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                                   林 正幸

   MOLの会の活動と実験の紹介

 MOLの会というのは、私が新任2年目に身近な理科教師に呼びかけてできた化学サー
クルである。途中に活動が困難な時期もあったが、それから30年あまりが経過した。
 現在は3カ月に1回のペースで例会を持っている。休日の午後に集まると、お互いに持
ち寄った実験や授業プリントを次々に紹介する。その場で出た考えを試してみたり、質問
し合ったり、意見交換をして内容が太っていく。課題や疑問が残ることもある。毎回4時
間あまりが瞬く間に過ぎて、授業のネタが得られ知見が広がり、共通認識と仲間意識が育
まれ、刺激と充実感が残る。生徒の反応や情況が交流され、ときに苦労話が出て励まし合
う。また化学教育のあるべき姿を話し合う。そして新しい仲間は大歓迎である。
 ひとつ心掛けているのは、例会の内容を「通信」として参加できなかった仲間にも知ら
せることである。通信はまたサークルの記録と蓄積になり、それが積み上げを可能にする。
96年以降の「通信」は私のホームページに掲載している。
  http://www.zzz.or.jp/masasuma/
 より良い授業を産み出すためにもっとも大切なのは、教師どうしが研究交流することで
あると私は考える。悩みや問題意識を共有し、自分の実践の評価を得、他人の実践から大
いに学ぶ。学校内でそれができればすばらしいが、現実には狭い世界で押しつぶされそう
になる。サークルはそんな自分に勇気と確信を与えてくれる。
 「理科離れ」が叫ばれて久しく、受験教育に振り回され、環境問題などで学ぶ意味が問
われている化学教育は、新しい世紀をどのようにして切り開いて行くのか。たとえば文部
省が「すぐれた」指導要領をつくれば良いのか。私はひとりひとりの現場の教師が、研究
交流を通してそれぞれの化学教育を創り上げていくことが基本になると思う。
 幸い愛知には他にもいくつかの自主的な理科サークルがあり、またそれらを横断する事
務局があって、実験お楽しみ広場、県教研理科分科会、討論合宿などを、広く呼びかけて
実現している。また日常的な交流の場として「愛知科学教育ネット」というメーリングリ
ストも運営している。その内容は次のホームページを閲覧してみてほしい。
  http://www2.biglobe.ne.jp/~tfuna/
 私はまた全国レベルの「アルケミストの会」に所属するチャンスにも恵まれている。こ
の組織もメーリングリストを持っており、その内容などを紹介しているホームページは上
に紹介した私のページの中にある。このように数多くの仲間の中で私は理科教師として育
てられたと思う。

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 以下にMOLの会で交流された実験のうち、比較的知られてなさそうないくつかを紹介
してみる。これらはたとえ何かを参照したとしても、仲間のアイデアや工夫が加わったも
のであり、授業で活用しているものである。

ワインの蒸留
 100ml枝付きフラスコに赤ワイン50mlと沸とう石を入れ、図のようにして穏や
かに加熱して85℃までの留分を試験管にとる。
 蒸発皿にスチールウールを敷いて炭酸ストロンチウム薬さじ1杯を乗せ、留出液をかけ
て点火すると赤色の炎が楽しめる。

            


塩化亜鉛の化学式
 50mlビーカーに亜鉛粉末1gきっかりを入れ、濃塩酸7mlを分けて加え、ガラス
棒でかき混ぜて反応させる。これを加熱して余分な塩酸を追いだす。乾固すると白煙が立
ち始めるので、その時点で加熱を止める。ビーカーを計量して生成した塩化亜鉛の質量を
求める。なお塩化亜鉛は潮解性である。
 実験から亜鉛の組成を計算し、他方で原子量を使い塩化亜鉛の化学式を発見する。こう
してドルトンの原子説における原子量の意味を理解させる。

ボイルの法則
 自転車のチューブの空気を入れる部分を切り取って、気密性が確保されるようにペット
ボトルの底に固定する。3mlガラス製注射器に空気を入れ先を接着剤で封じてボトルに
入れしっかりキャップをする。ゲージ圧が表示される空気入れで圧力をかけていくと、体
積変化を計測できる。なお「むし」は穴の所まで切っておくと圧力差が生じない。

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シャルルの法則
 外径4mmのガラス管を37cmに切って一端を加熱して封じる。これに細長い自作ピ
ペットで気柱の長さが約27cmになるように水銀(1cm)を入れる。ガラス管には3
0cm定規(目盛りの端は気柱の端から5cmずれた位置に)と温度計をビニールテープ
で固定し、開放側には20cmのゴム管をつける。
 この装置をバットの底に置き、熱湯を注いでかき混ぜながら冷めて行くにつれて、摂氏
温度と気柱の長さを計測していく。

     

 得られたデータをグラフに目盛り、延長して「この世の最低温度」を見つけさせる。そ
して絶対温度とシャルルの法則を理解させる。

チョークから塩基をつくる
 試験管2本に水とユニバーサル指示薬を入れる。炭酸カルシウムチョークの一片を試験
管に投入すると、水溶液が深緑色(pH=8)になる。これに対して他の一片をバーナー
で強熱し、冷めてから試験管に投入すると紫色(pH=10以上)になり、酸化カルシウ
ムができてそれから水酸化カルシウムが生成したことをうかがわせる。

食品の色変わり
 「ナスとこんにゃくを煮ると緑色になる。」 ナスの色はアントシアン系で、塩基性で
は緑色になる。こんにゃくは水酸化カルシウムで凝固させている。
 「焼きそばにカレー粉をかけると赤色になる。」 カレー粉の色素はクルクミンで塩基
性では赤褐色になる。焼きそばや中華そばは「かん水」という炭酸ナトリウムや炭酸カリ
ウムが溶けた水で打つ。
 身近な酸塩基教材である。

テルミット反応
 三脚に三角架を乗せ、ろ過するように折って水で濡らしたろ紙を置く。これによく乾燥
した酸化鉄(V)8gとアルミ粉末3gをよく混ぜて入れる。ろ紙2枚を底に押し込んで

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から水を八分目まで入れた500mlビーカーを真下に置く。
 マグネシウムリボンを立てて点火すると、赤熱状態の生成物ができ、やがてろ紙を焼い
て下に落ち「海底火山」を観察できる。そのあと取り出してけらを落とすと、パチンコ玉
くらいの鉄が得られて磁石に着く。
 ぬれたろ紙を使うとは、誰が思いついたかは知らないが見事なアイデアである。

激しい燃焼
 ベニヤ板にアルミ箔を折り重ねてのせる。白砂糖と塩素酸カリウムを同体積、注意深く
混ぜて山にする。ピペットで濃硫酸をかけて逃げる。赤紫色の火柱が上がり、白煙が巻き
上がる。これは通常より塩素酸カリウムを増やしたやり方で、固体の酸化剤の威力が感じ
られる。
 アルミ缶の上をくり貫き、横に小さい穴を空ける。ヘアスプレーと酸素を吹き込んで紙
コップを被せ、横からマッチで点火すると、コップがロケットになる。気体どうしの反応
は速い。
 亜鉛6.5gと硫黄3.2gをよく混ぜ、平底蒸発皿の底に山にする。マグネシウムリボ
ンを立てて点火すると、黄色の光を放って燃え、白色の燃えがらが残る。燃焼は硫黄でも
起こる。
 セロテープに塩素酸カリウムを貼り付け、マッチのすり面(リン)を重ねて硬い板の上
に置き、金づちでたたくと爆発する。このやり方は比較的安全である。

ろ紙電池
 ろ紙に電解質水溶液を染み込ませると、少ない薬品でパワーも得られる。その中で「ヨ
ウ素電池」を紹介する。
 亜鉛板にろ紙4枚をのせ、20%塩化アンモニウム水溶液を染み込ませ、その表面にヨ
ウ素を振りかけて黒鉛板を被せ、すき間に水溶液を補って馴染ませると豆電球が明々と点
灯する。

電解染め分け
 2%硫酸ナトリウム水溶液にBTBを加える。ステンレス板にろ紙4枚を載せ、この水
溶液を染み込ませ、もう1枚のステンレス板を被せ、水が入ったビーカーを重石にする。
手まわし発電機をつないで電気分解すると、陽極側2枚が黄色に陰極側2枚が青色に染め
分けられる。
 水の電解において水溶液で起こる変化に注目させることができる。


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