03.10
                                   林 正幸

  蒸気圧の計測

解 説

 一般に蒸気圧は、高校生にとって理解しずらい。それは化学平衡の概念が十分に習得で
きないことと、分かりやすい実験が見あたらないためであると考える。
 実験に関しては装置を使った計測は、かりにそれが正確にできても、蒸気圧の実感に結
び付かないおそれがある。そこで注射器とバネばかりを使ってみることにした。そして温
度を変える計測で、期待以上の数値が得られた。
 20[N]のバネばかりをスタンドのリングに吊し、5mlディスポーザル注射器のピ
ストンに穴を開けてカードリングを通す。
 面倒なのはピストンに摩擦があることである。これは内部の空間が拡がるときと縮むと
きの平均を採ることで解決できる。
 注射器の穴を押さえるのは、指にすこしワセリンを付けるとよい。
場合によってはさらに折り重ねて使ってもよい。それでもメタノールは空気が入りやすい
ので注意が必要である。
 ブタンのように逆に圧力を加える必要がある事例も重要である。エーテルはピストンリ
ングのゴムが溶解してできない。
 なおこの実験は盛口さんと四ケ浦さんのアイデアが下敷きになっている。

準 備

・5mlディスポーザル注射器 ×3(空気用、水用、メタノール用)
(ピストンにドリルで穴を開け、カードリングを通す。)
・ワセリン
・20[N]バネばかり
・スタンド(リング付き)

                  - 1 -

・300mlビーカー
・バーナー、三脚、金網、マッチ
・温度計
・50mlビーカー
・メタノールと回収容器 ・試験管と中に入る小さい温度計 ・ブタンボンベ

操 作

(1atmに相当する目盛り)
(1)スタンドにバネばかりを吊し、空気2mlを入れた注射器(空気用)を引っかけ、
指にすこしワセリンを付けて穴を押さえて引っ張り、体積が4mlになるときの目盛りを
読み取る。
参考:注射器中の2mlの空気の圧力は大気圧と同じ1atmであるが、その体積が4
   mlになると0.5atmになる。つまりこのときの注射器のピストンは0.5
   atmで引かれている。したがって読み取った目盛りの2倍が1atmに相当する。
   この数値をa[N]とする。
注意:ピストンの移動には摩擦があるので、ゆっくり引っ張って4mlになる数値とゆっ
   くりゆるめて4mlになる数値を読み取って、その平均値をデータとする。
   手をゆるめたときに2mlにもどらない場合はやり直す。
(水の蒸気圧)
(2)300mlビーカーに水を半分入れ、温度計を差し入れてバーナーで加熱していく。
(3)30℃になったら火加減し、その水約2mlを注射器(水用)に採り、同様に引っ
張り、注射器内に空間(水蒸気)ができるときの目盛りを読み取る。この数値をb[N]
とする。
参考:中の水蒸気の圧力(蒸気圧)は、次の式で計算できる。
     (a−b)/a[atm]
注意:注射器に空気が残らないように、穴を水に付けて何度か出し入れする。
   温度変化を避けるため手早く操作する。
   空間がゆっくり拡がるときの数値と、ゆっくり縮むときの数値を平均せよ。
   手をゆるめたときに空間が残る場合はやり直す。
(4)湯を55℃および80℃にして、同様に計測する。

                  - 2 -

(メタノールの蒸気圧)
(5)50mlビーカーにメタノール約30mlを入れ、湯に浸けて30℃にする。
注意:メタノールの加温はドラフトで行う。
   メタノールは毒性があるので、皮膚に付けないようにする。実験が終わった指先を
   水で洗う。
(6)注射器(メタノール用)に採って、同様にメタノールの蒸気圧を計測する。
(7)さらに55℃のメタノールの蒸気圧を計測する。
注意:メタノールの入ったビーカーを直火で加熱してはいけない。
(8)メタノールを保管容器にもどす。
(ブタンの蒸気圧)
(9)試験管に小さい温度計を入れ、液体のブタン数mlを採り、1atmの下での沸点
を計測する。
(10)続いて口を指で押さえて沸とうを止める。そして温度が沸点を越えるほど指の圧
力が大きくなることを確認する。

注意・結果

 この計測は慣れることが必要である。参考に私のデータを紹介する。
(1atmに相当する目盛り)
     8.4−4.4[N]  平均  6.4[N]
    1atmに相当する目盛りは  12.8[N] である。
使用する注射器の内径から計算した断面積は1.20cm^2 であるので、かなり正確であ
る。
(水の蒸気圧)
30℃  15.2−9.6[N] 平均 12.4「N]  蒸気圧 0.031[atm]
55℃  12.8−8.8[N] 平均 10.8「N]  蒸気圧 0.156[atm]
80℃   9.6−4.8[N] 平均  7.2「N]  蒸気圧 0.438[atm] 
文献値は
30℃  0.042[atm]
55   0.155
80   0.467
であり、比較的よい数値が得られている。
(メタノールの蒸気圧)
30℃  12.4−8.4[N] 平均 10.4「N]  蒸気圧 0.188[atm]
55℃   7.2−3.2[N] 平均  5.2「N]  蒸気圧 0.594[atm]

                  - 3 -

正確な値は
30℃  0.215[atm]
55   0.684
である。
ちなみにブタンの正確な蒸気圧は次のようである。
−0.5℃   1[atm]
10     1.48
20     2.08


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