09.3
                               事務局:林 正幸

 MOLの会通信09−3号

 今回は浅野、岡田、田中、林まさ、福島、船橋、堀の7名が参加しました。
 船橋さんが ”Self-Programable Message Mini Fan”を販売(800円)しました。こ
れはファンを回すと入力しておいたメッセージが円周に電光表示されるというもので、現
在のエレクトロニクス技術を象徴しています。
 なお今回はEHCのサークル通信のようにもなりました。

浮き浮き実験器など(船橋)

 「電気をつくり、つかう」ことや「エネルギー変換」を体験する小学生向けの工作「浮
き浮き実験器」が紹介されていたので、それを試作してみた。プロペラを付けた直流モー
ター(3V用)を手回し発電機で回して筒を通して上向きに風を送り、小さい皿や紙風船
を浮かせる。実際には皿の形も重要で、風船は小さくて軽いものしか浮かせられない。
 石川さんが愛知物理サークルで紹介した「小型梵鐘(?)」も製作してみた。焼きなま
しした(キュリー温度以上に加熱し軟鉄にして磁化されやすくする)コーヒー缶を堅い木
枠に吊り下げるように固定し、下に円形のフェライト磁石を置く。そのすき間に8の字コ
イルを2つ重ねたようにクローバー型のコイル(10回巻き)をセットし、これをアンプ
に通してスピーカー(10W)につなぐ。この梵鐘を「つく」(音叉用のハンマーでたた
く)と、見かけとちがって厳かな音色が響きました。
 円筒状の物体はさまざまなモードで振動するが、このコイルはもっとも単純な、前後・
左右が交互に伸び縮みするモードを主にピックアップするためと考えられる。そして面白
いことにうなりも聞こえる。
 コイルをこの形に巻くのに苦労した。またプリアンプ、アンプ付きの10Wスピーカー
は汎用性があるので、EHCで製作する準備もしている。

電気容量計(船橋、田中)

 船橋さんは、EHCで製作したH8マイコンを搭載した汎用計測制御システム(UMC
S)を使って、電気容量計を製作した。原理は充電時間が容量に正比例することを利用し
ているが、20回の計測を平均しては表示するようにプログラムを工夫したりして、ピコ
ファラッド(pF)レベルがほぼ安定に計測できるようになった。
 これを使って平板コンデンサーの容量変化を計測してみた。机に1枚のアルミ板を置き、

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3mmのアクリルの枠を貼り付けたすこし大きいもう1枚のアルミ板をスライドさせる。
実は机との容量や浮遊容量で苦労している。今回の計測では、アルミ板が重なっていない
ときの容量をブランクとして差し引けば、容量と対抗面積はほぼ正比例することが確認で
きました。
 なお計測結果は付属の大型表示器で、教室などの生徒たちに見せられるようになってい
る。そしてこの容量計はEHCで5月に製作講習する予定である。
 関連して田中さんは、ピックマイコンを使って単品の容量計を製作した。これも本格的
なメーターに負けない精度です。
 また彼はpHセンサー(3000円)を入手して、pHメーターも製作する勢いです。
これが成功すると、化学にも恩恵があると思われます。

フェノール類の実験(福島)

 液状フェノール(11%の水を含み、液体だから扱いやすい)を使って次の実験をした。
試薬は酸化され、褐色になっている。
@2mLに臭素水(1%、市販品)を、色が消えるまで滴下すると、白色沈でんができた。
これはベンゼン環の水素が臭素で置換されて、2,4,6−トリブロモフェノールが生成
する。
65OH + 3Br2 ―→ C62Br3OH + 3HBr
フェノールの酸素にある非共有電子対が、共鳴によりオルトとパラの炭素の電子密度を高
め、臭素陽イオン Br+ がこれらの炭素を攻撃しやすいためである。
A1mLに水2mLを加えて振っても溶けなかった(溶け切らない)。
 これに1mol/L水酸化ナトリウム5mLを加えて振ると溶解した。これはフェノール
が中和して塩になり水に溶けやすくなるためである。
  C65OH + NaOH ―→ C65ONa + H2
 さらに2mol/L塩酸3mLを加えると、油状物質が分離した。
  C65ONa + HCl ―→ C65OH + NaCl
これは弱酸であるフェノールの塩に強酸が作用して、フェノールが追い出されるためであ
る。
B液状フェノールおよびo−クレゾールを十分な水に溶かし、0.1mol/L塩化鉄(V)
水溶液を滴下すると、紫色になった(フェノール類の検出)。
 これは酸化されやすいフェノール類を鉄(V)イオンで酸化して発色させるものである。
くわしい反応は分からないが、共役系(二重結合と単結合のくり返し)が伸びるのであろ
う。
 生徒たちはフェノールの臭いが嫌いで、あまり評判はよくなかった。
 ちなみにクレゾール3種のうち、常温で液体なのはメタ(融点12℃)だけで、他は固

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体である。またクレゾールセッケンは、カリセッケン(脂肪酸のカリウム塩)にクレゾー
ルを加えた消毒薬である。

アニリンの実験(岡田)

アニリンの合成
 試験管にエタノール2mL、ニトロベンゼン1滴、硫酸鉄(U)小さじ1杯、ビタミンC
小さじ1杯を入れ、かき混ぜながら80℃ほどの湯に5分浸ける。
 これでアニリンが生成するはずだが、船橋さんや福島さんからさらし粉の上澄み液を加
えても赤紫色(アニリンの検出)にならないと連絡があった。そこであえて白濁液を加え
てみるとすこし紫色になった。
 この反応は鉄(U)イオンが触媒になり、ビタミンCが水素を与える。
  C65NO2 + 3H686 ―→ C65NH2 + 3H666 + 2H2
          ビタミンC
 この方法はニトロベンゼンをスズと塩酸で還元するより取り組みやすいが、もうすこし
検討してみたい。
 ちなみに芳香族アミンもフェノール類と同様に酸化されやすく、古くなったアニリンは
褐色になる。
アセトアニリド
 100mLビーカーに水50mLをとり、アニリン0.5mLを入れ、無水酢酸1mLを
加えてよくかき混ぜると、白色沈でんができた。これは次の反応で生成するアセトアニリ
ドである。
  C65NH2 + (CH3CO)2O ―→ C65NHCOCH3 + CH3COOH
 アセトアニリドはかつて解熱剤として利用されたが、現在はアセトアミノフェノン
CH3CONH−C64OH に代わっている。またもうひとつの解熱剤であるアスピリン
は、最近は坑血栓剤としても利用されている。

塩化水素の噴水(岡田)

 安房科学塾で米山さんが報告したアンモニアの噴水に感動して、同じようにして塩化水
素の噴水にも取り組んでみた。
 ゴムせんに2つの穴を開け、一方に先がとがった噴水用のガラス管を通し、他方にゴム
チューブを経てポリ袋につながったガラス管を差し込み、500mL丸底フラスコにはめ
る。下方置換になるようにフラスコを固定し、太い試験管で塩化ナトリウムに濃硫酸を加
えて塩化水素を発生させ
NaCl + H2SO4 ―→ NaHSO4 + HCl
12g   11mL          4.5L(計算値)

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ゴムチューブでフラスコに導く。このときポリ袋の膨らみから置換状況が把握できる。
 ポリ袋につながったガラス管を外して試験管のゴムチューブにつなぐ。フラスコを倒立
してガラス管をメチルオレンジを加えた水に入れ、ピペットを差し込んで水を噴射すると、
見事に噴水が上がって水がオレンジ色に変わりました。
 ガラス管を通したゴムせんを使うと、ポリ袋はビニタイで縛って簡単に準備でき、これ
は色々な気体の一時保管にも利用できます。

エネループなど(岡田)

 エネループという名の2次電池を利用したかいろを、教材として購入した。ひとつはニ
ッケル水素電池(1.2V)が、もうひとつはリチウムイオン電池(3.7V)が組み込ま
れ、500回ほど充電して使用できる。
 前者では、吸蔵合金の水素が電子を与え
  H2 + 2OH- ―→ 2H2O + 2e-
水酸化酸化ニッケル(V)と水が電子を奪う。
  e- + + NiOOH +H2O ―→ Ni(OH)2 + OH-
この電池は安全性が確認され、ハイブリッドカーにも利用されてきた。
 後者では、黒鉛の層間にドープされたリチウムイオンが脱ドープして電子を与え
  C(Li+ ,e- )―→ C + Li+ + e-
  黒鉛(ドープ状態)   黒鉛
酸化コバルト(W)がリチウムイオンをドープして電子を奪う。
  e- + Li+ + CoO2 ―→ CoO2(Li+ ,e- )
        酸化コバルト(W) 酸化コバルト(W)(ドープ状態)
この電池は軽量であることを活かし、携帯電話やパソコンに組み込まれている。
 ちなみにリチウムを負極に使う2次電池は、充電のときに復活するリチウムが針状結晶
になって伸びてショートしてしまうため実現できず、代わりにリチウムイオン電池が工夫
されたそうです。
 リチウムイオン電池は発火事故が問題になっていますが、船橋さんは携帯の電池が異常
に膨らんで取り替えてもらったことがあったそうです。

 話は変わりますが、ダイススタッキングが気に入った岡田さん、さいころキャラメルと
ナビスコのチップスターの筒を使うことを思い付き、4個積みまで成功させました。

新しい電池3題(林まさ)

 先進科学塾で「電池のしくみを徹底解明!」という講座を開くため、電池にこだわって
います。濃淡電池は実験できるようになりましたが、今回は別の新しい電池を紹介しまし

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た。
(a)非金属だけの電池
 炭素板にクッキングペーパーを載せ、10%硫化ナトリウム水溶液を浸み込ませ、セロ
ハンを被せる。さらにクッキングペーパーを載せて2%ヨウ化カリウム水溶液を浸み込ま
せ、粉末にしたヨウ素を振りかけてもう1枚の炭素板を被せる。
 これでソーラーモーターが回り、同時に豆電球を点けることができた。電圧は1.06V
であった。ちなみに始めは前回紹介した「寒天塩橋」を使ったが、セロハンに代えても何
ら問題がなかった。
 反応式は次のようである。
  負極  S2- ―→ S + 2e-
  正極  2e- + I2 ―→ 2I-
要するに電子を与えるのは、金属だけでなく陰イオンもその候補者である。同様に電子を
奪うのは、陽イオンだけでなく非金属もそうである。だから非金属だけでも電池はつくれ
る。硫化物イオンはヨウ化物イオンより電子を与えやすい(間違いを恐れなければ、イオ
ン化傾向が大きい。)
 付け加えると、生成する硫黄は硫化ナトリウムと多硫化物をつくるので、固体として析
出することはない。
  Na2S + xS ―→ Na2(x+1)
またヨウ素は一部がヨウ化物イオンと反応して一時的に三ヨウ化物イオンになって広がる。
  I2 + I- ―→ I3-

 ヨウ素・ヨウ化カリウム水溶液ではどうかという意見があったので、後日に調べてみる
と、パワーは充分ですが長持ちしないことが分かりました。たぶん三ヨウ化物イオンがセ
ロハンのそばにあって硫化物イオンと直接反応して消耗していくのではないでしょうか。
 ちなみにヨウ化カリウム水溶液を食塩水にしてヨウ素を振りかけると、パワーがすこし
落ちました(長持ちはする)。
 イソジンをクッキングペーパーに浸み込ませると、パワー不足になりした。これはイソ
ジンの電導性が小さいためと考えられます。そしてペーパーには食塩水を浸み込ませ、ヨ
ウ素の代わりにイソジンをかけると、ソーラーモーターが回るくらいのパワーは得られま
した。
(b)鉄電池
 炭素板にクッキングペーパーを載せ、5%塩化鉄(V)水溶液を浸み込ませ、セロハンを
被せる。さらにクッキングペーパーを載せて2%硫酸鉄(U)水溶液を浸み込ませて鉄板を
被せる。
 これもソーラーモーターが回り、同時に豆電球を点けることができた。電圧は1.04V

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であった。ちなみに硫酸鉄(U)水溶液は食塩水に代えてもよいです(どうせ鉄(U)イオン
は反応しないから)。
 反応式は次のようである。
  負極  Fe ―→ Fe2+ + 2e-
  正極  e- + Fe3+ ―→ Fe2+
いわゆるイオン化傾向で出てくる鉄は鉄(U)イオンができる場合の反応で、このイオンが
鉄(V)イオンになる
    Fe2+ ―→ Fe3+ + e-
「イオン化傾向」はかなり小さいため、反応するのは鉄と鉄イオンだけという電池が可能
になる。ちなみにこれは銅のイオン化傾向より小さいので、次の反応によりエッチングが
できる。
  Cu + 2Fe3+ ―→ Cu2+ + 2Fe2+
 なお私は電池の概念を「負極で電子を与える反応が、正極で電子を奪う反応が起こるし
くみ」として展開しています。イオン化傾向はそこに留めず、「電子を与える・奪う」と
いうことに注目させていきます。
 また酸化還元電位が話題になりました。これは関係物質が標準濃度にあり反応が平衡状
態(電流が流れていない)にあるときの起電力で、ダニエル電池は電流をわずかにすれば
この条件を満たします。しかしボルタの電池のような場合は電圧は速度論的に決定され、
1.1Vという電圧が亜鉛と銅の酸化還元電位の差に一致しているのは単なる偶然です。
(c)電極がナトリウムの電池
 非水極性溶媒のテトラヒドロフラン C48O 5mLに過塩素酸銅 Cu(ClO4)2
0.5gを、同じ溶媒8mLに過塩素酸ナトリウム NaClO4 0.4gを加えて、それぞ
れ加熱溶解する。
 銅板にクッキングペーパー(4×8cm)2枚を載せ、前者を浸み込ませる。シャーレ
にクッキングペーパー3枚を置いて後者を浸み込ませておき、前のペーパーに重ねる。そ
してナトリウムの角柱を置き、テスターで電圧や電流を調べ、ナトリウムを動かして大き
い電流(20mA以上)が得られたら、その状態でソーラーモーターにつなぐと、よく回
った。
 反応式は次のようである。
  負極  Na ―→ Na+ + e-
  正極  2e- + Cu2+ ―→ Cu
ナトリウムは水が厳禁であるが、正極側溶液の過塩素酸銅は六水和物でここにはすこし水
が含まれる。
 なおモーターがすぐに回り始めない理由は現時点ではよく分からない。過塩素酸塩やテ
トラヒドロフランが別の反応をしているかもしれません。

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 ナトリウムを負極に使う2次電池(NAS電池)が開発されており、業務用に利用され
始めている。

時計反応の廃液処理(堀)

 一昨年に「科学の祭典」で取り上げた時計反応(通信07−9を参照)を授業でも使っ
てみた。その廃液処理において、そのままチオ硫酸ナトリウムを加えるとしばらくしてま
たヨウ素による発色が起こる。炭酸ナトリウム(あるいは水酸化ナトリウム)を加えて塩
基性にしておいてチオ硫酸ナトリウムを加えるとそういうことは起きない。
 これは時計反応の成り立ちに係わっている。反応は次の2つである。
  2I- + H22 + 2H+ ―→ I2 + 2H2O  (1)
  I2 + 2S232- ―→ 2I- + S462-    (2)
反応(1)に比べて(2)が圧倒的に速いため、チオ硫酸イオンが反応して無くなるまで
は、デンプンと発色反応するほどのヨウ素は生成しない。そして反応(1)が一定の速度
で進むために、過酸化水素の物質量はチオ硫酸イオンの33倍になっている。つまりチオ
硫酸イオンが無くなった時点で、反応式の係数も考慮して、過酸化水素は1/66しか減
少せず、濃度は一定であったと見なせる。過酸化水素を2倍、3倍と薄めて反応させても
1/33あるいは1/22しか減少しない。これなら過酸化水素の濃度に比例してそれぞ
れ一定の速度で反応が進む。つまり過酸化水素が圧倒的に過剰に加えられている。またヨ
ウ化カリウムもチオ硫酸イオンの物質量の10倍が使われている(反応速度が小さくなり
過ぎないためであろう)。こうして発色時点ではまだ大量の反応物質が残っている。
 ところで反応(1)には水素イオンも関係している(これは緩衝作用で濃度が一定に保
たれる)。これを発色間もない内に中和してつぶしてしまえば、反応はストップしてヨウ
素はもう生成しない。こうしておけば格段に少ない量のチオ硫酸ナトリウムで廃液処理が
できるわけである。
 なおそのままチオ硫酸ナトリウムで処理した場合に、発色が水面のビーカー器壁に接し
た部分から始まった。これはチオ硫酸ナトリウムの結晶が底中央に沈んでいて少しずつ溶
け出しているためと考えられます。



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