05.7.2
                               新潟県理化学協会
                                   林 正幸

エネルギーで何をどのように教えるか

   〜エネルギー概念や

       エネルギー問題を含めて〜

 退職して自由な立場から、私としてはエネルギーで何をどのように教えたいのか、につ
いてまとめてみました。
 名古屋市科学館で7月に開く先進科学塾1日コース「物質に秘められたエネルギーを探
る」を担当することもあり、このテーマにしました。また物理の先生も参加されるという
ことで、私なりに配慮をしたつもりです。
 私のホームページは次のようです。
    http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/
なおこの中の講座プラン「物質とエネルギーの世界」は、1年前につくったものであり、
このレポートを補って閲覧してください。

A エネルギーとは何か

[a]エネルギーという概念は長い科学の歴史の中で形成されました。抽象度が高く、一
筋縄にはいきません。かつて私は「エネルギーとは仕事をする能力である」と説明してい
ました。それは高校物理でそのように学習したことが頭に強く残っており、他の視点でエ
ネルギーを捉えられなかったからです。しかしこれでは高校化学のエネルギーを理解させ
ることは困難です。そして化学の教科書はというと、エネルギー自身の説明はほとんどあ
りません。
[b]高校物理ではエネルギーを系統的に学習していく第1歩として、エネルギーを仕事
をする能力と定義し、力学的エネルギー保存の法則を扱います。
    (1/2)mv2 + mgh = const
しかし通常の化学的変化ではほとんど仕事は生じません。発生する熱エネルギーに仕事を
させても、すべてを仕事に変えることはできません(熱力学の第2法則)。
 化学ではエネルギーの定義を、あるいはエネルギーとはどんなものかという説明を、変
える必要があるのです。
[c]エネルギー概念はいくつもの側面を持っています。今やエネルギーという言葉はち
またに溢れています。そこで3つの側面を拾い出すことから始めます。
<「1日コース」プリントの引用>
[2]エネルギーには様々な姿がある。エネルギーは次々に姿を変える。生活の中では、
電気エネルギーが光エネルギーに変わったり(照明器具)、運動エネルギーに変わったり
(扇風機)する。燃料用ガスが持つエネルギー(「内部エネルギー」と呼ばれる。今回の

                  - 1 -

主役であり後で説明する)が熱エネルギー(*)に変わる(ガスレンジ)。太陽エネルギ
ーが大気や大地・海洋の熱エネルギーに変わったり、太陽電池によって電気エネルギーに
変わったりする。
*:熱エネルギーも内部エネルギーの一部であるが、ここではこのような表現にした。
[3]エネルギーは物体どうしの間でやり取りされる。扇風機の場合は電子とモーターの
間で(このとき電気エネルギーから運動エネルギーに姿も変わる)、次にモーターと空気
の間でやり取りされる。ガスレンジの場合は燃料ガスと燃焼ガスの間で(内部エネルギー
が熱エネルギーになって)、次に燃焼ガスと食材や鍋の間でやり取りされる。
 また自動車の場合は、エンジンの動力(運動エネルギー)が車体の運動エネルギーなど
になる。つまりエンジンと車体でやり取りされる。この例ではそれと共にエンジンが車体
に仕事をする。今回はその中身に深入りはできないが、仕事はエネルギーのやり取りに伴
ってしばしば生じ、エネルギーは仕事をされた物体に移動する。
参考:エネルギーの量は、どれだけの仕事をするかで計測することがある。
[4]エネルギーはどんなに姿を変えても、そして物体どうしがエネルギーをやり取りし
ても、その全体の量は一定に保たれる。これはエネルギー保存の法則と呼ばれる。
  「エネルギーは全体として増えたり減ったりしない」
とまとめられる。簡単な例として、ボールを投げ上げることを考える。手を離れた瞬間に、
ボールは運動エネルギーを持つが、それは最高点に達したときすべて位置エネルギーに変
わり、落ちてきたときには再び同じ大きさの運動エネルギーに変わっている。
参考:物体間でやり取りされ、その量が保存されるとすると、エネルギーは、物体を渡り
   歩き、「流れていく」と捉えることもできる。
<以上>
 まとめると次のようです。
   ・エネルギーは様々な姿があり、次々に姿を変える
   ・エネルギーは物体どうしの間でやり取りされる
   ・エネルギーは全体として増えたり減ったりしない

B 化学にとってエネルギーとは何か

[a]私は次のような実験をします。
@鉄粉に食塩を混ぜ、すこし水を加えてかき混ぜると、温度が90℃くらいまで上昇する。
このとき空気中の酸素も消費して次の反応が起こる。
    4Fe + 3O2 + 6H2O ―→ 4Fe(OH)3
A手のひらで重曹(炭酸水素ナトリウム)と砂糖を混ぜ、レモン果汁(クエン酸)を注ぐ
と、二酸化炭素が発生して冷たく感じる。
    3NaHCO3 + C34(OH)(COOH)3 ―→
                クエン酸
            C34(OH)(COONa)3 + 3H2O + 3CO2
B水に濃硫酸を溶解すると、沸とうするほどになる。
    硫酸 + 水 ―→ 硫酸水溶液
C液体状態(過冷却)の酢酸ナトリウムに小さな1粒の固体の酢酸ナトリウムを加えると、

                  - 2 -

凝固が起こって温かくなる。
    酢酸ナトリウム(液) ―→ 酢酸ナトリウム(固)
[b]定温定圧系
 実験を理解するのに、定温定圧系という視点が曖昧であることははまずいと考えます。
生徒は反応混合物の温度が高くなることが発熱であり、それが低くなることが吸熱である
と捉えがちです。だから、水から氷ができるのは発熱である(凝固は発熱)と言うと、わ
けが分からなくなる・・・。
 変化が終わり、反応混合物が再びまわりと同じ温度になったらどうなるか。(そして圧
力は大気圧に保たれている。)定温(定圧)系の視点からすれば、発熱はまわりに熱エネ
ルギーを与えること、吸熱はまわりから熱エネルギーを奪うことである。こちらの方がよ
り基本ではないでしょうか。
 その上で、エネルギー保存の法則を適用すると、変化前後の物質が持つエネルギー量の
大小関係が明確になります。たとえば、液体の酢酸ナトリウムが持つエネルギーは固体の
酢酸ナトリウムが持つエネルギーより大きい・・・。
[c]物質の身分証明書
 上の実験を踏まえると、化学にとってエネルギーとはどんなものでしょうか。
<「1日コース」プリントの引用>
[4]実験1と問2から窺えるように、物質は種類によってそれが持つエネルギーは異な
る。また同じ物質でも状態が違うとそれが持つエネルギーは異なる。また物質は温度が変
化するとき熱エネルギーをまわりに与えたりまわりから奪ったりする。つまり物質は温度
が違ってもそれが持つエネルギーは異なる。
[5]以上から考えると、エネルギーとは次のようなものである(ここからは化学の「物
質」という用語を使うことにする)。まず
  「エネルギーは物質が存在することに伴って必然的に持つもの」
である。物質はエネルギーを持たずには存在できない。そして
  「物質はその種類によって、また同じ物質でもその状態によって、
                 それぞれある決まったエネルギーを持つ」
のである。エネルギーとは、ある物質がある状態で存在することの身分証明書のようなも
のである。物質の種類や状態が異なれば必ず異なるエネルギーを持つ。ちなみに温度の違
いも物質の状態の違いに含まれる。
<以上>
 ちなみにアインシュタインは相対性理論の中で、次の関係式を導いています。
    E = c2
これは物質がエネルギーの凝集体であることを示しています。
[d]熱化学方程式
 教科書では、熱化学方程式は現象を記述する手段で終わっています。しかし上のように
捉えればもっと分かりやすいものになります。付け加えるのは
    「物質が持つエネルギーの量は物質の量に正比例する」
ことだけです。
 たとえば水素の燃焼の熱化学方程式です。

                  - 3 -

    H2 + (1/2)O2 = H2O(液) + 286kJ
物質はそれぞれある決まったエネルギーを持つわけですから、代数学の立場で、H2 とい
う文字は水素1molが持つエネルギーを表すことにします。O2 は酸素1molが持つ
エネルギーを表すことになり、(1/2)O2 は自動的に酸素(1/2)molが持つエネルギーに
なります。方程式の意味は、水素1molと酸素(1/2)molが持つエネルギーの合計は、
液体の水1molが持つエネルギーに286kJを加えた量に等しい、となります。そし
て水素1molが燃焼して液体に水が生成するとき、286kJの発熱になることも明解
です。
 これなら、熱化学方程式を代数学的に変形・計算できることも当然であるし、得られる
方程式の意味を読み取るのも簡単です。

C 物質が持つエネルギーの正体

 物質が持つエネルギー、つまり内部エネルギーとはどんなものか。その化学的部分の正
体を解き明かすことは大切であると考えます。それは運動エネルギーと位置エネルギーか
ら成っています。
[a]運動エネルギー
 「1日コース」では、私は次の2つの実験をします。
@うすめた牛乳を顕微鏡で観察する。
Aポットに37℃くらいの湯を1/3入れ、交代で10分以上、ポットを激しく振り、温
度上昇を調べる。
 そして次のようにまとめます。
<「1日コース」プリントの引用>
[2]実験2「ブラウン運動の観察」では、うすめた牛乳を顕微鏡で観察すると、脂質で
できた脂肪球という小さい粒子が揺れ動くように乱雑な運動をしていた。これは顕微鏡で
も観察できない極く小さい水分子自身が乱雑に運動しており、その水分子が脂肪球に衝突
をくり返すために起こる。
 物質をつくる分子、イオン、原子はすべて乱雑な運動をしており、「熱運動」と呼ばれ
る。これは
    「物質は運動エネルギーを持つ」
ことを意味する。
 熱運動は温度が高いほど激しいが、常温でもその運動エネルギーは大きなものである
(逆に、温度は熱運動の激しさを示していると言える)。
参考:常温(25℃)における空気中の窒素分子と酸素分子の平均飛行速度
     窒素分子  515m/s
     酸素分子  482m/s
問4 実験3「ポット振り」では、どのようなことが起きたと言えるか。
<以上>
 このように運動エネルギーに関しては、実験もできて理解もしやすいと思います。なお
熱運動の振動には位置エネルギーも含みますが、このことは無視します。
[b]位置エネルギー

                  - 4 -

 これに対して位置エネルギーには工夫が必要です。私は次のように説明します。
<「1日コース」プリントの引用>
[3]物質は位置エネルギーも持っている。残念ながらこれを実感するのは難しい。そこ
で次のように考えてみよう。
 位置エネルギーは初歩的には「高い位置にある物体ほど大きい位置エネルギーを持つ」
と言われる。これを図のように宇宙的視野で見直してみよう。

    

地面は地球である。物体が落下するのは、物体と地球が万有引力で引き合っているためで
ある。高いとは物体と地球の距離が大きいことである。こうして位置エネルギーは
  「引き合う物体どうしが
          ある距離で位置していることに対応して持つエネルギー」
である。そして距離が大きいほど位置エネルギーが大きい。なお引力の種類は万有引力だ
けでなく、電気的引力でも磁気的引力でも構わない。位置エネルギーとは2つ(以上)の
物体の間にあるエネルギーである。
[4]水を加熱するとやがて100℃になり、沸とうが始まる(1atmの下では)。加
熱を続けるとどんどん水蒸気が発生するが、その温度は100℃である。
 液体では水分子はほぼ接触してひしめくような状態にあるが、気体では体積が1000
倍以上になり、水分子は広い空間にばらばらと存在する。
 加熱によりエネルギーを得て、分子間の距離が大きくなる。これは水分子が位置エネル
ギーを持つことを窺わせる。化学結合の学習では、原子どうしがイオン結合や共有結合や
金属結合をして引き合う。また分子どうしが、極性による引力や水素結合などの分子間力
で引き合うことが出てくる。こうして
    「物質は位置エネルギーも持つ」
ことが納得できるだろう。
 液体より気体の方が、結合した分子よりばらばらの原子の方がより大きい位置エネルギ
ーを持つことに注意しよう。
<以上>
[c]ヘスの法則と生成熱
 教科書では、ヘスの法則は熱化学方程式を代数学的に演算してよいという根拠に活用さ
れています。しかしその説明はそれほど分かりやすくないと思います。
 私は始めからエネルギー保存の法則を前面に出した方がよいと考えます。ただし実験は
価値があるので、「物質はそれぞれある決まったエネルギーを持つ」ことの確認に利用し
ます。ついでに現役のとき私がしていた実験を、レポートの最後に紹介しておきます。
 それぞれの物質の内部エネルギーは、単体のそれをゼロとする基準を採用すれば、生成

                  - 5 -

熱の符合を変えた数値になります。生成熱は
  「物質1molを成分元素の単体から生成するときに発生する熱エネルギー」
ですが、これを内部エネルギーに変換できるように納得しておくと、グラフなどで自在に
活用できるようになります。

    

D 熱エネルギー

[a]物理を含めて教科書では、熱という用語は出てきますが、熱エネルギーという用語
は避けられています。その代わりで出てくるのが内部エネルギーです。しかし大学では熱
エネルギーという用語が当たり前に使われていたので、私としては窮屈に感じます。
 熱という概念はかなり使いづらいもので、理化学辞典には「温度が異なる2つの物体が
接触するとき、高い温度の物体から低い温度の物体に移動するエネルギー」とあります。
つまりある物体に留まっていては熱ではないのです。よく「風邪を引いて熱がある」など
と間違って使われます。熱エネルギーの方は「内部エネルギーのうち、熱運動のエネルギ
ーを熱エネルギーと呼ぶこともある」とあります。多少厳密性は損なわれるかもしれませ
んが、私は熱エネルギーという用語を使えばよいと考えます。こちらは具体的なイメージ
が描け、「風邪を引いて(いつもより)熱エネルギーがある」は正しい表現になります。
[b]たとえば次のように使い、便利であり、分かりやすいと思います。
<「1日コース」プリントの引用>
[1]内部エネルギー(物質が持つエネルギー)のうち、熱運動によるエネルギーは「熱
エネルギー」と呼ばれる。熱エネルギーは物質どうしが接触していると、温度が高い(熱
運動が激しい)方から温度が低い(熱運動が穏やかである)方に移動し、それは両方の温
度が等しくなると停止する。これが熱伝導の正体である。
[2]化学的変化に伴うのは熱エネルギーであることが多い。使い捨てかいろでは、余っ
たエネルギーは熱エネルギーの姿になり、反応混合物の温度が上昇した。続いて混合物が
その熱エネルギーを手のひらに与えた。またクールなラムネ菓子では、不足するエネルギ
ーを自らの熱エネルギーでまかなって、反応混合物の温度が下降した。続いてその混合物
が手のひらの熱エネルギーを奪った。
[3]エネルギーの量は[J](ジュール)という単位で計る。そして液体の水1gが、
温度が1℃だけ上がるときに増える熱エネルギーは
    4.2J(ジュール)
であることが分かっている。これは水の比熱と呼ばれる。これを利用すると、化学的変化
に伴うエネルギーの量を計測することができる。

                  - 6 -

問5 実験4「燃焼熱の計測」の結果から、ピーナッツ1粒が燃焼するとき発生するのエ
ネルギー量を計算せよ。もちろん逃げた熱エネルギーは無視しよう。
<以上>
 ちなみにエネルギーの量は、仕事の量ではなく、熱エネルギーの量で計測することが多
いのです。

E 内部エネルギーの利用

[a]この節と次節は必ずしも化学の領域とは言えないですが、どこかで学習させたい内
容です。
 物質の内部エネルギーを取り出して利用するには、より内部エネルギーが小さい物質や
状態に変化させればよい。つまりその内部エネルギーを取り出して利用できる物質とは、
内部エネルギーが大きく発熱変化をする物質である、ことを確認します。
 そして「水素が燃料になるなら、それは水の中にあるので、エネルギー問題は解決す
る」というような考えを批判できるようにします。
[b]その歴史を押さえておきます。
<「1日コース」プリントの引用>
[2]人類は内部エネルギーを燃焼反応によって熱エネルギーに変えて発展してきた。始
めは暖を採ったり調理に利用していたが、産業革命では蒸気機関の発明によって、実験5
のように、熱エネルギーを動力(運動エネルギー)に変えて仕事をさせることができるよ
うになり大きな飛躍を遂げた。その後はガソリンエンジンのような内燃機関や、電気エネ
ルギーを発生する発電機などが発明された(火力発電では、元になるのは石油や天然ガス
(と酸素)の内部エネルギーである)。
[3]実験6「簡単燃料電池」では、水酸化ナトリウム水溶液を電気分解した後で、電極
に接続すると、メロディテスターが鳴り、ソーラーモーターがまわった。電気分解では水
が水素と酸素に分解される。
    2H2O ―→ 2H2 + O2
その後では前と逆向きに、水素と酸素が反応して水になり、まわりに電気エネルギーを与
えた。
    2H2 + O2 ―→ 2H2
通常はこの反応はまわりに熱エネルギーを与える。このように燃料を反応させる電池は、
燃料電池と呼ばれる。
 最近では、このような燃料電池や、実験7のように、太陽エネルギーを電気エネルギー
に変える太陽電池も発明された。ちなみに太陽エネルギーとは、超高温高圧の下の水素が
核融合という原子核反応を起こすことで発生するエネルギーである。その元は原子核反応
まで含めたときの、水素の内部エネルギーである。
<以上>
[c]エネルギーは、その保存の法則にもかかわらず、「使い捨て」であり、常に供給す
る必要があります。
<「1日コース」プリントの引用>
[4]エネルギーを利用していくと、ほとんどはやがて熱エネルギーに変わり、しかも熱

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伝導により温度差がなくなり、利用できなくなる(熱力学の第2法則)。つまりエネルギ
ーは、増えたり減ったりしないにもかかわらず、最終的には使い捨てであり、常に供給す
る必要がある。これは原料が、元素不滅の法則から、リサイクル可能であるのと対照的で
ある。
<以上>
[d]エネルギーを利用するについては、節約し無駄をしないことと共に、エネルギー効
率を高めることが大切です。
 熱エネルギーに仕事をさせる場合は、その効率は熱力学の第2法則により
    (T2 −T1 )/T2
以下に抑えられます。発電は熱エネルギーも利用できるように行うのが合理的です(コー
ジェネレーション)。その意味で燃料電池が注目されています。
 効率は全体を見通して捉えるべきです。家電製品の効率が高まっていますが、たとえば
火力発電の平均効率が35%程度であることを忘れてはいけません。また送電ロス、それ
に石油や天然ガスを採掘したり、輸送したりする過程でのエネルギー消費もあります。

F エネルギー問題

[a]現代では石油、天然ガス、石炭やウランなど大量の化石燃料を利用するようになり、
二酸化炭素による温暖化や都市のヒートアイランド現象、高レベル放射性廃棄物の蓄積な
ど、地球環境が破壊されるまでに至っています。
 人類のエネルギー生産(=消費)量は、「世界国勢図絵」によると
    2001年では、石油換算で 102億トン
であり、石油の燃焼熱はおよそ44kJ/g(=0.44億kJ/トン)ですから
    102×108 ×0.44=4.5×109[億kJ]
        = 45[京kJ]
になります。そしてこのまま経済活動を続ければ、この数値は2050年には3倍になる
と見積もられています。
 H.シェーアは著書「ソーラー地球経済」(岩波)の中で、どの化石資源もその枯渇は
数10年以内であり、その前にそれを奪い合う第3次世界大戦が起こると警告しています。
[b]太陽エネルギー
 持続的に利用可能であり、かつ地球環境に優しいのは、太陽エネルギーの他にはありま
せん。地球の大気と地表が1年間に獲得する太陽エネルギーは、
    大陽定数 1.37kJ/s・m2   地球半径 6370km
ですが、雲による反射などで34%が宇宙に失われる(大気などが19%を吸収し、地表
が47%を吸収する)ので
  1.37×0.66×3.14×(6.37×106 )2 ×3600×24×365
    =3.6×1021 [kJ] = 360000[京kJ]
になります。エネルギー消費量は、この「1万分の1」くらいです。
[c]地球が得た太陽エネルギーはその姿を変えながら、気象現象を引き起こし、光合成
を中心に生命活動を支え、そして同じ量が赤外線放射によって宇宙に失われていきます。
太陽エネルギーは地球上では定常状態にあり、二酸化炭素などの温室効果は出口を小さく

                  - 8 -

して温暖化が起こります。

    

 私たちの課題はこの太陽エネルギーを利用することです。このエネルギー利用は原理的
に地球環境に影響しません。放っておいても宇宙に失われるエネルギーを、その前に利用
するだけであるからです。
[d]太陽エネルギーの直接の利用には、太陽電池、温水器などがあります。気象現象に
なったエネルギーは、風力、水力などとして主に発電に利用されます。これらでは、使わ
ないときにエネルギーをどのように蓄積しておくかがポイントです。
「e」光合成
 光合成は次の熱化学方程式に従って、太陽エネルギーを内部エネルギーの姿で蓄積した
バイオマスを産み出します。
    6CO2 + 6H2O = C6126 + 6O2 − 2802kJ
               ブドウ糖
その生産量は1年間におよそ3000億トン(「理科年表(環境編)」のデータから計
算)であり、そのエネルギーは
    (3000×1014/180)×2800=4.7×1018[kJ]
        = 470[京kJ]
になり、これは地表が獲得する太陽エネルギーの0.18%に当たります。また人類のエネ
ルギー消費量は、この「10分の1」くらいです。
 バイオマスはエネルギー源であると同時に、食糧でもあり、かつこれからの基礎的な原
料でもあります。
[f]「身のほど知らず」という言葉がありますが、エネルギーから見れば、「身のほ
ど」とは利用できている太陽エネルギーの量でしょう。まさに現在は人類を滅ぼす事態に
なっています。生徒と共に、身のほどを拡大し、また「身のほどをわきまえる」生活と文
化をつくり出すために学習していきたいものです。


実験「ヘスの法則」
(イメージ)

                  - 9 -

       コース1             コース2
      水100mlに          水100mlに
   段階a:水酸化ナトリウムを加える  段階c:五酸化二リンを加える
   段階b:五酸化二リンを加える    段階d:水酸化ナトリウムを加える
 各段階の温度上昇を計測する。
(薬品の準備)
注意:どちらの薬品も皮膚に激しい作用を持つ。また吸湿性なのでびんのふたを取りっ放
   しにしない。
(1)水酸化ナトリウム4.0gを手早く計量し、薬包紙でおひねりにし、広口びんにしま
う。続いてもうひとつ同じおひねりをつくってびんにしまう。
(2)同様に手早く五酸化二リン2.4gのおひねりを2つ別の広口びんに準備する。
(段階a)
(1)乾いたポリコップを2つ重ね、これにメスシリンダーで水100mlを注ぐ。
(2)温度計付きの発泡スチロールのふたをし、コップをまわすようにして振り混ぜ、温
度が安定したら読み取る。
注意:振り混ぜるときに水がこぼれ出ないように注意をする。
参考:温度は0.2℃刻みで(最小目盛りの1/5)読み取る。
   コース1のスタート温度(    )℃
(3)温度計付きのふたをとり、水酸化ナトリウムのおひねりをピンセットで取り出し、
薬品のみを残らず水に投入し、再びふたをする。
(4)コップをまわすようにして振り混ぜ、水酸化ナトリウムを溶解させる。そして上昇
し切ったときの温度を読み取る。
参考:コップの底から溶解状態が観察できる。
    段階aの温度(    )℃
(5)ふたをとってBTB0.2mlを加え、変色を確認する。
(段階b)
(6)続いて、五酸化二リンのおひねりをピンセットで取り出し、はさみで上の部分を切
り取ってすこし薬品が見えるようにする。そして薬包紙ごと水に浮かせて再びふたをし、
振り混ぜて五酸化二リンを反応させる。そして上昇し切ったときの温度を読み取る。
    段階bの温度(    )℃
(段階c)
(1)別のポリコップ(2重)に水道水100mlを注ぎ、振り混ぜて温度が安定したら
読み取る。
   コース2のスタート温度(    )℃
(2)同様に五酸化二リンを加えて、温度を読み取る。
    段階cの温度(    )℃
(3)ふたをとってBTB0.2mlを加え、変色を確認する。
(段階d)
(4)同様に水酸化ナトリウムを投入し、温度を読み取る。
    段階dの温度(    )℃

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