(林 正幸)


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q99−011

凝固点降下や沸点上昇の原理を教えてください

質 問
 なぜ、凝固点降下や沸点上昇が起こるのか分かりません。計算の仕方などは分かるのですが・・・。いろいろ調べたのですが、原理みたいなものは書いていないので、是非教えていただきたいと思っています。


説 明
 海水は0℃ではまだ凍らない。氷に食塩を加えてかき混ぜると一部が融解して−10℃以下になる。べっこうあめをつくるとき、砂糖水を煮立てて温度計で調べると105℃以上になる。凝固点降下や沸点上昇に関しては面白い現象がいくつも見られます。
 凝固点降下の方で説明してみましょう。純粋な水が0℃で凝固するというのは、その温度では水と氷が共存できることを意味します。0℃では、水が凝固する変化の「勢い」と、氷が融解する変化の「勢い」がバランスしているのです。もちろん0℃より高い温度では融解の勢いが優っており、0℃より低い温度では凝固の勢いが優っています。ここで「勢い」とは理論的には自由エネルギーと呼ばれるものですが、高校の段階では深入りせず文字通りの意味に受け取ってください。
 さて物質が変化する勢いはそのモル濃度に比例すると言えます。正確にはそれは対数を含む関数で書かれるべきですが、分かりやすいように正比例するとして説明します。すると2つの変化の「勢い」は次のように書き表すことができます。
    凝固の勢い=Kf×(水のモル濃度)
    融解の勢い=Km×(氷のモル濃度)
      Kf,Km:比例定数
 ここでモル濃度の意味を確認しておきます。これは1[l g]の溶液(体積)に溶質(注目する物質)が何mol溶けているかを示す数値です。これは注目する物質がどれくらい密に詰まっているかをを表しており、密度に近いものです。したがって純粋な物質のモル濃度も考えることができるのです。たとえば液体の水のモル濃度は次のようになります。
    密度が1g/mlだから、1[l]=1000ml=1000g
    1000g=1000/18=55.6mol
        55.6mol/l
 さて、0℃の氷水に食塩を加えると、食塩はもっぱら水に溶解し氷は元のままです。つまり水のモル濃度だけが小さくなります。そうです、食塩ではなく水のモル濃度が問題であり、食塩のモル濃度が高いほど水のモル濃度は低くなるのです。すると凝固の勢いが劣るようになり、0℃では氷が融解してしまうことになります。
 そして物質が変化する勢いは温度によっても変化します。ここではその内容に踏み込むことはできませんが、氷が融解するとそれに必要な融解熱を自らの熱エネルギーでまかなう結果として温度が降下していき、やがてより低い温度で凝固の勢いと融解の勢いが再びバランスするようになります。そのときの温度が新しい凝固点となります。新しい凝固点が食塩の濃度に影響されるのは明らかで、希薄溶液では凝固点降下が溶質の質量モル濃度に正比例するという近似的法則が成り立つことは学習していると思います。

参考:この説明は99年7月のものを修正しました。


q99−012

勉強法等についてアドバイスなど頂ければと・・・

質 問
 僕は、今学校で化学TBを勉強しています。でも、最近悩んでいました。化学自体は、とっても楽しいのです。勉強していて楽しいのです。大好きなんですが、テストでいい点数が取れないのです。
 そこで化学に関するホームページを検索していたところ、先生のページにめぐり合えました。正直心がわくわくしました。
 先生にもし時間がありましたら、勉強法等についてアドバイスなど頂ければと・・・・・


説 明
 ときどき勉強法についての質問があります。しかしこれは答えにくいものです。試験で点数が取れるための勉強法なら、担当の化学の先生に尋ねるのが一番です。あとはくり返し練習することでしょう。
 他方でペーパーテストでは評価できない、あるいは評価しにくい「勉強」があります。それは化学に対する興味や関心を高めること、実際に実験や研究ができること、疑問を見つけたりその答を探ったりすること、化学に関係する本やテレビ番組などの情報に接すること、環境や平和に対して化学がどうあるべきかを考えること、などです。このようなことを意識して自分流の勉強法を見付けていくことが大切だと思います。もちろん基礎的知識や理論をないがしろにしては、これらのことは前進しません。


q99−013

「水素爆弾」で点火がうまくいかない原因は何でしょうか

質 問
 夏休みの自由研究で水素爆弾の研究をしていますが、点火がうまくいきません。火をつけようとしてもうまく火がつかずに終わってしまいます。何が原因なのかわかりません。


説 明
 自由研究、楽しそうですね。「水素爆弾」について、私のホームページをまだ覗いていないのでしたら、参考にアクセスしてみてください。
    www.zzz.or.jp/masasuma/
「私の好きな実験」の中にあります。
 「火が付かない」理由は、
@缶に空けた穴に水の膜が張っていて水素が出て来ない。
A爆発台と缶の間にすきまがつくってなくて空気が缶に入って行けない。
などが考えられます。
 なお実験は安全のために、先生の指導を受けて行ってください。


q99−014

ベリリウムはどうして融点が低くないのですか

質 問
 「水銀は何故液体なのかについて」(98ー05)を興味深く読ましていただきました。
 純金属のデータ表があって、融点が低い順に基底状態の電子配置を並べかえてみました。なんとなく安定した電子殻の外側に1個か2個の価電子という配置が伺えました。
( 添付画像ファイル)(略)
 それで質問ですが、Liは低融点ですがBeは1200℃くらいで低融点といえないと思うのです。電子配置的には1s2s各2個で安定した電子殻のような気がするのですが、どのような理由によるのでしょうか。


説 明
 融点の低い順に電子配置の表を作って自分で考えてみるのは、素晴らしいことだと思います。ただし「安定した電子殻」というのは、もうすこし複雑です。「98ー05」にも書いたように、ポーリングの「一般化学」の「元素の電子殻および副殻のエネルギー準位図表」(上巻p132)などを調べる必要があります。たとえば水銀は、「安定した電子殻」の外側に2個の6s電子があるのではなく、6s、5d、4fがほぼ同じエネルギー準位なのです。
 金属の融点は金属結合の強さに関係しますが、それは原子半径にも依っています。たとえばアルカリ金属(1族、水素を除く)の価電子はすべて1個ですが(表ではCsとRbが違っていました)、半径が小さいほど、つまり周期が小さくなるほど、金属結合は強くなり、融点も高くなります。
  周期    2   3   4   5   6
       Li  Na   K  Rb  Cs
  融点    180   98   64   39   29  [℃]
  半径   1.55  1.90  2.35  2.48  2.67  [A:オングストローム]

 さてベリリウムですが、その原子半径が1.12Aと小さいのです。それに加えて、アルカリ金属と違って、価電子が2個です。価電子の個数が増えると金属結合が強くなることは先の「98−05」に書きました。こうしてベリリウムの融点は高くなります。
 それにしても大まかな説明にならざるを得ません。これを手がかりに時間をかけて勉強してくれることを期待します。


q99−015

「カレー事件」の亜ヒ酸を同定した原理はどのようなものか

質 問
 和歌山カレー事件で、「まずX線を照射することによって、亜ヒ酸の中に含まれていた不純物の金属類の含まれている割合を出し、それが林容疑者が持っていた亜ヒ酸と、カレーの中に含まれていた亜ヒ酸で一致したため、逮捕に踏みきった。」という記事を見たのですが、その原理はどのようなものなのでしょうか。


説 明
 私もテレビでそのニュースを見たように記憶しています。これは蛍光X線分析という方法だと思います。  原子にX線を照射すると、それぞれ固有のX線を放出し、これを特性X線と言います。モーズレーはその波長から原子番号を発見したのです。
 原子にX線を照射すると電子殻の電子がたたき出されます。特性X線に関係するのはK殻の電子です。その空になったところへ外側のL殻の電子が落ち込み、両方の電子殻のエネルギー差に相当するX線が放出されます。
 もうすこし説明しましょう。原子核のまわりにはとびとびの電子の軌道があり、これは電子殻と呼ばれ外側ほど高いエネルギーを持っています。そして同じK殻やL殻でも、原子に依って持っているエネルギーは異なります。原子番号が大きい、つまり陽子の個数が大きい原子核ほど電子を強く引きつけるので、両方の電子殻のエネルギー差は大きくなります(このあたり高校生には計算が難しいので、直観的に受けとめましょう)。
 もうひとつはX線のエネルギーについてです。X線を含め、光や電波はまとめて電磁波と呼ばれます。電磁波はその名のとおりに波動ですが、現代物理学はそれが粒子(光子)でもあることを示しました。そして光子1個の持つエネルギーは、それを波動として観察したときの振動数に比例しているのです。こうして特性X線の振動数(実際には波長が測定される)を調べれば、そのエネルギーが分るのです。ちなみに、放出される特性X線はそのエネルギーが照射したX線より低く、このような場合には蛍光X線と呼ばれます。
 こうして蛍光X線の波長とその強度を測定すれば、それが含まれる原子の種類とその含有率に対応することが分るでしょう。


q99−016

マンガン乾電池はどのように反応し、どんな物質になるのか

質 問
 自分は今マンガン乾電池がどのように反応し、その後どんな物質になるのか調べています。
 このことで、一体どうなるのかがよくわからないので、よかったら教えてください。


説 明
 マンガン乾電池はたいへん身近な電池ですが、その反応はやや複雑なので高校の教科書ではくわしくは扱われません。そればかりか、今は生産されていない古いタイプが図示されていることもしばしばです。
  まずマンガン乾電池のしくみをやや単純化して説明しましょう。黒鉛粉末と酸化マンガン(W) MnO2 を混ぜて塩化亜鉛 ZnCl2 水溶液で練ります。これを黒鉛棒に巻き付けて円筒形にします。そしてやはり塩化亜鉛水溶液を染ませたセパレータと呼ばれる紙で包み、亜鉛筒に詰め込むのです。
 電池は電流を発生させますが、具体的には負極から電子 e- が流れ出し、それが正極に流れ込みます。つまり負極で電子を与える(発生させる)反応を起こし、正極でそれを奪う(消滅させる)反応を起こします。
 マンガン乾電池の負極ではまず次の反応が起きます。
    Zn −→ Zn2+ + 2e-
しかし実際には亜鉛イオンがさらに塩化亜鉛水溶液と複雑に反応するにで、負極全体の反応は次のようになります。
    4Zn + 8H2O + ZnCl2 −→
          ZnCl2・4Zn(OH)2 + 8H+ + 8e-  (1)
 正極では、塩化亜鉛水溶液は加水分解して弱酸性になっているため、まず水素イオンが次のように反応します。
    2e- + 2H+ −→ H2
しかし水素がさらに減極剤である酸化マンガン(W) と反応するので、正極全体の反応は次のようになります。
    8e- + 8H+ + 8MnO2 −→ 8MnO(OH)  (2)
 電池全体の反応式は(1)と(2)を積算して
    4Zn + 8H2O + ZnCl2 + 8MnO2 −→
          ZnCl2・4Zn(OH)2 + 8MnO(OH)
となります。
 高校化学をどこまで勉強しているかに依りますが、ちょっと難しいかもしれません。できる物質の名称も簡単ではありません。


q99−017

豆腐が固まるのは ”塩析”ですか

質 問
 私は自由研究で豆腐について研究しています。そのサブタイトル(?)は ”なぜにがりで豆腐は固まるのか”です。豆腐を作ってみたりもしました。そして ”さあ!なぜ固まるのか!?”と、本やHPで調べてみました。
 本ではなかなか見つからなかったのですが、HPではいくつか見つけることができました。しかし、なぜだか違うのです。私も中二ですので、まだあまり詳しくは分からず、コロイドや塩などについて勉強しているところなのですが・・・。
 豆腐が固まるのは ”塩析”という現象である。
といくつかのHPでは紹介してありました。しかし、それは違うというHPもありました。
まず一つ目の質問は ”塩析”とはどのような現象なのですか?
そして二つ目の質問は、どちらが正しいのでしょうか?


説 明
 自主的に勉強するのは、難しい面もありますが、分ったときの喜びはひとしおと思います。
 さて「豆腐が固まる理由」ですが、私の仲間にあなたのメールを添付して意見を求めてみました。
 あなたの1つめの質問に対して
    ”塩析”とはどのような現象なのですか?
 あまり身近によい例がないのですが、高校の教科書では石けんづくりが出ています。石けんはサラダ油のような油脂と呼ばれる物質に水酸化ナトリウム水溶液を反応させてつくります。このままでは石けん分子は水に溶けたままですが、飽和食塩水を加えると分離して固体になります。
 この意味ですが、かんたんに言うと石けん分子は水分子に取り巻かれた状態で水に溶けています。分子やイオンが水に取り巻かれることは水和(すいわ)と呼ばれます。これはまるで水分子の服を着たような状態です。そして水和した物質は水に溶けやすいのです。食塩つまり塩化ナトリウムは、陽イオンのナトリウムイオンと陰イオンの塩化物イオンに分かれて水に溶けます。これらのイオンも水和して溶けます。そして飽和食塩水の中のイオンはもっと分厚い服にするために、石けん分子を水和していた水分子を奪うのです。こうして石けんは水に溶けにくくなり、分離するのです。塩析で重要なのは、大量の塩化ナトリウムのようなイオン性の物質を加えることです。少量では自由に動いている水分子を水和するだけで、他の物質を水和していた水分子を奪うまでには至らないからです。
 あなたの2つめの質問に対して
    「豆腐が固まるのは ”塩析”という現象である」というのは正しいのですか。
 豆腐は大豆からつくった豆乳が原料です。豆乳はタンパク質分子などが水に溶けたものです。そしてあなたは実際に豆腐をつくってみたから分るでしょうが、それを固めるにがり(塩化マグネシウム)や石こう(硫酸カルシウム)などは少量で済みます。だから、豆腐が固まるのを「塩析」とは言えません。
 このような誤解が生じるのは、高校の教科書に問題があります。いまでも豆腐が固まるのは塩析と読める記述があります。これは「伝統的」な誤りです。実はこのようなことはいくつもあるのです。教科書に書かれると権威付けられてしまうからでしょう。そして私自身ができるだけそのような間違いをしないように注意すべきなのです。
 タンパク質は生命活動を営む分子ですから、その振る舞いは複雑です。したがって豆腐が固まるのもいくつかの理由があるようです。私の仲間からの情報をもとにかんたんな説明をしてみます。
 タンパク質分子はまわりの条件が変化すると、その形が変わって性質も変化してしまいます。つまり生命活動を営むはたらきを失い、言わば死んでしまいます。これを「タンパク質の変性」と呼びます。身近な例では、玉子をゆでると固まります。これは熱による変性です。ほかに酸やアルカリを加える、アルコールを加える、塩類(塩化マグネシウム、硫酸カルシウムなど)を加える、重金属イオン(水銀イオン、鉛イオンなど)を加えるなどが変性の原因になります(タンパク質の種類にも依ります)。豆乳は、それをつくる過程で熱による変性を受け、次ににがりなどを加えると塩類による変性を受けて、水に溶けにくくなって固まると言えそうです。


q99−018

なぜ水は0℃の密度より4℃の密度の方が高いのか

質 問
 何故水は0℃の時の密度より4℃の時の密度の方が高いのか、教えてください。


説 明
 水は身近な物質ですが、他の物質に比べていくつも特徴があります。あなたの質問は水分子の分子間力、つまり分子どうしの引力の特徴から説明できます。
 水分子の間には水素結合と呼ばれる強い引力がはたらきます。水分子には水素・酸素の間に共有結合による2つの共有電子対と、酸素原子に2つの非共有電子対があります。水素結合は水素原子と他の分子の非共有電子対の間にはたらいて、しかも非共有電子対の向き(分子の形が共有結合つまり共有電子対の向きないし角度から説明されるが、これと同じように非共有電子対にも向きがあるのだ)と水素がつくる共有結合が一直線になるように形成されます。
    H―O・・H―O  の  O・・H―O    ・・ 水素結合
      |    |                ―  共有結合
      H    H
つまり水素結合がはたらくときには、分子どうし方向性に強い制約が伴うのです。こうして水の結晶つまり氷は大きな空間を含んでいます。教科書などの図を参考にしてください。
 さて物質の状態を支配しているもうひとつの要因は熱運動です。水分子に限らずすべての物質は、振動・回転・飛行などの運動をしています。そして温度が高くなるにつれて激しくなります。
 結晶(固体)の状態では分子間力が支配的です。ところが温度が高くなると次第に熱運動が影響するようになり、ついに水分子は決まった位置に留まることができなくなり、互いにすり抜けて移動するようになります。これが融解です。こうなると水素結合は部分的にはたらきにくくなります。それにつれて分子どうしの方向性の制約が弱まり、水分子はより詰まった状態になります。実際、氷が融解するとその体積が9%ほど小さくなります。この効果は4℃まで続くのです。しかし他方で熱運動が激しくなることは、互いにぶつかり合って分子どうしの距離を少しずつ広げていく効果を持ちます。したがって4℃を越えると、水は他の物質と同じように熱膨張してその密度を小さくしていくわけです。


q99−019

硫酸銅水溶液は酸性で良いのでしょうか

質 問
私は中学生一年生の子供を持つ親です。先ほど呼ばれて、「硫酸銅水溶液って、酸性?アルカリ性?」と聞かれました。
「食塩、アンモニア、炭酸、塩酸、硫酸銅,精製水、の内では、酸性の物が三個、中性の物が二個、アルカリ性の物が一個ある。それぞれがどのグループに入るか考えて、表を完成させなさい。」
子供が言うには、「食塩水と水は中性だし、炭酸と塩酸は酸性で、アンモニアがアルカリ性だから、残りの硫酸銅水溶液が酸性でいいよね?」と言う事なのです。
 硫酸銅水溶液は酸性で良いのでしょうか? そうだとしたら何故 ’H+’が水の中に出来るのでしょうか? そして、こういった、恐らくとても基本的なのだけれども、意外と、どこにも出ていないような「穴」の様な事を調べるには、どういった方法を取れば良いのでしょうか。


説 明
 硫酸銅水溶液はすこし酸性です。この種の問題が中学生に適切かどうか、は横に置くとしましょう。
 硫酸銅は次のように硫酸と水酸化銅が中和反応して生成する塩です。
    H2SO4 + Cu(OH)2 ―→ 2H2O + CuSO4
しかしすべての反応にはその逆向きの反応が伴います。中和の場合は「塩の加水分解」と呼ばれる次の反応です。
     CuSO4 + 2H2O ―→ H2SO4 + Cu(OH)2
(閉鎖系では)反応は完結しないのです。つまりしばらくすると右向きの反応と左向きの反応がバランスする「化学平衡」と呼ばれる状態になります。その位置は(分かりやすく言うと)硫酸と水酸化銅から出発してしても、水と硫酸銅から出発しても同じです。
 ほとんどの中和反応の勢いはその逆向きの反応を圧倒しているので、おおむね右向きに完結すると考えて差し支えありません。しかし厳密に言うと逆向きの反応の勢いを無視できない場合があります。硫酸銅水溶液がそうです。
 さて硫酸は水に溶解した状態では次のように100%電離(陽イオンと陰イオンに分離すること)をしています。
    H2SO4 ―→ 2H+ + SO4 2-
このため硫酸は強酸に分類されます。これに対して水酸化銅の次で表される電離はわずかしか起こりません(その逆向きに反応の勢いが大きいということです)。
    Cu(OH)2 ―→ Cu2+ + 2OH-
このため水酸化銅は弱塩基に分類されます。
 以上の理由で硫酸銅水溶液では、すこしのことですが、水素イオンの濃度が大きく、それに比べて水酸化物イオンの濃度が小さくなります。これは酸性ということです。
 一般に強酸と弱塩基の塩の水溶液はすこし酸性になります。反対に弱酸と強塩基の塩の水溶液はすこし塩基性(アルカリ性)になります。


q99−020

ライター用ガスはなぜプロパンでなくブタンですか

質 問
 家庭用ガスはプロパン C3H8 を主成分としたものが用いられますが、ライター用にはなぜブタンが用いられるのですか?


説 明
 家庭用燃料の液化石油ガス(LPG)は、その主成分がプロパンで、プロパンガスと呼ばれることもあります。これに対してライターや卓上コンロ用の「ブタンガス」はその名の通り主成分がブタンです。
 プロパン C3H8 の沸点は−42℃であり、ブタン C4H10 の沸点は0℃です。これらは大気圧が1気圧のときの数値で、通常の大気の下ではどちらも気体です。しかし物質の状態は温度だけでなく圧力の影響も受けます。常温でも圧力が高ければ液体になるのです。現にどちらのガスもボンベに詰めて液体状態で貯蔵しています。
 問題はそれを液体状態に留めておくのに必要な圧力です。プロパンはその沸点が低いことから分かるように、高い圧力が必要で「高圧ガス」に分類され、頑丈なボンベに詰められます。その扱いは法律で規制され、ボンベも定期的に点検を受けます。これに対してブタンはそれほどの圧力が必要でなく、簡易ボンベに詰められます。ブタンはスプレーの噴出ガスにも使用されており、圧力が低いために扱いも簡単になるのです。だからライター用のガスにはブタンが使用されるのです。
 ただし温度が高くなると、どちらのガスも液体に留めておくのに必要な圧力は高くなっていきます。こうして火災とか炎天下ではボンベが爆発する危険が生じてきます。




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