04.9
事務局:林 正幸
環境問題通信04−9号
今回は清水、富田、林まさの3名の参加で、ちょっと寂しい勉強会になりました。次回
は皆さん振るって参加してください。
ヒグマが人間を襲う理由(清水)
ヒグマが人間を襲う事故が起きている。その理由は、よくある自然破壊で生息地が狭く
なったためではない。登山者が捨てた空き缶のジュースの滴の味を覚え、やがてそれは人
間によってもたらされたことに気付き、人間の住みかに近づいて、さらにおいしいゴミが
たくさんあることを知って、それを漁るようになる。人間に出会うと食糧を横取りされる
と勘違いして襲う。それが常習化して人間を怖いと思わなくなる。
これもひとつの環境問題である。鍵を使わないでヒグマが漁れないようなゴミ箱を作れ
ないかと相談を受けている。
水素エネルギーについて(林まさ)
サイエンス8月号に「水素エネルギーに勝ち目はあるか」という記事がありました。
とくに注目を集めている自動車に関しては、燃料電池車とハイブリッド車では環境性能
はほぼ同じである(現状ではハイブリッドが上)。たとえば水素を天然ガス(メタン)の
水蒸気改質
CH4 + 2H2O = CO2 + 4H2 − 253kJ
で製造すると、エネルギー変換効率は60%である。これは吸熱反応という不利も大きい
(そのために燃料を余分に燃やし、それで二酸化炭素も発生する)。これに対して天然ガ
スをタンクに貯蔵するだけなら変換効率は85%である。原油からガソリンを製造するの
は79%である。そして水素燃料電池車の変換効率は37%である。これに対してハイブ
リッド車は18%である。
自動車に必要な50kWの馬力を出す燃料電池の製造コストは、ガソリンエンジンなど
の100倍に上る。優秀なバッテリーを開発する方が有利ではないか(たとえば太陽エネ
ルギーで発電するとして、さらに水を電気分解(変換効率22%)して水素を製造する無
駄も省ける)。それに燃料をガソリンから、天然ガスやバイオマスのエタノールなどに切
り換える方が、現実的な温暖化対策になる。
しかし家庭用の燃料電池となると話は別である。5kW程度ならコストが安く、かつ常
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時運転するので割安になる。それに同時に発生する熱エネルギーを利用できるので、全体
の変換効率は80%に達する・・・。
以上私見を加えたまとめです。
備考:8/17付けメールで送った内容は、私の頭が一部混乱していました。
「ソーラー地球経済」まとめ2(富田)
今回は次の範囲の報告でした。
第2部「化石資源政策の病理」の前半(3章「21世紀のメネテケル(不吉な前兆)」
エネルギーの世界消費は、OECDの国際エネルギー機関によると、化石燃料で
1971年 49億トン(原油換算)
1990 78
2010 115(予測)
と加速的に上昇し、二酸化炭素の排出も増加している。
化石燃料の埋蔵量は
石油 1180〜1510億トン(2035〜2040年に枯渇)
天然ガス 132〜153兆立方メートル(あと40〜66年)
石炭 5600億トン(あと123年)
他に褐炭5000億トンや、水溶性天然ガス(メタンハイドレート)1000兆立方メー
トルがあるが、採掘コストや環境破壊の問題がある。またウランは採掘コストにもよるが、
世界エネルギー委員会によるとあと41年である。そして現在原子炉は建設されない方向
にある。日本のみが取り組もうとしている高速増殖炉は、意味があるほど増殖するのか、
より危険な再処理などの問題がある。
参考:小林著「高速増殖炉もんじゅ〜巨大核技術の夢と現実」(七つ森書館)
ちなみに金属資源の入手可能年数は限られている。
化石燃料の埋蔵量に積算消費量が近づくと、高価格、失業から政治の緊張、暴力のエス
カレートが避けられず、有史以来最大の虐殺(世界紛争)が不可避であろう。人口の増加
(2010年に80億人)、都市人口の増加(工業化)はそれを早める。
現代の世界資本の植民地主義は、その国の政治に責任を負わず、資源の提供のみを確約
させる。そのため一方では「市場経済」の論理に組み込み、他方では石油産出国の利害と
対立を巧みに利用し紛争を起こさせ、「人道的救援活動」として介入支配する。こうして
東西冷戦が終焉したにも拘わらず、西側の軍事費は伸び続けている。そしてとりわけ合わ
せて20億の人口を抱えて経済成長する中国、インドとの対立が危機を内包している。
資源エゴイズムは妥協もなく自らの利益を追求する。これは生活空間の環境破壊も引き
起こす。第三世界の農業はコンツェルンによって大規模化し、20億人の生活基盤を奪っ
ている。そのグローバルプレイヤーは唯一の地球権力を代表しているのに、地球への責任
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を取る能力がない。
2つの可能性がある。化石資源で上のような危機を拡大していくのか、ソーラー資源に
転換してそれを回避するのか。
本書p203には、太陽電池パネルの上に温水器(こちらは赤外線領域を吸収する)を
組み合わせると、変換効率が50%になるという例が出てくる。
私もこのヘルマン・シェーア著「ソーラー地球経済」(岩波)を読み始めましたが、レ
スター・ブラウン著「エコ・エコノミー」よりさらに踏み込んだ内容になっていると思い
ます。
化学でエネルギーをどう教えるか(林まさ)
前回配布した講座プラン「物質とエネルギーの世界」は、基礎理論と応用課題から構成
しています。今回は科教協大会レポート「化学でエネルギーをどう教えるか」を配布して、
後者について報告しました。
人類は物質の内部エネルギー、とくに熱エネルギーの部分を、暖房や調理に利用すると
ともに、それに仕事をさせることで大きく発展してきた。このことや、人類のエネルギー
問題について講座プランに組み込むべきであると考えた。
熱エネルギーに仕事をさせることに人類が最初に成功したのは、蒸気エンジンである。
その後内燃エンジン、タービンエンジンなどが開発されるが、熱エネルギーを利用する
限りは、熱力学の第2法則
最大効率 = W/Q2 =(T2−T1)/T2
が壁になってエネルギー効率が落ちる。そこで内部エネルギーを直接に電気エネルギーに
転換する燃料電池が注目される。ただし燃料電池も発熱するので、コジェネレーションが
重要である。
人類のエネルギー消費量は1年間におよそ40京kJである(96年)。この数値はエ
ネルギー問題を考える基礎である。化石燃料の急激な消費は地球環境を破壊する。
エネルギーはその保存則にも拘わらす、実質的には「使い捨て」である。エネルギーを
利用するとやがては熱エネルギーに転換し、かつそれは同じ温度になっていく。これに対
して物質は原則として循環利用が可能であるが、そのためにもエネルギーが必要である
(このようにとらえれば、分かりづらいエントロピーという用語を持ち出さなくてもこと
は足りる)。
太陽は今後50億年、赤外線、可視光線、紫外線などの放射エネルギーを与え続ける。
地球は、太陽定数の66%を大気と地表で受ける。その量は1年間に360000京kJ
であり、人類のエネルギー消費量の10000倍である。
放射エネルギーのほとんどは熱エネルギーに転換し、さまざまな気象現象を引き起こす。
したがって風力エネルギー、水力エネルギーなどは太陽エネルギーと言える。地表に届く
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放射エネルギーのわずかな部分は、緑色植物が光合成に利用して、ブドウ糖(と酸素)の
エネルギーに転換する。その熱化学方程式は
6CO2 + 6H2O = C6H12O6 + 6O2 − 2802kJ
であり、その量は1年間に500京kJ(ブドウ糖で3200億トン)である。
太陽エネルギーは、人類が永続的に利用できる事実上唯一のエネルギー資源である。放
射エネルギーを直接利用する太陽電池は、現在の効率が15%であり、効率アップが期待
される。ただしこれは緯度が高い地方には向かない。風力エネルギーを利用する風力発電
はすでに基本技術が確立しており、一説によるとこれだけで人類の現在のエネルギー消費
をまかなえるそうである。バイオマスは自然の循環の一部であり、本来的に地球環境を破
壊しない。そしてこれは物質資源としても石油に取って代わるべきものである。ただしこ
れは食糧でもある。余剰や廃棄物を巧みに利用する必要がある。なおバイオマス生産のか
げに、世界的な水不足問題がある。
まとめるとエネルギー問題のキーワードは、エネルギー効率、省エネルギー、太陽エネ
ルギーである。
水を入れると動き出す自動車を見て、これぞ究極の乗り物と信じて紹介したフォト・ジ
ャーナリストがいる。そんなことはあり得ないのにと問い合わせるうちに、別の動力源が
隠されていることが分かってきた。エネルギー教育の重要性が窺えます。
ちなみに、同じ化学を教える立場から富田さんが前者の基礎理論にも強い関心を持って
くれたのはうれしいことでした。
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