キーワード
高校、化学、教材、自主編成、教科書、(高校化学、化学教材)

                                   02.4
                                   林 正幸

9.酸化・還元および電子やり取り(その1)

授業計画

 時間          項  目              備  考
  1   
実験1.「水を吸い上げる粉」とテルミット反応
  2   1.酸素原子やり取り
  3   2.テルミット反応と製鉄
  4   実験2.金属と水溶液およびダニエル電池
  5   3.金属のイオン化傾向
  6   4.金属の電子やり取り
  7   5.電池の原理      [a]ダニエル電池
                   [b]電池の原理
  8                [c]ダニエル電池の補足
      6.いろいろな電池    [a]ボルタの電池
  9                [b]マンガン乾電池  分解した乾電池
                   [c]鉛蓄電池(バッテリー) デモ実験
                   [d]燃料電池
 10   実験3.塩化鉛の融解塩電解と紫色の気体
 11   7.電気分解の原理
 12   8.非金属の電子やり取り
 13   9.水分子の電子やり取り         電気で色を付ける
 14  10.いろいろな電気分解  [a]希硫酸の電解      デモ実験
                   [b]おもしろニッケルめっき プレート
 15                [c]銅の電解精錬
                   [d]アルミニウムの電解製錬
 16  11.酸化・還元の拡張   [a]酸化・還元の意味

                  - 1 -

                   [b]酸化数の増減
 17                [c]酸化数の見つけ方
                   [d]演習
 18  宿題(演習)



備考:「いろいろな電池」と「いろいろな電解」は、この章の内容が多くなりすぎて混乱
   する恐れがあるので、宿題には含めず問題集の学習と同じ応用編として扱う。





















                  - 2 -

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1.酸素原子やり取り

[a]水を吸い上げる粉(実験のまとめ)
[1]「スタンド」の上の(黒い粉)を強熱して、水素が入った集気びんを被せると、
赤熱)状態になり()を上げて、アルミ皿の水を(吸い上げる)。そして黒い粉は
はだ)色になる。
[2]いったい何が起きたのだろうか。燃焼できるのは(水素)である。そして黒い粉が
それに必要な酸素を与え、()に変化する。黒い粉は(酸化銅 CuO )である。そし
て観察した炎は通常と逆で、外から燃料が供給されている。
 水素は(酸素原子)を得て燃焼し、水蒸気になりさらに凝縮して()になる。水素が
減った分だけ水が吸い上げられる。酸化銅は酸素原子を与えて銅になる。実験の反応式は
次のようである。
    ( CuO + H2 −→ Cu + H2 )
参考:ここでは CuO を単に酸化銅と呼んだが、正確には酸化銅(U)と命名すべきで
   ある。これに対して Cu2O は酸化銅(T)と命名する。これらのローマ数字は
   「酸化数」と呼ばれ、この章の終で学習する。このように似た化合物などを区別す
   る必要があるときに酸化数を利用することがある。

[b]酸素原子のやり取り
[1]これまでは上の反応を還元反応と呼んだ。これに対して次のような反応は酸化反応
であった。
    2H2 + O2 −→ 2H2
 しかし実験の反応は、酸化銅(U)ではなく水素に注目すると酸化反応と言いたくなる。
用語の使い方を厳密にして考えてみよう。
[2]これからは物質が酸素原子を(得る)ことをその物質が「酸化される」と定義し、
反対に物質が(酸素原子)を失うことを「還元される」と定義しよう。いずれも「され
る」と(受身形)であることに注意する。
 すると実験の反応では、酸化銅(U)が(還元)され、水素が(酸化)される。そして
この反応は次のように「酸素原子のやり取り」になる。

                  - 3 -

    ( CuO −→ Cu + O )
    ( O + H2 −→ H2 )    (+
  CuO + H2 −→ Cu + H2
[3]いくつもの反応がこのように(酸素原子のやり取り)として理解できる。その場合
は酸化と還元が同時に起きるので、このような反応は(酸化還元反応)と呼ばれる。

[c]酸化剤と還元剤
[1]同じことを今度は(能動形)で考えてみよう。相手物質に酸素原子を(与える)こ
とをその物質が「酸化する」と定義し、反対に相手物質から(酸素原子)を奪うことを
「還元する」と定義しよう。
 日本語の表現は能動形のイメージがうすいので、「酸化する」は相手を酸化することで
あると意識しよう。「還元する」も同じである。
[2]すると実験の反応では、(酸化銅(U))が酸化し、(水素)が還元している。受
身形と絡めると、酸化銅(U)は自分が(還元されて)相手を酸化し、水素は酸化されて
還元する)ことになる。
 そして相手物質を酸化する薬剤は(酸化剤)と、相手物質を還元する薬剤は(還元剤
と呼ばれる。

参考:受身形には「得失」を、能動形には「与奪」を使おう。

問1 [b]と[c]の内容を整理せよ。
    酸化銅(U):酸素原子を失う=還元される=
           酸素原子を与える=酸化する=酸化剤
    水素:酸素原子を得る=酸化される=
       酸素原子を奪う=還元する=還元剤

[d]考察
・水質汚濁の指標のひとつにCOD(化学的酸素要求量)がある。これは有機物などによ
る汚染を、酸化剤の過マンガン酸カリウム KMnO4 を使って計測する。よりくわしく調
べてみよう。

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2.テルミット反応と製鉄

[a]テルミット反応(実験のまとめ)
[1]乾燥した赤褐色の(酸化鉄(V)Fe23 )と銀色の(アルミニウム粉末)を混ぜ
て、水で湿らせたろ紙に入れる。マグネシウムリボンをマッチにして反応をスタートさせ
ると()を吹き上げ、赤熱状態の()ができる。やがてそれは水中に落下して(海底
火山)のようになり、取り出した灰白色のかたまりは(磁石)に付く。
参考:鉄の酸化物には Fe23 酸化鉄(V)や FeO 酸化鉄(U)がある。

問1 実験の反応ではアルミニウムは酸化アルミニウム Al23 になり、やはり酸素原
子のやり取りになっている。反応式を2段階に分けて書き、酸化される物質と還元される
物質を示せ。また酸化する物質つまり酸化剤と、還元する物質つまり還元剤は何か。
    Fe23 −→ 2Fe + 3O
    3O + 2Al −→ Al23       (+
    Fe23 + 2Al −→ 2Fe + Al23
     ↑     ↑
   還元される 酸化される
     ‖     ‖
   酸化する  還元する
     ‖     ‖
    酸化剤   還元剤
[2]問1から分かるように酸化鉄(V)を鉄に(還元した)のは、物質を主語にすると
アルミニウム)である。そして人間を主語にすると、私たちはアルミニウムを(使用し
)酸化鉄(V)を還元して鉄を取り出したのである。能動表現の主語については7章で
注意した。

[b]製鉄(鉄の製錬)
[1]鉄鉱石の代表は(赤鉄鉱)でその主成分は(酸化鉄(V)Fe23 )である。だか
らこれから鉄を生産するには(酸素原子)を奪う必要がある。つまり(還元剤)を使用す

                  - 5 -

る。
 溶鉱炉(高炉)に、上から鉄鉱石と(コークス)それに石灰岩を詰めて、下から(
)を送り込む。
 すると(炭素)であるコークスが酸素と反応して、次のように(一酸化炭素)が生成す
る。高温では二酸化炭素より一酸化炭素が生成しやすい。
      2C + O2 −→ 2CO
これが次のように還元剤としてはたらく。
    ( Fe23 + 3CO −→ 2Fe + 3CO2 )
生成した鉄は(融解)した状態で炉の底にたまる。石灰岩は鉄鉱石の不純物と反応して
スラグ)と呼ばれるものになって分離する。
[2]溶鉱炉から流し出す鉄は、そのまま冷却すると硬いがもろさのある(銑鉄)と呼ば
れる鉄になる。それは(炭素)を4%ほど含むためで、溶鉱炉からの鉄の多くは引き続い
て(転炉)に移し、酸素を吹き込んで炭素を一酸化炭素にして取り除く。高温では鉄その
ものは酸素と化合しにくい。こうして炭素を少なくした鉄は(鋼鉄)と呼ばれ、弾性が大
きくて強い。
 鉄の生産量は金属の中でずば抜けて大きく、世界中で13億トン、日本で1.7億トンに
上る(98年 「日本国勢図会」(国勢社)より)。

問2 溶鉱炉のイラストを完成せよ。

      



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3.金属のイオン化傾向

[a]金属と水溶液(実験のまとめ)
 (硝酸銀)水溶液に(銅板)を浸けると、表面に白色のコケのような、そしてろ紙にこ
すり付けると(金属光沢)のある()が付着し、水溶液がすこし()色になる。この
反応式は次のようである。
    Cu + 2AgNO3 −→ Cu(NO32 + 2Ag        (1)
          硝酸銀     硝酸銅
ちなみに硝酸銅が水に溶けると緑色になる。
 (酢酸鉛)水溶液に(亜鉛板)を浸けると、表面に黒色の、ところどころに金属光沢の
ある()が付着する。
    Zn + (CH3COO)2Pb −→ (CH3COO)2Zn + Pb (2)
           酢酸鉛          酢酸亜鉛
 (硫酸銅)水溶液に(鉄くぎ)を浸けると、表面に褐色のヘドロのような()が付着
する。
    Fe + CuSO4 −→ FeSO4 + Cu            (3)
         硫酸銅    硫酸鉄(U)
 (塩酸)に(アルミ箔)を投入すると、しばらくして気体の(水素)が発生する。
    2Al + 6HCl −→ 2AlCl3 + 3H2          (4)
              塩化アルミニウム
[b]イオン反応式
 (電解質)は水に溶けて陽イオンと陰イオンに電離する。6章で学習したように、電解
質には水に溶けやすい(イオン性物質)と、()とくに強酸が含まれる。
 水溶液中の反応では、電解質をイオンに分けて書いた方が理解しやすいことが多い。た
とえば(1)の反応式は次のようになる。
    Cu + 2Ag+ + 2NO3 - −→ Cu2+ + 2NO3 - + 2Ag
しかし硝酸イオンは変化していないので、省いて次のように書くべきである。
    ( Cu + 2Ag+ −→ Cu2+ + 2Ag )    (5)
                銅イオン

                  - 7 -

つまり銅と銀イオンが反応して(銅イオン)と()が生成していることが分かる。
 このようにイオン式を含む反応式は(イオン反応式)と呼ばれる。イオン反応式はすで
に8章ですこし学習した。
参考:ふつうの反応式はどの原子もその個数が変化しないように書き表すが、イオン反応
   式ではそれに加えて(電気)の総量が変化しないように注意する。

問1 (2)〜(4)の反応式もイオン反応式に直せ。
  (2) Zn + Pb2+ −→ Zn2+ + Pb       (6)
  (3) Fe + Cu2+ −→ Fe2+ + Cu       (7)
             鉄(U)イオン
  (4) 2Al + 6H+ −→ 2Al3+ + 3H2     (8)

[c]金属のイオン化傾向
[1]2章などで学習したように、金属は(陽イオン)になる。そして(5)のイオン反
応式は()の方が()より陽イオンになりやすいことを示している。
           Cu > Ag
同様に(6)は  ( Zn > Pb )
   (7)は  ( Fe > Cu )
   (8)は  ( Al > H2 )  を示している。
 これらの金属の全体の順番は次のようになっている。
    ( Al > Zn > Fe > Pb > H2 > Cu > Ag )
水素は(非金属)であるが、陽イオンになるので仲間に含める。
[2](5)と(7)の反応式から分かるように、相手によって銅が銅イオンになったり、
銅イオンが銅になったりする。これはどの金属にも当てはまることである。
 以上はすべて水溶液中の反応から導き出された。こうして(水溶液中)で金属が陽イオ
ンになる性質は金属の(イオン化傾向)と呼ばれる。そしてその順番は(イオン化列)と
言う。
[3]一般的にイオン化傾向が(大きい)金属はその反応性が(激しい)と言える。この
ことについては順を追って学習していく。

                  - 8 -

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4.金属の電子やり取り

[a]電子得失表
[1]金属のイオン化傾向を別の視点から眺めてみよう。たとえば亜鉛が(陽イオン)に
なるには、次のように電子を(失う)ことを伴う。
    Zn −→ Zn2+ + 2e-
ここで( - )は電子を表す記号である。だから金属は(電子を失う傾向)を持つと言い
換えてもよい。
 実験した金属が電子を失う反応式を、イオン化列の順番に並べると次のような表になる。
    ( Al −→ Al3+ + 3e- )
    ( Zn −→ Zn2+ + 2e- )
    ( Fe −→ Fe2+ + 2e- )
    ( Pb −→ Pb2+ + 2e- )
    ( 2 −→ 2H+ + 2e- )
    ( Cu −→ Cu2+ + 2e- )
    ( Ag −→ Ag+ + e-  )
もちろんこの表において、左辺の(金属)は()から電子を失いやすい順番に並んでい
る。
参考:上の表はイオンの価数に注目すれば簡単に書き下すことができる。
[2]さて今度は右辺の陽イオンに注目する。すでに確認したように(陽イオン)の方は
電子を(得て)金属にもどる傾向を持つ。つまり上の反応式は左向きに進むこともある。
そしてすぐに気付くように、陽イオンは()から電子を得やすい順番に並んでいる。こ
れはイオン化傾向を裏返しに見ているのである。
 上の表では矢印はたとえば次のように両向きに書くべきである。
      Zn ←→ Zn2+ + 2e-
そのように書いた表を(電子得失表)と名付けよう。
参考:ワープロの制約から「←→」と表しているが、正しい書き方を確認しておこう。

[b]金属と陽イオンの電子やり取り

                  - 9 -

[1]「金属と水溶液」実験の反応を見直してみると、それが(電子のやり取り)になっ
ていることに気付く。たとえば(5)の反応式は、次のように2つの段階に分けて書くこ
とができる。
    ( Cu −→ Cu2+ + 2e- )
    ( 2e- + 2Ag+ −→ 2Ag     (+
      Cu + 2Ag+ −→ Cu2+ + 2Ag
      ↑     ↑
    電子を失う 電子を得る
      ‖     ‖
    電子を与える 電子を奪う
[2]これを電子得失表で検討してみると、銅と銀では()の方が電子を失いやすく、
銀イオンと銅イオンでは(銀イオン)の方が電子を得やすいので、この反応が(右向き
に進行し、左向きには(進行しない)ことが説明できる。つまり電子得失表において(
下がり)の斜線で結ばれる物質どうしは自然に反応する。
 ちなみに以上は受動表現になっているが、酸素原子のやり取りと同様に、「電子を与え
る」や「電子を奪う」という(能動)表現も使える。

問1 (6)〜(8)の反応式も電子のやり取りとして2段階に分けて書け。
(6)の反応
    Zn −→ Zn2+ + 2e-
    2e- + Pb2+ −→ Pb    (+
    Zn + Pb2+ −→ Zn2+ + Pb
(7)の反応
    Fe −→ Fe2+ + 2e-
    2e- + Cu2+ −→ Cu    (+
    Fe + Cu2+ −→ Fe2+ + Cu
(8)の反応
    2Al −→ 2Al3+ + 6e-
    6e- + 6H+ −→ 3H2       (+
    2Al + 6H+ −→ 2Al3+ + 3H2

                  - 10 -

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                                   No

5.電池の原理

[a]ダニエル電池(実験のまとめ)
 (亜鉛板)にクッキングペーパーを載せて硫酸亜鉛水溶液を染み込ませる。これに(
ロハン)を被せ、もう1枚クッキングペーバーを載せて、今度は(硫酸銅)水溶液を染み
込ませる。これに(銅板)を被せて豆電球につなぐとあかあかと点灯する。おもちゃも動
く。テスターで調べると電圧は(1.1)Vである。

[b]電池の原理
[1]電池の秘密を解明しよう。豆電球やおもちゃの導線を流れる電気の正体は(電子
である。電子は()電気を持つので、電子を流し出す電極が(マイナス)極で、その電
子が流し入れる電極が(プラス)極である。
 このような電子の流れを発生させるにはどのような仕掛けをつくればよいだろうか。そ
の答はすでに学習した電子のやり取りにある。つまりマイナス極では物質が電子を(与え
)反応を起こすように、そしてプラス極では物質が電子を(奪う)反応を起こすように
すればよい。
[2]実験では亜鉛板が(マイナス)極になる。亜鉛は(金属)だから、電子得失表にあ
る次の反応で電子を与える。
    ( Zn −→ Zn2+ + 2e- )
そしてそれで発生する電子を流し出す。
 ところで()も金属である。しかし亜鉛の方が電子を与え(やすい)。言い換えると
亜鉛の方が(イオン化傾向)が大きい。つまり銅は電子を与える戦いに負ける。こうして
銅板)はプラス極になり、電子を奪う反応の(場所)になる。
 電子を奪うのは(陽イオン)だから、硫酸銅 CuSO4 から生じる銅イオンが次の反応
で電子を奪う。電子得失表の反応式を左向きに進むように書けばよい。
    ( 2e- + Cu2+ −→ Cu )
そしてそれに必要な電子を流し入れる。
[3]このように電池は(電子のやり取り)で成り立つ。そして電池においてはプラス極
は(正極)と、マイナス極は負極と言うべきなので次のようにまとめられる。

                  - 11 -

  ( 電池では物質が能動的に、負極で電子を与える反応を、
                    正極で電子を奪う反応を起こす。 )
 電池はそれを構成する物質が電子の流れを発生させるので、(能動)表現を使うように
しよう。その意味で前節の表は「電子与奪表」でもある。それから(負極)から考えると
分かりやすい。
参考:電流の向きは正極から流れ出し負極に流れ入ると定義されているので、電子の流れ
   と逆向きになるから注意する。

問 ダニエル電池をイラストでまとめよ。

      

[c]ダニエル電池の補足
[1]ダニエル電池では全体としての反応は、負極と正極の反応式を積み算すればよい。
    負極  Zn −→ Zn2+ + 2e-
    正極  2e- + Cu2+ −→ Cu     (+
      ( Zn + Cu2+ −→ Zn2+ + Cu )
 電池が放電するに連れて、負極の亜鉛板は質量が減り、実験でも確認できたように正極
の銅板は銅が(付着して)質量が増える。
[2]亜鉛板において起きる反応では、生成する亜鉛イオンは(水溶液)に溶け出し、電
子の方は(亜鉛板)に留まる。これはイオンは水和して安定になり、電子は金属中で自由
電子の仲間入りをして安定になるためである。このように正電気と負電気が分離すること
は電池ができる条件である。


                         (続く)

                  - 12 -

                                   No

[3]セロハンはどんなはたらきをするのだろうか。それは(銅イオン)が亜鉛板の表面
に移動して、そこで直接に電子のやり取りをしてしまわないように(隔離)している。実
際に硫酸銅水溶液に亜鉛板を付けると、同じ反応が起きて亜鉛板の表面に銅が付着する。
[4]それでは(硫酸亜鉛)は必要であろうか。電池が放電すると、左図のように(
)付近は亜鉛イオンが生成して(正電気)を帯びる。また正極付近は銅イオンが反応す
るに伴い(硫酸イオン)が相手を失うので負電気を帯びる。このままでは電池としてはた
らかず、それぞれのイオンが相手の電極に移動する必要がある。ところが液体は4章で学
習したように、分子がほぼ接触してひしめくような状態であるので、イオンは簡単には移
動できない。
 電解質が溶けた水溶液では、右図のように(玉突き式)に電気だけがすばやく相手の電
極まで移動できるようになるのである。

      

 実際に硫酸亜鉛水溶液を純水に換えると、ダニエル電池ははたらかなくなる。それから
セロハンであるが、これは6章で触れたように半透膜であり、亜鉛イオンと硫酸イオンが
通り抜ける)ことを保証しているのである。
[5](ダニエル電池)では亜鉛が電子を与える反応を起こすが、たとえば亜鉛電極の側
を銀板と硝酸銀水溶液に換えれば、電子得失表から分かるように銅が銅イオンになって電
子を与える反応を起こす。つまりダニエル電池では亜鉛と銅が電子を与える反応で(攻め
ぎ合って)いる。そしてその電圧(起電力)は2つの「勢い」の()を表している。こ
うしてダニエル電池タイプの電圧を次々に計測すると、電子を与える反応の勢いを数値で
比較できるようになる。

                  - 13 -

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6.いろいろな電池

[a]ボルタの電池
[1]1799年に(ボルタ)は食塩水を染み込ませた布を亜鉛板と銅板ではさみ、はじ
めて電池を発明した。そして(希硫酸)に亜鉛板と銅板を差し入れたものは(ボルタの電
)と呼ばれる。
 この電池では亜鉛が電子を与えて負極になる。
    負極 ( Zn −→ Zn2+ + 2e- )
そして正極の銅板では硫酸 H2SO4 から生じる(水素イオン)が、次のように電子を奪
う。
    正極 ( 2e- + 2H+ −→ H2 )
[2]この電池では硫酸と亜鉛板が接触するので、電子のやり取りの一部は亜鉛と水素イ
オンが直接に起こして、亜鉛板の表面からも一部水素が発生する。ただしこの反応は水素
過電圧という現象のおかげで抑えられている。
 亜鉛ほどではないが同じ理由から、銅板の表面でも水素が発生する反応は起きにくく、
このような理由でボルタの電池はパワーが得られない。この現象は(電池の分極)と言う。
 これに対してたとえば希硫酸に(過酸化水素水)を加える。すると水素が次のように反
応するので
    H2 + H22 −→ 2H2
正極の全体としての反応は次のようになり、電池のパワーが得られるようになる。
    2e- + 2H+ + H22 −→ 2H2
 過酸化水素のような物質は(減極剤)と言うことがあるが、むしろ水素イオンと過酸化
水素が共同で電子を奪うととらえる方がよい。

[b]マンガン乾電池
 (マンガン乾電池)は最も多く使用される電池である。これはやや単純化して説明する
と、(黒鉛粉末)と(酸化マンガン(W) MnO2 )を混ぜて(塩化亜鉛 ZnCl2 )水
溶液で練る。これを(黒鉛棒)に巻き付けて円筒形にする。そして塩化亜鉛水溶液が染み
込んだ(セパレータ)と呼ばれる紙で包み、(亜鉛容器)に詰め込んで製造される。
                         (続く)

                  - 14 -

                                   No

問1 マンガン乾電池の仕組みは使い終わったものを分解してみると分かりやすい。この
電池の仕組みをイラストで描け。

      

[c]鉛蓄電池(バッテリー)
[1](希硫酸)を染み込ませたクッキングペーパーを2枚の(鉛板)でサンドイッチに
して、(手まわし発電機)をつないで十分にまわすと、手を離してもハンドルが(まわり
続ける)ようになる。回転が止まったら再び発電機をまわしてやると、またハンドルが自
分でまわる。途中で鉛板につないだクリップを外すと(止まり)、もう一度つなぐと再び
ハンドルがまわる。
[2]はじめに発電機をまわすと電気分解が起こり、一方の鉛板の表面が(酸化鉛(W)
PbO2 )に変化して、図のような(鉛蓄電池)が完成する。

      

[3]そして手を離すと放電がおこり、発電機はモーターとして回転する。負極は変化し
ていない方の(鉛板)で、鉛と硫酸イオンが共同で電子を与える。
  負極 Pb + SO4 2- −→ PbSO4 + 2e-            (1)
                 硫酸鉛
そして生成する(硫酸鉛)は水に溶けにくく電極に付着する。
 正極では次のように水素イオンが酸化鉛(W)および硫酸イオンと共同で電子を奪う。

                  - 15 -

  正極 2e- + 4H+ + PbO2 + SO4 2- −→ PbSO4 + 2H2O (2)
              酸化鉛(W)
こちらの硫酸鉛も電極に付着する。
 電池が放電するにつれて両方の電極とも質量が(増加する)。また希硫酸はうすくなる。
[4]再び発電機をまわすと電子の流れが放電と逆になり、今度は(1)(2)の反応と
も(逆向き)に進行して鉛蓄電池が再生する。この操作は(充電)と呼ばれる。このよう
に充電により再生してくり返し使用できる電池は(二次電池)と呼ばれる。

[d]燃料電池
[1]現在まさに次世代自動車の動力源にする(燃料電池)が開発を終えようとしている。
ここでは最初に実用化された図のような仕組みの燃料電池について学習する。

      

 (水素)が供給される電極が(負極)であり、水素が水酸化カリウム KOH から生じ
る(水酸化物イオン)と共同で電子を与える。
    負極  2H2 + 4OH- −→ 4H2O + 4e-
この反応式の係数は次の反応式との関係で通常の2倍にしている。
 (酸素)が供給される正極では、酸素が(水分子)と共同して電子を奪う。
    正極  4e- + O2 + 2H2O −→ 4OH-
[2]全体としての反応は積み算して次のようになる。
    2H2 + O2 −→ 2H2
これは水素の(燃焼反応)と同じであるが、上のように電池に仕組むと反応熱を電気エネ
ルギーとして取り出すことができる。熱エネルギーに比べて電気エネルギーの(効率)は
格段に高いという利点がある。そして大気汚染、環境問題に対しても有効である。
 ちなみに上の反応式はこの章が終わるまでに理解できるようになる。

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