02.11.16
                      合同県教研「環境問題と教育」分科会
                                   林 正幸

公害・環境問題と

    その教育に取り組んで

はじめに

 退職を前にして自分なりにまとめをしようとしている中で、滝川さんから「環境問題と
教育」分科会でレポートしないかと誘われた。私にとって公害・環境問題とその教育は教
師生活の中でかなりの部分を占めているので、よい機会と受け止めて引き受けることにし
た。
 レポートを作成する中で30年以上も前の資料を読み返すと、改めて「よくがんばった
なあ」という感慨が湧いてくる。そしてそんな昼夜を分かたぬ私の活動を支えてくれた妻
に感謝をしたい。
 なおこのレポートを始めさまざまな資料を掲載している私のホームページも参考にして
ほしい。
          http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/

A 住民運動に参加して

  ◎なぜ公害問題に関心を持ったか
  ◎住民運動の中で学んだこと

 私が高校の理科(化学)教師になったのは1967年であるが、生徒に学習の意義・目
的を伝えることがひとつの課題になっていた。つまり教師から見れば「何のため誰のため
に教えるか」である。
 折しも公害問題が社会的に認識され始めた時期であった(1970年には牛乳のBHC
汚染、ガソリンのアンチノック剤による鉛汚染、光化学スモッグによる急性中毒などが大
きな衝撃を与え、私は「公害爆発の年」と呼んでいる)。私たちにはその中に大切な答が
潜んでいるように思えたし、また生徒の公害に対する関心も高まってきていたので、
1968年に飯田さんの呼びかけで「公害調査の会」が発足した。当時は本は宇井純の

                  - 1 -

「公害原論」(水俣病)くらいで、学習は専門家に講師依頼したり、入手資料を紹介した
り、現地調査するのが主要であった。四日市や三島・沼津(西岡さんに話を聞いた)にも
出かけた。
 1969年には名大医学部公衆衛生学教室の大橋さんらが、名古屋市北区の2つのセロ
ハン工場の公害反対を呼びかけ、住民運動が始まった。実践的に学び取るしかないと考え
ていた私たちはそれに加わった。他の住民運動に参加する仲間もあり、またこの動きは全
国的に広がっていき、1971年には「公害と教育」研究会が発足した。
 地域には科学を装ったデマ宣伝がなされており、住民運動が始まってまもなく名古屋市
が「公害指導概要」なるものを発表したこともあった。そこで私たち教師は住民に公害の
実態や現況を伝えることにした。「臭いのは硫化水素、そして神経を冒す二硫化炭素も都
市下水にたれ流しされている。」実験も含めてその危険性を訴える住民学習会をいたると
ころで開いた。またセロハンができる工程と公害についてのパンフレット「セロファンが
できるとき、どのようにして汚染物質である二硫化炭素や硫化水素が出てくるのでしょう
か。」を作成した。それから住民や現地の高校生と、検知紙(酢酸鉛紙)調査、検知管調
査、風鈴(金属腐食)調査、臭い調査、健康調査などを行った。
 運動には盛衰があったが地元の森さんたちとねばり強く活動する中で、2つの工場とも
立ち退くことになり、現在はどちらも団地になっている。これほどの成果を上げた「北区
セロハン公害対策協議会」の住民運動は貴重である。
 そんな中で私たちが学んだ一つは、公害に立ち向かうために科学的な学習が欠かせない
ことである。必ず流布されるデマ宣伝に対して「科学で武装する」という言葉が産み出さ
れた。学習によって住民は納得して運動を進めることができた。
 二つは住民による調査活動の重要性である。これは住民に確信を産み出す。そして
1971年に愛知全体で始まった硫黄酸化物汚染調査の「カンカラ運動」や、教育実践の
中で取り組んだ二酸化窒素の汚染地図づくりにつながっていく。
 三つは住民の側に立つ科学者を育成することである。いくら私が化学の教師であるから
とセロハン工場に乗り込んでも、その設備の全体を理解することは困難であった。やはり
専門家の助けが必要である。実際に名工試の今井さんの世話になった。翻って生徒には
「社会に貢献するためにこそ学ぶ」のであることを伝えたい。
 四つは教師の社会的責任である。教師は国民の一人としてさまざまな運動に参加し、そ
の中から現在の教育で実践すべき目標を見つけ出す責任があると考える。当時の言葉を引
用すると「民族の課題に応える教育」である。
 五つは私の理論偏重の授業に改革をもたらした。
 カンカラ運動はすぐに「愛知公害調査の会」を誕生させ、各地の公害反対住民運動の連
絡協議の場となり、「愛知の公害」という本を出版したりした。その後私は春日井市の製
紙公害にも関わったが、ひと区切りを迎えることになる。

                  - 2 -

B 授業に取り入れて

  ◎「公害の科学」(総合学習)という実践

 住民運動に参加しつつ、授業に還元できることを模索してきた。それがいくらかまとま
ったのが
・理科教室(71年1月号)原稿 「公害を通して『科学とは何か』を教える」
・「公害と教育」研究会(77年)レポート 「公害の科学」
である。ここでは後者についてあらましを紹介する。これは公害問題を教科・科目を超え
た総合学習として教えるという立場の実践である。授業は11時間をかけた。

     公害の科学

1.水俣病に接して(1時間)
・私自身が水俣で撮影したスライドと、そのときの思いを語り、この章の学習目的を認さ
せる。
・夏休みの課題として、原田著「水俣病」(岩波新書)の読書感想文を書かせる。
2.汚染と自然破壊(1時間)
・希釈拡散という当時の公害対策を批判し、サットンの拡散式を紹介し
    cmax = k×(q/He 2
     q:排出量  He:有効煙突高さ(煙が上がる高さ)
それが成り立たない逆転層などの気象条件を説明する。
・名古屋市のS火力は1日に6.6×104 m3 の硫黄酸化物を排出している(1970
年)。これを面積330km2 の名古屋市の空気で新環境基準0.04ppmまで希釈する
には地上何mまでの空気が必要か。(5000m  温度圧力の影響を無視して)
・汚染物質が大量過ぎると、自然の浄化作用には限界がある。PCBのように分解されに
くい汚染物質もある。
・DDT汚染で絶滅寸前の白頭ワシを例に、食物連鎖による生物濃縮という希釈拡散とは
逆向きの自然の法則が存在することを指摘する(水俣病にも触れる)。
・汚染は自然のバランスが破壊されることでもある。たとえば窒素やリンの富栄養化によ
って植物プランクトンが以上増殖して赤潮が発生する。
・地下水の大量汲み上げにより、海部津島地方が集中的に地盤沈下し、浸水が日常化する。
3.被害(硫黄酸化物を中心に)(1時間)
・大気汚染は呼吸器系を次第に冒して、慢性気管支炎、気管支ぜんそく、ぜんそく性気管

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支炎、肺気腫などになる(1975年現在の名古屋市指定地域の公害認定患者数は
2183人)。
・これは慢性中毒であって気付かぬうちに発病し、いわば「緩慢なる殺人」である。
・またこれらの疾患は他の原因でも引き起こされる非特異的疾患であり、被害の実態は疫
学調査で解明される(慢性気管支炎の有症率と硫黄酸化物濃度のグラフを紹介)。
・「体が弱いから仕方がない」という論理に、素因だけでは発病せず、誘因が重なっては
じめて病気になることを確認する。
・名古屋市における「持続性せき・たん愁訴率」を例に、公害病認定される以前のいわゆ
る不健康症状に悩まされる人数はかなり高率であることにも注目させる。
4.基準(硫黄酸化物を中心に)(2時間)
・基準とは文字通りにそれ以下なら安全なものであろうか。旧環境基準は「年間を通じて
1時間値の1日平均値が0.05ppm以下である日数が総日数の70%以上維持されるこ
と」などと定められていた。
・慢性気管支炎のグラフを見て、法律に「経済の健全なる発展と調和が図られるものとす
る」と規定されていることを批判する。
・1973年の新基準は「1時間値の日平均値が0.04ppmを超えないこと」などと定
められ、これは年平均値がおよそ0.015ppmに相当し、やっと自然の有症率まで抑え
られることになった(1973年の名古屋市全体の硫黄酸化物の年平均値は0.026
ppm)。
・ただし煤塵との相乗効果のような複合汚染のために、さらに厳しい規制が必要である。
また不健康症状も許さず、WHOの健康の定義に適うのが安全基準と言える。
・さらに牛乳を汚染しているBHCについて、その暫定基準が決められた根拠を説明し、
問題点を指摘し、その後の経緯も紹介する。
・公害爆発の年である1970年の通常国会では、14の公害法案が成立し「公害国会」
と呼ばれ、産業協和条項も削除された。
・1972年に四日市ぜんそく訴訟に対して、無過失責任を認め人間優先を宣言する四日
市判決が下される。
5.規制(1時間)
・大気汚染防止法よるK値規制では
    q = K×He 2
有効煙突高さを2倍にすれば排出許容量が4倍になる。
・1970年度の日本における重油の生産量は1.06億キロリットルで、平均硫黄分は
1.9%、密度は0.9g/mlであった。これがすべて燃焼して二酸化硫黄になったとする
と、何万トンの硫黄酸化物が発生したか。(360万トン)
・明治時代に、新居浜の銅製錬所を沖合の四阪島に移し煙突を高くした結果、硫黄酸化物

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被害が広域化した事例を紹介する。
・最大地上濃度でなく、排出量の総量を規制するべきである。
6.発生機構と防止技術(硫黄酸化物を中心に)(1時間)
・石油や石炭を燃焼させると、それに含まれる硫黄分が反応して二酸化硫黄になり、
    (S)+ O2 ―→ SO2
同じく大気を汚染している窒素酸化物が触媒になって酸素と反応して三酸化硫黄になる
(硫酸工場では五酸化二バナジウムを触媒にして同じ反応を起こす!)。
これらは酸性酸化物であり、水と反応して亜硫酸や
    SO2 + H2O ―→ H2SO3
硫酸になり、呼吸器系を刺激したり酸性雨になったりする。
・発生源は火力発電、製鉄、石油精製など工場の他に、暖房中のビル、ディーゼル車があ
る。
・防止技術には燃料の重油を脱硫する方式と、燃焼後の排煙を脱硫する方式がある。
・重油脱硫では水素を反応させて硫黄分を硫化水素にし
    (S)+ H2 ―→ H2
その一部を燃焼して二酸化硫黄にして残りの硫化水素と反応させて硫黄を得る。
    SO2 + 2H2S ―→ 2H2O + 3S
・排煙脱硫では水酸化カルシウム乳濁液と反応させて亜硫酸カルシウムにし
    SO2 + Ca(OH)2 ―→ CaSO3 + H2
これを空気酸化して石こうを得る。
・これら現存の防止技術によっても排出量を20分の1に減少させられる。
7.住民運動における科学と連帯(1時間)
・住民運動の中では必ず科学を装ったデマ宣伝が行われる。デマは真実より分かりやすく
作られる。
・現代では無知は生命をも脅かす。科学を学び「科学で武装する」必要がある。
・セロハン公害では教師が住民のために沢山の学習会を開き、「おじいさんやおばあさん
までが硫化水素、二硫化炭素と言うようになって地域が変わった。」
・また住民が教師と協力していろいろな調査を行い、納得と確信を持って運動を進めた。
・その中で検知紙調査は、酢酸鉛紙が硫化水素と反応して黒色の硫化鉛になる
    (CH3COO)2Pb + H2S ―→ 2CH3COOH + PbS
反応を利用している。
・公害によって「科学不信」が広がったが、汚染を調査し、公害を防止するのも科学であ
る。
・科学を大企業の利益のために独占させておくのでなく、国民の幸福のためにこそ利用さ
せるように「科学を国民のものとして取り戻す」必要がある。これは学習の具体的な目的

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のひとつである。
・住民組織は思想信条を超えて共通の目標のために結成される。その中では自主的精神と
自覚的な規律、相互協力と自己犠牲が存在する。利己的な個人主義ではない、集団主義の
重要性を認識しよう。
・また住民学習会では知恵を出し合い助け合って学習が進められる。受験に向けて競争す
るばかりの学習姿勢を見直してみよう。
8.二酸化窒素の汚染調査(3時間)
・大気中の二酸化窒素濃度をアルカリろ紙法(天谷式)で調査し、汚染地図にまとめてそ
の事態を把握する。
・ろ紙に染みこませた炭酸カリウムは次の反応によって二酸化窒素を捕集する。
    K2CO3 + 2NO2 ―→ KNO3 + KNO2 + CO2
・亜硝酸カリウムはザルツマン試薬とジアゾ化およびカップリング反応してアゾ染料と同
じように、その濃度に応じて赤紫色になる。

C 現在の授業では

  ◎環境問題の展望(視点)
  ◎化学の学力の一部として

 私が別の視点で教育に取り組んでいる間に、企業・行政の責任追求が中心の公害問題は、
地球全体・人類全体の課題としての環境問題へ変貌してきた。
 環境問題の展望を見いだすことは容易ではないが、その原則は数10億年の長きにわた
って進化してきた地球上の「自然の循環システム」に学ぶことであろう。物質的資源は元
素が不滅であるから、循環させれば永続的に利用できる。その反対に資源を枯渇させ、廃
棄物の山を築くことが、そして幾多の生物を絶滅させることが自然破壊である。だから人
類のパイは循環して生産することができるだけの資源である。私たちはもっとバイオマス
に依拠し、その増産体制を確立すべきである。この資源は燃焼して自然の循環にもどすこ
とができる。これに対して無機的資源は人間の技術で「人工の循環システム」を構築する
ことが基本になる。
 エネルギーはその保存則があるにも拘わらず、熱力学の第2法則によって常に獲得し続
ける必要がある。地球に永続的に与えられるのは太陽エネルギーのみである。人類はそれ
を最大限に活用する術を獲得せねばならない。それ以外のエネルギーに頼ることは、地球
のエネルギーバランスを崩し、自然破壊をもたらす。人類が利用できるエネルギーの全体
量は本来このように制限されており、効率のよい利用が求められる。そして忘れていけな
いのは物質的資源の循環のためにも多量のエネルギーが必要であり、その意味で利用でき

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る資源の方も制限されてくることである。
 もはや右肩上がりの生活願望は許されない。それにしても現代は太陽以外のエネルギー
を使い過ぎ、廃棄物を産み出し過ぎている。どのように軟着陸したらよいだろうか。
 ちなみに環境問題をエントロピーから捉えようという意見があるが、私は物質循環とエ
ネルギーという視点の方が明快であると考える。
 もうひとつの問題は人類が合成した毒性のある、あるいは環境を破壊するさまざまな化
学物質である。特に脂溶性物質は生物の体内に蓄積し、食物連鎖を通して濃縮され、世代
から世代に引き継がれる。その影響が明らかな化学物質は当然に生産中止あるいは分解除
去をする。また影響がはっきりしない膨大な化学物質に対しては、その解明を政治的に科
学の最重要課題として位置づけるべきである。さらに新しい化学物質に対して事前検査と
生産責任を義務づける。
 現在の私の化学の授業は以下のような章立てになっており、以上のような視点で随所に
環境問題を取り上げている。
     章 名              授業数         枚数
 1章 元素と原子              9時間        10枚
 2  化学結合と結晶           12          16
 3  物質量と化学反応           9           8
 4  物質の三態              6           7
 5  気体の性質              6           6
 6  溶液の性質             11          10
 7  物質とエネルギー           9          10
 8  酸と塩基              12          13
 9  酸化と還元および電子やり取り    18          19
10  非金属元素の単体と化合物      12          13
11  典型金属元素の単体と化合物      9           8
12  遷移金属元素の単体と化合物     12          14
13  脂肪族炭化水素など         10          11
14  酸素を含む脂肪族化合物       11          10
15  芳香族化合物など          12          12
16  反応の速度              8           9
17  化学平衡              10          10
18  天然高分子化合物          13          15
19  合成高分子化合物          11          12
                 合計  200時間       213枚
 具体的には以下に「授業プリント」から抜き出して紹介する。

                  - 7 -

1章 3.原子 原子の不滅性
 いまゴミ焼却による(ダイオキシン)の発生が問題になっているが、ダイオキシンは塩
素を含む物質である(化学式:C1242Cl4)ので、(塩素)を含むものを(分別)し
て除去すれば、ダイオキシンが生成(しない)ことは確かである。
2章 8.分子結晶と共有結晶 水の結晶の特異性
[3]さて最近海底で発見された(メタンハイドレート)は、水の結晶がつくる空間にメ
タン分子 CH4 が入り込んだような構造をしている。メタンハイドレートはシャーベット
状の(固体)として存在し、火を点けると炎を上げて(燃焼)する。しかし常温常圧では
やがて分解して気体のメタンと液体の水に分解する。その埋蔵量は膨大で石油に変わる資
源として注目されている。
3章 5.反応量
 反応式は物質の(個数)の関係を示しているので、反応式を使用するもうひとつのメリ
ットは反応物質や生成物質の量を計算できることにある。反応量が計算できることは、自
分で(実験)を工夫したり、化学工場の(生産)システムを把握したり、(環境)問題を
定量的に理解したりするための強力な武器を手に入れることである。
3章 5.反応量 考察
 98年における日本の石炭消費量は1.3億トンである。これによっておよそ何億トンの
二酸化炭素が発生したか、計算してみよ。
4章
 「昇華」も組み込んで、熱帯で散布された農薬が極地方に大移動することを取り上げて
はという意見がある。
5章 1.水溶液 導入
地球は(水の惑星)と呼ばれ、水は降雨などによって地表にもたらされ、河川・地下水と
なり、湖沼や海洋を形成して、人間を含めて生物にとって重要な(環境)となっている。
また生命は海で誕生し、そして体内に水を取り込んで生活を営んでいる。
6章 3.濃度 パーミリオン濃度
 環境問題ではごく希薄な溶液の濃度が使われる。パーミリオン濃度の単位は(ppm 
ピーピーエム)(parts per million)である。ミリオンは100万なので、1ppmとは
溶質の割合が(100万分の1)という意味である。具体的には
  1kg=1000g=1000,000mgの溶液に1mgの溶質が含まれる
とか
  1m3=1kl(キロリットル)=1000[l]=1000,000ml
                      の溶液に1mlの溶質が含まれる
ことである。ちなみに溶液が液体であると限定する必要はない。
問2 大気汚染を引き起こす二酸化窒素という気体が自動車や工場から排出されている。

                  - 8 -

その環境基準は日平均が0.06ppm以下であると定められている。30ml(試験管1
本)の二酸化窒素を環境基準までうすめるにはどれだけのきれいな空気が必要になるか。
    0.06ppmとは1m3の空気に二酸化窒素が0.06ml含まれる。
    30mlではx[m3]必要とすると
      0.06[ml]/1[m3] = 30/x
        x=500
          答 500m3  (実験室の体積は約300m3
 ダイオキシンのような環境ホルモン(内分泌撹乱物質)は、場合によって1ppt(ピ
ーピーティ)というごくごく希薄な濃度でも胎児に影響することが分かってきた。これは
パートリリオン濃度で、トリリオン(trillion)とは1兆のことである。つまり1兆分の
1の濃度が問題になってくる。
6章 3.濃度 生物濃縮
 有害物質はうすめれば済むのだろうか。レーチェル・カーソンが著した「生と死の妙薬
(原題:SILENT SPRING)」(1961年)の一節(次のプリント)を読んでみよう。
 殺虫剤であるDDDは、水には溶けにくいが生物の体の脂肪には溶けやすい(脂溶性)物質である。DDDはごく希薄な濃度なのでクリア湖の水に溶解する。しかしもともと脂
溶性のDDDはプランクトンが水中の栄養を吸収するにつれて、まるでろ過されるように
その脂肪に蓄積していく。そのプランクトンを捕食する魚では、もっと効率的にDDDが
その脂肪に(濃縮)していく。そして(食物連鎖)の頂点にいる水鳥の体内で異変が起こ
る・・・。
 これは人間の活動に対する警告である。そして今、母親の(母乳)がダイオキシンで汚
染されている。
7章 1.物質のエネルギー エネルギー保存の法則
(前略)
 以上のことはエネルギーの最大の特徴で
    (物体の状態が変化してそのエネルギーの形態や量が変化しても、
          エネルギーの全体の量は一定に保たれる。)
とまとめられ(エネルギー保存の法則)と呼ばれる。
 そして上記の例から、物体はその持つエネルギーの形態や量を変化させることによって、
自分の状態を(変化させる)ことが可能になる。また物体はエネルギーをやり取りするこ
とによって、相手の状態を変化させることが可能になる、とらえることもできる。
 つまり物体がエネルギーを持つというのは、自分ないし相手の状態を変化させる(能
力)を持つことである。私たちが住んでいる世界において変化・進歩を産み出すことは、
エネルギー無しでは実現できないのである。
7章 1.物質のエネルギー

                  - 9 -

[1]化学の本題は物質のエネルギーである。その準備は整った。物質が持つエネルギー
は内部エネルギーと呼ばれるが(4章)、その正体は分子、イオン、原子という物質をつ
くる(粒子)が持つ運動エネルギーと(位置エネルギー)である。
[2]これらの粒子は(熱運動)をしている。つまり運動エネルギーを持つ。そして温度
が高くなると熱運動が激しくなっており、より大きい(運動エネルギー)を持つようにな
る。
 またこれら粒子は(化学結合)や分子間力で引き合っている。つまり位置エネルギーを
持つ。そして共有結合した分子とそうでないバラバラの原子では、分子が持つ位置エネル
ギーの方が(小さい)。
[3]これまで使ってきた(熱エネルギー)とは、物質が持つエネルギーのうち熱運動に
伴う(運動エネルギー)の部分のことである。そして熱エネルギーが伝わるとは、激しく
熱運動している粒子の運動エネルギーが(ゆるやかに)熱運動している隣の粒子とやり取
りされ、次々に移動していくことである。

7章

  5.エネルギーの流れ

[a]エネルギーの流れ
[1]物質が三態変化したり、溶解したり、反応して別の物質になったりすると、エネル
ギーを与えたり奪ったりする。するとエネルギー保存の法則から、まわりの物質も変化し
て(同じ)量のエネルギーを得たり失ったりする。つまりその全体を考えると、物質どう
しがその状態を変化させるのに伴って(エネルギーの流れ)があることに気付く。

    

[2]燃焼熱の計測の例では、炭素と酸素が二酸化炭素に変化し、まわりの水が低温から
高温に変化し、それに伴って(炭素・酸素)が持つエネルギーの一部が(高温の水)に流
れると言える。それでは地球上における2つの大きいエネルギーの流れを見てみよう。
 これからは相手との関係から、受身表現も使っていく。
        受身表現      能動表現
      エネルギーを失う = エネルギーを与える
      エネルギーを得る = エネルギーを奪う
[b]光合成と酸素呼吸
[1]地球上では(緑色植物)が、二酸化炭素と水からブドウ糖と酸素を生産している。
この変化は(光合成)と呼ばれ、まわりからエネルギーを(得る)反応である。

                  - 10 -

    6CO2 + 6H2O = C6126 + 6O2 − 2802kJ
               ブドウ糖
ブドウ糖・酸素は(二酸化炭素・水)より大きいエネルギを持つ。
 太陽は(核融合)という変化を起こしてまわりにエネルギーを与え続けている。太陽が
与えるエネルギーは(太陽エネルギー)と呼ばれる。その量は地球付近では1m2の面積に
1s(秒)間で1.37kJである。
    太陽定数  1.37kJ/m2・s
 緑色植物は太陽エネルギーを得て光合成をする。つまりエネルギーが(太陽)から(ブ
ドウ糖・酸素)に流れている。
[2]植物自身もこのブドウ糖・酸素を生命活動の(エネルギー源)として使うが、植物
の一部は(栄養)として捕食されて(動物)のエネルギー源となる。
 人間を含めて進化した動物や植物は(酸素呼吸)している。つまりブドウ糖と酸素を二
酸化炭素と水に変化させる。これはエネルギーをまわりに(与える)反応で、その熱化学
方程式は次のようになる。
  ( C6126 + 6O2 = 6CO2 + 6H2O + 2802kJ )
    ブドウ糖
酸素呼吸は光合成と(逆向き)の反応であり、これらの生物はそれによって得るエネルギ
ーで(生命活動)を営み、自分や環境を変化させていく。つまりエネルギーがブドウ糖・
酸素から、「変化した生物・環境」に流れている。こうして生物は間接的に(太陽エネル
ギー)を得て生命活動を営んでいることが分かる。
参考:酸素呼吸のよりくわしいしくみは、クエン酸回路と呼ばれる一連の化学反応である。

    

[c]物質の循環
[1]自然は数十億年という歴史の中で、このようなしくみをつくり上げて生物の繁栄を
もたらした。このしくみのポイントは2つである。
 物質に注目すると、ブドウ糖・酸素と二酸化炭素・水がくり返し利用されている。つま
り物質は(循環)している。実際にはブドウ糖はデンプンやセルロース、あるいはアミノ
酸やそれからできるタンパク質などに変化して利用されたりもするが、それらを含めて物
質は循環している。元素は(不滅)なので、物質はそれを循環させれば(永続的)に利用

                  - 11 -

できる。
[2]ところがここ数百年で人間は急速に知恵を付け、この「おきて」に背いて(自然破
壊)をしている。これから私たちが目指すべきは、自然の「おきて」に従う知恵を持つこ
とである。
問1 自然破壊の例を上げてみよう。
・使い捨ての生産と消費で、資源が枯渇し大量の廃棄物が発生する。
・フロン類を排出させ、オゾン層が破壊される。
・熱帯雨林などを伐採して、生物種が絶滅する。
・ダイオキシン類を発生させ、生物の内分泌系が撹乱される。
[d]エネルギー問題
[1]もうひとつのポイントはエネルギーである。エネルギー保存の法則があるので、エ
ネルギーも循環利用できるのではないかと錯覚するかもしれない。しかしこれには別の自
然の原理が隠れている。
 生命活動によって変化した生物・環境に流れたエネルギーの大部分はやがて(熱エネル
ギー)という形態に変化していく。たしかに熱エネルギーは、自動車のエンジンや火力発
電によって別の(形態)のエネルギーに変えることができる。
[2]ただし熱エネルギーは(温度差)があって始めて、それを別の形態のエネルギーに
変化させることができる。そして熱エネルギーは高温部から低温部に移動して、やがてす
べて同じ温度になっていく。このように熱エネルギーが移動する(向き)は決まっており、
それは(エントロピー増大の原理)と呼ばれる。冷蔵庫では部分的に熱エネルギーが低温
部から高温部に移動するが、それで生じる温度差によって獲得できるより、大きいエネル
ギーを消費するという代償を伴っている。
[3]結局のところエネルギーは(使い捨て)するしかないのである。そしてエネルギー
を獲得し続けないと、待っているのは「死の世界」である。地球は太陽が与え続けている
太陽エネルギーを獲得して、人間が登場するまでに進化・発展してきた。太陽こそはさら
に数十億年それを与え続けることが保証されたエネルギー源である。
[4]人間は(便利)で快適な環境をつくり出すために、まず(火)を使って植物を燃焼
させて熱エネルギーを獲得するようになった。数百年前まで、それはおおむね自然の(許
容範囲)に留まっていた。
 やがて人間は、石炭、(石油)、天然ガスといった化石燃料を際限なく掘り出して燃焼
させ、ついに(ウラン)やプルトニウムなどの原子核が持つエネルギーまで利用するよう
になった。しかしこれらのエネルギー資源は、(二酸化炭素)や(放射性廃棄物)を発生
することになり、またいずれは(枯渇)していく。そしてこれでは物質が循環していない。
 私たちは(太陽エネルギー)をもっと利用し、またその枠内で生活する知恵が求められ
ている。

                  - 12 -

問2 私たちは「エネルギー問題」をどのように解決したらよいだろうか。
・二酸化炭素を発生させて地球が温暖化するような、大量の化石燃料の利用を控える。
・省エネルギー、ソフト・エネルギー・パス(エネルギーを浪費しないような生活と経済
に転換する)を目指す。
・コージェネレーション(電気と熱の同時生産)、燃料電池などエネルギー効率を高める。
・もっと太陽エネルギー(風力エネルギーなどを含む)を利用する。ただしその装置も太
陽エネルギーを使って生産するようにする。
・原子力発電(核分裂のエネルギー)や核融合開発に対して、どのような態度を取るか検
討する。

8章 4.酸性酸化物と塩基性酸化物 酸性雨
[1]酸性酸化物の多くは(気体)である。石炭の主成分元素は炭素であり、石油の主成
分元素は炭素と水素であるので、これらを(燃焼)すると、二酸化炭素と水蒸気が大量に
発生する。
    (C)+ O2 −→ CO2
    2(H)+ O2 −→ H2
またこれらには少量の成分元素として(硫黄)が含まれるので、二酸化硫黄も発生する。
    (S)+ O2 −→ SO2
さらに燃焼では空気を加えるが、(空気)は高温になるとその成分の窒素と酸素が化合し
て一酸化窒素 NO 、二酸化窒素 NO2 が発生する。
    N2 + O2 −→ 2NO
    N2 + 2O2 −→ 2NO2
[2]これらの(酸性酸化物)は大気と混合し、それに含まれる水蒸気や水滴と反応して
(酸)になる。これはタイプ1の反応である。こうして雨は酸性となるのである。
 発生する酸性酸化物が主に二酸化炭素であった時代は、(炭酸)が弱酸の中でも弱い方
なので、雨の酸性はpHが(6)に近くて、その意味では問題は無かった(もちろん二酸
化炭素には地球の温暖化の問題が伴っている)。
    CO2+ H2O −→ H2CO3
 しかし人間が石炭、石油などを大規模に燃焼させるようになると、状況は一変した。二
酸化硫黄からは(亜硫酸)という弱酸が生成する。
    SO2 + H2O −→ H2SO3
そして亜硫酸はさらに紫外線と酸素によって硫酸という(強酸)に変化する。
    H2SO3 +(O)−→ H2SO4
実験では亜硫酸が過酸化水素によって硫酸に変化したことを思い出そう。
 加えて高温燃焼に伴って発生する二酸化窒素は水と反応して(硝酸 HNO3 )という強

                  - 13 -

酸などに変化する。
    2NO2 + H2O −→ HNO3 + HNO2
[3]こうして雨の酸性はpHが(5や4)という強さになり、(土壌の酸性化)による
森林の立ち枯れ、湖沼の酸性化による水生生物の死滅、大理石の彫刻の腐食、コンクリー
トの建物の腐食(酸性雨つらら)などの被害が出ている。
 ちなみに酸性雨のもとになる酸性酸化物は、(慢性気管支炎)など呼吸器系の障害も引
き起こす。
8章 5.中和反応 酸化物と酸・塩基の反応
 すでに学習したように石炭、石油を燃焼させると二酸化硫黄が発生する。これを含む排
煙を水と混ぜてかゆ状にした水酸化カルシウムと反応させると、次の反応で90%以上の
二酸化硫黄を除去することができる。
  ( SO2 + Ca(OH)2 −→ CaSO3 + H2O ) (タイプ2)
                亜硫酸カルシウム
二酸化硫黄は酸性酸化物であり生成する亜硫酸カルシウムは(塩)である。したがってこ
れは前節のタイプ2の反応である。
  (2)酸性酸化物は塩基と反応して塩を生成する。
 このようにして硫黄分を除去して大気汚染を防止する技術は(排煙脱硫)と呼ばれる。
ちなみに亜硫酸カルシウムは硫酸カルシウム CaSO4 に変化させて(石こう)として販
売される。
9章 1.酸素原子のやり取り 考察
・水質汚濁の指標のひとつにCOD(化学的酸素要求量)がある。これは有機物などによ
る汚染を、酸化剤の過マンガン酸カリウム KMnO4 を使って計測する。よりくわしく調
べてみよう。
9章 6.いろいろな電池 燃料電池
[1]現在まさに次世代自動車の動力源にする(燃料電池)が開発を終えようとしている。
ここでは最初に実用化された図のような仕組みの燃料電池について学習する。

    

 (水素)が供給される電極が(負極)であり、水素が水酸化カリウム KOH から生じ
る(水酸化物イオン)と共同で電子を与える。
    負極  2H + 4OH- −→ 4H2O + 4e-
この反応式の係数は次の反応式との関係で通常の2倍にしている。

                  - 14 -

 (酸素)が供給される正極では、酸素が(水分子)と共同して電子を奪う。
    正極  4e- + O2 + 2H2O −→ 4OH-
[2]全体としての反応は積み算して次のようになる。
    2H2 + O2 −→ 2H2
これは水素の(燃焼反応)と同じであるが、上のように電池に仕組むと反応熱を電気エネ
ルギーとして取り出すことができる。熱エネルギーに比べて電気エネルギーの(効率)は
格段に高いという利点がある。そして大気汚染、環境問題に対しても有効である。
 ちなみに上の反応式はこの章が終わるまでに理解できるようになる。
9章 10.いろいろな電気分解 アルミニウムの電解製錬
 アルミニウムは(2)番目に多く生産される金属である。しかしそれには膨大な電気を
必要とする。そのためアルミニウムは(電気の缶詰)と呼ばれる。アルミ缶(350m
l)ひとつ分のアルミニウムを生産する電力で30Wの蛍光灯を数10時間点灯できる。
日本は電気が高価であるので、現在ではアルミニウムを国内で生産することができない。
(リサイクル)の重要性に気付いてほしい。
10章 3.17族元素 塩素
 塩素は第一次世界大戦でドイツが(毒ガス)として使用した。かつて脚光を浴びた塩素
系(農薬)であるDDTや、絶縁油などに利用されたPCB(ポリ塩化ビフェニール)は、
現在は生産が禁止されている。また(ポリ塩化ビニル)というプラスチックはその名のと
おり塩素を含むが、これをゴミとして焼却すると塩化水素などを発生して炉を傷め大気を
汚染する(現代は燃やせないゴミとして扱われる)。
10章 4.16族元素 酸素
 酸素の単体には、(酸素 O2 )と(オゾン O3 )の2種の(同素体)がある。
 酸素は大気に体積パーセントで約(20%)含まれる。これは地球の歴史の中で、植物
が光合成によって蓄積してきたものである。
 これに対してオゾンは、上空30km前後の成層圏で太陽からの(紫外線)を受けて次
のように生成して(オゾン層)を形成し
  ( 3O2 −→ 2O3 )
さらに紫外線を吸収し続けて、陸上の生物を保護している。ただしオゾンは強い(酸化
剤)で、人体には(有害)である。そしてオゾンは(塩素)と並んで水道水の(殺菌)な
どに利用される。
 フロンによるオゾン層の破壊については13章で触れる。
10章 4.16族元素 硫黄と脱硫
 単体の硫黄 S は火山地帯で産出するほかに、現在では工場燃料の(重油)に含まれる
硫黄分を、燃焼に先だって(脱硫)するときに大量に生産される。重油に水素を反応させ
ると、その硫黄分が(硫化水素)として除去される。この一部を次のように燃焼させ

                  - 15 -

    2H2S + 3O2 −→ 2H2O + 2SO2
    硫化水素
さらに両者を次のように反応させると(硫黄)が生成する。
  ( 2H2S + SO2 −→ 2H2O + 3S )
 ここで注目すべきは、ある物質が予め悪い物質であると決まっているわけではないこと
である。そのまま排出すれば(汚染物質)になってしまうものが、手を加えれば製品にな
るのである。
 ちなみに硫黄分を含む重油をそのまま燃焼させると排煙に二酸化硫黄が含まれる。この
脱硫については8章で学習した。
10章 5.1族元素 水素
 太陽を始めとする(恒星)は水素を主成分としており、次のように4つの水素原子が
(核融合)して1つのヘリウム原子を生成することによって巨大なエネルギーを発生し、
光り輝いている。
  ( 4H −→ He )
人類が核融合を実現できるはいつのことだろうか。
 地球では多くの水素が酸素と化合した(水)として存在し、(海)になっている。それ
は(生命)を誕生させる場となり、また水は生命活動を支える重要な物質となっている。
(中略)
 水素は燃焼すると水のみを生成し、(クリーン)エネルギーとして注目されている。
10章 6.15族元素 化学肥料
(前略)
 (化学肥料)とはそのような形の化学物質を利用するものであり、食料の増産に貢献し
ている。
(中略)
 かつて洗剤にリン酸塩が配合されて、その排水が湖や内海を(富栄養化)して、植物プ
ランクトンが異常発生することがあった。
(中略)
 なお植物は微量にせよ30種以上の元素から成り立っているので、上のような化学肥料
のみを投入するのでは農地を荒廃させる。
10章 7.14族元素 岩石
 地殻に含まれる元素の質量パーセントは(クラーク数)と呼ばれ、次のようである。
     O  Si  Al  Fe  Ca  Na  K  Mg
    46% 28   8   6
10章 7.14族元素 二酸化炭素
[1]岩石は(風化)作用を受ける。それにはひび割れて細かくなったり、削られたりす

                  - 16 -

ることに加えて、化学反応することが含まれる。大気中の(二酸化炭素)は水に溶けて岩
石中の(塩基性酸化物)と次のように反応し、その生成物質は水に溶けやすいので海に流
されていく。
    CaO + H2O + 2CO2 −→ Ca(HCO32
                    炭酸水素カルシウム
    Na2O + H2O + 2CO2 −→ 2NaHCO3
                    炭酸水素ナトリウム
その結果残されるのが、酸性酸化物である二酸化ケイ素と酸化アルミニウムおよび水が反
応した(粘土)である。
参考:酸化鉄の風化は複雑である。
 ちなみに(コンクリート)も次第に表面から同じ反応が起きて劣化していく。そして
(酸性雨)はこれを加速する。
[2]海ではカルシウムイオンは、炭酸カルシウムに変化して(サンゴ虫)などに取り込
まれ、長い時間をかけて(石灰岩)になっていく。そして石灰岩は、ふたたび二酸化炭素
が溶けた水と次のように反応して(鍾乳洞)が形成される。
    CaCO3 + H2O + CO2 −→ Ca(HCO32
 ナトリウムイオンはそのまま存在する。
 なお鉄イオンの行方については12章で触れる。
[3]太陽はそのエネルギーを地表には主に(可視光線)として与え、それを得た地表は
温度が上昇する。他方で地表は得たエネルギーを(赤外線)として宇宙に放射する。これ
に対して大気中の二酸化炭素や水蒸気などは、可視光線は透過するが赤外線は吸収してそ
の一部を地表に送り返す。これは温室と同じで(温室効果)と呼ばれる。
 大気中の二酸化炭素の濃度はおよそ200年前の産業革命までは280ppm
(0.028%)であった。それが現在(1994年)では360ppmまで上昇し、そし
てこの85年の間に気温が0.6℃ほど上昇した。(温暖化)は海水面の上昇の招き、異常
気象や植物分布の急変などを引き起こす。
 現在国際的に二酸化炭素の排出規制が取り組まれようとしている。
11章 2.1族元素 ナトリウム
 以上の結果は1995年に、高速増殖炉「もんじゅ」がひき起こしたナトリウム漏れ事
故がどんなに危険なものであったかを物語っている。なおこの原子炉では、ナトリウムは
核分裂で発生する熱エネルギーを奪う(熱媒体)として、水の代わりに使用されていた。
つまりナトリウムはすこし温度が上がれば(液体)になって流動し、金属であるから(熱
伝導率)が高いためである。
11章 2.1族元素 アンモニアソーダ法
 他方の酸化カルシウムは(塩基性酸化物)で水と反応して水酸化カルシウムを生成する。

                  - 17 -

    CaO + H2O ―→ Ca(OH)2
この水酸化カルシウムは生成する塩化アンモニウムと次のように反応してアンモニアを完
全回収することができ、こうして高価なアンモニアを(循環)利用する技術が確立した。
    2NH4Cl + Ca(OH)2 ―→ CaCl2 + 2H2O + 2NH3
                    塩化カルシウム
11章 3.2族元素 カルシウム
 カルシウムは地殻をつくる元素では5番目に多い。生物はこの化合物を貝のように体の
外殻や、脊椎動物のように(骨格)として取り込んでいる。ちなみに骨格はリン酸カルシ
ウム Ca3(PO4)2 に近い物質である。
(中略)
 水酸化カルシウム Ca(OH)2 は消石灰とも呼ばれ、すこし水に溶けて(強い)塩基性
を示す。これは酸性化した土壌を中和するために利用される。
11章 4.12〜14族元素 水銀
 水銀は有機物と反応しやすく、その化合物は(神経)をおかす猛毒である。私たちは工
場廃液に含まれる水銀によってひき起こされた(水俣病)を忘れるわけにはいかない。か
つて農薬や乾電池などに水銀が使用されたが、現在ではそのようなことはなくなった。
12章 3.多価イオン 鉄
 原始地球の海水には大量の(鉄(U)イオン)が溶けていた。そして20億年前になると、
海中の光合成生物が盛んに酸素 O2 を発生するようになった。酸素は(酸化剤)であり、
鉄(U)イオンは酸化されて酸化数が+3の鉄を含む(酸化鉄(V) Fe23 )に変化した。
そしてこの物質は水に溶けにくいので海底に堆積して(しま状鉄鉱床)になったと考えら
れる。
12章 5.金属イオンの反応 カドミウムイオン
(前略)
またカドミウムイオンは神通川を汚染し、(イタイイタイ病)を引き起こした。
12章 6.放射性同位体 放射線の被害
[1]放射線が人体にどんなに重大な被害を及ぼすかは、広島・長崎の原子爆弾による惨
禍を見れば明らかである。
 放射線はその大きいエネルギーのため原子を(イオン化)し、それによって分子を破壊
し、細胞の構造を破壊する。
[2]放射線を大量に被爆すると、下痢、おう吐、発熱、脱毛、出血、衰弱などの症状が
現れ、そして死に至る。
 それだけでなく放射線がこわいのは、たった1個の放射線でも決定的な影響を及ぼす可
能性がある。つまり遺伝子を損傷させて、白血病を始めとする(がん)を引き起こしたり、
子孫に(遺伝的)影響を与えたりすることである。

                  - 18 -

 こうしてエックス線撮影を受けるかどうかは、病気発見のメリットと放射線被害のデメ
リットを自分で評価して結論を出すべきことである。
[3]アルファ線、ベータ線は貫通力が小さいが、ガンマ線、エックス線、中性子線はコ
ンクリート壁も突き抜ける。しかし放射性同位体が、呼吸、飲食、接触により(体内)に
取り込まれると、前者も重大な影響を与える(体内被爆)。
 ちなみに、原子力発電所の事故に備えて(ヨウ素剤 ヨウ化カリウム)が保管されてい
る。これは事故によってまき散らされる放射性同位体の中で、ヨウ素129 129I やヨウ
素131 131I は揮発性ですみやかに大気を汚染する。ヨウ素は成長期の子どもの甲状腺
に取り込まれやすいので、直ちに非放射性のヨウ素剤を投与して、放射性のヨウ素が取り
込まれにくくするためである。

12章

  7.原子力発電

[a]核反応のエネルギー
[1]核反応によって発生するエネルギーは(桁違いに)大きい。たとえば(ウラン
235 325U )の原子核にスピードの遅い中性子(熱中性子)が衝突すると、図のように
分裂して2個の原子核と1〜3個の中性子に変化する。この種の核反応は(核分裂)と呼
ばれる。このとき発生するエネルギーは炭素が燃焼するときの25万倍(同じ質量で比較
して)である。

    
      (ポーリング著「一般化学」(岩波)より)
[2]このエネルギーが最初に利用されたのは、不幸にも広島に投下された(原子爆弾)
であった。このとき発生したエネルギーは 1.6×1014J で、TNT火薬2万トンが発
生するエネルギーに相当する。
[b]連鎖反応と臨界
[1]ウラン235の濃度が高くなるにつれて、核分裂で発生した中性子が外に抜ける前
に別のウラン235の原子核に衝突して再び核分裂を起こすようになる。このようにひと
つに反応が次の反応を引き起こす反応は(連鎖反応)と呼ばれる。そしてひとつの核分裂
で発生した中性子のうち平均1個が次の核分裂を引き起こして、核分裂が継続するように
なる状態は(臨界)と呼ばれる。

                  - 19 -

[2]臨界を越える濃度では核分裂は(ねずみ算)式に拡大して一気に膨大なエネルギー
が発生する。これが原子爆弾の原理である。1999年に日本で起きたJCOウラン加工
施設の事故でも、くり返し臨界を越える核分裂が起きて、中性子線などが放射された。
[c]原子力発電
[1]ウラン235の核分裂を臨界ぎりぎりに(制御)して持続的にエネルギーを発生さ
せ、それで発電機を回すのが現在の方式の(原子力発電)である。
 核分裂を起こす部分は原子炉と呼ばれ、その多くは図のような軽水炉と呼ばれるタイプ
である。(水)を入れた圧力容器に(濃縮ウラン)を詰めた燃料棒と、その間にホウ素な
どを入れた(制御棒)が差し込まれている。水は核分裂で発生する中性子の速度を(減速
して)核分裂が起こりやすくすると共に、発生する熱エネルギーを熱交換器で別の水に伝
えるはたらきをする。制御棒は中性子を吸収して核分裂を(起こりにくく)する。
[2]また核分裂によってできる核分裂生成物には(放射性同位体)が多く含まれ、発生
する中性子によっても新たに放射性同位体が生成するので、これらが外部に(漏れ出さな
い)ようにする必要がある。

    

[d]ウランの濃縮
[1]天然のウランには核分裂を起こすウラン235は 0.7% しか含まれておらず、残
りはウラン238である。このままでは臨界に到達するのが難しいのでウラン235を濃
縮してその濃度を大きくする。同位体の性質は極めて似ているので、これには高い技術が
求められる。そしてこれは核兵器の製造に結び付くので日本では行わず、濃縮ウランはす
べて米国から輸入している。
[2]ガス拡散法では、気体分子はその(分子量)が小さいほど拡散しやすいことを利用
する。製錬したウランを(六フッ化ウラン UF6 )に変化させ、加熱して気体にして多孔
質の隔膜を透過させるとわずかにウラン235の濃度が大きくなるので、これを何回もく
り返す。このあと固体の(二酸化ウラン UO2 )などに変化させ、成形して(核燃料)と
なる。
[3]軽水炉にはウラン235の濃度が 3% になった核燃料が使用される。なお核燃料

                  - 20 -

と言っても、燃焼反応を起こすのでなく、これは核分裂で熱エネルギーを発生する原料で
ある。
[問2]ウラン235を含む六フッ化ウランと、ウラン238を含む六フッ化ウランのそ
れぞれの分子量を計算せよ(F=19)。
    235UF6 =235+19×6=349
    238UF6 =238+19×6=352
[e]運転中の事故
[1]1979年に米国で(スリーマイル島)原子力発電所が事故を起こした。このとき
原子炉内の水が減少して温度が 2000℃ まで上昇し、水素爆発が起きた。非常用炉心
冷却系はうまく作動せず、原子炉の破壊を防ぐために大量の放射性ガスが放出された。
[2]1986年に旧ソ連で(チェルノブイリ)原子力発電所が事故を起こした。これは
黒鉛炉と呼ばれるタイプで、核分裂を制御できなくなって大爆発で発電所全体が破壊され、
膨大な放射性同位体が国境を越えてまき散らされた。半径 30km は居住不可能となり、
今だ公式な報告はないが、原爆に匹敵する被害が出たとも言われている。
[3]ちなみにそのような事故に遭遇したときは、風向風速を考慮してひたすら逃げるし
か方法がない。愛知県西部では、冬の季節風の風上 100km に敦賀原子力発電所があ
ることは記憶しておこう。
[4]日本でも1981年の敦賀原子力発電所の放射性廃液漏れなどの事故がある。事故
原因のひとつは、過酷な条件で運転される原子炉に用いる金属材料が(応力腐食割れ)を
起こすためである。
[5]加えて日本では、事故や破損がくり返し(隠ぺい)され、国民の不信を招いている。
[f]再処理と放射性廃棄物
[1]使用済み核燃料には、ウラン238とプルトニウム239、それに核分裂生成物な
どが含まれる。これらを分離する操作は(再処理)と呼ばれるが、日本ではこの技術が確
立しておらず、現在はフランスなどに依頼している。
 (プルトニウム239)は強い放射線を出し、半減期が長く、体内に取り込むと排出さ
れにくいので、取り扱いが難しい。
[2]日本ではこれとウラン238を、新しい方式の原子力発電で用いる(高速増殖炉)
と呼ばれる原子炉の核燃料として利用する予定であるが、その開発は行き詰まっている
(11章を参照)。そしてプルトニウム239は(核兵器)になるので、非核三原則を国
是(こくぜ)とする日本が大量に保管することは許されない。
[3]また核分裂生成物は強い放射線を出し、半減期の長い同位体を含み、高レベル(放
射性廃棄物)と呼ばれる。この放射線が静まるには数万年という時間が必要である。
 放射性廃棄物の処分技術は世界的に確立しておらず、現在はその貯蔵タンクが蓄積して
いく一方である。一体そのような長年月に渡って、責任を持って保管できる国家や企業が

                  - 21 -

存在するのだろうか。
[問3]私たちは原子力発電をどのように考えたらよいだろうか。

13章 3.炭化水素の構造 アルカン
 都市ガスとして配管されている気体燃料の多くは 分子式が CH4 で表される(メタ
ン)である。これは(天然ガス)の主成分であり、液化して(LNG:液化天然ガス)タ
ンカーなどで輸送される。日本ではインドネシアなどから輸入している。
13章 5.ハロゲン化炭化水素 フロン
 炭化水素の水素を塩素とフッ素で置き換えた化合物は(フロン)と呼ばれる。フロンに
は次のようなものがある。
    CCl3F       トリクロロモノフルオロメタン(R11)
    CCl22      ジクロロジフルオロメタン(R12)
    CCl2FCClF2  トリクロロトリフルオロエタン(R113)
ここでフルオロとは(フッ素)のことである。
 フロンは1928年にその耐熱性と安全性から「夢の物質」として登場し、冷蔵庫やク
ーラーの(冷媒)、洗浄剤、スプレーの(噴射剤)などに利用された。しかし1970年
代になって大気中に放出されたフロンが、成層圏まで拡散してオゾン分子を次々に分解す
ることによって、(オゾン層)を破壊していることが明らかになった。
 これに対して1985年からくり返し国際会議が開かれ、フロン規制が決議され、それ
が実行されている。このことは地球環境を守るための国際協力の生きた手本であり、二酸
化炭素規制などに引き継がれることを期待したい。
14章 5.油脂と洗剤 合成洗剤
 最初に登場したアルキル基が枝分かれ状のものは、自然の中で(微生物)に分解される
ことが難しく水質汚濁を引き起こした。現在では(直鎖状)アルキル基のもの(LASと
略称される)に改善されている。
15章 6.染料、医薬と農薬 アゾ染料
問 ザルツマン試薬で二酸化窒素を検出する実験のイラストを描け。

    

 (ザルツマン試薬)は汚染物質の二酸化窒素と反応して赤紫色になる。このとき二酸窒
素が(亜硝酸)になってジアゾ化が起こり、続いて着色性物質が生成する。この反応は実
際の汚染調査にも利用されている。

                  - 22 -

参考:ザルツマン試薬には、スルファニル酸という芳香族アミンと、N−(1−ナフチ 
   ル)エチレンジアミンというフェノール類が含まれる。
15章 6.染料、医薬と農薬 医薬
 しかしペニシリンやスルファミンといった化学療法剤の多用は、それが効かない(耐性
菌)の出現を招き、新薬の開発といたちごっこになっている。また医薬にはサリドマイド
のような(副作用)が隠れている可能性があることも忘れてはいけない。
15章 6.染料、医薬と農薬 農薬
[1]古くから農業は雑草や害虫などとの戦いでもあった。1939年にミューラーが、
ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)が優れた殺虫作用を持つことを発見し、
大量に生産されるようになった。当初は人間に対する毒性は低いという試験結果を踏まえ
て、農薬としてだけでなく、伝染病を媒介する昆虫を駆除するのにも利用された。

    

[2]しかし6章で紹介したようにカーソンがその(残留毒性)を告発し、現在では使用
禁止になっている。現在でも分解されにくいDDTは脂肪組織に蓄積し、食物連鎖で生物
の体を渡り歩いて残留している。そして1996年にシーア・コルボーンがその著書「奪
われし未来」で、内分泌かく乱物質(環境ホルモン)というDDTの真の毒性をあばき出
した。
[3]DDTと同時期にベンゼンヘキサクロリド(γ−BHC)や有機リン系のパラチオ
ンが開発されたが、いずれも現在は使用禁止になっている。ちなみに有機リン系農薬は
(サリン)などの毒ガスの開発にもつながった。
[4]さて現在でも農薬の開発は続けられている。そして問題は農薬に限らない。いった
い私たちは、合成化学物質とどのように付き合っていくべきだろうか。それを考える手が
かりに、少し長いが「奪われし未来」の第14章「無視界飛行」の全文を資料として紹介
しておく。
参考:翻訳された「奪われし未来」は翔泳社から出版されている。
[5]教師としての私の願いは、企業に奉仕するだけでなく、人類全体のため地球環境の
ために研究し発言する科学者を目指す生徒が育つことである。
15章 7.石油化学工業
 石油化学は1930年代に石炭化学に取って代わり、現代ではもっとも主要な化学工業
になっている。

                  - 23 -

 石油の起源はいまなお確定していないが、地中の背斜構造と呼ばれる部分にガスや塩水
とともに埋蔵され、原油と呼ばれる。
 原油の主成分は炭素数が3〜40程度の(アルカン)や(シクロアルカン)を中心とし
た炭化水素の混合物である。不純物としては硫黄化合物などの他にバナジウムなどの金属
化合物を含む。
 世界の石油採掘量は38億kl(キロリットル)であり、日本はほぼ全量の2.6億kl
を輸入している(98年)。
[b]石油の分留
 原油はまず蒸留によっていくつかの製品に分けられる。このとき数℃の沸点差でも連続
的に(分留)できる精留塔という装置が使われる。はじめに常圧(1atm)における蒸
留で沸点が低いものから、石油ガス、(軽質ナフサ)、重質ナフサ、(灯油)、軽油が取
り出される。そして沸点が高い残油は脱硫して(重油)として工場燃料になる他に、減圧
蒸留して潤滑油やアスファルトなどにする。
参考:上の製品はすべて依然として混合物である。
18章 2.セルロース工業 製紙
 製紙工場では、悪臭や排水に対する(環境対策)が求められる。またチップの原料とし
て(熱帯雨林)などが伐採・破壊されており、紙のリサイクルが重要である。
 そしてセルロースは、次節で学習するデンプンとともに、自然の(循環)の中で産み出
される有機原料であり、これらを(自然破壊)にならないように利用していくことは人類
の課題である。
19章 2.付加重合によるプラスチック 燃焼テスト
 食品ラップや(電線の被覆)の小片を銅線の先に固定してバーナーの炎の中に入れると、
しばらくして炎が青色や(緑色)になる。このようなプラスチックは(ポリ塩化ビニル)
のような塩素系プラスチックである。
 1章では消しゴムを材料にして似た実験をしており、これは(バイルシュタイン反応)
であった。この反応の原理は、有機化合物中の(塩素)が銅と再化合して塩化銅になって
揮発しやすくなり、(銅)の炎色反応が現れるためである。単体の銅そのものは炎色反応
を示さず、これは(有機化合物)中に塩素が含まれるかどうかの検出法になる。ちなみに
食塩のような無機化合物中の塩素が銅と再化合することはない。
19章 2.付加重合によるプラスチック プラスチックのリサイクル
[1]プラスチックは便利な材料であるが、大量の(ごみ)にもなっている。7章では自
然の(物質循環)の意味を学習し、人間が存続するためには物質を循環利用することが不
可欠であることを確認した。
[2]熱可塑性プラスチックは回収して(再加工)しやすい材料である。そのためには材
料を汚したり混ぜたりせずに生産者にもどすことである。生産者には(法律)で再加工を

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義務づける。
[3]またプラスチックを(自然)の物質循環に組み込んでいくには、それを燃料として
(燃焼)させて二酸化炭素と水蒸気にし、発生する(熱エネルギー)は有効に利用するこ
とである。また現在では製鉄所は、コークスの代わりに(還元剤)としてプラスチックを
利用し始めている。ただしいずれの場合も塩素系プラスチックは除去する必要がある。そ
れに排煙に有害物質が含まれないような対策が求められる。
[4](塩素系プラスチック)を循環させるには、人間が(人工的)に塩素を切り離す処
理をし、それを(再利用)するようにせねばならない。
[5]それにしても私たちは(二酸化炭素)を発生させ過ぎている。経済と生活のスタイ
ルを改善してプラスチックの使用量を(減少)させることも求められている。
[6]現在プラスチックは(石油)を原料に合成されている。これは自然の物質循環から
は外れている。これからは光合成などによる(バイオマス)を原料にしていくべきではな
かろうか。もちろんそのときは人間が砂漠の(緑地化)など自然の物質循環を促進してい
く必要がある。
問 人間が利用しているさまざまな材料は、どのように循環させていけば良いのだろうか。
19章 3.縮合重合によるプラスチック 尿素樹脂
(前略)
 このようにして生産される建材は安価ではあるが、未反応の(ホルムアルデヒド)が揮
発して(シックハウス病)を引き起こすことがある。

おわりに

 最近ある生徒が書いた「授業ノート」の感想を紹介します。
「既に受験教科の関係で化学の勉強の第一線から退いた私ではありますが、この授業ノー
トなるものの機会を得て、久しく真面目に先生の御言葉に耳を傾けてみた次第であります。
 先生の授業は相変わらず私達の好奇心を刺激するように工夫されたものなのですが、い
かんせん今の私には、ちんぷんかんぷんでございました。
 しかし先生が化学に対して深い愛情を持っていること、化学を通して社会のあり方を私
達に語りかけていること、プラスチックは熱を受けると軟らかくなること、くらいは私に
もわかりました。一時間の実入りとしては甚だすくないものですが、これが今の私の精一
杯です。                       敬具  」
 これは3年間化学を教えてきた生徒です。具体的内容は別として、私の思いは伝わって
いるなあとうれしい気持になりました。



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参考資料

 次の2通のメールはアルケミスト・メーリングリストおよび愛知科学教育ネットで発信
したもので、地球上のエネルギー量の計算と環境問題におけるエントロピーの位置付けに
ついて書いています。
2001年8月11日付
(前略)
太陽から1年間に地球に与えられるエネルギーは
    太陽定数:約2cal/cm^2/min
から次のように見積もれます。
  3.14×(6400×10^5)^2×2×4.2×60×24×365
    =1.08×10^19×60×24×365
    =5.7×10^24[J]
雲などによる宇宙への散乱(34%)を除くと、大気を含めて地球が受け取るのは3.7×
10^24[J]になります。ただしこのうち多くはすぐに赤外線放射で失われるので、人類
が利用できる最大値はこれより相当に小さいはずです。もっとも利用できているのは光合
成でしょう。時間がないのでこれについては次回とします。
2001年8月15日付
こんにちは、林です。
 地球全体の光合成の量を調べてみたら、Bolinら(1979)のデータとして、炭
素ベースで
    陸上  63×10^15 gC/y
    海洋  45×10^15 gC/y
とありました。合計 128×10^15 gC/y です。これを次に熱化学方程式でエネル
ギーに換算すると
  6CO2 + 6H2O(液)= C6H12O6 + 6O2 − 2800kJ
    128×2800/72 = 5.0×10^21[kJ/y]
となります。これは前のメールで計算した、1年に太陽から与えられるエネルギー
    5.7×10^24[J]
のおよそ0.1%に相当します。ただしこの多くは植物の呼吸や枯死などで失われるので、
人間が利用できるのはこの数分の1でしょう。
 数百年前まで、人間はほとんど光合成に頼って生活してきました。光合成が素晴らしい
のは、食やその他のエネルギー源となると同時に、衣住という物質資源も提供し、かつ廃
棄後は生態系の中でリサイクルされることです。物質は全体がリサイクルされれば、物質
のエントロピーは一定に保たれるし、そのリサイクルのために増加した熱のエントロピー
は、もともと太陽エネルギーの枠内のものだから、赤外線放射によって宇宙に捨てられま

                  - 26 -

す。
 人間は近年大量の石炭、石油、天然ガスを消費してしています。世界国勢会図によると、
1996年における世界の消費量は
    石炭    約380000万t
    石油    約320000万t
    天然ガス  約89000千兆J(=8.9×10^19[J/y])
とありました。石炭、石油のエネルギー換算の式が見当たらないので自己流でやってみま
す。石炭については
    C + O2 = CO2 + 394kJ
石炭の 2/3 が炭素として、1gあたりの発熱エネルギーは
    (2/3)×394/12 = 22[kJ]
    3.8×10^15×2.2×10^4 = 8.4×10^19[J/y]
石油については
    ヘキサンの燃焼熱は4188kJ/mol
    C6H14 = 86
石油の90%がヘキサンと見なして、1gあたりの発熱エネルギーは
    0.9×4188/86 = 44[kJ]
    3.2×10^15×4.4×10^4 = 14.1×10^19[J/y]
まとめると
    石炭     8.4×10^19[J/y]
    石油    14.1×10^19[J/y]
    天然ガス   8.9×10^19[J/y]
    合計    31  ×10^19[J/y]= 3.1×10^20[J/y]
となります。これは全光合成量の6.2%に相当します。エントロピーに換算してみると、
平均気温が15℃=288Kとして
    31×10^19/288 = 1.1×10^18[J/K・y]
です。
 以上が間違っていないとして、この計算結果を皆さんはどう捕らえますか。くたびれま
した。今日はここまで。






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追加資料

03年1月15日付け愛科教ネットへのメール
件名 「環境・公害と教育」に参加して

 こんばんは、林まさです。
 今年の討論合宿の、白井先生の「新しい進化観について」は久し振りに概念の洗礼を受
けることになりました。
(中略)
 さて私は12日の朝食後、すぐに全国教研の「環境・公害問題と教育」分科会に参加す
るために土岐市に向かいました。幸い遅刻せずにすみました。
 本部から依頼される形で参加することになったのですが、天神川の自然と共存する運動
(岐阜)や、給食婦さんから始まる小学校における米づくりの総合学習(東京)など、や
はり実践から学ぶことはたくさんありまた。
 私のレポートは、新任の頃に取り組んだ名古屋市北区のセロハン公害に反対する住民運
動の教訓とそれに基づく12時間をかけた「公害の科学」という総合学習、および最近手
がけてきた化学全体にわたる授業プリントの中の関連部分とその背景の環境問題のとらえ
方を内容としたものです(合同県教研でも資料として配布した)。
 私としてはやや間に合わせ的に考えてきた環境問題を、人類の展望を見い出すためにし
っかり捉え直していこうという決意が固まった3日間でありました。
 ちなみにこのレポートの最後に掲載したエネルギー計算は間違っていないことが、日刊
工業新聞の記事で確認できました。補足して整理すると次のようです。
  太陽からのエネルギーを1,000,000とすると
    光合成で植物に吸収されるのが         880
    化石燃料で消費するエネルギーは         54
    (食料として消費するのは             7程度かな)
    (人類が消費する全エネルギーは         90程度かな)
反射ですぐに宇宙に放射されてしまうのが290,000です。海洋が吸収するエネルギ
ーは380,000であり、地球環境の安定化に大きな役割を果たしていることがうかが
えます。そして大陸が受けるエネルギーは90,000であり、これは身近に利用できま
す。また風のエネルギーになるのが7,000であるのに対して、水の位置エネルギーに
なるのは30であり、その意味でも「脱ダム宣言」は正しいようですね。
 いまや環境問題は、社会的問題であると同時に、限られた資源とエネルギーを人類ひと
りひとりが互いに相手を尊重しながら民主的にどう活用していくかという、個人的問題で
もありますね。つまり私たちの便利快適志向の生活を見直すことが避けられないと思いま
す。
 ではまた。


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