キーワード
高校、化学、教材、自主編成、教科書、(高校化学、化学教材)


                                  01.11
                                   林 正幸

   宝石箱のような鉱物モデル

 高校化学において、天然高分子の中で無機化合物の岩石、鉱物を扱うのは有意義である。
かつて私は針金の端を接着剤でとめた正四面体をいくつも製作して、それをビニールテー
プで黒板に固定して説明をしていた。ただしこれは時間がかかる。
 最近盛口さんから、画用紙で作った正四面体を透明な塩ビ板に並べて貼るアイデアを得
た。そして発泡スチロール球を色付けした陽イオンを加えて全体を箱に入れることにした。
 いくつかの試行錯誤を経て、かなり納得がいくモデルが完成したので紹介する。

1.鉱物をつくる高分子化合物

 鉱物の高分子を構成するのは、中心にケイ素原子があり4つの頂点に酸素原子がある正
四面体である。ケイ素は酸素と4つの共有結合を形成して希ガスの電子配置を満足してい
る。これに対して酸素はこのままでは1つの不対電子を持つことになる。ケイ素原子がア
ルミニウム原子に置き換わることがあるが、この場合はアルミニウムは電子1個を得て1
価の陰イオンとなって、4つの酸素と共有結合を形成する。
 モデルでは一辺が40mmの正三角形からなる正四面体を作り、その頂点に直径10
mmの円を描き、水色に塗って酸素原子を表した。ケイ素やアルミニウムは中心にあると
想像する。
 鉱物はこの正四面体の連結の仕方で、次の3種に分類される。
    a)繊維状鉱物
    b)層状鉱物
    c)骨組み構造鉱物
それぞれに対して、できるだけ単純で美しい例を選んでモデル化した。

a)斜方輝石

 輝石では次ページの図の(a)のように、正四面体は2つの頂点を共有して糸状になる。
頂点を共有した酸素は2つのケイ素と共有結合することになり希ガスの電子配置を満足す
る。これに対して1つの正四面体あたり2つの頂点を共有しない酸素原子はそれぞれ1個
の電子を得て1価の陰イオンになる。こうしてできる糸状高分子は陰イオンとなり、
    (SiO3 2-)n
という化学式で表される。

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 斜方輝石ではこの陰イオンの相手をするのは、共に2価の陽イオンのマグネシウムイオ
ンと鉄(U)イオンである。したがってこの組成式は
    (Mg,Fe)SiO3

  

と書き表される。両イオンの組成は様々である。これらの陽イオンは正四面体に1つずつ
配置して、2つの酸化物イオンとイオン結合を形成する。そして陽イオンは稜の中点に接
近していると考えられる。
 斜方輝石では、このような糸状高分子が無数に繊維状に束ねられている。
 モデルでは35mmスチロール球を、橙色に塗ってマグネシウムイオン、黄緑色に塗っ
て鉄(U)イオンとした。

b)黒雲母

 雲母では上図の(b)のように、正四面体が3つの頂点を共有し六角形の碁盤の目を形
成して2次元の網目状になる。そしてひとつの正四面体あたり1つの頂点を共有しない酸
素が1価の陰イオンになる。さらに雲母では中心原子は平均で4つに1つはアルミニウム
に置き換わっている。そしてこの構造はよく見ると正四面体4つのセットがくり返されて
いる。たとえば六角形の左側4つの辺を形成する4つの正四面体に注目してみよう。こう
して2次元の網目状高分子の陰イオンは
    (AlSi310 5-n
という化学式で表される。
 黒雲母では2次元の網目状高分子が向かい合い、酸化物イオンどうしをやはり共に2価
の陽イオンのマグネシウムイオンと鉄(U)イオンがイオン結合で結び付けている。しか
しこれでは中心原子がアルミニウムの場合に、その1価の陰イオンとイオン結合する陽イ
オンが不足する。実際には次ページの図のように、陽イオンのシートをサンドイッチした

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2枚の陰イオンのシートのセット2つの間に、1価の陽イオンのカリウムイオンが挟み込
まれている。このカリウムイオンは上下2枚の陰イオンのシートの相手をするわけだから、
正四面体のひとつおきに配置し、正三角形の中点に接近していると考えられる。そうする
と黒雲母の組成式は
    K(Mg、Fe)2(AlSi310
となる。ところが現実はさらに複雑である。正しい黒雲母の化学式は
    K(Mg、Fe)3(AlSi310)(OH)2

            

なのである。つまり(Mg、Fe)(OH)2 分だけ増えている。これは2価の陽イオンが
形成するシートにおいて、六角形の中心の空洞に同じ陽イオンを組み込んだ方が安定な構
造になるためであろう。そしてそれとイオン結合する2つの水酸化物イオンは上下の陰イ
オンのシートの六角形の空洞の中心に組み込まれていると考えられる。
 このように黒雲母では、陰イオンのシート、2価の陽イオンのシート、裏返した陰イオ
ンのシート、1価の陽イオンのシートがくり返し積み重なった層状になり、このためよく
知られているようにへき開という性質を持つのである。
 モデルでは同じ35mmスチロール球をピンク色に塗ってカリウムイオン、紫色に塗っ
て水酸化物イオンとした。本来それぞれのイオン半径は異なっているが、一稜が40mm
の正四面体の高さに一致する35mmのスチロール球に統一すると、モデルの組み立てが
容易になるからである。どのみち正四面体の中の、共有結合する酸素原子や酸化物イオン
の大きさも考慮できていないのである。
 生徒に以上のすべてを語ることは難しい。層状鉱物の素朴なイメージが湧けばよいであ
ろう。

c)リンケイ石

 正四面体が4つの頂点を共有するもっとも単純な構造は最初の図の(c)のように、正
四面体をひとつおきにひっくり返して塩ビ板の裏側に貼り付けたシートを積み重ねた構造
であろう。こうなるとすべての酸素原子は2つの共有結合を形成して希ガスの電子配置を
満足し、物質として完成する。各酸素原子はひとつの正四面体に1/2ずつ所属するので、

                  - 3 -

この組成式は
    SiO2
となる。このような鉱物がリンケイ石である。これは立体的に網目状の骨組み構造鉱物であ
る。
 リンケイ石では酸素原子は2つのケイ素原子の中点にあり、その結合角は180°
である。水晶はこれに似た構造であるが、結合角が通常の酸素原子の範囲にあり、ねじれ
た結晶構造になってより安定化している。

2.モデルの製作方法

1)材料と準備

・発泡スチロール球
  35mmのものを70個
  蛍光ペンで次のように塗る。
    11個  ピンク色(カリウムイオン)
    18個  橙色(マグネシウムイオン)
    19個  黄緑色(鉄(U)イオン)
    22個  紫色(水酸化物イオン)
参考:それぞれ1個は説明用に利用する。
・画用紙
  四切りを16枚 
    別紙「正四面体の展開図」を印刷する。
  1枚は台紙として利用する。
  残りの15枚は円を蛍光ペンで空色に塗り、図のように切り取る(1枚から10個で
  きる)。
  折り曲げ、一面をプリットのりで貼り合わせて正四面体を作る。全部で140個必要
    になる。

            

参考 1)蛍光ペンはピンク色、橙色、黄緑色、空色(2本)、紫色の5色を準備する。

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   2)はさみとプリットのりを準備する。
・塩ビ板
  厚さ0.5mmで600×720mmのものを2枚
  次のように万能ばさみで切断する。
    @まず300×720mmに切る。
    A300×230mmを11枚切り取る。
    B300×80mmを2枚
     300×40mmを2枚を切り取る。
  厚さ1mmで300×910mmのものを3枚
  大型カッターナイフで深い溝を付け、溝を机の端に合わせて折って割ることによって、
    次のように切断する。
    @300×109mmを2枚
    A300×47mmを3枚(この1枚を47×111mm2枚にする)
    B300×230mmを4枚
    C300×175mmを3枚
      (この1枚を175×232mmと175×68mmにする)
    D300×133mmを3枚
      (この1枚を133×232mmと133×68mmにする)
参考 1)定規、万能ばさみ、大型カッターナイフを準備する。
   2)他には組み立てのために、黄色ビニールテープと木工用ボンドを準備する。

2)組み立て

a)斜方輝石
@「台紙」の上に0.5mmで300×80mmの塩ビ板を置き、最初の図のように7つの
正四面体を木工用ボンドで貼り付ける(2セット作り、一方は説明用に利用する)。
参考:正四面体の外の枠が均等になるようにする(以下同様)。
Aやはり台紙を利用して300×40mmの塩ビ板に、共有しない2つの頂点の中点の位
置に、木工用ボンドで橙色スチロール2個と黄緑色スチロール球2個を、交互に貼り付け
る(他方は橙色1個と黄緑色2個を貼り付けて2セット作る)。
B厚さ1mmで300×109mmの塩ビ板2枚と300×47mmの塩ビ板2枚で、黄
色ビニールテープで上図のように角柱をつくり、47×111mmの塩ビ板2枚で箱にす
る。このとき一方の300×109mmの塩ビ板が片開きになるようにしておく。
C箱の中に@とAを納めてビニールテープで封印する。


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b)黒雲母
@台紙を利用して0.5mmで300×230mmの塩ビ板に、最初の図のように21個の
正四面体を木工用ボンドで貼り付ける(4セット作り、ひとつは説明用に利用する)。
Aそのうちの3枚のシートは、下図のように六角形の空洞の中心に7つずつ合計21個の
紫色スチロール球を木工用ボンドで貼り付ける。

  

B台紙を利用して、別の0.5mmで300×230mmの塩ビ板に、上図のように橙色ス
チロール球14個と黄緑色スチロール球14個を交互に木工用ボンドで貼り付ける。
Cさらに別の0.5mmで300×230mmの塩ビ板に、次ページの図のようにピンク色
スチロール球10個を貼り付ける。
D厚さ1mmで300×230mmの塩ビ板2枚(輝石と同様、こちらを内側にする)と
300×175mmの塩ビ板2枚で、黄色ビニールテープで角柱をつくり、175×
232mmの塩ビ板で口の開いた箱にする。

            

E箱の口を横にして、始めに陰イオンのシート1つを、酸化物イオンの頂点を上にして差

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し入れる。
F次にその上に、2価の陽イオンのシートを塩ビ板を下にして乗せる。このとき陰イオン
のシートの上を横滑りさせるとこすれてスチロール球がはがれやすい。奥に差し入れて下
に降ろすようにする(以下同様)。
G続いて新しい0.5mmで300×230mmの塩ビ板を差し入れる。
Hもう1枚の陰イオンのシートを、酸化物イオンの頂点を下にして差し入れる。
Iカリウムイオン(ピンク色)のシートを塩ビ板を下にして乗せる。
Jさらに新しい0.5mmで300×230mmの塩ビ板を差し入れる。
K残った陰イオンのシートを、酸化物イオンの頂点を上にして差し入れる。このとき箱の
天板が上に膨らむようにして、スチロール球が天板とこすれてはがれないように注意する。
L最後に厚さ1mmで175×68mmの塩ビ板とビニールテープで封印する。
注意:G〜Kでは、陽イオンと陰イオンの位置関係に留意して差し入れる。

c)リンケイ石
@台紙を利用して0.5mmで300×230mmの塩ビ板に、最初の図のように21個の
正四面体を塩ビ板の上面下面交互に木工用ボンドで貼り付ける(2セット作る。これはモ
デルから簡単に取り出せるので、説明用のシートは作らない)。
参考:上面を貼り付けたら乾燥するのを待って、下面を貼り付ける。
A厚さ1mmで300×230mmの塩ビ板2枚(輝石と同様、こちらを内側にする)と
300×133mmの塩ビ板2枚で、黄色ビニールテープで角柱をつくり、133×
232mmの塩ビ板で口の開いた箱にする。
B1枚のシートを差し入れ、新しい0.5mmで300×230mmの塩ビ板を差し入れ
る。
Cもう1枚のシートを、頂点が共有されるように差し入れる。
D最後に厚さ1mmで133×68mmの塩ビ板とビニールテープで封印する。










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