12.1
                               事務局:林 正幸

 MOLの会通信12−1号

今回は、堀、岡田の2名というさみしい研究会でした。冬休み中に岡田がまとめた授業プ
リントや実験プリントを報告しました。

白金触媒(岡田)

 白金触媒については、以前に取り上げましたし、前回にもかなり検討しましたので、今
回はその続きを報告する予定でしたが、これまでに取り上げたことも含めて報告します。
参考文献は「サイエンスシアターシリーズ原子・分子編B原子と原子が出会うとき」(仮
説社)です。
<白金カイロ>
 少し前にはどこの家にもありましたが、使い捨てカイロが発売されてからは全く見なく
なった白金カイロ。「ハクキンカイロ(株)」から白金カイロと石油ベンジン(ガソリン
と灯油の間くらいの燃料)を購入し、白金カイロに石油ベンジンを実際に入れて点火して
みました。白金カイロは1923年(大正12年)に発売されました。その原理は、ベン
ジンを直接燃焼させるのではなく、気化したベンジンが白金の触媒作用によって徐々に酸
化発熱するということです。そして、ベンジンの燃焼温度は600〜800℃ですが、白
金カイロの燃焼温度は300〜400℃とありました。
<白金ライター>
 「白金ライター(触媒ライター)」を紹介しました。「白金ライター」は世界最初のラ
イターですが、今はほとんど知られていません。ライターといえば「火打ち石式ライター
(いわゆる百円ライター)」や「圧電式ライター(チャッカマン)」が知られています。
これらのライターはいずれも燃料はブタンを主成分としていますが、発火の方式が異なっ
ています。白金ライターの特徴は発火点が190℃くらいで、ブタンを主成分とする燃料
の発火点の450〜550℃に比べるとかなり低いことです。
<メタノールの燃焼>
 100mLビーカーにメタノールを少量入れます。白金線(先を小さな円状にしておくと
見やすい)をバーナーで加熱してから、メタノールの液面に近づけると白金線が赤熱して
いることが観察されます。この反応は次のように表されます。
  2CH3OH + 3O2 ―→ 2CO2 + 4H2
<オストワルト法>
 100mLの三角フラスコに少量のアンモニア水を入れ、バーナーで加熱した白金線をア
ンモニア水の表面に近づけると白金線が赤熱し、三角フラスコの内壁がくもる(水の生成

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の確認)ことが観察されます。この反応は次のように表されます。
  4NH3 + 5O2 ―→ 4NO + 6H2
<爆鳴気>
 酸素:水素=1:2の爆鳴気に点火すると爆発します。この反応は次のように表されま
す。
  O2 + 2H2 ―→ 2H2
350mLのペットボトルに酸素を40mLと水素を80mLを水上置換で捕集しておきます。
この爆鳴気に白金黒(はっきんこく)をミクロスパーテルで加えると爆発する方法をこれ
まで採用してきましたが、先の参考文献には、折り曲げた割り箸の先に白金黒をつけて爆
鳴気に入れる方法も紹介されています。今回は新しく、先の<メタノールの燃焼>や<オ
ストワルト法>で実施したようにバーナーで加熱した白金線を入れてみました。すると、
白金黒をミクロスパーテルで入れた場合と同じように爆発しました。今回の新しい方法は
高価な白金黒を購入することなく、化学実験室にある白金線を使用すればできます。また、
白金線がなくて購入する場合でも白金黒よりはかなり安価なので、実験しやすくなったと
思います。

コチニールによる染色(岡田)

 サボテンに寄生するエンジムシ(コチニール虫)から赤色の色素(コチニール色素)が
とれます。エンジ色とはこの赤色のことであり、エンジムシが語源となっています。コチ
ニール色素の主成分はカルミン酸であり、生物で細胞を観察するときに使用される酢酸カ
ーミンの原料です。コチニールは無害なので、かまぼこや菓子などの食品色素や口紅など
に用いられています。コチニールは田中直染料店を通してコチニールシルバーという商品
名で購入できます。
 コチニールは毛糸などには直接染色できます。カルミン酸にはカルボキシ基があり、羊
毛のタンパク質にはアミノ基があり、カルボキシ基からアミノ基に水素イオンが移ること
により、それぞれがイオン化してイオン結合するものと考えられます。木綿には媒染染色
をします。染料はコチニールで、媒染剤には硫酸銅(U)、塩化スズ(U)、塩化鉄(U)が適
しています。媒染染色は配位結合による染色で、金属イオンの空の電子殻と染料の酸素原
子の非共有電子対が結合することによっておこります。
 専門家はコチニール虫をそのまま煮出しますが、今回の実験ではコチニール虫を乳鉢で
すりつぶす方法を取りました。少し銀色であったコチニール虫をすりつぶすと赤色の色素
が出てきます。これをガーゼで包んでビーカーの水のなかで加熱し、沸騰したら弱火にし
て数分加熱すると水溶液が鮮やかな赤色になります。これをpH2くらいの塩酸中で行うと
赤橙色になり、pH12くらいの水酸化ナトリウム水溶液中で行うと紫色になります。赤色
のコチニール染色液に羊毛の毛糸をしばらく浸しておいてから水洗いするときれいな赤色
に染まります。

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 次に木綿に染色する場合は、コチニール染色液を3等分し、3種類の金属イオンの水溶
液を準備します。ゴム手袋をはめて木綿の布をまずコチニール染色液に浸してからよく絞
り、次に布を10%の硫酸銅(U)水溶液に浸して絞ります。これを5回繰り返した後で、水
洗いすると青紫色に染まります。10%の塩化スズ(U)水溶液で同様に染色すると赤紫色に
染まります。10%塩化鉄(U)水溶液で同様に染色すると薄い赤色に染まります。このよう
に、媒染剤の違いによって呈する色が異なることが媒染染色の特色です。

ロウケツ染めによる藍染め(岡田)

 藍染めは身近な酸化・還元を実感することに適した実験だと思われます。藍染めの色素
であるインジゴは水に溶けにくいので、このままでは染色することはできません。インジ
ゴを熱湯の中に入れた後、塩基性にして還元剤を加えると、水に溶けやすい黄色のリュー
コインジゴに変化します。この水溶液に木綿の布に浸した後、水溶液から取り出して広げ
ると、空気中の酸素によって酸化されてもとの藍色の「インジゴ」にもどり、染色が完成
します。簡単な実験なのですぐに終わりますので、余った時間に、輪ゴムや糸や割り箸を
使った「絞り染め」を兼ねて実験していましたが、生徒達の反応はあまり良くありません
でした。同時に、「ロウケツ染め」もしてみたいと考えていました。今回、「ロウケツ染
め」によって藍染めをしてみました。
<ロウを塗る>
 50mLビーカーにロウソクを入れて穏やかに加熱するとロウが融けます。ロウ(パラフィ
ン)は炭素数は17以上のアルカン(メタン系炭化水素)の混合物であるため、52〜
56℃で融けます。美術用のふでに融けたロウをつけて、木綿の布に字などを書きます。
<藍染め>
 100mLビーカーに熱湯80mLを入れ、80℃以上に加熱します。80℃以上になったら、
水酸化ナトリウム1.0gを入れて溶けたらインジゴ0.50gを加えます。かき混ぜても溶けない
ことを観察します。ここへ、ハイドロサルファイト(亜二チオン酸ナトリウムNa2S2O4)
1.0gを入れてよくかき混ぜます。300mLビーカーに水120mLを入れ、この中に先のインジ
ゴ液を入れます。ここで、水溶液が黄色になっていることを観察します。また、インジゴ
液の中は黄色いが、表面は藍色であることも観察します。また、この操作の理由は、イン
ジゴ液をつくるときには高温であることが必要ですが、染色するときに塗ったロウが融け
ないように40℃以下にするためです。布を3分間浸した後で水溶液から布を出して広げ
ると、布が黄色から藍色に変わっていく様子が観察できます。
<ロウを洗い落す>
 500mLビーカーに熱湯(70℃以上が望ましい)200mLくらいと洗剤を少量入れた
中へ、藍染めした布を入れます。ガラス棒でグルグルかき混ぜた後、ピンセットで布を取
りだし、ゴム手袋をはめて、ロウのついている部分を中心に揉み洗いし、ロウが落ちたと
ころで、水洗いをします。 

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 結構きれいに藍色に染まり、ロウが塗ってあった部分とのコントラストもよく、生徒達
の反応も「藍染め」だけや輪ゴムなどによる「絞り染め」と比較してもかなり良いと思わ
れます。ただ、1時間で実験するには1班に1枚が限度なので、1枚の布に班員(3〜4
名)の名前の一部(例えば「あい」)を書いたものが好評でした。提出するプリントには、
布のその一部分を切り取って貼り付けますので、良い記念になります。



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