キーワード
高校、化学、教材、自主編成、教科書、(高校化学、化学教材)

                                   02.3
                                   林 正幸

  8.酸と塩基

授業計画

時間      項 目                    備 考
 1  
1.酸と塩基     [a]酸とは何か      亜鉛と硫酸の反応
 2             [b]塩基とは何か
    2.酸の強弱と酸性の強さ [a]酸・塩基の強弱  塩酸と酢酸の電導性
 3               [b]酸性・塩基性の強さ
    3.水素イオン指数  [a]水のイオン積
               [b]酸性・塩基性の意味
 4             [c]水素イオン指数    紫キャベツの変色
 5  実験1 酸化物から酸と塩基をつくる
 6  4.酸性酸化物と塩基性酸化物
               [a]硫黄から硫酸をつくる
               [b]割りばしから炭酸などをつくる
               [c]チョークから水酸化カルシウムをつくる
               [d]酸性酸化物と塩基性酸化物
 7             [e]酸性雨
    5.中和反応     [a]中和反応
 8             [b]注意したいこと
               [c]食酢の中和滴定    デモ実験
 9             [d]中和滴定の関係式
               [e]酸化物と酸・塩基の反応
10  実験2 塩から酸と塩基をつくる
11  6.塩の反応     [a]気体の酸と塩基をつくる
12             [b]弱酸と弱塩基をつくる

                  - 1 -

               [c]塩の反応
13  宿題(演習)



 生徒の混乱を避けるため、酸と塩基はアレニウスの定義に限定した。
























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1.酸と塩基

[a]酸とは何か
[1]現代では1000万種を越える多種多様な物質が発見されたり、合成されたりして
いる。その中には(共通の)性質を持つ似た物質のグループがいくつも存在する。似た物
質のグループはまとめて学習することができる。
 そんなグループの中で、2つのグループが互いに相手を(打ち消し合う)関係にある場
合がある。打ち消し合うグループについては、2つのグループの関係もまとめて学習する
ことができるわけである。
 このようなグループの代表に、酸と塩基、酸化剤と還元剤がある。前者についてはこの
章で、後者については次章で学習する。
[2]酸と呼ばれるグループは、その水溶液が
・なめると(酸味)がある
・指示薬BTBを(黄色)にする(リトマス紙を赤色にする)
・亜鉛などの(金属)と反応して(水素)を発生する
という共通の性質がある。もちろん
・(塩基)と反応してその性質を打ち消す
のも共通である。これらの性質は(酸性)と呼ばれる。
[3]酸が共通の性質を持つ理由は
  「()は水に溶けると水素イオン H+ が生じる」
ためである。したがって酸性は(水素イオン)が持つ性質と言うことができる。
 たとえば塩酸(塩化水素)は水に溶けると次のように電離して水素イオンが生じる。
  ( HCl −→ H+ + Cl- )
            塩化物イオン
 6章で触れたように、酸は(分子性)物質でありながら水に溶けると陽イオンと陰イオ
ンに(電離)する。実はこれは塩酸が次のように水と反応しているためである。
    HCl + H2O −→ H3+ + Cl-
3+ はオキソニウムイオンと言うが、これを簡単のために H+ で表している。だから
酸が酸性を示すためには()が欠かせないことが多い。

                  - 3 -

参考:正確には塩化水素(気体)が水に溶けたものを塩酸と呼ぶ。

問1 「亜鉛と硫酸の反応」実験をイラストで描け。

    


問2 次の酸が水に溶けて電離する反応式を書け。
  硫酸   H2SO4 −→ 2H+ + SO4 2-
                  硫酸イオン
  硝酸   HNO3 −→ + + NO3 -
                硝酸イオン
  酢酸   CH3COOH −→ CH3COO- + H+
                 酢酸イオン
  リン酸  H3PO4 −→ 3H+ + PO4 3-
                  リン酸イオン
[4]酢酸の化学式は示性式と呼ばれるもので13章で学習する。ここではこの一例のみ
が登場するので、とりあえず記憶しよう。また(酢酸)分子には全部で4つの水素原子が
含まれるが、水に溶けて水素イオンになるのは1つだけである。つまり分子中のすべての
水素が電離するわけではない。
 なお(イオン式)が書けるように、原子価やイオンの価数に注意を払おう。
[5]1分子の酸からいくつの水素イオンが生じるかによって、塩酸、硝酸、酢酸は(
)の酸であり、硫酸は(2価)の酸であり、リン酸は(3価)の酸であると言う。
 塩基についても同様の用語を使う。


                         (続く)

                  - 4 -

                                   No
[b]塩基とは何か
[1]塩基と呼ばれるグループは、その水溶液が
・なめるとある種の(苦味)がある。
・指示薬BTBを(青色)にする(リトマス紙を青色にする)
・塩素のような非金属と反応する
という共通の性質がある。もちろん
・酸と反応してその性質を打ち消す
のも共通である。これらの性質は(塩基性)と呼ばれる。
[2]塩基が共通の性質を持つ理由は
  「(塩基)は水に溶けると水酸化物イオン OH- が生じる」
ためである。したがって塩基性は(水酸化物イオン)が持つ性質と言うことができる。
 たとえば水酸化ナトリウムは水に溶けると次のように電離して水酸化物イオンが生じる。
  ( NaOH −→ Na+ + OH- )
        ナトリウムイオン
塩基の多くは(イオン性)物質であり、これが電離することは6章で学習した。
 (アンモニア)は分子性物質の塩基であるが、次のように水と反応して水酸化物イオン
が生じる。
  ( NH3 + H2O −→ NH4 + + OH- )
           アンモニウムイオン
当面はこのような例はアンモニア以外は登場しないので覚えてしまおう。

問3 次の塩基が水に溶けて電離する反応式を書け。
  水酸化カリウム   KOH −→ + + OH-
                カリウムイオン
  水酸化カルシウム  Ca(OH)2 −→ Ca2+ +2OH-
                   カルシウムイオン
  水酸化銅      Cu(OH)2 −→ Cu2+ + 2OH-
                     銅イオン

                  - 5 -

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2.酸の強弱と酸性の強さ

[a]酸・塩基の強弱
問1 「塩酸と酢酸の電導性」実験をイラストで描け。

    


[1]モル濃度が同じ0.5mol/lでも、塩酸は電球テスターが明るくつくが、(
)水溶液では(ぼんやり)つくだけである。これは水に溶けている酸の分子のうちで、
電離している度合(電離度)が異なるためである。塩酸は100%電離している(電離度
が1と表す)のに対して、酢酸は1%(電離度が0.01と表す)程度しか電離していない。
 電離度がほぼ1の酸は(強酸)と呼ばれ、これに対して電離度が0.01程度以下の酸は
弱酸)と呼ばれる。
参考:上の強酸、弱酸の定義は初歩的なものである。電離度は酸のモル濃度によって変化
   する。よりくわしくは17章で学習する。

問2 1節で出てきた酸を強酸と弱酸に分けておこう。
    HCl 、H2SO4 、HNO3 、H3PO4 > CH3COOH
     塩酸  硫酸   硝酸   リン酸     酢酸
                 4節からの追加  、H2SO3 、H2CO3
                            亜硫酸  炭酸



                         (続く)

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                                   No

[2]塩基の強弱は複雑なので、酸の場合と似た考え方をするとして、結論だけを確認し
ておきたい。
問3 1節で出てきた塩基を強塩基と弱塩基に分けておこう。
    NaOH 、KOH 、Ca(OH)2 > NH3 、Cu(OH)2
  水酸化ナトリウム  水酸化カルシウム  アンモニア 水酸化銅
        水酸化カリウム

[b]酸性・塩基性の強さ
[例題]0.001mol/l硫酸の水素イオンのモル濃度はおよそいくらか。
    この水溶液1[l]を考えると
      H2SO4 は(0.001)mol溶けている。
    硫酸は()価であり、そして()酸であるので
      水素イオン H+ は(0.002)mol溶けている。
                    答 0.002mol/l
 酸に価数があり、また酸に強弱があるため、水溶液の酸性の強さは、溶けている酸のモ
ル濃度ではなく、(水素イオン)のモル濃度で表すことが合理的である。
 水溶液の塩基性の強さは水酸化物イオンのモル濃度で表す。
参考:塩基性をアルカリ性と言うことがある。










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3.水素イオン指数

[a]水のイオン積
 17章で学習する化学平衡の理論から、純水を含め比較的うすい水溶液では、水素イオ
ンのモル濃度と水酸化物イオンのモル濃度の積は一定になることが導かれる。具体的には
    1×10-14[mol2/l2](温度によって変化する)
であり、この数値は(水のイオン積)と呼ばれる。関係式にすると
  ( [H+][OH-] = 10-14 )
となる。ここで[ ]は(モル濃度)を意味し、[H+]は水素イオンのモル濃度を表して
いる。
[b]酸性・塩基性の意味
[1]これまで酸性は水溶液中の水素イオンに依っており、塩基性は水溶液中の水酸化物
イオンに依っていると説明してきた。したがって中性の水溶液、あるいは純水中には水素
イオンも水酸化物イオンも存在しないと考えられる。これは(おおむね)正しい。
[2]しかし厳密には、水分子は極めてわずかだが次のように電離している。
  ( 2O −→ H+ + OH- )
つまり水素イオンと水酸化物イオンは、(中性)の水溶液にも存在している。そのモル濃
度は
    [H+]=[OH-]と水のイオン積から
    [H+2 = 10-14
  ( [H+]=10-7[mol/l]=[OH- )
と求められる。
    10-7 = 1/107 = 1/10000000
であるから、確かにわずかなことである。
[3]さて酸性という性質は中性の水溶液に酸を溶かして生じるので、酸性とは
  ( [H+]>10-7[mol/l] )
である。
 もちろん余程うすくないかぎり、水素イオンのモル濃度は加えた酸によって決まり、水
が電離して生じる水素イオンは無視できる。
                         (続く)

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                                   No

[4]同様にして塩基性とは
    [OH-]>10-7[mol/l]
である。そして水のイオン積から
  ( [H+]<10-7[mol/l] )
であるとも言える。
 これから導かれる結論は、酸性、中性、(塩基性)のすべてが水素イオンのモル濃度で
表示できるということである。

問1 0.01mol/l水酸化ナトリウム水溶液の水素イオンのモル濃度はいくらか。
 (1)この水溶液1[l]を考えると
      NaOH は0.01mol溶けている。
    水酸化ナトリウムは1価で強塩基だから
      水酸化物イオン OH- は0.01mol溶けている。
    つまり [OH-]=0.01=10-2[mol/l]
 (2)水のイオン積から
    [H+]×10-2 = 10-14
      [H+]=10-12
                    答 10-12mol/l 
参考:10a×10b = 10a+b
   10-c = 1/10c 
   (a、b、cは負でも成り立つ)

[c]水素イオン指数
[1]ところで、酸性、中性、塩基性を表示するのに、水素イオンのモル濃度の(指数
部分の符号を変えた数値を使うことができる。たとえば
       [H+]=10-5[mol/l]  では   5
    中性 [H+]=10-7[mol/l]  では   7
    問1 [H+]=10-12[mol/l] では  12

                  - 9 -

というようである。この数値は(水素イオン指数)ないしpH(ピーエイチ)と呼ばれる。

問2 酸性、中性、塩基性と、水素イオン濃度、pHの関係をまとめてみよう。

    


[2]水溶液の液性はたいてい(pH)で表示される。それなら水素イオンのモル濃度で
はなく、その指数部分を使う意味は何だろうか。
 すこし難しくなるが、6章で物質が変化する「勢い」はモル濃度に比例することを学ん
だ。しかしより正確にはモル濃度の指数部分に比例しているのである。こんなわけで溶液
を2倍、3倍と希釈しても顕著な違いが現れないことが多い。その場合は溶液を(10
倍、(100)倍と希釈するとよい。
問3 「紫キャベツの変色」実験をイラストで描け。

    


[3]また上の実験は、水溶液のpHが物質に大きな影響を与えることを示している。生
物体内の各種の(酵素)は一種の触媒であるが、それぞれには(最適pH)がある。たと
えば胃でタンパク質を消化するペプシンは、胃酸(塩酸)によってpHが2になるときに
もっともよくはたらく。私たちの血液はpHが7.5に調節されており、たとえば過呼吸に
よってpHが大きくなると意識を失うなどの障害を引き起こす。

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4.酸性酸化物と塩基性酸化物

注意:この節からは反応式がどんどん出てくる。3章4節を復習し、それを踏まえて記憶
   していこう。

[a]硫黄から硫酸をつくる(実験のまとめ)
[1](硫黄)に点火して(集気びん)の中で燃焼させて(二酸化硫黄)を発生させる。
このとき次の反応が起きる。
    S + O2 −→ SO2
          二酸化硫黄
二酸化硫黄は(無色)で刺激臭のある(気体)である。
 二酸化硫黄を()と振り混ぜると、(BTB)が黄色になり水溶液が(酸性)になる
ことを示す。このとき次の反応が起きる。
    ( SO2 + H2O −→ H2SO3 )        (タイプ1)
                亜硫酸
生成する(亜硫酸)は弱酸である。また塩化バリウムとは反応しない。
[2]亜硫酸水溶液に(過酸化水素水)を加えると次の反応が起きて(硫酸)が生成する。
      H2SO3+ H22 −→ H2SO4 + H2
           過酸化水素  硫酸
硫酸水溶液に(塩化バリウム)水溶液を加えると、次の反応が起きて(白色)沈でんが生
じる。
    H2SO4 + BaCl2 −→ 2HCl + BaSO4
         塩化バリウム        硫酸バリウム
白色沈でんは硫酸バリウムで、これは硫酸を検出する反応である。

[b]割りばしから炭酸などをつくる(実験のまとめ)
[1](割りばし)に点火して集気びんの中で燃焼させると、はしの成分元素の炭素が
二酸化炭素)になる。
 二酸化炭素を水と振り混ぜると、BTBが(黄色)になり水溶液が酸性になることを示

                  - 11 -

す。このとき次の反応が起きる。
    ( CO2 + H2O −→ H2CO3 )        (タイプ1)
                 炭酸
生成する(炭酸)は弱酸である。
[2]割りばしをよく燃焼させ、できた()を水に落としてかき混ぜると、BTBが
青色)になり水溶液が(塩基性)になることを示す。
 灰の中にははしの成分元素のカリウムが(炭酸カリウム K2CO3 )となって含まれる
ためである。炭酸カリウムがすこし塩基性であることは次節で学習する

[c]炭酸カルシウムから水酸化カルシウムをつくる(実験まとめ)
「1](炭酸カルシウム)製のチョークをそのまま水に浸けておくと、ユニバーサル指示
薬が(深緑色)になり、(すこし)塩基性であることを示す(このことも次節で学習す
る)。
[2]同じチョークをバーナーで強熱すると(酸化カルシウム)が生成する。このとき次
の反応が起きる。
    CaCO3 −→ CaO + CO2
  炭酸カルシウム  酸化カルシウム
酸化カルシウムも白色固体で、見た目の変化はあまりない。もちろん二酸化炭素は失われ
る。
 このチョークを()に浸けると、ユニバーサル指示薬が(紫色)なり、水溶液は先の
実験に比べて(より強い)塩基性を示す。このとき次の反応が起きる。
    ( CaO + H2O −→ Ca(OH)2 )     (タイプ3)
                水酸化カルシウム
加熱時間が短いので生成する水酸化カルシウムは少ないが、これは強塩基であるので明ら
かに水溶液の塩基性が強まる。



                         (続く)

                  - 12 -

                                   No
[d]酸性酸化物と塩基性酸化物
[1]実験を整理すると
    (二酸化硫黄 SO2
    (二酸化炭素 CO2
は水と反応して酸を生成し、
    (酸化カルシウム CaO
は水と反応して塩基を生成する。
 前者のように
  (1)()と反応して酸を生成したり
  (2)(塩基)と反応して塩を生成する
酸化物は(酸性酸化物)と呼ばれる。
 後者のように
  (3)水と反応して(塩基)を生成したり
  (4)酸と反応して塩を生成する
酸化物は(塩基性酸化物)と呼ばれる。
[2]硫黄や炭素のような(非金属)の酸化物の多くは(酸性)酸化物である。そしてカ
ルシウムのような(金属)の酸化物の多くは(塩基性)酸化物である。
参考:(2)と(4)のタイプの反応は次節で学習する。

[e]酸性雨
[1]酸性酸化物の多くは(気体)である。石炭の主成分元素は炭素であり、石油の主成
分元素は炭素と水素であるので、これらを(燃焼)すると、二酸化炭素と水蒸気が大量に
発生する。
    (C)+ O2 −→ CO2
    2(H)+ O2 −→ H2
またこれらには少量の成分元素として(硫黄)が含まれるので、二酸化硫黄も発生する。
    (S)+ O2 −→ SO2
さらに燃焼では空気を加えるが、(空気)は高温になるとその成分の窒素と酸素が化合し
て一酸化窒素 NO 、二酸化窒素 NO2 が発生する。

                  - 13 -

    N2 + O2 −→ 2NO
    N2 + 2O2 −→ 2NO2
[2]これらの(酸性酸化物)は大気と混合し、それに含まれる水蒸気や水滴と反応して
)になる。これはタイプ1の反応である。こうして雨は酸性となるのである。
 発生する酸性酸化物が二酸化炭素ばかりであった時代は、それから生成する(炭酸  
2CO3 )が弱酸の中でも弱い方なので、雨の酸性はpHが()に近くて問題は無かっ
た。
 しかし人間が石炭、石油などを大規模に燃焼させるようになると、状況は一変した。二
酸化硫黄からは実験で確認したように(亜硫酸 H2SO3 )という弱酸が生成する。
そして亜硫酸はさらに紫外線と酸素によって硫酸という(強酸)に変化する。
    H2SO3 +(O)−→ H2SO4
実験では亜硫酸が過酸化水素によって硫酸に変化したことを思い出そう。
 加えて高温燃焼に伴って発生する二酸化窒素は水と反応して(硝酸 HNO3 )という強
酸などに変化する。
    2NO2 + H2O −→ HNO3 + HNO2
[3]こうして雨の酸性はpHが(5や4)という強さになり、(土壌の酸性化)による
森林の立ち枯れ、湖沼の酸性化による水生生物の死滅、大理石の彫刻の腐食、コンクリー
トの建物の腐食(酸性雨つらら)などの被害が出ている。
 ちなみに酸性雨のもとになる酸性酸化物は、(慢性気管支炎)など呼吸器系の障害も引
き起こす。










                  - 14 -

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                                   No

5.中和反応

[a]中和反応
[1]1節で学習したように酸と塩基は互いに相手を(打ち消し合う)関係にある。それ
は互いに反応して酸でも塩基でもない物質に変化することを意味している。このような反
応は(中和反応)と呼ばれ、そのとき生成するのは()と、塩と言う物質である。

問1 次の酸と塩基の中和の反応式で書け。
(1)塩酸と水酸化ナトリウム
    HCl + NaOH −→ H2O + NaCl
                   塩化ナトリウム
(2)硫酸と水酸化カリウム
    2SO4 + 2KOH −→ 2H2O + K2SO4
                      硫酸カリウム
(3)硝酸と水酸化銅
    2HNO3 + Cu(OH)2 −→ 2H2O + Cu(NO32
                           硝酸銅
[2]中和反応で水が生成するのはどうしてだろうか。酸から生じる水素イオンと塩基か
ら生じる水酸化物イオンが次のように反応して
  ( + + OH- −→ H2 )
その結果として水が生成する。そして水素イオン1個と水酸化物イオン()個が反応す
るので、いくつの酸といくつの塩基が反応するかは酸と塩基の価数から決まってくる。
 また()については、酸から生じる(陰イオン)と塩基に由来する(陽イオン)で構
成される。塩は(イオン性)物質である。

問2 次の塩はどんな酸と塩基から生成するか、反応式で書け。
(1)炭酸カルシウム CaCO3
    2CO3 + Ca(OH)2 −→ 2H2O + CaCO3
     炭酸  水酸化カルシウム

                  - 15 -

(2)酢酸ナトリウム CH3COONa
    CH3COOH + NaOH −→ H2O + CH3COONa
      酢酸   水酸化ナトリウム

[b]注意したいこと
[1]ひとつは、アンモニアが関係する中和反応である。たとえば塩酸との反応は次のよ
うであり
  ( HCl + NH3 −→ NH4Cl )
             塩化アンモニウム
水が生成しない。これを理解するには酸と塩基の考え方のレベルを上げる必要があるが、
とりあえずそのようなものとして受け入れておこう。
[2]ふたつは、(中途半端)な中和反応の存在である。
    H2CO3 + NaOH −→ H2O + NaHCO3
                    炭酸水素ナトリウム
つまり、炭酸と同じ物質量の水酸化ナトリウムしか加えなければ、中和反応は炭酸の水素
を残した塩を生成する。
[3]みっつは、完全な中和反応で生成する塩でも(厳密には)中性でないことがある。
「酸性酸化物と塩基性酸化物」実験では(炭酸カリウム K2CO3 )や炭酸カルシウム
CaCO3 がすこし(塩基性)であることを観察した。この理由は17章でくわしく学習
するが、簡単な法則性があるので利用しよう。
    強酸と強塩基からできる塩    完全に中性
    強酸と弱塩基からできる塩    弱酸性
    弱酸と強塩基からできる塩    弱塩基性
 炭酸カリウムと炭酸カルシウムはいずれも(弱酸)と強塩基からできる塩である。ちな
みに塩化アンモニウム NH4Cl は(弱酸性)である。
 さらに炭酸水素ナトリウム NaHCO3 は水素イオンになる水素原子が残っている塩で
あるにも係わらず、この法則性に従って(弱塩基性)であることは注意しよう。
 このようなことは次の中和滴定において無視できないことがある。

                         (続く)

                  - 16 -

                                   No
[c]食酢の中和滴定
[1]濃度不明の酸や塩基の水溶液がある場合、中和反応によってその濃度を計測するこ
とができる。この基礎になるのは、すでに学習した反応量(第3章)とモル濃度(第6
章)である。ここでは一歩進んだ扱いをする。

[例題]予め5倍にうすめておいた食酢を(ホールピペット)で10mlきっかり三角フ
ラスコに採り、指示薬として(フェノールフタレイン)2、3滴を加える。(ビュレッ
)に準備した0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液を滴下していくと、(     )
ml加えたところで水溶液がすこし(赤色)になった。以上の実験から食酢中の酢酸のモ
ル濃度を求めよ。
  (0)モル濃度の復習をしておこう。
     c[mol/l]の溶液v[ml]に含まれる溶質の物質量n[mol]は
     1[l]=1000[ml]ならc[mol]含まれるので
     ( cv/1000 )で求められる。
  参考:以上は n = cv/1000 とまとめられる。

  (1)酸と塩基が中和するとき、酸からの水素イオンの物質量と塩基からの
     水酸化物イオンの物質量は(等しい)。
  (2)5倍にうすめた食酢の酢酸のモル濃度をc[mol/l]とすると
     中和した酢酸の物質量は
       (10c)/1000[mol]
     酢酸は1価であるからそれから生じる水素イオンは
       ()×10c/1000 [mol]
  (3)中和した水酸化ナトリウムの物質量は
       0.1×(     )/1000[mol]
     水酸化ナトリウムは(1)価であるのでそれから生じる水酸化物イオンは
       1×0.1×(     )/1000[mol]
  (4)以上から、両辺の1000を省いて
       1×10c = 1×0.1×(     )

                  - 17 -

         c=(      )
     もとの食酢のモル濃度は5倍だから
                    答 (     )mol/l
[2]ここでフェノールフタレインは(中和点)を検出するために加える。中和で生成す
る酢酸ナトリウムはすこし塩基性なので、pHが9のあたりで無色から赤色に変わるこの
指示薬が選ばれている。またこのように溶液を滴下して中和反応に必要な体積を計測する
分析操作は(中和滴定)と呼ばれる。

[d]中和滴定の関係式
 以上を振り返ってみると、水素イオンの物質量は
酸がn価でモル濃度がc[mol/l]で体積がv[ml]である場合
    n×(cv/1000)[mol]
である。
 また水酸化物イオンの物質量は
塩基がn'価でモル濃度がc'[mol/l]で体積がv'[ml]である場合
    n'×(c'v'/1000)[mol]
である。
 したがって中和滴定では、それぞれの1000を省いて
    ( ncv = n'c'v' )
という関係式が成り立つ。

問 濃度が分からない水酸化ナトリウム水溶液10mlを0.5mol/l硫酸で中和した
ところ17.4mlを必要とした。この塩基水溶液のモル濃度を計算せよ。
    塩基水溶液をc[mol/l]とすると
      2×0.5×17.4 = 1×c×10
        c=1.74      答 1.74mol/l


                         (続く)

                  - 18 -

                                   No
[e]酸化物と酸・塩基の反応
[1]すでに学習したように石炭、石油を燃焼させると二酸化硫黄が発生する。これを含
む排煙を水と混ぜてかゆ状にした水酸化カルシウムと反応させると、次の反応で90%以
上の二酸化硫黄を除去することができる。
  ( SO2 + Ca(OH)2 −→ CaSO3 + H2 ) (タイプ2)
                亜硫酸カルシウム
二酸化硫黄は酸性酸化物であり生成する亜硫酸カルシウムは()である。したがってこ
れは前節のタイプ2の反応である。
  (2)酸性酸化物は塩基と反応して塩を生成する。
 このようにして硫黄分を除去して大気汚染を防止する技術は(排煙脱硫)と呼ばれる。
ちなみに亜硫酸カルシウムは硫酸カルシウム CaSO4 に変化させて(石こう)として販
売される。
[2]胃酸過多の人に酸化マグネシウムを含む薬を投与する。すると胃酸である塩酸が次
のように反応して「むねやけ」がおさまる。
  ( MgO + 2HCl −→ MgCl2 + H2 )   (タイプ4)
              塩化マグネシウム
酸化マグネシウムは(塩基性酸化物)であり、生成する塩化マグネシウムは塩である。し
たがってこれは前節のタイプ4の反応である。
  (4)塩基性酸化物は酸と反応して塩を生成する。
 (2)(4)のタイプの反応は中和反応と似ていることに注目しよう。









                  - 19 -

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6.塩の反応

[a]気体の酸と塩基をつくる(実験のまとめ)
[1]塩化水素の発生
 (塩化ナトリウム)に(濃硫酸)を加えると、次の反応によって(塩化水素)を発生す
る。
  ( NaCl + H2SO4 −→ NaHSO4 + HCl ) (タイプ5)
   塩化ナトリウム     硫酸水素ナトリウム
( HCl と NaOH の塩)
 塩化水素は水に(溶けやすく)、空気より重いので(下方)置換で試験管に捕集する。
塩化水素は(無色)の気体であるが、空気中の水蒸気と塩酸の微粒子をつくりすこし白煙
となる。塩化水素は(刺激臭)を持つ。塩化水素は水に溶けてBTBを(黄色)にし、試
験管内を水が(上昇)する。
 塩化水素は(気体)の酸であり、揮発性の酸と言える。揮発性とは気体になりやすいと
いう意味である。これに対して硫酸は沸点が317℃であり(不揮発性)の酸である。
 一般に次のようにまとめることができる。
  (5)揮発性酸の塩に不揮発性酸を加えると揮発性酸が発生する。
[2]アンモニアの発生
 (塩化アンモニウム)に(水酸化カルシウム)を混ぜて加熱すると、次の反応によって
アンモニア)が発生する。
  ( 2NH4Cl + Ca(OH)2 −→ CaCl2 + 2H2O + 2NH3 )
   塩化アンモニウム        塩化カルシウム    (タイプ6)
 ( HCl と NH3 の塩)
 アンモニアは水に溶けやすく空気より軽いので(上方)置換で試験管に捕集する。アン
モニアは(無色)の気体であるが、同時に発生する水蒸気とアンモニア水の微粒子をつく
りかなり白煙となる。アンモニアは(刺激臭)を持つ。アンモニアは水に溶けてフェノー
ルフタレインを(赤色)にし、試験管内を水が上昇する。
参考:同じ反応を7章でも実験している。

(続く)

                  - 20 -

                                   No

 アンモニアは気体の塩基であり、揮発性の塩基と言える。これに対して水酸化カルシウ
ムは固体であり、不揮発性の塩基である。
 一般に次のようにまとめることができる。
  (6)(発性塩基の塩)に(不揮発性)塩基を加えると、揮発性塩基が発生する。
[3]塩化アンモニウムの白煙
 捕集した塩化水素とアンモニアを近づけると、次の反応によってはっきりとした(
)が生じる。
    HCl+ NH3 −→ NH4Cl
             塩化アンモニウム
 白煙は生成した(塩化アンモニウム)の固体である。一般に煙は半透明であり、気体で
はなく液体か固体の微粒子である。

[b]弱酸と弱塩基をつくる(実験のまとめ)
[1]水酸化銅の生成と中和
 青色の(硫酸銅)水溶液に(水酸化ナトリウム)水溶液を加えると、次の反応によって
水酸化銅)の沈でんが生成する。
 ( CuSO4 + 2NaOH −→ Na2SO4 + Cu(OH)2 ) (タイプ8)
   硫酸銅                   水酸化銅
( H2SO4 と Cu(OH)2 の塩)
 水酸化銅は水に(溶けにくく)、青色である。ろ液が(無色)であることに注意しよう。
 水酸化銅は(弱塩基)である。これに対して水酸化ナトリウムは強塩基である。
 一般に次のようにまとめることができる。
  (8)弱塩基の塩に強塩基を加えると弱塩基が生成する。
 そして水酸化銅に硫酸を加えると、次のように(中和反応)して元の硫酸銅にもどる。
    H2SO4 + Cu(OH)2 −→ 2H2O + CuSO4
 ちなみに(青色)は銅イオンによっている。


                  - 21 -

[2]炭酸の生成と分解
これは実験はしなかったが、石灰岩(主成分は炭酸カルシウム)に希塩酸(うすい塩酸)
を加えると、次の反応により(二酸化炭素)が発生する。
    CaCO3 + 2HCl −→ CaCl2 + H2O + CO2  
   炭酸カルシウム
 この反応は2段階に分けると理解しやすい。まず次の反応によって(炭酸)が生成する。
  ( CaCO3 + 2HCl −→ CaCl2 + H2CO3 )    (タイプ7)
( H2CO3 と Ca(OH)2 の塩)         炭酸
炭酸は弱酸である。これに対して塩酸は強酸である。
 一般に次のようにまとめることができる。
  (7)(弱酸の塩)に(強酸)を加えると弱酸が生成する。
 そして炭酸は(分解)しやすく、続いて次の反応によって二酸化炭素を発生する。
    H2CO3 −→ H2O + CO2  
 この2つの反応式を(積み算)すると始め示した全体の反応式が得られる。

[c]塩の反応
 いくつかの似たタイプの化学反応が存在する。その特徴を把握しておくと、反応式を整
理したり記憶したりするのに役立つ。
 そして中和反応こそは、この章で学習した最大の似たタイプの反応であることに注目し
よう。
問 (5)と(8)のタイプの反応についてそのイメージを図示してみよう。

    


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                                   No

宿題(8章)

1.酸に関する次の文を完成し、下の問に答えよ。
 酸は水に溶けると(水素イオン)が生じる(a)。それは酸が()と反応して(
)するためである。電離度がほぼ1のものが(強酸)であり、0.01程度以下のものが
弱酸)(b)である。
(1)硫酸、酢酸について下線部(a)の反応式を書け。
    2SO4 −→ 2H+ + SO4 2-
    CH3COOH −→ CH3COO- + H+
(2)(1)を除いて、下線部(b)の例を1つ上げその化学式と名称で答えよ。
    2CO3  炭酸
(3)水酸化ナトリウム、アンモニアは水に溶けると水酸化物イオンが生じる。そのとき
の反応式を書け。
    NaOH −→ Na+ + OH-
    NH3 + H2O −→ NH4 + + OH-
(4)(3)を除いて、1価と2価の塩基を1つずつ上げその化学式と名称で答えよ。
    1価:KOH 水酸化カリウム
    2価:Cu(OH)2 水酸化銅
2.水素イオン指数(pH)に関する次の問に答えよ。
(1)水のイオン積の関係式を示せ。
    [H+][OH-] = 10-14
(2)中性のときの水素イオンのモル濃度はいくらか。
    10-7mol/l
(3)0.001mol/l塩酸のpHはいくらか。
    [H+]=0.001=10-3mol/l    答 pH3
(4)問3の塩酸をpH5とするにはどうするか。
    水を加えて100倍に希釈する。
(5)pH13を示す水酸化カルシウム水溶液のモル濃度を計算せよ。
    [H+]=10-13mol/l
    したがって[OH-]10-1=0.1mol/l
    水酸化カルシウムは2価で強塩基だから
                    答 0.05mol/l
3.酸化物について次の文を読み、下の問に答えよ。
 硫黄を燃焼させ、発生する気体を水に溶かす(a)とBTBが黄色になる。
 またチョーク(炭酸カルシウム製)をバーナーで強熱し、水に投入する(b)とユニバ
ーサル指示薬が紫色になる。
(1)下線部(a)(b)の反応式を書き、生成する物質名も答えよ。
    (a)SO2 + H2O −→ H2SO3     亜硫酸
    (b)CaO + H2O −→ Ca(OH)2  水酸化カルシウム
(2)(1)を除いて、塩基性酸化物の例を1つ上げその化学式と名称を答えよ。
    MgO  酸化マグネシウム

                  - 23 -

(3)排煙を水酸化カルシウムと反応させて脱硫するときの反応式を書け。
    SO2 + Ca(OH)2 −→ CaSO3 + H

4.中和反応に関する次の問に答えよ。
問1 次の酸と塩基の中和の反応式を書け。
(1)塩酸と水酸化ナトリウム
    HCl + NaOH −→ H2O + NaCl
(2)リン酸と水酸化カルシウム(完全に中和する場合)
    2H3PO4 + 3Ca(OH)2 −→ 6H2O + Ca3(PO42
問2 次の塩はどんな酸と塩基から生成するか、反応式で書け。
(1)硝酸カリウム ( HNO3 + KOH −→ H2O + KNO3
(2)酢酸ナトリウム( CH3COOH + NaOH −→ H2O + CH3COONa
問3 次の文を完成せよ。
 予め5倍に希釈した食酢を(ホールピペット)で10mlきっかり採り、指示薬として
フェノールフタレイン)を加え、(ビュレット)に準備した0.1mol/l水酸化ナト
リウムで(中和滴定)すると、14.3mlで溶液がうすい(赤色)になった。元の食酢に
含まれる酢酸のモル濃度は(0.715)mol/lである。
問4 次の間に成り立つ関係式を書け。
(1)c[mol/l]の溶液 v[ml]に含まれる溶質の物質量 n[mol]
    n = cv/1000
(2)n 価で c[mol/l]の酸 v[ml]と、n' 価で c'[mol/l]の塩基
v'[ml]が中和する。
    ncv = n'c'v'
5.塩の反応についての次の文を完成し、下の問に答えよ。
 (塩化ナトリウム)に(濃硫酸)を加えると次の反応によって(塩化水素)が発生する。
    NaCl + H2SO4 −→ NaHSO4 + HCl(a)
これを(下方)置換で捕集した試験管を、BTBを加えた水に倒立すると(黄色)に変色
する(b)。またこの気体に(アンモニア)を近づけると(白煙)が生じる(c)。
問1 始めの気体を発生させるときの様子をイラストで描け。
問2 下線部(a)の反応はどんなタイプか。
    揮発性酸の塩に不揮発性酸を加えると
    揮発性酸が発生する。
問3 弱塩基の塩に強塩基を加えると弱塩基が         図1
生成する例をひとつ上げ、反応式で答えよ。
    CuSO4 + 2NaOH
      −→ Na2SO4 + Cu(OH)2
問4 下線部(b)関して同時に起こることを書け。
    試験管内を水が上昇する。
問5 下線部(c)の反応式を書け。
    NH3 + HCl −→ NH4Cl

               ( )組 (  )番 氏名(       )

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