[目次]
1.はじめに
2.抵抗とオームの法則
3.デジタル情報の発生
4.センサーとブリッジ回路
5.ダイオードと整流回路
6.ダイオードの特性と発光ダイオード
(ここまでは「その1」にある。)
7.トランジスタの特性
8.スイッチング回路とダーリントン接続
9.コンデンサの性質
10.平滑回路と微分回路
11.オペアンプの増幅回路
12.減算回路とコンパレータ

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                                   林 正幸

父と子のエレクトロニクス(アナログ編:その2)

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7.トランジスタの特性

 トランジスタがエレクトロニクスの与えた影響は計り知れないものがる。それにも係わ
らず現在はそれを越えた時代に入っている。ここでは今でも私たちがよく利用する方法に
限って学習をしよう。
 トランジスタは、p型半導体とn型半導体を2カ所で接合したもので、PNP型とNP
N型がある。またそれぞれの型に、小電流を扱う高周波用と大電流を扱う低周波用がある。
そしてPNPで高周波用はA型、PNPで低周波用はB型、NPNで高周波用はC型、N
PNで低周波用はD型と分類される。もっともよく使うのはC型のトランジスタである。
 図7ー1にNPN型のトランジスタを模式的に示す。それぞれの半導体には端子が付い
ていて、コレクタ(C)、ベース(B)、エミッタ(E)と呼ばれる。この図ではコレク
タとエミッタは同等にみえるが、構造もはたらきも異なるので区別する。実際のトランジ
スタの多くは、同じ図に示すような形をしている。そしてほとんどの場合その品番が読め
るように持ったとき、左足から順番にエミッタ、コレクタ、ベースとなっている。これは
エクボ(E・C・B)と覚える。
 NPN型のトランジスタは図7ー1のよう
な記号で表す。そしてダイオードの特性から
明らかなように、テスターの抵抗レンジで調
べると図に示した向きに導通があり、残りは        図7−1
絶縁状態になっている。ところがトランジス
タにはもうひとつに重要な性質がある。NP
N型では、コレクタからエミッタに電圧を掛
けておいてベースからエミッタに電流を流す

                  - 1 -

と、コレクタからエミッタにその100倍くらい(種類によっては1000倍)の電流が
流れる。電流が「増幅」されるのである。
[実験7−1]トランジスタの特性
F「図7ー2の回路を組んで、トランジスタの特性を調べてみよう。」
F「まずトランジスタは2SC372を使います。」
S「2Sというのは何ですか。ダイオードでも1Sというのが出てきました。」
F「よく覚えているね。始めの数字はその素子で半導体が接合している箇所の個数を示し
ます。そしてSは半導体(Semiconductor)を示します。なお2Sは省くこ
ともあります。」
S「10k抵抗と2k半固定抵抗はどういうはたらきですか。」
F「とりあえずこう考えなさい。10kを流れて来た電流は、一部はトランジスタのベー
スに流れ込み、残りは半固定抵抗を流れ下る。半固定抵抗が小さい抵抗に調節されると、
大部分の電流がそこを流れ下る。ところがその抵抗を大きく調節していくと、トランジス
タに分流する電流が大きくなっていく。」
S「そうか、ベースに流す電流を加減するのだ。それでは270Ωはどうですか。」
F「トランジスタのコレクタは直接電源につないでも、コレクタに流れ込む電流はほぼ同
じです。ただし270Ωを入れると、コレクタ・エミッタ間電圧が大きく変動します。実
際の回路ではこの位置に抵抗を持ったパーツ、たとえば発光ダイオードのようなものが入
るので、このような回路にしたのです。」
S「いろいろありますね。」
F「テスターの数が足りないですが、同じ条件で付けたり外したりして計測をしていきま
す。電流計は付けないときは短絡(リード線でつなぐ)させ、電圧計はそれを外したまま
にします。」
S「それでは実験しよう。」
F「半固定の抵抗が小さいうちは、ベース・エミッタ間電圧を基準にデータを採ります。
0.2、0.4、0.6、0.7Vといったように。」
S「ちょっと待ってください。半固定はどちらにまわせば抵抗が小さくなるのですか。」
F「それはつなぎ方に依ります。電源を切ってテスターで実際に抵抗を調べてみればよい
のです。」
S「電圧が低いうちは全然電流が流れません。」

                  - 2 -

F「次はベースに流れ込む電流を基準にします。0.05、0.1、0.15、0.2mAと
いったように。」
S「図7ー3のようになりました。」
F「それではまとめをします。」




                 図7−2&3





 ひとつめは直流増幅率(hFE)である。ベースからエミッタに流れる電流はベース電流
(IB)と言う。これに対してコレクタからエミッタに流れる電流はコレクタ電流(IC
と言う。この2つの電流をグラフに描くと図7ー3のようになる。そしておおむね次の関
係式が成り立つ。
    IC=hFE×IB    {4}
これから「トランジスタはベース電流の大きさに比例してその100倍くらいのコレクタ
電流が流れる」ことが分かる。そしてグラフのこう配が直流増幅率である。実験に使った
C372ではおよそ140となる。この数値を知りたいときは「トランジスタ規格表」を
見ればよい。ただし同じ品番のトランジスタでもかなりばらつきがあることは承知してお
こう。なお増幅という用語は誤解を生みやすい。たとえば直流増幅率が100だからとい
って、トランジスタ自身が100倍の電流を発生させるわけではない。コレクタ電流はあ
くまで電源によって流される。トランジスタのはたらきは、ベース電流の大きさに応じて
コレクタ電流を加減することである。
 ふたつめはバイアス電圧である。ベース・エミッタ間電圧とベース電流の関係を見てみ
ると、ダイオードと似た特性があることが分かる。つまり「ベース・エミッタ間電圧が
0.7V近くまで上がらないとベース電流はゼロであり、またベース電流が流れているとき
はいつでも0.7Vあまりの電圧がある」。この境界の電圧はバイアス電圧と呼ばれる。
 みっつめはコレクタ・エミッタ間電圧である。270Ωの位置にある抵抗を持つパーツ

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は一般には「負荷(ふか)」と呼ばれる。そして実験から「負荷がある場合は、コレクタ電流
が大きくなるにつれてコレクタ・エミッタ間電圧は急激に小さくなる」ことが分かる。た
だし「コレクタ電流がゼロのとき、言い換えるとベース電流がゼロのときはコレクタ・エ
ミッタ間電圧は電源電圧に等しくなる」。言い換えると、すべての電圧降下は負荷ではな
くトランジスタで起きるのである。この2つはセットで頭に入れよう。
 以上でトランジスタの特性は把握できた。それではトランジスタを購入するときには何
に注目したら良いのだろうか。私たちは意外にも直流増幅率はあまり気にしないことが多
い。重要なのは「最大コレクタ電流」である。これはコレクタ電流の許容量で、オーバー
するとトランジスタは発熱で破壊され、ひどいときにはパンと音を立てて破裂する。電力
増幅タイプのB型やD型のトランジスタは、通常でも放熱板を付けて使用する。実験に使
ったC372の数値は100mAである。私たちが選択するトランジスタは
    最大コレクタ電流  100mA
              400mA
のものが多い。なおトランジスタはその店舗に置いている品番の中から購入することにな
る。
 回路設計においてもやはりコレクタ電流の大きさに注意を払う。この実験回路の
10k抵抗の意味を検討する。ベース電流が流れているときのベース・エミッタ間電
圧は0.7Vあまりだから、10kの両端の電圧は7Vほどである。したがって抵抗を
流れる電流は
    I=7/10=0.7〔mA〕
である。これがすべてベース電流になったとしても、直流増幅率が100くらいだから
    0.7×100=70〔mA〕
と最大コレクタ電流を越えることはない。これで安心して実験ができる。このような役割
をする抵抗は「保護抵抗」と呼ばれる。これに対して半固定抵抗の大きさはバイアス電圧
と必要なベース電流が確保できるように、試行錯誤で選べばよい。保護抵抗が自分で入れ
られるようになれば回路設計は一人前である。

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8.スイッチング回路とダーリントン接続

                  - 4 -

 前節で勉強したように、トランジスタはベースにかかる電圧が0.7Vより小さいうちは
コレクタ電流がゼロであり、バイアス電圧を越えてベース電流を流すとその100倍くら
いのコレクタ電流が流れる。この特性は自動スイッチとして利用できる。
[実験8−1]スイッチング回路
F「図8ー1の回路を組みなさい。」
S「Lというのは何ですか。」
F「たんに長くて細い導線です。たとえば動物が通ったときにそれを引っかけて電気的に
切断されることを期待しています。」
S「なるほど。」
F「Rは前にやったように現物合わせで探してください。」
S「それはLを断線にしてやればいいですね。」
S「270Ωが良さそうです。電流は20mAになります。」
F「それでは実際に試してみなさい。」
S「これは結構おもしろい。」
 これはスイッチング回路と言う。この回路で大切なことは、ベース電流を加減して必要
なコレクタ電流を生み出すのではなく、いきなり十分過ぎるコレクタ電流が流れるように
する。これはスイッチをオンすることに相当する。あるいはバイアス電圧より小さくして
コレクタ電流をゼロにする。これはスイッチをオフすることに相当する。そしてスイッチ
がオンしたときの電流は別にコントロールする。これは便利な考え方であり、私たちはト
ランジスタをほとんどこのスイッチとして利用している。
 次にトランジスタが1つでは得られるコレクタ電流が不足である場合を取り上げる。た
とえばテスターを抵抗の最大レンジ(kΩ)にして、テストリードを水道水に浸けてその



                 図8−1&2




                  - 5 -

抵抗を調べてみよう。もちろん2本のテストリードの間隔にもよるが、たとえば30kと
いった数値になる。もし電源として乾電池2本を使うとしたらその電圧は3Vであり、こ
のとき流れる電流は0.1mAと小さい。したがってそれを100倍に増幅しても10mA
で、たとえば電子ブザーを鳴らすことにも無理がある。そこでそのコレクタ電流を2つめ
のトランジスタのベースに流し込むのである。こうすれば電流はさらにもう100倍に増
幅される。このようにトランジスタを2段増幅できるように接続することをダーリントン
接続という。
[実験8−2]ダーリントン接続
F「図8ー2に示す風呂ブザーの回路を組みなさい。今回は実用性を考えて乾電池2つの
3V電源にします。」
F「電子ブザーは種類にもよりますが、10mAくらいの電流を流すと音が出ます。適当
な音が出るように抵抗を探してみなさい。とりあえずコップに汲んだ水を利用します。」
S「抵抗は無しでも行けそうですが27Ωを選んでみました。そのときの電流は11mA
です。」
F「それでは実際に風呂で試してみよう。」
 この回路についていくつか説明する。まず100k抵抗だが、2本のリード線の電極が
水に浸かっていないとき、その抵抗は100kよりけた違いに大きい。だからS点の電位
はほぼ0Vであり、バイアス電圧より低い。ここでひとつ注意すると、このダーリントン
接続のバイアス電圧は2倍の1.4Vになる(そうならない接続もあるが、ここでは触れな
い)。これに対して2本の電極が水に浸かると、3Vは30kと100kで比例配分され
る。これを電圧の抵抗分割という。その結果、S点の電位は2Vあまりになり、ベース電
流が流れるようになる。実際にはベース電流が流れるとS点の電位は下がる。それは10
0kと並列にもうひとつ抵抗を入れたのと同じだから、その合わせた抵抗は100k以下
になるからである。ちなみにそのときのつまりベース電流が流れているときのS'点の電位
は、トランジスタの特性からバイアス電圧をすこし上まわる数値になる。
 次に10k抵抗は保護抵抗である。うっかり2本の電極が直接に触れてしまったときベ
ース電流を制限するはたらきである。この抵抗は電極と電源の間に入れることもできる。
 それからダーリントン接続では第1段のトランジスタのコレクタを電源に接続しないで、
これを第2段のトランジスタのコレクタに接続することがある。

                  - 6 -

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9.コンデンサの性質

 コンデンサは電気を貯めることができる素
子である。イメージとしてはその記号のよう
に、2枚の金属板を対向させたものと考えよ
う。コンデンサに電気を貯めるには図9ー1        図9−1
のように電圧を掛けてやればよい。すると電
流がマイナス側の金属板から電源を通ってプ
ラス側の金属板まで流れる。ちなみに電源と
はプラス電気を流すポンプで、その向きはプ
ラス端子から出て、マイナス端子に入るようになっている。他方物質はすべて原子からで
きており、原子はプラスの部分とマイナス電気を持った電子からできている。つまり物質
は電気的にはプラス電気とマイナス電気が中和してできている。だからマイナス側の金属
板ではプラス電気が抜け出してマイナス電気を持つことになる。反対にプラス側の金属板
ではプラス電気が流れ込んでプラス電気を持つことになる。
 コンデンサが電気を貯めやすい程度を電気容量(C)ないし単に容量という。対向する
金属板の面積が大きいほど電気が貯まりやすいから、容量は金属板の面積に比例する。そ
れからプラス電気とマイナス電気は互いに引き合うので、2枚の金属板の間隔が接近する
ほど電気は貯まりやすい。つまりコンデンサの容量は金属板の距離に反比例する。ところ
で同じコンデンサでも掛ける電圧(E)が大きいほどより多くのプラス電気が移動するの
でたくさんの電気(Q)が貯まる。そして次の関係式が成り立つ。
    Q=CE    {5}
 ここで電気量の単位はクーロン(C)である。しかし容量と紛らわしいのでカタカナを
使うことにする。まとめると「コンデンサに貯まる電気量はその容量と掛ける電圧も両方
に正比例して大きくなり、2つの積で計算できる。」のである。
 コンデンサの容量の単位はファラド(F)であり、これは1Vの電圧を掛けたときに1
クーロンの電気が貯まるような容量を1Fと決めている。しかし普通はそのように大きい
容量のコンデンサーは使用しない。そこでマイクロファラド(μF)とか、ピコファラド
(pF)という単位が用いられる。
    1F=1000000μF
    1μF=1000000pF

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ちなみに小さいコンデンサの容量は、抵抗のカラーコードに似た方法で表示される。たと
えば473というのは
    47000pF=0.047μF
のことである。
 コンデンサにはいろいろな種類があるが、よく使うのはセラミックコンデンサと電解コ
ンデンサである。電解コンデンサというのは普通は1μF以上で、すこし複雑な仕組みを
持っている。忘れていけないのは極性がある、つまり2本の端子にプラス・マイナスがあ
り、うっかり逆向きに接続すると壊れてしまうことである。長い方の端子がプラスにつな
ぐ方であり、マイナスにつなぐ方はそのことが胴体部に表示されている。どちらの向きに
も電圧がかかるような回路では、図9ー1のように同じ容量のコンデンサをマイナスどう
しを内側にして直列に接続して利用する。ただしこうするとコンデンサの容量は半分にな
ることを承知しておこう。それから電解コンデンサでは「耐圧」にも注意を払うべきであ
る。つまりこれは掛けてよい電圧の許容量であり、これを越えるとやはり破壊されてしま
う。とくに通常の交流では瞬間的に1.4倍の電圧が掛かることを考慮して耐圧に余裕があ
るものを選ぶようにする。これに対してセラミックコンデンサは1μF以下で、無極性で
気軽に使うことができる(耐圧がないわけではない)。
 それではコンデンサの充電と放電の様子を調べてみよう。それには大きい容量の
1000μF電解コンデンサを使用する。そうでないと一瞬に完結してしまって、流れる
電流や両端の電圧の変化を追いかけることができない。それから電圧の計測に直接テスタ
ーを利用することはできない。いくら容量が大きいといてもコンデンサに貯まる電気量は
知れており、アナログタイプのテスターは自身にすこし電気を流しながら電圧を検出する
しくみだからである。そこであとで勉強するオペアンプを使ったボルテージホロワという
回路を利用する。後節を読んですこし予備知識をつけて対応して欲しい。
[実験9−1]コンデンサの充電と放電
F「図9ー2の回路を組んで、まず充電のときのコンデンサに流れ込む電流とそのときの
両端の電圧を追いかけます。コンデンサに掛ける電圧は乾電池1つで1.5Vにします。オ
ペアンプを使うため−8Vも必要です。」
F「準備ができたら、時計を見ながら充電にスイッチを入れ、10sおきに計測して記録
します。電圧と電流を一度に計測するのは無理だから、くり返し実験してデータを採りま
す。そして電流計の向きにはいつも注意を払いなさい。」

                  - 8 -

S「まず電圧の計測ができました。」
F「コンデンサの放電は27kをショートさせるとすぐできます。」
S「要領が分かってきました。」
F「ところで電流の最大値はいくつでしたか。」
S「42μA(マイクロアンペア)です。」
F「それでは放電の方に移りましょう。」
S「図9−3のようなデータになりました。放電電流の最大値は43μAです。」
F「電池の電圧は1.60Vですね。それではもう一度充電の実験をして、コンデンサの電
圧が1.02Vになるまでの時間を計りなさい。」
S「中途半端な数字ですね。29sかかりました。」
F「つぎは放電で0.59Vになる時間です。」
S「29sです。前と同じ値です。」
F「結果をグラフにしてみるといいですね。」




                 図9−2&3





 コンデンサの充電や放電の様子は具体的にとらえることができた。それではコンデンサ
の性質をひとつひとつ学習していく。
 始めにコンデンサが持っている電圧の意味である。抵抗を通さずに直接にコンデンサを
充電・放電する場合は、コンデンサが持っている電圧と掛ける電源電圧とは速やかに一致
していく。ところが実験のように抵抗を通して充電・放電する場合は、十分な時間が経つ
までは一致しない。まして電圧が変動する交流の場合は、2つの電圧はいつもずれている
と言える。コンデンサに電気が貯まると、その電気量に比例してプラス電気が元の中性の

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状態に戻ろうとして流れ出そうとする。この電圧がコンデンサの持っている電圧である。
まとめると「コンデンサはそこに貯まっている電気量に正比例した大きさの電圧を持って
いる」のである。それは{5}式を変形した次の関係式で計算できる。
    E=(1/C)×Q    {6}
 次にコンデンサの電圧とそのときの電流の関係である。放電から見ていくと、たとえ
ば20s後の電流22μAは、オームの法則から
    0.82/27=0.030〔mA〕=30〔μA〕
と求められる。データがすこしずれているのは実験誤差として我慢してほしい。ここで言
いたいのは「電気が貯まったコンデンサは、その瞬間はそれだけの電圧を持つ電池と同じ
である」ことである。充電の場合も、たとえば50s後の電流8μAを検討してみよう。
コンデンサは1.32Vの電池と同じであり、乾電池の1.60Vが掛かっているので、抵
抗に掛かる電圧は差し引き0.28Vである。だからその電流は
    0.28/27=0.010〔mA〕=10〔μA〕
とまずまずの結果が得られる。こうして考えると、電流の時間変化が充電と放電で同じに
なることも理解できる。ちなみに充電開始と放電開始の瞬間の電流は
    1.60/27=0.059〔mA〕=59〔μA〕
となって、テスターの針がそれに追随できていないことを表している。
 続いて充電・放電の所要時間の目安になる「時定数」である。厳密に言うと完全に充電
したり、完全に放電したりするには無限の時間が必要である。現実には100%充電・放
電したと見なせる時間はある。しかしもうすこし正確にこのことを扱うには、放電の場合
では、始めに持っていた電圧に対してそのある割合までコンデンサの電圧が降下するのに
必要とする時間を定義する。ここで「ある割合」とは1/eである。eは自然対数の底で、
具体的には2.718・・・という数値である。だから1/eは0.368であり、始めの
電圧の37%(約1/3)になるまでの時間ということになる。充電の場合は、掛けてい
る電圧に対してあと1/eまでコンデンサの電圧が上昇するのに必要とする時間である。
つまり掛けている電圧の67%(約2/3)になるまでの時間である。このような時間を
「時定数」と定義する。大切なのは、この時定数はもとの電圧が大きくても小さくても同
じ数値になることである。
 さてこの時定数はコンデンサの容量に比例して大きくなる。ところが忘れていけないの
は、実験でも体験したようにコンデンサに直列に接続している抵抗にも比例して大きくな

                  - 10 -

ることである。考えてみれば、コンデンサに流す電流を加減しているわけだから当然であ
る。時定数はコンデンサと抵抗のセットに対して定義される数値である。そして時定数
(τ:タウ)は充電でも放電でも次の関係式で計算できることが分かっている。
    τ=CR    {7}
この関係式の比例定数が1になるように1/eという割合が選ばれたのである。時定数の
単位は秒(s)である。実験の場合で計算すると
    1000μF=0.001F  27k=27000Ω
    τ=0.001×27000=27〔s〕
となり、計測されたデータとよく一致する。実はコンデンサの正確な容量は時定数を計測
して得ている。まとめると「コンデンサの充電・放電の目安になる時定数は、その容量と
接続している抵抗値の積で計算できる」のである。

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10.平滑回路と微分回路

 5節の全波整流回路の実験で、「脈流」という用語が登場し、それをコンデンサを使っ
て平滑するという説明があった。コンデンサは電気を貯めることができるので、洪水を防
ぐ遊水池のように「電圧をならして平滑にする」ことができる。
[実験10−1]平滑回路
F「図10−1の左の部分はすでに実験したことがある回路ですが、今日はそれで発生す
る脈流を右の回路で平滑して一定の電圧の直流にします。」
F「交流は12Vを使います。コンデンサは耐圧が25V以上のものを選びなさい。」
F「始めは抵抗が1kでコンデンサを10μにします。抵抗は消費電力が大きいので1W
のものを使います」
S「回路を組みました。」
F「またオッシロスコープで電圧の波形を観察します。」
S「図10−2の真ん中の波形になりました。」
F「それでは一度コンデンサを外します。」
S「図の上の波形になりました。これが元の脈流でした。」
F「コンデンサを1μ、100μ、1000μと換えてみなさい。」
S「1μはあまり効果がありません。100μはかなりいいです。1000μなら完璧で
図10−2の下のようです。」

                  - 11 -

F「今度はコンデンサを100μに戻して、抵抗を510Ωにしてみなさい。」
S「あれ、同じ100μでも抵抗が小さくなると平滑の効果も小さくなります。図の真ん
中の波形に戻ってしまった。」



                図10−1〜3




 この回路は図5−5で紹介した電源装置に含まれている。そして抵抗はその装置に接続
する負荷を表している。平滑回路はコンデンサと抵抗のみからできている。ここで大切な
のは、抵抗は電気が流れにくいがコンデンサにはすぐに電気が流れ込むことができること
である。脈流の上り坂のときには、その電流の一部が抵抗に流れ、残りはコンデンサに流
れ込んで貯まる。そして脈流の下り坂になっても、電気が貯まったコンデンサは電池とし
てはたらき、その一部の電気を抵抗に流し出す。ここでコンデンサの容量が大きければそ
の電圧はあまり降下しない。そして放電による電圧の降下部分は次の上り坂で充電によっ
て回復する。こうして電圧が平滑な直流が得られるわけである。。そして抵抗が小さくな
るとそれに流れる電流が大きくなるので、コンデンサが容量不足になってくるのである。
どの程度に平滑するかは目的による。電源装置では、レギュレータは入力する電圧がいつ
でも8V以上あれば、きっかり8Vの安定した電流を出力する。
 要するに平滑回路というのは、負荷や電源に対してコンデンサを並列に入れたものであ
る。そしてこれが雑音吸収にも威力を発揮する。雑音というのは私たちが必要とする電気
信号に混在している余計な信号のことである。雑音は外部から侵入してくることも、その
回路自身から発生することもある。それには不定期なものもあるし、周期的なものもある。
たとえばラジオは、雷がなるとガリガリと不快音を立てるし、蛍光灯に近づけると家庭用
交流の影響を受けてブーンという60Hzの低音(「ハム」という)が入ってくる。また
回路設計がまずいと、発生した小さい雑音が回路の中を循環し(これを「発信する」とい
う)積み重なって大きな雑音となり、これが必要とする電気信号を無茶苦茶にしてしまう

                  - 12 -

ことがある。
 多くの雑音はオッシロスコープで把握することができる。たとえば上の実験では脈流に
図10−3のように、それよりかなり周波数が高い雑音が入って来ることがある。これに
対して大きなコンデンサを並列に入れれば、雑音を含めてすべてが平滑化される。しかし
小さいコンデンサなら雑音部分のみが平滑化される。つまり雑音を取り除くことができる。
私たちの電源装置には、100μと0.1μが使われている。経験的に言うと、雑音源や
IC(集積回路)に対して100μないし0.1μあるいはその両方を並列に入れると成功
する可能性が大きい。
 是非付け加えておきたいことがある。雑音の種類は多種多様でその対策は一筋縄ではい
かない。そのたび毎に粘り強く試行錯誤で克服していくのが基本である。そのノウハウの
蓄積こそ回路設計の実力と言っても過言ではない。
 次に、平滑回路のコンデンサと抵抗を入れ替えた形の微分回路を調べてみよう。実験に
は図10−4のような波形の電気信号を使う。時間と共に電圧が四角形に変化するので
「方形波」と呼ばれる。これはコンピュータを始めとするデジタル回路に不可欠な信号で
ある。オシロスコープは検定用に1kHzの方形波が取り出せるようになっているので、
それを利用することにする。周波数(f)と周期(T)には次の関係式が成立するので、
    T=1/f    {8}
周波数が1kHzということは
    T=1/1000=0.001〔s〕
つまり周期は1msである。周期というのはひとつの波が通過する時間のことである。
[実験10−2]微分回路
F「図10−5の回路を組みなさい。オッシロからプロトボードに検定波端子とグランド
(GND)端子を接続します。」
F「始めは0.01μにして、A点の信号を見てみます。」
S「確かに図10−4の波形です。山の部分の電圧は5Vです。」
F「それではB点を調べましょう。」
S「図10−6の上のような波形です。これはどういうことですか?」
F「コンデンサを0.1μ、1μ、10μと替えてB点の波形の変化を追いかけます。」
S「図の真ん中、下のような波形になっていきます。」
F「10μのときの電圧を読み取りなさい。」

                  - 13 -

S「方形波の山が2.5V、谷が−2.5Vです。どうしてマイナスが出てくるんだろう?」
F「それではコンデンサを0.01μに戻しなさい。」
F「そして抵抗を10kに替えます。」
S「あれ、0.1μで1kのときと同じだ。これは時定数が同じになるからですね。」



                図10−4〜6




 それでは1kで0.01μの場合から考えてみよう。始めに方形波の山の部分が掛かって
くると、それは5Vの電源で充電するのと同じだら、コンデンサの電圧はしだいに高くな
っていく。抵抗の両端の電圧はその差になるから、B点の波形は充電曲線をひっくり返し
たように、つまり放電曲線と同じになる。そしてコンデンサはほほ充電が完了して5Vの
電池と同じになる。そこで方形波の谷の部分が掛かってくると、A点の電位が0Vになる
ので、B点の電位はー5Vになるのである。そして今度は放電が始まり、コンデンサの電
圧は次第に下がっていく。したがってB点の波形は放電曲線をひっくり返したようになる。
これがくり換えされる。この場合の時定数は
    τ=0.01〔μ〕×1〔k〕=0.01〔ms〕
で、この方形波のひとつの山や谷が進む時間である0.5msに比べて十分に小さいことを
押さえておこう。ちなみに時定数の計算では、容量と時間にそれぞれもっともよく使うμ
とmsという単位を当てれば、抵抗のkと合わせて数値をそのままにして計算できること
も覚えておくと便利である。
 続いてコンデンサの容量を次々に大きくしていく。時定数がどんどん大きくなって、方
形波のひとつの山や谷の間に充電したり放電したりすることができなくなる。充電が完了
しないまま、つまりコンデンサの電圧が5Vにならないうちに谷が掛かり、放電が完了し
ないまま、つまりコンデンサの電圧が0Vに戻らないうちに山が掛かる。
 そして今度は1kで10μの場合を考えてみよう。時定数は10msで山や谷の時間に

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比べてけた違いに大きい。まずコンデンサが半分の2.5Vの電圧を持っている状態から始
めてみる。そこに方形波の山が掛かると、抵抗の両端の電圧はもちろん2.5Vで、B点の
電位は2.5Vである。ところが山の終わりになっても充電はあまり進まず、事態はほとん
ど変化していない。そして谷が掛かると、B点の電位は−2.5Vになる。同じように谷の
終わりになっても放電はあまり進まず、結局B点の電位は図10−6の下のような波形に
なることが分かる。次にコンデンサの電圧が0Vの状態から始めてみる。このときは充電
の方が放電より起こりやすい。充電曲線はこう配がより急な部分が、そして放電曲線はよ
りなだらかな部分が該当するからである。こうしてコンデンサの電圧はすこしずつ上昇し
ていく。これに対してコンデンサの電圧が5Vの状態から始めると、放電の方が充電より
起こりやすく、電圧は降下していく。こんなわけでコンデンサの電圧は時間と共に半分の
2.5Vに落ち着くことになる。
 ここであとの場合について視点を変えてみよう。このB点の波形は図10−4の方形波
の交流成分と言える。つまり方形波は、図10−6の下の波形(交流成分)と図10−2
の下の波形(直流成分)を合成したものである。つまり「電気信号の周期に比べてけた違
いに大きい時定数を持つ微分回路は、その交流成分のみを通過させる」のである。


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