先進科学塾1日コース
Advancing Science Workshop
「科学(理科)をわくわくしながら勉強する」にはどうしたらよいだろうか。
先進科学塾はそれに答えようとする企画です。
有機化合物とは何?実験して調べてみよう!
有機化合物は身のまわりにあふれています。命ある生物も食物も、水を除けば、主要な
ものは有機化合物です。
みかんの皮からその香りの主成分であるリモネンを取り出します。分子模型で有機化合
物の構造を考えます。そして試薬を使って探りを入れます。仕上げは自分で酢酸エチルを
合成します。
これであなたも有機化合物博士の仲間入り。

日 時 6月17日(日) 10時〜4時
場 所 名古屋市科学館の8階科学実験室
氏名:
- 1 -
07.6.17
講師:林 正幸
有機化合物とは何?実験して調べてみよう!
自己紹介
36年間、高校の化学の教師を勤め、03年3月に退職しました。そして自由になって
ますます「理想の化学教育」を追求できると燃えています。
ホームページは96年から開設しています。
http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/
そして高校生などからメールで質問を受けています。
masasuma@water.sannet.ne.jp
実験の取り組み方
(1)危険防止のため安全めがねをかける。
(2)積極的に取り組み、協力し合う。
(3)文章を読んで予め操作を頭に描き、分からないときは先生に確かめる。
(4)よく観察し、その意味を考察し、できるだけ疑問を見つける。
(5)「D」記号がある操作はドラフトで行う(今回はない)。
(6)実験中に気分が悪くなったらすぐに申し出る。
(7)廃棄物に配慮し、器具を洗浄し、机上を雑巾で拭く。
目 次
実 験
実験1 リモネンの水蒸気蒸留
実験2 燃焼反応
実習1 分子構造と異性体
実験3 不飽和炭化水素の検出
実験4 アルコールの検出
実験5 アルデヒドの検出(銀鏡反応)
実験6 アルデヒド・ケトンのカルボニル基の検出
実験7 酢酸エチルの合成
知識と理論
1.有機化合物とは
2.構造と分子模型
3.分類と検出反応
4.酢酸エチルの合成
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実 験
実験1 リモネンの水蒸気蒸留
(1)かんきつ類の果皮約20gと水約80mLをミキサーにかける。
(2)長いろうとを使って200mL枝付きフラスコに移し、水約20mLで容器を洗っ
てフラスコに加える。
(3)温度計の付いたゴムせんをし、次ページの図のように45°にレトルト台に固定し、
9分目まで水を入れた500mLビーカーに浸けた試験管を導管に差し入れる。
(4)穏やかに加熱し、蒸気の温度を確認し、3cmほど留出液を集める。
注意:沸とうが始まったら火を弱め、バーナーを出し入れして吹き出さないように注意す
る。
- 2 -

(5)留出液の上部に油層があることを確認を確認し、においを確かめ、ピペットで一部
を食品トレイ(発泡性ポリスチレン)にかけて様子を観察する。残りはゴムせんをして実
験2のために保管する。
(6)蒸留の残りはコーナーネットに流し、枝付きフラスコはブラシを使って水洗いする。
備考:残った汚れは、後で太い針金の切断エッジで削るようにして洗浄する。
<メモ>
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実験2 燃焼反応
(1)乾いた短い試験管(13cmに切ったもの)に細いろうそく1本を入れ、試験管ば
さみで持って加熱・融解する。
さらに強く加熱して試験管の口から蒸気が吹き出すようにして、それに点火して燃焼を継
続させることを試みる。
注意:試験管ばさみが燃えないように試験管を斜めにして加熱する。
(2)一度バーナーから外し、燃焼していないことを確認してから、再び沸とうするまで
まで加熱する。
(3)再びバーナーから外して沸とうが収まったら(火は消えた状態で)、水を7分目ま
で入れた紙コップに一気に注いで様子を観察する。
注意:火柱と火災報知器に注意する。
(4)試験管はそのまま返却する。
<メモ>
- 3 -
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実習1 分子構造と異性体
この実習で使う分子模型はボール&スティックタイプである。実際の分子においては、
単結合では一方の原子が結合を軸に自由に回転できることに留意しよう。
[a]分子構造
次の分子式で表される分子を分子模型で組み立て、完成したらその構造式を書き、さら
にメタン、エチレン、アセチレンについてはその構造の特徴をメモしてみよう。
CH4 C2H6 C3H8 C2H4 C2H2
メタン エタン プロパン エチレン アセチレン
[b]異性体
分子式が同じでありながら、その構造が異なりしたがって性質も異なる分子どうしは
「異性体」と呼ばれる。分子模型を組み立て構造式を書きながら、次のそれぞれの分子式
で表されるすべての異性体を探し出してみよう。
[1]C4H10(2種)
[2]C4H8(6種)
- 4 -
[3]C3H8O(3種)
[4]C2H4O2(12種)
注意:分子模型をかたづけるときは、バーツの個数を確認する。
- 5 -
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実験3 不飽和炭化水素の検出
(1)4本の試験管に臭素水を、また別の4本の試験管に中性過マンガン酸カリウム水溶
液を約3cmずつ入れる。
(2)次のサンプル1,2滴を加えてよく振り混ぜ、それぞれやまぶき色が脱色するか、
および赤紫色が脱色する(褐色に変化する)かを観察する。気体のアセチレンは(3)の
ように発生させ、試験管の試薬中に吹き込む。
(ア)シクロヘキセン (イ)アセチレン (ウ)ヘキサン
(エ)リモネン(実験1のサンプル)
(3)乾いたY字試験管の一方にカルシウムカーバイド1片を、他方に水を5cm入れて
導管を付け、水を少しずつ流し入れてアセチレンを発生させる。
注意:アセチレンは反応が速くてすぐに発生する。少しずつ発生させて吹き込む。
発生するアセチレンは、不純物のため臭いがする。
(4)試験管は洗剤を使って洗浄する。
<準備>
・臭素水
試験管に臭化カリウム小さじ2杯、酸化マンガン(W)小さじ3杯、硫酸(1:1)1
mLを入れ、導管を付けてから試験管ばさみで持って加熱し、100mLビーカーに水約
50mLを入れて発生する臭素を留出する。
備考:発生後は試験管にチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、「重金属廃液」に入れる。
臭素の滴を含め全体を試薬びんに移し、適宜に水を加える。
参考:試験管に採ったとき、やまぶき色であること。
・中性過マンガン酸カリウム水溶液
0.01mol/L過マンガン酸カリウム水溶液を約10倍に希釈する。
<メモ>
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実験4 アルコールの検出
(1)試験管5本に、それぞれ水約2cmを採り、硝酸セリウム試薬0.4mLを加える。
(2)これに次のサンプル2,3滴ないし小さじ半分を加えて振り混ぜ、黄色が黄橙色か
ら赤橙色に変化するかを調べる。
参考:還元作用が強いサンプルでは退色するので、時間をおいての判断は避ける。
(ア)メタノール (イ)イソプロパノール(2−プロパノール)
(ウ)酢酸 (エ)焼酎 (オ)砂糖
(3)試験管の溶液は「重金属廃液」に入れ、そしてブラシを使って水洗いする。
- 6 -
<準備>
・硝酸セリウム試薬
硝酸セリウム(W)アンモニウム Ce(NH4)2(NO3)6 20gを2mol/L硝酸50
mLに溶かす。
<メモ>
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実験5 アルデヒドの検出(銀鏡反応)
(1)50mLビーカーに、5%硝酸銀水溶液12mLを入れ、3mol/L水酸化ナトリ
ウム水溶液0.3mLを垂らし、1mol/Lアンモニア水を振り混ぜながら、ちょうど沈
でんが消えるまで加える(トレンス試薬と言う)。
(2)これを試験管5本に分ける。
(3)次のサンプルを1,2滴ないし小さじ半分加えて振り混ぜてしばらく静置し、試験
管の器壁に銀鏡ができ、黒褐色の沈でんが生成するかを調べる。変化がない場合はしばら
く約50℃の湯に浸けてみる。
(ア)ホルマリン(ホルムアルデヒド) (イ)アセトン
(ウ)メタノール (エ)酢酸 (オ)ブドウ糖(グルコース)
参考:トレンス試薬は検出用であり、きれいな銀鏡ができるとは限らない。
(4)この実験の試験管はそのまますぐに教卓に返す
注意:検出に使ったトレンス試薬を放置すると、爆発性の雷酸銀 AgONC が生成する。
講師がまとめて、すこし硝酸酸性にして「重金属廃液」に入れる。
<メモ>
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実験6 アルデヒド・ケトンのカルボニル基の検出
(1)試験管4本に、それぞれエタノール1.5mLを入れ、次のサンプル1,2滴ないし
小さじ半分を加えて振り混ぜる。
(ア)アセトアルデヒド (イ)アセトン (ウ)酢酸
(エ)イソプロパノール(2−プロパノール)
備考:アセトアルデヒドの沸点は20℃であり、氷水で冷やした状態にする。
(2)それぞれに2,4−ジニトロフェニルヒドラジン試薬2mLを加え、振り混ぜてしば
らく放置し、黄色から橙色の沈でんが生成するか調べる。
(3)試験管の混合物は「危険物廃液」に入れ、そして洗剤を使って洗浄する。
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<準備>
・2,4−ジニトロフェニルヒドラジン試薬
2,4−ジニトロフェニルヒドラジン約3gを濃硫酸15mLに溶かす。エタノール70
mLと水20mLの混合溶媒に上の溶液を溶かす。
<メモ>
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実験7 酢酸エチルの合成
(1)乾いた太い試験管に、酢酸8mlと濃硫酸2mlをこの順に入れて振り混ぜ、さら
にエタノール8mLを加えて振り混ぜる。
注意:反応物質の酢酸、エタノールのにおいを覚えておこう。
(2)200mLビーカーに約70℃の湯を7分目まで入れ、試験管を数分浸ける。
(3)300mLビーカーに15%炭酸ナトリウム水溶液40mLを入れ、氷1ブロック
を加える。
(4)これに、反応混合物をピペットで少しずつ、ガラス棒でかき混ぜながら加える。
注意:一度に加えると泡が激しく発生し、できた酢酸エチルが揮発して失われる。
(5)泡が収まったら、ユニバーサル試験紙で液性を確認する。
(6)全体をもとの試験管にもどし、2層に分かれたら、上層の酢酸エチルをピペットで
採って脱脂綿に染み込ませ、広告のカラー印刷を拭き取ってみる。においの変化も確かめ
る。
(7)器具はブラシを使って水洗いする。
<メモ>
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知識と理論
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1.有機化合物とは
[1]物質は単体と化合物に分類され、化合物は大きく無機化合物と有機化合物に分類さ
れる。
今から200年ほど前にはこの分類は明解であった。無機化合物は生命とは独立に存在
し、人間の技によって単体ないし他の無機化合物から合成できるものであった。これに対
して有機化合物は生命に深く関係し、神秘な「生命力」によってのみ生成するものであっ
た。
有機とはもともと「生命活動という機能を有する」ということであり、それを可能にす
る複雑なしくみを持つことを意味する。そして生物は有機体とも呼ばれる。
[2]1828年にドイツのウェーラーは、尿に含まれる有機化合物の尿素を、無機化合
物とされていたシアン酸カリウムと硫酸アンモニウムの水溶液を混ぜて加熱することによ
り、人間の技によって合成できることをはっきりと示した。
NH4OCN ―→ NH2CONH2
シアン酸アンモニウム 尿素
しかし有機化合物には無機化合物にないいくつかの共通の特徴がある。そして有機化合
物は炭素を含む。そこで有機化合物とは「炭素を骨格とする構造を持つ化合物」と定義す
ることになった。ただし二酸化炭素 CO2 や炭酸カルシウム CaCO3 のような物質は
除かれる。
[3]実験1では、かんきつ類の果皮に水を加えて蒸留すると、水と共に無色の油層が得
られた。これはかんきつ類の香りがし、発泡性ポリスチレンにかけるとへこんだ。
これはリモネン C10H16 という有機化合物であり、ポリスチレンを溶解する。後で構
造式を示し、水蒸気蒸留の原理についても学ぶ。
動植物や菌類は、そして食品も、水を除けば主に有機化合物からできている。また私た
ちのまわりには化学工業製品として、プラスチック、繊維、石油、洗剤、医薬などの有機
化合物があふれている。
[4]やがて化学の進歩は、周期表上で炭素と同族(14族)のケイ素を骨格とする化合
物を合成できるようにした。このようなものを有機化合物に含めるかどうか、現代では定
義はより難しくなっている。考えてみると、ものごとは多様であり、分類にはあいまいさ
が伴うものである。そして他方では、有機化合物と無機化合物の境界を取り払った物質の
とらえ方が求められる。
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2.構造と分子模型
[a]有機化合物の構造
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[1]原子の結合はイオン結合、共有結合、金属結合に分類されるが、多くの有機化合物
は共有結合のみでできており、したがって分子として存在する。
炭素の原子価は4価である。そして1876年にオランダのファント・ホッフは「炭素
原子の4つの原子価は、正四面体の中心から各頂点に向いている」と提唱した。数学的に
計算すると2つの結合がなす角度(結合角)は 109.5°になるが、この数値はメタン
CH4 の炭素水素結合の結合角の実測値と一致する。また後で取り上げる異性体の存在も
見事に説明できた。彼は目に見えない分子を立体的にとらえた科学者である。
[2]多くの有機化合物に含まれる元素は限られており、主に
炭素 C 4価
水素 H 1価
酸素 O 2価
窒素 N 3価
である。
水素原子は1価だから結合角は関係ない。そして酸素原子の結合角は水 H2O の場合に
104.5°であり、窒素原子のそれはアンモニア NH3 の場合に106.7°である。他
の化合物においてもこれらの結合角は似ているので、酸素原子の原子価は正四面体の2つ
の頂点に向いており、窒素原子のそれは3つの頂点を向いていると見なして、そんなに狂
いはない。これで有機化合物分子の立体的構造をイメージすることができる。また分子模
型を使えば直接に目で見ることができる。

備考:この講座では命名法や示性式には深入りしない。
[b]分子模型と異性体
[1]実習1[a]では、5種の有機化合物の分子模型を組み立てた。その中でメタンは
正四面体型である。そしてエチレンでは6つの原子がすべて同一平面上にあり、アセチレ
ンでは4つの原子が同一直線上にある。これは実際の分子でもそうであることが確認され
ている。
またスチロール球で作ったスチュワートタイプの分子模型を眺めて、原子が互いにめり
込むように結合している分子の姿の方も頭に入れておこう。
[2]実習1[b]については、プリント「実習の整理(異性体)」(これからは「整
理」と略す)を参照しよう(p17&18)。
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分子式が C4H10 の有機化合物は2種ある。C4H8 は6種、C3H8O は3種、
C2H4O2 はなんと12種もある。このように分子式が同じでありながら、その構造が異
なりしたがって性質も異なる分子どうしは「異性体」と呼ばれる。
中でも「整理」のCとDはとくにシス・トランス異性体と呼ばれる。水素と置き換わっ
た原子や基(原子の集団)が、二重結合の同じ側にあればシス、反対側にあればトランス
と言う。これは単結合と違って、炭素炭素二重結合では、一方の原子が結合を軸に自由に
回転できないことによって生まれる異性体である。
またRとSはとくに光学異性体と呼ばれる。これらは互いに鏡像の関係になっている。
このような異性体が生じるのは、1つの炭素に結合する原子や基が4つとも異なる場合で
ある。このような炭素はとくに不斉(ふせい)炭素と呼ばれる。
[3]この実習で扱ったのは、模型に過ぎない。それなら模型に対応する分子が実際に存
在するか。その答は「ほとんど存在する」である。これは分子模型の背景にある、ケクレ
の原子価理論やファント・ホッフの正四面体理論の威力を示している。こんな単純な理論
が、今では数1000万種に及ぶ有機化合物(人間が合成したものが多い)を包み込んで
いる。
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3.分類と検出反応
[a]有機化合物の分類(その1)
実習1でも体感できたように、有機化合物の種類は膨大であり、うまく分類して整理す
ることが大切である。
備考:この講座では時間の都合で、芳香族化合物はすべて割愛する。また窒素を含むアミ
ンのような化合物にも触れない。
[1]飽和炭化水素
実習1[a]のメタン、エタン、プロパンや、「整理」の@,A,F,Gは「飽和炭化水
素」と呼ばれる。炭化水素とは炭素と水素の化合物であるが、飽和とはすべての結合が単
結合という意味である。
次に改めていくつかの飽和炭化水素の構造式を示す。

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メタンは天然ガスの主成分であり、都市ガスや火力発電所の燃料として利用される。プロ
パンは家庭用燃料の液化石油ガス(LPG)の主成分である。ブタンは卓上こんろなどの
簡易ボンベの主成分である。
なお「整理」の参考にあるメチル基やエチル基は、それぞれメタン、エタンから水素を
1つ除いた基(原子の集団)である。そして炭化水素から1つ(あるいはいくつか)の水
素を除いた基はまとめて「炭化水素基」と呼ばれる。
[2]不飽和炭化水素
実習1[a]のエチレン、アセチレンや、「整理」のB,C,D,Eは「不飽和炭化水素」
と呼ばれる。不飽和とは炭素炭素の二重結合や三重結合(「整理」の参考)を持つという
意味である。炭素炭素二重結合や炭素炭素三重結合は「官能基」と呼ばれる。官能基とは
物質の性質に飽和炭化水素とは異なるある特徴を与えるような基のことである。そして有
機化合物は基本的には官能基によって分類される。
次に改めていくつかの不飽和炭化水素の構造式を示す。

エチレンはポリエチレンの原料である。アセチレンはガス溶接において酸素と混合して燃
焼して3000℃以上の炎をつくり、鉄を融解する。
[3]アルコール
「整理」のH,IやK,L,Mは「アルコール」と呼ばれる。−O−H という基はヒドロ
キシ基と言い(「整理」の参考)、アルコールとは炭化水素の水素をヒドロキシ基で置き
換えた構造の化合物である。
次に改めていくつかのアルコールの構造式を示す。

メタノールはアルコールランプの燃料として利用される。エタノールは酒類に含まれ、日
常会話でアルコールと言うとこれを指す。イソプロパノールは消毒綿に利用される。グリ
セリンは化粧品などの保湿剤として利用され、また脂肪を構成する物質でもある。
[4]アルデヒド・ケトン
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「整理」のPとQは「アルデヒド」と呼ばれる。−C−H という基はホルミル基と言い、
‖
O
ホルミル基を持つ化合物はアルデヒドと呼ばれる。
またホルミル基にも含まれる −C− という基はカルボニル基と言う。カルボニル基が
‖
O
2つの炭化水素基と結合した構造の化合物はケトンと呼ばれる。
次にいくつかのアルデヒドとケトンの構造式を示す。

ホルムアルデヒドが水に溶けた溶液はホルマリンと言い、生物標本の防腐剤として利用さ
れる。
[5]カルボン酸
「整理」のOはカルボン酸と呼ばれる。−C−O−H という基はカルボキシ基と言い、
‖
O
カルボキシ基を持つ有機化合物はカルボン酸と呼ばれる。
次にいくつかのカルボン酸の構造式を示す。

酢酸は食酢に含まれ、酸味の元である。クエ
ン酸はレモンなどに含まれる。
カルボン酸はその名のとおり酸性であり、BTBを黄色に変色させる。
[b]検出反応など
それぞれの種類の有機化合物はどんな特徴があるだろうか。ここではそれらを検出する
反応を中心に見てみよう。
[1]燃焼反応
実験2では、ろうそくのロウを融解し、続いて沸とうさせ、点火して燃焼させた。 通
常のろうそくのロウはパラフィンという、沸点が300℃以上(炭素数がおよそ17以
上)の飽和炭化水素の混合物である。ちなみにろうそくは簡単に点火できる。これは融解、
沸とう、燃焼が見事に制御された、すばらしい発明であることに気付くであろう。
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飽和炭化水素は、他の物質と反応しにくい不活性な有機化合物である。しかし燃焼反応
のように高い温度という過激な条件では別である。燃焼は発熱反応であり、高い温度を自
ら継続して連鎖的に反応が進行する。飽和炭化水素は完全燃焼すると二酸化炭素と水(水
蒸気)になる。
このように書くと燃焼反応は飽和炭化水素に限定されるような誤解を与えるが、およそ
有機化合物は燃焼することが特徴のひとつであることを確認しておく。
実験2では、高温の液体パラフィンを水に注ぐと、吹き上がって発火した。これは接触
する水がパラフィンに加熱されて一気に沸とうし、その水蒸気に乗せられてパラフィンも
多く蒸発して空気と混合するためである。これは天ぷらやフライを揚げるときにも起こり
うる危険な現象である。
別の視点では、水に溶けにくい沸点が高い物質を水と混合して加熱すると、100℃で
もよく蒸発させることができる。これが実験1において、沸点178℃のリモネンが水が
沸とうする温度で蒸留された理由である。この方法は空気中の酸素からも遠ざけられるの
で、分解しやすい物質の分離に有効であり、水蒸気蒸留と呼ばれる。
[2]不飽和炭化水素の検出
実験3では、臭素水に、シクロヘキセンを滴下してよく振り混ぜたり、アセチレンを吹
き込んだりすると、やまぶき色が脱色した。これに対してヘキサンではそのような変化は
なかった。
これはシクロヘキセンを例にすると、次のように臭素が反応するためである。

この反応は炭素炭素二重結合の一方の結合と臭素の単結合が切れて、新たに炭素臭素結合
が生じて、シクロヘキセンに臭素が付け加わると捉えることができる。このような反応形
式は「付加」と呼ばれる。実際の反応のしくみはもっと複雑であるが、初歩の段階ではこ
のように化学反応を形式的に整理すると記憶しやくなるという利点がある。一般に炭素炭
素の不飽和結合には臭素が付加反応する。ちなみに「不飽和」とは、このように分子の骨
格を壊すことなく、さらに原子や基が結合できるという意味である。
つまり臭素水は炭素炭素不飽和結合を検出できる。ただし有機化合物は多様であり、臭
素水が脱色すれば不飽和結合があると断定することは避けたい。
実験3では、中性過マンガン酸カリウム水溶液に、同じサンプルを加えた場合に赤紫色
が脱色した(褐色になった)。これも炭素炭素不飽和結合に特徴的な反応である。
- 14 -
通常はこのように2つの検出反応が陽性の場合、そのサンプルが炭素炭素不飽和結合を
持つ可能性が高いと解釈する。
実験1で得たリモネンはそのように振る舞った。これは炭素炭素二重結合を2つ含む次
の構造式で示される。

[3]アルコールの検出
実験4では、水で薄めた硝酸セリウム試薬に、メタノール、イソプロパノールを加える
と、黄色が赤橙色になった。これに対して酢酸は変化がなかった。これはこの試薬がアル
コールを、つまりアルコールのヒドロキシ基を検出できることを示す。
焼酎、砂糖でも赤橙色になった。焼酎にはエタノールが含まれる。砂糖の主成分はショ
糖(スクロース)であり、すぐ後で触れるが、スクロースも多数のヒドロキシ基を持つ分
子である。なお硝酸セリウム試薬の反応式などには踏み込まない。
[4]アルデヒドの検出(銀鏡反応)
実験5では、硝酸銀水溶液に水酸化ナトリウム水溶液とアンモニア水を加える。無色透
明な水溶液になったときには、ジアンミン銀イオン [Ag(NH3)2]+ が生成している。こ
れはトレンス試薬と呼ばれる。
これにホルマリン(ホルムアルデヒド)を加えると、器壁の一部が銀鏡になり、黒褐色
沈でんが生成した。これは銀鏡反応と呼ばれる。これに対してアセトン、メタノール、酢
酸では変化がなかった。つまりこの試薬はアルデヒドのホルミル基を検出できる。
ブドウ糖も銀鏡反応を示した。ここで次にグルコース(ブドウ糖)とスクロース(ショ
糖)の構造式を示す。


グルコース(ブドウ糖) スクロース(ショ糖)
[5]アルデヒド・ケトンのカルボニル基の検出
実験6では、アセトアルデヒド、アセトンをエタノールに溶かして、2,4−ジニトロフ
ェニルヒドラジン試薬を加えると、黄色から橙色の沈でんが生成した。これに対してイソ
プロパノールや酢酸では変化がなかった。つまりこの試薬はアルデヒドやケトンのカルボ
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ニル基を検出できる。そして同時に銀鏡反応を示せばアルデヒド、そうでなければケトン
と推定できる。
目次へ
4.酢酸エチルの合成
仕上げとして、自分の手で有機化合物を合成してみよう。
[a]酢酸エチルの合成
[1]実験7では、太い試験管で酢酸に濃硫酸とエタノールを加えて加温し、反応混合物
を炭酸ナトリウム水溶液に注ぐと二酸化炭素が泡立って発生した。これを元の試験管にも
どすと、酢酸エチルが上層になって分離した。
この酢酸とエタノールは次のように反応する。

つまり酢酸からカルボキシ基のヒドロキシ基が、エタノールのヒドロキシ基の水素が切り
取られて残りが結合する。このように2つの分子から簡単な分子が切り取られ残りが結合
するという反応形式は「縮合」と呼ばれる。また切り取られる分子に注目すると「脱水」
と言うこともできる。なおカルボキシ基のヒドロキシ基とヒドロキシ基の水素が切り取ら
れることが、同位体を使った研究から解明されている。
[2]実験7では、酢酸エチルを浸ませた脱脂綿でこすると、カラー印刷を拭き取ること
ができた。
酢酸エチルは、水には溶けにくく、カラーインクのような有機化合物を溶かしやすく、
有機溶剤として利用される。
[b]有機化合物の分類(その2)
[1]エステル
上の例のように、カルボン酸とアルコールが脱水縮合した構造の有機化合物はエステル
と呼ばれる。そして −C−O−(少なくとも右の原子価は炭素に結合)という基はエステ
‖
O
ル結合と呼ばれる。ちなみに「整理」のQはエステルである。
[2]エーテル
アルコールが脱水縮合した構造の有機化合物はエーテルと呼ばれる。そして −O−(2
つの原子価は炭素に結合)という基はエーテル結合と呼ばれる。ちなみに「整理」のJ,R,
S,(23)はエーテルである。
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林 正幸と主万子の始めの
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