キーワード
高校、化学、教材、自主編成、教科書、(高校化学、化学教材)

                                   02.3
                                   林 正幸

  7.物質とエネルギー

授業計画

時間         項 目     備 考
 1   
1.物質のエネルギー   [a]エネルギーとは何か
                  [b]エネルギー保存の法則
 2   実験1 発熱変化と吸熱変化
 3   1’物質のエネルギー   [c]物質のエネルギー
     2.発熱変化と吸熱変化  [a]発熱変化と吸熱変化
                  [b]等温変化
 4                [c]用語表現について
     3.エネルギー変化グラフ [a]エネルギー変化グラフ
 5       と熱化学方程式  [b]熱化学方程式
     4.燃焼熱と生成熱    [a]燃焼熱の計測
 6                [b]生成熱
                  [c]生成熱の利用(その1)
 7                [d]生成熱の利用(その2)
     5.エネルギーの流れ   [a]エネルギーの流れ
                  [b]光合成と酸素呼吸
 8                [c]物質の循環
                  [d]エネルギー問題
                  [e]気象
 9   宿題(演習)


                  - 1 -































                  - 2 -

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1.物質のエネルギー

[a]エネルギーとは何か
[1]エネルギーという用語は身近である。「あの人はエネルギーがある」「動き過ぎて
エネルギーが切れた」とか、石油エネルギー、太陽エネルギーとか、エネルギー問題など
と言う。4章では天下り的にエネルギーを扱った。ここで改めてエネルギーについて考え
てみよう。
[2]一般に物体が違えばエネルギーが異なり、同じ物体でも状態が違えばその持つエネ
ルギーの形態や量が異なる。つまりエネルギーとは
  「物体がある(状態)で存在していることに対応して必然的に持つもの」
である。ここで物体とは物質を含んでいる。
[3]エネルギーにはさまざまな(形態)があるが、その基本的な形態は運動エネルギー
と位置エネルギーである。
 (運動エネルギー)は物体がある(速度)で運動していることに対応して持つエネルギ
ーである。そして速度が大きいほど、その運動エネルギーは(大きい)。
参考:運動エネルギーは、速度の二乗に正比例する。

    


[4](位置エネルギー)についてはすこしくわしく説明する。位置エネルギーは初歩的
には「高い位置にある物体ほど大きい位置エネルギーを持つ」と言う。これを図のように
宇宙的視野で見直してみよう。地面は地球である。物体が落下するのは、物体と地球が
万有引力)で引き合っているためである。高いとは距離が大きいことである。
 こうして位置エネルギーは
  「(引き合う)物体どうしがある(距離)で位置していることに

                  - 3 -

          対応して持つエネルギー」
である。そして距離が(大きい)ほど位置エネルギーが大きい。なお引力の種類は万有引
力だけでなく、電気的引力でも磁気的引力でも構わない。
参考:たがいに反発し合う物体どうしにも位置エネルギーは存在するが、ここでは踏み込
   まない。

[b]エネルギー保存の法則
[1]エネルギーの特徴からして、物体の状態が(変化する)と、それに対応してその物
体が持つエネルギーの形態や()も変化することになる。
 ボールを屋上から落下させるとき、始めの状態では位置エネルギーだけを持つが、1階
の高さまで来た状態では、位置エネルギーと運動エネルギーを持つようになる。しかしエ
ネルギーの全体の量は一定に保たれる。つまり始めの位置エネルギーの量と、後の位置エ
ネルギーと運動エネルギーの合計は等しい。言い換えると、位置エネルギーが(減る)分
だけ運動エネルギーが増える。
[2]次になめらかな平面上を滑っている円板Aに、より質量が大きい円板Bが追突する
例を考える。衝突は完全に弾性的であるとする。円板Aは加速し、円板Bは減速する。円
板Aは前より(大きい)運動エネルギーを持つ状態に変化し、円板Bは前より小さい運動
エネルギーを持つ状態に変化する。つまり2つの円板の間でエネルギーの(やり取り)が
起こる。このとき円板Aが得るエネルギーと、円板Bが与えるエネルギーは等しい。言い
換えると、エネルギーの(全体の量)は一定に保たれる。
 以上のことはエネルギーの最大の特徴で
    (物体の状態が変化してそのエネルギーの形態や量が変化しても、
          エネルギーの全体の量は一定に保たれる。
とまとめられ(エネルギー保存の法則)と呼ばれる。



                         (続く)


                  - 4 -

                                   No

[3]そして上記の例から、物体はその持つエネルギーの形態や量を変化させることによ
って、自分の状態を(変化させる)ことが可能になる。また物体はエネルギーをやり取り
することによって、相手の状態を変化させることが可能になる、とらえることもできる。
 つまり物体がエネルギーを持つというのは、自分ないし相手の状態を変化させる(
)を持つことである。私たちが住んでいる世界において変化・進歩を産み出すことは、
エネルギー無しでは実現できないのである。

[c]物質のエネルギー
[1]化学の本題は物質のエネルギーである。その準備は整った。物質が持つエネルギー
は内部エネルギーと呼ばれるが(4章)、その正体は分子、イオン、原子という物質をつ
くる(粒子)が持つ運動エネルギーと(位置エネルギー)である。
[2]これらの粒子は(熱運動)をしている。つまり運動エネルギーを持つ。そして温度
が高くなると熱運動が激しくなっており、より大きい(運動エネルギー)を持つようにな
る。
 またこれら粒子は(化学結合)や分子間力で引き合っている。つまり位置エネルギーを
持つ。そして共有結合した分子とそうでないバラバラの原子では、分子が持つ位置エネル
ギーの方が(小さい)。
[3]これまで使ってきた(熱エネルギー)とは、物質が持つエネルギーのうち熱運動に
伴う(運動エネルギー)の部分のことである。そして熱エネルギーが伝わるとは、激しく
熱運動している粒子の運動エネルギーが(ゆるやかに)熱運動している隣の粒子とやり取
りされ、次々に移動していくことである。







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2.発熱変化と吸熱変化

[a]発熱変化と吸熱変化(実験のまとめ)
[1]使い捨てかいろ
 (鉄粉)に(食塩)を混ぜ、すこし()を加えてかき混ぜると(発熱)して、温度が
90℃くらいまで上昇する。このように発熱を伴う変化は(発熱変化)と呼ばれる。この
とき空気中の酸素を含めて次の反応が起きる。
    4Fe + 3O2 + 6H2O −→ 4Fe(OH)3
                      水酸化鉄
 ここで食塩は、反応を促進する触媒(しょくばい)のはたらきをしている。
参考:触媒については16章でくわしく学習する。
[2]アンモニアの発生
 (硝酸アンモニウム)に(水酸化カルシウム)を加え、かき混ぜて(アンモニア)が発
生すると(吸熱)して、冷たくなる。これは(吸熱変化)である。このとき次の反応が起
きる。
  2NH4NO3 + Ca(OH)2 −→ Ca(NO3)2 + 2H2O + 2NH3
                  硝酸カルシウム       アンモニア
物質が化学反応するときに発生したり吸収したりする熱エネルギーは(反応熱)と呼ばれ
る。
[3]硫酸の水への溶解
 水に少しずつ(濃硫酸)を溶かしていくと(発熱)して、沸とうするほどになる。溶質
が溶媒に溶けるときに伴う熱エネルギーは(溶解熱)と呼ばれる。
[4]酢酸ナトリウムの凝固
 ポリ袋に入った液体状態の(酢酸ナトリウム)に固体の酢酸ナトリウム1粒を加えると
凝固して(発熱)し、温かくなる。
 液体を冷却すると凝固点以下になっても固体にならないことがある。凝固点以下の温度
でも液体であることは(過冷却)と呼ばれる。それは分子やイオンが身動きもままならぬ
ようにひしめき合っていて、規則的に配列する条件が整わないためである。そこに小さい
結晶が投入されると、その表面では配列することが容易になって一気に凝固が進行する。
                         (続く)

                  - 6 -

                                   No
[b]等温変化
[1]「使い捨てかいろ」では発生する熱エネルギーを自分自身に与えて温度が高くなる。
またその一部は私たちの手に伝わって温かいと感じる。そして時間が経てば発生した熱エ
ネルギーはすべてまわりに伝わり、かいろは元の温度にもどる。このように、最終的に温
度が最初と等しくなるような変化は(等温変化)と呼ばれる。
[2]したがってこの実験を等温変化としてとらえれば、物質は反応して発生する熱エネ
ルギーをまわりに与える。つまり発熱変化はまわりに熱エネルギーを(与える)変化であ
る。
 「アンモニアの発生」では吸収する熱エネルギーを自分自身から奪って温度が低くなる。
またその一部は私たちの手から伝わって冷たいと感じる。この実験を等温変化としてとら
えれば、物質は反応して吸収する熱エネルギーをまわりから奪うので、(吸熱変化)はま
わりから熱エネルギーを(奪う)変化である。
 これからはとくに断らないかぎり、等温変化として話を進めていく。

[c]用語表現について
[1]ここで用語表現の注意をしておく。日本語では主語を表現しないことが多いし、能
動表現と受身表現をはっきりさせないことが多いので、混乱が生じやすい。
 一般に化学では、受身表現ではその主語は物質であるが、能動表現ではその主語は物質
である場合と人間である場合がある。
[2]「酢酸ナトリウムの凝固」では、凝固が(発熱変化)であることに意外性を感ずる
生徒が多い。冷凍庫で氷をつくる場合「冷却=凝固」というイメージがあるからであろう。
このケースを正確に表現すると次のようになり、何の不思議もない。
 冷凍庫が水を冷却してそれから熱エネルギーを(奪う)(吸熱する)と、水は冷却され
てその熱エネルギーを冷凍庫に(与えて)(発熱して)氷になる。つまり凝固は発熱変化
である。
 これに対して融解では、バーナーが氷を加熱してそれに熱エネルギーを(与える)(発
熱する)と、氷は加熱されてバーナーの熱エネルギーを(奪って)(吸熱して)水になる。
つまり融解は(吸熱変化)である。

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3.エネルギー変化グラフ

         と熱化学方程式

[a]エネルギー変化グラフ
[1]実験で確かめたように物質が変化すると、まわりにエネルギーを与えたり、まわり
からエネルギーを奪ったりする。つまりエネルギーのやり取りをするので、物質の持つエ
ネルギーの()が変化する。ここで変化とは、化学反応を起こして別の物質になること
も含んでいる。
[2]変化前の物質と変化後の物質において、どちらがどれだけ大きいエネルギーを持つ
かは、エネルギー保存の法則から簡単に分かる。つまり物質が変化するときにエネルギー
をまわりに(与える)なら、変化()の物質が持つエネルギーが大きい。反対にそのと
きにエネルギーをまわりから奪うなら、変化()の物質が持つエネルギーが大きい。ま
たその差は、与えたり奪ったりするエネルギーの量を調べれば分かる。
[3]これは(エネルギー変化グラフ)を描くと理解しやすい。たとえば、水素1mol
と酸素(1/2)molが反応して液体の水1molが生成するときは、286kJ(キロジ
ュール 1kJ=1000J)のエネルギーをまわりに与える。これをグラフにすると図
のようになる。横軸は変化を表し、左の方が変化前で、右の方が変化後である。縦軸は物
質のエネルギーの量を表すが、エネルギーは基準の取り方でその大きさが増減するので、
エネルギーの量の()を示すことが重要である。

    


 物質のエネルギーを扱う場合は、H2 は(1個)の水素分子でなく(1mol)の水素
分子を表す。(1/2)O2 は((1/2)mol)の酸素分子を表す。また H2O(液)は
液体)の水分子1molを表す。同じ物質でもその状態が異なればエネルギーの量も違
うので、このような表現が必要になる。

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問1 次の場合のエネルギー変化グラフを描け。
(1)液体の水1molは、加熱すると41kJのエネルギーをまわりから奪って(吸熱
して)気体の水になる。
(2)硫酸1molが十分な水に溶解すると、95kJのエネルギーをまわりに与える
(発熱する)。
  参考:十分な水は aq と、水に溶けた1molの硫酸は H2SO4aq と表す。)
(3)硝酸アンモニウム2molと水酸化カルシウム1molが反応して、アンモニア2
molが発生し液体の水などが生成すると、115kJのエネルギーをまわりから奪う
(吸熱する)。

    


[4]一般に固体より液体が、液体より気体がより(大きい)エネルギーを持つ。だから
過冷却の酢酸ナトリウムが凝固するとエネルギーをまわりに与える。また燃焼反応は発熱
変化であるので、燃料と酸素が持つエネルギーの方が燃焼生成物質が持つエネルギーより
大きい)。それは上の水素と酸素の反応でも確認できる。
[5]ちなみに物質が変化するときにまわりとやり取りするエネルギーの形態は、多くの
場合に熱エネルギーである。しかし燃焼反応では一部が光エネルギーになるし、電池では
電気エネルギーを与える。
 そこでこの節から熱エネルギーに限定しないで話を進めている。

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[b]熱化学方程式
[1]物質が変化すると発熱したり吸熱したり(まわりにエネルギーを与えたり奪った
り)することは(熱化学方程式)でも書き表すことができる。上の水素と酸素の反応では
次のようになる。

    H2 + (1/2)O2 = H2O(液) + 286kJ

ここで H2は水素1molが持つエネルギーの()を、(1/2)O2 は酸素(1/2)
molが持つエネルギーの量を意味する。つまり H2 や O2 はある(数値)の代わりの
文字であり、数学の a+(1/2)b と同じである。だから熱化学方程式は次節に示すよう
に、数式として積み算して新しい熱化学方程式を導き出すことができる。
[2]熱化学方程式は変化の前後におけるエネルギー保存の法則を表している。つまり水
素1molと酸素(1/2)molが持つエネルギーの量は、液体の水1molが持つエネル
ギーに286kJを加えた量に等しい。
 そしてこれは反応式ではなく(等号)で結ばれた数式である。なお吸熱変化では左辺に
エネルギーの量の差を加えるのでなく、右辺に(マイナス)符号を付けて示すことが普通
である。

問2 問1のそれぞれの場合を熱化学方程式で表せ。
(1) 2O(液) = H2O(気) − 41kJ
(2) 2SO4 + aq = H2SO4aq + 95kJ
(3) 2NH4NO3 + Ca(OH)2
          = Ca(NO3)2 + 2H2O(液) + 2NH3 − 115kJ







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4.燃焼熱と生成熱

[a]燃焼熱の計測
[1]燃焼反応に伴う反応熱はとくに(燃焼熱)と呼ばれる。燃焼熱は、調理や暖房から
自動車のエンジンや火力発電まで、人間がもっともよく利用するエネルギーである。
 燃焼熱の計測は、それを()に与えてどれくらい温度が上昇するかを調べればよい。
そして燃焼熱の数値はその物質1molが燃焼するときまわりに与えるエネルギーとして
表され、単位は(kJ/mol キロジュール毎モル)である。

[2]4章では液体の水1molは75Jのエネルギーを与えるごとに温度が1℃高くな
ることを学習した。したがって1gの水の温度が1℃上昇させるには
    75/18 = 4.166・・・
4.17Jのエネルギーを与える必要である。これは水の(比熱)と呼ばれ、
    4.17J/g・℃ あるいは 4.17J/g・K
と表される。

[例題1]炭素(黒鉛)0.1gを酸素中で完全に燃焼させたら、まわりの水100gの温
度が7.87℃上昇した。炭素の燃焼熱は何kJ/molか。(C=12)
    反応物質が水に与える熱エネルギーは
      (4.17×100×7.87)=3281.79[J]
    つまり0.1gの炭素の燃焼熱は3.28kJ
    炭素1mol=12gの燃焼熱をx[kJ]とすると
      ( .1/3.28 = 12/x )
        x=393.6
                    答 394kJ/mol

[b]生成熱
[1]物質1molが成分元素の単体から生成するときの反応熱は(生成熱)と呼ばれる。
 たとえばメタン CH4 の生成熱は75kJ/molである。メタンの成分元素は炭素 C

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と水素 H であり、その単体の化学式は C と H2 である。したがってこれらからメタ
ン1molが生成する熱化学方程式は次のようになる。
    C + 2H2 = CH4 + 75kJ           (1)
 生成熱が負の数値になることもある。たとえば一酸化窒素 NO の生成熱は−90
kJ/molである。これを熱化学方程式で書くと次のようになる。
    (1/2)N2 + (1/2)O2 = NO −90kJ     (2)
 つまり生成熱が正の数値ならエネルギーをまわりに与え、()の数値ならエネルギー
をまわりから(奪う)ことを意味する。

問1 二酸化炭素、水(液)の生成熱は394、286kJ/molである。それぞれを熱
化学方程式で書いてみよ。
    C + O2 = CO2 + 394kJ           (3)
    2 + (1/2)O2 = H2O(液)+ 286kJ    (4)

[2]次に生成熱をエネルギー変化グラフで考えてみよう。ただし前節で触れたようにエ
ネルギーの基準は私たちが決めるべきなので、考えやすいように単体1molが持つエネ
ルギーはすべて0kJであるという基準にする。

問2メタンと一酸化窒素の生成熱は75、−90kJ/molである。それぞれのエネルギ
ー変化グラフを描け。

    



                         (続く)

                  - 12 -

                                   No

 グラフを見て分かるのは、メタン1molは−75kJのエネルギーを持ち、一酸化窒
素1molは90kJのエネルギーを持つということである。つまり
 「化合物1molが持つエネルギーは、その生成熱の(符号)を変えた数値である。」
もちろん
 「すべての(単体)1molが持つエネルギーは0kJ/molである。」
 このように生成熱とは、単体を(基準)にして、(個々の)物質がどれだけエネルギー
を持つかを示す数値なのである。これは反応物質(全体)と生成物質全体が持つエネルギ
ーを比較するより、さらに洗練されたとらえ方である。
 生成熱の数値は化学便覧などで調べることができる(生成熱はより正確には生成エンタ
ルピーと呼ばれる)。

[c]生成熱の利用(その1)
[例題2]メタン、二酸化炭素、水(液)の生成熱は、75、394、286kJ/mol
である。メタンの燃焼熱が何kJ/molか、熱化学方程式を使って計算せよ。ただしでき
る水は液体とする。
    メタン1molが燃焼する次の熱化学方程式のQを求めればよい。
    ( CH4 +2O2 = CO2 + 2H2O(液) + QkJ )
    そのために上の方程式(1)(3)(4)を積み算するが、
    そのこつは次のようである。目標の方程式と比べて
    (1)で関係が深いのは CH4 であり、左右が逆なので両辺を入れ替えて書く。
    (3)で  〃     CO2 であり、くい違いがないのでそのまま書く。
    (4)で  〃     H2O であり、物質量が半分なので2倍して書く。
    ( CH4 + 75kJ = C + 2H2            )
    ( C + O2 = CO2 + 394kJ            )
    ( 2H2 + O2 = 2H2O(液)+ 572kJ (+    )
    ( CH4 +2O2 = CO2 + 2H2O(液) + 891kJ* )
                    答 891kJ/mol
参考:熱化学方程式の積み算のこつは他でも利用できる。

                  - 13 -


[d]生成熱の利用(その2)
[例題3」メタン、二酸化炭素、水(液)の生成熱は、75、394、286kJ/mol
である。メタンの燃焼熱が何kJ/molか、エネルギー変化グラフを使って求めよ。ただ
しできる水は液体とする。
    次の熱化学方程式のQを求めればよい。
      CH4+2O2 = CO2 + 2H2O(液) + QkJ
    単体を基準にして、それぞれの物質1molが持つエネルギーは次のようである。
     CH4    O2    CO2    H2O(液)
    (−75)  () (−394)  (−286)  kJ/mol
    縦軸の左に反応物質を、右に生成物質をまとめてグラフを描くと

    


    反応物質全体が持つエネルギーは(−75)kJ
    生成物質全体が持つエネルギーは(−966)kJであるので
    反応は(発熱)変化でエネルギーの差は(891)kJである。
                    答 891kJ/mol
注意:グラフから発熱か吸熱かを判断すること。


[e]考察
(1)反応熱に関するエネルギー保存の法則は、はじめはヘスの法則として発見された。
    「反応熱は、最初と最後の物質とその状態が決まれば、
                    途中の経路によらず一定になる。」
これについて調べてみよう。

                  - 14 -

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                                   No

5.エネルギーの流れ

[a]エネルギーの流れ
[1]物質が三態変化したり、溶解したり、反応して別の物質になったりすると、エネル
ギーを与えたり奪ったりする。するとエネルギー保存の法則から、まわりの物質も変化し
て(同じ)量のエネルギーを得たり失ったりする。つまりその全体を考えると、物質どう
しがその状態を変化させるのに伴って(エネルギーの流れ)があることに気付く。

    


[2]燃焼熱の計測の例では、炭素と酸素が二酸化炭素に変化し、まわりの水が低温から
高温に変化し、それに伴って(炭素・酸素)が持つエネルギーの一部が(高温の水)に流
れると言える。それでは地球上における2つの大きいエネルギーの流れを見てみよう。
 これからは相手との関係から、受身表現も使っていく。
        受身表現      能動表現
      エネルギーを失う = エネルギーを与える
      エネルギーを得る = エネルギーを奪う

[b]光合成と酸素呼吸
[1]地球上では(緑色植物)が、二酸化炭素と水からブドウ糖と酸素を生産している。
この変化は(光合成)と呼ばれ、まわりからエネルギーを(得る)反応である。
    6CO2 + 6H2O = C6126 + 6O2 − 2802kJ
               ブドウ糖
ブドウ糖・酸素は(二酸化炭素・水)より大きいエネルギを持つ。
 太陽は(核融合)という変化を起こしてまわりにエネルギーを与え続けている。太陽が
与えるエネルギーは(太陽エネルギー)と呼ばれる。その量は地球付近では1m2の面積に
1s(秒)間で1.37kJである。

                  - 15 -

    太陽定数  1.37kJ/m2・s
 緑色植物は太陽エネルギーを得て光合成をする。つまりエネルギーが(太陽)から(
ドウ糖・酸素)に流れている。
[2]植物自身もこのブドウ糖・酸素を生命活動の(エネルギー源)として使うが、植物
の一部は(栄養)として捕食されて(動物)のエネルギー源となる。
 人間を含めて進化した動物や植物は(酸素呼吸)している。つまりブドウ糖と酸素を二
酸化炭素と水に変化させる。これはエネルギーをまわりに(与える)反応で、その熱化学
方程式は次のようになる。
  ( 6126 + 6O2 = 6CO2 + 6H2O + 2802kJ )
    ブドウ糖
酸素呼吸は光合成と(逆向き)の反応であり、これらの生物はそれによって得るエネルギ
ーで(生命活動)を営み、自分や環境を変化させていく。つまりエネルギーがブドウ糖・
酸素から、「変化した生物・環境」に流れている。こうして生物は間接的に(太陽エネル
ギー)を得て生命活動を営んでいることが分かる。
参考:酸素呼吸のよりくわしいしくみは、クエン酸回路と呼ばれる一連の化学反応である。

    


[c]物質の循環
[1]自然は数十億年という歴史の中で、このようなしくみをつくり上げて生物の繁栄を
もたらした。このしくみのポイントは2つである。
 物質に注目すると、ブドウ糖・酸素と二酸化炭素・水がくり返し利用されている。つま
り物質は(循環)している。実際にはブドウ糖はデンプンやセルロース、あるいはアミノ
酸やそれからできるタンパク質などに変化して利用されたりもするが、それらを含めて物
質は循環している。元素は(不滅)なので、物質はそれを循環させれば(永続的)に利用
できる。
                         (続く)

                  - 16 -

                                    No

[2]ところがここ数百年で人間は急速に知恵を付け、この「おきて」に背いて(自然破
)をしている。これから私たちが目指すべきは、自然の「おきて」に従う知恵を持つこ
とである。
問1 自然破壊の例を上げてみよう。
・使い捨ての生産と消費で、資源が枯渇し大量の廃棄物が発生する。
・フロン類を排出させ、オゾン層が破壊される。
・熱帯雨林などを伐採して、生物種が絶滅する。
・ダイオキシン類を発生させ、生物の内分泌系が撹乱される。

[d]エネルギー問題
[1]もうひとつのポイントはエネルギーである。エネルギー保存の法則があるので、エ
ネルギーも循環利用できるのではないかと錯覚するかもしれない。しかしこれには別の自
然の原理が隠れている。
 生命活動によって変化した生物・環境に流れたエネルギーの大部分はやがて(熱エネル
ギー)という形態に変化していく。たしかに熱エネルギーは、自動車のエンジンや火力発
電によって別の(形態)のエネルギーに変えることができる。
[2]ただし熱エネルギーは(温度差)があって始めて、それを別の形態のエネルギーに
変化させることができる。そして熱エネルギーは高温部から低温部に移動して、やがてす
べて同じ温度になっていく。このように熱エネルギーが移動する(向き)は決まっており、
それは(エントロピー増大の原理)と呼ばれる。冷蔵庫では部分的に熱エネルギーが低温
部から高温部に移動するが、それで生じる温度差によって獲得できるより、大きいエネル
ギーを消費するという代償を伴っている。
[3]結局のところエネルギーは(使い捨て)するしかないのである。そしてエネルギー
を獲得し続けないと、待っているのは「死の世界」である。地球は太陽が与え続けている
太陽エネルギーを獲得して、人間が登場するまでに進化・発展してきた。太陽こそはさら
に数十億年それを与え続けることが保証されたエネルギー源である。
[4]人間は(便利)で快適な環境をつくり出すために、まず()を使って植物を燃焼
させて熱エネルギーを獲得するようになった。数百年前まで、それはおおむね自然の(

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容範囲)に留まっていた。
 やがて人間は、石炭、(石油)、天然ガスといった化石燃料を際限なく掘り出して燃焼
させ、ついに(ウラン)やプルトニウムなどの原子核が持つエネルギーまで利用するよう
になった。しかしこれらのエネルギー資源は、(二酸化炭素)や(放射性廃棄物)を発生
することになり、またいずれは(枯渇)していく。そしてこれでは物質が循環していない。
 私たちは(太陽エネルギー)をもっと利用し、またその枠内で生活する知恵が求められ
ている。

問2 私たちは「エネルギー問題」をどのように解決したらよいだろうか。
・二酸化炭素を発生させて地球が温暖化するような、大量の化石燃料の利用を控える。
・省エネルギー、ソフト・エネルギー・パス(エネルギーを浪費しないような生活と経済
に転換する)を目指す。
・コージェネレーション(電気と熱の同時生産)、燃料電池などエネルギー効率を高める。
・もっと太陽エネルギー(風力エネルギーなどを含む)を利用する。ただしその装置も太
陽エネルギーを使って生産するようにする。
・原子力発電(核分裂のエネルギー)などに対して、どのような態度を取るか検討する。

[e]気象
[1]もうひとつの大きいエネルギーの流れは気象に見られる。(赤道地方)は極地方に
比べてより多くの太陽エネルギーを得て、(大気)の温度がより高くなって地球規模の大
循環(対流)がつくり出される。貿易風や(偏西風)である。このときエネルギーは太陽
から(運動する大気)に流れている。つまり(風力エネルギー)とは太陽エネルギーが姿
を変えたものである。そして(低気圧)や台風は、もうすこし規模は小さいが似た現象で
ある。
[2]また降雨も、次の熱化学方程式で示されるように、液体の水が(太陽エネルギー
を得て気体の水つまり(水蒸気)になることから始まる。そして水蒸気は運動する大気に
含まれて上空に運ばれて雲を形成する。
    H2O(液) = H2O(気) − 41kJ


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宿題(7章)

1.エネルギーについて次の問に答えよ。
(1)位置エネルギーは、宇宙的視野ではどんなものか。
    引き合う物体どうしがある距離で位置していることに対応して持つエネルギー
(2)エネルギー保存の法則を書け。
    物体が状態を変化させてそのエネルギーの形態や量が変化しても、
    エネルギーの全体の量は一定に保たれる。
(3)熱エネルギーとは何か。
    物質が持つエネルギーのうち熱運動に伴う運動エネルギーの部分
(4)次の文を完成せよ。
 エネルギーとは物体がある(状態)で存在していることに対応して必然的に持つもので
ある。そして物体がエネルギーを持つというのは、自分ないし(相手)の状態を変化させ
る(能力)を持つことであり、世界において変化・進歩を産み出すことは(エネルギー
無しでは実現できない。
 物質をつくる(粒子)は熱運動しており、物質はその内部に運動エネルギーを持ってい
る。またこれらの粒子は(化学結合)や分子間力で(引き合って)おり、物質は(位置エ
ネルギー)も持っている。

2.次の化学的変化に対して、それぞれエネルギー変化グラフと熱化学方程式を示せ。
(1)液体の水1molが電気分解され、水素1molと酸素(1/2)molが生成すると、
286kJのエネルギーをまわりから奪う。
(2)硝酸アンモニウム2molと水酸化カルシウム1molが反応し、アンモニア2
molが発生し液体の水などが生成すると、115kJのエネルギーをまわりから奪う。
(3)1molの塩酸(水溶液)と1molの水酸化ナトリウム水溶液が反応して水と塩
化ナトリウム(水溶液)が生成すると、56kJのエネルギーをまわりに与える。
(4)水1molが凝固すると6kJの熱エネルギーを発生する。



                   図8



(1)2O(液) = H2 + (1/2)O2 − 286kJ
(2)2NH4NO3 + Ca(OH)2
      = Ca(NO3)2 + 2H2O(液) + 2NH3 − 115kJ
(3)HClaq + NaOHaq = H2O(液) + NaClaq + 56kJ
(4)2O(液) = H2O(固) + 6kJ

3.50kgの物体を4m(2階まで)持ち上げるのに必要なエネルギーは約2kJであ

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る。これをヘキサン C614(ガソリンの成分)を燃料にするエンジンを使って実行する
として何g必要か(答は小数2位で)。ただしヘキサンの燃焼熱は4188kJ/mol
であり、エンジンの効率を25%とする。( H=1 C=12 )
    効率から8kJのエネルギーが必要である。
    ヘキサンlmolは86gであるから
      4188[kJ]/86[g]= 8/x
        x=0.164・・・
                         答 0.16g
4.反応熱に関する次の問に答えよ。
(1)一酸化炭素 CO の燃焼熱は283kJ/molであり、炭素が完全燃焼するときの
燃焼熱は394kJ/molである。一酸化炭素の生成熱が何kJ/molか、熱化学方程
式を使って計算せよ。( C + (1/2)O2 = CO + QkJ )
    C + O2 = CO2 + 394kJ
    CO2 + 283kJ = CO + (1/2)O2 (+
    C + (1/2)O2 = CO + 111kJ
                    答 111kJ/mol
参考:計測が容易な燃焼熱は、生成熱の数値を計算するのに利用される。
(2)酸化鉄、酸化アルミニウムの生成熱は、それぞれ826、1675kJ/molであ
る。次の熱化学方程式の反応熱 R を、エネルギー変化グラフを使って求めよ。
    Fe23 + 2Al = 2Fe + Al23 + RkJ

    

                    答 849kJ
5.地球上のエネルギーの流れに関する次の文を完成せよ。
 太陽は(核融合)という変化を起こしてまわりに(太陽エネルギー)を与えている。地
球上では(緑色植物)がそれを得て、(二酸化炭素)と()からブドウ糖と酸素を生産
している。これは(光合成)と呼ばれ、次の熱化学方程式で表される。
    6CO2+ 6H2O = C6126 + 6O2)2802kJ
このときエネルギーが(太陽)から(ブドウ糖・酸素)に流れる。
 植物自身もブドウ糖・酸素を生命活動の(エネルギー源)として使うが、その一部は
栄養)として捕食されて(動物)のエネルギー源になる。
 進化した動物や植物は(酸素呼吸)して、それによって得るエネルギーで(生命活動
を営み、自分や環境を変化させていく。この変化は光合成と(逆向き)の反応である。こ
のときエネルギーがブドウ糖・酸素から(変化した生物・環境)に流れる。
 以上の仕組みは自然が数十億年という歴史の中でつくり上げてきた。この中で(物質
は(循環)して利用されている。これに対して変化した生物・環境に流れた(エネルギ
)はやがて熱エネルギーの形態に変化し、(エントロピー増大の原理)に従って利用で
きなくなる。しかし太陽は太陽エネルギーは与え(続ける)ので、人間はそれを利用して
いくことができる。
               ( )組 (  )番 氏名(       )

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