10.7
                                   林 正幸

    導電率計の製作

 水溶液の導電率を計測するために、導電率計を製作しようと考えた。1万円程度の市販
品は、計測範囲が0.0〜20.0mS/cmなのでこれに習うことにした。
 始めは方形波を発振し、それを交流にしてセルにかけ、そのときの電流を交流電流計で
計測しようとしたが、雑音と高すぎる電圧(約1V)が精度を落とした。そこでサイン波
を発振し、電圧を市販品の数mVまでは行かないが数10mVまで下げ、セルと直列に入
れた小抵抗の電圧を増幅して交流電圧計(マルチメーター)で計測することにした。
 なお高価なデジタルマルチメーターを必要とするので、これが入手しにくい場合は合理
的ではない。

  

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A 回路とセル

[1]回路は前ページのようである。トランジスターを使うCR発振により4kHzあま
りのサイン波をつくる(北川著「トランジスタ」(「実験と工作シリーズ」オーム社)を
参照)。トランジスターはC1815、コンデンサーは0.0022μ、抵抗は5.6Kに
した。なおその後にオペアンプに通す都合から(飽和して波形が崩れることがないよう
に)、トランジスターのコレクターには電源電圧を半分にして入力した。

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 オペアンプ[082]のバッファー回路を通してから、0.047μと5.6Kで交流に
する。これを再びバッファー回路に通して、5.6kと可変抵抗1kで電圧を数10mVに
下げられるようにする。可変抵抗は振れ幅調節に利用する。これをオペアンプ[082]
の減算回路のプラスに入力し、100k2つと半固定抵抗1kでつくった小電圧をマイナ
スに入力して、直流成分がゼロになるように調節する。
 こうして得られる交流電圧をセルとそれに直列の小抵抗10/7Ω(10Ω7本を並
列)に掛け、小抵抗の電圧をオペアンプ[OP07]の200倍の増幅回路に入力し、そ
の出力電圧を交流電圧が計測できるデジタルマルチメーターで計測する。オフセット電圧
を調節する可変抵抗20kはゼロ点調節に利用する。
 実際には、たとえば45mVの交流をかけたときの計測が、標準液にした0.1mol/
L塩化カリウム水溶液の場合に129mVになるように調整するので、そのときの小抵抗
の電圧は0.65mVであり、計測に影響する程度が1%ほどであることが分かる。ちなみ
に129mVは導電率12.9mS/cmに対応する。
 電源は±9Vであるが、私の場合はすでに製作している電源・デジタル表示装置
  http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/masa/ne69.htm
があるので、そこから取る形にした。なおこの電源には20mVくらいのリップルがある
ので、1000μのコンデンサーで平滑化する。
[2]セルは、始めは商品に似せてステンレスくぎを利用して製作したが、うまく行かな
かった。そこで前ページのように、アクリル板(1mm)で内容積が18×30×25m
mの箱を作り、両側に金属板を挟むようにした。毛管現象で水溶液が漏れ出ないように、
セルの上端で金属板に丸みを持たせる。
 始めの試作器(電流計測型)の段階で調べたところによると、ステンレス、銅に比べて、
真ちゅう(0.3mm)でよりましな結果が得られた。
 水溶液は10mLを入れる。セルに所属する電極を決め(左右も)、調整は使うセルを
決めて行う。

B 計測など

[1]始めに、セルにかかる電圧(1k可変抵抗に近い方のセル端子)を交流電圧計で計
測し、振れ幅調節の可変抵抗をまわして、数10mVになるようにする。次に直流電圧計
に切り換えて、半固定抵抗をまわして0mVになるようにする(その後は通常は半固定抵
抗には触れない)。
 水溶液の導電率は、25℃の数値に換算して表示することが多い。そのため市販品には
温度センサーが付いている。つまり導電率の温度係数はおおむね似たものである。そして
標準液にした0.1mol/L塩化カリウム水溶液の導電率は、化学便覧(このデータ自身
は当量導電率である)によると次のようである。
    25℃  12.90mS/cm
    18℃  11.18
 そこで通常の調整は次のように行う。まず純水をセルに入れて接続し、ゼロ点調節の可

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変抵抗(右)を回して、直流電圧計(交流電圧計ではない)が0mVを指すようにする。
次に標準液を入れて、振れ幅調節の可変抵抗(左)をまわして129mVになるようにす
る。もちろんこの調整は、水温が変動しないことが前提である。
 実際には導電率の温度変化は次のように同じではない。
      25℃付近の、1℃あたりの変化割合
    0.1mol/L塩化カリウム     1.90%
           塩化リチウム     2.01
           ヨウ化カリウム    1.81
           塩酸         1.45
           水酸化カリウム    1.89
より正確には、水溶液の温度を計測・記録し、次の関係式でその温度における標準液の導
電率を求め、それに合わせて調整する。
    σ = 0.246t + 6.76
[2]25℃に換算した数値の計測例は次のようであった。
                     計測例       文献値
  0.1mol/L塩化カリウム    12.9mS/cm   12.9mS/cm
    〃    塩化リチウム     9.4         9.6
    〃    塩化ナトリウム   10.7        10.7
    〃    臭化カリウム    13.2        13.1
    〃    ヨウ化カリウム   13.0        13.1
    〃    硫酸マグネシウム  10.1        10.0*
  0.05mol/L塩酸       21.2        19.9
    〃     水酸化カリウム  12.4        12.6
  1mol/L酢酸           1.1         1.5*
    (* 市販品による計測値)
 塩酸がすこし高めであることを除けば、かなりよい数値が得られている。なお上記のよ
うに塩酸の温度係数が他に比べて小さいことを考慮すると、見かけよりはいくらかよい数
値である。ちなみに市販品の誤差は2%である。
[3]参考までに、始めの計器では次のように精度が悪かった。
  0.1mol/L塩化カリウム    12.9mS/cm
    〃    塩化リチウム     8.0
    〃    塩化ナトリウム    9.6
    〃    臭化カリウム    12.3
    〃    ヨウ化カリウム   13.6
    〃    硫酸マグネシウム   8.9
  0.05mol/L塩酸       21.3
    〃     水酸化カリウム   9.6
  1mol/L酢酸           0.0

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