<追記>
 時間が経つと、こだわりが消えてもっと進化した形が生まれることがある。以下の文章
も参考にしてほしいが、「簡単旋光計」の方を見てほしい。計測精度は変わらない。
                         (07.3)

                                   05.6
                                   林 正幸

  旋光計の製作

 光学異性体の旋光性を調べるには、あめ玉と偏光板を使う実験がある。私は大学時代に
旋光計とにらめっこをしていたので、いつかそれを手づくりしてみたいと考えていた。
 はじめは容器(セル)を垂直型にしたが、液面が揺れるにつれて光源の像が揺れて計測
しにくかった。そこですこし製作が難しくなるが、水平型にすると大幅に改善できた。セ
ルの長さは10cm(1dm)にした。光源には高輝度発光ダイオードを利用した。通常
の計測ではナトリウムのD線が使われるので、赤色を基本としたが、緑と青色も準備して、
旋光度の波長による変化(旋光分散)も調べられるようにした。

[a]製 作
[1]ラップフィルムの、長さ30cmほどの紙管の内径を計り、それにちょうど収まる
角柱の底辺を求め、それを a[mm」とする(24〜26mmになる)。厚さ1mmのア
クリル板で、図のような形を、大きいはさみで切り取る。

    

そしてアクリル接着剤(ジクロロメタン)で接着してセルをつくる。大きすぎればエッジ
を紙やすりで削り、小さければエッジにビニールテープを貼る。最後に水漏れしないか、
チェックする。
参考:紙管は寸法にばらつきがある。個々に設計する必要がある。
備考:1mmアクリル板ははさみで切れ、接着も容易であるので、さまざまな形をつくる
   のに便利である。
[2]紙管に縦に直線を引き、0°の基準線にする。そして左右に90°ずれたところに
も平行に直線を引く。
参考:角度については、フレキシブルなメジャーを使い、円周を分割するとよい。後で角
   度計測の基準になるので、正確に作業する。
一方を100mm残して、大きいカッターで縦割りにし、半分を切り取る。左図のように
セルを挿入し、切り取った半円筒を被せて端を切って長さをそろえる。

                  - 1 -


    

[3]工作用紙で、紙管に被せて滑らかに回るような直径で、高さが80mmの円筒をつ
くる(1回半ほど巻き付けるとよい)。そして右図を参考にしてこの一方に、中心に直径
が15mmの円形ののぞき窓がある底面を固定する。
参考:私はセロテープを使った。
[4]偏光板を、幅が(a−1)mm、と20mmになるように平行に切り出す。長さは、
前者が35mmほど、後者が25mmにする。角度目盛りを付けるときのために、きちん
とした長方形にする。
参考:私は科学館から入手した立体映画用のめがねの偏光板を利用した。したがって前者
   の長さが30mmになった。もうすこしゆとりがあった方が作業しやすい。
細かい泡の入った包装用白色ポリシートを前者の偏光板と同じ大きさに切り出す。これは
光を散乱させて光源像をぼかすために使う。
 左図のセルのbの位置に、前者の偏光板を横長にして、はみ出す部分は折り曲げて固定
する。これも角度目盛りを付けるときのために、角柱に平行になるように注意する。その
上にポリシートを縦長にして固定する。そして後者の偏光板は、円筒の窓に固定する。
[5]下図のようにラグ板に、赤色の高輝度発光ダイオード(LED)を前側に、3pト
グルスイッチを後側になるように固定し、電池ホルダー(単3を2本入れるタイプ)の電
源線と、LEDとスイッチ、それに100Ω抵抗が直列になるように配線する。そしてラ
グ板と電池ホルダーをビニールテープを巻き付けて合わせ、LEDがセンターに来るよう
にする。
参考:LEDには極性がある。

    

ポリシートを7cm幅にして光源に巻き付け、工作した紙管に半円筒を被せて輪ゴムで固
定し、その中にちょうど収まるようにする。
参考:紙管の内径が小さいときは、ラグを大きく曲げて、そのまま収まるようにする。
 さらに緑、青色のLEDの光源を追加してもよい。ただしこちらは抵抗は入れない。

                  - 2 -

参考:3色のLED光源は、これに黒色のケント紙を筒状に巻き付け、光の加法混色の実
   験に使うことができる。私はすでに製作してあったものを利用した。
[6]左図のセルのcの位置にビニールテープを貼り、中心に縦線を入れ、これが0°の
基準線に合うように紙管に挿入する。光源を収め半円筒を被せて回し、明暗の状況を確認
する。明の状態で、セルの正方形(偏光板を張った位置)と円筒に張った偏光板の長方形
が、きちんと平行になるように円筒を回す。そしてその位置で円筒と0°の基準線が出会
う位置に指針のための縦線を入れる。
 左図の紙管のdの位置に、30°刻みに目盛りを付ける。右90°から180°を通り
左90°までが計測に使う部分である。
[7]調整は、円筒を右に回して最も暗くなるのが右90°である、そして同じく左に回
して最も暗くなるのが左90°であることを確認する。もしずれていたら指針の位置を修
正する。
 そして右旋性の場合には旋光度は、右90°からさらに何°回すと最も暗くなるかで計
測する。逆に左旋性の場合には左に回し、左90°からさらに何°回すと最も暗くなるか
で計測することにする。
備考:もちろん左旋性の場合、右90°から何°もどすともっとも暗くなるかで計測する
   こともできる。

[b]計 測
[1]光学異性体の旋光度 α は、その厚さつまり光路の長さ(具体的には[dm]で表
し、記号を l とする)と、水溶液などの場合はその濃度(具体的には100mlに含ま
れる異性体の質量[g]を使い、記号を c とする)に比例する。ただし異性体と溶媒分
子の相互作用もあって単純ではない。また光の波長によって変化し、波長が短くなると次
第に大きくなる(どこかでピークになり、それから減少することもある)。
 ある光学異性体の溶液状態における比旋光度[α]とは、厚さ l=1 あたり、上の濃
度 c=100 あたりの旋光度のことである。したがって計測される旋光度 α との間に
は次の関係式が成り立つ。
    α = lc[α]/100
ちなみに純液体における比旋光度は、溶液状態との関連で、液体の比重 ρ を使い、厚さ
l=1 あたり、比重 ρ=1 あたりの旋光度のことである。
    α = lρ[α]
[2]ブドウ糖(グルコース)水溶液の比旋光度は、化学便覧によると、20℃、D線
(λ=589.3nm)で、そして濃度が c=1〜18の範囲で、ほぼ
    [α]= 52.5[°](右旋性)
である。計測には2.5mol/l水溶液を使ったので、光源を赤色にした場合の旋光度は
  α = 1×(180×2.5×0.1)×52.5/100 = 23.6[°]
が期待される。
[3]計測は最小目盛り30°を10分割して3°刻みで行う。精度の方も3°ほどと考
えられる。計測結果は
    赤 α = 21[°]

                  - 3 -

になった。ちなみに光源の色を変えると
    緑    27[°]
    青    30
になった。
[4]ショ糖(スクロース)水溶液の比旋光度は、有機化合物辞典(講談社)によると、
20℃、D線で
    [α]= 66.5[°](右旋性)
である。1.5mol/l水溶液では、その旋光度は
  α = 1×(342×1.5×0.1)×66.5/100 = 34.1[°]
が期待され、計測結果は
    赤 α = 27[°]
になった。
[5]純液体のリモネン( C1016 )の比旋光度は、化学便覧によると、21℃、D線
で、
    [α]= 115.9[°](右旋性)
である。密度が0.840g/mlであるので、その旋光度は
  α = 1×0.840×115.9 = 97.4[°]
が期待され、計測結果は
    赤 α = 85[°]
になった。

[c]課 題
 水溶液を使った計測は、明暗がはっきりとして快適である。
 しかしリモネンでは最も暗くなる位置が分かりづらかった。またリモネンはアクリル板
を溶解して半透明化させるようである。
 またセルはいくつか製作したが、ものによって何故か、明暗がはっきりしないことが起
こる。
 いつかこれらの課題を解決したい。



                  - 4 -


林 正幸と主万子の始めの ホームページ(to our initial Home Page) にもどる。