06.9
                               事務局:林 正幸

  環境問題通信06−9号

 今回は飯田、岩田、臼井、戸田、冨田、林まさの6名でした。話題豊富な面々ですので、
時間が足りないくらいでした。なお季節の変わり目、風邪を引いている人もおり、健康に
も気を遣ってください。

「エントロピーを減らす」(臼井)

 「原子力文化」という雑誌は必ずしも原発推進一辺倒にはなっていない。9月号には石
川英輔さんの「エントロピーを減らす」が載っていた。
 地球は水の蒸発でエントロピーを捨て、定常状態を維持している。現代はエントロピー
を増やし過ぎている。
 エントロピー増大の原理は、人間が逆らえない宇宙の真理である。
 江戸時代は99%人力で、人工的なエントロピー増加はほとんどなかった。これに対し
て現代は、高い能率と低い効率で動いている。人が移動するのに、なぜその100倍もの
鉄のかたまりが一緒に移動しなくてはいけないのか。
 東京オリンピック、大阪万博の時代のエネルギー消費量は現在の1/5であった。せめ
てこの時代にもどる論理をつくり出そう。
(原文なしのまとめです)
 学校が保護者1万円/年の負担でクーラーを入れる方向だ。扇風機で十分ではないか。
 現代のものの考え方はおかしい。教育にも悪い影響を与えている。
 イラク戦争も米国の石油欲しさからだ。ガソリンもバイオからつくるべきだ。

「エアコンに慣れると、それ以前の生活にもどれない。」
「社会の目標を変えていく必要がある。」
「エントロピー(熱エネルギー)は宇宙放射で捨てられる。」

「内部被曝の脅威」に関して(戸田)

 肥田・鎌仲著「内部被曝の脅威〜原爆から劣化ウラン弾まで」(ちくま新書)は、隠ぺ
いされてきた内部被曝の深刻さを告発する。肥田さんは自らも被爆し、長年被爆者医療に
携わってきた貴重な体験の持ち主である。彼はペトカウ効果に言及し、「ぶらぶら病症候
群」は内部被爆による低線量放射線の影響であると主張する。この本は、米国の被爆者や

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劣化ウラン弾による内部被爆の実態も暴く。
 しかし科学的記述に誤りが多い。これではせっかくの良書が逆手に取られると、善意の
メールをくり返し送ったが、一向に返事がない。科学者との連携を目指さないのだろうか。
 誤りはたとえば次のようである。
p74「大量の放射線分子(中性子とガンマ線)が市民や兵士のからだを貫通し」
 放射線分子というものはない。中性子とガンマ線のみでない。
p77「放射線分子の大きさは一般的な酸素、水素、窒素などの分子と同じく、細胞の約
六兆分の一とされる」
 放射線は、原子の大きさの一万分の一にも満たない。細胞の六兆分の一という計算もや
り直さないといけない。
p78「プルトニウムの放射能が半分になる(これを半減期という)のに一万二〇〇〇年
もかかる」
 プルトニウム239の半減期は24360年である。
p81「人類は二万年の進化の過程で、地上に存在する放射線量に適応してきた。つまり、
自然界放射線を出す物質を体内で認知し、体外に排出するメカニズムを持ったのであ
る。」
 人類の歴史は少なくとも200万年はある(これは林まさの指摘)。
 人体は放射性の原子と非放射性の原子を区別することはできない。
p82「空気中に浮遊している放射性物質から出されるガンマ線はどんなに微量でも、生
命体の中で濃縮されることによって被ばく線量は飛躍的に増大する。」
 ガンマ線そのものが濃縮することはない。むしろアルファ線源やベータ線源が体内に入
ることが問題ではないか。
(戸田さんのレポートを一部簡略化してまとめました)

「東海地震・東南海地震に備えて」(戸田)

 今年の科教協大会の「自然と社会・環境」分科会で、「東海地震・東南海地震に備えて
〜防災教育と地域活動」というテーマでレポートした。
 2000年9月11日の東海豪雨で勤務校が2,3メートルも水没し、手作り教材を一
夜にして失った。幸い多くの仲間から実験道具や本などを送ってもらい、被災者の気持が
分かるボランティアになりたいと思った。
 資料を集め、実験も工夫し、自治会や老人会などの地震防災学習会に協力し、地下鉄徳
重駅建設に対して質問書も提出した。最近では愛知・名古屋みどり防災ボランティアネッ
トワークの活動に参加し、児童館や小学校の防災教育にも協力している。
 防災に関する資料はリストにし、入手先などが分かるように整理した。中でも「新修名
古屋市史 第八巻 自然編」はお勧めである。またDVD「インドネシア スマトラ島沖

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地震による津波」はぜひ見てほしい。愛知県の自治センターに行くとたくさんの資料があ
る。
 とても短時間で報告できる量ではありません。学習会の内容を書いたプリントもありま
した。別冊サイエンス「地球大異変」や名古屋市の5mメッシュ数値地図の紹介もありま
した。
 防災、これも環境問題を捉える重要な切り口であると認識しました。

バイオ燃料(冨田)

 ガソリンに混合したり、代替したりするバイオエタノールは、サトウキビやトウモロコ
シを原料にしてアルコール発酵させる。この燃料は二酸化炭素を増加させない。もともと
大気中の二酸化炭素を光合成で取り込んだ原料であるからだ(ただし生産過程での化石燃
料使用がある)。
 トップはブラジルで生産量は155億リットル(04年推定)、対応して自動車も混合
車、専用車、あるいはどちらも使えるフレックス車が普及している。
 米国も生産量が100億リットルに達し、E10(エタノール10%混合ガソリン)が
ガソホールと呼ばれて普及し、ガソリンの高騰もあってさらに拡大していくと考えられる。
 これに対して日本はE3が解禁されたところである。こらなら既存のエンジンにそのま
ま使用でき、窒素酸化物も増加しないからである。慎重論も多く、ホルムアルデヒドの排
出やサトウキビの生産で森林が破壊されるとの心配がある。

「中日に、ホンダが稲わらからエタノールを生産する技術を開発したという記事があった。
これはセルロースを原料にする。」

 バイオディーゼル燃料(BDF)は、軽油に混合するか、あるいは代替する。パッキン
グなどを交換するだけで、既存のエンジンが使用できる。一酸化炭素や浮遊性粒子状物質
(PM)は半減し、フェロセンなどの添加剤を用いれば窒素酸化物も増加しない。ちなみ
にヨーロッパではディーゼル車が普及している。
 これは植物油を、水酸化ナトリウムなどを触媒にしてメタノールと、次のようにエステ
ル交換反応させる。
  CH2OCOR                    CH2OH
  |                          |
  CHOCOR + 3CH3OH ―→ 3RCOOCH3 + CHOH
  |                          |
  CH2OCOR                    CH2OH
   植物油     メタノール    脂肪酸メチル  グリセリン

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原料にはヨーロッパではナタネ油、米国では大豆油が使われるが、日本では廃食用油を利
用することが多い。ただし日本の食用油は50万kL/年であり、これだけでは軽油消費
量3800万kL/年をとてもカバーできない。アジアで生産されるパーム油が注目され
る。

「油脂そのものでは分子量が大き過ぎ、かつ粘性も高い。」
「メタノールはバイオでないね。」
「燃料を含め原料はバイオを基本にすべきだ。そして金属は徹底してリサイクルする。」

<加藤さんからの資料>
 三重県は小規模な生産である(京都が有名)。BDF生産の課題は次のようである。
@廃食用油の回収が不十分で品質も一定しない
Aグリセリン廃液をどうするか(燃料など)
BBDF精製からの含油排水の処理
 三重県科学技術振興センター保健環境研究部では、Bに対してコンソーシアム系微生物
による廃水処理を試験、提案している。
 小規模事業所では維持管理が簡便でコストがかからないことが肝要である。コンソーシ
アム系の油分分解菌をセラミックに固定し、これを反応槽に設置してエアレーションした
ところ、COD、BODおよび油分濃度が減少し、排出基準を満足する程度まで処理でき
た。

「偽りのプリウス神話」(岩田)

 週間金曜日の記事。米国では「環境に優しい車」ということでプリウスが爆発的に売れ
ている。しかし本当にトヨタは環境に優しいのか。プリウス自身で言えば、生産段階では
モーターや電池を余計につくるので環境負荷は大きくなる。またアカデミー賞スターにプ
リウスを貸し出して宣伝する一方で、それに乗じて燃費が悪いトラック系の販売に力を入
れる。そしてカリフォルニア州の新しい排ガス規制に反対する。
 国内では公害病患者に相変わらず救済資金を出していない。社内では正規労働者を増や
さない。そして莫大な広告料でマスコミにものを言わせない。こうして1兆円の利益をひ
ねり出しても、社会的信頼は得られるだろうか。

「地球温暖化」(林まさ、飯田)

<林まさ>
 伊藤著「地球温暖化」(日本評論社)は、シリーズ「地球と人間の環境を考える」の中
の1冊であるが、まともでまじめな本であると思った。

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 ここ100年とりわけ最近の温暖化は衆目の認めるところであるが、さてその原因はど
こにあるのか。
 まず惑星を黒体と見なすと次の関係式が成り立つ。
 4πr2×σT4 = (1−A)×πr2×S0
  定数    アルベド   太陽定数
アルベドは「白さ」つまり地球の反射率であり、計算すると
 地球  A=0.3    T=255(−18℃)  平均気温= 15℃
 金星    0.77     228(−45 )       400
 火星    0.15     217(−56 )       −39
いずれも温度上昇をもたらす要因がある。
 シミュレーションのプログラムは「大気海洋結合大循環モデル」と呼ばれるが、メッシ
ュが水平距離250kmと粗い。これでは雲は計算の対象にならない。さまざまな要因は
気象強制力(放射強制力)として数値化される。プラスなら地球を温める。太陽活動の影
響は外されている。ちなみに温室効果の90%は水蒸気が担っている。
 この本は地球の気候変動とその原因を探る研究をいくつも紹介している。著者は太陽活
動の影響に注目している。しかしそれだけではない。温暖化を既成事実として原子力推進
の政策が推し進められている問題を指摘したり
  二酸化炭素排出抑制3900億円のうち原子力が2700億円(98年度予算)
経済や政治にも目を向けた内容になっている。
<飯田>
 温暖化 CO2 原因説に疑問が投げかけられる中でこれまで数冊の本を読んだ。伊藤公紀
さんの他に
  薬師院仁志著「地球温暖化論への挑戦」(八千代出版)
  槌田敦著「 CO2 温暖化説は間違っている」(ほたる出版)
  池田清彦著「環境問題のウソ」(ちくまプリマー新書)
 薬師院さんによると、シュナイダーはかつては氷河期が来ると言っていた。それが90
年代になると、温暖化を主張し始めた。彼はもともと原子力養護派で、それはチェルノブ
イリ原発事故後のようだ。
 槌田さんによると、過去の気候では気温変化に二酸化炭素濃度が追随している。温度が
高くなると、海洋が二酸化炭素を排出する。それに時間がかかるために、タイムラグを生
じる。二酸化炭素濃度の上昇は温暖化の結果である。
 四氏はいずれも、黒点数と気温には密接な関係がある。太陽活動を無視するのはおかし
いと主張する。池田さんは、石油はどんどん使えばよい、温暖化の宣伝に乗せられるのは
バカだと言う。
 伊藤さんによると、仮に間違っていても、温暖化対策で省エネルギーや公害防止のノウ

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ハウや装置が残れば、幸いではないか。二酸化炭素濃度は、環境汚染全体の目安と捉えれ
ばよいと言う。
 自分はかつて二酸化炭素による温暖化を言われるままに信じていたが、勉強するにつれ
て慎重になり、意見の根拠を確認するようになった。

「はっきりしないからと温暖化問題を避けて通るわけにもいかないし、難しい問題だ
ね。」



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