先進科学塾1日コース

    Advancing Science Workshop

  「科学(理科)をわくわくしながら勉強する」にはどうしたらよいだろうか。
  先進科学塾はそれに答えようとする企画です。

 酸化と還元の反応を解読しよう

 酸化と還元の反応は身近なものも多いですが、それを理解するのは簡単ではありません。
高校化学でこの分野を学習して、頭が混乱した経験を持つ人もいることでしょう。
 この講座では、10を超えるおもしろい実験をします。その意味を解読して酸化と還元
の考えを統一し、酸素原子のやり取り、酸化数の増減、電子のやり取りという3つの定義
に整理します。また応用として、COD(化学的酸素要求量)の測定も行います。

        

  日 時   12月3/4日(土/日) 10時〜4時

  場 所   名古屋市科学館の8階科学実験室


   氏名:

                  - 1 -

          自己紹介
 36年間、高校の化学の教師を勤め、03年3月に退職しました。そして自由になって
ますます「理想の化学教育」を追求できると燃えています。
 ホームページは96年から開設しています。
    http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/
そして高校生などからメールで質問を受けています。
    masasuma@water.sannet.ne.jp

          実験の取り組み方
(1)危険防止のため安全めがねをかける。
(2)積極的に取り組み、協力し合う。
(3)文章を読んで予め操作を頭に描き、分からないときは先生に確かめる。
(4)よく観察し、その意味を考察し、できるだけ疑問を見つける。
(5)「D」記号がある操作はドラフトで行う。
(6)実験中に気分が悪くなったらすぐに申し出る。
(7)廃棄物に配慮し、器具を洗浄し、机上を雑巾で拭く。

                                  11.12
                                   林 正幸

  酸化と還元の反応を解読しよう

        目 次
    実 験
      
実験1 酸化と還元
      実験2 酸素原子のやり取り
      実験3 化学的酸素要求量の簡易計測
      実験4 酸化数の増減
      実験5 電子のやり取り
    知識と理論
      1.酸化と還元
      2.定義の検討
      3.酸素原子のやり取り
      4.酸化数の増減
      5.電子のやり取り


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実 験

実験1 酸化と還元
(a)銅の酸化と還元
(1)銅線の先のコイル状にした部分を、バーナーで赤熱するまで加熱し、炎から出して
観察する。
(2)表面が黒くなったコイル部分をすこし加熱し、水素が入った試験管を倒立させて試
験管ばさみで持ち、ゴムせんを外して下から銅線を差し入れて観察する。コイル部分が冷
めないうちに、出し入れしてみる。
(3)銅線を差し入れた状態で冷まし、それから取り出す。
(b)ブタンの燃焼(演示実験)
 ブタンをポリ袋に詰め、ゆっくり押し出しながら、点火する。

                  - 2 -

(c)マグネシウムの燃焼
(1)太い試験管に水を5cmほど入れ、スタンドに鉛直に固定して、バーナーで加熱し
て沸とうさせ、水蒸気が口からあふれる状態にする。
(2)まず線香に火を付けて試験管に差し入れ、火が消えることを確認する。
(3)次にマグネシウムリボンをL字型に折り、点火したら落ち着いて試験管の口に差し
入れる。
注意:リボンは斜めにして点火し、口に差し入れるときに鉛直にするとよい。
(4)バーナーの火を消して、フェノールフタレイン2、3滴を加える。
(d)酸化鉄(V)の還元(テルミット反応)
(0)机上に新聞紙を広げ、水でぬらす。
(1)500mlビーカーの底にろ紙2枚を押し込み、水約400mlを入れる。
(2)天びんで、乾燥した酸化鉄(V)8gと、乾燥したアルミニウム粉末3gを計る。
(3)これをわら半紙上で薬さじでよく混ぜる。
(4)三脚に三角架を載せ、ろ紙を折って円錐形に開き、水で濡してから水を切って三
角架に入れる。
注意:ろ紙を濡らすのは、混合が終わってからにする。
(5)混合物をろ紙に入れて、その中にマグネシウムリボンを立てる。そして(1)のビ
ーかをろ紙の真下に置く。
(6)バーナーでリボンに点火して、1mほど離れる。
(7)炎を吹き上げて燃焼し、やがて反応した混合物がろ紙を破って落下し、海底火山の
ようになる。
(8)沸とうが収まったら、かたまりを取り出して金づちでまわりの殻を落とし、生成し
た鉄の玉を磁石に近づけてみる。
<記録>

 

<準備>
・酸化鉄(V)、アルミニウム粉末
  ともに、アルミ箔で作った平たい皿に1cm以下の厚みに広げ、120℃以上で数時
  間は乾燥させ、その後は密閉容器に保管する。
・簡易水素ボンベ、ブタンボンベ

                  - 3 -

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実験2 酸素原子のやり取り
(a)かんしゃく玉
(1)約1cm幅に切った両面テープに、赤リンを小さじでこすり付けて貼り、赤リンを
上にして木板に置く。
注意:量は見本を参考にする。
(2)もう1枚の両面テープに、シャーレに入れた塩素酸カリウムを押し付けて貼り、塩
素酸カリウムを下にして重ねる。
(3)もう1枚の木板を被せ、金づちでたたく。
注意:燃焼しているリンが飛び散る可能性があるので、目を木板より高くして観察する。
(4)残がいはすべて教卓の容器に返す。
参考:まとめて燃焼処理する。
   両面テープは、セロテープより扱いやすいので使用する。
(b)焼き落とし
(1)50mLビーカーに硝酸カリウム1gを入れ、水約10mLを加えて溶かす。
(2)印刷用紙の端に印を付けて、そこからつまようじの太い方に水溶液を付けて一筆描
きする。2cmほど描いては、水溶液を付け直すようにする。
(3)バーナーの炎の上で、乾燥する。
(4)線香に火を付けて印の部分に触れ、観察する。
(c)ヨウ素の生成と消滅
(1)試験管に2%ヨウ化カリウム水溶液5mLを採り、0.5%デンプン水溶液2滴を加
える。
(2)これに35%過酸化水素水1mLを加えて振り混ぜ、観察する。
(3)色が変わったら、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液2滴ないし3滴を加えて振り混ぜ、
観察する。
(4)色がもどったら、もう一度チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて振り混ぜる。
<記録>






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実験3 化学的酸素要求量の簡易計測
(1)次の汚染した水20mLをメスシリンダーで計って、100mL三角フラスコに入

                  - 4 -

れる。
  @風呂の残り水
  A堀川の水
(2)(1+2)硫酸1mLを加え、0.005mol/L過マンガン酸カリウム水溶液2
mLを2mLメスピペットで計って加える。
(3)バーナーで加熱し、沸とうするかしないかの状態を維持して、5分以上保つ。
(4)0.0125mol/Lシュウ酸ナトリウム水溶液を別の2mLメスピペットで0
mLの目盛りまで吸い上げる。
(5)白板の上にフラスコを乗せ、振り混ぜながら滴下し、無色になったところで滴下量
V[mL]を読み取る。
注意:うすい褐色になってきたら、1滴ずつ加えては振り混ぜる。
(6)残りのシュウ酸ナトリウム水溶液は流しに捨て、メスピペットに付いた水滴をティ
ッシュで拭く。
(7)化学的酸素要求量(COD)を次の式で計算する。
    COD = 10(2.00−V)[ppm]
参考:化学的酸素要求量の環境基準
   湖沼:1ppm(AA類型の場合)
   海域:2ppm(A類型の場合)
   公式には河川は生物化学的酸素要求量(BOD)という別の尺度が用いられる。
<記録>




<準備>
・(1+2)硫酸
 水60mLに濃硫酸30mLを加える。
・0.0125mol/Lシュウ酸ナトリウム水溶液
 シュウ酸ナトリウム0.419gを水に溶かして、全体を250mLとする。
・0.005mol/L過マンガン酸カリウム水溶液
 過マンガン酸カリウム0.20gあまりを水に溶かして、全体を250mLとする。
 水道水でブランクテストを行い、それに基づいて2mLどうしが過不足なく反応するよ
うに、過マンガン酸カリウム水溶液を希釈する。
・白板
 0.5mm白色塩ビ板 15×20cm

                  - 5 -

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実験4 酸化数の増減
(a)ナトリウムと塩素
注意:保護めがねをかけ忘れないようにする。
(1)試験管にサラシ粉小さじ1杯(10粒ほど)を入れ、濃塩酸1mlを加えてゴム
せんを乗せ、観察する。
注意:塩素は有毒なので直接に吸わないようにする。
参考:塩素の比重は空気の2.5倍である。
(2)2mm角のナトリウムを「燃焼さじ」に乗せて炎に入れ、融解して玉状の液体にな
ったら取り出し、試験管の中に差し入れる。
(3)「燃焼さじ」を取り出し、水の入った200mLビーカーに差し入れる。
(4)試験管に5%チオ硫酸ナトリウム水溶液5mLを注ぎ、ゴムせんをして振りまぜて、
塩素を無害化する。
(b)硫黄の酸化数(硫化鉄(U)の生成)
(1)紙の上で薬さじを使って鉄粉8.5gと硫黄5gをよく混ぜ、試験管に移してトント
ンと詰める。
(2)バーナーで混合物の上部を加熱し、1/3が赤熱したら炎から出して観察する。
(3)試験管を断熱板の上に置き、冷めたら生成物質を取り出し、その小片を試験管に入
れる。
(4)これに1mol/L塩酸2mLを加えて、必要ならすこし加熱する。
(5)発生する気体の臭いを調べ、酢酸鉛紙を試験管の口に近づける。
<記録>





<準備>
・「燃焼さじ」
 銅線(#20)を直径10mmの渦巻き(さら)にし、直角に折って柄とする。

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実験5 電子のやり取り
(a)硫酸酸性の過マンガン酸カリウムと銅
(1)木板に銅板を置き、クッキングペーパー1枚を載せて2%塩化ナトリウム水溶液6
mLを浸み込ます。
(2)試験管に0.005mol/L過マンガン酸カリウム水溶液4mLと(1+2)硫酸

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2mLを入れる。
(3)セロハンを被せ、クッキングペーパー1枚を載せて試験管の水溶液を浸み込ます。
(4)炭素板を被せて、デジタル電圧計をつなぎ、正極と負極を確認する。
(5)クリップコードで数分ショートしておいてから、炭素板を取り除いて上側のペーパ
ーの色を観察する。
(6)セロハンから上を取り除き、下側のペーパーを白板に載せ、濃アンモニア水2mL
をかけて色の変化を観察する。
参考:炭素板は水洗いして次にまわす。
(b)ヨウ素とチオ硫酸ナトリウム
(1)木板に炭素板を置き、クッキングペーパー1枚を載せて5%チオ硫酸ナトリウム水
溶液6mLを浸み込ます。
(2)試験管に0.5%ヨウ素溶液2mLと水4mLを入れる。
(3)セロハンを被せ、クッキングペーパー1枚を載せて試験管の水溶液を浸み込ます。
(4)もう1枚の炭素板を被せて、デジタル電圧計をつなぎ、正極と負極を確認する。
(5)数分ショートしておいてから、炭素板を取り除いて上側のペーパーの色を観察する。
(c)亜硫酸と硫化水素
(1)試験管に2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液3mLと1mol/L塩酸3mLを入れて、
亜硫酸の水溶液をつくる。
(2)木板に炭素板を置き、クッキングペーパー1枚を載せて上の水溶液を浸み込ます。
(3)セロハンを被せ、クッキングペーパー1枚を載せて2%硫化ナトリウム水溶液4
mLを浸み込ます。
(4)1mol/L塩酸2mLをかけて硫化水素の水溶液にする。もう1枚の炭素板を被せ
て、デジタル電圧計をつなぎ、正極と負極を確認する。
(5)数分ショートしておいてから、ピンセットで上側のペーパーを50mLビーカーに
移して絞り、水溶液の濁りを確認する。また下側のペーパーを別の50mLビーカーに移
して絞り、水溶液の濁りを確認する。
<記録>




<準備>
・クッキングぺーパー(4.5×12cm)
・0.5%ヨウ素溶液(ヨウ素・ヨウ化カリウム水溶液)
 2%ヨウ化カリウム水溶液100mLにヨウ素0.5gを溶かす。

                  - 7 -

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知識と理論

1.酸化と還元

[1]現在の地球の大気には20%ほどの酸素が含まれる。これは植物が光合成により、
営々と酸素を発生してきた結果である。したがって地球上では物質が酸素と化合する反応
が起こりやすい。
 実験1を整理して反応式を書いてみよう。(a)の前半では、銅線をコイル状にしてバー
ナーで加熱し、空中に取り出すと表面が黒色になった。
    2Cu + O2 ―→ 2CuO   (1)
              酸化銅(U)
 (b)では、ポリ袋に詰めたブタンガスを、ゆっくり押し出しながら点火すると炎を上げ
て燃焼した。
    2C410 + 13O2 ―→ 8CO2 +10H2O   (2)
     ブタン
 (c)では、マグネシウムリボンに点火して約100℃の水蒸気中に差し入れると、空気
中に引き続いて燃焼した。
    Mg + H2O ―→ MgO + H2   (3)
           酸化マグネシウム
これらは酸化反応ないし、単に酸化と呼ばれる。
 また燃焼とは激しい酸化反応のことで、それに伴って光や大量の熱エネルギーが放出さ
れる。燃焼に伴う光や熱エネルギーは、人類の進歩を支えてきた。
「2」ところが酸素と化合した物質つまり酸化物が、酸素を失って元の物質にもどる反応
も存在する。
 (a)の後半では、前半において黒色になった銅のコイルを、すこし加熱して水素中に差
し入れると、元の銅にもどった。
    CuO + H2 ―→ Cu + H2O   (4)
(d)では、酸化鉄(V)とアルミニウム粉末を混ぜて点火すると火柱を上げて反応し、鉄の
かたまりが得られた。
    Fe23 + 2Al ―→ 2Fe + Al23   (5)
    酸化鉄(V)          酸化アルミニウム
これらは還元反応ないし単に還元と呼ばれる。「還」とは「かえる」とも読み、「もど
る」の意味がある。
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2.定義の検討

[1]さて反応(4)に注目しよう。これは通常は還元反応とされる。しかしそれは酸化銅

                  - 8 -

(U)に注目するからで、水素に注目するとどうであろう。それなら酸化反応と呼ぶべきで
はないか。
 このように酸化と還元という用語はもっと検討すべきである。反応(4)では酸化と還元
は同時に起こる。酸化銅(U)は還元される。そして酸化銅(U)の還元を引き起こす、つま
り酸化銅(U)を還元させる物質は水素である。水素は酸化される。そして水素の酸化を引
き起こす、つまり水素を酸化させる物質は酸化銅(U)であると捉える。
 まとめると次のようである。
   CuO が酸化させる    H2 が還元させる
        ‖           ‖
    〃   還元される     〃 酸化される
物質が主語であることを意識し、動詞は能動形と受動形を区別しよう。
 酸化と還元をめぐっては、あいまいな表現が多くて混乱を引き起こしている。反応(1)
は、「銅の酸化」と表現されることが多い。これは主語が銅なら、「銅が酸化されるこ
と」という意味である。これをばくぜんと「銅が酸化すること」と捉えると、意味がはっ
きりしなくなる。また「鉄鉱石(たとえば酸化鉄(V))の還元」という表現がある。これ
は主語が人間なら、「人間が、鉄鉱石が還元されるようにして鉄を取り出す」という意味
である。
 この講座では、あいまいな表現は徹底して避けるつもりである。
[2]相手物質を酸化させる薬剤は「酸化剤」と呼ばれる。そして相手物質を還元させる
薬剤は「還元剤」と呼ばれる。すると、酸化剤は自身が還元される物質であり、還元剤は
自身が酸化される物質であることになる。反応(4)でもう一度まとめてみよう。
   CuO が酸化剤      H2 が還元剤
        ‖           ‖
    〃   還元される     〃 酸化される
例題1 反応(3),(5)の酸化剤と還元剤を示せ。

(答) 反応(3)  H2O が酸化剤     Mg が還元剤
    反応(5)  Fe23 が酸化剤   Al が還元剤

 ところで反応(1)はどう捉えられるか。Cu は酸化される。したがって O2 が酸化剤
である。還元される物質は見当たらない。しかし酸化と還元は同時に起こると考えると、
2 が還元され、Cuが還元剤ということになる。
    反応(1)  O2 が酸化剤      Cu が還元剤
反応(2)も同様である。酸素 O2 が反応する場合は、この段階ではすこし歯切れが悪い。
[3]ここで反応(3),(4),(5)に注目する。これらの反応は「酸素原子のやり取り」

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と捉えられる。たとえば反応(3)では
    H2O ―→ H2 + O
    O + Mg ―→ MgO
である。酸化剤である H2O は酸素原子を与える。そして還元剤である Mg はその酸素
原子を奪う。
例題2 反応(4),(5)を酸素原子のやり取りとして、反応式を書け。

(答) 反応(4)  CuO ―→ Cu + O
          O + H2 ―→ H2
    反応(5) Fe23 ―→ 2Fe + 3O
          3O + 2Al ―→ Al23

 このように「酸素原子のやり取り」と捉えられる反応では、次のようにまとめられる。
    酸化剤は相手に酸素原子を与える = 酸化させる
    還元剤は相手から酸素原子を奪う = 還元させる
そして受動形にすると、酸化剤は還元され、還元剤は酸化されるので
    還元される = 自身が酸素原子を失う
    酸化される = 自身が酸素原子を得る。
となる。「酸素原子を与える」と「酸素原子を失う」は、同じ内容であるが、能動形と受
動形のイメージアップのために表現を変えている。「酸素原子を奪う」と「酸素原子を得
る」も同様である。
 なおこの定義では、「酸化させる」ことと「還元させる」ことは同時に起こり、酸化還
元反応と呼ばれる。
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3.酸素原子のやり取り

[1]以上のように「酸素原子のやり取り」として定義すると、どんなメリットがあるだ
ろうか。
 酸化剤は酸素原子を含むはずである。酸化剤となる物質を知っていると、反応を理解す
る手がかりになる。そればかりでなく、それぞれの酸化剤は酸素原子を与える反応式が決
まっていることが多い。代表例をいくつか上げる。これを知っていると全体の反応式が書
きやすくなる。
 塩素酸カリウム    KClO3 ―→ KCl + 3O
 硝酸カリウム     2KNO3 ―→ K2O + 2NO2 + O
 過酸化水素      H22 ―→ H2O + O
 ヨウ素        I2 + H2O ―→ 2HI + O

                  - 10 -

 過マンガン酸カリウム(硫酸酸性の下)
   2KMnO4 + 3H2SO4 ―→ K2SO4 + 2MnSO4 + 3H2O + 5O
ヨウ素と水は共同して、過マンガン酸カリウムと硫酸は共同して酸化剤としてはたらくの
である。
参考:実際の反応のしくみが、反応式のように酸素原子を与えて進行するとは限らない。
   あくまで「酸素原子のやり取り」として捉えられるという説明である。
[2]実験2(a)では、赤リンと塩素酸カリウムを接触させて金づちでたたくと、爆発し
た。
 塩素酸カリウムが酸素原子を与える酸化剤としてはたらく。
    KClO3 ―→ KCl + 3O
リンは酸素原子を奪う還元剤としてはたらき、五酸化二リンになる。
    5O + 2P ―→ P25
            五酸化二リン
やり取りする酸素原子の数を合わせるため、上式を5倍し下式を3倍して積み算すると、
全体の反応式は次のようになる。
    5KClO + 6P ―→ 5KCl + 3P25    (6)
      酸化剤   還元剤
 実験2(b)では、硝酸カリウム水溶液で紙に一筆描きし、乾燥してから線香で端に点火
すると、水溶液が浸みた部分のみが燃えていった。
 硝酸カリウムが酸素原子を与える酸化剤としてはたらく。
    2KNO3 ―→ K2O + 2NO2 + O
紙は酸素原子を奪う還元剤としてはたらき、燃焼したのである(反応式は省略)。そして
燃焼温度が低いため、酸化剤である硝酸カリウムが無い部分には燃焼が拡がらない。
 ちなみに歴史的に重要な意味を持った黒色火薬は、硝酸カリウムに木炭の粉(主成分は
炭素)と硫黄を混ぜたものである。硝酸カリウムが与える酸素原子を、炭素と硫黄が次の
ように奪う。
    2O + C ―→ CO2
    2O + S ―→ SO2
黒色火薬では酸化剤が加えられているので燃焼に空気は必要でなく、また還元剤とよく混
ざっているので、一瞬のうちに燃焼が起こって爆発する。
参考:爆発とは、激しい燃焼などにより短時間に狭い領域で、大量の気体が発生しまた燃
   焼熱などで温度が上昇して大きな圧力が発生し、それによってまわりのものが吹き
   飛ばされる現象である。
[3]実験2(c)では、デンプン水溶液を加えたヨウ化カリウム水溶液に、十分な量の過
酸化水素水を加えるとヨウ素が生成し、そのため青色になった。

                  - 11 -

 過酸化水素が酸素原子を与える酸化剤としてはたらく。
    H22 ―→ H2O + O
ヨウ化カリウムは酸素原子を奪う還元剤としてはたらき、酸化カリウムとヨウ素になる。
    O + 2KI ―→ K2O + I2
    ヨウ化カリウム 酸化カリウム
そして塩基性酸化物である酸化カリウムは水と反応して塩基になる。
    K2O + H2O ―→ 2KOH
これら3つを積み算すると、全体の反応式が得られる。
    H22 + 2KI ―→ 2KOH + I2   (7)
    酸化剤  還元剤
 続いてチオ硫酸ナトリウム水溶液をすこしだけ加えると、ヨウ素が反応して青色が消え
た。ヨウ素と水のセットが酸素原子を与える酸化剤としてはたらく。
    I2 + H2O ―→ 2HI + O
チオ硫酸ナトリウムは酸素原子を奪う還元剤としてはたらき、四チオン酸ナトリウムにな
る(反応式は省略)。
 ところがしばらくすると再び青色にもどった。試験管中では、酸化剤である過酸化水素
がヨウ素を生成させる反応と、還元剤であるチオ硫酸ナトリウムがヨウ素を消滅させる反
応が競い合う。後者の反応速度が圧倒的に大きいので、チオ硫酸ナトリウムが残存する限
りは、ヨウ素は事実上生成しない。しかしそれが無くなると、過剰にある過酸化水素のは
たらきが見えてくるのである。
[4]還元剤になる、つまり酸素原子を奪う物質の多くは、酸素と化合しやすい物質であ
る。それには多くの金属や非金属の単体、そして生命体を形づくる有機化合物と呼ばれる
物質のほとんどが含まれる。食品などは水を除くと、ほとんどが有機化合物の混合物であ
る。
 家庭の排せつ物には多くの有機化合物が含まれる。また食品工場や製紙工場の廃液にも
多くの有機化合物が含まれる。こうして発生する汚染した水は、自然界では空気中の酸素
によって酸化分解され(微生物が関わる部分もある)、浄化されていく。しかし自然の浄
化能力を超えて汚染が進むと、環境が破壊されることになる。
 水の汚染の程度を示すひとつの尺度として、化学的酸素要求量(COD)がある。つま
り1Lの汚染した水が何mgの酸素を奪うかである。酸素原子を与える酸化剤として、日
本においては硫酸酸性の過マンガン酸カリウム水溶液が使われる。
 実験3では、汚染した水に硫酸と過マンガン酸カリウム水溶液を加えて加熱した。過マ
ンガン酸カリウムは赤紫色である。
 正確な数値計算は避けるが、有機化合物の汚染がひどいほど、反応せずに残る過マンガ
ン酸カリウムは少ない。その量を、水溶液が無色になるまでシュウ酸ナトリウム(

                  - 12 -

Na224 )水溶液を加えて調べた。もちろんシュウ酸ナトリウムは還元剤である。
   O + Na224 ―→ Na2O + 2CO2

 

このとき必要なシュウ酸ナトリウム水溶液が少ないほど、汚染がひどいことが判る。CO
Dの数値は次の式で計算できる。
    COD = 10(2.00−V)[ppm]
 実験結果をまとめて見よう。
  汚染した水 Na224 水溶液の体積[mL]  COD[ppm]
   
   
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4.酸化数の増減

[1]酸化と還元を別の視点から捉えてみよう。改めて反応(1),(3),(4),(5)を見
ると、酸化させるとは、相手物質を中性の状態から陽性の状態にさせることである。そし
て還元させるとは、相手物質(酸素原子を除いた部分)を陽性の状態から中性の状態にも
どさせることである。
 ここで陽性の状態とは、イオン結合なら陽イオンの状態を指す。そして共有結合なら電
気陰性度が小さい方が陽性の状態と考えるのである。
参考:電気陰性度は、周期表において希ガスを除いて、右上の原子ほど大きくなる傾向に
   ある。
ただし同種原子どうしの共有結合は、中性の状態である。単純に言うと無機化合物では、
だいたいは化学式の左側に来る原子が陽性の状態である。
 ここでイオン結合の場合と共有結合の場合を統一的に考えるために、酸化数というもの
を導入する。つまり酸化数とは、イオン結合なら、イオンの価数の符号と数字を入れ替え
る。
  例  NaCl では  Na の酸化数は+1 Cl の酸化数は−1
     MgO     Mg     +2  O       −2
そして共有結合なら、電気陰性度が大きい方の原子に電子対を移してイオン結合になった
と見なしたときの、イオンの価数の符号と数字を入れ替える。
  例  H2O では    H の酸化数は+1  O の酸化数は−2
     NH3       H      +1  N      −3
     O2        O       0

                  - 13 -

参考:アンモニアは本来は H3N と書くべきである。
[2]「酸化数の増減」として次のように定義しよう。酸化させるとは、相手物質中のど
れかの原子の酸化数を増やす。そして還元させるとは、相手物質中のどれかの原子の酸化
数を減らすことである。
    酸化させる = 酸化剤 = 相手の酸化数を増やす
    還元させる = 還元剤 = 相手の酸化数を減らす
 そして受動形にすると、
    還元される = 自身の酸化数が減る
    酸化される = 自身の酸化数が増える
となり、ここでもたとえば「酸化数が減る」とは、自身の中のどれかの原子の酸化数が減
るという意味である。
例題3 反応(1),(3),(4),(5)の酸化数を調べ、酸化剤と還元剤を示せ。

(答) 反応(1)      0    0     +2 -2
            2Cu + O2 ―→ 2CuO
            還元剤  酸化剤
             ‖    ‖
  O2 中のOの酸化数を0→−2 Cuの酸化数を0→+2
    反応(3)       0   +1 -2   +2 -2   0
              Mg + H2O ―→ MgO + H2
             還元剤  酸化剤
              ‖    ‖
  H2O 中のHの酸化数を+1→0 Mgの酸化数を0→+2
    反応(4)     +2 -2   0    0   +1 -2
             CuO + H2 ―→ Cu + H2
             酸化剤 還元剤
              ‖   ‖
  H2 中のHの酸化数を0→+1 CuO 中のCuの酸化数を+2→0

    反応(5)    +3 -2    0      0   +3 -2
           Fe23 + 2Al ―→ 2Fe + Al23
           酸化剤   還元剤
            ‖     ‖
   Alの酸化数を0→+3  Fe23 中のFeの酸化数を+3→0
 「酸化数の増減」としての定義では、たとえば還元剤は、反応(1)のように、相手物質

                  - 14 -

を中性の状態から陰性の状態にさせるものを含む。文字通りに酸化数を増やすか減らすか、
が注目点である。
 またこの定義でも、「酸化させる」ことと「還元させる」ことは同時に起こり、酸化還
元反応と呼ばれる。
 すでにそうしているように、酸化数は化合物の命名にも利用される。そして酸化数の正
式な表示にはローマ数字を使う。
[3]このように酸化還元反応を広く定義すると、より多くの化学反応を統一的に捉える
ことができる。
 実験4(a)では、融解したナトリウムが塩素中で発火し、明るいオレンジ色の光を放っ
て燃焼した。
      0    0      +1 -1
    2Na + Cl2 ―→ 2NaCl   (8)
              塩化ナトリウム
    還元剤  酸化剤
 実験4(b)では、鉄粉と硫黄の混合物を加熱すると、反応して赤熱状態になって硫化鉄
(U)が生成した。
     0   0    +2 -2
    Fe + S ―→ FeS   (9)
           硫化鉄(U)
   還元剤 酸化剤
生成した硫化鉄(U)に塩酸を加えると、おならの臭いがする硫化水素が発生した。
    +2 -2   +1 -1   +2  -1   +1 -2
    FeS + 2HCl ―→ FeCl2 + H2
                      硫化水素
これは酸化還元反応ではない。そして酢酸鉛紙を近づけると黒色に変化し、硫化水素が検
出された。
 「酸化数の増減」としての定義では、金属と非金属の化合は酸化還元反応になる。
目次へ

5.電子のやり取り

[1]反応(8)は、塩化ナトリウムがイオン性物質であるので、次のように電子のやり取
りとして捉えることができる。
    2Na ―→ 2Na+ + 2e-
    2e- + Cl2 ―→ 2Cl-
e− は電子の記号である。
備考:厳密には、Na+ と Cl- が集合してイオン結晶になる変化を加えるべきである。

                  - 15 -

 この節ではこのように「電子のやり取り」と捉えられる反応に限定して学習しよう。す
ると次のように定義できる。
    酸化させる = 酸化剤 = 相手から電子を奪う
    還元させる = 還元剤 = 相手に電子を与える
 そして受動形にすると、
    還元される = 自身が電子を得る
    酸化される = 自身が電子を失う。
となる。この定義でも、「酸化させる」と「還元させる」は同時に起こり、酸化還元反応
である。
[2]2年前の「電池のしくみを徹底解明!」という講座などに参加した人は、すでに多
くの「電子やり取り反応」を学習した。
参考:そうでない人は、[2],[3]と、それ以後の「参考」をとばして読めばよい。
そしてそれは「電子与奪表」として次のようにまとめられた。

          電子与奪表
  還元剤(上ほど強い) 酸化剤(下ほど強い)
 @     Na  ←→ Na+     + e-      2.714[V]
 A     Al  ←→ Al3+     + 3e-     1.662
 B  2OH- + H2 ←→ 2H2O    + 2e-     0.828
 C     Zn  ←→ Zn2+     + 2e-     0.763
 D     S2-  ←→ S       + 2e-     0.447
 E     Fe  ←→ Fe2+     + 2e-     0.440
 F     Ni  ←→ Ni2+     + 2e-     0.250
 G     Pb  ←→ Pb2+     + 2e-     0.126
 H     H2   ←→ 2H+     + 2e-     0.000
 I     Cu  ←→ Cu2+     + 2e-    −0.337
 J     4OH- ←→ 2H2O + O2 + 4e-    −0.401
 K     2I-  ←→ I2      + 2e-    −0.536
 L     Fe2+ ←→ Fe3+     + e-     −0.771
 M     Ag  ←→ Ag+     + e-     −0.799
 N     2Br- ←→ Br2     + 2e-    −1.087
 O     2H2O ←→ 4H+ + O2  + 4e-    −1.229
 P     2Cl- ←→ Cl2     + 2e-    −1.360
                              酸化還元電位

                  - 16 -

 この表の左辺には電子を与える物質やイオンが並び、上ほど電子を与えやすかった。こ
れは言い換えると、左辺には還元剤が並び、上ほど強くなっている。そして還元剤には金
属と陰イオンなどが含まれる。また右辺(電子を除く)には電子を奪う物質やイオンが並
び、下ほど電子を奪いやすかった。言い換えると、右辺(電子を除く)には酸化剤が並び、
下ほど強くなっている。そして酸化剤には非金属や陽イオンなどが含まれる。
 この表において2つの反応物質を線で結んだとき、右下がりなら反応しやすく、右上が
りなら反応しにくいと整理できた。言い換えると、酸化剤と還元剤を線で結んだとき、右
下がりなら反応しやすく、右上がりなら反応しにくくなっている(実際的には反応が起こ
らない)。また酸化還元電位の差は、その反応が起こる「勢い」を示していた。つまりそ
の反応がどれくらい起こりやすいかを示している。これで酸化還元電位という名称も納得
がいくであろう。
[3]電池と電気分解を酸化還元反応として捉え直してみよう。
 ダニエル電池では、
  負極  Zn ―→ Zn2+ + 2e-
  正極  2e- + Cu-2+ ―→ Cu
という電子やり取り反応が起こる。負極の亜鉛は電子を与えて、相手である正極の銅(U)
イオンを還元させる。そして自身は酸化される。また正極の銅イオンは電子を奪って、相
手である負極の亜鉛を酸化させる。そして自身は還元される。電池は電気を起こすので能
動形の表現がふさわしい。したがって一般に電池では負極で「還元させる反応」が起こり、
正極では「酸化させる反応」が起こる。そして電池は、負極は還元剤で正極は酸化剤で構
成される。
 塩化鉛(U)の溶融塩電解では、
  陰極  2e- + Pb2+ ―→ Pb
  陽極  2Cl- ―→ Cl2 + 2e-
という電子やり取り反応が起こる。陰極の鉛(U)イオンは電子を得て、自身は還元される。
また陽極の塩化物イオンは電子を失って、自身は酸化される。電気分解は外部の電源によ
る電流(電子の流れ)で引き起こされるので受動形の表現がふさわしい。したがって一般
に電気分解では、陰極で「還元される反応」が起こり、陽極で「酸化される反応」が起こ
る。
[4]「電子のやり取り」としての定義に従って、酸化剤と還元剤を捉え直してみよう。
それには電池を構成してどちらが負極になるか、あるいはどちらが正極になるかを調べる
と分かりやすい。
 実験5(a)では、銅板に載せたクッキングペーパー(以下「ペーパー」とする)に塩化
ナトリウム水溶液を浸み込ます。セロハンを被せ、ペーパーを載せて硫酸酸性にした過マ
ンガン酸カリウム( KMnO4 )水溶液を浸み込ます。炭素板を被せてデジタル電圧計を

                  - 17 -

つないで調べると、銅板が負極、炭素板が正極であった。それぞれの電極で次の反応が起
こる。
  負極  Cu ―→ Cu2+ + 2e-
  正極  5e- + MnO4- + 8H+ ―→ Mn2+ + 4H2
        過マンガン酸イオン  マンガン(U)イオン
電池では負極から電子が流れ出し、正極に流れ込むことに留意しよう。
 数分ショートさせて反応を進行させると、上側のペーパーの赤紫色が消えた。これは過
マンガン酸イオンがほぼ無色のマンガン(U)イオンに変化したことを示す。また下側のペ
ーパーに濃アンモニア水をかけるとうすい青色になり、銅イオンを検出した。
 この反応では、銅が電子を与え、還元剤である。そして過マンガン酸イオンと水素イオ
ンが共同で電子を奪い、このセットが酸化剤である。
参考:正極の逆反応の酸化還元電位は次のようである。
    Mn2+ + 4H2O ←→ MnO4- + 8H+ + 5e-   −1.51V
全体の反応式は、負極の反応式を5倍し正極の反応式を2倍して積み算して得られる。
 5Cu + 2MnO4- + 16H+ ―→ 5Cu2+ + 2Mn2+ + 8H2O (10)
 還元剤  ←   酸化剤   →
[5]実験5(b)では、炭素板に載せたペーパーにチオ硫酸ナトリウム( Na223
水溶液を浸み込ます。セロハンを被せ、ペーパーを載せてヨウ素溶液を浸み込ます。炭素
板を被せて調べると、下の炭素板が負極、上の炭素板が正極であった。それぞれの電極で
次の反応が起こる。
  負極  2S232- ―→ S462- + 2e-
     チオ硫酸イオン
  正極  2e- + I2 ―→ 2I-
 数分ショートさせて反応を進行させると、上側のペーパーの褐色が消えた。これはヨウ
素が反応して無くなったことを示す。
 この反応では、チオ硫酸イオンが電子を与え、還元剤である。そしてヨウ素が電子を奪
い、酸化剤である。
参考:負極の反応の酸化還元電位は次のようである。
    2S232- ←→ S462- + 2e-   −0.08V
全体の反応式は負極と正極の反応式を積み算して得られる。
  2S232- + I2 ―→ S462- + 2I-   (11)
   還元剤  酸化剤
[6]実験5(c)では、炭素板に載せたペーパーに亜硫酸 H2SO3 が溶けた塩酸酸性の
水溶液を浸み込ます。ちなみに亜硫酸は次の反応で得られる。

                  - 18 -

    NaHSO3 + HCl ―→ NaCl + H2SO3
                        亜硫酸
また塩酸は過剰に加えていて残存している。これにセロハンを被せ、ペーパーを載せて硫
化水素 H2S が溶けた水溶液が染みこんだ状態にする。ちなみに硫化水素は次の反応で生
成する。
    Na2S + 2HCl ―→ 2NaCl + H2
                       硫化水素
そして炭素板を被せて調べると、上の炭素板が負極、下の炭素板が正極であった。それぞ
れの電極で次の反応が起こる。
  負極  H2S ―→ S + 2H+ + 2e-
  正極  4e- + H2SO3 + 4H+ ―→ S + 3H2
 数分ショートさせて反応を進行させると、どちらのペーパーも絞ると水溶液が白色に濁
っていた。これはコロイド状の硫黄が生成したことを示す。
 この反応では、硫化水素が電子を与え、還元剤である。そして亜硫酸と水素イオンが共
同で電子を奪い、このセットが酸化剤である。
参考:負極の反応の酸化還元電位は次のようである。
    H2S ←→ S + 2H+ + 2e-   −0.142V
   また正極の逆反応の酸化還元電位は次のようである。
    S + 3H2O ←→ H2SO3 + 4H+ + 4e-   −1.450V
全体の反応式は負極の反応式を2倍して積み算して得られる。
  2H2S + H2SO3 ―→ 3S + 3H2O   (12)
   還元剤   酸化剤
 「電子のやり取り」としての定義は、「酸化数の増減」としての定義よりカバーできる
反応は少なくなる。しかしこの定義には理論的展望が開けている。



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