08.5
事務局:林 正幸
MOLの会通信08−5号
今回は岡田、田中、林まさ、福島、船橋の5名が参加しました。話が弾みすぎて船橋さ
んの、銅なべを使ったバケツ電池の検討ができませんでした。悪しからず。
セルロイド物語(岡田)
今年の科教協石川大会のレポートのために、ホームページなどでセルロイドの歴史を調
べてみた。
セルロイドは1862年にイギリスのアレクサンダー・パークスによって発明され、3
年後にアメリカで工業化され、セルロイドという名称が付けられた。日本には1877年
に輸入され、1905年から工業化された。
20世紀半ばまではセルロイドとベークライトがプラスチックの主流であったが、現在
ではピンポン球の他には、ギターのピック、めがねのフレーム、万年筆、パチンコ台の装
飾がある。
セルロイドは発火しやすく、白木屋火災や大日本セルロイド工場火災などの惨事をまね
き、また戦時には火薬工場に転用された。
1954年にはアメリカでセルロイド玩具が禁止され、国内での生産は1994年に終
了した。
「青い目の人形」「林芙美子の放浪記」などの話題は、8月の科教協大会までのお楽し
みとします。
なお岡田さん、現在も細々と生産されている平井玩具製作所のセルロイド人形を入手し
て披露してくれました。
硫化水素(岡田)
最近悲しいことで有名になってしまった硫化水素の発生。六一〇ハップという入浴剤に
サンポールという酸性洗浄剤を加えると発生し、たとえば硫酸銅水溶液に吹き込むと黒色
沈でんができる。
CaSx + 2HCl ―→ CaCl2 +(x−2)S + H2S
これはやや単純化して見れば、弱酸の塩に強酸を加えると弱酸が生成する例であり、高校
の化学を学習すれば理解できる反応である。
新聞などで誤って塩素系漂白剤と書いたりしているが、これを加えても硫化水素は発生
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しない(酸化還元反応で硫黄ができることはある)。また入浴剤でも通常のものは、たと
えばバスクリン(炭酸塩を含む)では気体は発生しても二酸化炭素であり、石灰水に吹き
込むと白濁する。しかし問題はない。
Na2CO3 + 2HCl ―→ 2NaCl + H2O + CO2
ちなみに硫化水素は呼吸酵素を阻害して組織中毒性低酸素症を起こし、シアンと同程度
の強い毒性を持つ。1000ppmでは、数呼吸で失神、昏倒、死にいたる(「中毒百
科」より)。
他にも、生徒から「アルカンはどこまで塩素化されるのか」という質問を受けた。エタ
ンは薬品カタログから6つの水素がすべて塩素に置換され得ることが分かったが、プロパ
ン以上はどう調べたものだろうか、と提起された。
メタンでは塩素化されるほどラジカルになりやすく反応しやすくなる傾向がある。しか
しプロパン以上では立体的障害も生じてくるだろう。
ちなみに CCl2F2 はフロン−12と命名されるが、数字の意味は、左が(水素の数
+1)で水素を含まない、右がフッ素の数である。3桁、4桁の数字もありややこしい。
またメタンの光塩素化の実験も話題になりました。以前に私はメタンと塩素をポリ袋に
入れて、ブラックライトでもうまく行かず、やむなくバーナーの炎で爆発させました。使
い捨てカメラのストロボを光らせるとうまく行くそうです。
色をどう教えるか(船橋)
光が物体に当たって色が見える。物体は光の一部を吸収し、残りを反射する。しかも反
射した光を色として認識するのは色覚の作用である(光が本来的に色を持つのではない)。
このことを納得するのは、理科の先生でも容易ではない。
そこでひとつの壁が白色で他は黒色の暗箱を作り、小さい穴からのぞくと、白色の壁が
黒色に見える。光が当たらないと色は生まれない。次に赤い物体を入れてもう一つの小さ
い穴から白色光を物体にあてると、白色の壁が赤色に見える。赤色の光が当たれば、白色
は赤色になる。
光の3原色の実験に、3色LED(1本に3色が組み込まれ、キャップを被せて見る)
と赤、緑、青色の下敷きを使う。3つのスイッチを入り切りして3原色が、下敷きを通し
て見えるか調べる。また加法混色してマゼンタ、黄色、シアンを見せる。しかしほとんど
のLEDは単色ではなく、とくに青色は下敷きで見えてしまう。
ちなみに絵の具の3原色のマゼンタ、黄色、シアンは、光の3原色のどれかを吸収する
ものである。
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ホットメルトボンドのスチックの断面に白色光を当てて横から見ると、近いところは青
色、離れるにつれて黄色、オレンジ色となる。セロテープで2本つなぐと効果的。これは
レイリー散乱であり、微粒子による散乱の強さは振動数の4乗に比例する。つまり青色は
散乱されやすく、黄色やオレンジ色は透過しやすい。
ちなみに光の反射は一定以上の大きさの面がないと起こらない。
また金属は細かくなると黒色になる理由も話題になりましたが、はっきりしません。反
対に硫黄は細かいと白色です。
分圧の法則(林まさ)
圧力計の表示をミリアンメーターからデジタル表示に変えようということで、田中さん
の協力を得てやっと昨日可動するようになった。
備考:この「電源・デジタル表示装置」と対応する圧力計の設計・製作については、別の
場で報告する。
この装置を利用して、2つの条件でメタノールの蒸気圧を計測する。始めに圧力計を
50mL注射器を使って1〜1.5atmに調整する。そして耐寒透明チューブとコック付
きガラス管を通したゴムせんの、チューブに圧力センサーを差し込み、シールテープを巻
いて250mL試薬びんに締める。この首にシャックル(建築器材)をおもりとして付け、
500mLビーカーに入った水にびんの口を除いて浸け、すこし加熱して30℃にする。
ここでコックを閉め、5mL注射器にメタノール1mLを採り、針をゴムせんに刺してび
ん内に注入し、圧力変化を計測する(注射器は刺したまま)。今回は1.180atmであ
った。蒸気圧は0.180atmである。
次に圧力計を0.5〜1atmに調節する。マイコン搭載のこの装置は、テンキーで入力
してレンジなどを切り換えることができる。ちなみに圧力センサーはどちらも同じゲージ
圧−0.5〜0.5atmのものである。新しい試薬びんにゴムせんを締め、30℃の水に
浸け、水流ポンプで約0.5atmまで減圧してコックを閉める。これにメタノール1mL
を注入して圧力変化を計測する。なおわずかずつ空気が漏れて入る。今回は、注入の直前
が0.540atm、直後が0.740atmであった。この場合の蒸気圧は0.200
atmである。
参考:実のところ私自身が新しい装置に不慣れのため、後半では調整がうまく行かず、用
心に持っていった古い圧力計を使った。後半の記述は話の流れが分かりやすいよう
に、一部を脚色している。
これで空気の圧力は蒸気圧に(あまり)影響しないことが確認できる。ある気体の振る
舞いは、他の気体の存在の有無に関係しない。そして全体の圧力は成分気体の分圧の合計
になるという「分圧の法則」が引き出される。
またこの実験により、たとえば水の場合、空気があっても水蒸気の分圧がその温度にお
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ける水蒸気圧になるまで、蒸発することが納得できる。したがって開放系では常温におい
ても水がすべて水蒸気になることは可能であり、洗濯物が乾くわけである。
ちなみに水の内部は話が異なる。液体は分子がほぼ接触して押し合っているので、分子
が空気中に飛び出すことはできない。そして1atmという圧力が掛かっており、水蒸気
圧が1atmに達する100℃になると、内部で蒸発して泡になることが可能になる。つ
まり沸とうする。話を戻すと、表面の分子は見上げると青天井で、エネルギーさえあれば
いつでも水蒸気になれる。
高分子吸水球(船橋)
100均で「プランツボール」(高分子吸収球)というものを入手した。吸水ビーズを
大きくしたもののようで、水を吸ってビー玉くらいになっている。
この吸水球をコップに入れて水を加えると消えてしまう。水がほとんどの吸水球の屈折
率は水とほぼ同じである。
商品の説明によると、アクリル酸( CH2=CHCOOH )とアクリル酸ナトリウムが
重合しておりで、高分子はゆるく橋かけされている。
高い吸水能力は、カルボキシレートイオン( −COO^- )とそのまわりに拘束されてい
るナトリウムイオンが、水和や溶解のために水を分子内に呼び集めることによるのでしょ
う。ちなみに教科書によっては、高分子につながっているカルボキシレートイオンどうし
の電気的反発で網目が広がると説明しているが、側にはナトリウムイオンも存在するので
おかしいと思います。
参考:商品では高分子内に水が「浸透」すると説明している。
吸収球に6mol/L塩酸を加えると、ゆっくりしぼんでいく。この現象は吸水ビーズで
は顕著である。これは強酸の添加により、弱酸の塩であるカルボキシレートイオンがカル
ボキシ基( −COOH )にもどり、ナトリウムイオンは解放されて高分子の外に放出さ
れ、吸水能力を失うためでしょう。
この高吸水性高分子は、今年の「科学の祭典」のひとつのテーマにしようと話し合いま
した。
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