04.4
                                   林 正幸

   メタノールの燃焼熱

解 説

 人類は物質エネルギーを燃焼によって熱エネルギーに転換して利用してきた。その意味
でぜひ生徒にも燃焼熱の計測をさせたい。かつての菓子の缶に入れた水をアルコールラン
プで暖める方式は、効率が60%を越える程度であった。これを改善したいと工夫する中
で、Lアングルを切断したアルミ片を加熱する方式を思い付いた。
 断熱容器に納めた菓子の缶にアルミ片を入れ、金網を被せて逆さにする。支えは三脚を
逆さにして3本の足を利用する。アルコールランプでまんべんなく加熱してから、もとに
戻し水を加えて温度上昇を計測する。
 その結果は効率が85%に達するほどに跳ね上がった。ちなみにこの実験法では水滴は
ほとんど生じないので、次の熱化学方程式を計測することになる。
    CH3OH + (3/2)O2 = CO2 + 2H2O(気) +645kJ
 用いるアルミ片は523gになっている。それは選んだ菓子の缶が154gで、鉄製で
あることによる。つまり鉄の熱容量は0.44J/K・gとアルミニウムの半分であるので、
これでちょうど実質的に600gのアルミを使うことになる。アルミ片が得た熱エネルギ
ーは、アルミニウムの熱容量0.88J/K・gを使って、次の式で計算できる。
    0.88×600×(アルミ片の温度上昇)[J]
 水は1[l]=1000gが適量で、これで缶の中のアルミ片がうまく被る。水が得た
熱エネルギーは、水の熱容量4.2J/K・gを使って、次の式で計算できる。
    4.2×1000×(水の温度上昇)[J]
燃焼したメタノールの質量は、アルコールランプ全体の質量差から求まる。これでメタノ
ール1molあたりの燃焼熱が、そのモル質量32g/molを使って、次の式で計算でき
る。
    (全体の熱エネルギー)×32/(燃焼したメタノールの質量)
 実験上の細かい注意は次の「準備」や「操作」を参考にしてほしいが、暖冷房をかけ始
めた段階では誤差が出やすい。また風の影響も受けやすい。そしてアルミ片は空気中に曝

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しておき、水は汲みおくとよい。
 なお同じ方式で、エタノールやアセトンの燃焼熱も計測できる。

準 備

・菓子の缶(「ゴーフル」(1500円)の缶が手ごろ 直径17cm、高さ9cm、質
  量154g、鉄製)
・断熱容器(発泡スチロールで自作)
・丸い金網
  (20meshステンレス網を切断し、周囲を折り曲げてつくる)
・三脚
・アルミ片 523g
  (幅10mm、厚さ1mm、長さ2mのアルミLアングルを、電気のこぎりで2cm
   幅に切断する。6本で予備もできる。)
・はかり(1kg用)
・電子天びん(200g用で、0.01gまでは計測できるもの)
・アルコールランプ(ガラス製)
  (ランプの芯は短くして炎が小さくなるようにする)
・メタノール
・1[l]ビーカー
  (正確な1[l]の目盛りを印しておく)
・アルコール温度計、ガラス棒
・大型バット、ブロワー

操 作

(イメージ)
 メタノールを燃焼させ、その熱エネルギーをアルミ片に貯め、水を加えて全体の温度上
昇を計測する。
(操作)
(1)菓子の缶(半径8.5cm)を断熱容器に収め、アルミ片523gを入れ、温度計を
差し入れてその温度を計測する。

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    (   )℃
参考:菓子の缶は鉄製で154gあり、この熱容量はアルミニウム77gに相当する。つ
   まり実質的にはアルミ片600gを用いることになる。
注意:温度は0.2℃刻みで読み取る。
(2)正確な目盛りを印したビーカーに水1[l]を入れ、ときどきかき混ぜながら温度
を計測する。
    (   )℃
(3)メタノールを入れたアルコールランプの、キャップの内側を拭ってから被せて全体
の質量を計測する。
    (      )g
(4)アルミ片をならして丸い金網を被せ、三脚を入れて網を支え、全体を静かに逆さに
する。
(5)アルコールランプに点火して手に持ち、アルミ片をまんべんなく5分間加熱する。
注意:この加熱が結果を左右する。炎は先端が網からすこし離れるようにする。半径が3、
   6cmの2つの同心円を頭に描き、順にくり返し炎でたどるように加熱する。
(6)時間が来たらキャップを被せてアルコールランプを消す。菓子の缶と三脚をそのま
ま元にもどして三脚を外し、水1[l]を注ぎ、金網を除いて温度計を差し入れ、ガラス
棒でかき混ぜながら、到達温度を計測する。
    (   )℃
(7)合間を利用してアルコールランプの質量を計測して、燃焼したメタノールの質量を
求める。
    (    )g
(8)水を捨ててアルミ片を大型バットに取り出し、ブロワーで乾燥する。菓子の缶も乾
燥する。
(9)できるなら次のデータを使って、メタノール1molの燃焼熱を計算してみよ。
    熱容量  アルミニウム   0.88J/g・℃
         水        4.2
    メタノールのモル質量   32g/mol

結 果

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 典型的な実験データは次のようである。
    アルミ片      5.0℃
    水         4.8℃
    到達温度      9.4℃
    燃焼したメタノール 1.26g
これから次のように計算される。
  アルミ片が得た熱エネルギー
    0.88×600×4.4 = 2320[J]
  水が得た熱エネルギー
    4.2×1000×4.6 = 19320[J]
  全体の熱エネルギー
    21640[J]= 21.64[kJ]
  メタノール1molあたりの燃焼熱
    21.64×32/1.26 = 550[kJ/mol]
得られた数値は文献値の85%に相当する。

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