キーワード
高校、化学、教材、自主編成、教科書、(高校化学、化学教材)

                                   02.7
                                   林 正幸

   19.合成高分子化合物

授業計画

時間      項 目                   備 考
 1  
実験1 合成繊維と吸水ビーズ
 2  1.合成繊維
 3
 4  実験2 プラスチックとイオン交換樹脂
 5  2.付加重合によるプラスチック
 6  
 7  3.縮合重合によるプラスチック
 8  4.ゴ ム                     輪ゴム
 9  5.機能性高分子
10
11  宿題(演習)











                  - 1 -































                  - 2 -

授業計画へ
                                   No

1.合成繊維

[a]ナイロン(実験のまとめ)
[1](ヘキサメチレンジアミン)と水酸化ナトリウムを溶かした水溶液の上に、ガラス棒
を伝わらせて(アジピン酸ジクロリド)のヘキサン溶液を静かに乗せ、境界面の膜をピン
セットで糸状に引き出し、切れないように試験管に巻き付けていくと、(6,6−ナイロン)
の糸が得られる。
 アジピン酸ジクロリドとヘキサメチレンジアミンは次のような構造式の物質である。

      

この反応では前者の塩素と後者のアミノ基の水素が切り取られて塩酸になり、残りの部分
が結合することをくり返している。これは(縮合重合)である。この反応形式は、互いに
手袋をとって両手をつなぎ合うようである。そして生成する塩酸は水酸化ナトリウムで中
和される。
[2]ナイロンは1935年に(カロザース)が発明し、デュポン社が「石炭と空気と水
から合成され、絹より美しくクモの糸より細く鋼鉄より強い」繊維として売り出した。こ
れは天然の繊維性物質にまったく依存せず、人間の技術でもって天然繊維より優れた(
成繊維)をつくり出したという勝ち名乗りであった。工業的には(アジピン酸
HOOC(CH24COOH )とヘキサメチレンジアミンの水溶液を加熱して合成し、こ
れを融解して多数の細孔を持つ口金から空気中に引き出して糸にする。
 この合成反応では、カルボキシル基とアミノ基が脱水縮合をくり返して(アミド結合
が形成される。ちなみに絹はタンパク質であり、構成単位はアミド結合(より正確にはペ
プチド結合)で連結している。6,6−ナイロンという名称の数字は、アジピン酸の炭素
数とヘキサメチレンジアミンの炭素数を示している。
問1 6,6−ナイロンの工業的合成の反応式を書け。
    nHOOC(CH24COOH + nH2N(CH26NH2
        −→ [−OC(CH24COHN(CH26NH−]n + 2nH2

                  - 3 -

参考:高分子では末端を無視した反応式を書くことが多い。

[b]延伸
[1]繊維に求めらる第一の性質は、繊維の方向に力を受けると強い(弾性)を示し、そ
れと直角の方向に力を受けると柔軟に曲がることである。ちなみに強い弾性とは、弾性定
数が大きくて、大きい力を受けても伸びが小さく、またその力で破断されないことを意味
している。
 ナイロンを糸にするとき、融解したナイロンは大きく引き延ばしながら凝固させ、再び
融点以上の温度にしてさらに引き延ばす。この工程は(延伸)と呼ばれ、他の繊維をつく
るときにも欠かせない。この延伸によって図のように、それまで乱雑に集合していた糸状
高分子が繊維の方向に引き延ばされて繊維と直角な方向に(結晶化)する。こうして繊維
の方向に力を受けると、つまり糸状高分子が互いにずれるように力を受けると、大きい分
子間力がそれに対抗するのである。3章では分子間力は距離が大きくなると急激に小さく
なることを学習した。つまり結晶化している分子の分子間力は(大きい)のである。

      

[2]以上のことは物質の(性質)がその分子構造だけでなく、その(分子配列)にも由
来してることを示している。延神は分子配列をコントロールして期待する性質を生み出す
典型例になっている。





                         (続く)

                  - 4 -

                                   No
[c]その他のポリアミド繊維
 現在ではナイロンの多くは、次のように(カプロラクタム)から合成される。

      

この反応では、カプロラクタム分子のアミド結合がカルボニル基とイミノ基に切断され、
となりの分子と再びアミド結合が形成されることをくり返しており、このような反応形式
は(開環重合)と呼ばれる。これは子どもたちが小さい輪を切って手をつなぎ直して長い
列をつくるようである。このナイロンは(6−ナイロン)と呼ばれる。
 (ポリアミド繊維)は摩耗しにくく、強い弾性がある。この繊維は女性のストッキング
や登山のザイルなどを含めて広く利用されている。その中でも(アラミド繊維)はとくに
分子間力が大きくて強じんであり、(防弾チョッキ)や弓の弦などに利用される。

[d]ポリエステル繊維(実験のまとめ)
 (PET)ボトルの小片を加熱融解して、くぎの先で触れて引っ張ると、見る見る丈夫
な繊維ができていく。
 PETとは、(ポリエチレンテレフタラート)の略である。これは次のような構造式の(
チレングリコール)と(テレフタル酸)から合成される。

      

この反応ではカルボキシル基とヒドロキシル基が脱水縮合して(エステル結合)が形成さ
れる。
問2 ポリエチレンテレフタラート合成の反応式を書け。

      

                  - 5 -

 PETボトルはプラスチックであるが、延伸すると合成繊維になる。同じ高分子化合物
が合成繊維とプラスチックの両方に利用できることは多い。両者の性質の基本的差異は分
子配列に由来している。実際に回収したPETボトルから合成繊維がつくれている。
 (ポリエステル繊維)は耐久性があり、乾きやすくしわになりにくいが吸湿性が劣る。
この繊維はワイシャツ、カーテンなどを含めて広く利用されている。

[e]その他の合成繊維
[1](アクリル繊維)は左のような構造式の(アクリロニトリル)にアクリル酸メチルを
混合して付加重合して合成される。

      

この繊維は柔軟で保温性がよく、羊毛に似ている。
 上のように2種以上のモノマーを原料とする付加重合は(共重合)と呼ばれる。共重合
のメリットは、生成する高分子に複数の性質を付与したり、その性質を連続的に変えたり
できることである。
[2](ビニロン)は日本で開発された合成繊維である。次のように(酢酸ビニル)を付加
重合し、続いてエステル部分を加水分解すると(ポリビニルアルコール)になる。最後に
このままでは水に溶けやすいので(ホルムアルデヒド)と反応させる。

      

この繊維は強い弾性があり水に強いので、魚網などに利用される。
 ちなみに(ポリ酢酸ビニル)は接着剤や(チューインガム)に、ポリビニルアルコール
は洗濯のりに利用される。

                  - 6 -

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                                   No

2.付加重合によるプラスチック

[a]ポリエチレン、ポリプロピレン(実験のまとめ)
 洗濯のりの容器や(レジ袋)の小片を(銅線)の先に固定してバーナーの炎の中に入れ
ると、ろうそくが垂れるようにしずくが落ち、プラスチックの火を消すと(ロウ)のにお
いがする。このようなプラスチックは(ポリエチレン)やポリプロピレンである。
 ポリエチレンは次のようにエチレンを(付加重合)して合成される。この反応形式は腕
を組んでいた両手を広げて互いに手をつなぎ合うようである。

      

問1 プロピレンが付加重合するときの反応式を書け。

      

 こうして合成される高分子のポリエチレンや(ポリプロピレン)を(燃焼テスト)する
と、炎の熱で分解して通常の分子量のアルカンやアルケンに変化する。これらは13章で
触れたろうそくの原料のパラフィンに極めて似た炭化水素であり、実験の結果がうなずけ
る。

[b]ポリ塩化ビニルなど(実験のまとめ)
 食品ラップや(電線の被覆)の小片を銅線の先に固定してバーナーの炎の中に入れると、
しばらくして炎が青色や(緑色)になる。このようなプラスチックは(ポリ塩化ビニル
のような塩素系プラスチックである。
 1章では消しゴムを材料にして似た実験をしており、これは(バイルシュタイン反応
であった。この反応の原理は、有機化合物中の(塩素)が銅と再化合して塩化銅になって
揮発しやすくなり、()の炎色反応が現れるためである。単体の銅そのものは炎色反応を
示さず、これは(有機化合物)中に塩素が含まれるかどうかの検出法になる。ちなみに食
塩のような無機化合物中の塩素が銅と再化合することはない。

                  - 7 -

問2 塩化ビニルが付加重合するときの反応式を書け。

      

 (食品ラップ)の一部は塩素系プラスチックからできている。そして現在ではポリエチ
レンやポリプロピレンも利用される。

[c]ポリスチレンなど(実験のまとめ)
 (食品トレイ)やポリコップの小片を銅線の先に固定してバーナーの炎の中に入れると、
大きい(すす)を上げる。このようなプラスチックは(ポリスチレン)のようなベンゼン
環を含むプラスチックである。一般に有機化合物のかたまりは黒煙を上げて燃えるが、と
くに(ベンゼン環)は炭素原子が集中していて酸素分子が十分に供給されず、大きいすす
を上げて燃焼するのである。
問3 スチレンが付加重合するときの反応式を書け。

      

 PETボトルもすすを上げて燃焼する。前節でその材料のポリエチレンテレフタラート
にはベンゼン環があることを学習した。ただしこれは次節で説明する縮合重合によるプラ
スチックである。
 食品トレイはポリスチレンに(発泡剤)を加えて成形されており、軽くて強度がある。

[d]熱可塑性
[1]以上のプラスチックは(温度)が高くなると(軟化)して、変形して困ることがあ
る。しかしこれはこの種のプラスチックの基本的性質であり(熱可塑性)と呼ばれる。つ
まり熱エネルギーを加えて温度を高くすると(次第に)軟化し、粘土のように(塑性)変
形させることができるようになる。このため材料を加熱し鋳型に押し込んでから冷却する
ことによって、さまざまな形状を簡単に量産することができる。この工程は(射出成形
と呼ばれる。
                         (続く)

                  - 8 -

                                   No

[2]熱可塑性プラスチックの特徴は、左図のように糸状高分子が(乱雑に)集合してい
ることである。もともと(糸状)高分子はその形状からしても、また重合度がばらばらで
長さが一定しないことからしても、自然のままでは結晶化しにくいのである。つまり分子
間力が小さくなっており、常温でも(柔軟性)がある。この性質はこの種のプラスチック
を使いやすくしている。洗濯のりの容器などを思い出してみよう。
[3]ところがポリ塩化ビニルは炭素・塩素結合にかなり(極性)があり、分子間力がも
ともと大きい糸状高分子である。だからこれを成形して生産される塩ビパイプはかなり(
)。しかしこの性質は、ポリ塩化ビニルから人工皮革を生産するには不都合である。そこ
で糸状高分子どうしの分子間力がはたらくのを妨げるような(可塑剤)と呼ばれる化合物
を混合する。可塑剤は右図のように高分子の中でまるで「ころ」のようにはたらいている。
可塑剤にはフタル酸ジブチルなどが使われる。

       

[4](ポリプロピレン)分子は構成単位ごとにメチル基が枝分かれしており、通常の重合
反応では次ページの図のアタクチック型のようにその立体的構造は不規則的になり、結晶
化している部分が少なくてかなり柔軟性がある。これに対してチーグラーは糸状高分子の
立体的構造)が規則的なポリプロピレンを合成できる触媒を開発した。とくにアイソタ
クチック型は結晶化しやすくなり、これによってポリプロピレンの用途が拡大した。
 私たちはここでも、分子配列や分子構造をコントロールして期待する性質を生み出す例
に出会っている。
[e]プラスチックのリサイクル
[1]プラスチックは便利な材料であるが、大量の(ごみ)にもなっている。7章では自
然の(物質循環)の意味を学習し、人間が存続するためには物質を循環利用することが不
可欠であることを確認した。

                  - 9 -


      


       (藤谷著「高分子化合物の見方・考え方」より)
[2]熱可塑性プラスチックは回収して(再加工)しやすい材料である。そのためには材
料を汚したり混ぜたりせずに生産者にもどすことである。生産者には(法律)で再加工を
義務づける。
[3]またプラスチックを(自然)の物質循環に組み込んでいくには、それを燃料として
燃焼)させて二酸化炭素と水蒸気にし、発生する(熱エネルギー)は有効に利用するこ
とである。また現在では製鉄所は、コークスの代わりに(還元剤)としてプラスチックを
利用し始めている。ただしいずれの場合も塩素系プラスチックは除去する必要がある。そ
れに排煙に有害物質が含まれないような対策が求められる。
[4](塩素系プラスチック)を循環させるには、人間が(人工的)に塩素を切り離す処理
をし、それを(再利用)するようにせねばならない。
[5]それにしても私たちは(二酸化炭素)を発生させ過ぎている。経済と生活のスタイ
ルを改善してプラスチックの使用量を(減少)させることも求められている。
[6]現在プラスチックは(石油)を原料に合成されている。これは自然の物質循環から
は外れている。これからは光合成などによる(バイオマス)を原料にしていくべきではな
かろうか。もちろんそのときは人間が砂漠の(緑地化)など自然の物質循環を促進してい
く必要がある。
問 人間が利用しているさまざまな材料は、どのように循環させていけば良いのだろうか。


                  - 10 -

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3.縮合重合によるプラスチック

[a]フェノール樹脂
[1](フェノール)とホルムアルデヒドは()を触媒にすると次のように付加と縮合を
くり返して(ノボラック)と呼ばれる分子量が1000程度の(糸状)分子になる。

      
      

付加反応では、ホルムアルデヒドの炭素酸素二重結合(カルボニル基)に対して、フェノ
ールが(オルト−)水素ないしパラ−水素と残りの部分に切れて反応する。そして縮合反
応では、付加で生じた −CH2OH のヒドロキシル基とフェノールのオルト−水素ないし
パラ−)水素が切り取られる。結果としてフェノールどうしが(メチレン基
>CH2 )で結び付けられる。
 このノボラックは固体であり、粉末にして硬化剤を加えて(加熱)すると、さらに縮合
重合が進行して硬化する。(ベークランド)はこの反応を研究して、1909年にベークラ
イトとして売り出した。これが(合成プラスチック)の始まりである。このプラスチック
は(電気絶縁性)が優れており、現在でもスイッチ、ソケット、回路基板などに使用され
る。
[2]同じフェノールと(ホルムアルデヒド)は(塩基)を触媒にすると、やはり付加と
縮合をくり返して(レゾール)と呼ばれる(枝分かれ状)の高分子になる。
 レゾールは液体であり、紙などに染み込ませて加熱すると、同様に(硬化)する。
[b]熱硬化性

                  - 11 -

 フェノール樹脂のようなプラスチックは、熱エネルギーを加えて温度を高くすると硬化
し再び軟化することがない。この性質は(熱硬化性)と呼ばれる。
 これは熱エネルギーを加えるとさらに(縮合重合)が進行して、分子はいたるところで
枝分かれ状になり立体的に(網目状)の高分子が形成されるためである。この種のプラス
チックは(分子量)が極めて大きい。たとえばレゾールでは次のような構造になっている。
そして枝分かれ状高分子が生成するためにはモノマー分子が(3つ)以上の反応サイトを
持っている必要がある。

      

[c]尿素(ユリア)樹脂
 フェノール樹脂で説明したように、ホルムアルデヒドは付加と縮合により2つの分子を
メチレン基で結び付けるはたらきをする。その相手物質を尿素 H2NCONH2 にしたの
が(尿素樹脂)である。尿素は4つの水素を持ち4つの反応サイトがあるので、生成する
高分子は立体的に網目状になる。

      

 尿素樹脂は(接着剤)としても利用される。ベニヤ板のような(合板)は、途中まで付
加と縮合をくり返した樹脂液を染み込ませ押さえつけて加熱することによって、縮合重合
を進行させて貼り合わせる。
 このようにして生産される建材は安価ではあるが、未反応の(ホルムアルデヒド)が揮
発して(シックハウス病)を引き起こすことがある。

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4.ゴ ム

[a]ゴム状弾性
問1 輪ゴムの実験のイラストを描け。

      

[1]輪ゴムは自然長の(数倍)にも引き伸ばすことができる。このとき分子はどのよう
に変形しているのだろうか。ゴムをつくる高分子は図のようにところどころで橋かけ状に
なっており、縮んだ状態では橋と橋の間は(熱運動)のため乱雑に絡まっている。そして
力を受けるとそれが伸びた状態になる。ただし橋かけ部分があるため分子の基本的構造は
保持)される。そして力がなくなると再び熱運動のため橋と橋の間がもとの状態にもど
り、形状が復元する。(ゴム状弾性)は
(1)分子間力がもともと小さくて、高分子が熱運動で自由に(変形する
(2)高分子がところどころで(橋かけ状)になっている
ことから生まれてくる。ゴムでは結晶化している部分はほとんど(見られない)。

      

[2]4章では、熱運動が(激しく)なるとそれは温度の上昇として現れることを学習し
た。
 輪ゴムを引き伸ばすと高分子の一部分が(拘束されて)熱運動できなくなる。するとそ
の運動エネルギーが残りの部分に集中して(熱運動)が激しくなる。こうして唇に当てて
おいた輪ゴムを、一気に引き伸ばすと温度が(高く)なっていることを確認できる。反対

                  - 13 -

に引き伸ばしたままで唇の温度になった輪ゴムを一気に縮ませると、運動エネルギーが高
分子全体に(分散して)熱運動が弱まり、温度が(低く)なるのである。
問2 ゴムにおもりをつるしておいて、温度を高くするとどうなるか。
    伸びが小さくなる。

[b]加硫
 すでに学習した生ゴムは、そのままタイヤなどに使用するには伸び過ぎる。グッドイヤ
ーは生ゴムに(硫黄)を混ぜて加熱すると、強い弾性を示すようになることを発見した。
これは(加硫)と呼ばれ、ポリイソプレンの構成単位あたり1つ残っている(二重結合
と硫黄分子が、次のように反応して橋かけ状の部分が増加するためである。

      

[c]合成ゴム
 天然ゴムの分子構造を参考に多くの(合成ゴム)が開発されてきた。現在もっとも量産
されているのはスチレンブタジエンゴム(SBR)である。これはその名のとおりスチレ
ンと(ブタジエン)を共重合させて合成される。合成ゴムにも加硫が行われる。
問3 SBRではスチレンとブタジエンの配列は一定していないが、スチレンとブタジエ
ンが連結している部分を構造式で書け。ちなみにブタジエンは左図のような構造式で示さ
れる。

       

                  - 14 -

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5.機能性高分子

 現在では特別のはたらきをする機能性高分子が数多く開発されている。

[a]吸水性樹脂(実験のまとめ)
 (吸水ビーズ)1gに水を50g加えても、やがてすべて吸収してしまう。これは(
水性樹脂)と呼ばれる。
 (アクリル酸ナトリウム)という塩を付加重合すると次のような高分子が生成する。

      

このとき(架橋剤)を加えておくとゴムに似た分子構造になる。しかしこの高分子には構
成単位ごとにナトリウムとカルボキシル基の酸素による(イオン結合)があり、電離して
水分子を(水和)する性質がある。つまり溶解しようと大量の()を吸収する。しかし
分子が(橋かけ状)になっているので水溶液になってしまうことなく、図のように水を保
持して大きいビーズになる。吸水性樹脂は(紙おむつ)や生理用品に利用される。

      

[b]イオン交換樹脂(実験のまとめ)
[1](硫酸銅)水溶液に(陽イオン交換樹脂)を加えて振り混ぜると、やがて水溶液は青
色が消えて(無色)になる。次に水溶液をろ過して残った樹脂に、濃度が高い(塩酸)を
加えて振り混ぜると、水溶液は(黄緑色)になる。
 また水に陽イオン交換樹脂を加えて振り混ぜ、ろ過した水にユニバーサル指示薬を加え
ると、(黄色)になりすこし酸性であることを示す。そして残った樹脂に(塩化ナトリウム

                  - 15 -

水溶液を加えて振り混ぜ、ろ過した水溶液に指示薬を加えると、(赤色)になり(より強い
酸性になる。
[2](スチレン)に架橋剤を加えて付加重合すると網目状の高分子が生成する。これに濃
硫酸を反応させて、左図のようにベンゼン環に(スルホ基)を導入したものが陽イオン交
換樹脂である。15章で学習したようにスルホ基は()である。

      

[3]これが銅イオンを含む水溶液に接すると、右図のように水素イオンと銅イオンが(
オン交換)されて(水素イオン)が水溶液に移る。こうして銅イオンの青色が消えたので
ある。次に銅イオンを取り込んだ樹脂に濃度が高い塩酸を加えるとやはり陽イオンの交換
が起こり、今度は(銅イオン)が水溶液に移ってくる。銅イオンは塩化物イオンと錯イオ
ンを形成すると緑色になることに注意しよう。こうして陽イオン交換樹脂は(再生)され
る。
 同様に、(中性)の塩化ナトリウム水溶液に陽イオン交換樹脂が接すると、水素イオンと
ナトリウムイオンの交換が起こり、水溶液が酸性を示す。
 陽イオン交換樹脂は酸の一種であるが、その陰イオンの方は網目状の高分子に結合して
いて移動(できない)という特徴を持つ。





                         (続く)

                  - 16 -

                                   No

[4]これに対して(陰イオン交換樹脂)は、左図のようにアルキルアンモニウム基が導
入されたものである。アルキルアンモニウム基は(塩基)である。これがたとえば塩化物
イオンを含む水溶液に接すると、(水酸化物イオン)と塩化物イオンがイオン交換されて水
酸化物イオンが水溶液に移る。陰イオン交換樹脂も濃度が高い水酸化ナトリウム水溶液で
処理すると、やはり陰イオンの交換が起こって再生される。

      

[c]イオン交換樹脂の活用
[1]塩化ナトリウムのような陽イオンと陰イオンを不純物として含む水を陽イオン交換
樹脂と陰イオン交換樹脂に通すと、水素イオンおよび水酸化物イオンとイオン交換され、
両者は(中和)して水になるので、イオン性の不純物を除去した(純水)が得られる。
[2]陽イオン交換樹脂を多孔質の膜にした(陽イオン交換膜)も生産される。この交換
膜は左図のように陽イオンは交換しながら(透過させる)が、陰イオンは高分子に固定さ
れた陰イオンが電気的に(反発)して透過させない。
 陽イオンイオン交換膜で右図のように塩化ナトリウム水溶液を区切って電気分解すると
どうなるだろうか。

      

                  - 17 -

 陽極では塩化物イオンが次のように電子を得て(塩素)が発生し、水溶液中には正電気
をもつナトリウムイオンが残ってくる。
    ( 2Cl- −→ Cl2 + 2e- )
参考:9章の電子得失表で触れたように、条件によって水分子より塩化物イオンが電子を
   失いやすいことがある。
陰極では水分子が次のように反応して(水素)が発生し、水溶液中には負電気をもつ(
酸化物イオン)が貯まってくる。
    ( 2e- + 2H2O −→ H2 + 2OH- )
しかしもっぱら(ナトリウムイオン)が陰極に移動することになるので、(陰極)側では水
酸化ナトリウムが生成することになるのである。こうして食塩水の電気分解により塩素、
水素、(水酸化ナトリウム)が生成する。ちなみに塩素と水酸化ナトリウムが反応すること
は10章で学習した。

[d]導電性高分子
 金属は導電性を持つ。そして2章では非金属の黒鉛が導電性を持つことを学習した。そ
れでは高分子で導電性をもつものは合成できるだろうか。
 ノーベル賞を獲得した(白川)は、次のようにアセチレンを付加重合して(ポリアセチ
レン)のフィルムをを合成し、その金属のような銀色の光沢に感動した。

                   図26

そして1976年に共同受賞者らと、このフィルムに微量の(臭素)をドーピングすると、
金属と同程度まで導電性が大きくなることを発見した。(導電性高分子)の誕生である。
 炭素・炭素の二重結合と単結合が交互に連結した結合状態はπ−共役系と呼ばれる。す
でにこの結合状態は、イソプレンの1,4−付加のように、共有電子対が(移動)しやす
いことが知られていた。黒鉛もπ−共役系に似た結合状態を持っている。彼らはこのポリ
アセチレンに臭素を(ドーピング)するという手法で、その性質を見事に発現させたので
ある。
 これをきっかけに種々の導電性高分子が開発され、(二次電池)やコンデンサーに利用さ
れ始めている。

                  - 18 -

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                                   No

   宿題(19章)

1.合成繊維の実験に関する次の文を完成し、下の問に答えよ。
(a)(ヘキサメチレンジアミン)と水酸化ナトリウムを溶かした水溶液に、(アジピン酸
ジクロリド)のヘキサン溶液を静かに乗せ、境界面の膜を引き上げると6,6−ナイロ
)(ア)の糸が得られる。
(b)PET)(イ)ボトルの小片を加熱融解して、くぎの先で触れて引っ張る(ウ)
みるみる丈夫な糸ができていく。
(1)(ア)を発明した化学者名を書け。  (カロザース
(2)(ア)の工業的合成の反応式を書け。
    nHOOC(CH24COOH + nH2N(CH26NH2
        −→ [−OC(CH24COHN(CH26NH−]n + 2nH2
(3)(イ)はどんな名称の略か。  (ポリエチレンテレフタラート
(4)(ウ)は工業的には何と呼ばれるか。  (延伸
(5)(ウ)により繊維の分子配列がどのようになるか、1行ほどで説明せよ。
    糸状高分子が繊維の方向に引き伸ばされて繊維と直角な方向に結晶化する。
(6)ビニロン合成の簡略な反応式を完成せよ。
        付加重合      加水分解      HCHO
        −−−→      −−−→      −−−→      


  (酢酸ビニル)  ポリ酢酸ビニル (ポリビニルアルコール)  ビニロン

2.燃焼テストについて次の文を読み、下の問に答えよ。
 プラスチックの小片を銅線の先に固定してバーナーの炎に入れると、種類によって次の
3つの様子が観察される。
  (a)ろうそくが垂れるように滴が落ち、火を消すとロウのにおいがする。 
  (b)しばらくして炎が青色や緑色になる。
  (c)大きいすすを上げる。
(1)それぞれに相当する製品名1つと、そのようなプラスチックの示性式1つを書け。
  (a)レジ袋 or 洗濯のりの容器    (−CH2CH2−)n など
  (b)食品ラップ or 電線の被覆    (−CH2CHCl−)n
  (c)ポリコップ or 食品トレイ

(2)それぞれの様子を示す理由を一行ほどで説明せよ。
  (a)炎の熱で分解してパラフィンに似たアルカンやアルケンに変化する。
  (b)有機化合物中の塩素が銅と再化合して塩化銅になって揮発しやすくなり、
     銅の炎色反応が現れる。
  (c)ベンゼン環は炭素原子が集中していて酸素分子が十分に供給されない。

3.次の文を完成し、下の問に答えよ。

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 (熱可塑性)プラスチックは温度が高くなると(軟化)し、粘土のように(塑性)変形
させることができる。このプラスチックの高分子は(糸状)であり、かつ繊維に比べて高
分子が(乱雑に)集合している。つまり(分子間力)が小さく、常温でも(柔軟性)があ
る。
 これに対して(熱硬化性)プラスチックは、重合途中の材料の温度を高くするとさらに
重合)が進んで立体的に(網目状)の高分子になって硬化する。
(1)フェノール樹脂を発明した化学者名を書け。  (ベークランド
(2)ユリア樹脂の原料の名称と示性式を書け。
    尿素         H2NCONH2
    ホルムアルデヒド   HCHO
(3)シックハウス病の主な原因を1行ほどで説明せよ。
    合板を生産する尿素樹脂から未反応のホルムアルデヒドが揮発する。

4.ゴムについて次の問に答えよ。
(1)輪ゴムを引き伸ばすと温度はどうなるか、理由を付けて2行ほどで説明せよ。
   高分子の一部分が拘束されて熱運動できなり、その運動エネルギーが残りの
   部分に集中して熱運動が激しくなって、温度が高くなる。
(2)ゴムに硫黄を混ぜて加熱すると弾性が強くなることを何と呼ぶか。 (加硫
(3)その結果できる分子構造を、
天然ゴムを例にして右に示性式で書け。
(4)SBRと略される合成ゴムの
原料の名称と示性式を書け。               
    スチレン


    ブタジエン  CH2=CH−CH=CH2

5.次の文を完成せよ。
 ナトリウムイオンや塩化物イオンのような不純物を含む水を(陽イオン交換樹脂)と(
イオン交換樹脂)に通すと、(水素イオン)および(水酸化物イオン)とイオン交換され、
両者は中和して水になるので、(純水)が得られる。
 (陽イオン交換膜)は陽イオンは(透過させる)が、陰イオンは高分子に固定された(
イオン)が電気的に(反発)して透過させない。
 この交換膜で塩化ナトリウム水溶液を区切って電気分解すると、陽極では次の反応が起
こり、水溶液中には(ナトリウムイオン)が残ってくる。
    ( 2Cl- −→ Cl2 + 2e- )
陰極では次の反応が起こり、水溶液中には(水酸化物イオン)が貯まってくる。
    ( 2e- + 2H2O −→ H2 + 2OH- )
そしてもっぱら(ナトリウムイオン)が移動して(陰極)側では(水酸化ナトリウム)が
生成する。

               ( )組(  )番 氏名(       )  

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