先進科学塾1日コース

    Advancing Science Workshop

  「科学(理科)をわくわくしながら勉強する」にはどうしたらよいだろうか。
  先進科学塾はそれに答えようとする企画です。

目に見えない気体を科学する

 状態方程式というと「計算問題に悩まされた」という人も多いでしょう。この講座では
その方程式をすべて実験に基づいてつくり上げます。それも教科書などと違って、圧力に
注目します。体積、温度、質量、気体の種類が、圧力にどのように影響するかを調べます。
 また気体分子の飛行速度についても考えます。その違いによってどんな現象が引き起こ
されるのでしょうか。

        

  日 時   7月13/19日(日/土) 10時〜4時

  場 所   名古屋市科学館の8階科学実験室


   氏名:

                  - 1 -

                             08.7.13/19
                                講師:林 正幸

目に見えない気体を科学する

          自己紹介
 36年間、高校の化学の教師を勤め、03年3月に退職しました。そして自由になって
ますます「理想の化学教育」を追求できると燃えています。
 ホームページは96年から開設しています。
    http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/
そして高校生などからメールで質問を受けています。
    masasuma@water.sannet.ne.jp

実験の取り組み方
(1)危険防止のため安全めがねをかける。
(2)積極的に取り組み、協力し合う。
(3)文章を読んで予め操作を頭に描き、分からないときは先生に確かめる。
(4)よく観察し、その意味を考察し、できるだけ疑問を見つける。
(5)「」記号がある操作はドラフトで行う。
(6)実験中に気分が悪くなったらすぐに申し出る。
(7)廃棄物に配慮し、器具を洗浄し、机上を雑巾で拭く。

        目 次
    実 験
      
実験1 メタノール風船
      演示実験1 「水素爆弾」
      実験2 パスカルの原理
      演示実験2 空き缶つぶしと風船割り
      実験3 気体の圧力と体積の関係
      実験4 気体の圧力と温度の関係
      実験5 気体の圧力と質量の関係
      実験6 異なる種類の気体の比例定数
      実験7 アンモニアと塩化水素の拡散
      演示実験3 水素が水を吸い上げる?
    知識と理論
      1.気体状態と圧力
      2.気体の圧力に影響するもの
        [a]体積の影響
        [b]温度の影響
        [c]物質量の影響
        [d]気体の種類の影響は?
      3.状態方程式の利用
      4.分子の平均飛行速度

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実 験

実験1 メタノール風船
(1)ポリ袋にメタノール10mLを入れ、空気を追い出し、口を絞って指で押さえる。
(2)バットに90℃以上の熱湯を1/3ほど入れる。
(3)すぐにポリ袋を熱湯に浸け、全体を暖める。
参考:破裂しそうになったら、一度湯から出す。
(4)終わったら、メタノールをこぼさないようにポリ袋を返す。

<準備>
・ポリ袋 23×34cm

                  - 2 -


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演示実験1 「水素爆弾」
(1)アルミ缶と台を紹介する。
参考:風の影響を受けるので、窓は閉めた方がよい。
(2)アルミ缶の穴を指で塞ぎ、水上置換で簡易ボンベから水素を目一杯に捕集し、底の
くぼみにたまった水を吹き飛ばしてから缶を静かに台に載せる。
(3)指を離し、穴をふさいでいる水の膜をろ紙で吸い取り、穴から出る水素に点火し、
その小さな炎でろ紙に点火して燃焼していることを確認し、静かに待つ。
(4)どのように説明できるか、考えてみる。

<準備>
・アルミ缶
 350mL缶の上面を切り取り、底にくぎで穴を開ける。
・台
 板に、缶を載せたときすき間ができるように、2本のマッチを固定する。

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実験2 パスカルの原理
(1)50mL注射器に水を半分ほど入れ、チューブで1mL注射器とつなぐ。
(2)両方のピストンを押し合って、釣り合うときの力を比べてみる。
(3)水の代わりに空気を入れて、体積が半分くらいになるように圧縮した状態で、同じ
ように調べてみる。
<準備>
・チューブ 耐寒透明チューブ(内径3mm) 2cm

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演示実験2 空き缶つぶしと風船割り
(a)空き缶つぶし
(1)350mLアルミ缶に水約10mLを入れ、バーナーで加熱して水蒸気を充満させ
る。
(2)500mLビーカーに水を9分目まで入れておき、缶をトングで挟んで、水がこぼ
れないように素早く上面を水面に浸ける。
(b)風船割り
(1)風船を膨らませ、ふたに画びょうを固定した「真空漬け物器」に入れる。
(2)ポンプで空気を抜いていく。
(3)どちらも、どのように説明できるか、考えてみる。

                  - 3 -

<準備>
・真空漬け物器

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テキストの関連部分へ
実験3 気体の圧力と体積の関係
 温度と気体の量を一定にして、気体の圧力と体積の関係を計測する。
(1)「デジタル圧力計」は、0〜200kPaに調節されている。
参考:大気の圧力はすこし変動するが、この講座では常に100kPaとする。
注意:圧力計のつまみやスイッチには触れない(以下同じ)。
(2)注射器を圧力センサーのチューブにしっかりと差し込み、ビニールテープをすこし
めくり穴が開いた状態で空気を40mL入れ、穴を塞ぐ。
(3)この時点での圧力はもちろん100kPaである(圧力計がそのように調整してあ
る)。テープの上から穴を押さえ、ピストンを押して空気の体積を30mL、20mLに
し、そのときの圧力を計測する。
参考:気体は圧縮したり膨張させたりすると温度が上がり下がりするので、10sほど待
   って計測する。ちなみに手のひらで注射器を温めないように注意しよう。
注意:圧力センサーは、レンジを大きく外れる圧力を掛けると破壊される(以下同じ)。
(4)穴を開け、空気を20mLにして穴を塞ぐ。
(5)ピストンを引いて空気の体積を30mL、40mL、50mLにし、そのときの圧
力を計測する。
(7)(3)のデータと(5)のデータには、どんな関係があるか考えてみる。
<記録>
(3)のデータ     体積[mL]    圧力[kPa]
    40        100
    30
    20
(5)のデータ
    体積[mL]    圧力[kPa]
    20        100
    30
    40
    50

<準備>
・デジタル圧力計

                  - 4 -

 私のホームページの「電源・デジタル表示装置の製作」を参照
    http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/masa/ne69.htm
 この実験では±1kgf/cm2(ゲージ圧)のセンサー(フジクラ製)に、2cmの耐
寒透明チューブ(内径3mm)をはめ、スズめっき線(φ0.5mm)で締めて(めっき線
がチューブ表面に揃うくらいに)使う。
・注射器
  50mL注射器の針穴の横に小さい穴を開け、1cm角のビニールテープで塞ぐ。

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テキストの関連部分へ
実験4 気体の圧力と温度の関係
 体積と気体の量を一定にして、気体の圧力と温度の関係を計測する。
(1)デジタル圧力計は、50.0〜100.0kPaに調節して使用する(0.2刻み)。
(2)500mLビーカーに、おもりを付け空気が抜けるように軽くゴムせんをした
250mL試薬びんを入れ、水をあと数mmまで注ぎ、温度計を差し入れてバーナーで加
熱する。
参考:ゴムせんは水蒸気がびんの中に入らないためである。
(3)水の温度が90℃を越えたらバーナーを消し、ビーカーを机上に下ろし、圧力セン
サーの付いた「ゴムせん」を、できる範囲で強く締める。
注意:ゴムせんはシールテープの向きから、右に回して締める(外すときも同じ)。
   試薬びんの口に水を付けない。
(4)続いて試薬びんを取り出し、雑巾で押さえて「ゴムせん」をさらに強く締め、湯に
もどす。
注意:ゴムせんをしっかり締めないと、空気が中に漏れて正確なデータが得られない。
(5)85℃から35℃まで10℃刻みで、圧力を計測する。
 試薬びんをしばしば上下して温度が均一になるようにする。85℃が終わったら、5
mLピペットで湯を捨て水を加えて温度を下げる(2つの300mLビーカーを利用す
る)。ただし計測温度の2℃手前からは、自然冷却して(びんの上げ下げも)温度が均一
になるようにする。なお下げ過ぎたときは、それから2℃下の温度(記録する)で計測す
ればよい。
(6)最後に1Lビーカーに入った氷水にびんの肩上まで浸けてしばらく置き、温度と圧
力を計測する。
(7)得られたデータをグラフに描き、かつその直線を延長して圧力が0になる温度を求
める。
<記録>
    温度[℃]      圧力[kPa]
    85(  )

                  - 5 -

    75(  )
    65(  )
    55(  )
    45(  )
    35(  )
    氷水(  )

<準備>
・「チューブ付きゴムせん」
 5号ゴムせんに7cmの耐寒透明チューブ(外径6mm)を通し(ドリルはφ7mm)、
ガラス用接着剤(スコット3M)で気密にしたもの。
 シールテープ30cmをゴムせんの下半分に、右に回して締まるように巻いておく。
・圧力センサーは±0.5kgf/cm2 を使う。7cmの「チューブ」の内体積0.5mL
を考慮して調整しておく。
・おもり
 シャックル(12MM 190g)
・250mL試薬びん
 首にシャックルがはまる小さ目のもの。口に少しワセリンを塗る。
・グラフ用紙

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テキストの関連部分へ
実験5 気体の圧力と質量の関係
 体積と温度を一定にして、気体の圧力と質量の関係を計測する。
(1)デジタル圧力計は、実験3と同じ0〜200kPaに調節して使う。
 圧力センサーを「簡易ボンベ」に付ける。
(2)「注入ポンプ」で空気を200kPa付近になるまで「簡易ボンベ」に注入し、正
確な圧力を読みとる。空気の出入りは頭のボタンを押したときのみ可能になるので、2人
で協力して取り組む(以下同じ)。
参考:圧縮による温度上昇があるので、1分ほど待って目盛りを読む。
(3)センサーのコネクターを圧力計から外し、「簡易ボンベ」に巻き付けて輪ゴムで留
め、全体の質量を計測する。
注意:ボンベは指先で触れ、温度が上がらないようにする。
参考:実際に計測しているのは簡易ボンベの質量ではなく、それから簡易ボンベの浮力に
   対応する質量を差し引いた数値である。しかし実験を通して浮力は一定であるので
   「簡易ボンベの質量」という表現を使うことにする。
(4)コネクターをつないで、ゆっくりと160kPaになるまで空気を抜く。そして再

                  - 6 -

び外して質量を計測する。なお160kPaを過ぎた場合は、その圧力(記録する)の下
で計測すればよい(以下同じ)。
参考:「ゆっくり」とは、膨張による温度低下を防ぐためである。
(5)同じことを、120,100,80,40kPaに対して行う。なお後の2つは
「吸引ポンプ」で空気を抜き取る必要がある。
(6)得られたデータをグラフに描け。またその直線を延長して圧力が0になる質量を求
め、それから各圧力の下で「簡易ボンベ」に入っていた空気の質量を計算せよ。
<記録>
  ボンベ全体の質量[g]   圧力[kPa]   空気の質量[g](計算値)
               充填時(    )
               160(    )
               120(    )
               100(    )
                80(    )
                40(    )

<準備>
・「簡易ボンベ」
 市販の簡易ボンベ(約580mL 空になったもの)の側面下方に直径7mmの穴を開
け、10cmの耐寒透明チューブを2cmほど差し入れ、瞬間接着剤(DCM Japan
製)で固定する(チューブは銅線を巻き、それをボンベに固定する)。ノズルキャップに
は7cmの耐寒透明チューブを付ける。そして輪ゴムをセロテープで貼り付ける。
・「注入ポンプ」
 50mL注射器の針穴の横に小さい穴を開け、内側から数mm角のビニールテープを被
せたもの。
・「吸引ポンプ」
 実験3,4で使った注射器そのもの(ビニールテープを数mm角に換える)。
・グラフ用紙

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テキストの関連部分へ
実験6 異なる種類の気体の比例定数
 1kPa(大気の圧力)の下で室温において、同体積を占める3種の気体の質量を計測
する。
(1)室温を確認する。
    室温 (  )℃ =(   )K
(2)「注射器」のピストンをビスで固定したときの体積を読み取る。

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注意:ビスの穴に遊びがあるので、ピストンを押した状態で測る。
    体積 (    )mL =(      )L
(3)「注射器」の針穴にゴムせんをしっかり締め、リングをスタンドの「はさみ」にひ
っかけシリンダーを(赤線が目盛りの側に向くように)引いて内部を真空にし、ビスを差
し込んで固定し、化学天びんで全体の質量を測る。
    真空の場合    (      )g
参考:実験5(3)の「参考」と同じように、「注射器の質量」という表現を使うことに
   する。
(4)注射器を元に戻し、簡易ボンベの酸素を注射器に詰め、ビスを差し込み、ピストン
を押してゴムせんを締め、全体の質量を測る。
    酸素の場合    (      )g
(5)同様に二酸化炭素を詰めて、全体の質量を測る。
    二酸化炭素の場合 (      )g
(6)最後に空気を入れて、全体の質量を測る。
    空気の場合 (      )g
(7)酸素、二酸化炭素、空気の質量を求め、分子量(空気は平均分子量)を使って、物
質量を計算せよ。
参考:本文2節[c]の関係式(3)を利用する。
    n = w/M      (3)
  酸素    (     )g =(       )mol(分子量:32.0)
  二酸化炭素 (     )g =(       )mol(分子量:44.0)
  空気    (     )g =(       )mol(平均分子量:28.9)
(8)それぞれの気体について、本文2節[d]の関係式(5)の比例定数の値を計算す
る。
    k = PV/nT      (5')
  酸素    k =(    )[kPa・L/mol・K]
  二酸化炭素 k =(    )
  空気    k =(    )

<準備>
・「注射器」
 50mL注射器に、50mmのビス(φ3)を使って約50mLで固定できるようにシ
リンダーとピストンを貫通する穴を開け、またカードリング(φ40mm)を通せるよう
にピストンの後部に穴を開ける。そして針穴を塞ぐための2号ゴムせんに途中まで穴を開
ける。ドリルはすべて4mmを使う。リングを通してから、その継ぎ目にセロテープを巻

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く。
・化学天びん
  注射器を計量するための風よけ円筒を工作用紙でつくる。
・簡易ボンベ
  耐寒透明チューブを付けておく。

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実験7 アンモニアと塩化水素の拡散
(1)ゴムせんに固定した脱脂綿に濃アンモニア水5滴を浸み込ませて、スクリューび
んに締める。同様にもうひとつには濃塩酸を浸み込ます。
(2)ゴムせんを外し、すぐに2つ同時にアクリル管に締め直す。
注意:どちらがアンモニア水、塩酸か、確認する。
(3)2,3分して白煙が生成し始める位置とその様子を観察する。
(4)ゴムせんを外したら、脱脂綿はすぐに水で洗う。
(5)どのように説明できるか、考えてみる。

<準備>
・アクリル管
  内径18mm 50cm
  板に固定して転がらないようにする。
・脱脂綿
  カット綿を1cm四角に切り、銅線で固定して4号ゴムせんに差し込む。
  濃アンモニア水と濃塩酸は、互いに離れた場所で浸み込ます。

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演示実験3 水素が水を吸い上げる?(杉山 正明さん)
(1)素焼き容器と、その口にはまるゴムせん(短いガラス管を通し、透明の塩化ビニー
ルチューブ(数mの長さ)を取り付けたもの)を準備する。
(2)チューブのもう一方の端を、水(アンモニア水少量とフェノールフタレイン溶液数
滴加えておくと見やすい)の入った0.5Lビーカーの水につけ、チューブの中央あたりを
2mくらいの高さに持ち上げておく。
(3)素焼き容器内に水素ガスを吹き込み、すみやかにゴムせんをする。
(4)どのように説明できるか、考えてみる。




                  - 9 -

知識と理論

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1.気体状態と圧力

[a]気体状態
[1]実験1では、ポリ袋に少量の液体のメタノールを入れ、口を絞って手で押さえ、
90℃以上の湯に浸けると、ポリ袋が大きく膨らんでパンパンになった。
 ポリ袋の中は気体のメタノールである。気体ではその体積が、液体に比べて格段に大き
くなるが、分子自身が膨らんだわけではない。液体では分子はほぼ接触して乱雑に集合し
ている。それが気体になると、分子は広い空間にばらばらと存在し、分子と分子の間は真
空である。
[2]演示実験1では、上面を切り取り底に穴を開けたアルミ缶に水上置換で水素を詰め、
静かにマッチ棒にまたがせ、穴から出る水素に点火すると、しばらく時間をおいて爆発が
起こって缶が飛び上がった。
 缶の中の水素は重い空気によって押し上げられて穴から噴出する。もしそれだけなら爆
発は起きない。軽い水素が上にあり重い空気が下にあっても、気体は互いにしだいに混合
していく。水素の中では次第に酸素の濃度が上がっていく。穴の付近でその濃度が限界を
越えると火が中に入り、下ほど酸素の濃度は高いので一気に燃焼して爆発が起こる。
 気体状態では分子は自由に飛行しているので、かき混ぜなくても分子は互いに入り交じ
っていく。つまり気体が軽い重いというのは、混合するまでの話である。
参考:「飛行」というのは分かりやすいために使っている。正確には「並進」運動である。

[b]圧力とは
[1]実験1でメタノール風船がパンパンに膨らんだように、容器に閉じこめられた気体
はその壁に力を及ぼす。

    

 実験2では、空気が入った大小の注射器をつないで両方のピストンを押し合うと、釣り
合わせるのに、大きい注射器の方が大きい力を必要とした。
 まさつ力を無視すれば、その力はピストンの断面積に比例している。そこで単位面積あ
たりの力を考えてそれを圧力と呼ぶ。するとこの実験は、閉じこめられた気体の圧力は壁

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のどの部分でも等しいことを示す。これはパスカルの原理と呼ばれる(液体でも成り立
つ)。ただしこの法則は高度差が重要になる場合には成り立たないことに留意しておこう
(そのことはこの講座では原則として扱わない)。
[2]標準単位では長さがメートル[m]、力がニュートン[N]であるので、圧力の標
準単位は、1[m2 ]あたり1[N]で押す場合を基準にして、それを1[Pa](パスカ
ル)とする。
    1[Pa]= 1[N/m2
気象ではその100倍のヘクトパスカル[hPa]がよく使われる。
    1[hPa]= 100[Pa]
この講座ではその1000倍のキロパスカル[kPa]を使うことにする。
    1[kPa]= 1000[Pa]
 大きな重力も気体を閉じこめることができる。こうして大気は地表や物体に圧力を及ぼ
す。海抜0mの大気の平均した圧力は1013hPa=101.3kPaである。大気の圧
力は高気圧や低気圧ですこし変動するが、この講座では簡単のために大気の圧力は常に
100kPaであるとして進めることにする。
[3]私たちは大気の底に生活しており、いつも大気が100kPaという圧力を及ぼし
ている。しかし日常生活ではそれを実感しないので、そのことを忘れがちである。
 実験2において指でピストンを押して釣り合っているとする(まさつ力は無視する)。
このときにどちらのピストンも内部の空気に、指の力と外部の大気の圧力の両方を及ぼし
ている。このうち大気の圧力は打ち消し合うので、指による力ないし圧力について実験す
ることができるのである。
 演示実験2(a)では、100℃の水蒸気が内部に充満した空き缶を挟んで、素早くそ
の上面を水に浸けると、水が入る間もなくつぶれた。
 始めは、パスカルの原理から内部の水蒸気と外部の大気の圧力は同じである。それが水
に浸けると、水蒸気が冷やされて凝縮し気体の水分子が激減して内部の圧力が減少するの
に対して、外部は100kPaのままであるためである。ちなみに100kPaの圧力と
は、1cm2 あたりに約1kgの物体の重量(1kgf)がかかる圧力である。
 演示実験2(b)では、膨らんだ風船を「真空漬け物器」に入れて空気を抜いていくと、
しだいに大きくなり、ついに針に触れて破裂した。
 これは風船のまわりの空気を抜くと、分子数が減ることによって圧力が小さくなり、風
船内部の空気の圧力が優るようになるためである。そして風船内部の空気の圧力が、まわ
りの空気の圧力(とゴムの弾力から生まれる圧力の合計)と同じになるところまで膨らむ
(風船が膨らんで体積が増加すると、内部の空気の圧力は減少する)。ちなみに上空30
km近くまで気象観測するレーウィン・ゾンデの気球は、地上の50倍ほどの体積に膨ら
み、やがて破裂するためそれ以上の観測はできない。

                  - 11 -

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2.気体の圧力に影響するもの

[a]体積の影響
[1]実験3では、50mL注射器に室温で100kPaの空気40mLを入れ、圧力セ
ンサーにつなぎ、ピストンを動かして空気の体積を変え、その圧力を計測した。なおこの
実験では、気体の温度と量を一定に保っていることに注意しよう。次に計測例を示す。
    体積[mL]    圧力[kPa]   圧力×体積[kPa・mL]
    40        100        4000
    30        134        4020
    20        199        3980
どの体積でも、圧力×体積の値はほぼ一定である。
 次に50mL注射器に空気20mLを入れ、ピストンを動かして空気の体積を変え、そ
の圧力を計測した。次に計測例を示す。
    体積[mL]    圧力[kPa]   圧力×体積[atm・mL]
    20        100        2000
    30         65        1950
    40         48        1920
    50         38        1900
こちらもどの体積でも、圧力×体積の値はほぼ一定である。
[2]実験では空気を使ったが、圧力が体積に反比例することを示す。一般に、温度と量
が一定の気体では、その圧力 P は体積 V に反比例すると言える。つまり次の関係式が
成り立つ。
    PV = k1
または
    P = k1/V        (1)
      k1:比例定数
この圧力と体積を入れ替えると、ボイルの法則になる。

    

                  - 12 -

[3]これを前ページの注射器に閉じ込められた気体分子の振るまいとして考えてみよう。
すでに触れたように、壁に及ぼす圧力は分子が壁に衝突することによって生じる。その圧
力は、単位面積あたり単位時間あたりに衝突する分子の個数が多いほど、それに正比例し
て大きくなる。
 ピストンを押して空気が入った部分の長さを半分にして体積を1/2にしてみる。aの
ように左右に飛行している分子は、壁と壁の距離が半分になるので、単位時間あたりに衝
突する回数が2倍になり、2倍の圧力を及ぼす。bやcのように上下、左右などに飛行し
ている分子は衝突する壁の面積が半分になるので、単位面積あたりに衝突する回数が2倍
になり、2倍の圧力を及ぼす。斜めに飛行している分子までは踏み込まないが、このよう
に体積を1/2にすると圧力が2倍になり、実験から得られた法則が理論的にも納得でき
る。

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[b]温度の影響
[1]実験4では、熱湯に浸けた250mL空きびんに圧力センサーを付け、それが冷め
るに連れて、圧力とせっ氏温度の関係を計測した。最後はびんを氷水に浸けて計測した。
なおこの実験では、気体の体積と量を一定に保っていることに注意しよう。
 次に計測例を示す。
    温度[℃]     圧力[kPa]
    85°        98.0
    75         95.2
    65         92.6
    55         89.8
    45         87.2
    35         84.8
     4         75.6
 これをグラフに描くと、次ページの図のように圧力とせっ氏温度の関係は直線になるこ
とが分かる。
この直線を延長して圧力がゼロになる温度を求めると、−273℃になる。幸いこの数値
は正確で、文献値と一致している。
備考:実際にはこの温度は、データから最小自乗法で直線の式を求め、
     P = 0.2740t+74.8
   それから計算した。



                  - 13 -


    

[2]圧力がゼロより小さいことは考えにくいので、−273℃はこの世の最低温度とい
うことになる。それならこの温度をゼロとする、そして目盛りの幅はせっ氏温度 t と同
じとする温度を、絶対温度 T として導入しよう。
    T = t+273
絶対温度の単位はケルビン[K]である。0[℃]は273[K]に、100[℃]は
373[K]になる。
 絶対温度を使えば実験は、圧力が絶対温度に正比例することを示す。一般に、体積と量
が一定の気体では、その圧力は絶対温度に正比例すると言える。つまり次の関係式が成り
立つ。
    P = k2T        (2)
      k2:比例定数
[3]これも容器の中を飛行する気体分子のモデルで考えてみよう。温度が高くなると、
分子の熱運動が激しくなる。つまり平均飛行速度が大きくなる。とすれば、1回の衝突で
壁に与える衝撃力は大きくなり、かつ短い時間で再び壁に衝突する。したがって温度が高
くなると圧力が大きくなるはずである(残念ながら、絶対温度に正比例することまでは引
き出せない)。
 これについては後でさらに深めたい。

目次へ
[c]物質量の影響

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[1]これまで気体の「量」とあいまいに扱ってきたが、ここで気体の量についてはっき
りとさせておこう。まず実験5では、量とは気体の質量のことである。そして分子量が分
かれば、それは物質量に換算できる(くわしくは実験の後で説明する)。
 実験5では、簡易ボンベに空気を注入し、その空気を放出しながら、圧力とボンベ全体
の質量の関係を計測した。100kPaより小さい領域では、空気を抜き取って計測した。
なおこの実験では、気体の体積と温度を一定に保っていることに注意しよう。
 次に計測例を示す。
  ボンベ全体の質量[g]   圧力[kPa]   空気の質量[g](計算値)
    147.599       202        1.428
    147.306       160        1.135
    147.010       120        0.839
    146.878       100        0.707
    146.739        80        0.568
    146.455        40        0.284
  (浮力の問題については、実験5(3)の「参考」に注意せよ。)
これをグラフに描くと、次のように圧力とボンベ全体の質量の関係は直線になることが分
かる。

    

 この直線を延長して圧力がゼロになる質量を求めると、146.171gになる。これは
空気が入っていない真空のボンベの質量である。これからそれぞれの場合の空気の質量を

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計算できる。たとえば100kPaの場合の質量は
    146.878−146.171 = 0.707[g]
である。
 改めて圧力と空気の質量の関係をグラフに描けば、両者が正比例していることが確認で
きる。
[2]実験は、圧力が空気の質量に正比例することを示す。
 さてある物質の分子量を M とする(そのモル質量をM[g/mol])と、物質量
n[mol]と質量 w[g]の関係は次のようである。
    n = w/M = (1/M)w      (3)
たとえば空気の平均分子量は28.9であるので、上の0.707gは
    n = 0.707/28.9 = 0.0245[mol]
である。このように物質量は質量と正比例する。したがって物質量という用語を使えば実
験は、圧力は物質量に正比例することを示す。一般に、体積と温度が一定の気体では、そ
の圧力は物質量に正比例すると言える。つまり次の関係式が成り立つ。
    P = k3n        (4)
      k3:比例定数
 ここでさらに確認しておこう。気体の物質量が等しいとは、分子数が等しいことである。
したがって、圧力は分子数に正比例すると言える。
参考:1[mol]= 6.02×1023[個]
[3]これもモデルで考えてみよう。容器内の分子数を2倍する。それなら圧力が2倍になるのは当然である。

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[d]気体の種類の影響は?
[1]ここまでの空気を使った実験を整理すると、気体の圧力は、体積に反比例し、絶対
温度に正比例し、物質量に正比例することが分かった。つまり関係式(1)(2)(4)
をまとめて
    P = k(nT/V)        (5)
      k:比例定数
と書ける。
参考:このようにまとめられるのは、状態量ないし保存量と呼ばれる量に限られる。
それならこの比例定数は気体の種類によってどのようになるだろうか。
[2]実験6では、約50mLでピストンを固定できる注射器を使って、中を真空にした
場合、酸素を詰めた場合、二酸化炭素を詰めた場合、空気を詰めた場合の質量を計測した。
またピストンを固定したときの正確な体積を読み取り、室温を計測した(大気の圧力は
100kPaとした)。つまり同温・同圧の下で、同体積を占める3種の気体の質量を求

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めた。質量は物質量に換算した。
 次に計測例を示す。
    気体の種類   質量[g]      物質量[mol]
    酸素      0.064       0.00200
    二酸化炭素   0.087       0.00198
    空気      0.057       0.00197
    体積 0.0495L  室温 283K  (圧力 100kPa)
 このデータから、3種の気体について比例定数 k を求めると
     k=PV/nT
  酸素 100[kPa]×0.0495[L]/(0.00200[mol]×283[K])
        = 8.75[kPa・L/mol・K]
  二酸化炭素  8.83
  空気     8.88
となる。つまり実験は、空気のような混合気体を含めて、気体の種類によらず、比例定数
は一定であることを示す。ふり返ると、これは3種の気体の物質量がほぼ同じであること
に現れていた。
[3]この比例定数は気体定数と呼ばれ、R で表される。より正確な数値は次のようであ
る(使う単位によって数値は変わってくる)。
    R = 8.31[kPa・L/mol・K]
そして関係式(5)は次のように整理され
    PV = nRT        (6)
気体の状態方程式と呼ばれる。
 どんな気体がどのような状態にあろうとも、その圧力、体積、物質量、絶対温度の数値
の間には常にこの関係式が成り立つ。したがって4つの量のうち3つを計測すれば、残り
の1つは計算で求めることができる。言い換えると、4つの量とも任意の数値をとること
はできない。気体の状態は3つの量によって決まってしまうのである。
参考:気体の物質量を指定すれば、その状態は2つの量によって決まってしまう。
 ひとつ注意する。気体定数は使う単位が変われば数値も変わる。状態方程式で計算する
場合は、比例定数の単位にそろえて数値を代入しよう。
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3.状態方程式の利用

[a]アボガドロの法則
[1]イタリアのアボガドロは、気体反応の法則を検討して次の法則を提唱した。
  「同温、同圧の下で、同体積の気体はどれも同数の分子を含む。」

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 この法則は状態方程式から簡単に導くことができる。それを次のように変形すると
    n = PV/RT
「同温、同圧の下で、同体積の気体」という条件から右辺が一定であるので、物質量が同
じであると言える。とすれば、分子数も同じである。
 したがって同温、同圧の下における、同体積の2種の気体の質量の比は、それぞれの気
体の分子量の比になる。さらに2種の気体の密度の比は、分子量の比になると言える。
[2]アボガドロの法則は次のようにも言える。
  「同温、同圧の下で、同数の分子が占める体積は同じである。」
そこで0℃、101.3kPa(大気の圧力の正確な平均値)の下における1molの気体
の体積を計算してみよう。
    V = nRT/P = 1×8.31×273/101.3 = 22.4[L]
これはよく知られている数値である。

[b]シャルルの法則
[1]フランスのシャルルは、圧力と量が一定の気体について、体積と温度の関係を研究
し、シャルルの法則を発見した(法則の形にしたのはゲー・リュサック)。それは現代の
言葉に直すと
  「圧力と物質量が一定の気体では、その体積は絶対温度に正比例する」
である。
 この法則も気体の状態方程式から導くことができる。次のように変形すると
    V/T = nR/P        (7)
「体積と量が一定の気体」という条件から右辺が一定であるので、それを比例定数 k4
すると次のように書ける。
    V = k4
この関係式はまさに法則を表している。
[2]ついでに計算の練習をしておこう。
「0℃で22.4Lの気体が膨張して20℃になった。圧力は変わらないとしてその体積は
何Lになるか。」
 気体の圧力と物質量が一定であるので、関係式(7)の右辺が一定である。つまり前と
後の2つの状態における V/T は一定であるので、後の体積を V2 とすると
    22.4/273 = V2/293
という方程式ができる。これを解くと
    V2 = 24.0[L]
となる。
 2つ以上の状態が問題になる場合は、状態方程式の中の一定の部分を右辺にまとめると

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考えやすい。

[c]分子量の測定
[1]状態方程式に関係式(3)を代入して整理すると次のようになる。
    M = wRT/PV        (8)
ある気体の質量、温度、圧力、体積を計測すれば、この関係式を使ってその気体の分子量
が求められる。分子量はその気体に固有の数値であるので、これを測定するのは、その気
体の正体を明かしていくことにつながる。
[2]実験6では、視点を変えると分子量の測定をしている。計測例のデータを関係式
(8)に代入してみよう。
  酸素   0.064×8.31×283/(101.3×0.0495)
        = 30.0
  二酸化炭素  40.8
  空気     26.8
備考:この数値はすべて数%小さめである。同じ理由から2節[d]の気体定数はすべて
   大きめである。この理由は真空にした注射器のシリンダーが外から圧縮されていく
   らか体積が小さくなっているためと思われる。
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4.分子の平均飛行速度

[1]演示実験1では、水素と空気がしだいに混合していった。これはかき混ぜたり、対
流が起こったりするためではない。このように分子の熱運動によって気体が混合すること
は拡散と呼ばれる。そして拡散速度は分子の平均飛行速度に関係する。
 実験7では、アクリル管の中において、両端で脱脂綿に浸ませた濃アンモニア水と濃塩
酸からアンモニアと塩化水素を揮発させると、両方の気体が拡散してしばらくして、アン
モニア側から遠く塩化水素側から近いところに白煙が生成した。
 これはアンモニアと塩化水素では平均飛行速度が異なり、アンモニアの方が大きいこと
を示す。
 演示実験3では、素焼き容器に水素を詰め、ゴムせんをするとそれを通した塩化ビニー
ルチューブ内を水が上昇し、しばらくすると元にもどった。
 素焼き容器には小さい穴が無数に開いており、それを通して気体分子は出入りできる。
水素分子の平均飛行速度は際だって大きいので、空気の窒素分子や酸素分子などが素焼き
容器に入るよりはるかに多くの水素分子が素焼き容器から出て、内部の圧力が大気の圧力
より低くなる。こうして水が吸い上げられる。しばらくすると素焼き容器内に窒素分子や
酸素分子などが十分に入り、圧力差はなくなり水は元にもどる。
[2]実験4では、体積と物質量が一定の気体では、その圧力は絶対温度に正比例するこ

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とを確認した。それなら同じ温度において気体の種類によって平均飛行速度が異なってい
たら、圧力に差が出てこないだろうか。
 分子が壁に衝突するときの衝撃力は、平均飛行速度だけでなく、分子の質量にも関係す
る。さらに圧力はその分子が単位時間あたりに何回壁に衝突するかにも関係する。こちら
は分子の平均飛行速度に関係する。力学に基づくより厳密な計算によると、気体の圧力は
分子の平均運動エネルギーに正比例することが導かれる。
 それなら平均運動エネルギーは絶対温度に正比例することになる。そして次の関係式の
成り立つことが分かっている。
    (1/2)mv2 = (3/2)(R/N)T
      m:分子1個の質量
      v:平均飛行速度
      R:気体定数
      N:アボガドロ定数 6.02×1023(1molの個数)
      T:絶対温度
気体定数は、SI単位系で計算する場合は
    R = 8.31[kg・(m2/s2 )/mol・K]= 8.31[J/mol・K]
である。
 両辺に N を掛けると、mN は1molの質量であり、分子量 M に[g]を付けた質
量となるが、SI単位系のkgに合わせると
    mN = (M/1000)
であるので
    (1/2)(M/1000)v2 = (3/2)RT
したがって平均飛行速度は
    v = √{3000RT/M}
となる。
[3]実際に分子量を使って、15℃における平均飛行速度を計算してみよう。
  水素 √{3000×8.31×288/2}
       = 1895[m/s]
  アンモニア  650
  窒素     506
  酸素     474
  塩化水素   444
  二酸化炭素  404
かなり大きな数値である。ちなみに新幹線の時速280km/hは秒速に直すと78m/s
に過ぎない。

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参考:ここで「平均」とは、正確には「2乗平均の平方根」のことである。
 それにしては実験7では、アンモニアや塩化水素の拡散速度が遅すぎないだろうか。い
やいや、管の中では無数の分子が乱雑に飛行していることを想起しよう。分子は衝突して
絶えずその進行方向を変えており、ある方向に10cm進むのも容易でないわけである。
 ちなみに分子量によって拡散速度が異なることは、原子力発電の核燃料を生産する工程
において、ウラン235をウラン237から分離するために利用される(これは「ウラン
の濃縮」と呼ばれる)。
[4]気体中を伝わる音の速さは、その分子の平均飛行速度に関係がありそうである。物
理学が教えるところによると次の関係が成り立つ。
    c = √(γ/3)×v
      c:音速
      γ:定圧比熱と定積比熱の比
      v:平均飛行速度
比熱比 γ は、2原子分子や3原子分子では1.3〜1.4とほぼ一定であるので、音速と
平均飛行速度の関係は正比例に近い。
 次に温度が0℃における音速の実測値(理科年表)を上げておく。
    水素      1270[m/s]
    アンモニア    415
    窒素       337
    空気       331.5
    酸素       317
    二酸化炭素    258
このように気体の音速は、平均飛行速度がうかがえるひとつの数値である。
[5]最近、林 煕崇さんによって、気体の平均飛行速度を計測するアイデアが提案され
た。これについては、いつか実験を紹介したい。










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