06.9
事務局:林 正幸
MOLの会通信06−9号
今回は岡田、尾張部、河合、鈴木とし、出口、林まさ、船橋、堀の8名でした。始めに、
近づいている科学の祭典の最終打ち合わせもしました。
pHと化学反応(林まさ)
講座プラン「酸と塩基」の原案がほぼできて、特徴的な2つの実験を紹介しました。
pHという数値は、水素イオンのモル濃度が2倍、3倍となることではなく、モル濃度
の桁が2倍、3倍となることに注目して定義される。反応速度は別として、化学ではそれ
によって目に見える変化が現れる。その意味を確かめる実験である。
1mol/Lの塩酸と水酸化ナトリウムを使って、pHが0,2,4,7(これは水道
水),10,12,14の水溶液を準備し、試験管に1/3ずつ入れる。これに0.01
mol/L過マンガン酸カリウム1mLずつを加える。続いて2%チオ硫酸ナトリウムを1
mLずつ加える。すると次のように変化した。
pH 0:無色になり、やがて白色に濁る
2:無色になる
4:褐色に濁り、一部が沈でんになる
7: 同上
10: 同上
12: 同上
14:緑色になる
過マンガン酸カリウムとチオ硫酸ナトリウムは酸化還元反応をする。過マンガン酸カリ
ウムは、含まれる過マンガン酸イオン MnO4- が赤紫色である。そしてpHが0や2の
酸性では、ほぼ無色の2価のマンガンイオン Mn2+ に変化する。pHが4から12の中
性およびそれに近い領域では、褐色の酸化マンガン(W) MnO2 に変化し、これは水に溶
けにくい。pHが14の塩基性では、緑色のマンガン酸イオン MnO42- に変化する。こ
れに対応してチオ硫酸ナトリウムに含まれるチオ硫酸イオン S2O32- はジチオン酸イオ
ン S4O62- に変化する。さらにこれとは別にチオ硫酸ナトリウムは、酸性では硫黄が生
成する反応も起こる。硫黄の微粒子は白色である。
Na2S2O3 + 2HCl ―→ 2NaCl + H2SO3 + S
ただし過マンガン酸カリウムがあるので、亜硫酸は硫酸になるはずである。なお温度が低
いためにこの反応は起こりにくかった。冬場は5%の水溶液を使うべきである。
同様に、35%過酸化水素水1mLずつを加えると、pH14ではすこし酸素が発生し
た。これから過酸化水素は、塩基性では分解しやすいことが分かる。消毒薬のオキシフル
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(3%過酸化水素)は、リン酸を加えて分解を防ぐ。
続いて大根の汁1mLずつを加えると、pHが4から12の水溶液で酸素がよく発生し
た。pH14の水溶液の泡の発生状態は変わらなかった。生物の体内には活性酸素を分解
するためのカタラーゼという酵素がある。実験では、カタラーゼはpH4から12で酵素
活性を示した。
水素イオンのやり取り(林まさ)
ブレンステッドの定義では酸と塩基は水素イオンのやり取りをする。強い(水素イオン
を失いやすい)順に酸を上から並べて水素イオン得失表をつくった。
水素イオン得失表
酸 (共役)塩基 pK
@ HCl ←→ H+ + Cl- −7.0
A H2SO4 ←→ H+ + HSO4- −5.2
B H3O+ ←→ H+ + H2O −1.7
C HNO3 ←→ H+ + NO3- −1.4
D HSO4- ←→ H+ + SO42- 1.9
E H3PO4 ←→ H+ + H2PO4- 2.2
F CH3COOH ←→ H+ + CH3COO- 4.8
G H2CO3 ←→ H+ + HCO3- 6.4
H H2S ←→ H+ + HS- 7.0
I H2PO4- ←→ H+ + HPO42- 7.2
J NH4+ ←→ H+ + NH3 9.2
K HCO3- ←→ H+ + CO32- 10.2
L HPO42- ←→ H+ + PO43- 12.4
M HS- ←→ H+ + S2- 14.0
N H2O ←→ H+ + OH- 15.7
右辺には(共役)塩基が並び、下ほど水素イオンを得やすい。この表で酸と塩基を結ぶと、
右下がりの斜線になればその反応は起こりやすい。右上がりなら起こりにくい。
酢酸ナトリウム、希塩酸、両者の混合物をシャーレで観察すると、混合物ははっきりと
酢酸のにおいがした。ちなみに塩酸の中の酸はオキソニウムイオンである。
CH3COO- + H3O+ ―→ CH3COOH + H2O
リン酸二水素ナトリウムとリン酸ナトリウムに、それぞれ塩化アンモニウムを混ぜて加
熱すると、リン酸ナトリウムの方のみがアンモニアを発生し、においと共にユニバーサル
試験紙でも確認できた。
NH4+ + PO43- ―→ NH3 + HPO42-
アンモニウムイオンとリン酸二水素イオン H2PO4- では右上がりの斜線になる。
二本の試験管で硫化ナトリウムを水に溶かし、それぞれ希リン酸とリン酸水素二ナトリ
ウムを加えると、希リン酸の方のみが硫化水素を発生した。
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リン酸 H3PO4 もリン酸水素イオン HPO42- も、硫化物イオン S2- を硫化水素イ
オン HS- にするが、これを硫化水素 H2S にするのはリン酸でないとできない。
ちなみに酢酸が生成する実験は、においだけでなくたとえば試験紙による確認もできる
ようにしたらという意見があり、希硫酸で試してみました。
pH測定(岡田)
次のpHを計測することで、純水と水道水、強酸と弱酸、塩の加水分解などについて考
えさせる。
・水道水、純水
・塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、アンモニア水(すべて0.1mol/L)
・塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム
酢酸ナトリウム(すべて0.1mol/L)
使うのは万能pH試験紙とpH試験紙セット、そしてpHメーター(ISFET、KS7
01)である。試験紙の方は、万能試験紙でレンジを選んで個別の試験紙を使う。
実験を混乱なくかつ時間内に終わらせるために、B4の記録用紙を準備した。そして色
分けした滴下容器を準備し、これを記録用紙に載せ、計測した試験紙も載せられるように
工夫した(実習教諭の応援あり)。
いま困っているのは、水道水のpHが試験紙では5.5くらい、メーターでは7くらいと
ずれることである。
教材への強い思い入れがあるからこそ、ここまで準備して取り組むのですね。感服です。
中性付近のpHの計測は、わずかな影響が現れやすく難しいですね。たぶん試験紙の計測
の方に問題があるのではないでしょうか。
「原子写真カード」、授業通信など(河合)
「原子写真カード」(仮説社で販売)は、実物の写真と、原子半径、イオン半径(陽イ
オンのみ)、最外殻電子配置が載ったカードで、周期表などいろいろな使い道がある。
ニュートン10月号の付録 ”The Periodic Table in Earth & Sky”はその元素を含む
鉱物の写真と気体の写真が載っている。すべて英語だが、使えそうである。
カーマで2000円の赤外線温度計を手に入れた。測定範囲は−33〜180℃で、こ
の価格なら生徒実験にも提供できる。寒剤の温度も測った。
月2回「だがしかし通信(駄菓子菓子研究室)」という授業通信を出している(最近
「たのドン通信」と改名した)。テーマ(林が適当に書いた)は
・卵を立てる
・新暦の七夕
・旭山動物園
・野菜の断層写真
・アイスクリームが売れ出す温度
・ヒエの生きるチエ
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・北海道の米作
・スイカの成長速度
・転職の意味
・君子方式の絵
次は電子レンジを考えている。
内容の多様さに驚きました。そして最後の「ボク」のコメントが決まっていますね。自
由な発想が培われます。
他にも分子模型にコメント付けて展示したりしているそうです。
光ファイバー、エアロソアラなど(船橋)
残り少なくなってきた色モール付きスチロール球で、大きな金属の柔軟性を納得させる
模型をつくた。面心と体心、体心は串刺しにした。
インターネットを光に変えた。1本の光ファイバーは直径が0.25mm、折れるのを防
ぐため2本の補強コードに挟まれている。曲げるにはほどよくRをつける必要がある。上
りが1317、下りが1550nmの赤外線を使っている。情報は空いている回線を見つ
けて送る。もらったファイバーにレーザー光を当てても通らない。
家庭からのファイバーはどのような装置に接ながっているのかな。パケット通信だから、
情報のかたまりに個人の識別番号が名札のように付いている。ファイバーの先端はどのよ
うに処理するのだろう。
Tomyが販売しているエアロソアラというフェザープレンを2000円で入手した。
自重わずかに3.5g、数分充電すると30秒ほど飛行する。赤外リモコンで操縦できる。
発泡スチロールの機体に、モーター、基板、コイル(電磁石)などが埋め込まれている。
すごいミクロな技術である。ちなみにメイドインチャイナ。
次はトランプのカード当てと、ペットボトルの底から50円玉を中に入れる手品。これ
らは授業に欠かせない技。カード当てには数学の論理が使われている。50円玉は栓と口
の間に挟んでおく。
今度はアクエリアス(堀)
1年前に岡田さんがポカリスエットに含まれるビタミンCをイソジンで調べる実験を紹
介しました(通信05−9号)。アルミ缶と粉末が、ペットボトルや赤ちゃん用に比べて
50倍ほども多く検出されました。
今度はアクエリアスで調べてみた。ところがボトル缶がペットボトルよりいくらか多い
程度だった。
ポカリスエットの缶入りはあまり見かけない。薬局などで売っている。ひょっとして医
療用だろうか(そのためにビタミンCが多い?)。
酸欠、特定化学物質について(出口)
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労働安全衛生法の酸素欠乏症等防止規則では、酸欠と硫化水素の規制をする。酸素欠乏
等とは酸素濃度が18%未満の状態、または硫化水素が10ppmを越える状態を指す。
昔は検知管が主流だったが、今はセンサー付の測定器を用いることが多い。酸欠の気体は
偏って存在するため、縦方向と横方向を、それぞれまんべんなく測定して確認しなくては
ならない。硫化水素は薄ければ特有の匂いがするが、高濃度過ぎると鼻が麻痺して匂いを
感じなくなってしまうので、入室・入坑するときは安全性を十分確認する。換気には新鮮
な空気を用いる。場所によっては排風機等を用いて、強制的に換気を行う。純酸素は中毒
や思わぬところで酸化反応を促進させる危険性があるため使用してはならない。
法律に定める危険場所は次のようである。
1 上層に不透水層がある砂れき層、第一鉄塩類または第一マンガン塩類を含む地層、メ
タン、エタン、またはブタンを含有する地層、炭酸水を湧出する地層、腐泥層
2 使用されていない井戸
3 暗きょ、マンホール、ピット
4 密閉された鉄製ボイラー、タンク、反応塔、船倉
5 石炭、亜炭、硫化鉱、鋼材、くず鉄、原木、チップ、乾性油、魚油を入れてあるタン
クなど
6 略
7 穀物や飼料の貯蔵、果菜の熟成、種子の発芽、きのこ類の栽培のためのサイロ、むろ、
倉庫など
8 しょうゆ、酒類、もろみ、酵母を入れてあるタンクなど
9 し尿、腐泥、汚水、パルプ液を入れてあるタンクなど
10 ドライアイスの冷凍庫、水セメントのあく抜きを行っている冷凍庫など
11 ヘリウム、アルゴン、窒素、フロン、炭酸ガスのボンベ、タンク、反応塔、船倉
経験上、金属部分がさびやすい場所は、硫化水素が発生していることが多い(さびの原
因が別の要因の場合もある)。微生物の酸素消費量は格段に大きい。酸欠は、一呼吸で即
死する場合がある。また、意識不明にならなくても、気がついた時には自力での脱出は不
可能となり、結果的に死に至るダメージを受けることが多い。単独での救出は危険である。
あわてて助けに入り、一緒に被災してしまって逆に救出が遅れる事故も多い。
温泉地での硫化水素による中毒死も話題になりました。ちなみにこの種の技能講習のテ
キストは、中央労働災害防止協会のホームページの「図書」の中の技能講習関係テキスト
等
http://www.jisha.or.jp/order/tosho/index.php?mode=list&use_id=2
に紹介されていて、注文もできるようになっています。
特定化学物質は第1類から第3類まである。高校化学などで身近なものを上げると
第1類(7種)
塩素化ビフェニル(PCB)
第2類(35種)
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アクリロニトリル、アルキル水銀化合物、エチレンオキシド、塩化ビニル、塩素、
オーラミン、カドミウムおよびその化合物、クロム酸およびその塩、五酸化バナジ
ウム、コールタール、シアン化カリウム、重クロム酸およびその塩、水銀およびそ
の無機化合物、フッ化水素、ベンゼン、マンガンおよびその化合物、硫化水素
第3類(9種)
アンモニア、一酸化炭素、塩化水素、硝酸、二酸化硫黄、フェノール、ホルムアル
デヒド、硫酸
この他に毒物・劇物、有機溶剤、鉛などの規制がある。
備考:アスベストは他の化学物質に比べて極めて毒性が強いという理由から、今年から、
特定化学物質ではなく「アスベスト」として別途規制された。
各試薬のMSDSは、各試薬メーカーに問い合わせれば入手可能である。試薬のラベル
に毒物や労働安全衛生による有害物質等の記載があるものは、入手して、取り扱い法を確
認するのがよい。
調べてみると、MSDSは ”Material Safety Data Sheet”で「化学物質等安全性デー
タシート」などと訳されます。取扱者に化学物質を安全に取り扱うための情報をきちんと
伝えていく活動として作成されています。
化学の教師もこの分野に無関心ではいられないですね。
なお、「ぶるぶるねずみ」と「くるっぴー」というおもちゃの紹介もありました。
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