09.9
科学の祭典
船橋 隆久 & 林 正幸
字や色が消えたりもどったり
A.実 験
感熱インク
(1)レシートの字などに「キンカン」を塗ると消える。
(2)主成分のアンモニア水(1:1)1滴を垂らすとやはり消える。
(2)ろ紙で液をよく吸い取ってから、塩酸(1:1)滴を垂らすと字がもどる。
参考:試薬は「プチボトル」などに入れる。
フリクション蛍光ペンのインク
(1)白い紙にフリクション蛍光ペンやフリクションボールで字や絵を描き、一部をこす
ると消える。
(2)そしてヘアドライヤーで温めると全部消える。
(2)「急冷」スプレーをかけると字や絵がもどる。
参考:スプレーはスタッフが扱い、かけたとことをさわらせる。
インジゴカルミン(青色2号)
(1)青色水5mLが入った20mLスクリュー管に、ハイドロサルファイト耳かき
1/4ほどを加えて軽く混ぜると消える。
参考:ハイドロサルファイトはスタッフが加える。少なめに加え、青色が消えなければ追
加する。
(2)続いてふたをして激しく振ると青色がもどる。
(3)再びハイドロサルファイトを加えて混ぜる。
(4)「ハイター」5倍液を2滴加えては混ぜることをくり返すと、一度青色がもどるが、
過剰に加えるとまた消える。
B.解 説
色素や染料には条件によって色が消えたりもどったりするものがあり、その性質が利用
されている(機能性色素)。
上の実験はいずれもロイコ化合物(アントラキノンまたはトリフェニルメタン類)が元
になっている。感熱インクやフリクション蛍光ペンなどのインクは、ロイコ染料である発
色剤と、顕色剤と呼ばれる化合物である。
感熱インクでは温度が高くなると両者が融解して、顕色剤から電離した水素イオンが、
たとえば次ページの反応式のように発色剤のアミン部分を中和し、連動してラクトン環が
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開裂して発色する。したがって酸・塩基で色を消したりもどしたりできるわけである。
「キンカン」は他の成分のためインクがにじんで、もどすと全体に黒っぽくなる。塩基の
中ではアンモニア水を使うと、字がきれいにもどる。なおアンモニア水はろ紙に浸ませて
できるだけ除いてから、塩酸を垂らす。試薬の濃度が高いので、塩化アンモニウムの白煙
が生じるのを避けるためである。
フリクション蛍光ペンなどはパイロットが開発し、消しゴムでこすると消えるが、それ
は摩さつ熱で温度が上がる(65℃)ためであることが確認できる。こちらは常温で発色
剤と顕色剤がくっついて(中和)色が顕れており、温度が高くなると両者が離れて(分
解)消えるしくみである(このため変色温度調節剤も加えられている)。これは冷凍庫で
冷やす(−20℃で確実)と字や絵が復活するので、高温・低温で色を消したりもどした
りできるわけである。実験では時間短縮のため、低温には「急冷」スプレーを使うことに
した。ただしこれは冷え過ぎて反応速度が遅くなるので、すこしかけて手でさわるときれ
いにもどる(手でさわらせるのは、冷たくなっていることを確認する意味もある)。
酸・塩基、高温・低温と来れば、酸化剤・還元剤も加えたい。藍染めがそれに当たるが、
今回は同種のインジゴカルミン(食紅 青色2号)を使うことにした。この青色は次の反
応式ように、ハイドロサルファイト(Na2S2O4 亜ジチオン酸ナトリウム)で還元する
と消え、空気(中の酸素)などで酸化されるともどる。

実験では身近な酸化剤である「ハイター」を5倍に希釈した液も使った。そしてこれは過
剰に加えると、色素が分解(漂白)されて色が消える。
参考:始めの2つの実験は船橋さんの提案である。
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