10.10
                               事務局:林 正幸

 MOLの会通信10−10号

 今回は岡田、田中(英)、田畑、林まさ、藤井、船橋、堀の7名が参加しました。新しい
仲間1名を含みます。
 実験後の交流の中で、今春に正式採用された藤井さんから、やっと授業に2つの生徒実
験を取り入れたという話がありました。ひとつは硫黄の同素体(ゴム状硫黄など)です。
もうひとつは、炭酸水素ナトリウムを蒸発皿に入れて加熱し、炭酸ナトリウムになったと
きの質量減少を計って、化学量論を確認するものです。幸い0.01g精度のデジタルてん
びんが実験机の数だけあったからです。さらに実験できるようにがんばってください。ま
た科学部の指導(PETロケット)も話題になりました。
 また田畑さんからは、不要薬品や廃液などの処理をどうしたものかと質問がありました。
皆さん困っている問題ですが、個別に検討して行きましょう。そして硫酸銅については、
量にも依りますが、薄めて流しているという紹介がありました。一般に重金属イオンは廃
液を貯めているのですが、その先がはっきりしていないのが現状です。本来は県や市の積
極的対応が望まれるのですが・・・。
 そして堀さんと、私(林)が圧気発火器の紹介をする約束をしていたのですが、その名
前を書いた箱の中身が違っていて(10セット作ったのは確か!)実現できませんでした。
元祖の飯田さんから情報を得て伝えるつもりです。田畑さんの希望もあり、近いうちにサ
ークルでも取り上げましょう。
 最後に、延び延びになっているNOM(飲む)の会を
    12月11日(土) 17:00〜
に設定しました。会場は追って連絡します。

参考:96年7月以降の「MOLの会通信」は、すべて私(林)のホームページで閲覧で
きます。
     http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/masa/shwmenu.htm#MTS

アセトアニリド(林まさ ら)

 この合成実験は何人かが手掛けていますが、話題になったついでに、林方式(その場で
一部改良)を紹介することになりました。
 100mLビーカーに水50mLを採り、アニリン2mLと無水酢酸2.4mLを加えて、

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ガラス棒でかき混ぜると白色固体のアセトアニリドが生成する(これで終わりにすること
もできる)。これを精製分離するために、加熱して全体を溶解し、70mLの水に注ぐと
再結晶し、さらに水道水あるいは氷水(収量が上がる)で冷やす。ろ過するときれいなう
ろこ状(板状)の結晶が得られる。
 これはアミドに関する取り上げやすい実験です。化学Uではナイロン−6の合成もあり
ます。
 アセトアニリドは解熱剤ですが、現在は溶血などの副作用のため使われていないとのこ
とです。
 ちなみに麻薬取締法により麻薬原料(モルヒネと反応させるとヘロインになる)のひと
つに指定されたため、無水酢酸が試薬として入手しにくくなっていることも話題になりま
した。

DMAP触媒によるエステル合成(林まさ)

 太い試験管(φ30mm)にエタノール3.1mLを採り、ジメチルアミノピリジン(D
MAP)0.1gを溶かす。これに無水酢酸5mLを加えると発熱して沸とうするほどにな
る(反応速度が大きい 沸とうしない程度に少しずつ加えた方がよい)。これを冷却した
後に大量の水を加えると、酢酸エチル層ができる。ちなみにオイルレッドを加えると、酢
酸エチルは油性なので着色する。
 よりていねいには、炭酸水素ナトリウム5gを加えて副生する酢酸を中和する。
 藤井さんによると、始めはピリジン自身が触媒に使われたが液体で扱いにくく、固体で
より塩基性を高めたDMAPが使われるようになったとのことです。また反応機構は、触
媒のピリジン窒素が無水酢酸のカルボニル基炭素を攻撃して酢酸イオンが離れ、触媒が離
れてできるアセチルカチオンの炭素にエタノール酸素が攻撃し、続いて水素イオンが離れ
ます。
      CH       CH
      |         |
  PN + C=O ―→ PN+―C=O + AcO-
      |        ↑
    AcO        ↓
                CH
                |
            PN + C+=O
  (PN:ピリジン型窒素、孤立電子対をもつ  Ac:CHCO―)
そしてこの反応に酢酸を酸触媒として使う提案については後日に試してみました。エタノ
ール3.1mLに無水酢酸5mLを加え、これに酢酸3mLを加えても温度の上昇はありま

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せんでした。そこで数分沸点近くに加熱し、冷却してから大量の水を加えても上層は分離
せず、酢酸エチルの臭いもしませんでした(やり方に問題があるのでしょうか?)。
 この反応は酢酸エステル合成全般に使えるそうです。私は酢酸n−ブチルも合成してみ
ましたが、さらに機会を見ていくつか試してみたいです。
 なおアセトアニリドもそうでしたが、酢酸エチルの合成実験に関して交流する機会を設
けるとお互いに勉強になると感じました。

ヒートパイプ(林まさ)

 今年の科教協大会で購入した、直径6mm長さ215mmの銅製ヒートパイプと、それ
と同型の銅のパイプ。それぞれの端をつまんで熱湯に浸けると、ヒートパイプは数秒で持
てないほど熱くなる。銅のパイプは、金属の中でも熱を伝えやすいはずなのに、1分経っ
てもほとんど温度が上がらない。
 このヒートパイプには減圧下で少量の水が入っている。下で加熱されて発生した水蒸気
が、上昇して上で冷却されて凝縮し、そのとき蒸発熱を放出する。そして少量の水が流れ
落ちやすいように、内壁には溝が刻まれている。一般に熱媒体には水の他に揮発性液体が
使われる。
 インターネットで調べたところ、ヒートパイプは地面に突き刺して永久凍土を保存する
のに利用されている。気温が地中より下がると地中の熱を大気に放出し、気温が高いとき
は熱の移動は起こらない(熱の移動は一方向)。また毛細管を組み込むと水平でもはたら
き、コンピュータのCPUの冷却などにも利用されている。

いたずらインク(船橋)

 科教協大会で山本さんが報告した「いたずらインク」をつくってみた。チモールフタレ
イン0.1gをエタノール100mLに溶かし、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液8滴
を加えて青色にする。これを白色のシャツなどにかけると、あら不思議、しばらくすると
青色が消えてしまう。チモールフタレインは指示薬であり、空気中の二酸化炭素で水溶液
が酸性化すると色が消えるのである。
 授業中に寝ている生徒がいると、このインクをかけてやる。驚くが、エタノールの蒸発
熱でひんやりして気持がよいらしい。
 これを応用したのり「消えいろPIT N」(とんぼ)がある。
 同じ原理で赤色インクをつくってみた。1%フェノールフタレイン溶液20mLにエタ
ノール25mLと水45mLを加え、やはり1mol/L水酸化ナトリウム水溶液8滴を加
える。赤色になったシャツの染みがしだいに消えていく。

 CQ出版の「レーザー光空間通信にチャレンジ」中の「光ワイヤレスマイクを作ろう」

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の装置を製作してみた。受信側はヘッドホーンで聴く。
 授業中うるさい生徒がいると、ヘッドホーンを付けさせ、他の生徒に聞こえないように
小さい声で注意をする。このように工夫するとしばらくは効果があるが、数ヶ月もすると
慣れてきて新しい方式を考え出さねばならなくなる・・・。

超音波によるドップラー効果(船橋)

 前回の周波数メーターの続きです。超音波は波長が短いので、音源の速度があまり大き
くなくても精密な周波数メーターがあれば、ドップラー効果も検出しやすい。
 40000Hzの超音波受信器をH8UMCSに搭載した周波数メーターにつなぎ、同
じ超音波の発信器を積んだおもちゃの電車(これは25年ほど前にEHCで製作したも
の)を前後に走らせて、周波数の変化を計測すると、近づくときは周波数が増え、遠ざか
るときは減った。この電車の速度では±40Hzほどになった。ちなみに超音波は聞こえ
ないので、うなりを利用して可聴音化する変換器(バット・ディテクター)を加えると、
耳でも周波数の変化が確認できる。
 音源が運動する場合の周波数の変化量Δfは次の式で計算できる。
    Δf = uf/(V−u) ≒ uf/V ( V>>u なので)
      (f:元の周波数 V:音速 u:音源の速度)
 次に電車の発信器を止めて反射板を取り付け、40000Hzの超音波をそれに発射し
て返ってくる超音波の周波数を計測する。この場合は変化量が2倍になる。それは、反射
板を鏡と考えるとそれでできる像が音源になるので、速度が2倍になるからである。実際
の周波数の増減は±90Hzほどになった。
 この後は電車の速度も計測して、ドップラー効果の関係式を検証していきたいとのこと
です。このようなことが次々にできるのは、ひとつにはEHCで製作したH8UMCS、
つまりH8マイコンを搭載した汎用計測制御システムが、何でもできる強力装置であるた
めです。
 実は前日のEHCで、精密な周波数メーターを製作講習したのです(船橋さんは設計者
なので製作済みでした)。そしてEHCではそのうち、超音波に関わる以上の装置を製作
する計画です。

pHメーターを使う演示実験(岡田)

 田中さんが設計し、船橋さんが代行製作した、パソコンに大型表示できるpHメーター
(これはPICマイコンを搭載したタイプ)を入手した岡田さん、いくつかの演示実験に
活用しようとしています。
(1)問題集の「酢酸を10倍にうすめると、pHはもとの値からいくら変化するか。
(Ka=2.5×105 log5=0.70)」の答は

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  酢酸の濃度を c[mol/L]とすると
    CH3COOH ←→ CH3COO- + H+
     ほぼcmol   [H+]mol [H+]mol(水溶液1Lを考える)
  化学平衡の法則(質量作用の法則)から
    [H+] = √(cKa)    (1)
  したがって
    pH = −log[H+] = −0.5logcKa
  c に 10-1cを代入すると
    pH = −0.5log(10-1cKa) = 0.5−0.5logcKa
  つまりpHは0.5だけ大きくなる。
となる。
 また1mol/L酢酸のpHは式(1)より
    pH = −0.5log(1×2.5×105) = 2.3
となる。
 したがって
    1mol/L酢酸     pH 2.3
    0.1             2.8
    0.01            3.2
    0.001           3.8
である。
 実際に溶液を調整してpHを計測すると、どれもピッタリの数値になった。計算問題も
このように実際に一致することを確認すると、生徒は演習をする意味が納得できる。
(2)1mol/Lの塩酸や水酸化ナトリウム水溶液を、10倍希釈していくとpHが1ず
つ変化することを、演示できる。
(3)滴定曲線も、計測に基づいてグラフを描けば実感が湧く。たとえば0.1mol/L
塩酸を10倍に薄めた水溶液のpHは理論通り2.0であった。これをビュレットを使って
0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。2,4,6,8,9,9.2,9.4
・・・9.9,10,10.1・・・mL加えたときのpHを計測する。10mLを挟んで
pHが大きく変化し、きれいなグラフになった。
 ちなみに水酸化ナトリウムの試薬純度はかなり悪いので、事前に滴定して調整しておく
とよい。
 他にも塩(炭酸水素ナトリウム、塩化アンモニウム、酢酸ナトリウムなど)の加水分解
に使おうと考えている。ちなみに生徒は塩の水溶液の液性がなかなか判らない。ひとつの
原因は、塩の化学式から元の酸と塩基を引き出せないためであろう。中和の反応式と同じ
ように、加水分解の反応式も演習するとよい。

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PWM制御モーターによる
     ベンハムのこま(田中)

 マイコンのプログラムにPWM(パルス・ワイズ・モジュレーション パルス幅調節)
という手法がある。可変抵抗の電圧に応じて方形波のハイとローの時間比を変化させる。
そしてハイのときのみ電流が流れるように制御すれば、電源電圧を一定に保って電流量
(の平均値)を加減できる。発光ダイオードのように掛ける電圧を一定にする必要がある
場合には、その明るさを首尾よく加減できる。
 今回はこの装置(マイコンはPIC わずかに150円)によってモーターの回転速度
を加減し、色々のタイプのベンハムのこまを回してみた。発色は回転速度の影響を大きく
受け、個人差もあるので、実験には有効であった。
 ちなに白と黒の絵柄から、どうして有彩色が見えてくるのか、よく分かっていない。
 そしてEHCでは、来年5月にこれを利用した赤、緑、青色の高輝度発光ダイオードに
よる光の三原色の実験装置を製作する予定です。



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