06.12
安房科学塾レポート
07年討論合宿レポート
林 正幸
「酸と塩基」をどう教えたいか
はじめに
現役のとき「酸と塩基」の授業は、「酸化と還元」に比べて満足が行かなかった。面白
い実験が無かったわけではない。それは私自身が、教えるべき内容を十分に納得していな
かったのである。
今年の8月に講座プラン「酸と塩基」をつくろうと決心すると、それはこれまでの教材
を徹底して見直すことから始まった。と同時にそれは、12月に予定された先進科学塾1
日コース(題名は「酸・塩基とは、そしてpHとは何か」になった)の内容を考えること
でもあった。
A 講座プラン「酸と塩基」のあらまし
プランのテキストは私のホームページ
http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/
の「私の教材と研究・主張など(03.2〜)」の中に掲載している。ここではそのあら
ましを紹介する。
1から4節までがアレニウスの定義による展開で、5,6節がブレンステッドの定義に
よる展開である。
1.酸とは、塩基とは
[a]酸と酸性(アレニウスの定義)
実験1 酸とは、塩基とは
[a]BTBの変色
[b]マグネシウムと酸
[c]酸と塩基の反応
演示実験1 酸味
演示実験2 希硫酸と濃硫酸
[b]塩基と塩基性(アレニウスの定義)
[c]中和反応と塩(えん)
2.酸性の強弱
[a]酸の強弱
演示実験3 電離度
[b]酸性の強弱
[c]水素イオン指数(pH)
3.pHと化学反応
[a]身近なもののpH
演示実験4 身近なもののpH
- 1 -
[b]pHと化学反応
演示実験5 紫キャベツの色素とpH
実験2 pHと化学反応
[a]いろいろなpHの水溶液の調製
[b]過マンガン酸カリウムの場合
[c]酵素カタラーゼの場合
[c]中和の量的関係
[d]中和滴定(その1)
実験3 中和滴定とpH
[a]滴定曲線
[b]食酢中の酢酸のモル濃度
4.酸性酸化物と塩基性酸化物
実験4 酸化物から酸と塩基をつくる
[a]硫黄から硫酸をつくる
[b]割りばしから炭酸などをつくる
[c]チョークから水酸化カルシウムをつくる
[a]硫黄から硫酸をつくる
[b]割りばしから炭酸などをつくる
[c]チョークから水酸化カルシウムをつくる
[d]酸性酸化物と塩基性酸化物
[e]酸性雨
演示実験6 二酸化窒素から硝酸をつくる
[f]酸化物の反応(その2)
5.水素イオンのやり取り
実験5 水素イオンのやり取り
[a]酢酸の生成
[b]アンモニアの発生(その1)
[c]アンモニアの発生(その2)
[d]硫化水素の発生
[a]ブレンステッドの定義
[b]水素イオン得失表
[c]水素イオン得失表の活用
6.塩の加水分解と緩衝溶液
[a]塩の加水分解
演示実験7 塩の加水分解
[b]中和滴定(その2)
[c]緩衝溶液
演示実験8 緩衝溶液
B 思いと狙いなど
なぜ酸と塩基を特別に取り上げるのか。酸は水素を含み、塩基は水酸基を含む。ナトリ
ウム化合物、カルシウム化合物、塩化物、硫化物などとは、何が異なるのか。こんな素朴
- 2 -
な疑問にすっきりとした納得を得たい。
(a)酸とは、塩基とは
水素化合物のすべてが酸ではない。酢酸のように水素イオンにならない水素を含む化合
物もある。またアンモニアのように水酸基を持たない塩基もある。まさにアレニウスの定
義のとおりに、水に溶けて水素イオンや水酸化物イオンを生じてこそ、酸と塩基である。
この水素イオンと水酸化物イオンは互いに相手を打ち消し合う。酸と塩基は相手を問わず
中和反応する。
これを実感できるために、実験1(と演示実験1)が必要であることに気付いた。酸と
呼ばれる物質群と塩基と呼ばれる物質群の共通の性質を確認する。そして水に滴下したB
TBの色が、塩酸を加え、水酸化ナトリウムを加え、硫酸を加え、水酸化カルシウムを加
え、酢酸を加え、アンモニア水を加えると、黄色と青色の間を往復する。これは酸と塩基
の学習の出発点である。
(b)酸・塩基の強弱
アレニウスの定義では電離度(あるいは電離定数)を使う。塩基は溶解度が係わる。溶
解している部分はほぼ電離していても、溶解度が小さければ弱塩基であろう。通常は深入
りしないで済ます。
ちなみに酸の強弱は、ブレンステッドの定義につなげるためにも、どの段階の電離に関
してかを区別した。硫酸水素イオンはリン酸(の第1段階)と同程度の強さの酸であり、
硫酸まるごとを単純に強酸とは言えない。
ブレンステッドの定義では、酸の強さは水素イオンを失う傾向が大きいか小さいか、逆
反応で考えると(共役)塩基の強さは水素イオンを得る傾向が小さいか大きいか、という
視点を中心にする。後で再度触れるが、こちらは明解である。
(c)水素イオン指数(pH)
[1]酸性、塩基性の強弱は水素イオン指数で表される。
pH = −log[H+ ]
これは2つの伝えてたいことを背負っていると考える。pHは表現のしやすさの問題に留
まらない。それは水素イオンの化学ポテンシャル(1mol当たりの自由エネルギー)に
結び付く。
熱力学をのぞいてみよう。ある物質の化学ポテンシャル μ は
μ = μ0+RTln(a) = μ'0+RTln(c)
μ0 , μ'0 :標準状態における化学ポテンシャル
a:活量
c:モル濃度
化学ポテンシャルに物質量を掛ければその状態におけるある物質の自由エネルギーにな
る。そして生成物質群と反応物質群の自由エネルギーの差 ΔF は、その化学反応がどれ
くらい起こりやすいか(平衡論的に)を示す。
ΔF = ΔF0 +RTln(K)
ΔF0 :標準状態における自由エネルギーの変化
K:平衡定数
- 3 -
そして常用対数 log と自然対数 ln は比例する。
log(x) = (1/2.303)ln(x)
つまり水素イオン濃度の対数は化学反応の起こりやすさに結び付いている。
熱力学は横に置くが、pHを教えるならこのことを実感させたい。言い換えると「化学
ではモル濃度が2倍、3倍となってもあまり影響がなく、10倍、100倍、つまり桁が
変化するようになってやっと大きな影響があることも多い」。
[2]もうひとつは、生化学反応はもちろんのこと、多くの化学反応はpHの影響を受け
る。素朴には教科書などに「酸性の下で」とか、「中性ないし塩基性の下で」などという
記述がある。これは酸と塩基が多くの化学反応に係わっていることを示している。つまり
酸と塩基は特別に取り上げる意義がある。
[3]こんなわけで、演示実験5と実験2を組み込んだ。実験2では、pHが0,2,4,
7,10,12,14の溶液を準備する。そして過マンガン酸カリウムとチオ硫酸ナトリ
ウムを加える実験は次のように変化に富む。
pH0 ほぼ無色の Mn2+ になり、やがて別反応で硫黄が生成して白濁する
pH2 ほぼ無色の Mn2+ になる
pH4〜12 褐色の MnO2 になり濁る
pH14 緑色の MnO42- になる
また過酸化水素と大根おろし(カタラーゼ)を加える実験は、まずpH14では過酸化
水素が分解し始めることが分かる。その上でカタラーゼがpH4〜12において酵素活性
を示すことが確認できる。
ちなみに酸性、塩基性の強弱は、アレニウスの定義の枠内のことである。
(d)中和滴定
[1]化学量論もさることながら、中和点が指示薬によって検出できることも納得させた
い。最近はpHメーターを使って滴定曲線を描く実験を耳にする。私は、ユニバーサル指
示薬の変色を利用してそれを実現することにした。pHは0.5刻みになるが、お金と時間
が節約でき、目的には十分な結果が得られる。そして指示薬そのものを使うので、変色域
の話も速い。
実験3では、0.1mol/Lの塩酸および酢酸を、ユニバーサル指示薬を加えて同濃度
の水酸化ナトリウムで中和する。そして結果を踏まえて、食酢中の酢酸のモル濃度を中和
滴定もする。
中和点付近のpHの変化が急激であることは、pHの定義によっている。したがってこ
の実験はpHの理解を深めることにもなる。なお中和点が中性とは限らない理由は後で説
明する。
[2]ちなみに中和点は厳密に言うと、酸と塩基が完全に塩になるところではない。逆反
応である塩の加水分解が起こるからである。中和点とは、酸と塩基の物質量が等しいとこ
ろである(多価の酸や塩基では補足が必要)。塩の加水分解を取り上げるなら、化学量論
との関係を補足すべきである。
(e)酸性酸化物と塩基性酸化物
これは、酸性雨を取り上げることを含めて、現役のときとほぼ同じ内容である。そして
ここにも酸と塩基は特別に取り上げる意義がある。
- 4 -
なお酸性酸化物と塩基性酸化物はブレンステッドの定義では酸と塩基であるが、扱いに
くいのでそのことは割愛する。
(f)ブレンステッドの定義
[1]生徒の実態によっては、酸と塩基をアレニウスの定義に留めることもある。しかし
飛躍を目指すなら、ブレンステッドの定義に踏み込みたい。これは酸と塩基の反応を「水
素イオンのやり取り」と捉えることである。そしてこのことは、酸と塩基を特別に取り上
げる大きな意義である。
私としては、講座プラン「電子やり取り反応の世界」の「電子得失表」(下の「参考」
を参照)と同じように、これは「水素イオン得失表」をつくって展開すればよいことに気
付いたとき、確信が湧いてきた。
[2] 水素イオン得失表
酸 (共役)塩基 pK
@ HCl ←→ H+ + Cl- −7.0
A H2SO4 ←→ H+ + HSO4- −5.2
B H3O+ ←→ H+ + H2O −1.7
C HNO3 ←→ H+ + NO3- −1.4
D HSO4- ←→ H+ + SO42- 1.9
E H3PO4 ←→ H+ + H2PO4- 2.2
F CH3COOH ←→ H+ + CH3COO- 4.8
G H2CO3 ←→ H+ + HCO3- 6.4
H H2S ←→ H+ + HS- 7.0
I H2PO4- ←→ H+ + HPO42- 7.2
J NH4+ ←→ H+ + NH3 9.2
K HCO3- ←→ H+ + CO32- 10.2
L HPO42- ←→ H+ + PO43- 12.4
M HS- ←→ H+ + S2- 14.0
N H2O ←→ H+ + OH- 15.7
pK(ピーケー)は電離指数と呼ばれる。これは酸の強さを示し、小さいほど水素イオ
ンを失う傾向が大きい(これ以上の説明はしない)。
この水素イオン得失表は、上から、右向きの変化が起こりやすいつまり左辺の酸の強い
順に並んでいる。言い換えると、下から、左向きの変化が起こりやすいつまり右辺の塩基
の強い順に並んでいる。
左辺の酸と右辺の塩基は、水素イオンやり取り反応をする。そして酸と塩基が右下がり
に斜線で結ばれれば、その反応は起こりやすい。そして右上がりの斜線なら起こりにくい。
その程度はpKの差で読み取ることができる。
[3]電離指数を使って計算してみる。実験5から例を引こう。酢酸ナトリウムに希塩酸
を加えると酢酸が生成する。
CH3COO- + H3O+ ―→ CH3COOH + H2O (1)
- 5 -
反応Bと反応Fを電離指数で表すと
−log{[H+ ][H2O]/[H3O+ ]} = −1.7
−log{[H+ ][CH3COO- ]/[CH3COOH]} = 4.8
上式から下式を辺々引き算すると
−log{[CH3COOH][H2O]/[CH3COO- ][H3O+ ]} = −6.5
これは反応(1)のpKが−6.5であり、右向きに起こりやすいことを示す。これが右下
がりの斜線(Bの左辺とFの右辺)で結ばれる酸と塩基の反応が起こりやすく、その程度
がpKの差で読み取れることの裏付けである。
[4]逆の例も見ておこう。水の電離は起こりにくい。
2H2O ―→ H3O+ + OH- (2)
これは次のように水素イオンをやり取りする反応である。
H2O ―→ H+ + OH-
H+ + H2O ―→ H3O+
酸としての H2O はOの左辺にあり、塩基としての H2O はBの右辺にあり、右上がり
の斜線で結ばれる。反応Oと反応Bを電離指数で表すと
−log{[H+ ][OH- ]/[H2O]} = 15.7
−log{[H+ ][H2O]/[H3O+ ]} = −1.7
上式から下式を辺々引き算すると(今度はより下の式Oから上の式Bを引き算しているこ
とに注意しよう!)
−log{[H3O+ ][OH- ]/[H2O]2 } = 17.4
反応(2)はpKが17.4であり、右向きには起こりにくい。
ちなみに水のモル濃度を55mol/Lとすると
log[H2O] = 1.7
したがって
log[H2O]2 = 2×log[H2O] = 3.4
だから
−log{[H3O+ ][OH- ]} = 14
水のイオン積が得られる。
[5]このようなpKの計算は横に置くが、水素イオン得失表の組み立てと活用は高校生
に理解でき、かつ発展的であると考える。
付け加えると、電子得失表では右上がりの斜線になるならその反応は起こらないと単純
化している。しかし水素イオン得失表では「起こりにくい」としている。それは水の電離
や塩の加水分解などわずかに起こる反応にも目を向ける必要があるからであり、こちらの
方がより正確な表現である。
それから、水分子や炭酸水素イオン、リン酸二水素イオンなどのように全く同じ物質が
左辺にも右辺にもあり、得失表を見るのに注意が求められる。
このようなこともあり講座プランとしては、「酸と塩基」の方が後で学習する位置づけ
にしている。
(g)水素イオン得失表の組み立て
[1]塩酸の電離
HCl + H2O ―→ H3O+ + Cl-
- 6 -
と中和反応
H3O+ + OH- ―→ 2H2O
を使ってブレンステッドの定義を導入すると共に、これらの反応が起こることから酸が水
素イオンを失う傾向の大きさは
HCl > H3O+
H3O+ > H2O
である。そして次の水素イオン得失表をつくり
HCl ―→ H+ + Cl−
H3O+ ―→ H+ + H2O
H2O ―→ H+ + OH-
右下がりの斜線の反応が起こることを示す。さらに水の電離を例をして、「起こりやす
い」と改め、右上がりの斜線の反応は「起こりにくい」とまとめる。
[2]さらに実験5の前半で、つまり上の反応(1)から
H3O+ > CH3COOH
また塩化アンモニウムに水酸化カルシウムを加えるとアンモニアが発生する
NH4+ + OH- ―→ NH3 + H2O
ことから
NH4+ > H2O
そしてアンモニアを濃塩酸に近づけると塩化アンモニウムが生成する
HCl + NH3 ―→ NH4Cl
ことから
HCl > NH4+
つまりイオン化傾向の実験から電子を失う傾向の大小を見い出すと同じように、水素イオ
ンを失う傾向の大小つまり酸の強弱を実験から見い出し、全体の得失表につなげる。
(h)水素イオン得失表の応用
[1]実験5の後半は、アンモニアが水に溶けて弱塩基性を示すのは
NH3 + H2O ―→ NH4+ + OH-
H2O(Nの左辺)とNH3(Jの右辺)は右上がりの斜線
塩化アンモニウムに、リン酸ナトリウムを混ぜるとアンモニアが発生するのは
NH4+ + PO43- ―→ NH3 + HPO42-
NH4+(Jの左辺)と PO43-(Lの右辺)は右下がりの斜線
しかしリン酸二水素ナトリウムを混ぜても変化しないのは
NH4+(Jの左辺)と H2PO4-(Eの右辺)は右上がりの斜線
硫化ナトリウムに、リン酸を加えると硫化水素が発生するのは
S2- + H3PO4 ―→ HS- + H2PO4-
H3PO4(Eの左辺)と S2-(Mの右辺)は右下がりの斜線
HS- + H3PO4 ―→ H2S + H2PO4-
H3PO4(Eの左辺)と HS-(Hの右辺)は右下がりの斜線
しかしリン酸水素二ナトリウムを加えても変化しないのは
HPO42-(Lの左辺)と HS-(Hの右辺)と右上がりの斜線
であるためと説明できる。このように水素イオン得失表は明解かつ強力である。
- 7 -
なおアレニウスの定義の下で弱酸の塩と強酸の反応や、弱塩基の塩と強塩基の反応を扱
うが、ブレンステッドの定義の下で水素イオン得失表を使った方が、もっと広い範囲の反
応を統一的に扱うことができる。
[2]塩の加水分解は、右上がりの斜線の反応になる。しかしその説明には2つの注意が
必要である。炭酸水素ナトリウムはすこし次のように反応する。
H2O + HCO3- ―→ OH- + H2CO3
それなら次の反応は起きないのか。
HCO3- + H2O ―→ CO32- + H3O+
これはpKの差を比べて始めて説明ができることである。前者が9.3で後者が11.9で
あり、前者が全体を支配する。
もうひとつは、塩化ナトリウム水溶液が中性である理由である。次の反応は起きないの
か(Na+ の反応の方は省略)。
H2O + Cl- ―→ OH- + HCl
ところで水溶液である以上、すこし次の反応も起こる。
2H2O ―→ H3O+ + OH-
前者が22.7で後者が17.4である。後者が全体を支配して中性と言える。
つまり塩の加水分解は、ブレンステッドの定義に踏み込まないとまともな説明はできな
いわけである。
[3]塩酸のような強酸を水に溶かして扱うと、オキソニウムイオンを生成する。
HCl + H2O ―→ H3O+ + Cl-
つまり酸の強さのランクがオキソニウムイオンまで下がる。また水酸化ナトリウムのよう
な強塩基を水に溶かして扱うと、電離して水酸化物イオンを生成する。
NaOH ―→ Na+ + OH-
これは塩基の強さのランクが水酸化物イオンまで下がることを意味する。これらは溶媒で
ある水の「水平化効果」と呼ばれる。
これはアレニウスの定義の強酸と強塩基をブレンステッドの定義に関連づけると同時に、
緩衝作用にも関係する。緩衝溶液は酢酸と酢酸ナトリウムのように、弱酸とその共役塩基
で構成される。これに強酸を加えると、それによるオキソニウムイオンが酢酸に変化する。
CH3COO- + H3O+ ―→ CH3COOH + H2O
つまり酸の強さのランクが弱酸である酢酸まで下がる。これに強塩基を加えると、それに
よる水酸化物イオンは酢酸イオンに変化する。
CH3COOH + OH- ―→ CH3COO- + H2O
つまり塩基の強さのランクが弱塩基である酢酸イオンまで下がる。これは水平化効果の極
限である。
[参考]
電子得失表
酸化還元電位
@ Na ←→ Na+ + e- 2.714[V]
A Al ←→ Al3+ + 3e- 1.662
B 2OH- + H2 ←→ 2H2O + 2e- 0.828
C Zn ←→ Zn2+ + 2e- 0.763
- 8 -
D S2- ←→ S + 2e- 0.447
E Fe ←→ Fe2+ + 2e- 0.440
F Ni ←→ Ni2+ + 2e- 0.250
G Pb ←→ Pb2+ + 2e- 0.126
H H2 ←→ 2H+ + 2e- 0.000
I Cu ←→ Cu2+ + 2e- −0.337
J 4OH- ←→ 2H2O + O2 + 4e- −0.401
K 2I- ←→ I2 + 2e- −0.536
L Fe2+ ←→ Fe3+ + e- −0.771
M Ag ←→ Ag+ + e- −0.799
N 2Br- ←→ Br2 + 2e- −1.087
O 2H2O ←→ 4H+ + O2 + 4e- −1.229
P 2Cl- ←→ Cl2 + 2e- −1.360
この電子得失表は、上から、右向きの変化が起こりやすいつまり還元剤(金属や陰イオ
ンなど)が電子を失う傾向が大きい順に並んでいる。言い換えると、下から、左向きの変
化が起こりやすいつまり右辺の酸化剤(非金属や陽イオンなど)が電子を得る傾向が大き
い順に並んでいる。
左辺の還元剤と右辺の酸化剤は電子やり取り反応をする。そして還元剤と酸化剤が右下
がりに斜線で結ばれれば、その反応は起こる。そして右上がりの斜線なら起こらない。そ
して反応が起こりやすい程度は、酸化還元電位の差で読み取ることができる。
C 先進科学塾での実践
(a)テキスト
1日コースという時間の制約から、講座プランの始めの主に3つの節を整理して構成し
た。内容はアレニウスの定義の枠内に限定した。1日コースのテキストは同じように
(A)のホームページに掲載しているが、あらましは次のようである。
1.酸とは、塩基とは
[a]酸と酸性
実験1 酸とは、塩基とは
[a]BTBの変色
[b]マグネシウムと酸
[c]酸と塩基の反応
演示実験1 酸味
[b]塩基と塩基性
[c]中和反応と塩(えん)
2.酸性の強弱
[a]酸の強弱
演示実験3 電離度
[b]酸性の強弱
[c]水素イオン指数(pH)
3.pHと化学反応
- 9 -
[b]pHと化学反応
演示実験5 紫キャベツの色素とpH
実験2 pHと化学反応
[a]いろいろなpHの水溶液の調製
[b]過マンガン酸カリウムの場合
[c]酵素カタラーゼの場合
[d]中和滴定(その1)
実験3 中和滴定とpH
[a]滴定曲線
4.酸性雨と血液
[a]酸性雨
[b]血液の緩衝作用
演示実験2,4と、実験3の[b]は省略した。1節では反応式などを簡単にし、2節
ではモル濃度の説明を加えた。3節の[a]と[c]は省略した。4節は予備知識が要ら
ないように書き直した。
(b)展 開
[1]参加者は14名、スタッフは私を含めて5名であった。
午前は10:00からスタートし、実験2の[a]までで予定を15分オーバーして
12:45、午後は16:20にまとめができて、順調に進行した。
[2]実験1では、硫酸を加えたときのBTBの変色が赤みがかることに注目した参加者
がいた。そこで濃硫酸にBTBを加えてみると赤紫色になる。あとで昼休みに試した人が
いて、濃塩酸でも赤紫色になる。そう言えばエタノールに溶かしたBTBの色(指示薬の
色)は赤橙色である。なお後日に参加したある先生から「pHが0より小さい領域では赤
みを帯び、強塩基性では青紫色になる」というメールを頂いた。
また演示実験2では、強酸と弱酸の違いや、水素イオンの導電率の高さに関心が向き、
昼休みには、午後の準備をする私を尻目に、そして準備しておいた試薬が不足するまで、
楽しげに実験して納得ができたようで、これはスタッフが複数居る強みである。
こんなトピックスも生みながら、酸・塩基とは何かに係わる実験1と演示実験1は、単
純ながらやはりやる価値があると確認できた。
pHとは何かに係わる演示実験3と実験2,3も、所期の目標が受け止められた。実験
3のビュレットの使用は、あまり心配の要らない状態であった。
酸性雨と血液の話を加えたことも、学ぶ意義と結びついて有効にはたらいた。
[3]私自身は風邪で声が出にくいという悪条件であったが、「やる気があるとはかくも
違うものだ」と改めて感慨を覚えた。科学館の山田さんも「皆さんが何の戸惑いもなく実
験に入っていくのを見て驚きました」と挨拶した。疲れ果てたが、私は大きな満足を得て
科学館を出た。
(c)参加者のアンケート
<レポートづくりの参考にさせてもらいますので、協力してください。
「良かったこと」「分かりにくかったこと」「思ったこと」「希望すること」など
自由に書いてください。>
- 10 -
というアンケートの内容である。
@水素イオンのモル濃度に電導度が依存していることはわかったのですが、それならなぜ
水酸化ナトリウム水溶液で電気を通すことができたのかが、今いちよくわかりませんでし
た。H2O 中の H が電離した(水酸化ナトリウムによって促進される?)ため電球テス
ターが明るくなったのだろうか。そこら辺をもう少し説明していただけたらと思いました。
今回も楽しませていただき、ありがとうございました。生活の中で「これはそういうも
の」と理由も考えずに受け入れてしまっていることがたくさんありますが、先進科学塾で
はなぜその現象がおこるのか等々今まで気付かなかったことに目を開かせてくれる内容が
必ず盛り込まれていて大変興味をひかれます。
またpHについて、pH7が中性というぐらいの知識しかなかったのですが、基礎から
わかりやすく教えてくださり、化学への理解が深まっただけでなく、初めてpHにふれた
気がしました。ありがとうございました。
A酸がHイオン、塩基がOHイオンであることも知らなかったので、とても勉強になりま
した。きれいな色になる反応がとてもよかったです。
B溶液の希釈のやり方に感動しました。あ〜、そういうやり方があるんだなっと。
中和滴定の実験、1滴で色が変化するのはおどろきました。
過酸化水素水が手についてしまいましたが・・・良い経験になりました。ありがとうご
ざいました。
C実験1[a]:酸溶液ならすべて同じ色になるという思いを、硫酸が見事に裏切ってく
れて、新しい発見が議論にもなり、とてもいい経験でした。分子間脱水で二量体になって、
水で希釈すると加水分解するのでしょうか。
演示1:生徒にやらせるには少し不安ですが、ごく薄い酸でもあれだけの酸味があるとは
驚きでした。
演示2:「超」発展学習になりましたが、強酸・強塩基を100倍希釈すると、弱酸と同
程度になるという所まで見れて良かったです。
実験2:pHの、2倍4倍ではなく、対数をとる説明としてとてもいい実験だと分かりま
した。
血液の緩衝作用は知っていても、過呼吸という生理現象との関係にまでいくことは、と
てもいい知識になりました。本当にありがとうございました。
D酸性雨と血液の話をもっとたくさんしてほしかった。
EpHの変化を実験するだけでなく、定義まで説明していただけたのが、とてもよかった
です。
今後の希望:指示薬による終点の違い、温度による変化、緩衝作用 等もやってみたいで
す。
Fmol濃度の説明の時、定義式(モル数/溶媒(水)1L = mol/L)を提示した方が、
多少、理解が深められたのでは?と思いました。
紫キャベツの変色を実際に行ったのは初めてだったので、良い経験になりました。
Q なぜ大学ではピペットを口で吸うのは禁止と教えられるのに、いまだに高校教育の場
では口で吸っているのでしょうか。
今後、有機系の実験を開講して欲しいです。(特に、変色が美しいような実験を・・
・。)
G「良かったこと」実験1でやった内容は、とても単純なことなのだと思うのですが、わ
- 11 -
かりやすく、楽しめました。職場が小学校なので、理科室のポスターにはってあるBTB
の色の変化を、実際に子どもたちに見せてあげたいな、と思いました。塩酸、硫酸、酢酸
の味見も、初めてでとても驚きました。少しくらいなら、なめても大丈夫なのですね。
「分かりにくかったこと」molの話が出てきたときは、やはり少し理解が難しくなって
しまった部分がありました。しかし実験の内容については、知識がない私にもよく分かり
ました。
「思ったこと」こんな楽しい理科の授業は受けたことがなく、今日1日、とても充実した
日になりました。ありがとうございました。
H実験を通して学ぶという授業の形態が良かった。また私達の疑問に思ったことを先生が
丁寧に説明して下さったり、予定外であると思うが、実験をして疑問に思ったことを解決
していくという姿勢がみられて、先生や周りの人ともうまくコミュニケーションがとれた。
そして科学について、もう少し勉強してみたいと思った。
実験だけでなくなぜその結果が起こったのかを、配布されたプリントだけでなく先生が
説明して下さったので、実験に対する理解が一層深まった。
実験3の実験をする前に、実験の手順について、もう少し説明していただけると良かっ
た。
I過呼吸にpHが関係していることを初めて知りました。化学が身近なことと関係してい
ることをもっとたくさん勉強したい(しなければならない)と思いました。
紫キャベツの色素もとてもきれいでしたが、ユニバーサル指示薬がとても美しい色で、
その色が一滴で劇的に変化するのは面白いと思いました。
水の中をイオンが移動する速度の話から、水の中でイオンがどう動いているかがイメー
ジできました。とても充実した一日を過ごせました。ありがとうございました。
J中和滴定の実験は、ハラハラしながら、飯田先生とも一緒にやれてとても楽しかった。
また手引き書の方に、実験のどこに注目したら良いかという着眼ポイントを示していた
だけたら良かったと思います。
K酸・塩基とは、そしてpHとは何か。これらのことについては分からないことが、実験
に参加してから多くなりました。
人間の体とpHの関係、雨水に含まれる酸とそれを防止する技術などに関心を持ちまし
た。
おわりに
振り返ると、今年は3つの講座プランを完成させることができた。退職して3年9ヶ月
で合計7つになった。これからは年2つのペースを守りたい。
また名古屋市科学館の先進科学塾(ASW)が、講座プランの部分的であれ、実践の場
になっていることに感謝する。そして願わくば科学が好きな高校生よ、私たちの企画に集
まれ。
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林 正幸と主万子の始めの
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