05.12.28〜29
安房科学塾
06.1.7〜8
理科教育討論合宿
林 正幸
「化学の世界」への誘い
[1]「化学の世界」へ、どのように誘(いざな)うか。それは化学の授業をどう始める
か、ということにもつながる。現役のとき私は授業の始まりに、簡単な楽しい実験と授業
のルールを投入してきた。最後の学校での実験は「水素爆弾と緑の炎」であり、前半は意
外性に驚き、後半はバーナーに慣れることも含んでいた。
学校から離れた現在、もっと自由に「化学の世界」へ誘い込んで、化学への関心を高め
それを勉強してみたいという気持にさせられないだろうか。その基本精神は授業の場合と
変わらない。非日常のいろいろな化学物質に出会い、化学反応の不思議に感嘆し、「な
ぜ」「どうして」の疑問に浸ることである。まずその体験をすること、謎解きの方は続い
てゆっくりしていけばよい。
名古屋市科学館の先進科学塾(ASW)1日コースの12月の講師を務めることになっ
たとき、私は上のような思いを実践する場にしてはどうかと考えた。幸い講座プラン「元
素と原子の発見」ができており、その中のいくつかの実験が使えるということもあり、
「元素を自分で取り出してみよう」というテーマにした。
[2]選んだのは次の7種の元素である。
金属元素 鉛、鉄、リチウム、銀
非金属元素 ヨウ素、水素、硫黄
実験が確定していたのは、鉛、鉄、水素であった。残りのうち、とくにリチウムは2ヶ月
苦労した。アルカリ金属は是非とも組み入れたいと考え、リチウムが自然発火したときは
「報われた」と感じた。
始めは、銅、炭素、塩素なども候補に上げていた。そのうち銅は「銅薄層の生成とエッ
チング」として実験ができ上がったが、時間の都合もあり割愛した。
実験の内容は次のようであり、元素(単体)の性質を調べることも含んでいる。
[a]鉛
黄色の酸化鉛(U)と木炭の粉をるつぼに入れ、強熱して針金でかき混ぜ続けると、10
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分ほどで小さい銀色の玉ができ始める。さらにかき混ぜるとそれが大きな水銀のような玉
に成長する。まさに錬金術の世界である。
冷めたら取り出して、金床の上で金づちでたたくと、ぺらぺらになる。鉛は柔らかい金
属である。
[b]鉄
酸化鉄(V)とアルミニウム粉末をよく混ぜて、濡れたろ紙に入れ、マグネシウムリボン
で点火すると火柱が上がり、やがて赤熱の混合物がろ紙を焼き破って水中に落下して海底
火山になる。これは化学のドラマである。
生成した鉄はパチンコ玉のようにまとまり、磁石に付く。
[c]リチウム
塩化リチウムをエチレンカルボナートとテトラヒドロフランの混合溶媒に溶かし、クッ
キングペーパーに浸み込ます。これをステンレス板でサンドイッチにし、乾電池で電気分
解する。
陰極のステンレス板に灰色のリチウムが広がっている。テトラヒドロフランが揮発した
ら、薬さじでこそげると、小さい赤い火が出て白煙が上がる。リチウムの自然発火である。
続いて水を滴下すると泡立ち、フェノールフタレインで赤色になる。
[d]銀
8×5cmに切ったPET板の一方の保護膜をめくり、タンニン酸水溶液に浸ける。続
いて塩化パラジウム水溶液に浸ける。これで前処理は完了。
とうふパックの中でアンモニア性硝酸銀水溶液と、ブドウ糖を水酸化ナトリウム水溶液
に溶かしたものを混ぜて銀液をつくり、PET板を浸け、パックをゆっくり傾けて銀液を
流し続ける。取り出して水洗いし、残った保護膜をめくると、ピカピカの鏡が現れて感動
する。
銀箔の付いた保護膜と、PETシートに貼った金箔をそれぞれシャーレに入れ、別の部
分に塩酸と硝酸をかける。銀箔は硝酸には溶ける。金箔は両者を混ぜると溶ける。しかし
PETシートやガラスのシャーレは平気である。
[e]ヨウ素
ビーカーの中でヨウ化カリウムと過マンガン酸カリウムを混ぜ、濃硫酸を加えて水の入
った三角フラスコを被せ、小さな炎で加熱すると、ビーカーの下半分が気体のヨウ素で赤
紫色になる。ビーカーを水で冷やしてフラスコを外すと、上半分に昇華したヨウ素の黒紫
色の結晶が観察できる。
それを蒸発皿に取り出し、一部をヨウ化カリウム水溶液に入れると、溶けて赤褐色にな
る。かたくり粉でデンプン水溶液をつくり、できたヨウ素液を1滴加えると、青色になる。
またヨウ素液に亜鉛粉末を加えて振ると、ヨウ素の色が消える。それとは別に蒸発皿のヨ
ウ素に亜鉛粉末をかけ、水を垂らすと赤紫色の気体が発生する。
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三角フラスコの底のヨウ素と、ビーカーに残ったヨウ素、過マンガン酸カリウムなどは、
チオ硫酸ナトリウム水溶液で処理する。
[f]水素
亜鉛片に希硫酸を加えて水素を発生させ、ポリ袋に捕集する。そしてシャボン玉をつく
り、上昇していくのを追いかけてチャッカマンで点火する。これは子どもに戻って楽しめ
る。
水素が発生している間に次の2つの実験を紹介する。
@ポリチューブでつくった簡易ユージオメーターに、簡易ボンベから酸素と水素を体積で
1:2に注入し、混合してから点火すると、水が上昇して気体の体積はゼロになる。
A水が入ったアルミ皿の中に立てたスタンドに黒色の粉末を乗せ、バーナーで赤熱する。
これに水素が入った集気びんを被せると、粉末が真っ赤に焼け、やがて水が上昇して水没
する。びんを外すと褐色の固体ができており、電気を通す。黒色の粉末は酸化銅(U)だっ
たのだ。
[g]硫黄
硫化ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムを水に溶かし、これを滴々と塩酸に加えると黄
白色に濁る。煮沸、熟成してろ過すると、黄色の硫黄が得られる。
これを燃焼さじに採り、BTBを加えた水が入った集気びんの中で燃焼させ、振り混ぜ
ると水が緑色から黄色になる。
[3]実験の意味を考えるための解説(「知識と理論」)も作成した。一応は酸化と還元
を理論の軸にしたが、主眼はテキストの次の引用に係わる基礎的な知識とした。
<引用>
元素(単体)を自分で取り出す実験を通して、物質を見る目を養ってほしい。物質は実
に多様である。また化学反応を扱う技を体得してほしい。化学反応は一筋縄ではいかない。
そして素朴な疑問を膨らませてほしい。これは化学を勉強していく基礎力になる。
<以上>
この引用は「化学の世界」に誘う内容を示している。
時間がありこの勉強もできればさらに充実したに違いない。生まれた疑問を出し合って
話し合えたら、もっと深まったに違いない。しかし実質5時間という企画では無理であり、
実験中心を選ぶことになった。
[4]12月10日の講座には、高校生から熟年までそして各層の15名が参加し、2人
1グループで実験した。銀鏡は各自が取り組み「おみやげ」ができた。ドラフトを使う鉛
と硫黄は4人1グループとした。
私の他に6名のスタッフの支えもあり、参加者は「化学の世界」を十分に楽しむことが
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でき、次回につながったと思う。
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林 正幸と主万子の始めの
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