05.3
                                   林 正幸

  可視吸収スペクトルの観察

[a]説 明
[1]回折格子レプリカを使った分光計(箱形)が数個つくってあったので、アクリル板
(厚み1mm)で底面39mm四角、高さ60mmのセル(容器)をつくり(ジクロロメ
タンで接着)、一方にこれを受ける箱を加えて、2つの分光器を並べた(2つの分光器を
見比べると、吸収された色がよく分かる)。
参考:分光器はホームページに掲載の「手づくり分光器」である。
追記:
 その後、分光器の幅を2倍の8cmにし、ワンボックスでスリット2つ、のぞき窓1つ
の形にして、一層観察しやすくなった。
 セルを含めた展開図はつぎのようである。

    

[2]今回は蛍光灯の光を利用した(黄緑色と紫色に明確な輝線がみえる)が、もちろん
太陽光でもよい。このスペクトルは肉眼では
    赤  橙  黄  黄緑  緑  青  紫
の7色である。理科年表によると波長との対応は次のようである。
    赤外線         770nm(ナノメートル)以上
    赤色          770〜640
    橙色             〜590
    黄色             〜550
    緑色             〜490
    青&藍色           〜430
    紫色             〜380
    紫外線             380nm以下
[3]また人間の色覚は3つのセンサーを持ち、赤、緑、青紫色が3原色である。そして
刺激されるセンサーが2つ以上になると、図のように色を感じる。

    

                  - 1 -

[b]実 験
 次の水溶液の吸収スペクトルを調べた。なお色の濃さを加減しないと、吸収が分かりに
くい。
・0.05%過マンガン酸カリウム(赤紫色に見える)
           黄〜青色を吸収
・飽和硫酸銅(青色に見える)
           赤〜黄色を吸収
・テトラアンミン銅イオン(青紫色に見える)
 (2%硫酸銅5ml、3mol/lアンモニア15ml、水20ml)
           赤〜緑色を吸収
・塩化銅(U)(すこし黄色がかかった緑色に見える)
 (手元に塩化銅がなかったので、次のように調製した。
  銅片6gに6mol/l塩酸30ml、35%過酸化水素10mlを加えて反応させる
  (銅が半分ほど残った。つまり塩酸が半分ほど残っている)。
  色が濃すぎるので、反応溶液を2倍に希釈する。)
           赤、橙色と青、紫色を吸収
・ニッケルめっき液(緑色に見える)
 (硫酸ニッケルは約15%)
           赤、橙、紫色を吸収
・2%塩化鉄(V)(黄色に見える)
           紫色を吸収
・コバルト錯イオン
 (エタノール40ml、水4ml、塩化コバルト(U)六水和物1g)
     高温(青紫色に見える)
           赤〜青色を吸収
     低温(赤紫色に見える)
           黄緑〜青色を吸収
・BTB
     中性(水40mlにBTB溶液2ml)(緑色に見える)
           赤〜黄色、青、紫色を吸収
     酸性(上に硫酸を数滴加える)(黄色に見える)
           青、紫色を吸収
     塩基性(上に水酸化ナトリムを数滴加える)(青色に見える)
           赤〜緑色を吸収
・フェノールフタレイン

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     塩基性(赤紫色に見える)
           橙から青色を吸収
・紫キャベツ
 (エタノールに紫キャベツをひたひたまで入れて加熱して色素を抽出した。
  抽出液は、pH水溶液の体積の2割を加えるのを基本にした。)
     pH1(赤色に見える)
           黄〜紫色を吸収
     pH4(赤紫色、時間が経つと紫色になる)
           黄〜青色を吸収
      (吸収が弱いので抽出液を6割りまで加えて確認した。)
     pH7(紫色に見える)
           黄〜青色を吸収
      (吸収が弱いので抽出液を6割りまで加えて確認した。)
     pH11(うすい青緑色に見える)
           赤色をすこし吸収している(よく観察できない)
     pH12(緑色に見える)
           赤、橙色と紫色を吸収
     pH13(黄緑色に見える、時間が経つと黄色になる)
           青、紫色を吸収(始めは赤色もすこし吸収される)
     pH14(黄色に見える、時間が経つと黄橙色になる)
           青、紫色を吸収(緑色がすこし吸収されるようになる)
[c]まとめ
[1]銅錯イオンについて、テトラアクア銅イオン(飽和硫酸銅)は赤〜黄色を吸収する。
テトラアンミン銅イオンでは、それに加えて黄緑、緑色を吸収する。テトラクロロ銅酸イ
オン(塩酸酸性の塩化銅)では赤、橙色と青、紫色を吸収する。ひょっとして、後2者で
は水分子が配位子として残っている(つまり「テトラ」とは言えない)。そして水が配位
子として結合することによって赤、橙色(あるいは黄色まで)を吸収し、アンモニアが配
位子として結合することにより黄緑、緑色を吸収し、塩化物イオンが配位子として結合す
ることにより青、紫色を吸収しているのではないだろうか。
 コバルト錯イオンについて、次の平衡が成立し、低温では左に、高温では右に変化する。
   [Co(H2O)6]2+ + 2Cl- ←→ [CoCl2(H2O)2] + 4H2
とすると、水分子が配位子として結合することにより黄緑〜青色を吸収し、塩化物イオン
が配位子として結合することにより赤〜黄色を吸収しているのでないだろうか。
 BTBについて、分子内に赤〜黄色、青、紫色に対応する2つの吸収サイトがあり、水

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素イオンが青、紫色のサイトをふさぎ、水酸化物イオンが赤〜黄色のサイトをふさぐよう
に作用しているのであろうか。
 紫キャベツの色素のpHによる変化は複雑である。2つ以上の色素が関係していると窺
える。
[2]目に見える色でなく、吸収される色を観察すると、視点が広がる。化学結合と関係
づけられるように、これから勉強したい。そしてもっと条件を整えた実験が必要になるか
もしれない。



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