キーワード
高校、化学、教材、自主編成、教科書、(高校化学、化学教材)

                                   02.4
                                   林 正幸

9.酸化と還元および電子やり取り(その2)

授業計画

 時間          項  目              備  考
  1   
実験1.「水を吸い上げる粉」とテルミット反応
  2   1.酸素原子やり取り
  3   2.テルミット反応と製鉄
  4   実験2.金属と水溶液およびダニエル電池
  5   3.金属のイオン化傾向
  6   4.金属の電子やり取り
  7   5.電池の原理      [a]ダニエル電池
                   [b]電池の原理
  8                [c]ダニエル電池の補足
      6.いろいろな電池    [a]ボルタの電池
  9                [b]マンガン乾電池  分解した乾電池
                   [c]鉛蓄電池(バッテリー) デモ実験
                   [d]燃料電池
 10   実験3.塩化鉛の融解塩電解と紫色の気体
 11   7.電気分解の原理
 12   8.非金属の電子やり取り
 13   9.水分子の電子やり取り         電気で色を付ける
 14  10.いろいろな電気分解  [a]希硫酸の電解      デモ実験
                   [b]おもしろニッケルめっき プレート
 15                [c]銅の電解精錬
                   [d]アルミニウムの電解製錬
 16  11.酸化と還元の拡張   [a]酸化と還元の意味

                  - 1 -

                   [b]酸化数の増減
 17                [c]酸化数の見つけ方
                   [d]演習
 18  宿題(演習)



備考:「いろいろな電池」と「いろいろな電解」は、この章の内容が多くなりすぎて混乱
   する恐れがあるので、宿題には含めず問題集の学習と同じ応用編として扱う。





















                  - 2 -

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                                   No

7.電気分解の原理

[a]塩化鉛の融解塩電解(実験のまとめ)
 試験管に(塩化鉛 PbCl2 )を入れて加熱して(融解)し、(黒鉛)電極を差し込
んで(直流)を流すと、プラス極(電源の正極につないだ電極)から(刺激臭)のある
塩素)が発生し、マイナス極には(銀白色)の鉛の玉が生成する。取り出した()を
金づちでたたくと(展性)を示す。

[b]電気分解の原理
[1]塩化鉛はイオン性物質であり(鉛イオン Pb2+ )と(塩化物イオン Cl- )から
構成される。2章で学習したように、この種の物質は融解して(液体)になるとそれぞれ
のイオンは移動できるようになる。
[2]電池では物質が(能動的)に電子を与えたり、電子を奪ったりして電子の流れを発
生させる。これに対して電気分解では、電子の流れは外部の直流電源(電池を利用するこ
ともできる)を使って発生させ、それがなければ変化しない物質が(受身的)に反応する。
だから電気分解では受動表現を使うことにする。
 つまりマイナス極では電子が(押し込まれて)、電子を(得る)反応が起こされる。そ
してプラス極では電子が(吸い出されて)、電子を(失う)反応が起こされる。
[3]実験ではマイナス極で電子を得るものにどんな物質があるだろうか。(電子得失
)の右辺を下から探していくと(鉛イオン)が見つかる。つまり次のような電子を得る
反応が起こされる。
    ( 2e- + Pb2+ −→ Pb )
 それではプラス極で電子を(失う)のはどんな物質だろうか。残念ながらまだ電子得失
表は不十分である。しかし(塩化物イオン)しか存在しない。次のような電子を失う反応
が起こされる。
    ( 2Cl- −→ Cl2 + 2e- )
これについてはあとでもっと深めよう。
 全体としての反応は、上の2つの反応式を積み算して次のようになる。
    ( Pb2+ + 2Cl- −→ Pb + Cl2 )

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あるいは普通の反応式に直して
    ( PbCl2 −→ Pb + Cl2 )
と書き表せる。
[4]このように電気分解も電子のやり取りで成り立つ。そして電気分解においてはプラ
ス極を(陽極)と、マイナス極を陰極と呼んで電池の場合と区別するので、次のようにま
とめられる。
  ( 電気分解では物質が受身的に、陽極で電子を失う反応を、
                    陰極で電子を得る反応を起こされる。
問1 塩化鉛の融解塩電解をイラストでまとめよ。

      

[c]電子やり取りと物質量
[例題]「塩化鉛の融解塩電解」実験で、3A(アンペア)の電流を10分間流すと、何
gの鉛が生成するか(答は小数1位で)。( Pb=207)
 (電流)とは1s(秒)に何[C](クーロン)の電気量が流れるかを示す数値である。
    したがって3Aの電流を10分間流すと、流れる電気量は
      (3×60×10)=1800[C]
    陰極での反応式 2e- + Pb2+ −→ Pb から
      電子( e- )2molが流れると Pb 1molが生成する。
  ところが電子1molが持つ電気量は(96500)[C]である。
    だから電気量193000[C]が流れると Pb(207)gが生成する。
      1800[C]でx[g]生成するとして
      ( 193000[C]/207[g]= 1800/x  )
          x=1.93・・・
                    答 1.9g

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8.非金属の電子やり取り

[a]紫色の気体(実験のまとめ)
[1]蒸発皿の中で(亜鉛粉末)と(ヨウ素)を混ぜ、すこし()をかけると(紫色
の気体が立ちのぼる。
 亜鉛とヨウ素は次のように反応する。
    ( Zn + I2 −→ ZnI2 )
              ヨウ化亜鉛
そのとき発生する(反応熱)で、未反応のヨウ素が(昇華)して紫色の気体になる。
 生成するヨウ化亜鉛はイオン性物質で、水溶液中では亜鉛イオンとヨウ化物イオンに電
離しているので、イオン反応式に直すと次のようになる。
    Zn + I2 −→ Zn2+ + 2I-
これは電子のやり取りになっており、2段階に分けて書ける。
      Zn −→ Zn2+ + 2e-
    ( 2e- + I2 −→ 2I- )
振りかえれば、もともとイオン結合は電子のやり取りで形成される。

[b]非金属と陰イオンの電子やり取り
[1]ここでヨウ素が電子を得てヨウ化物イオンになる反応を検討する。ヨウ素は(非金
)である。一般に非金属の多くは陰イオンになる性質がある。これは次のように金属と
対をなす性質である。
      金属 −→ 陽イオン + 電子
    ( 電子 + 非金属 −→ 陰イオン )
 前節では塩化物イオンが電子を失って塩素になる反応を学習した。2章で学習したよう
に、塩化物イオンは塩素が電子を得て生成する。そして塩素も非金属である。
 条件や相手によってヨウ化物イオンがヨウ素になって電子を失うこと、つまりこの実験
と逆向きに反応が進行することもある。
[2]金属と並んで、(陰イオン)も電子を(失う)傾向があるものとして同列に扱うこ
とができる。そして陰イオンの電子を失う傾向にも(大小)があり、代表的な4種の陰イ

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オンでは次の順番になっている。
     ( OH- > I- > Br- > Cl- )
[3]これは当然に金属と混ぜて比較することもできる。それでは4種の陰イオンを加え
て電子得失表を書き直してみよう。
          電子得失表
      Al  ←→ Al3+     + 3e-
      Zn  ←→ Zn2+     + 2e-
      Fe  ←→ Fe2+     + 2e-
      Pb  ←→ Pb2+     + 2e-
      H2   ←→ 2H+     + 2e-
      Cu  ←→ Cu2+     + 2e-
    ( 4OH- ←→ 2H2O + O2 + 4e- )
    ( 2I-  ←→ I2      + 2e- )
      Ag  ←→ Ag+     + e-
    ( 2Br- ←→ Br2     + 2e- )
    ( 2Cl- ←→ Cl2     + 2e- )
 新しい表では、左辺には(金属)に(陰イオン)が付け加わり、上から電子を失いやす
い順番に並んでいる。
 そして右辺には陰イオンから生じる(非金属)が付け加わり、これは(陽イオン)と共
に電子を(得る)側である。これらは下から電子を得やすい順番に並んでいる。
 なお水酸化物イオンについては電子を失って生成するのが、単純に非金属の単体だけで
はなく、水分子と酸素になっていることに注意しよう。すでに電池でも、2つの物質が共
同で電子を奪う例があった。
[4]「塩化鉛の融解塩電解」実験で反応した塩化物イオンと鉛イオンは、この電子得失
表では(右上がり)の斜線で結ばれる。このような物質どうしは自然には反応しないが、
電子を(強制的に)流すことで電気分解させることができるのである。
 これに対して「紫色の気体」実験で反応した亜鉛とヨウ素は、たしかに右下がりの斜線
で結ばれる。


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9.水分子の電子やり取り

[a]硫酸ナトリウム水溶液の電解
問1 実験をイラストで描け。

      

[1]硫酸ナトリウムは水溶液中ではナトリウムイオン Na+ と硫酸イオン SO4 2-
電離している。教科書の16種の金属のイオン化列を調べると分かるように、ナトリウム
イオンが係わる次の反応は、電子得失表においてアルミニウムよりさらに上にある。
    Na ←→ Na+ + e-
そしてすぐに説明するように、ナトリウムイオンより電子を得やすいものがある。また硫
酸イオンであるが、高校では便宜的に、硫酸イオン SO4 2- や硝酸イオン NO3 - のよう
な3原子以上でできている多原子イオンは電子のやり取りをしないと考えてよい。
 また電極の(ステンレス板)は鉄が主成分ではあるがクロムなどを加えた合金でありさ
びにくい、つまり陽イオンになって電子を失いにくい。
[2]それでは何が電子のやり取りをするだろうか。実は陽極では(水分子)が次のよう
に電子を失う反応を起こされる。
    ( 2H2O −→ 4H+ + O2 + 4e- )
こうして陽極付近には(水素イオン)が生成するため、陽極側のろ紙2枚では加えておい
たBTBが(酸性)の黄色になる。そして同時に(酸素)が発生してステンレス板が持ち
上げられる。
[3]そして陰極でも(水分子)が、次のように電子を得る反応を起こされる。
    ( 2e- + 2H2O −→ 2OH- + H2 )
生成する(水酸化物イオン)によって陰極側のろ紙2枚ではBTBが塩基性の(青色)に

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なる。そして同時に(水素)が発生する。

[b]水分子の電子やり取り
 ここで新たに電子を失う物質としても、電子を得る物質としても(水分子)が登場して
きた。反応式がやや難しいが、これも電子得失表に加える必要がある(高校ではこれ以上
は増えない!)。これまでを整理すると次のようになる。
  電子を失う物質:(金属)(陰イオン)(水分子)など
               (左辺にあり、上ほど反応しやすい)
  電子を得る物質:(陽イオン)(非金属)(水分子)など
               (右辺にあり、下ほど反応しやすい)
[c]完成した電子得失表
[1]それでは水分子を加えた電子得失表を完成させておこう。
       Al  ←→ Al3+     + 3e-
  ( 2OH- + H2 ←→ 2H2O    + 2e- )
       Zn  ←→ Zn2+     + 2e-
       Fe  ←→ Fe2+     + 2e-
       Pb  ←→ Pb2+     + 2e-
       H2   ←→ 2H+     + 2e-
       Cu  ←→ Cu2+     + 2e-
       4OH- ←→ 2H2O + O2 + 4e-
       2I-  ←→ I2      + 2e-
       Ag  ←→ Ag+     + e-
       2Br- ←→ Br2     + 2e-
   ( ◎ 2H2O ←→ 4H+ + O2  + 4e- )
     ◎ 2Cl- ←→ Cl2     + 2e-
       (注意:◎は条件によって入れ代わる。)
 この得失表は電子のやり取りのすべてをまとめているとしても過言ではない。暗記し
て自由に使えるように練習しよう。
[2]ここで燃料電池の反応を確認しておこう。負極で電子を与える水素および水酸化物
イオンと、正極で電子を奪う酸素と水分子は右下がりの斜線で結ばれる。

                  - 22 -

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10.いろいろな電気分解

[a]希硫酸の電解
[1]ゴムせんにステンレスくぎ2本と細いガラス管を通し、(希硫酸)を満たした試験
管にはめ込み、倒立して電気分解すると、両方の電極から(気体)が発生する。希硫酸が
すべて抜け出たら、ゴムせんをとってマッチで点火すると爆発する。
[2]反応する可能性があるのは、(水素イオン H+ )(水分子 H2 )である。硫酸
イオン SO4 2- は除外される。
 陽極で反応するのは電子を失う物質である。(電子得失表)の左辺を上から探していく
と、水分子が次のように反応することが分かる。
  陽極  2H2O −→ 4H+ + O2 + 4e-
 陰極で反応するのは電子を得る物質であり、右辺を下から探していくと水分子より先に
水素イオン)が出てくる。その反応式は次のようである。
  陰極  4e- + 4H+ −→ 2H2
 この実験では水溶液は陽極側と陰極側が混合するので、水溶液中の水素イオンは生成す
るだけ反応しており、2つの反応式を積み算するとき消去して良いので、全体としての反
応は次のようになる。
      2H2O −→ 2H2 + O2
つまりこれは水の電気分解である。
[b]おもしろニッケルめっき

      

[1]図のように、乾電池の負極につないたピンセットで触れて銅板を(陰極)にする。
陽極にした黒鉛棒の先を包んだ布に、(硫酸ニッケル NiSO4 )を含むニッケルめっき

                  - 23 -

液を染み込ませ、表面にくり返し塗っていくと、ニッケル(めっき)することができる。
予めマジックペンで字やイラストを描いておくとその部分はめっきされず、あとでインク
をエタノールで拭き取るとすてきなプレートになる。
[2]電極に使った黒鉛は常温では変化しにくい物質である。そのために「塩化鉛の融解
塩電解」実験でも利用した。めっき液に接して反応する可能性があるのは(ニッケルイオ
ン Ni2+ )、(水分子)、(銅 Cu )である。
 ここでニッケルイオンが係わる次の反応は、教科書の金属のイオン化列から、電子得失
表において鉄と鉛の中間にある。
    Ni ←→ Ni2+ + 2e-
[3]これを考慮に入れて探すと、陽極では水分子が電子を失う。
  陽極  2H2O −→ 4H+ + O2 + 4e-
つまり布と黒鉛棒の間で酸素が発生する。
 そして陰極ではニッケルイオンが電子を得てニッケルに変化する。
  陰極  2e- + Ni2+ −→ Ni
こうして(銅板)にニッケルをめっきすることができる。
 なおこの実験は工業的なめっきとすこし異なるので注意しよう。
[c]銅の電解精錬
[1]銅はその電気抵抗が銀に次いで(小さく)、その多くは電線などに使用する。とこ
ろが(黄銅鉱)などを製錬して生産される(粗銅)は純度が99%程度で、このままでは
電気抵抗が大きい。そこでこれを以下のように電解精錬して、純度が99.99%程度の純
銅(電気銅)にする。
[2](硫酸銅)水溶液に厚い粗銅板を(陽極)として、薄い(純銅板)を陰極として差
し入れて電気分解する。
 反応する可能性があるのは(銅イオン Cu2+ )、(水分子)、()などである。
 電子得失表で探すと、陽極では粗銅板の銅が電子を与える。
  陽極  Cu −→ Cu2+ + 2e-
そして陰極では銅イオンが電子を得る。
  陰極  2e- + Cu2+ −→ Cu
全体として見ると、銅が陽極から陰極に(移動する)。
                         (続く)

                  - 24 -

                                   No

[3]しかしそれだけだろうか。粗銅板に含まれる銅より(イオン化傾向)が小さい(つ
まり電子を失いにくい)銀などは、銀イオンになることができずそのまま陽極の下に沈で
んする。これは(陽極泥)と呼ばれ、これから銀などの貴金属を取り出す。これに対して
銅よりイオン化傾向が(大きい)(つまり電子を失いやすい)亜鉛などは、銅に先立って
亜鉛イオンなどになる。しかしこれらのイオンは陰極では銅イオンに負けて、電子を得る
ことができず水溶液中に(取り残される)。こうして陰極には純銅が析出する。
[d]アルミニウムの電解製錬
[1]アルミニウムの鉱石は(ボーキサイト)であり、その主成分は(酸化アルミニウム
Al23 )である。これはアルミニウムイオン Al3+ と酸化物イオン O2- からできて
いると考えられる。これからアルミニウムを生産するには、アルミニウムイオンに電子を
与える)必要がある。
 しかしアルミニウムはイオン化傾向がかなり(大きい)。そしてこれに電子を与えるこ
とができる物質には、教科書のイオン化列を思い出せば、ナトリウムやマグネシウムがあ
る。しかしそれではこれらの金属はどのように製錬するのか、という問題が出てくる。
[2]ここで登場するのが電気分解である。しかし酸化アルミニウムの融点は2000℃
を越える。そこで(氷晶石)という鉱物を融解して、これに酸化アルミニウムを溶解する
と1000℃以下で電気分解できるようになる。電極には(黒鉛)を使用する。
 こうして陰極にアルミニウムが生成する。
    3e- + Al3+ −→ Al
[3]アルミニウムは()番目に多く生産される金属である。しかしそれには膨大な電
気を必要とする。そのためアルミニウムは(電気の缶詰)と呼ばれる。アルミ缶(350
ml)ひとつ分のアルミニウムを生産する電力で30Wの蛍光灯を数10時間点灯できる。
日本は電気が高価であるので、現在ではアルミニウムを国内で生産することができない。
リサイクル)の重要性に気付いてほしい。




                  -25 -

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11.酸化と還元の拡張

[a]酸化と還元の意味
[1]これまで酸素原子のやり取りを酸化還元反応とし、電子のやり取りはそれとは別の
反応として学習してきた。すこし難しくなるが、最後にどちらの反応も統一的に酸化還元
反応として理解する見方を紹介する。
[2]もう一度それぞれの代表的な反応式を眺めてみよう。
    CuO + H2 −→ Cu + H2O     (1)
    Cu + 2Ag+ −→ Cu2+ + 2Ag   (2)
(1)の反応式では、水素は「酸素原子を得る」ので(酸化される)とし、酸化銅(U)
は(酸素原子を失う)ので「還元される」とした。しかしこれを新しい視点で、水素原子
は水素から水に変化するにつれて、電気的に中性から(陽性)になると見てみよう。つま
り(酸素原子を得る)ことは中性から陽性になることでもある。また銅原子は酸化銅
(U)から銅に変化するにつれて、陽性から中性になる。つまり「酸素原子を失う」こと
は陽性から(中性)になることでもある。ちなみに酸素原子は(陰性)のままである。こ
こでは、物質自身よりそれに含まれる(原子)の変化に注目している。
[3]これまで化合物の化学式の左側の原子が電気的に陽性であることが多いと漠然と受
け取ってきた。
 もちろんイオン結合においては、陽イオンが電気的に(陽性)であり陰イオンが陰性で
ある。
 ここで(共有結合)における陽性・陰性の正確な意味を確認する。水分子については
電気陰性度)の差から、水素原子はいくらか()電気を持つので陽性であり、そして
酸素原子はいくらか負電気を持つから(陰性)である。これは共有結合の(極性)であっ
た。これに対して水素分子については(同じ)原子が共有結合するから、どちらの水素原
子も電気的に中性である。
 金属の単体も同じ原子が金属結合するので、その原子は電気的に(中性)である。


                         (続く)

                  - 26 -

                                   No

[4]こうして見ると(2)の反応式では、銅原子は銅から銅イオンに変化するにつれて
電気的に中性から陽性になる。これは銅が(電子を失う)から当然である。また銀原子は
銀イオンから銀に変化するにつれて陽性から中性になる。これも銀イオンが「電子を得
る」から当然である。
[5]それなら、含まれる原子が電気的に中性から陽性になることを酸化される、また陽
性から中性になることを還元されると考えてはどうだろうか。

[b]酸化数の増減
[1]ここで話を厳密にするために(酸化数)と呼ぶ数字を導入する。イオン結合する原
子はそのイオンの価数をそのまま酸化数とする。
    Ag+  Ag原子が+1    Cu2+  Cu原子が+2
 共有結合する原子については、共有結合の極性を(イオン結合)と見なしてその価数を
酸化数とする。
    H2O   H 原子が+1    O 原子が−2
    H2    H 原子が0
[2]こうして酸化・還元は新しく次のように定義することができる。
  ( 含まれる原子の「酸化数が増える」=その物質が「酸化される」 )
  ( 含まれる原子の「酸化数が減る」 =その物質が「還元される」 )
参考:正式には酸化数はローマ数字で表される。
[3]上のふたつの反応式で整理してみよう。

  酸化数  +2 −2   0     0   +1 −2
        CuO + H2 −→ Cu + H2
        ↑     ↑
     酸化数が減る 酸化数が増える
        ‖     ‖
      還元される 酸化される
酸化銅(U)は含まれる銅原子の酸化数が(+2)から()に減るので還元される。単

                  - 27 -

体の水素は含まれる水素原子の酸化数が()から(+1)に増えるので酸化される。

  酸化数    0    +1     +2     0
        Cu + 2Ag+ −→ Cu2+ + 2Ag
        ↑     ↑
    酸化数が増える 酸化数が減る
        ‖     ‖
      酸化される 還元される
銅は含まれる銅原子の酸化数が0から+2に増えるので(酸化)される。銀イオンは含ま
れる銀原子の酸化数が+1から0に減るので(還元)される。
[4]なお酸化数の増減による酸化・還元の定義の拡張は、酸化数が(マイナス)の領域
も含む。
たとえば次の反応式で見てみよう。

  酸化数    0    0    +2 −1
        Zn + I2 −→ ZnI2
ここでヨウ素は含まれるヨウ素原子の酸化数が()から(−1)に減るので還元される
ことになる。
[5](酸化数の増減)によって酸化・還元を定義すると、酸素原子のやり取りと電子の
やり取りに留まらず、より広い反応を統一的に酸化還元反応として理解することができる。
 高校生が酸化数を上の説明の通りに見つけることは困難なので、次のルールを利用する。
ただし練習しないと混乱しやすい。
[6]新しい定義を電子のやり取りに結びつけよう。(電子を失う)のが「酸化数が増え
る」ことになり、「電子を得る」のが(酸化数が減る)ことになる。したがって電子のや
り取りと酸化・還元は次のような関係になる。
    ( 電子を失う =酸化される )
    ( 電子を得る=還元される )


                         (続く)

                  - 28 -

                                   No
[c]酸化数の見つけ方
 以下は番号が小さい方が優先である。
[1]単体に含まれる原子は()である。
  例 Zn  C  O2  O3  どの原子も0

[2]イオンに含まれる原子は、その(価数)が酸化数である。
 そして
(a)周期表の1、2、13族の原子が含まれれば、その酸化数は+1、+2、(+3
である(そして相手原子の酸化数も計算できる)。
  例 Na2S   Na 原子は(+1)  したがって S 原子は−2
    Al23  Al 原子は+3    したがって O 原子は(−2
(b)化学式の(右側)に周期表の17族の原子が含まれれば、その酸化数は(−1)で
ある。
  例 FeCl2  Cl 原子は−1  したがって Fe 原子は(+2
(c)多原子イオンが含まれれば、その価数から相手原子の酸化数が計算できる。
  例 AgNO3    NO3 - だから   Ag 原子は+1
    PbSO4    SO4 2- だから  Pb 原子は+2
    Cu(OH)2  OH- だから   Cu 原子は(+2

[3]水素原子は(+1)そしてほとんどの酸素原子は(−2)である。
例 NH3    H 原子は+1  したがって N 原子は(−3
  H22   H 原子は+1  したがって O 原子は(−1
  H2SO4  H 原子は+1  そして O 原子は−2 したがって S 原子は+6
  HClO  H 原子は+1  そして O 原子は−2
                         したがって Cl 原子は(+1

参考:酸化数は、イオンの価数と同じで、それぞれの原子に与えられる数値である。


                  - 29 -

[d]演習
[例題]次の反応式について、例にならって、酸化される物質(還元剤)と還元される物
質(酸化剤)の名称を書き、またそれに含まれる酸化数が変化する原子とその変化を示せ。
    例  硝酸銀  Ag(+1→0)

(1)Fe23 + 2Al −→ 2Fe + Al23
    酸化される物質:アルミニウム  Al(0→+3)
    還元される物質:酸化鉄(V)  Fe(+3→0)

(2)Zn + H2SO4 −→ ZnSO4 + H2
    酸化される物質:亜鉛  Zn(0→+2)
    還元される物質:硫酸  H(+1→0)

(3)PbCl2 −→ Pb + Cl2
    酸化される物質:塩化鉛  Cl(−1→0)
    還元される物質:塩化鉛  Pb(+2→0)

(4)H22 + 2KI −→ 2KOH + I2
    酸化される物質:ヨウ化カリウム  I(−1→0)
    還元される物質:過酸化水素  O(−1→−2)

(5)SO2 + 2H2S −→ 2H2O + 3S
    酸化される物質:硫化水素  S(−2→0)
    還元される物質:二酸化硫黄  S(+4→0)

(6)Cu + 4HNO3 −→ Cu(NO32 + 2H2O + 2NO2
    酸化される物質:銅  Cu(0→+2)
    還元される物質:硝酸  N(+5→+4)


                  - 30 -

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   宿題(9章)

1.「水を吸い上げる粉」実験についての次の文を完成し、下の問に答えよ。
 「スタンド」の上の黒い粉を強熱して、(水素)が入った集気びんを被せると(赤熱
状態になり()を上げて、アルミ皿の水を(吸い上げる)。そして黒い粉は(はだ)色
になる。
(1)全体としての反応式を書け。
    CuO + H2 −→ Cu + H2
(2)次の文を完成せよ。
 水素は酸素原子を(得る)ので酸化され、酸化銅(U)はそれを(失う)ので還元され
る。また水素は酸素原子を(奪う)ので相手を還元し、したがって(還元剤)である。他
方で酸化銅(U)は酸素原子を(与える)ので相手を酸化し、したがって(酸化剤)であ
る。
(3)赤鉄鉱を一酸化炭素で還元して鉄を生産する反応を、酸素原子のやり取りとして2
段階に分けて書き、積み算して全体の反応式を完成せよ。
    Fe23 −→ 2Fe + 3O
    3O + 3CO −→ 3CO2        (+
    Fe23 + 3CO −→ 2Fe + 3CO2
2.13の反応式を含む「電子得失表」をプリントを見ずに書けるようにせよ(上の7つ
を左側に、残りを右側に)。また下の文を完成せよ。








 電子を失う物質は電子得失表の(左辺)にあり、金属(陰イオン)(水分子)などが含
まれ、その勢いは()ほど大きい。これに対して電子を得る物質は(右辺)にあり、陽
イオン(非金属)水分子などが含まれ、その勢いは()ほど大きい。
3.次の場合について、反応が進行するときは全体としてのイオン反応式を、進行しない
ときは×を付けよ。
(a)酢酸鉛水溶液に亜鉛板を浸ける。
    Zn + Pb2+ −→ Zn2+ + Pb
(b)希塩酸に鉄粉を投入する。
    Fe + 2H+ −→ Fe2+ + H2
(c)銅片に希硫酸を注ぐ。
    ×
(d)亜鉛にヨウ素を混ぜて水をかける。
    Zn + I2 −→ ZnI2

                  - 1 -

4.電池と電気分解について次の文を完成し、下の問に答えよ。
 ダニエル電池では、()極では亜鉛が電子を(与える)(a)反応を起こし、電子を
流し出す)また()極では銅イオン)が電子を(奪う)(b)反応を起こし、電子
を(流し入れる)。
 塩化鉛を加熱して(融解)し、黒鉛電極を差し込んで(直流)を流すと、()極では
電子が(吸い出されて)、塩化物イオンが電子を(失う)(c)反応を起こされ、刺激臭
のある(塩素)が発生する。また()極では電子が(押し込まれて)、(鉛イオン)が
電子を(得る)反応を起こされ、銀白色の()が生成する。
 硫酸ナトリウム水溶液にBTBを加えてろ紙4枚に染み込ませ、ステンレス板でサンド
イッチにして手まわし発電機をしばらくまわすと、陽極側のろ紙2枚が(黄色)になり
(d)陰極側のろ紙2枚が(青色)になる(e)
(1)実験で作ったダニエル電池の構造をイラストで示せ。

                   図1


(2)下線部(a)(b)の反応式を書け。
  (a)Zn −→ Zn2+ + 2e-   (b)2e- + Cu2+ −→ Cu
(3)負極側の水溶液を食塩水に換えるとどうなるか。
    同じように電池としてはたらく
(4)ダニエル電池の電圧(起電力)は何を表すか。
    亜鉛と銅の電子を与える反応の勢いの差
(5)下線部(c)の反応式を書け。
    2Cl- −→ Cl2 + 2e-
(6)発生した塩素が標準状態における体積で160mlであった。流れた電気量は何C
か(答は整数で)。
    Cl2 が22.4[l]発生すると流れた電気量は193000C
      22400[ml]/193000[C] = 160/x
        x=1378.5・・・        答 1379C
(7)下線部(d)(e)を説明できる反応式を書け。
  (d)2H2O −→ 4H+ + O2 + 4e-
  (e)2e- + 2H2O −→ 2OH- + H2
5.次の反応式について、例にならって、酸化剤と還元剤の名称を書き、またそれに含ま
れる酸化数が変化する原子とその変化を示せ。 例  硝酸銀  Ag(+1→0)
(1)Fe23 + 2Al −→ 2Fe + Al23
    酸化剤:酸化鉄(V)  Fe(+3→0)
    還元剤:アルミニウム  Al(0→+3)
(2)Cu + 2AgNO3 −→ Cu(NO32 + 2Ag
    酸化剤:硝酸銀  Ag(+1→0)
    還元剤:銅  Cu(0→+2)

               ( )組 ( )番 氏名(      )

                  - 2 -


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