そして分
子は自由に乱雑に飛行し、しばしば衝突している。
A温度が高くなると、分子の平均飛行速度が大きくなる。
B気体の圧力は、熱運動(飛行)する無数の分子が壁に衝突して跳ね返るときの衝撃力に
よって生じる。
C圧力の標準単位はパスカル[Pa}である。
1[Pa]= 1[N/m2 ]
大気の平均圧力は101.3kPaであるが、講座では100kPaとすることが多い。
1.圧力と体積
気体の圧力はどのような要因によって変化するだろうか。まず体積からくわしく見てい
こう。
[1]実験1では、50mL注射器に室温で100kPaの空気40mLを入れ、圧力セ
ンサーにつなぎ、ピストンを動かして空気の体積を変え、その圧力を計測した。この実験
では、気体の温度と量を一定に保っていることに注意しよう。次に計測例を示す。
体積[mL] 圧力[kPa] 圧力×体積[kPa・mL]
40 100 4000
30 134 4020
20 199 3980
どの体積でも、圧力×体積の値はほぼ一定である。
次に50mL注射器に空気20mLを入れ、ピストンを動かして空気の体積を変え、そ
の圧力を計測した。次に計測例を示す。
体積[mL] 圧力[kPa] 圧力×体積[atm・mL]
20 100 2000
30 65 1950
40 48 1920
50 38 1900
こちらもどの体積でも、圧力×体積の値はほぼ一定である。
[2]これは圧力が体積に反比例することを示す。実験では空気を使ったが、一般に
「温度と量が一定の気体では、その圧力 P は体積 V に反比例する」
と言える。つまり次の関係式が成り立つ。
PV = k1 (1)
- 11 -
または
P = k1/V (2)
k1:比例定数
この圧力と体積を入れ替えると、ボイルの法則
「温度と量が一定の気体では、その体積 V は圧力 P に反比例する」
になる。
[3]これを図のように注射器に閉じ込められた気体分子の振るまいとして考えてみよう。
圧力は、単位面積あたり単位時間あたりに衝突する分子の個数が多いほど、それに正比例
して大きくなる。

ピストンを押して円筒の空間の長さを半分にして体積を1/2にしてみる。aのように左
右に飛行している分子は、壁と壁の距離が半分になるので、単位時間あたりに衝突する回
数が2倍になり、2倍の圧力を及ぼす。bやcのように上下、左右などに飛行している分
子は衝突する壁の面積が半分になるので、単位面積あたりに衝突する回数が2倍になり、
2倍の圧力を及ぼす。斜めに飛行している分子までは踏み込まないが、このように体積を
1/2にすると圧力が2倍になり、実験から得られた法則が理論的にも納得できる。
[例題1]0.6Lの簡易ボンベの中の水素が20℃で1000kPaの圧力を示してい
る。この水素を大気の圧力(100kPa)の下でポリ袋に放出すると何L取り出せるか。
ただし体積は温度が20℃の下で計測する。
(解答)
温度と全体の気体の量は一定であるので、関係式(1)が成り立つ。後の状態における
全体の体積をV2[L]とし、前後の状態で方程式をつくると
1000×0.6 = 100V2
したがって
V2 = 6[L]
ボンベに残る分を差し引いて、取り出せる水素は 5.4L である。
目次へ
2.圧力と温度
[1]実験2では、熱湯に浸けた250mL空きびんに圧力センサーを付け、それが冷め
るに連れて、圧力とせっ氏温度の関係を計測した。最後はびんを氷水に浸けて計測した。
この実験では、気体の体積と量を一定に保っていることに注意しよう。
- 12 -
次に計測例を示す。
温度[℃] 圧力[kPa]
85° 98.0
75 95.2
65 92.6
55 89.8
45 87.2
35 84.8
4 75.6
これをグラフに描くと、図のように圧力とせっ氏温度の関係は直線になることが分かる。

この直線を延長して圧力がゼロになる温度を求めると、−273℃になる。幸いこの数値
は正確で、文献値と一致している。
備考:実際にはこの温度は、データから最小自乗法で直線の式を求め、
P = 0.2740t+74.8
それから計算した。
[2]圧力がゼロより小さいことは考えにくいので、−273℃はこの世の最低温度とい
うことになる。それならこの温度をゼロとする、そして目盛りの幅はせっ氏温度 t と同
じとする温度を、絶対温度 T として導入しよう。
T = t+273
絶対温度の単位はケルビン[K]である。0[℃]は273[K]に、100[℃]は
373[K]になる。
- 13 -
備考:上の表現は、現在の厳密な絶対温度の定義からわずかにずれている。ちなみにより
正確な最低温度は −273.15 ℃である。
絶対温度を使えば実験は、空気の圧力が絶対温度に正比例することを示す。一般に
「体積と量が一定の気体では、その圧力 P は絶対温度 T に正比例する」
と言える。つまり次の関係式が成り立つ。
P = k2T (3)
k2:比例定数
[3]これも容器の中を飛行する気体分子のモデルで考えてみよう。温度が高くなると、
分子の平均飛行速度が大きくなる。とすれば、1回の衝突で壁に与える衝撃力は大きくな
り、かつ短い時間で再び壁に衝突する。したがって温度が高くなると圧力が大きくなるは
ずである。残念ながら、絶対温度に正比例することまでは引き出せない。このことについ
ては7節[b]でさらに深めたい。
[例題2]例題1の水素ボンベの温度が100℃になったら、その圧力は何kPaになる
か(答は有効数字3桁で)。
(解答)
関係式(3)は次のように変形できる。
P/T = k2
つまり体積と量が一定の気体では、圧力と絶対温度の商は一定である。前の状態における
絶対温度は 20+273=293[K]、後の状態では373Kである。そして後の状
態における圧力を P2 とし、前後の状態で方程式をつくると
1000/293 = P2 /373
したがって
P2 = 1273.・・・
後の状態における圧力は 1270kPa になる。
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3.圧力と物質量
[1]これまで気体の「量」とあいまいに扱ってきたが、ここで気体の量についてはっき
りとさせておこう。まず実験3では、量とは気体の質量のことである。そして分子量が分
かれば、それは物質量に換算できる。
実験3では、「簡易ボンベ」に空気を注入し、その空気を放出しながら、圧力とボンベ
の質量の関係を計測した。100kPaより小さい領域では、空気を抜き取って計測した。
この実験では、気体の体積と温度を一定に保っていることに注意しよう。
次に計測例を示す。
ボンベの質量[g] 圧力[kPa] 空気の質量[g](計算値)
147.599 202 1.428
- 14 -
147.306 160 1.135
147.010 120 0.839
146.878 100 0.707
146.739 80 0.568
146.455 40 0.284
(浮力の問題については、実験3(3)の「参考」に注意せよ。)
これをグラフに描くと、次のように圧力とボンベの質量の関係は直線になることが分かる。

この直線を延長して圧力がゼロになる質量を求めると、146.171gになる。これ
は空気が入っていない真空のボンベの質量である。これからそれぞれの場合の空気の質量
を計算できる。たとえば100kPaの場合の質量は
146.878−146.171 = 0.707[g]
である。これは上の計測例の右欄に示す。
改めて空気の圧力と空気の質量の関係をグラフに描けば、両者が正比例していることが
確認できる。
[2]実験は、空気の圧力が質量に正比例することを示す。
さてある物質の分子量を M (そのモル質量をM[g/mol])とすると、物質量
n[mol]と質量 w[g]の関係は次のようである。
n = w/M = (1/M)w (4)
たとえば空気の平均分子量は28.9であるので、上の0.707gは
0.707/28.9 = 0.0245[mol]
- 15 -
である。このように物質量は質量と正比例する。したがって物質量という用語を使えば実
験は、空気の圧力は物質量に正比例することを示す。一般に
「体積と温度が一定の気体では、その圧力 P は物質量 n に正比例する」
と言える。つまり次の関係式が成り立つ。
P = k3n (5)
k3:比例定数
ここでさらに確認しておこう。気体の物質量が等しいとは、分子数が等しいことである。
したがって「圧力は分子数に正比例する」と言える。
参考:1[mol]= 6.02×1023[個]
[3]これもモデルで考えてみよう。容器内の分子数を2倍する。それなら圧力が2倍に
なるのは当然である。
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4.圧力と気体の種類
[1]ここまでの空気を使った実験を整理すると、気体の圧力 P は、体積 V に反比例
し、絶対温度 T に正比例し、物質量 n に正比例することが分かった。つまり関係式
(2)(3)(5)をまとめて
P = k(nT/V) (6)
k:比例定数
と書ける。
備考:このようにまとめられるのは、状態量ないし保存量と呼ばれる量に限られる。
それならこの比例定数は気体の種類によってどのようになるだろうか。
[2]実験4では、約50mLでピストンを固定できる注射器を使って、中を真空にした
場合、酸素を詰めた場合、二酸化炭素を詰めた場合、空気を詰めた場合の質量を計測した。
またピストンを固定したときの正確な体積を読み取り、室温を計測した(大気の圧力は
100kPaとした)。つまり同温・同圧の下で、同体積を占める3種の気体の質量を求
めた。質量は物質量に換算した。
次に計測例を示す。
体積 0.0495L 室温 283K (圧力 100kPa)
気体の種類 質量[g] 物質量[mol]
酸素 0.064 0.00200
二酸化炭素 0.087 0.00198
空気 0.057 0.00197
(浮力の問題については、実験3(3)の「参考」に注意せよ。)
関係式(6)を変形して
k=PV/nT
- 16 -
このデータから3種の気体について比例定数 k を求めると
酸素 100[kPa]×0.0495[L]/(0.00200[mol]×283[K])
= 8.75[kPa・L/mol・K]
二酸化炭素 8.83
空気 8.88
となる。
つまり実験は、空気のような混合気体を含めて、気体の種類によらず比例定数は一定であ
ることを示す。ふり返ると、これは3種の気体の物質量がほぼ同じであることに現れてい
た。
[3]この比例定数は気体定数と呼ばれ R で表される。正確な数値は次のようである。
R = 8.31[kPa・L/mol・K]
そして関係式(6)は次のように整理され
PV = nRT (7)
気体の状態方程式と呼ばれる。
どんな種類の気体がどのような状態にあろうとも、その圧力、体積、物質量、絶対温度
の数値の間には常にこの関係式が成り立つ。したがって4つの量のうち3つを計測すれば、
残りの1つは計算で求めることができる。言い換えると、4つの量とも任意の数値をとる
ことはできない。気体の状態は3つの量によって決まってしまうのである。
参考:気体の物質量を「1molあたり」などと指定すれば、その状態は2つの量によっ
て決まってしまう。
ひとつ注意する。気体定数は使う単位が変われば数値も変わる可能性がある。状態方程
式で計算する場合は、比例定数の単位にそろえて数値を代入しよう。
目次へ
5.状態方程式の利用(その1)
[a]アボガドロの法則
[1]すでに学習した「アボガドロの法則」は次のようであった。
「同温・同圧の下で、同体積の気体はどれも同数の分子を含む。」
この法則は状態方程式から簡単に導くことができる。次のように変形すると
n = PV/RT (8)
「同温・同圧の下で、同体積の気体」という条件から右辺が一定であるので、物質量が同
じであると言える。とすれば、分子数も同じである。
参考:1molには、6.02×1023 個の分子が含まれる。この数値はアボガドロ定数
と呼ばれる。
同温・同圧の下で、同体積の気体に含まれる分子数が同じであれば、同体積の2種
の気体の質量比は分子の比に等しくなる。たとえば二酸化炭素と空気ではその比は
- 17 -
44/28.9 = 1.522・・
であり、二酸化炭素の密度は空気の1.52倍であると計算できる。
また関係式(8)は気体の物質量が、関係式(4)を使って質量と分子量から求められ
るだけでなく、圧力、体積、絶対温度からも求められることを示す。
[2]アボガドロの法則は次のようにも言える。
「同温・同圧の下で、同数の分子が占める気体の体積はどれも同じである。」
そこで0℃、101.3kPa(正確な大気の平均圧力)の下における1molの気体の
体積を状態方程式を使って計算してみよう(0℃、101.3kPaは「標準状態」と呼
ばれる)。次のように変形して
V = nRT/P (9)
1×8.31×273/101.3 = 22.4[L]
これはよく知られている数値である。
[3]上のことは同温・同圧の下で、同じ物質量の気体の体積はどれも同じであるとも表
現できる。これから2つのことが引き出される。
ひとつは、物質量の関係が体積の関係に置き換えられる。講座プラン「モル単位(物質
量)の世界」の5節の演習問題[4]では、酸素からオゾンが生成する次の反応式を扱った。
3O2 ―→ 2O2
酸素3molが反応してオゾン2molが生成する。とすればその温度・圧力の下で、あ
る物質量の体積を V[L]として、酸素3V[L]が反応してオゾン2V[V]が生成す
る、と考えた。
もうひとつは、気体では体積が加算できる。具体的に考えてみよう。ある温度・圧力の
下で、2Lの水素と1Lの酸素を混合する。その温度・圧力の下で気体1Lの物質量がn
[mol]とすると、水素2n[mol]と酸素n[mol]を混合することになる。物
質量は分子数を基に定義された量であるから加算できるので、混合気体の物質量は3n
[mol]である。であればその体積は3Lであり
2+1 =3
と加算できる。
参考:一般に固体や液体では質量は加算できるが、体積は加算できない。
これは混合気体を体積で分けて捉えられることを意味する。ある温度・圧力の下で、水
素と酸素の混合気体が3Lある。その物質量が2n[mol]とn[mol]であるなら、
あるいは物質量比が2:1であるなら、その温度・圧力の下で水素2Lと酸素1Lがある
と捉えられる。
上の演習問題[4]では、空気1000mLをその温度・圧力の下で、窒素 a[mL]、
オゾンに変化する酸素 b[mL]、変化しない酸素 c[mL]に分けて捉える。そして
- 18 -
b[mL]の酸素から(2/3)b[mL]のオゾンが生成し、そのとき(1/3)b[mL]
の体積減少がある。したがって実際の体積減少が30mLなら、オゾンはその温度・圧力
の下で60mL生成している(aやcは気にしない)、と考えた。
下の[f]では、混合気体を圧力で分けても捉えることを学習する。
[b]シャルルの法則
[1]フランスのシャルルは、圧力と量が一定の気体について、体積と温度の関係を研究
し、シャルルの法則を発見した(法則の形にしたのはゲー・リュサック)。それは現代の
言葉に直すと
「圧力と物質量が一定の気体では、その体積は絶対温度に正比例する」
である。
参考:絶対温度が無かった当時のシャルルの法則は「圧力と量が一定の気体では、その体
積は温度が1℃上がるごとに、0℃における体積の1/273ずつ増加する」と表
現された。
この法則も気体の状態方程式から導くことができる。次のように変形すると
V/T = nR/P (10)
「体積と量が一定の気体」という条件から右辺が一定であるので、それを比例定数 k4 と
すると次のように書ける。
V = k4T (11)
この関係式はまさに法則を表している。
[例題3]室温が15℃のときに、一方を封じた細いガラス管の途中に少量の水銀を注入
して288mmの空気の柱(気柱)をつくった(発展実験1の図を参照)。室温が20℃
および30℃になるときの、気柱の長さを求めよ。
(解答)
この場合は空気の圧力と物質量が一定であるので、関係式(11)から V/T が一定
になる。
気柱の断面積を S mm2 とすると、15℃における空気の体積は 288S
[mm3 ]である。20℃における長さを h[mm]とするとその体積はhS[mm3 ]
であるので、2つの状態で方程式をつくると
288S/288 = hS/293
したがって
h = 293[mm]
同様に、30℃における長さを h'[mm]とすると
288S/288 = hS/303
h' = 303[mm]
- 19 -
参考:単位をそろえれば、体積の単位は[mm3 ]でもよいことに注意せよ。
つまりこの空気の柱は一種の温度計であり、そのmm単位の長さは絶対温度ないし、
273を引けばせっ氏温度を示す。
[2]2つ以上の状態が問題になる場合は、状態方程式の中の一定の部分を右辺にまとめ
ると考えやすい。また単位をそろえて計算するように注意しよう。
[c]分子量の測定
[1]状態方程式に関係式(4)を代入して整理すると次のようになる。
M = wRT/PV (12)
ある気体の質量、温度、圧力、体積を計測すれば、この関係式を使ってその気体の分子量
が求められる。分子量はその気体に固有の数値であるので、これを測定するのはその気体
の正体を明かしていくことにつながる。
[2]実験4では、視点を変えると分子量の測定をしている。計測例のデータを単位に注
意して関係式(12)に代入してみよう。
酸素 0.064×8.31×283/(100×0.0495)
= 30.4
二酸化炭素 41.3
空気 27.1
参考:この数値はすべて数%小さめである。同じ理由から4節[2]の気体定数はすべて
大きめである。この理由は真空にした注射器のシリンダーが外から圧縮されていく
らか体積が小さくなっているためと思われる。
[d]密度の計算
[例題4]圧力が101.3kPaの下で、0℃および15℃における水素の密度
[g/L]を計算せよ。また0℃および15℃の空気の密度を計算せよ。水素の分子量は
2.016、空気の平均分子量は28.9である。
(解答)
関係式(12)を次のように変形すると
w/V = PM/RT
左辺は密度[g/L]になる。
したがって水素では
0℃ 101.3×2.016/(8.31×273) = 0.0900[g/L]
15℃ 101.3×2.016/(8.31×288) = 0.0853
空気では
0℃ 101.3×28.9/(8.31×273) = 1.29[g/L]
- 20 -
15℃ 101.3×28.9/(8.31×288) = 1.22
である。
参考:7節で学習するように実在の気体では、低温であったり高圧であったりすると状態
方程式(7)や(12)から外れてくる。
[e]ボイル・シャルルの法則
[例題5]高層の気象を観測するレーウィンゾンデは水素を詰めた気球で上空に運ばれる。
ゾンデが気温−45℃、大気の圧力19hPaのデータを最後に発信を止めた場合では、
気球は破裂直前に地表における体積の何倍まで膨らんだはずか。地表の気温は22℃、大
気の圧力は1010hPaであった。
(解答)
状態方程式の中の一定の部分は水素の物質量であるので、次のように変形する。
PV/T = nR(一定)
22℃は295K、−45℃は228Kである。地表における体積を V[L]、破裂直前
の体積を nV[L]として、2つの状態で方程式をつくると
1010×V/295 = 19×nV/228
したがって
n = 41.0・・
つまり気球は41倍まで膨らんだ。
[f]分圧の法則に関連して
[1]気体が水などに溶解する現象に対して、気体の溶解度が小さい場合はヘンリーの法
則が成り立つ。
「一定温度の下で、一定量の液体に溶解する気体の物質量(あるいは質量)は
その気体の圧力に正比例する。」
そして気体の溶解度はいくつかの表し方があるが、ここでは比較的分かりやすい、その
温度の下で圧力が101.3kPaの気体が「液体1Lあたり、何gまで溶解するか」を
取り上げよう。20℃の下で液体が水の場合は次のようである。
水素 0.00163[g/L]
酸素 0.0443
窒素 0.0190
二酸化炭素 1.73
[2]それでは20℃では、1Lの水に空気は何gまで溶けるだろうか。空気の圧力は
100kPa(大気の平均圧力も100kPa)とし、空気は窒素と酸素から成り、物質
量比が4:1であるとして考える。
- 21 -
分圧の法則から、窒素と酸素の分圧の和は100kPaである。そして関係式(5)に
まとめたように、圧力(分圧)は物質量に正比例する。だから
窒素の分圧 100×(4/5) = 80[kPa]
酸素 100×(4/5) = 20
それぞれの気体の溶解する質量は、ヘンリーの法則にもとづいて
窒素 0.0190×(80/100) = 0.0152[g]
酸素 0.0443×(20/100) = 0.00886
したがって空気は
0.0152+0.0089 = 0.0241[g]
まで溶解する。
[3]上の例では混合気体を圧力で分けて捉えている。成分気体の圧力が問題になるとき
は、このように考える必要がある。そしてこの場合は、体積はどれも同じと考える。たと
えば1Lの空気であれば、窒素の体積も酸素の体積も、どちらも1Lを占めると捉える。
確かに1Lの空気のどの部分にも、窒素分子も酸素分子も存在する。分圧の法則は「ある
成分の振る舞いは他の成分が存在しないかのようである」と述べている。
これに対して[a][4]のように混合気体を体積で分けて捉えるのは、問題に対処す
る「考え方」であると言える。
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6.状態方程式の利用(その2)
[1]実験5では、ミニ熱気球を製作し、燃料のエタノールを燃やして上昇させることが
できた。熱気球の原理も状態方程式を使って解き明かすことができる。
暖かい空気は上昇する。熱気球には暖かい空気が入っているから上昇する。確かにその
通りだが、もうすこしていねいに考えてみよう。
熱気球は重力の他に浮力を受ける。浮力に関してはアルキメデスの原理が成り立つが、
それは空気で言うと
「空気中の物体は、それが押しのけている空気が受ける重力に相当する浮力を受ける」
となる。
参考:空気による浮力は、気体の実験では見逃せないので注意しよう。
熱気球は半径が25cm、高さが70cmの円筒と見積もると
3.14×25×25×70 = 137375[cm3 ]
そして 1L = 1000mL = 1000cm3 であるから
その体積はおよそ140Lである。
空気の質量は、関係式(12)を次のように変形して計算できる。
w = PVM/RT (13)
参考:4節[d]の密度を使って計算してもよい。
- 22 -
熱気球が押しのけている空気は、140Lで平均分子量は28.9であり、大気の圧力は
100kPaとし室温が15℃であるとすると
100×140×28.9/8.31×288 = 169.0・・
その質量は169gとなる。169gの質量が地表で受ける重力だけの、つまり169
gFの浮力を受ける。室温が低いほど浮力は大きくなる。
[2]重力の方を見てみよう。ポリ袋、燃焼皿などの質量は25gであり、25gFの重
力を受ける。問題は熱気球の中の気体が受ける重力である。それなら浮力の場合と同じよ
うに関係式(13)を使って計算できる!と考えるが、燃焼ガスを多く含んだ混合気体の
平均分子量が必要になる。
エタノールが燃焼するときの反応式は次のようである。
C2H5OH + 3O2 ―→ 2CO2 + 3H2O
空気は窒素と酸素から成り、物質量比が4:1であるとして考える。そしてエタノール1
molと酸素3molと窒素12molが、二酸化炭素2molと水蒸気3molと窒素
12molになる場合を考える(通常の熱気球では水蒸気は凝縮しない)。できる混合気
体の平均分子量(1molの質量[g]でもある)は
(2×44+3×18+12×28)/(2+3+12) = 28.11・・
となる。この値は空気の平均分子量にかなり近い。
参考:プロパン(C3H8)について計算をすると、平均分子量はやはり28.1になる。
実際には燃焼に係わる空気の何倍かの空気が巻き込まれて熱気球に入る。それなら熱気
球の中の気体の平均分子量が空気に等しいと見なしてはどうだろうか。実際にはそれより
いくらか小さいはずであることを念頭に置いて・・・。
これで計算の準備ができた。温度が100℃になっているとすると
w = 100×140×28.9/8.31×373 = 130.5・・
熱気球の中の気体の質量は131gであり、131gFの重力を受ける。気体の温度が高
いほど重力は小さくなるが、ポリ袋の耐熱性を考慮する必要がある。
[3]こうして大気の圧力が100kPaの下で、室温が15℃、熱気球の中の気体の温
度が100℃のときは
169−131−25 = 13
そして燃料が5g残っておれば、熱気球は8gFの上昇力を持つことが予測できる。
参考:実際には熱気球は、燃焼によって生じる上昇気流からも上向きの力を受ける。
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7.分子の平均飛行速度
[a]拡散の速さ
[1]実験6では、アクリル管の両端で、脱脂綿に浸み込ませた濃アンモニア水と濃塩酸
からアンモニアと塩化水素を揮発させると、両方の気体が拡散してしばらくして、アンモ
- 23 -
ニア側から遠く塩化水素側から近いところに白煙が生成した。
これはアンモニア分子と塩化水素分子では平均飛行速度が異なり、アンモニアの方が大
きく、したがって拡散の速さも大きいことを示す。
演示実験1では、素焼き容器に水素を詰め、ゴムせんをするとそれにつないだチューブ
内を水が2mほど上昇し、しばらくすると元にもどった。
素焼き容器には小さい穴が無数に開いており、それを通して気体分子は出入りできる。
水素分子の平均飛行速度は際だって大きいので、空気中の窒素分子や酸素分子などが素焼
き容器の中に拡散するよりはるかに多くの水素分子が素焼き容器の外に拡散して、内部の
圧力が大気の圧力より低くなる。こうして水が吸い上げられる。しばらくすると素焼き容
器の中に窒素分子や酸素分子などが十分に拡散して、圧力差は無くなり水は元にもどる。
[b]平均飛行速度
[1]実験2では、体積と物質量が一定の気体では、その圧力は絶対温度に正比例するこ
とを確認した。それなら同じ温度において気体の種類によって平均飛行速度が異なってい
たら、圧力に差が出てこないだろうか。
分子が壁に衝突するときの衝撃力は、平均飛行速度だけでなく、分子の質量にも関係す
る。さらに圧力はその分子が単位時間あたりに何回壁に衝突するかにも関係する。こちら
は分子の平均飛行速度に関係する。力学に基づくより厳密な計算によると、気体の圧力は
飛行する分子の平均運動エネルギーに正比例することが導かれる。
それなら分子の飛行による平均運動エネルギーは絶対温度に正比例することになる。そ
して次の関係式の成り立つことが分かっている。つまり1molの分子の飛行による平均
運動エネルギーは (3/2)RT に等しい。
(1/2)mv2 ×N = (3/2)RT (14)
m:分子1個の質量
v:平均飛行速度
N:アボガドロ定数(1molの個数)
R:気体定数
T:絶対温度
備考:平均飛行速度の「平均」とは、より正確には2乗平均の平方根であるが、深入りし
ないことにする。
[2]この関係式を使うのにふさわしい気体定数は
R = 8.31[kg・(m/s)2 /mol・K]
である(単位は異なるが数値はこの場合は前と同じになる)。つまり質量 m の単位は
[kg]に、速度 v の単位は[m/s]にそろえる必要がある。
mN は分子1molの質量であるが、それを[kg]にする必要がある。他方で分子1
- 24 -
molの質量は、分子量 M に[g]を付けたものである。だから
mN = M/1000
これを関係式(14)に代入して整理すると
v = √(3000RT/M) (15)
となる。
[3]この関係式を使って15℃(288K)における平均飛行速度を計算してみよう。
水素 v = √(3000×8.31×288/2)
= 1895[m/s]
アンモニア 650
窒素 506
酸素 474
空気 498
塩化水素 444
二酸化炭素 404
かなり大きな数値である。ちなみに新幹線の時速280km/hは秒速に直すと78m/s
に過ぎない。
[4]それにしては実験6では、アンモニアや塩化水素の拡散の速さが遅すぎないだろう
か。いやいや、管の中では無数の分子が乱雑に飛行していることを想起しよう。分子は衝
突して絶えずその進行方向を変えている。
それでは、気体分子が衝突の間に平均してどれくらいの距離を飛行するか、考えてみよ
う。講座プラン「モル単位(物質量)の世界」ではモル体積(1molあたり、体積が何
Lか、あるいは体積が何cm3 か)について学習した。固体や液体のモル体積はその密度
から計算できる。気体のモル体積は、それに加えてこの講座では、状態方程式からも計算
でき、同温同圧の下では種類を問わす同体積であることを学習した。
窒素を例にする。液体窒素の密度は0.81g/cm3(−196℃つまり沸点における
数値)である。したがって液体のモル体積は、分子量が28だから
28/0.81 = 34.5・・
35cm3 /molである。固体や液体では分子は接触ないしほぼ接触しているので、モ
ル体積は1molの分子そのものが占める体積に近い数値である。
他方で15℃、100kPaの下での気体のモル体積は関係式(9)を使って
V = 1×8.31×288/100 = 23.9・・
24L/molである。
そこで後者を前者で割り算する。
24[L]/0.035[L]= 685.・・
この690という数値は、気体において窒素分子は自身の体積の690倍の空間を占有し
- 25 -
ていることを意味する。
考えやすいようにこの数値が1000であったとする。すると窒素分子どうしは平均し
て自身の大きさ(長さ)の10倍くらいの距離にあることになる。そうであれば、103
=1000倍の空間を占有することになるからである。
さらに考えを進める。ある窒素分子がこのような空間を突き進むとして、平均して自身
の大きさ(長さ)の何倍くらいの距離で衝突するだろうか。衝突される1個の窒素分子は
平均して自身の大きさ(面積)の102 =100培くらいの面積の中にある。そうであれ
ば、衝突するまでに平均して100倍くらいの距離を飛行することが分かる。
それでは窒素分子の大きさ(長さ)はどれくらいであろうか。それには液体のモル体積
を1molの分子数(アボガドロ定数)で割り、その3乗根を求めればよい。
3√{35/(6×1023 )} = 3√(58.3/1024 ) = 3.9× 10-8 [cm]
体積の単位が[cm3 ]であるので、答の単位は[cm]である。単位を[nm](ナノ
メートルに直すと
1nm = 10-9 m = 10-7 cm
1cm = 107 nm
であるから
3.9×10-8 ×107 = 0.39[nm]
になる。したがって窒素分子が衝突するまでに平均して飛行する距離は、その100倍の
39nm = 0.000039mm
に過ぎない。なおこの数値は、途中で690を1000と置き換えているので、もう少し
小さいことになる。これで拡散の速さが小さいことが納得できる。
指数計算に戸惑う人も多いだろうが、化学に関心のある高校生ならこれくらいの計算力
は身に付けておきたいものである。
[5]分子量によって平均飛行速度が異なり、それによって拡散の速さが違ってくること
は、原子力発電の核燃料を生産する工程において、ウラン235をウラン237から分離
する(「ウランの濃縮」)方法のひとつ、気体拡散法で利用される。
[c]気体の音速
[1]気体中を伝わる音の速さは、その分子の平均飛行速度に関係がありそうである。物
理学が教えるところによると次の関係が成り立つ。
c = √(γ/3)×v
c:音速
γ:定圧比熱と定積比熱の比
v:平均飛行速度
比熱比 γ は、2原子分子や3原子分子では1.3〜1.4とほぼ一定であるので、音速と
- 26 -
平均飛行速度の関係はほぼ次のようになる。
c ≒ (2/3)v
つまり平均飛行速度は、その気体の音速のほぼ 3/2=1.5倍 である。
[2]演示実験2では、パイプに気体を詰め、中にセットした2つのコンデンサーマイク
で音を拾い、デジタルストップウオッチで通過時間を計測した。次に計測例を示す。
室温 15℃
空気 81cm 2.38ms
二酸化炭素 83 3.10
水素 81 0.75
これから音速を計算すると
空気 0.81/0.00238 = 340.3・・ 340m/s
二酸化炭素 0.83/0.00310 = 267.7・・ 268
水素 0.81/0.00075 = 1080 1080
となり、これらを1.5倍して平均飛行速度を求めると
空気 510m/s
二酸化炭素 402
水素 1620
となる。これを上の[b][3]の数値を比べると(うまく温度が一致している)、空気、
二酸化炭素は良い結果になっている。水素も使用した簡易ボンベの純度が95%なので、
そして不純物は分子量が大きく音速を小さくするので、それほど悪い結果ではない。
このように気体の音速は、平均飛行速度がうかがえるひとつの数値である。
参考に温度が0℃における音速の文献値(実測値 理科年表)を上げておく。
水素 1270[m/s]
アンモニア 415
窒素 337
空気 331.5
酸素 317
二酸化炭素 258
もちろん温度が上がるにつれて、音速はしだいに大きくなる。
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8.実在の気体
[1]これまで、気体の状態方程式を導き出し
PV = nRT (7)
それがいかに役に立つかを学習してきた。しかしこの方程式は完ぺきであろうか。
次のグラフから分かるように実在の気体では、圧力が高くなったり、あるいは温度が低
- 27 -
くなったりすると、1であるはずの PV/nRT の値がそれから外れてくる。
(数研出版「化学U」)
[2]その原因は2つある。ひとつは、気体分子は自由に飛行している、つまり衝突する
とき以外は分子間の引力圏から離れていると捉えてきた。しかし分子間の引力は弱いなが
らも分子の大きさの数倍まで及ぶ。気体の内部にある分子は平均すればまわりから均等に
引力を受けて帳消しになる。しかし境界面で壁に衝突する分子は、後に引かれてすこし減
速する。こうして実際の圧力はすこし小さくなり、PV/nRT を1より小さくする。こ
の効果は分子間の引力が大きい気体ほど顕著になる。そして高圧だったり、低温だったり
して分子どうしの平均した距離が小さくなると現れやすい。
もうひとつは、分子そのものの体積である。気体の体積は分子が飛行する空間だけでな
く、それに分子そのものの体積を加算したものである。圧力が2倍になって半分になるの
は分子が飛行する空間の方の体積であり、それに同じ大きさの分子そのものの体積が加算
される。こうして実際の体積はすこし大きくなり、PV/nRT を1より大きくする。こ
の効果は分子が大きい(体積)気体ほど顕著になる。そしてやはり高圧だったり、低温だ
ったりして分子どうしの平均した距離が小さくなると現れやすい。
ふたつの効果は逆向きである。グラフにおいて、メタンや二酸化炭素は1より小さい方
に外れている。分子間の引力の効果が大きいわけである。これに対して水素は1より大き
い方に外れている。水素分子は小さいはずであるが、それ以上に分子間の引力の効果が小
さいのである。
参考:分子間の引力が無く、分子そのものの体積も無い、したがって状態方程式(7)を
完全に満足する気体は理想気体と呼ばれる。化学の現象を理想気体モデルで捉える
と、原理が見えやすく理解しやすいことが多い。
[3]ここで説明したことは、すぐには理解しにくいと思われる。
何より伝えたいのは、科学的な知識や理論には限界があり、それを心得て活用するべき
である。そして限界を超えてさらに深く研究する態度を忘れないようにすることである。
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林 正幸と主万子の始めの
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