先進科学塾1日コース
Advancing Science Workshop
「科学(理科)をわくわくしながら勉強する」にはどうしたらよいだろうか。
先進科学塾はそれに答えようとする企画です。
生命活動を担うタンパク質の化学
生命には神秘さが伴います。しかし化学の目でみると、生命体は物質からできており、
生命活動は数1000の化学反応です。そしてその中心的存在がタンパク質なのです。
タンパク質の在りかを探り、グリシンというアミノ酸と卵白アルブミンというタンパク
質の性質を調べ、模型も観察しながらその複雑で繊細な姿に迫っていきます。
生化学反応を制御しているのはタンパク質でできた酵素です。ホタルのルシフェラーゼ、
消化剤ジアスターゼ、にんじんのカタラーゼを使って、そのはたらきを調べていきます。

日 時 12月22/23日(土/日) 10時〜4時
場 所 名古屋市科学館の8階科学実験室
氏名:
- 1 -
07.12.22/23
講師:林 正幸
生命活動を担うタンパク質の化学
自己紹介
36年間、高校の化学の教師を勤め、03年3月に退職しました。そして自由になって
ますます「理想の化学教育」を追求できると燃えています。
ホームページは96年から開設しています。
http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/
そして高校生などからメールで質問を受けています。
masasuma@water.sannet.ne.jp
実験の取り組み方
(1)危険防止のため安全めがねをかける。
(2)積極的に取り組み、協力し合う。
(3)文章を読んで予め操作を頭に描き、分からないときは先生に確かめる。
(4)よく観察し、その意味を考察し、できるだけ疑問を見つける。
(5)「D」記号がある操作はドラフトで行う(今回はない)。
(6)実験中に気分が悪くなったらすぐに申し出る。
(7)廃棄物に配慮し、器具を洗浄し、机上を雑巾で拭く。
目 次
実 験
実験1 タンパク質の検出とアミノ酸の両性
実験2 タンパク質の性質
実験3 ホタルの酵素ルシフェラーゼ
実験4 ジアスターゼによるデンプンの消化
実験5 酵素反応の速度
発展実習 タンパク質の2次構造モデル
知識と理論
1.アミノ酸
2.タンパク質
3.酵 素
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実 験
実験1 タンパク質の検出とアミノ酸の両性
[a]タンパク質の検出
(1)5本の試験管にそれぞれ0.5%ニンヒドリン水溶液5mLを入れる。
(2)これに次のものを小さじ1杯ほど加え、3分ほど加熱して変色を調べる。加熱は沸
とうしたら中断し、また加熱することをくり返す。
(ア)豚肉 (イ)大根おろし (ウ)わかめ
(エ)白砂糖 (オ)味の素
(3)豚肉の試験管のみ洗剤で洗浄する。
[b]アミノ酸の両性
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(1)50mLビーカーに水約40mLを入れ、pHメーターで計ってpHが3付近にな
るように、1mol/L塩酸2,3滴を加える。
(2)これにグリシン小さじ1杯を加え、ガラス棒でかき混ぜ、pHを計測する。さらに
小さじ1杯を加えてpHを計測する。
(3)ビーカーを洗い、水約40mLを入れ、pHが11付近になるように、1mol/L
水酸化ナトリウム水溶液2,3滴を加える。
(4)これにグリシン小さじ1杯を加え、ガラス棒でかき混ぜ、pHを計測する。さらに
小さじ1杯を加えてpHを計測する。
<メモ>
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実験2 タンパク質の性質
5本の試験管にそれぞれ卵白水溶液5mL入れて、以下の実験をする。
[a]ビウレット反応
6mol/L水酸化ナトリウム水溶液1mLを加えて振り混ぜ、さらに2%硫酸銅水溶液
0.5mLを加えて振り混ぜ、その様子を観察する。
[b]アミン性窒素の検出
水酸化ナトリウム2粒をピンセットで加え、水で湿らせたユニバーサル試験紙(5
cm)を折って試験管の口に掛け、試験管ばさみで持ってしばらく煮沸してその様子を観
察する。
[c]硫黄の検出
2%酢酸鉛水溶液8滴を加えて振り混ぜ、さらに6mol/L水酸化ナトリウム水溶液1
mLを加えて振り混ぜ、1分ほど加熱して、その様子を観察する。
[d]キサントプロテイン反応
まず濃硝酸1mLを加えて振り混ぜ、これを沸とうするまで加熱し、さらに6mol/L
水酸化ナトリウム水溶液4mLを加えて振り混ぜ、その様子を観察する。
[e]エタノールによる変性
エタノール4mLを加えて振り混ぜ、その様子を観察する。
<準備>
・卵白水溶液
鶏卵1個の卵白のみを500mLビーカーに入れ、水約300mLを加えてかき混ぜる。
これに塩化ナトリウム2gを加えてよくかき混ぜ、しばらく放置すると透明な水溶液にな
- 3 -
る。
<メモ>
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実験3 ホタルの酵素ルシフェラーゼ
A液はホタルが持つルシフェラーゼという酵素を含む。B液はルシフェリンという基質
を含む。両者を混合すると、発光反応が起こる。
[a]pHの影響
(1)2本のスクリュー管を準備し、それぞれにA液4mLずつを入れる。続いてB液4
mLずつを加えてせんを締め、2つの「観察箱」にそれぞれ入れて顔に押し当てる。同じ
ように発光していることを確認する。
(2)一方を対照サンプルとする。他方を取り出して、0.1mol/L塩酸5滴を加えて
振り混ぜ、発光を比較して調べる。
(3)0.1mol/L水酸化ナトリウム5滴を加え(中和)、発光を調べる。
(4)さらに同じ溶液15滴を加え、発光を調べる。
(5)上の塩酸15滴を加え(中和)、発光を調べる。
(6)次に、1mol/L塩酸1mLを加え、発光を調べる。
(7)1mol/L水酸化ナトリウム1mLを加え(中和)、発光を調べる。
[b]温度の影響
(1)新しい2本のスクリュー管を準備し、それぞれにA液4mLとB液4mLを加え、
発光を確認する。
(2)一方を取り出し、氷水に1分浸け、濡れをキッチンタオルで拭き取って観察箱に入
れ、発光を比較して調べる。
(3)38℃の湯に1分間浸け、発光を調べる。
(4)56℃の湯に1分間浸け、発光を調べる。
(5)すこし氷水で冷やしてから38℃の湯に1分間浸け、発光を調べる。
(6)次に、70℃の湯に1分間浸け、発光を調べる。
(7)すこし氷水で冷やしてから38℃の湯に1分間浸け、発光を調べる。
(8)この反応溶液を新しいスクリュー管とで2分し、一方にはA液4mLを、他方には
B液4mLを加え、両者の発光を調べる。
<準備>
・ホタライト
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キッコーマン製。AとBそれぞれに水約50mLを加える。
・「観察箱」
工作用紙で底が3×6cm、高さが14cm(この長さは明視の距離ではないが、1
枚から4個作れるように)の箱をつくる。ビニールテープの色を変えた2つを1セッ
トにする。
・0.1mol/Lの塩酸と水酸化ナトリウム
どちらも滴下が容易なプチボトル(ナカムラ製)に入れる。
・湯など
4個の300mLビーカーに、それぞれ氷水、38℃の湯、56℃の湯、70℃の湯
を準備する。やかんの熱湯で、所定の温度を維持する。
<メモ>
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実験4 ジアスターゼによるデンプンの消化
[a]糊化(こか)
(1)100mLビーカーに水約40mLを入れて加熱しておく。
(2)かたくり粉1gを計って50mLビーカーに入れ、水約10mLを加えてガラス棒
でかき混ぜ、溶解するかを調べる。
(3)(1)の水が沸とうし始めたら、(2)のデンプンをかき混ぜながら一気に注ぎ、
さらにかき混ぜながら沸とうが始まるまで加熱して、できる溶液を観察する。
(4)試験管に水3cmほどを入れ、これに(3)のデンプン溶液を1回ガラス棒に付け
て溶かし、ヨウ素・ヨウ化カリウム水溶液1,2滴を加えて発色を調べる。
[b]加水分解
(5)デンプン溶液をかき混ぜながら手で持てるまで冷まし(40数℃)、ジアスターゼ
小さじ1杯を入れた試験管に5cmほど注ぐ。ガラス棒でかき混ぜ、ゴムせんをして試験
管を逆さにして混ぜ、そして数分放置する。
(6)(5)と同時に、濃塩酸1mLを入れた50mLビーカーにデンプン溶液を10
mLほど注ぎ、ガラス棒でかき混ぜて数分放置する。
参考:50mLビーカーは(2)のものを水洗いする。ガラス棒も水洗いして使用する
(以下同じ)。
(7)試験管に水3cmほどを入れ、これに(5)の溶液を1回ガラス棒に付けて溶かし、
ヨウ素・ヨウ化カリウム水溶液1,2滴を加えて発色を調べる。
(8)別の試験管に(5)の溶液2cmほどを入れ、ベネディクト試薬3mlを加え、煮
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沸して変化を観察する。
参考:ベネディクト試薬は、グルコースのような還元作用を持つ糖類を検出する(酸性の下
でははたらかない)。デンプンは還元作用を持たない。
(9)試験管に水3cmほどを入れ、これに(6)の溶液を1回ガラス棒に付けて溶かし、
ヨウ素・ヨウ化カリウム水溶液1,2滴を加えて発色を調べる。
(10)(6)の溶液を、わずかに沸とうするようにして数分加熱をする。
(11)試験管に水3cmほどを入れ、ガラス棒に(10)の溶液を1回付けて溶かし、
ヨウ素・ヨウ化カリウム水溶液1,2滴を加えて発色を調べる。
(12)(10)の溶液に炭酸ナトリウムを少しずつ加えては振り混ぜ、泡が出なくなる
まで加える。
(13)試験管に(12)の溶液2cmほどを入れ、ベネディクト試薬3mlを加え、煮
沸して変化を観察する。
<準備>
・ヨウ素・ヨウ化カリウム水溶液
1%ヨウ化カリウム水溶液100mLにヨウ素0.5gを溶かす。
・ベネディクト試薬
水約75mLにクエン酸三ナトリウム2水和物17.3gと無水炭酸ナトリウム10gを
加えて加熱溶解する。他方で水約10mLに硫酸銅5水和物1.73gを加えて加熱溶解す
る。両者を混合し、水を加えて全体を100mLにする(フェーリング試薬を改良したも
の)。
<メモ>
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実験5 酵素反応の速度
過酸化水素は酵素カタラーゼによって分解が促進され、酸素を発生する。その反応速度
が過酸化水素のモル濃度によってどのように変化するか、ガラス管の水位が20cm下が
るのに要する時間を計測して調べる。
[a]準 備
(1)次ページの図のように水の入った300mLビーカーにレトルト台を利用してガラ
ス管を立て、ゴムせんの先から吸ってポリチューブの頂点付近まで水位を上げ、ピンチコ
ックで固定する。
注意:チューブの頂点を超えないようにする。ピンチコックの使い方が悪いと空気が入っ
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てしまう。
(2)ゴムせんをY字管に締めてピンチコックをゆるめ、常温の水が入った容器に浸け、
2,3分して水位が安定することを1番目の輪ゴムを利用して確認する。
注意:2番目の輪ゴムの4〜7cm上で安定化するように吸い上げる。
手のぬくもりでY字管の温度が上がらないようにする(以下同じ)。
(3)キャップを付けた2mLメスピペットの使い方を練習をする。
[b]計 測

(4)試験管にメスピペットで35%過酸化水素水0.30mLを入れ、5mL駒込ピペッ
トで三角フラスコに入った水9.70mLを加えて全体を10mLにし、Y字管の「くぼみ
がない方に」注ぐ。
(5)他方にカタラーゼ液2mLを入れる。
注意:カタラーゼ液はけん濁状態にあるので、採る前にピペットに出し入れして液をかき
混ぜる。
(6)[a]のように水を吸い上げ、ピンチコックをゆるめる。
(7)2番目と3番目の輪ごむの間が20.0cmであることを定規で確認する。
(8)水位が安定したら、Y字管を傾けて「過酸化水素水の方を」カタラーゼ液に流し込
み、水の入った容器にもどす。
(9)そして水位が2番目の輪ゴムに来たらストップウオッチをスタートし、3番目の輪
ゴムに来たらストップする。
参考:最初は発生する酸素が水溶液に溶けたりするので、数cmは外すのである。
所用時間の逆数は、反応速度に正比例する。
(10)Y字管を水洗いし、過酸化水素水の量を次のように変え(全体は10mLにす
る)、同じように反応速度を計測する。
0.60 0.90 1.20 1.50[mL]
参考:35%過酸化水素水の体積は、反応溶液のスタート時点におけるモル濃度に正比例
する。
(11)反応速度(通過時間の逆数)と過酸化水素の濃度(35%過酸化水素水の体積)
の関係をグラフ用紙に描け。
参考:曲線から外れるものがあれば、再計測する。
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<準備>
・カタラーゼ液
新鮮なにんじんをおろし金ですり、さらしに包んで絞り、No2ろ紙でろ過する。そし
て水を加えておよそ2.5倍に薄める。35%過酸化水素水が0.90mLの場合について
予備実験し、その20cm通過時間が30〜40sあたり(10℃付近では40s前後)
になるように水の加減する。
備考:当日に準備するのが良さそうである。
<メモ>
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知識と理論
このテキストは有機化学の基礎知識があるとより分かりやすい。
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1.アミノ酸
[a]生物の特徴
[1]私たちヒトを含め、生物とは神秘的とも言える存在である。「生きる」とはどうい
うことだろうか。生物は環境に適応して自己を保存し、子孫を残して種を保存しようとす
る。また現在の生物の種(しゅ)は実に多様であり、かつ長い時間をかけて進化してきた。
生物は互いに深く関わり合い、生態系をつくっている。そして生物はすべて細胞を単位に
してできている。
備考:もちろん人間の生き方はもっと豊かであるが、このプランの直接の課題ではない。
[2]生物に対して化学の目で問いかけると、どんな返事がもどってくるだろうか。生物
も物質からできている。生命活動は数1000種の化学反応である。どのような物質を合
成し、どのような化学反応を進行させかつ全体を制御するかという生物の設計図(情報)
も、物質が保持している。
そんな仕組み(システム)があり得るのだろうか? もちろん私たちが知っていること
はわずかである。しかし現代では上記のことは確信となっている。その内容は膨大かつ複
雑であるが、その学習に一歩を踏み出してみよう。
[b]アミノ酸
[1]生物の体はどんな物質からできているだろうか。その第1は水である。そしてタン
パク質、糖質、脂質、核酸などである。この中でタンパク質こそが生命活動を中心的に担
う物質である。
[2]実験1[a]では、さまざまな食品などにニンヒドリン試薬を加えて煮沸すると、
紫色になった。これはニンヒドリン反応と呼ばれ、タンパク質の鋭敏な検出ができる。し
かし正確には、タンパク質をつくるアミノ酸を検出している。つまり煮沸によりタンパク
質が一部加水分解してできるアミノ酸を検出している。
この実験は、動物に限らず、どんな生物の体にもタンパク質が含まれることを示してい
る。ちなみに味の素はアミノ酸の一種グルタミン酸(構造式は後出)のナトリウム塩であ
り、ニンヒドリン反応を示した。そして砂糖は糖類である。
[3]実験1[b]では、アミノ酸の代表として取り上げたグリシン(構造式は後出)が、
酸である塩酸を中和し、同時に塩基である水酸化ナトリウムも中和することを、pHメー
ターを使って確認した。
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これはグリシンが、酸を中和する塩基の官能基と塩基を中和する酸の官能基の両方を持
つ、つまり両性であることを示す。とすればグリシンそのものが、自身で中和した塩にな
る。
アミノ酸は図の左に示したように、1つの炭素(α−炭素という)にアミノ基 −NH2
とカルボキシ基 −COOH が結合した化合物である。実際にはα−炭素に(少なくと
も)1つの水素が結合している(正確にはこのようなアミノ酸はα−アミノ酸と呼ばれ
る)。残りの −R は「側鎖」と呼ばれる。そしてグリシンは右のように、側鎖が水素で、
もっとも単純なアミノ酸である。

グリシンは次のように自身で中和反応して塩になる。
H2N−CH2−COOH ―→ H3N−CH2−COO
or H3N+−CH2−COO-
なおこの講座では、アミノ酸は中和していない形で表現することが多い。
[4]タンパク質をつくるアミノ酸は20種あるが、そのうちの7種を紹介する(グリシ
ンは上の図)。

グリシンを除く他のアミノ酸は不斉炭素を持ち、すべて光学異性体がある。通常の化学
反応で不斉炭素原子を含む化合物を合成すると、2種の光学異性体の等モル混合物になり、
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旋光性を示さない。ところがタンパク質を加水分解して得られるアミノ酸は、ほとんどす
べてL体と呼ばれる方の異性体であり(これと鏡像の関係にある異性体はD体と呼ばれ
る)、旋光性を示す。これは生命の起源を探るひとつの手がかりになる。
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2.タンパク質
[a]タンパク質
[1]実験2では、卵白に含まれるアルブミンというタンパク質を使って、いくつかの性
質を調べた。
実験2[a]では、卵白水溶液に水酸化ナトリウム水溶液と硫酸銅水溶液を加えると、
赤紫色になった。この変化はビウレット反応と呼ばれ、複数の −CONH− という官能
基(後出)が存在することを示す。
実験2[b]では、固体の水酸化ナトリウムを加えて煮沸すると、ユニバーサル試験紙
が紫色になった。これはアンモニアが発生したためであり、タンパク質がアミン性の窒素
を含むことを意味する。
実験2[c]では、酢酸鉛水溶液を加えると白色に濁った。これについては後で触れる。
続いて水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱すると、黒色に濁った。これは硫化鉛(
PbS)であり、タンパク質が硫黄を含むことを意味する。
実験2[d]では、濃硝酸を加えると白色に濁った。これについては後で触れる。続い
て加熱すると黄色に変化し、さらに水酸化ナトリウム水溶液を加えると赤褐色に変化する。
この変化はキサントプロテイン反応と呼ばれ、タンパク質がある種のベンゼン環を含むこ
とを意味する。
実験2[e]では、エタノールを加えると白色に濁った。
[2]タンパク質は多数のアミノ酸が脱水縮合してできる高分子である。1つのアミノ酸
のカルボキシ基と次のアミノ酸のアミノ基が脱水縮合し、そのアミノ酸のカルボキシ基が
また次のアミノ酸のアミノ基と脱水縮合し・・・というように連結していく。実際のタン
パク質は細胞内のリボソームで合成される。
高分子とは、同じあるいは似た単位物質がくり返し反応し連結してできる大きな分子の
ことである。そしてタンパク質の中のそれぞれのアミノ酸(正確には水素とヒドロキシ基
を失っている)は、アミノ酸「残基」と呼ばれる。
「例題」アラニン、グリシン、システイン、セリンとこの順で脱水縮合した形の分子の構
造を書いてみよ。アラニンがアミノ基を残し、セリンがカルボキシ基を残すとする。
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[3]カルボキシ基とアミノ基の脱水縮合でできる新しい官能基は、アミド結合
CONH−(カルボニル基 −CO− とイミノ基 −NH− に分けて捉えることもでき
る)である。そしてとくにタンパク質内のものは「ペプチド結合」と呼ばれる。
タンパク質がペプチド結合を持つことは、実験2[a]のビウレット反応が裏付けてい
る。また実験2[b]ではアミン性の窒素を検出した。これはイミノ基やアミノ基などの
窒素のことである。
[4]実験2[c]は、タンパク質が硫黄を持つシステインのようなアミノ酸残基を含む
ことを示す。多くの有機化合物は炭素、水素、酸素、窒素などからできているが、これか
らは硫黄も含めて考えよう。硫黄の原子価は通常は酸素と同じ2価であり、酸素と入れ替
わった化合物も多い(酸素と硫黄は周期表では同じ16族である)。
[b]タンパク質の構造と変性
[1]それぞれのタンパク質分子は生命活動を担うに相応しい複雑な構造を持っている。
タンパク質の構造は4つに分けて捉えられる。
1次構造は、アミノ酸が連結する順番、つまりアミノ酸配列である。その違いによって
50分子のアミノ酸からできるタンパク質でも、2050 と途方もない種類が存在すること
になる。このことは多種多様な生物が存在できる化学的な保障になっている。
1次構造はより高次の構造を産み出す元になっている。それではアミノ酸配列は何によ
って決まってくるのだろうか。
タンパク質の1次構造は、現在では「エドマン分解」という方法で分析される。これは
タンパク質をつくる始めのアミノ酸(アミノ基が残っているアミノ酸)から1つずつ切り
離して、クロマトグラフィで分析していくもので、自動化されたアミノ酸配列決定装置が
開発されている。
ここでタンパク質の消化について触れておこう。栄養として摂取されたタンパク質は、
水と反応して元のアミノ酸に分解されて吸収される。これは脱水縮合と逆向きであり、
「加水分解」と呼ばれる。この反応は胃では塩酸酸性の下でペプシンという酵素によって、
小腸ではトリプシン、キモトリプシン、エレプシンなどの酵素によって促進される。
[2]2次構造は、鎖状のタンパク質分子の一部が、らせんになったり波形シートになっ
たりすることである。これらの構造を産み出す原因は、イミノ基の水素とカルボニル基の
酸素がつくる水素結合という分子間力である。ちなみに水素結合とは、酸素や窒素(ある
いはフッ素)と結合した水素と、別の酸素や窒素(あるいはフッ素)との間ではたらく強
い分子間力である。
次ページの上図にらせん構造と波形シート構造の例を示す。「モデル」と見比べて理解
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を深めよう。
参考:資料として発展実習「タンパク質の2次構造モデル」を添付する。
α−炭素の4つの原子価は正四面体の中心から頂点に向かう。ペプチド結合は4つの原子


らせん構造(川上ら「分子生物学」より) 波形シート構造(マッキー「生化学」より)

3次構造(マッキー「生化学」より)
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がα−炭素と結合する2つの原子価も含めて同一平面上に制約される。自由になるのは、
α−炭素とペプチド結合の間の回転である。そして水素結合は関係する窒素、水素、酸素
の3原子が同一直線上になる。
[3]3次構造は、分子が「折りたたみ」されて、それぞれのタンパク質にふさわしい立
体的構造(形状)になることである。前ページの下図はその様子を模式的に示す。
折りたたみが起こる原因を考えてみよう。アミノ酸残基の側鎖を見てみる。グルタミン
酸はカルボキシ基を、リシンはアミノ基を持つ(これらはpHによって、−COO- や
−NH3+ のようにイオンになる)。またセリンはヒドロキシ基 −OH を持つ。これらは
極性が大きく水分子などと水素結合できるので、親水性の側鎖である。これに対してアラ
ニン、ロイシンは炭化水素基を、システインはメルカプト基 −SH を持つ。これらは極
性が小さいので、疎水性(親油性)の側鎖である。
タンパク質は細胞質という水溶液の環境の中でその立体的構造を整えていく。アミノ酸
残基の側鎖が親水性なら、分子の表面に出てまわりの水分子と馴染み合おうとする。これ
に対して側鎖が疎水性なら、分子の内部に入って互いに馴染み合おうとする。これは水中
における石けん分子のミセル形成のようである。
側鎖のアミノ基やカルボキシ基がイオン化しておれば、イオン結合(図では「塩橋」)
もする。あるいは2次構造とは異なる水素結合も可能である。つまりタンパク質分子の各
部分はそのアミノ酸残基の側鎖に応じてある立体的構造を目指そうとする・・・。しかし
折りたたみの仕組みについては現在でもよく分かっていない。
[4]3次構造では、システインが持つ離れた位置にあるメルカプト基どうしからできる
ジスルフィド結合も関係する。その反応は次のように表せる。
−S−H + H−S− +(O)―→ −S−S− + H2O
ジスルフィド結合
これによりタンパク質分子はその位置でしっかりと結び付けられる。この反応は酸化剤に
よる酸化反応であるが、還元剤を用いると逆向きに進行してジスルフィド結合が切断され
る。
この応用が毛髪のパーマである。毛髪はケラチンというシステインを多く含むタンパク
質からできている。髪型を整えてから還元剤でジスルフィド結合を切断し、続いて酸化剤
で再び形成し直すと、その髪型が固定される。
[5]4次構造は分子がさらに、別のタンパク質分子やタンパク質以外の分子と結び付い
て超分子を形成することである(後者は複合タンパク質と呼ばれる)。
次ページ上は赤血球に含まれ酸素を運ぶヘモグロビンの立体的構造である。ヘモグロビ
ン(全体の分子量:64000)は、グロビンというタンパク質と鉄(酸素分子を捕まえ
る部分)を含むヘムという色素(図の円板)からできている。1つのグロビン分子が1つ
のヘム分子を抱え込む。グロビン分子にはよく似たα鎖とβ鎖(前後の白と灰色のリボ
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ヒトヘモグロビン(川上ら「分子生物学」より)
ン)があって結びついてセットになり、さらに2つのセットが結び付く。そして1対のヘ
ム分子(図の左右)が酸素分子をはさんで捕まえるときセットが回転して、残りの1対の
ヘム分子(図の裏)がより酸素分子を捕まえやすい構造に変化する。こうしてヘモグロビ
ンは、酸素濃度が高いところではすぐに2つの分子を捕まえることができる。
鎌状赤血球貧血症という遺伝病は、グロビン分子の6番目のアミノ酸が正常なものと異
なるために構造がゆがみ、ヘム分子が酸素分子をうまく捕まえられなくなるために起こる。
このような異常はどうして生まれるだろうか。
[5]実験2[b]では、酢酸鉛水溶液を加えると、卵白水溶液が白色に濁った。実験
[d]では、濃硝酸を加えると白色に濁った。そして実験[e]では、エタノールを加え
ると白色に濁った。またよく知られているように、卵白などは加熱すると凝固する。
このように重金属イオン、酸、塩基、エタノールなどを加えたり、加熱したり冷却した
りすることにより変化することはタンパク質の「変性」と呼ばれる。変性したタンパク質
は本来の性質を失い、実際的にはほとんど元にもどらない。タンパク質の変性は、その高
次構造が繊細で壊れやすいことを意味している。そしてまた生物がこれらの要因によって
生命活動を営む能力を損なったり失ったりすることに結び付いている。
[c]生命の起源
[1]タンパク質が生命活動を中心的に担うとしたら、それは生命誕生以前の地球にどの
ように存在するようになったのだろうか。
1953年に米国のミラーは、フラスコに水、メタン、アンモニア、水素を封入し、水
溶液は加熱して循環させ、混合気体に電気火花を飛ばして、数日後にグリシンやアラニン
というアミノ酸が生成していることを確認した。メタン、アンモニア、水素は原始大気に、
水は原始の海に、電気火花は落雷に相当する。しかしその後、原始大気の成分は二酸化炭
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素と窒素、それにわずかな水素であったことが分かってきた。
[2]先駆者であるロシアのオパーリンは1924年に「生命の起源」を出版し、原始の
海にはタンパク質、脂質、炭水化物など様々な(高分子)化合物が生成しており、これが
コアセルベートという液滴を形成した。コアセルベートは融合、分裂が可能であり、その
表面から物質を取り入れ、内部で化学反応することを実験に基づいて示し、これが生命の
起源であると主張した。
どのようにして地球上に生命が誕生したのか、そのシナリオはベールに包まれており、
現在も多くの研究がなされている。あなたならこの魅力あるテーマに対して、どんな仮説
を立てるでしょうか。
目次へ
3.酵 素
[a]酵素の特徴
[1]生物の体をつくるタンパク質は、皮膚の結合組織の細胞間物質であるコラーゲン
(ゼラチン)、筋肉組織の筋細胞に含まれて収縮活動をするアクチンとミオシン、免疫の
抗体である免疫グロブリン、小麦粉に含まれるグルテン、牛乳に含まれるカゼインなど様
々である。
そして生命活動を中心的に担うタンパク質と言えば、それは酵素である。酵素とは、あ
る特定の生化学反応を促進する触媒である。酵素自身は反応全体としては変化せず、元に
にもどる。生体内は化学反応にとって穏やかな条件の下にあり、そのままでは反応はほと
んど進行しない。酵素の有無がその反応を進行させるかどうかを決めている。それぞれの
生化学反応に対応して数1000種の酵素がある。酵素は複合タンパク質であることが多
い。
[2]ここで生化学反応のとらえ方をまとめておく。反応物質では、中心になる化合物は
「基質」と呼ばれる。2節[b]のタンパク質の消化を例にすれば、タンパク質が基質で
あり、ペプシンなどが酵素である。同じく反応物質である水に対しては特別な用語はない。
1つの酵素がある特定の基質の反応のみを促進することは「基質特異性」と呼ばれる。
これは酵素の「かぎ穴」に基質が「かぎ」のようにはまり込み、酵素の活性部位と基質の
反応部分がうまく向き合って反応が進行するためと説明される。活性部位はアミノ酸残基
の側鎖の官能基などで構成される。

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それぞれ固有の形状と構造を持っているタンパク質だからこそ、そのようなはたらきが生
まれてくるというものである。
[3]実験3では、B液に含まれるホタルが持つ基質ルシフェリン(とATP)が、A液
に含まれる酵素ルシフェラーゼによって発光反応した。
実験3[a]では、0.1mol/L塩酸を少し加えると発光が停止し、中和すると発光
がもどった。また同濃度の水酸化ナトリウム水溶液を少し加えると発光が弱くなり、中和
すると発光が元にもどった。これはルシフェラーゼの活性がpHに依存することを示して
いる。これは酵素に普通に見られる現象で、ある酵素が最大の活性を示すpHは「最適p
H」と呼ばれる。ルシフェラーゼの最適pHは8である。多くの酵素の最適pHは、生体
内の環境から分かるように中性付近であるが、たとえば胃に分泌されるペプシンの最適p
Hは2である。
次に1mol/L塩酸を多く加えると発光が停止し、これは中和しても再び発光すること
はなかった。これはルシフェラーゼが変性し破壊されたと推測される。タンパク質の構造
が繊細で壊れやすいことを思い出そう。
[4]実験3[b]では、氷水で冷やすと発光が弱まり、38℃に加温すると常温より発
光が強まった。そして56℃に加温すると発光が停止し、38℃にすると発光がもどった。
これも酵素に普通に見られる現象であり、酵素の活性は温度に依存することを示している。
ルシフェラーゼの最適温度は37℃である。多くの酵素の最適温度は、定温動物の存在か
ら分かるようにこの付近である。
次に70℃に加熱すると発光が停止し、これを38℃にしても再び発光することはなか
った。そこで反応溶液を2分し、一方にルシフェラーゼ、他方にルシフェリンを加えたと
ころ、前者のみが発光した。これで高温で破壊されたのが酵素ルシフェラーゼの方である
ことが確認できる。しかし他方で、深海底の熱水噴出孔の高温高圧下で生存する硫黄細菌
が持つ酵素群は高温に耐えられるのである。
[b]アミラーゼによる消化
[1]ジアスターゼはアミラーゼの商品名である。実験4[a]の糊化については省略す
る。またデンプンのような糖類についてもくわしくは説明できないが、デンプンは多数の
グルコース(ブドウ糖)が脱水縮合してできる高分子である。デンプンの消化は化学的に
見るとその逆向きの反応で、デンプンが加水分解してグルコースになることである。アミ
ラーゼはその反応を促進する主要な酵素であるが、グルコース2分子が脱水縮合したマル
トース(麦芽糖)などに留まることもある。
[2]実験4[a]では、デンプン水溶液(コロイド溶液)はヨウ素・デンプン反応を示
した。
実験4[b]では、40数℃に冷めたデンプン水溶液をアミラーゼに加えて混ぜると、
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粘性が小さくなった。この反応混合物はヨウ素・デンプン反応を示さず、ベネディクト試
薬を加えて煮沸すると赤褐色の沈でんが生成した。この試薬はグルコースやマルトースの
ような還元作用のある糖類を検出する。デンプンは還元作用を持たない。
つまりアミラーゼという酵素が体温付近の温度で素早くデンプンを加水分解することを
意味する。
これに対してデンプン水溶液を濃塩酸に加えて混ぜても、相変わらずヨウ素・デンプン
反応が残った。そこで反応混合物を数分100℃にしたところ、今度はヨウ素・デンプン
反応を示さなかった。また混合物を炭酸ナトリウムで中和してから、ベネディクト試薬を
加えて煮沸すると赤褐色の沈でんが生成した。
塩酸も加水分解を促進する。このような物質は酵素と区別する意味で化学的触媒と呼ぶ
ことにする。塩酸という化学的触媒も温度が高ければ、素早くデンプンを加水分解するこ
とを窺わせる。
[c]酵素反応の特徴
[1]過酸化水素は次のように分解して酸素を発生する。
2H2O2 ―→ 2H2O + O2
この反応が酸化マンガン(W)によって促進されることはよく知られている。つまり酸化マ
ンガン(W)は化学的触媒である。そしてこの反応は酵素カタラーゼによっても促進される。
生体内では酸化反応に伴って有害な過酸化水素が生成することが多く、生物はこれに対応
してカタラーゼを持っている。
[2]実験5ではカタラーゼ源としてニンジンを利用した。そしてカタラーゼの濃度を一
定にして、反応の初速度と基質である過酸化水素のスタート時点におけるモル濃度の関係
を調べた。
参考:反応速度とは、単位時間あたりそして単位体積あたりに、反応物質の量がどれだけ
減少するか、あるいは生成物質の量がどれだけ増加するかで計測される。
反応速度は、外径6mmのガラス管20cmの体積だけ酸素が発生する時間を計測して調
べた。
通過時間の逆数は、反応速度に正比例する。また使う35%過酸化水素水の体積は、反
応溶液のスタート時点におけるモル濃度に比例する(溶液全体の体積は12mL)。
一般的に反応速度は、直接的に反応に関係する物質のモル濃度に比例する。したがって
反応が進行すると反応物質のモル濃度が小さくなるので、それに応じて反応速度も小さく
なるのが普通である。しかしこの実験では、水位が約25cm下がるまでの反応量は、最
大でも全体の10%以下であり、反応物質のモル濃度もほぼ一定の領域であると言える。
こうして過酸化水素がスタート時点のモル濃度であるときの反応速度、つまり初速度が計
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測できる。
[3]ある実験では次の結果が得られた。
35%過酸化水素の体積 0.3 0.6 0.9 1.2 1.5[mL]
通過時間 106 50 36 31 31
時間の逆数×100 0.94 2.00 2.78 3.23 3.23
データを使って、反応速度(通過時間の逆数)と過酸化水素の濃度(35%過酸化水素水
の体積)の関係をグラフにすると次のようである。

これは酵素カタラーゼのモル濃度が一定の下で、基質の過酸化水素のモル濃度が低い領
域では、反応速度はそのモル濃度に比例して大きくなる。そして基質のモル濃度が高くな
ると、反応速度はしだいに一定の数値に近づくことを示す。
このことは酵素反応全体に言えることである。酵素 E が基質 S と複合体 ES を形
成してから、基質が変化して生成物質 P になり、酵素は元にもどる。
E + S ―→ ES (1)
ES ―→ E + P (2)
反応(1)の速度定数は(2)に比べてはるかに大きい。したがって酵素と基質はすぐに
反応し、できた複合体はゆっくりと生成物質に変化していく。
こうして酵素反応の反応速度は、複合体のモル濃度に比例すると言える。酵素というか
ぎ穴の個数に対して基質というかぎの個数が多くなる領域では、未反応のかぎはかぎ穴が
空くのを待たねばならず、複合体のモル濃度は酵素のモル濃度にほぼ等しく、一定になっ
てしまうのである。
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今回はこれで終わりである。ところで生命活動を支える情報の方はどこに隠されている
だろうか。それはDNAつまりデオキシリボ核酸という高分子が持っている。いつかこの
勉強もしてみよう。
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目次へ
発展実習 タンパク質の2次構造モデル
らせん構造や波形シート構造を理解するために、それをモデルで作成してみたり、ある
いはモデル自身を製作してみたりする。
[a]モデルの製作
・α−炭素
ダブルクリップ小を炭素原子に見立てる。2つのレバーが水素と側鎖の原子価である。
水素は何も付けない。側鎖は工作用紙を4cm四角に切り、左図のように書いてRを緑の
蛍光ペンで塗り、一方のレバーにセロテープで固定する。
参考:α−炭素の4つの原子価は正四面体の中心から各頂点に向かう。
水素はとくに表示はしない。

「残りの2つの原子価」は、内径2mm外径4mmの軟質塩ビチューブを1.5cmに切
り、2×3.5cmの工作用紙に、右図のようにおよそ110°に塩ビ用接着剤で貼り付け
る。仕上げの段階でダブルクリップをはめる。
・ペプチド結合
工作用紙を6×5cmに切る。長い方の両端は5mmのところで切るとよい。左図のよ
うに書いて、水素を水色に酸素を赤色に、タンパク質分子の骨格の結合をオレンジ色に塗
り、2つの三角形を切り落とす。つまようじ2本の、とがった方を3mm、反対を8mm
切り落とす。これを右図のように原子価に沿って裏にセロテープでしっかり固定する。つ
まようじは細い方が1.5cmはみ出すようにする。
参考:ペプチド結合は4つの原子が、α−炭素と結合する原子価も含めて同一平面になる。

・水素結合
目玉クリップ小をそれに見立てる。
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[b]らせんと波形シートの作成
・らせん構造
「残りの2つの原子価」に2つのペプチド結合を差し込む。くの字の角を手前にして右
にイミノ基があり水素を上に、左にカルボニル基があり酸素が下に向くようにする。次に
左のペプチド結合のイミノ基を別の「残りの2つの原子価」に差し込む。その左にペプチ
ド結合のカルボニル基を、前と同じになるように差し込む。これをくり返す。
4つ目のペプチド結合のイミノ基の水素と1つ目のペプチド結合のカルボニル基の酸素
を、酸素、水素、窒素が一直線になるように目玉クリップで留める。5つ目と2つ目の水
素結合、6つ目と3つ目の水素結合も、同じように目玉クリップで留めていく。
仕上げにダブルクリップをはめる。
必要数:α−炭素 ×6
ペプチド結合 ×7
水素結合 ×4
参考:グリシン以外のアミノ酸は光学異性体のL体であるが、ここでは無視する。
らせんは2通りつくれるが、実際のタンパク質では端にアミノ基が残る方から見て
右巻きになっている。
・波形シート
2つのペプチド結合を裏表にして、酸素、水素、窒素が一直線になるように水素結合を
目玉クリップで留める。このセットをいくつか作成する。
このセットが波形になるように「残りの2つの原子価」に差し込んでいく。そのときα
ー炭素の両側がイミノ基とカルボニル基になる。そして同じ端から見て、一方のタンパク
質骨格がイミノ基からカルボニル基に、他方の骨格が反対にカルボニル基からイミノ基に
向かうように注意する。
仕上げにダブルクリップをはめる。
必要数:α−炭素 ×6
ペプチド結合 ×8
水素結合 ×4
参考:この波形シートは逆平行型であり、もうひとつ平行型がある。
<準備>
・ダブルクリップ(小 黒色)
・目玉クリップ(小 銀色)
・工作用紙、つまようじ、蛍光ペン、セロテープ、はさみ
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林 正幸と主万子の始めの
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