11.7
                                   林 正幸

   導電率計V3の製作

 すでに1年間前にも導電率計を製作したが、
    http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/masa/ne104.htm
計測にデジタルマルチメーターを使うという弱点があった。1万円程度の市販品もあり、
それ以上に改良しようとは思わなかった。
 ところが、t−ブチルクロリドが60%アセトン・水混合溶媒中で加水分解する反応速
度を計測する実験に取り組む中で、市販品のケースがこの溶媒に溶けていくという問題に
ぶつかった(結果的にはt−ブチルブロミドの60%エタノール・水混合溶媒中での加水
分解に転換した)。この溶媒に溶けないセルを作り、それに伴って必然的に新しい導電率
計の開発が求められることになった。計測精度を高くする必要もあった。
 前回の導電率計では、電源に「電源・デジタル表示装置(PWDD)」
    http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/masa/ne69.htm
を利用したが、今回は発想を変えて「デジタル表示」部も利用できるようにしようと考え
た。

A 回路とセル

[1]トランジスターを使うCR発信により4kHzあまり(周期は約0.25ミリ秒)の
サイン波をつくるのは前と同じである。オペアンプ[082]のバッファー回路を通して
から、コンデンサー0.047μと抵抗で交流にする。このとき抵抗に1kの可変抵抗を組
み込んで、最大電圧で300〜100mV程度のサイン波を得る。この可変抵抗は「振れ
幅調節」のはたらきをする。前回は市販品にならってできるだけ低い電圧にしたが、今回
はそれにこだわらなかった。そうしないと、レンジの最大値を5Vまで増幅してAD変換
に持っていくことができないためである。これをオペアンプ[082]の減算回路のプラ
スに入力し、27k抵抗2つと1k半固定抵抗でつくった小電圧をマイナスに入力し、直
流成分がゼロになるように調節する。この半固定抵抗は「直流ゼロ調節」のはたらきをす
る。実際にはミリアンメーターで直流電圧をゼロに調節する。
 こうして得られる交流電流を「セル」に掛け、それと直列に入れた小抵抗1/5=0.2
Ωの電圧をオペアンプ[OP07]の200倍増幅回路に入力し、さらにオペアンプ
[082]で10倍に増幅する(全体で2000倍の増幅)。これをダイオード
1S1588と100Ωを通して1μのコンデンサーに充電する(抵抗とコンデンサーの

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時定数は10-4 =0.1ミリ秒)。これでコンデンサーは(実際にはコンデンサーと抵抗
の両端も)はその時点の最大電圧を保持することになる。しかしこのままでは微少な電圧
変動がコンデンサーの電圧をじりじりと押し上げていく。そこでコンデンサー(と抵抗)
に並列に抵抗270kを入れる(この時定数は0.27秒)。始めはコンデンサー(と抵
抗)をショート(リセット)しては計測することを考えたが、この抵抗270kのおかげ
で、最大電圧は安定し、リセットの必要も無くなった。
 最大電圧保持回路では、ダイオードの電圧降下が問題である。このためオペアンプ
[OP07]に対して、抵抗5.6kなどと10kの半固定抵抗でオフセット電圧を調節す
る。この半固定抵抗は「ゼロ点調節」のはたらきをする。
[2]電極は、厚さ0.3mmの真ちゅう板を30×12mmに切る(2枚)。これを右図
のように曲げ、50mLビーカーに正対して挟み、ビニールテープで固定する。そして溶
液を50mL入れて計測することを基本にする。複数の「セル」を使う場合はそれぞれを
導電率計に対応させ、補正したら電極はビーカーから外さないようにする(外したら補正
し直す)。

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[3]部品表
  オペアンプ[082]   ×2
       [OP07]
  半固定抵抗(多回転)1k
10k
  可変抵抗1k&つまみ
  抵抗1Ω  ×5
    100Ω
    150Ω
    270Ω  ×2

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    1k  ×2
    2.7k  ×2
    5.6k  ×4
    10k  ×2
    27k  ×3
    100k  ×4
    270k  ×2
    560k
  コンデンサー0.0022μ  ×3
        0.047μ
        0.1μ  ×2
        1μ
  ダイオード1S1588
  ユニバーサル基板ICB−93S
  φ2×25mmビス・SPワッシャ・ナット  ×4
  φ2ワッシャ  ×8
  10P溝ありオスコネクター
  フラットケーブル  10cm
  赤黒みの虫クリップ&リード線

B 調整と計測

[1]標準溶液は次の5種を準備する。
@ 0.2mol/L塩化ナトリウム水溶液    導電率20.34mS/cm(25℃)
A 0.095     〃              10.14
B 0.05mol/L臭化カリウム水溶液        6.79
C 0.02      〃              2.81
D 純水                       0.00
 導電率は通常25℃における数値に換算して表示されるので、メーターの調整と導電率
の計測を同じ温度で行うとすれば、実際の温度が25℃から大きくは外れないなら、標準
溶液の導電率が25℃の数値になるようにメーターの調整をすればよい。それは、どの溶
液でも導電率の温度依存性がおおむね等しいという前提に基づく。
[2]まずレンジ0〜20.00mS/cmの場合を説明する。導電率計を電源デジタル表
示装置(PWDD)にセットし、補正ができる領域4か5に、単位やレンジを設定する。
刻みは0.04(入力は4)とする。
参考:mS/cm の「アスキーコード」は、06130503021506030613

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   である。
セルに標準溶液@を50mL入れて、電極をつなぐ。「振れ幅調節」を回して表示を
20.34に近い数値にして、「直ゼロ端子」と「GND端子」(共に回路図を参照)をア
ナログテスター(ミリアンメーター)につなぎ、「直流ゼロ調節」を回して直流成分がゼ
ロになるようにする。
 そして改めて「振れ幅調節」を回して表示を20.36という数値にする。標準溶液をD
に換え、「ゼロ点調節」を回して表示を0.00という数値にする。また標準溶液を@に換
え、「振れ幅調節」を回して表示を20.36という数値にする。さらに標準溶液をDに換
え、「ゼロ点調節」を回して表示を0.00という数値にする。この操作を調節が必要でな
くなるまで数回くり返す。
 最後に標準溶液をAに換え、導電率を計測して10.14に近い数値になるか調べる。こ
の数値はある程度ずれるので、補正機能を利用して正確な数値を示すようにする。
参考:たとえばAの計測例は、11.12mS/cmとなる。
[3]レンジ0〜10.00mS/cmの場合は刻みを0.02(入力は2)とし、標準溶液
A、B(目的によってはC)、Dを用いて、同じように調節する。
 レンジ0〜7.00mS/cmの場合は刻みを0.02とし、標準溶液B、C、Dを用いて、
同じように調節する。
  この導電率計は3つのレンジで使うことができる。なお調節済みの導電率計が、電源を
入れてクリップが外れた状態で0.00からすこしずれる場合は、「ゼロ点調節」のみを回
して0.00にする。
[4]2−ブロモ−2−メチルプロパンの60%エタノール・水混合溶媒中における加水
分解
    (CH3)3CBr + H2O ―→ (CH3)3COH + HBr
 2−ブロモ−2−メチルプロパン             臭化水素
              2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン
の反応速度定数を求めるために、溶液の導電率の変化を計測した。導電率は生成する臭化
水素によって生じる。レンジは0〜7.00mS/cmである。
 計測例(温度は20.3±0.2℃)は次ページの表の左2列目のようであった。30分
後の導電率は、反応終了時のものと見なした。
 この求核置換反応は1次になり、次の速度式と積分式が成り立つ。
    −ΔC/Δt = kC
    −log(C/C0) = (k/2.3)×t
      log:常用対数(10を底とする対数)
      C0:初濃度
反応終了時の臭化水素の導電率 κ は、スタート時の2−ブロモ−2−メチルプロパンの

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   時間    HBrの導電率   C/C0    −log(C/C0)
   0[分]   0[mS/cm]   1.000    0.000
   0.5    0.50      0.868    0.061
   1     1.04      0.726    0.139
   1.5    1.46      0.616    0.210
   2     1.80      0.526    0.279
   3     2.30      0.395    0.403
   4     2.64      0.305    0.516
   5     2.92      0.232    0.635
  30     3.80
モル濃度に対応する。そしてある時点の臭化水素の導電率 κ は、反応で消費されたこの
反応物質のモル濃度に対応する。したがって次の関係式が成り立つ。
    C/C0 = (κ−κ)/κ
 −log(C/C0) と時間をグラフにすると、ほぼ直線になる。



 積分式を最小2乗法で求めると
    −log(C/C0) = 0.1276t+0.010
これから反応速度定数は
    0.1276×2.3 = 0.293[1/分]
となった。

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