06.12
                                   林 正幸

   先進科学塾の取り組み

はじめに
 4年あまり前、退職に際して、これからは現行の教科書(指導要領)や受験対策などか
ら自由になって、自分が望む本来の化学教育を模索していこうと決心した(非常勤講師な
ども引き受けなかった)。敢えて言えば、化学に積極的に関心が持てる高校生を対象に構
想することにした。
 これは、テーマ毎にB4(2800字)で10数枚のプリントをつくる形で具体化して
おり、「講座プラン」と名付けた。もちろん多数の実験を含み、これまでに7つのプラン
(テキスト)を作成できた。
先進科学塾の立ち上げ
 退職前年の秋、友人の林煕崇(ひろたか)さんが、名古屋市科学館で高校生向けの講座を立ち
上げないか、と声を掛けてきた。渡りに船と、二つ返事で応えた。先進科学塾(Advan-
cing Science Workshop)という名称には、集まった仲間(大学を含む)の思いが籠められ
ている。1つの講座は休日6回、1回3時間とする。それぞれの講座は1人が中心になり、
プランを提案し、意見交換を受けて準備し、当日は講師を務め、残りはスタッフとして協
力する。翌年(03年)一学期には、案内を名古屋市内の高校を中心に発送し、第1回を
10名あまりの高校生の参加で実現することができた。
 第2回(と第3回)は夏休みに計画し、私が担当し、テーマを「電子やり取り反応の世
界」とした。先進科学塾に対する思いは講師によって異なる面もあるが、私は次の3段階
を経れば、科学的な思考力が育ち、科学的な知識や理論が持つ意味を理解し、そして科学
の面白さが分かるだろうと考えた。
第1段:基礎実験を体験し、学習内容を実感をもってとらえると共に、それを考察して疑
    問を湧かせる。
第2段:それに対して現代の科学はどう回答するのか、また全体像はどうなっているのか、
    その知識と理論をテキストを使って学習し、かつ質疑討論する。
第3段:その上で自分で研究課題を見つけ、それを確かめるための応用実験に取り組み、
    結果を発表交流する。なお科学を学ぶ目的も考える。
 「講座プラン」の1つめは、正にこの実践のために役立てることができた。プランの内
容は03年の科教協大会でレポートした。
 ところが、高校生を集め続けるのがたいへん難しいことがはっきりしてきた。ひとつは
6日間という日程もあるが、私は現在の高校生が精神的にゆとりがないと深刻に受け止め
る。
1日コースとして
 第5回を終わったところで、方針の変更を余儀なくされた。講座は1日だけで6時間と
し、対象を「高校生以上」に広げる。これは現状に適っており、1日コースは順調に推移
し、この2年間は年8回の体制になり、今年6月で20回になる。そのあらましは科学館
の次のホームページで閲覧できる。
 http://www.ncsm.city.nagoya.jp/asw/
参加者は10数名で、大学生や社会人に広がり、先生の参加もあり、女性も少なくなく、
熟年も含む(ただし高校生が少ないのが寂しい)。幸いリピーターが多く、先進科学塾は
新しい意義を担って発展している。
 この間に私は「蒸気圧がわかる実験1,2,3・・・」「物質に秘められたエネルギーを
探る」「元素を自分で取り出してみよう」「原子量とアボガドロ定数を測ろう」「酸・塩
基とは、そしてpHとは何か」と、5回担当した。内容は必然的に変更を迫られ、「講座
プラン」の一部をベースに、新しく構成するようになった。そして毎年、この実践を科教
協大会でレポートしている。
おわりに
 この他に私は「MOLの会(化学教育サークル)」「EHC(電子工作を中心としたも
のづくりサークル)」「環境問題を勉強する会」などを支え、メールによる「高校生の質
問」に返事を書いている(98年から300通以上)。上の講座プランを含めこれらの活
動は私のホームページ
http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/
に掲載している。
 なお高校生の現状を変え、いつか私の思いが実現できることを願う。

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