先進科学塾1日コース

    Advancing Science Workshop

  「科学(理科)をわくわくしながら勉強する」にはどうしたらよいだろうか。
  先進科学塾はそれに答えようとする企画です。

 原子量とアボガドロ定数を測ろう

 物質は目に見えない小さい原子からできています。その原子の質量を表す数値である原
子量を、化学のテクニックを駆使して、自分たちで測ってみましょう。マグネシウム、水
素、硫黄など。
 酸素の原子量は16。それなら16gの酸素にはいくつの酸素原子が含まれているでし
ょうか。その個数がアボガドロ定数。これも計ってみましょう。皆さんはその「どでか
い」数値を実感するのです。

        

  日 時   7月16日(日) 10時〜4時

  場 所   名古屋市科学館の8階科学実験室


   氏名:

                  - 1 -

                                06.7.16
                                講師:林 正幸

 原子量とアボガドロ定数を測ろう

          自己紹介
 36年間、高校の化学の先生を勤め、03年3月に退職しました。そして自由になって
ますます「理想の化学教育」を追求できると燃えています。
 ホームページは96年から開設しています。
    http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/
そして高校生などからメールで質問を受けています。
    masasuma@water.sannet.ne.jp

実験の取り組み方
(1)危険防止のため安全めがねをかける。
(2)積極的に取り組み、協力し合う。
(3)文章を読んで予め操作を頭に描き、分からないときは先生に確かめる。
(4)よく観察し、その意味を考察し、できるだけ疑問を見つける。
(5)「D」記号がある操作はドラフトで行う(今回はない)。
(6)実験中に気分が悪くなったらすぐに申し出る。
(7)廃棄物に配慮し、器具を洗浄し、机上を雑巾で拭く。

        目 次
    A 原子量の測定
      
[a]原子量とは
      [b]実 験
        実験1 マグネシウムの原子量
        実験2 水素の原子量
        実験3 硫黄の原子量
      [c]解 説
      [d]現代の原子量
    B アボガドロ定数の測定
      [a]アボガドロ定数と1mol(モル)
      [b]実 験
        実験4 単分子膜の面積
        実験5 結晶構造と1molの体積
        実験6 面心立方格子モデルの作成(おみやげ)
      [c]解 説

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A 原子量の測定

[a]原子量とは

[1]物質は目には見えない小さい原子からできている。原子量とは、その原子の質量を
表す数値である。
 長い間、酸素が他の原子と化合物をつくりやすいということで、酸素原子を基準にする
原子量が使われた。
  「酸素原子の質量を16とすると、その原子の質量はいくつかという数値」
この利点のひとつは、そうすると水素の原子量が1になることであった。
[2]現在の基準については後で紹介するが、酸素原子の質量を16とする基準は、それ
と0.005%以下の違いしかなく実質的には同じ基準と見なせる。そしてこの基準は、化

                  - 2 -

学実験を通して原子量を測ることができるという教育的利点がある。もちろんこの基準で
は、酸素の原子量は16である。なお原子量には単位を付けないことに注意しよう。

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[b]実 験
 幸い現在の私たちは、正しい化学式を知っている。これを活用して原子量を測ってみよ
う。

実験1 マグネシウムの原子量
(1)空の「鉄製るつぼ」の質量を化学天びんで測る。
    るつぼの質量 (      )g
(2)るつぼを容器にして、マグネシウム粉末(か粒)0.25gほどを正確に測り取る。
    マグネシウムの質量 (     )g
(3)マグネシウムが底全体に広がるようにし、三脚に乗せた三角架にるつぼを置き、バ
ーナーの中火で数分間加熱し、様子を観察する。
参考:強火にすると激しく燃焼して、酸化マグネシウムが白煙になって失われる。
(4)冷めたら、るつぼ全体の質量を測る。
    酸化マグネシウムの質量 (     )g
(5)酸化マグネシウムの化学式は MgO である。マグネシウムの原子量を計算してみ
よ。





<準備などのメモ>
・「鉄製るつぼ」
  甘露ひしゃく(底面の外径が30mm)の柄を切断してつくる。
・化学天びん
  mgまで測れるもの

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実験2 水素の原子量
(1)200mLメスシリンダーに水を満たし、空気を入れないようにラップで包み、半
分ほど水を入れた水そうに倒立させ、ラップを外す。
(2)「導管部」の元をピンチコックで締め、ゴム管の先に水が入らないようにスチロー
ル球(φ5mm)で軽くせんをし、「捕集台」を通してメスシリンダーの最上部に差し入

                  - 3 -

れる。
(3)100mL三角フラスコに2mol/L塩酸15mLを入れる。
(4)マグネシウムリボン約13cmを、サンドペーパーで磨き、その質量を正確に測る。
    マグネシウムの質量 (     )g
参考:リボンは0.16gくらいにする。
(5)リボンを巻いてゴムせんの下の銅線に引っかけ、落とさないようにゴムせんを三角
フラスコに締め、ピンチコックをガラス管の位置にもどす。
(6)リボンを落として水素を発生させる。
注意:スチロール球が外れる反動でメスシリンダーが倒れる可能性があるので、手で軽く
支える。
(7)数分放置し、その間に室温を測る。
    室温 (  )℃
参考:三角フラスコを水そうに浸けて冷やすとよい。
(8)ゴム管中の気体がメスシリンダーに入らないように指で押さえて手早く引き出し、
メスシリンダーの気体の体積を測る。
    水素の体積 (     )mL
(9)フラスコの廃液は中和処理にまわす。
(10)水素の密度と水蒸気圧を使って、水素の質量を計算する(6ページの[2]項と
7ページの[3]項を参照)。
    水素の質量 (     )g
 反応式は次のようである。
    Mg + 2HCl ―→ H2 + MgCl2
水素の原子量を、マグネシウムの原子量を使って計算してみよ。





<準備などのメモ>
・「導管部」
 5号ゴムせん、銅線、ガラス管(8cm、φ6)、ピンチコック、ゴム管(80cm)
・「捕集台」
 ポリコップの底部を利用して作成

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実験3 硫黄の原子量

                  - 4 -

(1)100mLビーカーに約20mLの水を入れ、全体の質量を化学天びんで測る。
    水の入ったビーカーの質量 (      )g
(2)濃硫酸(98%)を5mLピペットで20滴ほど加え、再び質量を測る。
    濃硫酸の質量 (     )g
参考:濃硫酸は0.90gくらいにする。
(3)マグネシウムリボン約25cmを、サンドペーパーで磨き、その質量を測る。
    マグネシウムの質量 (     )g
参考:リボンは0.28gくらいにする。
(4)リボンを渦巻き状にして投入する。反応がゆっくりになったら、温度計で調べなが
ら70℃まで加熱する。
(5)ほとんど気体が発生しなくなったら、リボンをピンセットで取り出し、水洗いして
ヘアドライヤーで乾燥し、その質量を測る。
    反応したマグネシウムの質量 (     )g
(6)パーセント濃度から、硫酸自身の質量を計算する。
    硫酸自身の質量 (     )g
 反応式は次のようである。
    Mg + H2SO4 ―→ H2 + MgSO4
できれば硫黄の原子量を、マグネシウム、水素、酸素の原子量を使って計算してみよう。





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[c]解 説

実験1
[1]銀色のマグネシウムの小粒を空気中の酸素と化合させて、白色の酸化マグネシウム
にした。あるデータでは、0.253gのマグネシウムから0.419gの酸化マグネシウ
ムが生成した。酸化マグネシウムの化学式は MgO であり、マグネシウム原子と酸素原
子の個数比は1:1であることを示す。
 まずマグネシウム0.253gと化合した酸素は
    0.419−0.253 = 0.166[g]
である。したがってマグネシウム原子は酸素原子の
    0.253/0.166 = 1.524 倍
の質量である。酸素原子の質量を16とすると、マグネシウムの原子量は

                  - 5 -

    16×1.524 = 24.4
となる。
 ちなみに正確な数値は24.305である(通常は24あるいは24.3を使う)。

実験2
[1]十分な量の希塩酸にマグネシウムリボンを投入して発生する水素をメスシリンダー
に捕集した。あるデータでは、0.158gのマグネシウムから、室温14℃の下で(大気
圧は1atm(気圧)=1013hPa(ヘクトパスカル)と見なす)、158mL=
0.158L(リットル)の水素が発生した。反応式は次のようである。
    Mg + 2HCl ―→ H2 + MgCl2
         塩酸       塩化マグネシウム
発生する水素の化学式(より細かくは分子式)は H2 であり、これは水素が、水素原子2
個が結合した水素分子からできていることを示す。反応式は、マグネシウム原子1個が反
応して水素分子1個が生成することを示す。つまりマグネシウム原子1個から水素原子2
個ができる。
 したがって発生する水素の質量と反応するマグネシウムの質量の比は、水素原子の質量
がマグネシウム原子の質量の何倍かという数値の2倍になる・・・。
備考:体積の正式な単位は[dm3 ](立方デシメートル)や「cm3 ](立方センチメ
   ートル)などである。しかし[dm3 ]と同じ意味の[L](リットル)は許容さ
   れており、それと絡んで[mL](ミリリットル)も許されている。やがて正式な
   単位に移行するであろうが、化学の現状から後者も使うことにする。
[2]密 度
 ちょっと待て! 水素の量は体積で計測した。密度を使って質量に換算する必要がある。
 通常は気体の密度は
    「体積1Lあたり、質量は何gか」
を表す。その単位はg/L(グラム毎リットル)である。
 しかし気体は温度や圧力によって体積が大きく変化してしまう。そこで圧力は1atm
(=1013hPa)の下としよう。その場合の温度と水素の密度のグラフが次ページに
ある。これから14℃における密度は0.0856g/Lである。
 と言うことは、2倍、3倍して考えると
    1Lなら、          0.0856g
    2Lなら、0.0856×2 = 0.1712g
    3Lなら、0.0856×3 = 0.2568g
したがって質量は次の関係式で計算できる!
    質量 = 密度×体積

                  - 6 -


    

だから発生した水素の質量は
    0.0856×0.158 = 0.0135[g]
となる。
 ここで忠告! 計算するための「公式」を記憶して切り抜けることが流行っている。し
かし、密度の意味から上のように考えて、必ず自分でどのように計算すべきかを見つける
ように努力せよ。意味は単位に注目すると分かりやすいことが多い。
[3]水蒸気の補正
 今回は深入りできないが、メスシリンダー中の気体には水蒸気が含まれ、本当の水素は
いくらか少ない。上に温度と含有率(掛けるべき数値)のグラフがある。14℃では
0.984である。
    0.0135×0.984 = 0.0133[g]
[4][1]項の続きである。発生する水素の質量と反応するマグネシウムの質量の比は
    0.0133/0.158 = 0.0842
となるので、水素の原子量は(得られたマグネシウムの原子量を使って)
    24.4(0.0842/2)= 1.03
となる。
 ちなみに正確な数値は1.0079である(通常は1あるいは1.01を使う)。

実験3
[1]ある質量の硫酸を含む水溶液にマグネシウムリボンが何gまで反応するかを計測し
た。あるデータでは、98%の濃硫酸0.905gを含む水溶液が、0.220gのマグネ
シウムと反応した。反応式は次のようである。
    Mg + H2SO4 ―→ H2 + MgSO4
         硫酸      硫酸マグネシウム

                  - 7 -

硫酸の化学式(分子式)H2SO4 から、硫酸分子は水素原子2個、硫黄原子1個、酸素原
子4個からできている。反応式から、マグネシウム原子1個が硫酸分子1個と反応する。
 求めたいのは硫黄 S の原子量である。
[2]パーセント濃度
 ここで、反応した硫酸自身の質量を計算するためにパーセント濃度を勉強する。正確に
は質量パーセント濃度と言い
  「溶液100gあたり、溶質が何g含まれるか」
を表す。その単位は%(パーセント)である。ここで溶質とは溶けている物質、溶媒とは
それを溶かしている物質、そして溶液はその全体を指す用語であることに注意する。ちな
みにパーセント( per-cent )とは「100あたり」という意味である。
 98%の濃硫酸は(2倍、3倍して考えると)
    溶液100gなら、硫酸が       98[g]
    溶液200gなら、硫酸が98×2 = 196[g]
    溶液300gなら、硫酸が98×3 = 294[g]
したがって硫酸の質量は次の関係式で計算できる。
    硫酸の質量 = パーセント濃度×(溶液の質量/100)
だから濃硫酸0.905gに含まれる硫酸の質量は
    98×(0.905/100)= 0.887[g]
となる。
[3]分子量と化学式量
 分子量の定義にも触れよう。それは
  「酸素原子の質量を16とすると、その分子の質量はいくつかという数値」
である。つまり原子量と同じ基準で、分子の質量を表すのである。それなら原子量を足し
合わせればよい。水素 H2 の分子量は、正確な原子量を使って2である。
 分子にならない物質もあるので、考えを化学式量あるいは単に「式量」と呼ばれるもの
に進めよう。これは
  「酸素原子の質量を16とすると、その化学式1個の質量はいくつかという数値」
である。考え方は同じである。たとえば酸化マグネシウムは分子にならない。そして
MgO 1個の式量は(正確な原子量を使って)
    24.3+16 = 40.3
である。
[4][1]項の続きである。データから、0.887gの硫酸が0.220gのマグネシ
ウムと反応したのである。すでに勉強したように、Mg 1個が H2SO4 1個と反応する。
したがって硫酸の質量とマグネシウムの質量の比は
    0.887/0.220

                  - 8 -

となる。したがって硫酸の分子量は(得られたマグネシウムの原子量を使って)
    24.4×(0.887/0.220) = 98.4
となる。硫黄の原子量を x とすると(酸素の原子量と得られた水素の原子量を使って)
    1.0×2 + x + 16×4 = 98.4
    x = 32.4
となる。
 ちなみに正確な数値は32.06である(通常は32あるいは32.1を使う)。

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[d]現代の原子量
[1]ドルトンはそれぞれの元素はただ1種の原子からできていると考えた。しかし現在
では数種の同位体の混合物であることが分かっている。たとえば炭素では
    炭素12    98.89%
    炭素13     1.11%
となっている。そしてまた質量分析器という装置が発達して、同位体の質量とその自然の
存在率などが正確に計測できるようになった。
 そこで現在では、原子量の基準は
  「炭素12の質量を12とすると、他の原子の質量がいくつかという数値」
として定義されることになった。そして同位体の混合物であるそれぞれの元素の原子量は、
同位体の原子量をその存在率を考慮して平均して定められることになった。たとえば炭素
の原子量は12.011である(通常は12を使う)。

          よく使う原子量
  水素 H       1       ヘリウム He    4
  ホウ素 B     10.8(11)  炭素 C      12
  窒素 N      14       酸素 O      16
  ナトリウム Na  23       マグネシウム Mg 24.3(24)
  アルミニウム Al 27       硫黄 S      32.1(32)
  塩素 Cl     35.5      カルシウム Ca  40.1(40)
  鉄 Fe      55.8(56)  銅 Cu      63.5(64)
  亜鉛 Zn     65.4(65)  銀 Ag     107.9(108)
  鉛 Pb     207.2(207)
             (  )内はより簡略な数値

B アボガドロ定数の測定

                  - 9 -

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[a]アボガドロ定数と1mol(モル)

[1]酸素の原子量は16である。それなら、酸素16gにはいくつの酸素原子が含まれ
るだろうか。原子は光学顕微鏡でも観察できないので、それはさぞかし大きな数値であろ
う。これはアボガドロ定数と呼ばれるが、後で実験により計測してみよう。
 さてそれなら、酸素16gに含まれる酸素原子の個数と、炭素12.011gに含まれる
炭素原子の個数には、どんな関係があるだろうか。
    @酸素原子の個数の方が大きい
    A炭素原子の個数の方が大きい
    B両方の個数は等しい
正解はBである。
 水 H2O の式量(分子量)は18である(簡単のため厳密な数値は使わない)。それで
は酸素16gに含まれる酸素原子 O の個数と、水18gに含まれる H2O の個数すなわ
ち水分子の個数についてはどうだろうか。あるいは酸化マグネシウム MgO の式量は
40.3である。酸化マグネシウム40.3gに含まれる MgO の個数についてはどうだ
ろうか。
 正解は「すべての個数は等しい」である。
[2]それなら、物質の量を測るのに「この個数」を単位にしてどうだろうか。物質は原
子や分子などの粒からできているので、同じ個数を同じ量であると捉えるのである。その
単位がmol(モル)である。1molとはアボガドロ定数だけの個数の物質である。よ
り厳密には現代の原子量の定義を踏まえて、1molとは
  「炭素12という同位体12gに含まれる原子数に等しい個数の物質の量」
であるとする。そしてこの単位で表される量を物質量と呼ぶのである。それはgやkgと
いう単位で表される量が質量、mLやLという単位で表される量が体積というのと同じで
言い方である。
 物質量は、国際単位系(SI)で選ばれた7種の基本単位のひとつである。
[3]ここでひとつ注意をする。酸素原子1molと酸素分子1molの質量は同じであ
ろうか。否である。酸素16gには酸素原子は1mol含まれる。しかし酸素分子は0.5
molしか含まれない。酸素分子の個数を問題にするなら、その式量(分子量)である
32を元に考え、32gが酸素分子1molになるのである。「どの粒に注目している
か」これをあいまいにすると、とんでもない間違いを犯す。だから、考えるときは、名称
より化学式を使った方がよい。

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[b]実 験
 それでは実験してみよう。すでに分かっているミクロの情報も活用したりする。

                  - 10 -


実験4 単分子膜の面積
 ステアリン酸は水面に薄い膜をつくって広がる。単純に考えて、ステアリン酸分子は立
方体でありそれが図のように水面に並ぶと仮定して、アボガドロ定数を求めてみよう。

    

(1)バットを洗剤でよく洗い、水でよくすすぐ。
(2)50mLビーカーに、目盛りを利用してヘキサン50mLを注ぐ。
(3)ステアリン酸0.015gを化学天びんで測り、ガラス棒でかき混ぜてヘキサンに溶
かす。
参考:ステアリン酸の質量[g]の数値は、溶液の体積[mL]の(0.015/50=)
   1/3300である。また密度を1g/cm3 とするとステアリン酸の体積[mL]
   も、溶液の体積[mL]の1/3300である。
(4)2mLピペットで、上の溶液0.5mLを採り、滴下して何滴かを調べる。
    0.5mL (  )滴
(5)バットに水を張り、マーブリング液1滴だけをフロートを使って水面に広げる。
(6)中央に上の溶液を20滴だけ滴下し、できる単分子膜の広がりを確認する。
参考:ヘキサンは揮発して失われる。
注意:やり直す場合は、洗剤でよく洗うことから始める。
(7)方眼紙を被せて写し取り、新聞紙に挟んで水を吸い取り、1cm2 のます目がいく
つあるか数えて面積を求める。
    単分子膜の面積 (   )cm2
参考:半分以上が白います目を数える。
(8)バットを再び洗剤で洗う。
(9)残った溶液は、燃焼処理にまわす。
(10)まず単分子膜の厚み、つまりステアリン酸分子の大きさ(立方体の1辺)を計算
せよ。
 次にその2乗を分子の断面積(立方体の面)として、溶液20滴に含まれるステアリン
酸分子の個数を計算せよ。
 そしてステアリン酸 C1735COOH の分子量は284である。アボガドロ定数を計
算してみよう。

                  - 11 -






<準備などのメモ>
・バット
  特大 325×445×70mm
・マーブリング液
  マーブリングセット(墨雲堂)

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実験5 結晶構造と1molの体積
(a)結晶構造
(1)結晶は、単位格子と呼ばれる立体が積み重なったものとして表現される。単位格子
が立方体である次の物質の結晶モデルを詰め直すことで、いくつの原子や分子(正確には
化学式)が含まれるかを調べる。
・鉄 Fe
  これは体心立方格子と呼ばれる。鉄の場合は1辺が2.87×10-8 cmである。
  含まれる鉄原子 (  )個
・アルミニウム Al
  これは面心立方格子と呼ばれる。
  アルミニウムの場合は1辺が4.05×10-8 cmである。
  含まれるアルミニウム原子 (  )個
・塩化ナトリウム NaCl
  文字通り塩化ナトリウム型と呼ばれる。
  塩化ナトリウムの場合は1辺が5.64×10-8 cmである。
  含まれる NaCl  (  )個
参考:1辺は、エックス線解析で計測される(数値は化学便覧より)。
(b)1molの体積
 1molの物質の質量は、原子量や式量にg(グラム)を付けた量であるから
    鉄        55.9g
    アルミニウム   27.0g
    塩化ナトリウム  58.5g
である。次の計測から、それぞれの1molの体積を求める。
(1)鉄とアルミニウムは、定規と台ばかりでブロックの体積と質量を測る。

                  - 12 -

    鉄ブロックの体積 (    )cm3
          質量 (   )g
    鉄1molの体積 (    )cm3
    アルミニウムブロックの体積 (    )cm3
               質量 (   )g
    アルミニウム1molの体積 (     )cm3
(2)塩化ナトリウムは、B4用紙の上でカッターの刃と金づちを使って、天日塩をへき
開して直方体を切り出し、ノギスと化学天びんでその体積と質量を測る。
参考:天日塩の中に直方体が隠れている。直方体は直交する2つのへき開面が分かれば切
   り出せる(3つ目のへき開面は両者に直交する)。へき開面では結晶は容易に割れ
   る。天日塩を注意深く観察し、見つからない場合は端近くを割ってみる。直方体は
   3辺の合計が1.5cm以上になるようにする。
    直方体の辺の長さ
      (    )cm (    )cm (    )cm
参考:ノギスは0.005cm単位で計測する。そして2回計測して、確認する。
    塩化ナトリウムの体積 (     )cm3
            質量 (     )g
    塩化ナトリウム1molの体積 (    )cm3
注意:天日塩の残がいは汚さないように回収する(飽和食塩水にする)。
備考:これは大阪教育センターの山本さんの方法である。
(c)アボガドロ定数
(1)それぞれの物質1molに単位格子がいくつ含まれるか、そして単位格子に含まれ
る原子や分子(正確には化学式)の個数を考慮して、アボガドロ定数を計算してみよう。





<準備などのメモ>
・鉄とアルミニウム
  5cm角のブロック
・天日塩
  ジャパンソルト(株)東京支社(電話03−3538−1112)

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実験6 面心立方格子モデルの作成(おみやげ)

                  - 13 -

(1)ペイントで着色したスチロール球(φ35mm)4個を、カッターナイフで半球6
個と8分球8個に切断する。
(2)塩ビ板(48mm四角)6枚を、セロテープで立方体に組み立てる。
(3)半球と8分球を詰めて、封をする。
参考:カットはきれいなカッターを使い、成形のときの赤道や穴を利用し、そして左右の
   バランスに注意する。

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[c]解 説

実験4
[1]わずかなステアリン酸を水面に広げて、その面積を計測した。あるデータでは、溶
液0.5mLが25滴であり、膜の面積が482cm2 になった。ステアリン酸分子は立方
体でありそれが水面に並ぶと仮定して、考えを進めてみよう。
 まずステアリン酸分子の大きさ(立方体の1辺)である。実験の説明のようにステアリ
ン酸自身の質量と体積は
    0.5×(20/25)×(1/3300) = 0.00012
                     = 1.2×10-4[g]or[mL]
ステアリン酸の正確な密度は0.94g/cm3 であるが、ここでは大まかに考える。
 薄い膜の厚みは、体積を面積で割って
    0.00012/482 = 0.00000025
               = 2.5×10-7[cm]
つまりこれが分子の大きさである。
[2]次に本題のアボガドロ定数である。分子の断面積(立方体の面)は
    (2.5×10-7 )2 cm2
溶液20滴に含まれるステアリン酸の分子数は、膜の面積を分子の断面積で割って
    482/(2.5×10-7 )2 = 7.7×1015
である。
 ステアリン酸1molつまり284gに含まれる分子数は
    7.7×1015 ×(284/1.2×10-4 ) = 1.8×1022
つまりこの数値こそ、求めるアボガドロ定数である。
備考:実験5と同じように、1molの体積と分子1個の体積からも計算できる。
 この数値は「どでかい」。しかし残念ながら正確なものではない。この実験は後でもう
一度吟味する。
参考:指数の計算例
    1000 = 103

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    0.01 = 1/100 = 1/102 = 10-2
    1/10-8 = 108
    102 ×103 = 105
    103 ×10-4 = 10-1
    (102 )3 = 106
    (10-8 )3 = 10-24

実験5
[1]まず結晶モデルを使って、単位格子に含まれる原子や分子(正確には化学式)の個
数を調べた。それは次のようであった。
    鉄 Fe          2個
    アルミニウム Al     4個
    塩化ナトリウム NaCl  4個
 次に体積と質量を計測して、1molの体積を求めた。あるデータでは
    鉄        125cm3 が982g
    アルミニウム   125cm3 が335g
    塩化ナトリウム  0.350cm3 が0.746g
であった。したがって
  鉄1mol
    125×(55.9/982) = 7.12[cm3
  アルミニウム1mol
    125×(27.0/335) = 10.07[cm3
  塩化ナトリウム1mol
    0.350×58.5/0.746 = 27.4[cm3
ちなみに、このような計算では、2つの量の大小関係を吟味するとよい。たとえば鉄では、
982gが125cm3 である。だから55.9gは125より小さい数値のはずである。
したがって125に掛けるべき数値は1より小さい(55.9/982)であって、その逆
数(982/55.9)ではあり得ない。
[2]さて単位格子の体積は、1辺を3乗すればよい。後はそれぞれの物質1molに単
位格子がいくつ含まれるかを計算し、それに単位格子に含まれる原子や分子(正確には化
学式)の個数を掛ければ、アボガドロ定数が求められる。
  鉄の場合
    {7.12/(2.867×10-8 )3 }×2 = 6.04×1023
  アルミニウムの場合
    {10.07/(4.050×10-8 )3 }×4 = 6.06×1023

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  塩化ナトリウムの場合
    {10.07/(4.050×10-8 )3 }×4 = 6.06×1023
 この実験ではかなり正確な数値が得られた。より正確なアボガドロ定数は次のようであ
る。
    6.022×1023
通常は6×1023 を使う。この数値は普通に書くと次のようである。
    600000000000000000000000
これは1億の1億倍のさらに1億倍、に近い数値である。
[3]単位格子の1辺の長さというミクロな情報を活用した。実験5でも、そうすれば結
果は改善される。
 ステアリン酸分子の構造式は左図のようであり、立方体にはほど遠く、細長い円筒と見
なすべきであり、単分子膜はそれが右図のように並んでいる。



つまり実験から得られた分子の大きさは円筒の長さであり、この2乗が分子の断面積とす
るのは無理がある。そこで断面積に2.2×10-15 cm2 という数値を使ってみよう。す
ると溶液20滴に含まれるステアリン酸の分子数は
    482/2.2×10-15 = 2.2×1017
ステアリン酸1molつまり284gに含まれる分子数は
    2.2×1017 ×(284/1.2×10-4 ) = 5.2×1023
となる。
 ちなに、通常の分子の大きさは、ステアリン酸分子の長さより1桁小さい。たとえはメ
タン CH4 の大きさは
    4.6×10-8 cm あるいは 0.46nm(ナノメートル)
である。


 自分の実験データを使って、原子量やアボガドロ定数を求めると、科学者の気分になれ
たでしょうか。あるいはこれらの数値がより実感の湧くものになったでしょうか。
 以上は、私の講座プラン「モル単位(物質量)の世界」の抜粋です。興味があるなら
、 ホームページの「講座プラン(化学)」の中をのぞいてみてください。

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