(林 正幸)
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q00−001
フェノールフタレインなどの合成の反応機構と発色のしくみは?
質 問
高校3年生です。実験で無水フタル酸と2-メトキシフェノールの反応をやったのですが、その化学反応式とその反応機構がわかりません。また無水フタル酸とフェノールの反応、無水フタル酸とレゾルシノールの反応も同様にやったのですが、これらの水溶液の色・蛍光と構造との関係がわかりません。
(参考書にも高校生向けのには載ってなく、大学にも行ったのですが調べられませんでした。)
説 明
フタレイン類に関する質問ですが、あなたが日本化学会編の「楽しい化学の実験室U」を参考に実験したと推測します。念のためコピーを添付しておきますが、そのp45には無水フタル酸とレゾルシノールからフルオレセインを合成するときの反応式が載っています。そしてレゾルシノールをフェノールに換えたときにできるフェノールフタレインと、また2ーメトキシフェノールに換えたときにできるジメトキシフェノールフタレインの構造式もそれぞれp42とp44に載っています。これらを比較すると、どれも同じタイプの反応であることに気付きます。であれば残り2つの反応式も分かります。そうです、無水フタル酸の一方の炭素・酸素二重結合(>C=O この部分をカルボニル基と呼ぶ)の酸素が外れ、空いた炭素の2つの原子価に、ベンゼン環から水素が外れたグループが結合するタイプの反応です。そして外れたどうしで水が生成します。こうしてこれらは、酢酸とエタノールから酢酸エチルを合成する場合のように、脱水反応であり、濃硫酸が反応を促進する触媒として利用されています。
さてあなたは反応機構についても質問しています。これは面白い分野ですが、高校生には難しいと思います。しかしすこしだけ説明してみましょう。無水フタル酸のカルボニル基は炭素原子がすこし正電荷を帯びています。とりあえず、共有結合が持つ極性から理解してもよいでしょう。他方でベンゼン環の水素がヒドロキシル基(−OH)やアミノ基(−NH2)で置換されたフェノール類や芳香族アミンでは、その置換基のオルトとパラの位置の炭素原子がすこし負電気を帯びます。これは「オルト・パラ配向効果」と言われています。こうして両方の部分が結合していくことで反応が始まります。これ以上は、あなたが関心を深めて勉強を続けてくれることを期待します。
もうひとつの質問は分子の発色についてでした。あなたは原子スペクトルの勉強をしたことがありますか。そうであればすこし手がかりがあります。原子核のまわりにはエネルギーレベルが異なるとびとびの電子の軌道があり、低い方からK殻、L殻、M殻と呼びます。水素原子がよく例に出されますが、光や熱のエネルギーを受けてたとえばK殻の電子がL殻に持ち上がります。すると続いてその電子がもとに戻るときに2つの軌道のエネルギー差に相当する色の光を放射します。この色は原子によって決まっており、たとえばナトリウム原子ではオレンジ色です。これがナトリウムの炎色反応の原理です。
さて分子においても、共有結合に伴っていくつかの電子の軌道が生まれるのです。したがって2つの軌道のエネルギー差に相当する色の光を発するわけです。そして、二重結合がひとつおきに連なる結合状態を「共役系」と呼びますが、この共役系では2つの電子の軌道のエネルギー差が小さくなり、それがちょうど可視光線の範囲に入ってくるのです。以上は大ざっぱな話ですが、ある程度イメージが湧いたでしょうか。蛍光については触れません。これ以上の説明はあなたがたとえば上級学校に進んで発見してください。
q00−002
電気分解においてなぜ炭素棒を使用するのか
質 問
水の電気分解において、電極として一般的に炭素棒を使用しますが、なぜ炭素棒を使用するのかお教えください。
説 明
現在は日本では工業的には水の電気分解は、電気代が高いという経済的理由から行われていません。しかし塩化ナトリウム水溶液の電気分解や酸化アルミニウムの融解塩電解ではたしかに炭素(黒鉛)が使用されています。
一般に電気分解の陽極では電子を失う反応が引き起こされます。ですから電極に金属を使用するとたとえば鉄では
Fe ―→ Fe2+ + 2e-
のように反応してしまいます。金属は陽イオンになりやすいのです。ですから電気を導くが変化しにくい炭素は便利なものです。しかし反対に陰極では電子を得る反応が引き起こされるので、金属でも平気です。たとえば食塩水の電気分解では陰極には鉄板を使用します。金属は電子を得て陰イオンになることはないからです。ちなみにこの場合陰極では次の反応で水素が発生すると共に、陰極側の水溶液には水酸化物イオンが生成します。
2e- + 2H2O ―→ 2OH- + H2
酸化アルミニウムの融解塩電解は1000℃で行われます。この場合は両方の電極に炭素を使用します。陰極では
3e- + Al3+ ―→ Al
のように反応して融解したアルミニウムが生成します。そして炭素は非金属でありアルミニウムに溶解することもありません。ただし陽極では事情が異なります。ここでは
2O2- ―→ O2 + 4e-
のように反応して酸素が発生します。さすがの炭素も1000℃の酸素にさらされては、反応して一酸化炭素や二酸化炭素になり消耗していきます。しかしこれらは気体であり電解液を汚染することはありません。仮に陽極に鉄を使用すれば鉄の酸化物が生成して、陰極で次のように
3e- + Fe3+ ―→ Fe
鉄が生成してアルミニウムが不純になってしまうでしょう。
炭素にも弱点はあります。たとえば高校の実験として希硫酸の電気分解(これは結局は水の電気分解になると言える)をするとき、炭素棒を電極に使用するとどうしてもその一部が崩れて電解液が黒っぽくなってきます。こういう場合は白金電極を使用すればよいのですが高価です。なおこのようなことが塩化ナトリウム水溶液の電気分解でどの程度起こるかは調べられませんでした。
q00−003
溶解性において、四塩化炭素は水とどこが違うのか
質 問
溶解性についての実験をしたのですが、質問で「四塩化炭素はどんな物質・性質か? 水とどこが違うのか?」というのがあったのですが、これがイマイチわかりません。
説 明
物質の溶解性に関する法則は複雑ですが、まず大づかみに、水に溶けやすい(親水性という)物質と、油に溶けやすい(親油性という)物質に整理します。そして「似たものどうしは溶け合う」という基本的法則があります。水に似た物質が親水性で、油に似た物質が親油性であるわけです。
それでは親水性の物質はどの点が水に似ていると言えるのでしょうか。ひとつは極性があることです。共有結合の勉強をしたときに、水分子では水素原子がいくらか正電気を帯び、酸素原子がいくらか負電気を帯びているということが出てきたでしょう。他方でイオン結合では陽イオンと陰イオンができます。これは極性が徹底した姿です。こうして塩化ナトリウムのようなイオン性物質は水に溶けやすいものが多くなります。よりくわしくは「水和」という現象が起きます。
もうひとつは水素結合をすることです。深入りはしませんが、水酸基(−OH ヒドロキシル基ともいう)を持つ分子はたがいに強い引力で引き合います。こうしてエタノール(C2H5OH)は水にいくらでも溶けます。
さてこれに対して油とは、水に似ていないものという意味になります。それにはいくつかの候補者があるのです。動植物油系もありますが、石油系の代表として、ヘキサン(C6H14)を選ぶことが多いと思います。これは水に比べて極性がかなり小さくまた水酸基がありません。そしてときに四塩化炭素(CCl4)を選ぶこともあります。こちらは無極性の分子です。これで一応、溶解性に係わる四塩化炭素やヘキサンの特徴を説明したことになります。
しかし最初にも書いたように、こんな単純な原理では納得できない物質もたくさんあります。早い話がイオン性でも水に溶けにくい炭酸カルシウムのような物質があります。つまり以上は部分的な法則性です。ちなみに四塩化炭素は、オゾン層を破壊するフロンの仲間で、使用を避けたい物質となっています。
q00−004
電解質の溶解度は、どうして温度が上がると増えるのですか
質 問
僕は19歳の大学生です。さっそくなんですが・・・なんで電解質の水への溶解度は温度が上がると増える場合が多いのですか? 図書館などに行って調べてるんですけど、電解質が水の中で電離して陽イオンと陰イオンに分かれて、陽イオンのまわりには水の双極子の負側が、陰イオンのまわりには水の双極子の正側が配向することは載ってるんです。しかし、温度を上げたとき、それらはどのようになっているかがどうしても分からないので教えてもらえないですか? 温度が上がると分子内の熱振動が増すことは分かっています。
説 明
化学Uで平衡の学習をしたと思います。溶解度というのは、溶質が飽和したときにどれくらい溶けているかを表します。飽和状態では、溶解という変化と析出という変化が平衡状態になっています。ルシャトリエの原理によると、発熱変化は温度が上がると起こりにくくなり、反対に吸熱変化は温度が上がると起こりやすくなります。電解質の水への溶解は多くの場合に吸熱変化であるわけです。
さて大学では熱力学という学問を勉強したのでしょうか。たいへん難解なのですが、それによると化学的変化は通常の環境(等温等圧系)では、エンタルピーが減少する向きに、そしてエントロピーが増加する向きに進行します。エンタルピーも増加してエントロピーが増加する場合は、両方の影響を天びんに掛けた結果になります(その判断ができる量は自由エネルギーと呼ばれ、変化はそれが減少する向きに進行します)。
固体や液体の溶解に限れば、エンタルピーの増加は内部エネルギー(物質がその内部にもつエネルギーの意味)の増加に一致し、エネルギー保存の法則から、その増加は外部から吸収した熱エネルギーになります。それでは電解質が水に溶解するときにはどうしてエネルギーを吸収するのでしょうか。それは陽イオンと陰イオンを引き離すためと、水分子を引き離すためです。そして他方であなたが書いているように水和、つまりイオンと水分子が近づくことでエネルギーが放出されます。しかし前者が支配的なので、溶解するときに熱エネルギーを吸収して内部エネルギーが増加するのです。そして少ししか溶けなければ内部エネルギーの増加は小さく、多く溶けるほど内部エネルギーの増加は大きくなります。これは溶解という変化にブレーキを掛けます。
それではエントロピーとは何でしょうか。これはよく「乱雑さの程度」と言われますが、もう少し具体的に書きます。電解質と水が別々にあるときに比べて、それらが水溶液になると、電解質も水もばらけて入り混じります。これをエントロピーが増加すると言います。2種の気体が混合する場合もそうです。こうした例から、エントロピーの増加は自然の方向性を示していることが窺えます。他の理由でエントロピーが増加することもありますが、話を溶解に限ることで割愛します。このように溶解という変化ではエントロピーが増加します。これは溶解という変化を促進します。
ところでこのエントロピーの増加が化学的変化に与える影響は温度に比例しているのです。それはどうしてでしょうか。これはあなたが書いている、温度が上がると分子の熱運動が激しくなることにも関係があるのですが、ここで説明するのは無理であると思います。受け入れてください。
こうして温度が高いほど、エントロピーの増加が、内部エネルギーの増加による影響をカバーしやすくなります。つまり電解質の溶解度は温度が上がるにつれて大きくなるわけです。
実のところ、化学的変化がどのようにして起こるかを理解することは簡単ではありません。以上の説明もゆで玉子の殻を剥いた程度です。粘り強く勉強を重ねて、さらに薄皮と白身を剥いて黄身に迫ってください。
q00−005
モル濃度の計算がわかりません
質 問
問題の内容は、
38%の酢酸水溶液の密度は1.04g/cm3である。
@ この酢酸水溶液1g中に酢酸は何g含まれているか。
A この酢酸水溶液のモル濃度はいくらか。
B 0.1mol/lの酢酸水溶液200mlをつくるには、この酢酸水溶液何ml必要とするか。
です。
@は分かったのですが、A、Bが分かりません。Aはモル濃度の求め方は分かるのですが、溶質の物質量に何を当てはめて、溶液の体積に何を当てはめるかが分かりません。
説 明
濃度というのは、パーセント濃度でもモル濃度でも、溶液全体に対して溶質がどの程度に多く溶解しているかを示す数値です。具体的には
パーセント濃度
溶液100g当たりに溶質が何g溶けているかという数値
モル濃度
溶液1g=1000ml当たりに溶質が何モルとけているかという数値
です。
ですから、@でこの酢酸水溶液1gに含まれる酢酸の質量を計算したわけですから、それを物質量(mol数)に換算すればよいのです。
Bは、必要とする酢酸水溶液x[ml]中に含まれる酢酸の物質量と、それでつくった0.1mol/l水溶液200mlに含まれる酢酸の物質量が等しいことに目を付けて方程式を立ててください。このときAで計算したモル濃度が役に立ちます。
メールの文面からすると、あなたは「公式」に当てはめることばかりに関心が向いていませんか。やはりもとになる考え方を理解するようにしないと、すこし難しい問題は解けないと思います。そして私が伝えたいのはこの問題の答でなく、どのように勉強すべきかということです。
q00−006
アゾ染料の色落ちを防ぐにはどうすればよいか
質 問
僕は高校で化学部に所属しています。それで今アゾ染料について調べたりする活動をしています。
そこで質問なんですが、アゾ染料(特にオイルオレンジとか)はかなり色落ちしますよね。理化学辞典で調べたところ、銅やクロムで後処理すると堅牢度がよくなる、と書いてありました。
具体的にはどんな事をすればいいのでしょうか?高校の設備でできるような事なのでしょうか?
説 明
オイルオレンジ(1−フェニルアゾ−2−ナフトール)ですが、高校生に理解しやすい構造の染料なのでよく取り上げられ、私も生徒実験をしています。ただし、くわしく確かめたわけではありませんが、そんなに「色落ち」するという印象はありません。私はさらし(木綿)に染色させていますが、あらかじめ熱湯で「のり」を洗い落としておく必要があります。一般に染色に先立って糸や布を洗剤や熱湯で洗うことは大切です。
オイルオレンジがどのタイプの染料であるか調べがつきませんが、繊維の種類によっては色落ちする可能性があります。媒染剤のはたらきもよく分かっていない面があるので、やってみるしかないと思います。
一般に媒染剤とは染料と繊維の仲立ちをする薬剤のことで、染料の色調が変化することもあります。媒染には先媒染と後媒染があり、あらかじめ媒染液に浸けてから染色するのと、染色してから媒染液に浸けるのがあります。媒染液の濃度は1〜数%で、時間(2〜30分)や温度(常温から70℃)もさまざまです。
媒染剤には、ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)、酢酸銅(酢酸酸性にする)、硫酸銅、酢酸クロム(これも酢酸酸性にすべきか?)、木酢酸鉄(これも試薬として売られている)、石灰水(水酸化カルシウム)などがあります。なおこれらの薬品の一部は劇物ですから、担当の先生の指導を受けて実験するようにしてください。
オイルオレンジでは、一方の合成試薬である、水酸化ナトリウム水溶液に溶かした2−ナフトールを布に染み込ませておいて、これに塩化ベンゼンジアゾニウム溶液を加えて染料の合成と染色を同時に行う方式ですと、先媒染はできませんね。
q00−007
ダイヤモンドも炭と同じように燃えてしまうか
質 問
はじめまして、私は26才の会社員です。昨日、炭火焼き肉を食べていて、ふと疑問を感じたことがあります。それは、炭もダイヤモンドも同じC(炭素)でできていますが、ダイヤモンドもやっぱり熱を与えると燃えてしまうのでしょうか。それとも融けてしまったりするのでしょうか。ぜひ教えてください。ちなみに、大学では化学を専攻していました。
説 明
炭火焼き肉からダイヤモンドを連想するとはすごいですね。高校ではダイヤモンドと黒鉛は炭素の同素体であると習います。このほかにススのような炭素は、原子の配列が乱れて結晶になっていない「無定形」と呼ばれる状態、現代風にいうとアモルファスな状態にあります。上質の炭はおおよそ黒鉛と無定形炭素の混合物と言えるでしょう。
こんなわけでダイヤモンドも1000℃以上の高温にさらされれば、炭と同じように燃焼して二酸化炭素になります。その事実から逆に、見かけがまったく異なるダイヤモンドと黒鉛が同じ炭素という元素からできていることが分かったのです。ただし、黒鉛に比べてダイヤモンドの化学結合(共有結合)は強いので(その様子は高校の教科書にイラストで示されています)、炭よりいくらか燃焼しにくいことはあります。なおダイヤモンドや黒鉛を融解して液体にするには、酸素を絶った環境で、3500℃以上の高温にする必要があります。
ちなみにここ10年の間に炭素からできる単体には、バックミンスターフラーレン(愛称はバッキーボール)という炭素原子60個からなるサッカーボールのような分子や、カーボンナノチューブと呼ばれるチューブ状の分子が存在することが発見されています。また釣りざおなどに使用される炭素繊維もその名のとおり炭素からできています。
q00−008
何がツンドラ土壌を酸性に、砂漠土壌をアルカリ性にするのか
質 問
地理で、ツンドラの土壌は酸性で,砂漠の土壌はアルカリ性だとの記述がありました。
これはPHなどを測定して決めるのでしょうか。またツンドラにはどんな化学物質があるので酸性になるのでしょうか。砂漠にはどんな物質があってアルカリ性になるのでしょうか。
説 明
まず土壌のpHの測定ですが、簡単には試験紙で、正確には土壌を水で浸出してpHメーターで計測します。塩化カリウム水溶液に土壌を浸けてからその水溶液のpHを計測することもあります。すこし難しくなりますが、それは土壌がイオン交換(化学Uに出てきます)と呼ばれる性質を持つためです。つまり水素イオンがカリウムイオンなど他の陽イオンを入れてやると水に出て来やすくなるためです。
さて土壌とは何でしょうか。岩石が風化して、それに生物の作用が加わって形成されます。まず岩石ですが、それに含まれる元素は多い順に
O Si Al Fe Ca Na K Mg
です(「クラーク数」を調べて見てください)。もう少し踏み込むと、ケイ素やアルミニウムの酸化物(酸性酸化物 アルミニウムは両性酸化物ですが)と、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムの酸化物(塩基性酸化物)がいろいろな割合で中和した一種の塩です。これに対して生物の方はとくに植物が腐敗した「腐植」と呼ばれるものが加わります。腐植の内容は、気候条件によっても異なり、よく分かっていないのが現実です。
ツンドラ地帯では低温の故にフルボ酸などと呼ばれる有機酸(カルボン酸など)が生成しやすいのです。これが岩石の塩基性成分と反応して溶脱します(水に溶けて流れ去る)。その結果表土が酸性化するわけです。このような作用をポドゾル化と言います。
砂漠では雨が少なく、地下水が表面に染み上がって来てどんどん蒸発します。機械的に風化した岩石はこれによって加水分解され、塩基のうち水に溶けやすいものが表面に蓄積されていきます。また地下水にも二酸化炭素(酸性酸化物)が溶けており、これが岩石の塩基性成分と反応して溶脱して表面に上がって来ます。炭酸塩や炭酸水素塩は塩基性(アルカリ性)ですし、二酸化炭素の一部は分解してに戻って大気中に逃げ出します。このような作用は地表に塩の結晶ができるほどで、砂漠での農業が困難になる大きな理由です。
ちなみに、岩石に水や二酸化炭素が溶けた水が反応して、塩基性成分などが溶脱する現象は化学的風化と呼ばれ、岩石の風化はこれと上記の機械的風化が重なって起こっているのです。
最後に、この返事を書くに当たって、私の仲間の中台さんや山本さん、さらに農業研究センターの仲谷さんの協力を得ました。
q00−009
炎色反応のしくみを教えてください
質 問
金属塩の溶液を白金線につけて炎の中に入れると炎色反応を示しますが、その時金属はイオン化しているのですか?
だとすれば炎によって溶媒である水が蒸発した後、そのイオンはどうなっているのでしょうか? 空気中に蒸発するのですか? それとも白金線に塩のようになって残るのですか?
それから、市販の消しゴムに熱した針金を押し付けて、その針金を炎の中に入れると炎色反応を示します(多分銅の緑色)が、消しゴムの中に銅はイオンとして(塩として)存在するのですか? なぜ消しゴムを炎に入れても炎色反応しないのに、そういう過程を通ると炎色反応を示すのでしょうか?
説 明
水素原子のスペクトルに基づいて、ボーアが原子核のまわりの電子の軌道を解明したことは知っていると思います。発光する色は電子が落ち込んだときの軌道のエネルギー差に対応しており、特定の波長の光のみが放射されることが、とびとびの電子の軌道を窺わせたのです。
一般に発光スペクトルには、中性原子に依るもの、1価の陽イオンに依るもの、2価の陽イオンに依るものなどがあります。そして陽イオンは中性原子にエネルギーを与えて生成します。つまり中性原子が安定な姿です。中性原子では基底状態において電子が入った最上位の軌道とすぐ上にある空の最下位の軌道とのエネルギー差がもっとも小さいものです。そして炎色反応では比較的低温に加熱するので与えることができるエネルギーが小さく、上に示した軌道の間の遷移による発光がもっとも強く表れると考えられます。逆に温度が高くなるほどスペクトルは複雑になり、肉眼での観察は難しくなり、本格的な分光器による分析が必要になります。こんなわけで炎色反応の発光は中性原子によるものと言えます。
しかし炎色反応では金属そのものではなく、その塩を白金線に付けたりしますよね。つまりイオンを加熱します。金属単体ではそれをばらばらの原子にするのが難しいのに対して、塩では、とくに塩化物や硝酸塩では比較的容易にばらばらにできるからです(沸点が低い)。そしてひとたび炎に曝されると、金属イオンが電子を得て中性原子になることも起こります。
ナトリウムランプは金属ナトリウムの蒸気に放電でエネルギーを与えて、炎色反応と同じ橙黄色の光を放ちます。ナトリウムの沸点が低いからです。これに対して、さびていない銅線を炎に入れても青緑色の炎色反応は起こりません。そこで消しゴムの話に移ります。
消しゴムの「炎色反応」では銅線に消しゴムを付けて行います。最近の消しゴムはポリ塩化ビニルで、炎に曝すと銅と塩素が反応して塩化銅が生成し、それによって緑色の炎が発生するのです。これは有機系塩素に固有な反応で、バイルシュタイン反応と呼ばれています。このテストによって、ダイオキシンなどの発生に係わりそうな塩素系プラスチックを識別できるのです。
q00−010
交流で水の電気分解ができるか
質 問
水の電気分解を交流電流でやった場合、できるのでしょうか? できるとすれば、何が発生するのでしょうか?
説 明
これは交流の周波数にも依ります。50〜60Hzくらいですと、ひとつの電極が陽極になったり陰極になったりするたびに、酸素が発生したり水素が発生したりします。電圧を高くして電流を増せば、水素と酸素の混合気体(水素爆鳴気)ができると思います。周波数が数1000Hz以上になると分解反応をする暇がなくなります。逆に水溶液の電導度を計測するにはこの領域を使います。
ひとつ先の質問(q00−011)に進む。
林 正幸と主万子の始めの
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