96.7.7
事務局:林 正幸
MOLの会通信96−7号
前回から間がなかったせいか報告は少な目でしたが、かえってゆったりとできてよい面
もありました。参加者は、岡田、河合、富田、林ひろ、林まさ、村山夫妻、船橋、水谷で
した。
水素の噴水(船橋)
図のようにセットして水素の入った容器を
かぶせると水が20cmくらい噴き上がる。
素焼き円筒は業者から、ガラス管は自作した。
容器は500gのポリの試薬瓶を切りぬいた
もの。これは水素分子の飛行速度が空気の酸 図1
素分子や窒素分子より何倍も大きいため、素
焼きの小さな穴を通して内部に入り込む方が
外に出てくるより大きく、内部の分子数が増
加して圧力が高まり、数秒間の噴水になる。そして容器を外すと逆流も見られる。
すべての気体の飛行(並進)の平均の運動エネルギーは同一で、次の関係式が成り立つ。
(1/2)mv2 = (3/2)kT {1}
ここでmは分子の質量、kはボルツマン定数である。これをアボガドロ定数倍すると次の
ようになる。
(1/2)Mv2 = (3/2)RT
ここでMは分子量、Rは気体定数である。変形すると
v = (3RT/M)(1/2)
つまり、分子の飛行速度は分子量の平方根に反比例することが分かる。水素の分子量は2、
酸素は32だから、両者の飛行速度は4倍違うのである。これは拡散速度に関わる問題で、
似た実験にアンモニアと塩化水素の拡散速度の差を観察するものがる。つまりガラス管の
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両側に、アンモニア水と塩酸をしませた脱脂綿のせんをして、しばらくすると塩酸側に寄
ったところに塩化アンモニウムの白煙を生ずる。
アボガドロの法則は
どうして成立するか(船橋からの問題提起)
液体や固体では、1mol(6×1023個)の分子が占める体積(原子容にちなんで分
子容と呼んでみよう)は、分子どうしが接触状態にあるのだから1個の分子の体積にほぼ
比例している。つまり小さい分子の分子容は小さく、大きい分子の分子容は大きい。とこ
ろが気体では同温同圧においては、どの分子1molが占める体積も同一である。これは
気体の体積が個々の分子の大きさで決定されるのではなく、その何倍も大きい体積を占め
ている。つまり一定量の気体の体積は、温度が同じなら圧力によって決定されている(ボ
イルの法則)。気体は外からの圧力にバランスするところまで膨張して圧力を下げている
わけだ。それでアボガドロの法則が成立するというのは、たとえば1molの気体分子が
0℃で22.4lの体積を占めたときの圧力はその種類のよらず等しいことを意味している。
それならどうして圧力が等しくなるのか。これは分子運動論の領域で、簡単には高校物
理でも取り上げられる。ポイントを押さえると、ある体積の箱に入れられた分子が壁に与
える圧力は、運動量と力積に関する次の関係式を基にして考えることができる。
Ft = f△mv = f×(2mv)
∴ F = (f/t)×(2mv) {2}
ここで2mvは1回の衝突における運動量の変化であり、fはt秒間の衝突回数である。
(f/t)は分子の飛行速度vに比例するので、結局{2}式は次のように書き直せる。
F = k×v×(2mv) = 4k×(mv2/2)
ここでkは比例定数である。こうして圧力は分子の運動エネルギーによって決定されるこ
とが導かれる。ところがそれは{1}式より分子の種類によらず一定であるのである。
じゃあ、{1}式はどうして成立するのか。それは統計力学の領域だが、別の機会に考
えてみよう。
炭化水素の実験(林まさ)
炭化水素はなかなか実験が組みにくい。素材を当たってみると、アルカンでは卓上こん
ろカートリッジのブタン(一部ブテンなども含まれる)、ヘキサン(石油ベンジンも身近
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にあるが、これは油性溶剤の代表として構造式も示して扱いたいことがある)、ろうそく
のパラフィンである。アルケンではエチレンがあるがこれは発生法で生徒にはやや危険を
伴う。そこで大学時代に使ったことがあるシクロヘキセンを思いついたが、幸い業者から
入手できる。アルキンはもちろんアセチレンである。
燃焼実験はブタンの火炎放射器と、アセチレン爆鳴気がおもしろい。芳香族まで含める
なら、ベンゼンのすすが出る燃焼もよい。もうひとつはろうそく、これはすごい発明であ
る。しんがないところに火を点けようとしてもできない。そこで短めの試験管にろうそく
を入れて加熱する。融解、沸とうの様子が観察できた上、蒸気が試験管の口から出始める
とやっと点火できる。なお偶然に発見したが、火が消えたらろうを水の入った紙コップに
注ぐと発火する。水蒸気蒸留と同じでパラフィンが蒸気になって燃焼しやすくなるのだろ
うか。
付加反応では臭素水がネックになる。臭素を保管するのはいやだが、臭素水を生徒に作
らせればよい。必要最小限ということで、試験管に臭化カリウム0.5gと二酸化マンガン
1gを入れ、1:1の硫酸1mlを加え導管を付けて加熱する。発生する臭素を50ml
の水に吹き込む。一部液体も留出するのでその2、3滴が入ったところで加熱を止め、試
験管はドラフトに移して水酸化ナトリウム溶液を加える。臭素はかき混ぜて溶解する。
この臭素水と、アルカリ性の過マンガン酸カリウム溶液を試験管に入れ、これにヘキサ
ン、シクロヘキセン、アセチレン、酢酸エチルを加えて反応の有無を調べる。
置換反応についてはよい実験がないだろうか。ちなみに、ハロゲン化炭化水素も同時に
登場するので、この中ではジクロロメタンを素材に選び、それでアクリル板を接着する。
レーヴェンフックの顕微鏡(林ひろ)
PETボトルの栓をピント合わせの調節ね
じにするタイプ、昨年は力量講座で中山さん
から紹介された。実際に作ってみるとその見
事さに感動する。まずボトルの栓の部分をカ
ッターで切り取る。ボトルの口にはセロテー 図2
プを貼って内側から、タマネギの表皮などの
サンプルを接着する。栓は火で焼いてプラス
チックの内蓋を取り除き、ドリルで中心に
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1.5mmの穴をあける。他方、ガラス管を加熱して引っ張り、0.5mmほどの毛細管に
する。これを2cmほどの小さな炎で直径2mmくらいの玉にし、短い柄を付けて折る。
これを栓の内側から柄の部分をセロテープで貼って固定するとでき上がり。もちろん玉が
真球に近いほど良いわけだが、いくつか試すとこつがわかる。100倍くらいは優に実現
できる(玉が小さいほど倍率は高い)。自作の顕微鏡による観察は格別なものがあり、生
徒も喜ぶ。
発展途上国の理科教育(村山)
MOLの会としては異色のレポートである。彼はこの5月に理科教育の海外協力として
カンボジアに行ってきた。また彼はそして奥さんもケニアで理数科教師をした経験がある。
途上国では貧しさ故に就職のためにさらに生活を切り詰めて教育に賭ける。ただしその
勉強はあくまで国家試験に合格するためである。カリキュラムは先進国からの直輸入であ
る。学校は施設設備が貧弱である上に、援助された実験器具や薬品もただ保管されている
ことが多い。それを使える教師がいないのである。
カンボジアでは、現地で調達できるもので実験してみせることに力を入れた。たとえば、
オキシフルにレバーを加えて酸素をつくり、線香がポンと音を立てて燃え上がることに、
参加者は「知識としては知っていたが、始めて実際に見て感動した」と応えた。日本で私
たちは生徒の関心を呼ぶために身近な素材を利用するが、そんな努力が意外にも途上国の
理科教育に結びつく。
短期でも長期でも現地に行って活動することが大切であるのは言うまでもない。しかし
同時に、日本に留学して教員訓練を受けられる体制をつくることが望まれる。日本は箱物
が中心だが、「顔が見える援助」こそが必要である。
スライドを交えた報告で、新しい課題に目が開かれた。
本物らしい石けんづくり(富田)
風呂で使うような枠練り石けんをつくりたい。そのためにはオリーブ油がよい。その
20mlに20%水酸化ナトリウム14mlとエタノール15mlを加える。これを湯せ
ん鍋の上の水蒸気浴でかき混ぜながら、均一化しべっこうあめ色で粘りが出るまで加熱す
る。これを冷水で冷やしながらかき混ぜて石けんを析出させる。そして2重のガーゼでゆ
るく絞って水を切る。冷たい飽和食塩水100mlにこの石けんを戻してほぐすように洗
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う。再びガーゼでこして今度はしっかりと絞る。これを蒸発皿でかき混ぜながら煮詰める。
クリーム状になったらクッキー用の型に入れて冷やす。
「科学だいすき」教養講座(河合)
授業後に図書館の主催で、これまで「コロ
ンブスの卵その後」と「重さの不思議」とい
うテーマで企画した。生徒も先生も参加する。
前者では全員が卵立てに成功した。後者では、
図のように一つだけを持つより、空箱2つを 図3
下に重ねて持った方がはっきりと軽く感じる。
その理由は単純ではなさそうである。
高分子吸収体
どういうきっかけだったかは思い出せないが、高分子吸収体が話題になり、いくつか実
験してみた。自重の100倍の水を吸収する能力がある。それに食塩をかけてかき混ぜる
と、吸収した水が吐き出される。それなら砂糖も同じだろうと試したがあまり変化はなか
った。吸収体は3次元のあみ目構造をしていてその小さなあみ目の中に水を保持する。そ
れはあみ目の糸の部分に親水基が結合しているのではなかろうか。とすればその親水基と
食塩や砂糖との水の取り合いになる。 それならあらかじめ食塩が溶けた水は吸収される
だろうか。結果はあまり変化がない。ひょっとしてイオンが優先的に吸着されて吸水力を
失うのではないだろうか。じゃあイオンの動きが見えるよに硫酸銅水溶液を試してみよう。
すると見事に銅イオンが吸収体に取り込まれた。これはなかなか面白い。今度は色の付い
た陰イオンでためしてみよう・・・。ここで時間がだいぶ遅くなっていることに気付いた。
次回までの課題にしておこう。それにしてもすこし時間にゆとりがあったお陰でこんな発
展があったんだ。
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林 正幸と主万子の始めの
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