04.8
科教協札幌大会(化学分科会)
林 正幸
化学でエネルギーをどう教えるか
講座プランとは
昨年春に36年間の教師生活を終え、現在は理科教育のボランティアをしながら、「講
座プラン」をつくることに力を入れています。
講座プランとは、教科書や受験指導などの制約から自由になった立場から、自分として
次世代のために望ましいと考える化学教育の内容を、テーマごとに具体化しようとするも
のです。
構成は次の3つです。
@基礎的実験を体験し、学習対象を実態的にとらえると共に、それを考察して疑問を湧か
せる。
Aそれに対して現代の化学はどう回答するのか、その知識と理論について、テキストを使
って学習する。
Bその上で自分で研究課題を見つけ、それを確かめるための応用的実験に取り組み、結果
を発表交流する。
このような主体的学習を通して、科学の面白さ、科学的な思考とは何か、何のために学
ぶのか、などがつかめていけたらと願っています。
このレポートでは「物質とエネルギーの世界」を取り上げてみました。テキストは資料
として添付しました。
参考:私のホームページ(96年から)
http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/
私の考え
[a]2つの基本
[1]中学高校時代に物理分野で、エネルギーとは「仕事をする能力である」と学習する。
これが焼き付いているので、私は「エネルギーとは何か」という疑問に対して、ここから
説明しようとする傾向があった。
他方で化学の教科書では、「物質は、それぞれ固有のエネルギーを持っている(第一学
習社)」とのみ説明して、すぐに発熱変化や吸熱変化に入っていく。
いずれにしても、これで高校生の頭の中にエネルギー概念がうまく構築されていくのだ
ろうか。
[2]化学熱力学にとって、物質が持つエネルギーつまり内部エネルギーは、何よりもま
ず状態量である。状態が同じなら内部エネルギーも同じである。状態が異なれば内部エネ
ルギーも違ってくる。
そしてアインシュタインによると
- 1 -
E = mc2
つまりエネルギーは質量と等価であり、物質の存在そのものに係わるものである。
[3]だから私はまず天下り的に次のように導入したい。
エネルギーとは「物質が存在することに伴って必然的に持つもの」である。物質はエネ
ルギーを持たずには存在できない。
「物質はその種類によって、また同じ物質でもその状態によって、
それぞれある決まった量のエネルギーを持つ。」
そして物質が持つエネルギーの量は物質の量に正比例する。
[4]もうひとつの基本は、言うに及ばす「エネルギー保存の法則」である。
物質はその状態が変化したり、化学反応などにより他の物質に変化したりするとき、ま
わりの物質とエネルギーのやり取りをする。物質が孤立しているなら、物質の内部でエネ
ルギーの形態が転換する。そしていずれの場合も
「エネルギーの全体の量は一定に保たれる。」
こちらの方は受け入れやすいように思われる。
[b]第1法則
[1]エネルギーをやり取りするする方法には、熱と仕事がある。物質の内部エネルギー
が減少すると、外部に熱を与えたり、外部に仕事をしたりする。これはエネルギー保存の
法則を踏まえて次の関係式で表される。
−ΔE = W+(−Q)
−ΔE:内部エネルギーの減少
−Q:外部に与える熱
W:外部にする仕事
これは熱力学の第1法則である。このようにエネルギーは仕事をする能力とは限らない。
なお仕事によってエネルギーのやり取りが起こる。熱は、次で触れるように熱エネルギ
ーのやり取りである。
備考:通常は第1法則は次のように表現される。
Q = ΔE+W
つまり、物体が外部から得る熱は、内部エネルギーの増加と外部にする仕事を加算
したものに等しい。
[2]化学的変化においては、熱によってエネルギーのやり取りをすることが圧倒的に多
いので、熱とは何かを押さえておく必要がある。
熱とは「温度が異なる2つの物体が接触するとき、高い温度の物体から低い温度の物体
に移動するエネルギー(理化学辞典)」である。
そして熱の実態は物質を構成する粒子の熱運動のエネルギーの移動である。熱運動のエ
ネルギーは熱エネルギーと呼ばれる。
私としては熱という用語は「熱エネルギー」に置き換えて使わせたい。すると「風邪で
熱がある」などと、熱素的概念が強い日常会話の内容も科学的になる。しかし熱エネルギ
ーが移動しても、熱エネルギーを得る物質の方は、単純に熱エネルギーが増加するとは限
らない。すぐに別の形態のエネルギーに転換してしまうことがある。いわゆる潜熱である。
このことに注意しないと分かりにくくなる。
- 2 -
[c]定温定圧系
[1]どのような化学系についての話であるかが、教科書ではあいまいである。化学では
定温定圧系が基本である。それでは定温定圧系とは何か。変化の最中も定温定圧でなけら
ばならないのか。
[2]私たちが扱うのは状態量であり、始めと終わりが問題である。言い換えると、途中
を気にしなくてよいように、いろいろな状態量を工夫している。定温定圧系とは、始めと
終わりで温度と圧力が同じになっている変化のことである。データの標準になっているの
は、25℃、1atmである。
多くの化学実験は、圧力が終始一定の下に行われる。そして温度は一時的に上昇したり
下降したりするが、最終的に室温にもどる。
[3]発熱変化とは、まわりに熱エネルギーを与える変化である。一時的に増加した熱エ
ネルギーで化学系自身の温度が上昇することと、定温定圧系であることは矛盾しない。ま
わりより温度が高くなるからこそ、まわりに熱エネルギーが移動するのである。
吸熱変化についても同様である。
[4]定温定圧系においては、気体の膨張などの仕事が避けられないので、次のエンタル
ピー
H = E + PV
という状態量の変化 ΔH が、熱エネルギーのやり取りに対応する。
−ΔH =(−Q)
しかし多くの場合に PV の変化量 PΔV は無視できるので、高校ではエンタルピーを
内部エネルギーで代替して説明する。
つまり発熱変化は化学系全体の内部エネルギーが減少する変化であり、吸熱変化は内部
エネルギーが増加する変化である。
[d]熱化学方程式
[1]私はこれを、発熱変化や吸熱変化を書き表す式としてではなく、次のように導入す
る。
内部エネルギーは物質の種類や状態が変化すれば異なる数値になる。だから化学的変化
が起これば、定温定圧系では、まわりと熱エネルギーのやり取りをする。
[2]水素の燃焼を例にする。
H2 + (1/2)O2 = H2O(液) + 286kJ
H2 は水素を表すと同時に、水素1molのエネルギーの量を表す。つまり数学の代数の
ように、H2 はある数値の代わりの記号でもある。同様に O2 は酸素と、酸素1molの
エネルギーを表す。したがって (1/2)O2 は酸素(1/2)molのエネルギーである。そして
H2O(液) は液体の水と、その1molのエネルギーである。
すると上の式は、水素1molと酸素(1/2)molのエネルギーは、液体の水1molの
エネルギーに286kJ加算した量に等しいことを意味する。
こうして生成物質である液体の水の方が内部エネルギーが小さいことが分かるので、こ
れは発熱変化であると確認できる。
[3]熱化学方程式が代数式であることが分かれば、それが演算可能であることはすぐに
納得できる。
- 3 -
[4]内部エネルギーとその変化は、グラフで理解させることも重要である。私は、横軸
が変化を、たて軸が内部エネルギーを表す「エネルギー変化グラフ」を利用する。
[e]ヘスの法則
[1]内部エネルギーが状態量であることは、ヘスの法則の実験によって裏付けられる。
つまり物質の内部エネルギーは、その物質がどのような経路で生成したのかを問わない。
こうして私はヘスの法則の価値を再発見した。
[f]内部エネルギーの利用
[1]ここから第2部になる。人類は物質の内部エネルギー、とくに熱エネルギーの部分
を、暖房や調理に利用するとともに、それに仕事をさせることで大きく発展してきた。こ
のことや、人類のエネルギー問題について講座プランに組み込むべきであると考えた。
その意味で燃焼熱の計測実験を取り入れた。
[2]熱エネルギーに仕事をさせることに人類が最初に成功したのは、蒸気エンジンであ
る。それにしくみも考えやすい。そこで大枚はたいてデモ実験用にと、模型の蒸気機関車
を購入した。
その後内燃エンジン、タービンエンジンなどが開発されるが、熱エネルギーを利用する
限りは、熱力学の第2法則
最大効率 = W/Q2 =(T2−T1)/T2
が壁になってエネルギー効率が落ちる。
[3]そこで内部エネルギーを直接に電気エネルギーに転換する燃料電池が注目される。
ただし燃料電池も発熱するので、コジェネレーションが重要である。
燃料電池については、燃料をどのように生産するかで環境負荷が変わってくる。私とし
ては、取りあえず天然ガス(やメタンハイドレート)から水素をつくるなら、炭素を二酸
化炭素として捨てるのではなく、炭素そのものにするべきだと考える。
[4]エネルギー効率を高めることは、二酸化炭素の削減問題もあり、政府や産業界も力
を入れ始めた。電力に関しては、送電などに無駄が多い大規模発電に代わって、コジェネ
もしやすい分散型電源に力を入れ、水素エネルギーを基幹にしていく。自動車や家電製品
はトップランナー方式を採用する。また冷暖房に関しては建物の断熱性を高める。
エネルギー効率を高めることは、人類の基本課題である。
[g]人類のエネルギー消費量
[1]人類のエネルギー消費量は1年間におよそ40京kJである(96年)。この数値
はエネルギー問題を考える基礎である。そしてこのまま経済活動を続ければ、この数値は
2050年には3倍になると見積もられる。
[2]化石燃料の急激な消費は地球環境を破壊する。地球は基本的に、物質は循環系であ
り、エネルギーは定常系である。
[3]エネルギーはその保存則にも拘わらす、実質的には「使い捨て」である。エネルギ
ーを利用するとやがては熱エネルギーに転換し、かつそれは同じ温度になっていく。これ
に対して第2法則は、温度差がなければ仕事をさせられない、つまり別のエネルギーに転
換できないことを示している。
この視点に立つと、省エネルギーは人間の道徳の基本と言える。
- 4 -
[4]これに対して物質は原則として循環利用が可能であるが、そのためにもエネルギー
が必要である。
そしてこのようにとらえれば、分かりづらいエントロピーという用語を持ち出さなくて
もことは足りる。
[h]太陽エネルギー
[1]太陽は今後50億年、赤外線、可視光線、紫外線などの放射エネルギーを与え続け
る。地球は、その軌道付近の放射量である太陽定数
1.37kJ/s・m2
の66%を、大気と地表で受ける。その量は1年間に
360000京kJ
であり、人類のエネルギー消費量の10000倍である。
[2]放射エネルギーのほとんどは熱エネルギーに転換し、さまざまな気象現象を引き起
こす。したがって風力エネルギー、水力エネルギーなどは太陽エネルギーと言える。
また海洋が得る熱エネルギーは海流を産み出す。
地表に届く放射エネルギーのわずかな部分は、緑色植物が光合成に利用して、ブドウ糖
(と酸素)のエネルギーに転換する。その熱化学方程式は
6CO2 + 6H2O = C6H12O6 + 6O2 − 2802kJ
であり、その量は1年間に
500京kJ(ブドウ糖で3200億トン)
である。
[3]太陽エネルギーは、人類が永続的に利用できる事実上唯一のエネルギー資源である。
太陽エネルギーの大規模な利用こそが、人類の未来を切り開く。
放射エネルギーを直接利用する太陽電池は、現在の効率が15%であり、効率アップが
期待される。ただしこれは緯度が高い地方には向かない。
風力エネルギーを利用する風力発電はすでに基本技術が確立しており、一説によるとこ
れだけで人類の現在のエネルギー消費をまかなえるそうである。
バイオマスは自然の循環の一部であり、本来的に地球環境を破壊しない。そしてこれは
物質資源としても石油に取って代わるべきものである。
ただしこれは食糧でもある。余剰や廃棄物を巧みに利用する必要がある。なおバイオマ
ス生産のかげに、世界的な水不足問題がある。
[4]地球が受けた太陽エネルギーは、放っておいても、より温度が低い宇宙に向けて遠
赤外線として発散してしまう。そしてその前に利用しても、エネルギー量が変化するわけ
ではない。これは化石燃料の利用が閉じ込められていたエネルギーを一気に開放してしま
うのと対照的である。ただし地表を太陽電池で埋め尽くすような愚を犯してはならない。
[5]まとめるとエネルギー問題のキーワードは、エネルギー効率、省エネルギー、太陽
エネルギーである。
概 要
[1]このプランは次の7個の基礎的実験と
[a]ブラウン運動
- 5 -
[b]発熱変化と吸熱変化
[c]ヘスの法則
[d]メタノールの燃焼熱
[e]蒸気機関車(演示実験)
[f]簡単燃料電池
[g]太陽炉の製作
と次の7章の解説からできています。
1.エネルギーとは何か
2.物質のエネルギー
3.化学的変化とエネルギー
4.熱化学方程式
5.ヘスの法則と生成熱
6.内部エネルギーの利用
7.地球上のエネルギー
解 説
1.エネルギーとは何か
[1]すでに上で書いたように導入し、具体例で説明を加える。
[2]エネルギーの形態にも注目させる。そして基本的形態は運動エネルギーと位置エネ
ルギーである。
運動エネルギーは分かりやすいが、私は位置エネルギーの知識を次のように発展させる。
地面は地球である。物体が落下するのは、物体と地球が万有引力で引き合っているためで
ある。高いとは物体と地球の距離が大きいことである。だから
「引き合う物体どうしがある距離で位置していることに対応して持つエネルギー」
である。なお引力の種類は万有引力とは限らない。
[3]エネルギー保存の法則も上で書いたように導入し、具体例で説明を加える。
そしてエネルギーの単位に触れる。
2.物質のエネルギー
[1]物質が持つエネルギーは内部エネルギーと呼ばれ、その正体は運動エネルギーと位
置エネルギーである。
[2]ここでは牛乳を顕微鏡で観察して、脂肪球のブラウン運動から熱運動を確認する。
このように物質は運動エネルギーを持っている。
気体の飛行運動(並進運動)では、分子の平均運動エネルギーと温度の間に次の関係式
が成り立つ。
(1/2)mv2 = (3/2)kT
m:分子1個の質量[kg]
v:分子の平均飛行速度[m/s]
k:ボルツマン定数 1.38×10-23[J/K]
T:絶対温度(K(ケルビン))
絶対温度を確認しつつ、15℃の酸素分子の平均飛行速度を計算してみて、熱運動のすご
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さを理解させる。
またこの関係式を手がかりに
「温度は熱運動の平均の激しさを表している。」
ことを説明する。つまり温度が同じなら、熱運動の平均の激しさは分子の種類に依らず同
じである。なお「激しさ」という表現は、「1自由度あたり」と言うことを避けるためで
ある。
[3]水の沸とうを例にして、温度が変わらないのにエネルギーを得て分子間距離が大き
くなることから、物質が位置エネルギーを持つことを示唆する。
分子は分子間力で、原子は化学結合で引き合うことを思い出す。
[4]内部エネルギーの意味を説明し、すでに上で書いたように熱エネルギーを導入し、
伝熱のしくみなどに触れる。
3.化学的変化とエネルギー
[1]次の実験で、化学的変化には発熱や吸熱が伴うことを実感する。
@鉄粉に食塩を混ぜてすこし水を加えてかき混ぜると、温度が90℃くらいまで上昇する。
A塩化アンモニウムに水酸化カルシウムを加えてかき混ぜると、アンモニアが発生してビ
ーカーの底が冷たくなる。
B水に少しずつ濃硫酸を溶解すると、沸とうするほどになる。
C液体状態の酢酸ナトリウムに固体の酢酸ナトリウム1粒を加えると、凝固が起こって温
かくなる。
[2]ここで上に書いたように、定温定圧系系について説明する。
なお反応熱や溶解熱をまとめて「変化熱」という用語を使うことにする。
4.熱化学方程式
[1]実験の意味を説明する。内部エネルギーが減少する変化は発熱となる。逆に変化が
発熱であれば、内部エネルギーは減少すると判断できる。
[2]上で書いたように熱化学方程式を説明し、具体例で練習する。
続いて同じ水素1molが燃焼する変化を例にして、エネルギー変化グラフを説明する。

横軸は変化を表し、左の方は変化前を、右の方は変化後を意味する。別の学習では変化の
最中を扱うこともある。
なお物質のエネルギーはエネルギーを計測する基準によって変化する。しかし落差は同
じになる。したがって横線の高さそのものは明示しないこともある。
熱化学方程式とエネルギー変化グラフは、物質のエネルギーを考えるためのすぐれた道
具である。
[3]熱化学方程式の演算にも触れるが、新しい熱化学方程式は生成熱からつくるのが基
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本である。
[4]「酢酸ナトリウムの凝固」では、「凍れば冷たいのではないか」と疑問に感じる生
徒がいる。この種の誤解は多く、これまでに学習した立場からきちんと見直しておく。
5.ヘスの法則と生成熱
[1]はじめに水、水酸化ナトリウム、五酸化二リンを準備し、これらを混合してリン酸
ナトリウム水溶液にする。コース1では水に始めに水酸化ナトリウムを加え(塩基性溶液
になる)、コース2では水に始めに五酸化二リンを加える(酸性溶液になる)。
発熱による温度上昇は、各コース、各段階ですべて異なるが、コース全体の温度上昇は
同じになる。
このことは物質の内部エネルギーはそれぞれの物質の種類や状態に固有のもので、それ
がどのコースを経てできるかに依らないことを裏付けている。
[2]実験に結び付けて、水の熱容量を導入し、化学的変化がまわりに与えたり奪ったり
するエネルギー量を計測する方法のひとつを説明する。
そして具体的に水酸化ナトリウムの溶解熱などを求める。
[3]化学的変化における左辺の物質と右辺の物質の全体としての差だけでなく、個々の
物質1molのエネルギーを表す工夫をする。
このためにエネルギーを計測する基準を「すべての単体1molのエネルギーは0kJ
とする」と定める。そして物質の生成熱を「物質1molがその成分元素の単体から生成
するときまわりに与えるエネルギー」とする。
[4]液体の水の生成熱は286kJ/molである。この変化を新しい基準でエネルギー
変化グラフに描くと次のようになり

液体の水のエネルギーは、−286kJ/molである。
このように化学的変化によって物質がまわりとやり取りするエネルギーと、物質の内部
エネルギーの変化は常に裏腹の関係にあり、符号が反対になることに注意を払うべきであ
る。
[5]次の例題によって、物質の生成熱を利用してさまざまな熱化学方程式をつくれるこ
とを示す。
[例題]エチレン、二酸化炭素、液体の水の生成熱は、それぞれ−52、394、286
kJ/molである。エネルギー変化グラフを描いて、次の熱化学方程式のQを求めよ。
C2H4 + 3O2 = 2CO2 + 2H2O(液) + QkJ
- 8 -

答 Q=1412
6.内部エネルギーの利用
[1]アルコールランプでアルミ片を加熱し、水を加えて温度上昇を計測して、メタノー
ルの燃焼熱を計測する。
ここで再び熱容量の計算に慣れる。
[2]模型の蒸気機関車に水を入れて固形燃料で加熱すると、しばらくして動き出す。
それを観察してエンジンのしくみを考える。
[3]ここでエネルギー統計から、人類のエネルギー消費量が40京kJであることを計
算する。
[4]続いて上で書いたように、効率の問題を取り上げる。
[5]水酸化ナトリウム水溶液を電気分解してできる燃料電池で、ソーラーモーターをま
わしたりする。
これはエネルギー効率を大きく高める。
7.地球上のエネルギー
[1]小型の太陽炉を製作する。
そして太陽定数から地球が1年間に受ける太陽エネルギーが360000京kJである
ことを計算する。
[2]すでに上で書いたように、エネルギーが使い捨てであることを説明する。
[3]地球が受ける太陽エネルギーの行方を説明する。
その中で光合成と酸素呼吸に関しては次の図を使い、熱化学方程式の応用計算もする。

そして化石燃料の急激な消費の意味に触れる。
なお気象現象に関しては別の場に譲りたい。
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[4]持続可能なエネルギー源は太陽をおいて他にはない。
太陽エネルギーの利用に関して、太陽電池、風力発電、バイオマスなどに触れる。そし
て生徒自身に考えさせる。
[5]ここで最近よく言われる水素エネルギーに関する「水にいくらでも含まれるから、
エネルギー問題は解決する」という誤解を解いておく。
そして地球が受ける太陽エネルギーの行方の最後である赤外線放射に触れる。
おわりに
私は講座プランを実践できる場を探しています。3時間×6回が基本です。そうでない
と教育的に検証できないからです。しかし実践できなくても、プランをつくる意味はある
と思います。さらに言うと仕事に追われずに、じっくりとプランを考える価値もあります。
その立場からご意見をいただけるとうれしいです。
昨年11月に「環境問題を勉強する会」を立ち上げ、これまでに3回の例会を持ちまし
た。この中でもエネルギー問題は重点であり、この講座プランの6、7章にもかなり反映
させることができました。「何のため誰のために教えるか」という視点を外すわけにはい
かないと考えるからです。
追記:
化学分科会でレポートする中で藤田さんより、バイオマスに関して微生物の役割をもっ
と強調するべきではないかという批判をいただきました。テーマからして微生物の生態系
における役割全般に渡ることはできませんが、バイオマスを利用して人類がエネルギーを
獲得する場合の微生物の重要性については、できれば実験を含めて採り入れたいと思いま
す。
また省エネルギーについては、人間の生き方まで踏み込んだ提示も加えた方がよいと考
えました。
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