(林 正幸)


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q01−021

蒸留ではどうして温度計の球部を枝の横にするか、など

質 問
 先日学校でワインの蒸留の実験をしました。その実験の結果などをレポートにまとめていくところでいくつかの疑問が生まれました。
 1つ目は器具の配置で、温度計の球部を枝つきフラスコの枝の横にそろえると沸点が正確に測れるそうですが、それはなぜですか?
 2つ目は今回の実験では赤ワインの原液を70ml使い、蒸留して得られる液体がリービッヒ冷却器を通して7ml流出したところで実験をやめました。7ml流出したところでやめるのはなぜですか? 純粋なアルコールを取り出すためでしょうか?


説 明
 このところワインの蒸留に関する質問が多いですね。
<1つ目の質問>
 枝付きフラスコの底をバーナーで加熱していますので、蒸気の温度は上に行くほど低くなります。この温度勾配が蒸留では大切なはたらきをしているのです。ワインの蒸留では水も蒸気になります。しかし加熱が激し過ぎず蒸気の移動がゆっくりしていれば、水蒸気の方は途中で凝縮して下に戻ることができます。これを還流と言います。このためエタノールと水の分離が比較的うまく行くのです。枝のところの蒸気が横に流れ冷却されて留出液になります。上の説明から、この温度がエタノールの沸点あたりかどうかをチェックするのが合理的であると分かるでしょう。なお「沸点が正確に測れる」というのは違っていて、そこの蒸気の温度をチェックすべきだからなのです。
<2つ目の質問>
 一般に蒸留では蒸気の温度を目安にして物質を分離しますが、予め含有量が分かっておれば、それを利用することもできます。ワインのアルコール(エタノール)は10数%ですから、留出液が7mlあたりのところで止めれば比較的純度が高いアルコールを得ることができます。しかし水とエタノールの混合物には共沸という現象があり、蒸留ではどんなに工夫しても96%以上のアルコールは得られません。

参考:q05−12も見てください。

q01−022

ニトロベンゼンを合成するとき、なぜ冷却するのか

質 問
 学校の授業で、ニトロベンゼンの生成の実験をしたのですが、生成途中で濃硝酸と濃硫酸の混酸を作るのになぜ、冷却しながらなのですか? また、その混酸とベンゼンを混合するときにもなぜ冷却しながらなのですか?


説 明
 混酸を使ってベンゼンからニトロベンゼンを合成するときには、温度を70℃以下に抑えるようにします。それは温度が高くなるとm−ジニトロベンゼンが生成するからです。しかし温度が低すぎると反応速度が小さくなるので、実験では60℃前後にします。実際にはニトロベンゼンの合成は発熱反応ですので、よく振り混ぜながら必要に応じて水で冷却するようにします。
 実験でできたニトロベンゼンは淡黄色になります。これはm−ジニトロベンゼンが副生するためで、ニトロベンゼン自身は無色なのです。
 また濃硝酸と濃硫酸を混ぜるときにも発熱します。これはひとつには濃硝酸に含まれる水に濃硫酸が溶解するためですが、もうひとつ次の反応が起こるためでもあります。
  HNO3 + 2H2SO4 ―→ NO2^+ + H2O + HSO4^-
ここで NO2^+ はニトロニウムイオンと呼ばれるもので、この陽イオンがベンゼンに反応していくことが分かっています。


q01−023

水のイオン積を成立させるために中和反応が起こるって?

質 問
 自分が持っている参考書に次のような説明がありました。
「水溶液中に酸と塩基を混ぜ合わせると[H+]、[OH-]は増えますが
    [H+][OH-]=Kw
が成立するように、余分なH+とOH-は
    H+ + OH- ―→ H2O
へと変化します。これが中和反応です。」
これはつまり中和反応が起こる理由は
    [H+][OH-]=Kw
を成立させるためということなのですか?
 ただ単純に水溶液で酸と塩基を混ぜると
    H+ + OH- ―→ H2O
が起こるとしか考えていなかったので、なんだかこの説明に違和感を覚えるのですが・・・。「余分な」という表現もウーン・・・。どれだけ余分なんだぁ・・・?


説 明
 ひとつのものごとを理解するにもいろいろな深さがあるということでしょう。
 塩酸と水酸化ナトリウムが中和反応する例を考えてみましょう。実際の反応を見ても生成する物質名は分からないわけですが、それを水と塩化ナトリウムとして次のような反応が起こると理解する段階があります。
    HCl + NaOH ―→ H2O + NaCl
 続いてあなたが書いているように酸および塩基の特徴から、一般に中和は酸からの水素イオンと塩基からの水酸化物イオンが次のように水を生成する反応であると理解する段階があります。
    H+ + OH- ―→ H2O
 しかしそれなら、どうして水が水素イオンと水酸化物イオンに分解することはないのかという疑問が生まれることもあるでしよう。それに答えるのが化学平衡の理論です。
 すべての反応は可逆的であり、(閉鎖系では)反応が停止するのはほんとうは平衡状態になることです。そして(温度が一定なら)質量作用の法則が成り立ちます。水が水素イオンと水酸化物イオンに分解する反応も起こるのですが
    H2O ←→ H+ + OH-
平衡定数は、反応が停止するとき次のように右辺の物質と左辺の物質の比がどのような数値になるかを示しています。
    [H+][OH-]/[H2O]= 10^(-14) / 55.6 (25℃)
つまり圧倒的に水が生成しやすいわけであり、中和反応をここまで踏み込んで理解する段階もあります。「余分な・・・」というのは、平衡定数から見て、水のモル濃度に比べて水素イオンと水酸化物イオンのモル濃度が大き過ぎるという意味ですね。なお水分子のモル濃度は、1gが1000gであり、それは1000/18=55.6[mol]から求められます。
 ちなみに平衡理論まで踏み込むと、弱酸と強塩基の中和反応もより深く理解できます。たとえば次のような酢酸と水酸化ナトリウムの反応を例にしてみましょう。
    CH3COOH + NaOH ―→ H2O + CH3COONa
酢酸は水素イオンをわずかしか生じていないのに中和反応がどんどんと進行する理由や、そして中和が完了しても完全には中性にならず弱塩基性、つまり水素イオンに比べて水酸化物イオンのモル濃度がすこし大きい状態になる理由が説明できます(自分で勉強してください)。
 最後に高校では化学反応の理論は平衡が中心ですが、もうひとつ反応速度から考えるべき課題も多いことをつけ加えておきます。たとえば水素と酸素が反応して水が生成する反応は、平衡定数からは圧倒的に水が生成しやすいはずですが、常温では(白金のような触媒を使わない限り)目に見えた反応は起こりません。


q01−024

どうして周期表2族の原子は電子親和力が最低であるか

質 問
 「周期表第2族の元素は最外殻のs軌道閉殻のため、電子親和力が同一周期内で最低である」
というのはなぜですか?


説 明
 高校では、原子核のまわりにとびとびの電子の軌道(電子殻という)があり、K殻、L殻、M殻・・・と呼ばれると習います。そして内側ほど安定で、原子番号が18までの原子では、その電子は内側から順に詰まるように入っていきます。ここで「安定」とは、電子が軌道から外れて離れて存在する状態にに比べて、電子が軌道の入った状態の原子が持つエネルギーが小さいということです。だから、原子から電子を引き離すのにはエネルギーを加えることが必要となり、その数値はイオン化エネルギーと呼ばれます。
 それでは電子が軌道に入った状態はどうしてエネルギーが小さくなるのでしょうか。そのひとつは原子核の正電気と電子の負電気が引き合うからです(ただしこの効果は原子にさらに電子が加わる場合にはあまり期待できません)。もうひとつはすでに軌道に入っている電子との相互作用です。電子どうしはたがいの負電気で反発します。その意味では電子が新たに軌道に加わることはよりエネルギーが大きい状態になります。それは反発するものを近づけるにはエネルギーを加える必要があるからです。しかし電子どうしの相互作用にはエネルギーがより小さい状態になる効果もあります。これは量子力学という理論ではじめて理解できることであり、高校生には手に負えるものではありません。しかし事実としては、イオン結合において電子を得て希ガスと同じ配置になると安定になる、ということようなことが出てきます。
 希ガスの電子配置が安定であるということは、もうすこし踏み込むと次のようなことです。実は電子殻はより細かく分かれています。K殻にはs軌道が、L殻にはs軌道とp軌道が、M殻にはs軌道、p軌道、d軌道があり・・・、それぞれの軌道に入る電子の最大数はs軌道が2個、p軌道が6個、d軌道が10個というようになっています。ヘリウムはK殻のs軌道が満員になって(閉殻になって)います。ネオンはL殻のs軌道とp軌道が満員になって(閉殻になって)おり、アルゴンはM殻のs軌道とp軌道が満員になっておりd軌道は空の状態です。簡単に言うと、s軌道や、s軌道とp軌道が満員になるように電子が入るとエネルギーが小さい状態になるのです。それは周期表でいうと2族と18族(希ガス自身)です。
 電子親和力とは、原子にもうひとつ電子を付け加えるときに余って放出されるエネルギーのことです。そして2族や18族の原子では、もうひとつ電子を付け加えると安定な状態が崩れるので、そのためにむしろエネルギーを加えることが必要となるのです。つまり電子親和力は小さく、マイナスの数値になります。
 以上の説明はどうしてもあいまいなものになっています。ぜひ疑問を大切にして勉強を進め、あなた自身で十分な答が得られるように期待します。


q01−025

どうしてエタノールを水に溶解すると発熱するか

質 問
エタノールと水を混合させると体積が減ると同時に、発熱します。どうして発熱するのですか? いったいどこから来るエネルギーなのですか?
 他にも、濃硫酸に水を加えても混合液が暖かくなりました。色々調べて見たのですが、結局答えが分かりません。


説 明
 まず物質がエネルギーを持っていることのイメージをつくりましょう。物質は温度に応じた激しさで熱運動をしています。常温でもこれは直線運動に直すと1秒あたり数100メートルのスピードです(分子量にも依ります)。だから運動エネルギーを持っています。そして位置エネルギーの意味を考えてみましょう。地上では高い位置にある物体の位置エネルギーが大きいと言います。これは宇宙的視野でみると地球と物体が見えてきます。引き合う物体どうしは離れていると位置エネルギーが大きいということなのです。つまり物質は原子やイオンが化学結合で引き合っており、また分子どうしは分子間力で引き合っているので、位置エネルギーを持っているのです。それぞれの物質は異なる大きさのエネルギーを持っており、また同じ物質でも温度や存在状態によって、そのエネルギーの大きさは違ってきます。
 次に理解したいのは「エネルギー保存の法則」です。これはエネルギーの全体の量は一定である、ということです。言い換えると、ある部分でエネルギーが減少すれば、他の部分にその分のエネルギー与えます。そしてある部分でエネルギーが増加すれば、他の部分からその分のエネルギーを奪います。つまりエネルギーは突然に消滅したり誕生したりしないのです。
 さてエタノールを水に溶解するとすこし発熱します。これはこの変化がまわりにエネルギーを与えるということですから、エタノールと水が別々に存在する状態で持っているエネルギーより、それらが溶解した状態で持っているエネルギーが小さいということです。水分子どうしの分子間力、エタノール分子どうしの分子間力の平均に比べて、水分子とエタノール分子の分子間力の方が強いのです。つまり溶解すると分子どうしはより近づくために位置エネルギーが小さくなります。実際あなたが書いているように溶解すると体積がすこし減少します。
 硫酸を水に溶解する場合は、電離して(このこと自身はより大きいエネルギーを持つことになりますが)、水素イオンは次のように水分子と化学結合を形成してオキソニウムイオン(高校では水素イオンのままであるように扱うことが多いですが)になり、
    H+ + H2O ―→ H3O+
さらに水分子と水和し、硫酸イオンも水分子と水和し、かなり位置エネルギーが減少します。これで発熱の理由が分かりますね。ちなみに硫酸を水に溶解する場合にも体積の減少があります。
 ここで言っておきたいことがあります。以上の説明は明快に見えると思いますが、現実ははるかに複雑です。たとえば水が凝固する場合は、発熱してよりエネルギーが小さい氷になります。しかし知っての通り体積は1割も増加します。あなたの質問には現代化学も完全には答えられないと思います。この点を心に留めて、さらなる勉強を期待します。


q01−026

水素エネルギーについて教えてください

質 問
新エネルギー(水素エネルギー)について、色々調べているものです。
 ゛水の電気分解は、電気代が高い゛ということなのですが、電気代はどのくらい高いのですか。
 水1グラムを蒸発させるには536キロカロリー必要とありますが、単純に水18グラムに9648キロカロリー分の電気を投入すると水素が2グラムできるのでしょうか。
 もっと学生の時に勉強しておけばよかったと、反省しております。お手数をおかけしますが、ご教授ください。


説 明
 まず話を整理しましょう。水1gの蒸発熱は536kcalですが、その18倍のエネルギーで18gの水を電気分解できるのではありません。また現在では熱エネルギーも含めすべてのエネルギーの量の単位はジュール[J]に統一されています。1calは4.2Jです。説明にもジュールを使います。
 18gの液体の水 H2O(水1molということですね)を水素 H2 2g(水素1mol)と酸素 O2 16g(酸素1/2mol)に分解するには、その方法によらずいつでも286kJのエネルギーが必要になります。それは熱化学方程式で次のように表されます。
    H2O = H2 + (1/2)O2 − 286kJ
もちろん1kJ=1000Jです。
 ここでエネルギー保存の法則に触れておいた方が良いでしょう。これはエネルギーの全体の量は一定である、ということです。言い換えると、ある部分でエネルギーが減少すれば、他の部分にその分のエネルギー与えます。そしてある部分でエネルギーが増加すれば、他の部分からその分のエネルギーを奪います。つまりエネルギーは突然に消滅したり誕生したりしないのです。
 物質もそれぞれエネルギーを持っています。上の熱化学方程式も、液体の水1molが持つエネルギーは、水素1molと酸素1/2molが持つエネルギーに比べて286kJ小さいという意味です。だから水1molを分解するには電気分解にしろ他の方法をとるにしろ286kJのエネルギーを必要とするわけです。そして、水素1molと酸素1/2molを燃焼してあるいは燃料電池に仕組んで液体の水にすると、286kJのエネルギーを与えてくれるのです。その意味ではエネルギーで得をするということはないのです。
 ここで電気代がエネルギーとしてどれくらいの値段か見てみます。一般家庭の電気代(工場用はもっと安いはずです)は1kWh=3600kJが15円程度です。これに対してガソリンは現在1g=約700gが100円弱で、燃焼させると30000kJ程度の熱エネルギーを与えてくれます。1円あたりでは、電気が約200kJ、ガソリンが約300kJとなります。なお日本の電気代は米国に比べてかなり高いそうです。
 しかし現実にはエネルギー効率と環境問題があります。水1molを電気分解すると、286kJよりいくらか大きい電気エネルギーが必要になります。また水素1molと酸素1/2molをエネルギー源とする場合、有効に利用できるのは286kJよりかなり小さくなります。そして自動車の動力にする場合、ガソリンの代わりにエンジンで燃焼させるとその効率は10%代です(熱エネルギーの効率は悪い!)。ところが燃料電池自動車ではその効率は数倍になります(正確なデータが分かりませんが)。
 同じ量のエネルギーを使うとして、ガソリンなどに比べて水素はクリーンなエネルギーと言われています。それは水素は燃焼しても二酸化炭素を発生しないこと、また排気ガスに有害物質を含まないことです。しかし忘れていけないのは、その水素を水の電気分解で生産するとき、原子力発電所や火力発電所の電気を使えば決してクリーンではないことです。
 以上の視点を意識して勉強を続けてください。


q01−027

炎色反応はなぜアルカリ金属、アルカリ土類金属の同定に有利か

質 問
 炎色反応とについての質問ですが、炎色反応でなぜアルカリ金属、アルカリ土類金属元素の同定に有利で、遷移金属の同定では不利なのですか?
 また、白金線を酸化炎で加熱するのはなぜでしょうか?


説 明
 炎色反応は原子スペクトルの一種で、炎光スペクトルと呼ばれるものです。つまり電子は原子核のまわりのK殻、L殻、M殻などの軌道を運動しています。これがエネルギーを獲得してより外側の軌道に移り、その電子が再び内側の軌道に戻るときに、その軌道間のエネルギー差に相当する光子を発生します。エネルギー差が小さいと赤色、橙色など、大きいと藍色、紫色などになります。炎色反応では炎の熱エネルギーを電子に与えます。そして通常は最も強いのは、中性原子の最外殻とそのすぐ外側の軌道の間を電子が往復するものです。というのは炎の熱エネルギーは比較的小さいからです。
 アルカリ金属やアルカリ土類金属の原子ではこの軌道間のエネルギー差が小さく(イオン化エネルギーが小さいことからもうかがえる)、かつ原子によって異なります。したがって電子は容易に移動し、炎色反応は様々な色になります。これが「アルカリ金属、アルカリ土類金属元素の同定に有利」な理由です。遷移元素に関しては手元にデータが無くよく分かりません。
 白金線を酸化炎で加熱するのは、ひとつには還元炎が有色であること、もうひとつは酸化炎は温度が高くて電子に熱エネルギーを与えやすいためです。
 十分な説明になっていませんので、あとはあなた自身で勉強してください。


q01−028

なんで、化学を勉強することが大切なんですか

質 問
 僕は高1の学生です。なんで、化学を勉強することが大切なんですか。僕の学校は二年から文系・理系にわかれるんですけど、なぜ、化学を勉強することが大切なのかわかりません。化学が嫌いな僕にでもわかるように教えてください。


説 明
 「なんで、化学を勉強することが大切なんですか。」
難しい質問ですね。まずはじめに進路選択の上では化学を勉強することが大切とは限らないと思います。高校生になったら自分の興味・関心がわく教科を中心に勉強すればよいのです(落第しては困りますが・・・)。
 私が化学を勉強し続けているのは、化学がおもしろいと感じるからです。そのはじまりは高校時代の部活動です。私は3年間、毎日のように化学準備室にかよい、次々に実験をしました。実験はおもしろいものです。そして夏休みには地域の水質検査や「防火塗料」の研究をしました。これは自分で何か発見できるというわくわくする気持になります。授業でも化学を勉強しました。いろいろな体験をし、疑問も抱えているので、納得できることが多くてますます化学が好きになります。そして大学は化学系に進むことにしました。
 教師になってからも、授業のためにいろいろな実験の工夫しています。成功するとうれしいものです。また理論の理解も深まり、全体的に自然の秘密が解けてきます。ここで大切なのは、踏み込むからおもしろさがどんどん拡大してくるということです。
 これとは別に化学を勉強する意義があります。現代は様々な物品があふれています。これらは私たちの生活を豊かにすると同時に、資源・エネルギー問題、環境問題を生み出し、これを解決せずに人類は21世紀を生き延びられないところまできています。ゴミ問題、石油の枯渇、オゾン層の破壊、環境ホルモン、二酸化炭素による温暖化など、化学的認識なしで展望を切り開くことは不可能です。
 もちろん、白川さんの導電性プラスチックのような、有用な材料を開発していくことも重要です。これらのことに関心が向くようなら、あなとにとって化学を勉強することは大切になるでしょう。


q01−029

どうして酢酸エチルの合成は塩基の存在下では進まないか

質 問
 今、授業でのレポートの作成で調べものをしているのですが、なかなか目的のものがなく困っています。つきましては、以下の質問に答えと、解説、もしほかに載っているHPなどあればそのアドレスなど教えてください。
「酢酸エチルは酸触媒下で行われるが、ここで使用した硫酸の代わりに、塩基触媒で反応させると、反応が進まない。この理由を調べよ。」
 ちなみに、私は「反応前の、カルボン酸と中和する」と考えたのですが、違うといわれました。


説 明
 酢酸エチルのようなカルボン酸とアルコールからできるエステルの反応では、一般に酸が触媒としてはたらき、その反対の性質をもつ塩基は触媒になりません。そのメカニズム(機構)はすこし難しいですが、次のようです。

      R           R
      |           |  +
      C−O−H + H+ ―→ C−O−H
      ‖           ‖ |
      O           O H
            R            R
            |  +        + |
      R'−O + C−O−H ―→ R'−O−C + O−H
         |  ‖ |        | ‖  |
         H  O H        H O  H
           R        R
         + |        |
      R'−O−C ―→ R'−O−C + H+
         | ‖        ‖
         H O        O

つまり水素イオンがカルボキシル基の中のヒドロキシル基の酸素に配位結合して水分子として離れる準備をします。次にアルコールのヒドロキシル基の酸素が結びつき、正電荷はそちらに移ります。最後に水素イオンが再生するのです。
 そしてあなたが書いているように、塩基を加えるとカルボン酸は中和して、陰イオンとして安定化します。


q01−030

気体の圧力は分子の速度と分子数にどう関係するか

質 問
 教科書に『気体の圧力は 気体分子の速度が早いほど また 単位時間単位面積あたりに壁に衝突する分子の数が多いほど大きい』と書いてありました。 これはそのとうリだと思いますが 逆は必ずしも成立するのでしょうか? つまり 気体の圧力がおおきければ大きいほど必ず 気体分子がの速度が早く かつ 単位時間単位面積あたりに壁に衝突する分子の数が多い といえるのでしょうか? それとも気体の圧力が大きい時 気体分子の速度が早いけれど 単位時間単位面積あたりに壁に衝突する分子の数は多くない という状態はあり得るのでしょうか? また 気体の圧力が大きい時 気体分子の速度が遅いけど 単位時間単位面積あたりに壁に衝突する分子の数は多い という状態はあり得るのでしょうか?


説 明
 厳密な分析の姿勢はよいことですね。状態方程式から分かるように
    P=nRT/V
気体の圧力は、物質量と絶対温度に正比例し、容器の体積に反比例します。ここで容器の体積は一定として、物質量と絶対温度の影響を考えてみます。
 そもそも気体の圧力とは、熱運動している分子が容器の壁に衝突することによって生まれます。その大きさは、単位面積当たりに、単位時間でどれくらい沢山の分子が衝突するか(衝突の頻度)、そして分子がどれくらい激しく衝突するか(衝突の強さ)に依っています。
 すぐ分かるように物質量、つまり容器内の分子数(1molは6×10^23個の分子でしたね)が大きいほど、それに正比例して衝突の頻度が高まり、圧力が大きくなります。
 これに対して絶対温度が高くなると、それに正比例して分子の飛行(正確には「並進」という)の運動エネルギーが大きくなります。
  <E> = <(1/2)mv^2> =(3/2)RT
    <E> = <(1/2)mv^2>:1molの気体分子の飛行の運動エネルギーの平均値
    R:気体定数
    T:絶対温度
運動エネルギーが大きくなるのは、分子の飛行の速度が大きくなることです。すると衝突の強さが大きくなります。それは物理学的には分子のmvつまり運動量に正比例します。
  Ft = 2mv
    F:衝撃力    t:衝突時間
    m:分子の質量  v:飛行の速度
そして分子の速度が大きくなるとそれに正比例して衝突の頻度も高くなります。これは容器の壁と壁の間を速く進むことから分かると思います。その2つに効果が重なるので、圧力は気体に運動エネルギーに正比例して大きくなります。したがって圧力は絶対温度に正比例するのです。
 こうして気体の圧力が大きいのは、物質量つまり容器内の分子数が大きいか、絶対温度が高いつまり飛行の速度が大きいか、あるいはその両方であるか、ということになります。
 最後にあなたの質問に対してです。その文の中で「単位時間単位面積あたりに壁に衝突する分子の数が多い」という部分を、「容器内の分子数が多い」と改めれば、正しいことになります。




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