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99A−286
差出人:山本 喜一
送信日:00年4月11日
件 名:RE:土壌の酸性、アルカリ性について

こんにちは、山本です。
 土壌のpHは、水を入れてはかる場合と、塩化カリウム水溶液を入れてはかる場合があります。塩カリウムを入れると、K+イオンが土に吸着され、代わりにH+が出てきます。したがって、pHが小さくなります。これは、肥料を散布したとき、土のpHがどうなるのかを知る目安になります。
 ツンドラの土壌ですが、おそらく有機物の分解が遅いため、フミン酸などの有機酸が蓄積しているのではないでしょうか。寒冷湿潤な針葉樹林では、有機酸のためにポトゾルと呼ばれる土壌が形成されます。大学でそう習いました。ですから、ツンドラ地帯の土壌の酸性も、有機酸によるものだと思います。
 それから砂漠の砂ですが、場所によっては純SiO2に近いものもあると聞いたことがあります。塩基性だとすれば、酸化鉄などが含まれているためでしょうか。
 大学の時の「土壌学」の本を取っておけば、もう少し正確に書けたはずです。今日の所は、記憶モードで書いています。もうちょっと調べてみます。では。


99A−287
差出人:中臺 文夫
送信日:00年4月12日
件 名:RE:土壌の酸性、アルカリ性について

今晩は、中だいです。
 林先生の質問について、荷が重いので、農研センターに問い合わせましたところ、快くお答えいただきました。農業研究センター次長 仲谷紀男様です。
(後略)


99A−288
差出人:中臺 文夫
送信日:00年4月13日
件 名:ある市でのある協会の取り組み

今晩は、中台です。
 今日は、「ある市でのある協会の取り組み」についてレポートします。
 青少年のための科学の祭典が一過性のお祭りになってしまい、この後をどうしたらよいのかという事に悩んでいます。そうしたとき、青少年のための科学の祭典のあとに、教師ではなく、市民を組織して、市民の体験科学講座を開いて、市民自らが力を付けて、自分たちのミニ祭典をしようとしている所がありました。当然火付け役はいるのですが、小さくとも大きな一歩ではないでしょうか。講師は、町田さん、松本さんそして、山田卓三さん、古田さんなどで、これから、盛口さん山本さん、藤田さんなども続々講師で出られる予定になっています。これからは教師に実験を出前で頼むのではなく、高学歴の市民にもっと参加してもらわなくてはいけないと思います。何か今日は、上手く表現できないので、実際に行った講座のプリントを貼り付けます。ここから内容を想像して下さい。おばさんおじさん達ですが、とっても熱心で気持ちの良い講座になっていました。(図がみんな脱落してしまいました)
(以下編集中)

99A−289
差出人:藤田 勲
送信日:00年4月16日
件 名:メタロチオネイン−重金属耐性のメカニズム

 メタロチオネインという物質をご存じでしょうか。植物がその生育に有害な重金属元素を解毒するために細胞内に生成するペプチドのことです。重金属元素で汚染された土壌でも生育可能な植物は、このメタロチオネイン(以後MTと略します)の活性が高いと言われていますが、その重金属解毒メカニズムが面白いので紹介しておきたいと思います。
 MTは現在3つのグループに分けられて、いずれもシステイン(図1)が非常に多く含まれているのが特徴です。クラス1(図2)とクラス2は共に原則として61個のアミノ酸からなるポリペプチドで、その1/3にあたる20個のアミノ酸がシステインです。このうち、シスインの配列が馬の肝臓に存在するMTと非常によく似ている方をクラス1、似ていない方をクラス2として区別しています。また、クラス3(図3)はクラス1及び2とは違って、DNAからRNAを通して直接翻訳されて合成されるタンパク質ではなく、クラス3を合成する酵素が別にあって、その酵素から2次的に合成される分子量の小さなペプチドです。
  H2N-CH-COOH
    |
    CH2-SH
  図1 システイン
 (以下の図では●印、その他のアミノ酸はo印で表す)

      10      20      30
 oooo●o●ooooo●o●ooo●o●oo●o●oo●o→
              31     40      50      60
             →oo●●o●●ooo●oo●ooo●o●oooooo●o●●o
  図2 クラス1のMTに占めるシステインの位置

    COOH
     |
  H-(NH-CH-CH2CH2-CONH-CH-CO)n-NH-CH2-COOH   (◎-●)n-o
      Glu    |Cys    Gly     (Glu-Cys)n-Gly
            CH2-SH
  図3 クラス3のMT
 (グルタミン酸(Glu)のγ位のカルボキシル基がシステイン(Cys)とペプ
  チド結合したものがn個(2〜11)つながり、最後にグリシン(Gly)
  が結合した化合物、右はその模式図)
 重金属元素を吸収すると、哺乳動物などはクラス1のMTを、出芽酵母やカニなどはクラス2を、植物や分裂酵母などはクラス3を作ることが知られていて、実は植物だけでなく、生物は動植物、微生物を問わず全てがメタロチオネインを重金属元素の解毒機構の1つとして利用していることが分かっています。
 ところで、肝心の解毒機構ですが、メタロチオネインはシステインというアミノ酸の側鎖にあるチオール基(SH基)が細胞内に侵入した重金属イオンを捕まえることで重金属イオンを不活性化していると考えられています。硫化水素が水中の重金属イオンを捕まえて水に溶けない沈殿として固定するように、メタロチオネイン内にある多数のSH基が多座配位子として水中の重金属イオンをキレート化することで、細胞内に遊離している重金属イオンを固定、除去していると考えることができます。
  Cd2+ + H2S = CdS + 2H+
  Cd2+ + HS-MT-SH = CdS2-MT + 2H+
 MT内のSH基はジスフィルド(S-S)結合をすることなく 原則として全て金属イオンに結合していると言われていますから、ひも状のMT分子はヘビのように金属イオンに巻き付いて環状構造を持つ安定なキレートを形成してしているものと思われます。Zn2+やCd2+は正四面体型の4配位の化合物が安定ですから、SH基を20個持つクラス1と2のMTでは最高で10個の金属イオンをウルツ鉱型(ZnO型)や閃亜鉛鉱型(CuCl型)にキレート化して捕捉することが可能だと思われます。
 この錯体は極めて安定で、熱的にも変性にくいという特徴を持っています。しかも、硫化水素により沈殿する金属イオンの硫化物の安定性に違いがあるように、MTにより捕捉される金属イオンにも、その錯体の安定性には硫化物の安定性と同じ規則性があります。すなわち、アルカリ側で生じた硫化亜鉛の沈殿にカドミウムイオンを加えると、全ての亜鉛イオンとカドミウムイオンが置換してより安定な硫化カドミウムの沈殿を生じるように、中性で亜鉛イオンが結合したMTにカドミウムイオンを加えると、亜鉛イオンは全て等モルのカドミウムイオンと容易に置換します。
  Cd2+ + ZnS = CdS + Zn2+
  Cd2+ + ZnS2-MT = CdS2-MT + Zn2+
 同じ硫化物でも溶解度など安定性に違いがあるのは、金属イオンと硫化物イオンとの結合力に違いがあるからです。硫化物イオンは酸化物イオンに較べればイオン半径が大きい分だけ分極しやすく、結合の仕方が共有結合的な性格を持つため、軟らかいルイス塩基と呼ばれています。また、酸性側でも安定な硫化物を作る金属イオンの多くは軟らかいルイス酸と呼ばれるもので、d軌道内に詰まった電子が配位子の方の空軌道にπ結合を通して移行する(逆供与)ことが可能なために、やはり分極しやすいという特徴があり共有結合的な結合を好みます。その程度はd電子の数が多くなるほど顕著になる傾向があります。Cd2+イオンなどの軟らかい酸はS2-イオンのような軟らかい塩基と共有結合的に結合するため、水に溶けにくい安定な化合物になると考えられます。一方、Cd2+に較べればZn2+はさほど軟らかい酸ではないため、硫化亜鉛は硫化カドミウムほどは難溶性ではなく加水分解しやすい性質を持つ、と説明することができます。
  酸性側でも硫化水素で硫化物の沈殿をするイオン
   Hg2+、Cu2+、Cd2+、Pb2+(溶解度積が非常に小さく安定な硫化物)
  アルカリ性側でのみ硫化物の沈殿をするイオン
   Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+(酸性側では不安定で沈殿しない)
 次に、第4周期の遷移金属元素の2価イオンの硫化物の溶解度積Ksp及びエチレンジアミン(H2NCH2CH2NH2=en)のような軟らかい塩基が作る錯体の安定度定数Kを示しておきます。各金属イオンは主としてイオン半径の減少に伴って酸性度が増すため、enとの錯体の安定度も増します(アービング-ウイリアムスの系列)が、同時に示したシュウ酸イオン(C2O4~2-=ox)との錯体の安定度定数からは、oxはenに較べると硬い塩基に相当しましから、シュウ酸錯体はエチレンジアミン錯体ほど安定ではないことが分かります。
  [M(H2O)n]2+ + en = [M(en)(H2O)n-2]2+ + 2H2O
  錯体の安定度(生成)定数(第1段)
      K1en= [M(en)(H2O)n-2]2+/([M(H2O)n]2+ * en)
  第4周期2価イオン Mn2+  Fe2+  Co2+  Ni2+  Cu2+  Zn2+
  M2+のイオン半径pm  97 92 89 83 87 88
  M2+のd電子数    5   6   7    8   9   10
  logKsp      -9.5 -17.3 -20.4 -18.5 -35.2 -21.5
  logK1en      2.77  4.34  5.96   7.47  10.71  5.87
  logK1ox      3.9 4.2 4.5 5.0 6.2 4.8
 酸・塩基の硬さ・軟らかさという考えは自然界における金属元素の分布を考える上でも役に立ちます。金属元素は酸化物またはケイ酸塩として存在する場合と、硫化物として存在する場合がありますが、どちらの鉱物として主に存在するかは、金属イオンの酸としての硬さが目安になります。前者の鉱物として存在する場合は酸化物イオンもケイ酸イオンも硬い塩基に相当しますから、金属イオンは硬い酸の方が好んでイオン結合的に結合し、後者では硫化物イオンが軟らかい塩基に相当しますから、結合する金属イオンは軟らかい酸の方が安定に共有結合的に結合することになります。
主な硬い酸
 典型金属イオン(Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Al3+、Si4+など)
 価数の大きな遷移金属イオン(Cr6+、Mn7+、Fe3+、Co3+、など)
 価数の大きな後遷移金属イオン(Sn4+、Pb4+など)
 d電子が少ない遷移金属イオン(Cr3+、Mn2+など)
主な軟らかい酸
 価数が小さくd電子の多い第4周期の金属イオン(Co+、Cu+、Mn+など)
 第5,6周期の遷移金属イオン(Pd2+、Ag+、Cd2+、Pt2+、Au+、Hg2+など)
中間の酸
 第4周期の2価の遷移金属イオン(Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+)
 価数の小さな後遷移金属イオン(Sn2+、Pb2+など)
 一般にCd2+、Hg2+、Pb2+、Ag+などの金属イオンが細胞内で毒性を示すのは、これらの金属イオンの多くが軟らかい酸であるために、酵素内に本来あるZn2+やCu2+などの有用な、中程度の軟らかさを持つ金属イオンとイオン交換したり、酵素内のSH基と不可逆的に結合することで立体構造を変化させたりして、酵素を変性させるためと考えられています。メタロチオネインはこのような悪さをする金属イオンを酵素にとりつく前の水際で捕捉してしまうペプチド分子と考えることができると思います。事実、毒性が強く、より軟らかい金属イオンが侵入した場合ほど、そのイオン吸収の最前線、すなわち根でメタロチオネインが強く誘導されるために、根に特に金属イオンが蓄積されることが分かっています。このようにしてメタロチオネインに結合した金属イオンは、結合している限り毒性は示さないと考えられていて、現在ではメタロチオネインは有害な金属の毒性から生体を防御するためのポリペプチド分子という考えが受け入れられているわけです。
 重金属耐性を持つ植物のヘビノネゴザというシダ類は、我が国では銅山など鉱山の植物指標として有名ですが、この植物は他の植物の生育に不適当な重金属を含む土壌でも生育が可能なため、他の植物に優先して繁茂すると考えられます。ちょっと話は違いますが、金鉱石を含む土壌にチオシアン酸アンモニウムを地質改良材として散布すると、アブラナは金を非常によく集積するようになるそうで、植物による金の採鉱法として注目されます。
 一方、生命体としてはより原始的な代謝機能を持つ細菌は、植物以上にストレスとしての重金属に耐性を持ち、その毒性から身を守る様々なシステムを持ち合わせています。細菌はメタロチオネインを使って重金属耐性を獲得しているもの以外に、重金属の吸収の抑制と積極的な排出、酸化及び還元に伴う価数変化による弱毒化、酸化物や硫化物として集積、メチル化など有機化することによる細胞外拡散など、様々な重金属ストレス回避戦略を使っていることが知られています。このような重金属耐性菌の耐性遺伝子を他の植物に遺伝子組換え技術を使って組み込み、重金属蓄積能力の高い植物に作り替えて、重金属汚染土壌から重金属を取り除こうとする試みもすでに行われています。生物による重金属の集積はストレス回避の手段の一つですが、植物に効率よく行わせることができれば土壌汚染の浄化には最適だというわけです。このような生物による環境浄化方法をフィトレメディエーションと呼んでいます。
 余談になりますが、「昆布がなぜヨウ素をため込んでいるのか」ということが以前話題に上ったことがあります。これを盛口先生は、昆布はヨウ素が嫌いだからと説明していました。当時はホントかなと思ったのですが、重金属ストレス回避手段の一つにメチル化というのがあります。これは水銀や砒素はメチル化など有機化されると細胞膜の透過が容易になるため、排出が促進されるというシステムです。確かヨウ素の昆布の中ではメチル化など有機化されていたと思いました。そして、その有機化されたヨウ素が昆布からわずかずつ排出されているため、海はいわゆる磯の香りがするのだと思いました。こう考えると、ヨウ素というストレスの回避手段として昆布はヨウ素を貯めている、という説明もあながち的外れではないのでないかという気がしてくるのです。皆さんはどう思いますか。
 日本土壌肥料学会『金属関連化合物の栄養生理』(博夕社,1990)、日本土壌微生物学会『新・土の微生物(4)』(博夕社,1999)及び小畑仁「植物のカドミウム耐性獲得とフィトレメディエーション」(「化学と生物」2000年2月号)を参考にしました。人におけるMTはグルタチオンと呼ばれていますが、この多彩な働きはまた別な機会に説明したいと思います。
 では、また。


99A−290
差出人:中臺 文夫
送信日:00年4月18日
件 名:RE:土壌の酸性、アルカリ性について

今晩は、中だいです。
 林先生の質問について、再回答いただきました。農業研究センター次長 仲谷紀男様です。
(後略)


99A−291
差出人:山本 喜一
送信日:00年4月18日
件 名:磯の臭い

こんにちは、山本です。
 藤田さんのかたい酸とやわらかい酸の話、大変参考になります。相変わらず、よく調べていますね。ところで、その最後のほうに書いてあった磯の臭いですが、確かNかSの化合物ではなかったかと思って調べてみました。
 ズバリ書いてあったのは、功刀正行”海水の化学”「化学と教育」46巻P.280〜です。この論文によりますと、磯の臭いの成分は硫化ジメチル(CH3)2Sだそうです。ある種の植物プランクトンや海草がDimetylsulfonio-propionate(CH3)2S+CH2CH2COO-というものを作り、これをバクテリアが分解して硫化ジメチルを生成しているようです。
 面白いのは海水中に放出された硫化ジメチルの挙動です。一部が海水から大気中に移行し、そこですみやかに光化学反応を受けて、硫化ジメチルはSO2に変化します。さらに酸化されながら上昇し、成層圏に達するまでには硫酸になるそうです。成層圏での硫酸は、硫酸ミストという形で存在します。そして、それが雨粒を作るときの凝結核になるようです。
 もっとも、硫酸ミストができる原因としては、人間活動によって発生するSO2由来説、火山からのSO2説などもあるようです。でも、定常的に硫酸ミストが存在することを説明できる点で、硫化ジメチル説は有力だそうです。


99A−292
差出人:山本 喜一
送信日:00年4月19日
件 名:磯の臭い(2)

こんにちは、山本です。
 昨日のメールに、成層圏でできる雲の凝結核が硫酸ミストだと書きました。ふと、成層圏では気象現象は起こらないはずだと思って、昨日の論文を読み返しました。そうしたところ、対流圏で凝結核になるものは空気中にちりなどで、成層圏の凝結核が硫酸ミストだと書いてありました。成層圏でも雲はできるんですね。初めて知りました。


99A−293
差出人:佐藤 琢夫
送信日:00年4月20日
件 名:O3分子について

今晩は岩手の佐藤です。
 新学期が始まり10日が過ぎました。久慈高校で3年生と向き合うのは4年連続となります。

O3分子について(文字化けがなければと)
 2次試験に向けての課外授業で、99年の東北大学の問題にオゾン(O3)が取り上げられている。問題は、現在のオゾン層の破壊について、フロンの塩素が触媒の役目をして、反応速度と関係づけたことが出題された。
 この中の問3に『O2とO3について標準状態における水に対する溶解度を比べると、どちらが大きいか。大きい方を答えよ。また、大きい理由を記せ。』という問題がある。問題をどう考えたらよいのか、解法は思い浮かばなかった。
 予備校(河合塾、代ゼミ)、教学社および旺文社で作成した解答を見ると、解答に違いがある。速報として解答を公表した予備校(河合塾、代ゼミ)のものから紹介する。
『O2:O2(無極性分子)の場合のほうが、溶解した気体分子とそれを囲む近傍の水分子から成る系全体の安定性が大きいため』(河合塾)
『O2:O2の方が分子が小さく水分子間に入り込みやすいから』(代ゼミ)
よくわからない解答である。
 これに対し、時間的にゆとりがあった教学社、旺文社の解答は次のとおりである。
『オゾン:オゾン分子は下のような共鳴構造をとり、極性の大きい水に溶けやすいと推定される』(旺文社)注意書きとして、次のことが触れてある。「出題意図は上記の解答を導くものと思われるが、実測値は酸素のほうが大きく、大学側は酸素・オゾンの両方を正解とした。」単に、オゾンとか酸素ではなく考えたの過程を見ているとの旺文社の説明。
O=O+−O− <−> −O−O+=O  (オゾンの共鳴:結合角度は117度)
 教学社は両方の答えを用意している。
『オゾン理由:オゾンの分子構造は折れ線形をしていており、また、結合電子の移動に伴う極性構造があるため無極性の酸素分子より水和しやすいから。または、
酸素理由:酸素は線状分子でオゾンより小さく、水の構造の隙間に入り込みやすいから。』
 以上の旺文社、教学社の解答を見て、さてこの解答に結びつくところが問題文のどこにあるのかということで見ると次の個所が該当個所になると思われる。
『O3分子の形は水分子と同じ折れ線形をしており、結合角度∠O−O−Oは117°、二本のO−Oの結合距離は0.128nmでO2分子の酸素原子間の結合距離0.121nmより長い。』
この文脈から共鳴構造と電子の移動に伴う極性分子を導く必要がある。
 そういう意味だと一つ欠けている。単結合としての酸素間結合、例えば過酸化水素で0.148nmを示すから、オゾンの結合が中間の値であることが見え、ベンゼンの構造の応用として共鳴へと思考が進むと思われる。(以上の条件があったとしても、生徒にとって難問であることは変わらない)
 オゾンの構造式を取り扱うとしたら、オクテットの理論に従って、配結合を含むものを図示することになる。
O=O→O (結合角度は117度)
共有結合と配意結合の区別が実際の分子の中にはなく、これらの結合距離は同じである。このことを論拠として、実際のオゾン分子の姿、非局在化して、さらに極性を持っている。以上のことを言及したことは無い。
O=O → O <−>  O←O =O (共鳴、配位結合)
O=O+−O− <−> −O−O+=O (共鳴、極性分子)
オゾン分子の構造式の表し方として疑問として残っていることは、上記の配位結合と、結合電子の局在化による極性分子のどちらが適切なのか。
 いつか、オクテット理論に従った静的なモデルから、より実際の非局在化している分子の姿を授業で展開できればと思っている。現在化学入門期ですべての化学結合を教科書では教えることになっている。ここですべて教えることに無理を感じている。新学習指導要領では化学結合が化学Uに移ることになる。化学Uということで、これまでと違ったものになるのではという期待を持ちたい。しかし、有機化学が化学Tにあることから、ベンゼンの構造の共鳴構造を提示しながら、化学結合を教えるということは教科単元の配列から難しいように思われる。学習指導要領が新しくなるこの機会に新たな視点で化学結合を指導したいものだと考える。


99A−294
差出人:林 正幸
送信日:00年4月20日
件 名:土壌の酸性、アルカリ性についての返事

こんばんは、林です。
 新芽が美しい季節になってきました。生徒たちとの新たなつながりもできてきます。
 さて2週間ほど前に問い合わせた高校生の質問にどうやら返事を書くことができました。中台さん、山本さん、ありがとう。そして中台さん、農業研究センターの仲谷さんによろしくお伝えください。自分でも本を2冊走り読みしました。思うに、質問を受けることは勉強のチャンスをつくります。返事は以下のような内容にしました。
 ではまた。
<引用>
99−08
何がツンドラ土壌を酸性に、砂漠土壌をアルカリ性にするのか
質 問
 地理で、ツンドラの土壌は酸性で,砂漠の土壌はアルカリ性だとの記述がありました。
 これはPHなどを測定して決めるのでしょうか。またツンドラにはどんな化学物質があるので酸性になるのでしょうか。砂漠にはどんな物質があってアルカリ性になるのでしょうか。
説 明
 まず土壌のpHの測定ですが、簡単には試験紙で、正確には土壌を水で浸出してpHメーターで計測します。塩化カリウム水溶液に土壌を浸けてからその水溶液のpHを計測することもあります。すこし難しくなりますが、それは土壌がイオン交換(化学Uに出てきます)と呼ばれる性質を持つためです。つまり水素イオンがカリウムイオンなど他の陽イオンを入れてやると水に出て来やすくなるためです。
 さて土壌とは何でしょうか。岩石が風化して、それに生物の作用が加わって形成されます。まず岩石ですが、それに含まれる元素は多い順に
    O Si Al Fe Ca Na K Mg
です(「クラーク数」を調べて見てください)。もう少し踏み込むと、ケイ素やアルミニウムの酸化物(酸性酸化物 アルミニウムは両性酸化物ですが)と、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムの酸化物(塩基性酸化物)がいろいろな割合で中和した一種の塩です。これに対して生物の方はとくに植物が腐敗した「腐植」と呼ばれるものが加わります。腐植の内容は、気候条件によっても異なり、よく分かっていないのが現実です。
 ツンドラ地帯では低温の故にフルボ酸などと呼ばれる有機酸(カルボン酸など)が生成しやすいのです。これが岩石の塩基性成分と反応して溶脱します(水に溶けて流れ去る)。その結果表土が酸性化するわけです。このような作用をポドゾル化と言います。
 砂漠では雨が少なく、地下水が表面に染み上がって来てどんどん蒸発します。機械的に風化した岩石はこれによって加水分解され、塩基のうち水に溶けやすいものが表面に蓄積されていきます。また地下水にも二酸化炭素(酸性酸化物)が溶けており、これが岩石の塩基性成分と反応して溶脱して表面に上がって来ます。炭酸塩や炭酸水素塩は塩基性(アルカリ性)ですし、二酸化炭素の一部は分解してに戻って大気中に逃げ出します。このような作用は地表に塩の結晶ができるほどで、砂漠での農業が困難になる大きな理由です。
 ちなみに、岩石に水や二酸化炭素が溶けた水が反応して、塩基性成分などが溶脱する現象は化学的風化と呼ばれ、岩石の風化はこれと上記の機械的風化が重なって起こっているのです。
 最後に、この返事を書くに当たって、私の仲間の中台さんや山本さん、さらに農業研究センターの仲谷さんの協力を得ました。
<以上>


99A−295
差出人:中臺 文夫
送信日:00年420日
件 名:RE: 土壌の酸性、アルカリ性について

今晩は、中だいです。
 またまた、返事が来ました。紹介いたします。ちょっとで過ぎでしょうか?まあとにかく読んで下さい。
(後略)


99A−296
差出人:山本 喜一
送信日:00年4月20日
件 名:RE:中臺さんの「愚考」について

こんにちは、山本です。
 4月8日付の中臺さんのメール、とても「愚考」とは思えません。いつしかコメントを書こうと思っていたのですが、延び延びになっていました。まだ自分の中でまとまっていませんが、思いつくままに感想を書いてみます。『 』内は中臺さんのメールからの引用です。
『近くに原発を作って、恐ろしければ無駄に沢山の電気を使おうなんて思わない
でしょうし、ものすごく気を付けると思います。』
 確かに、原発のように大きな発電所は、利益を受ける人と不利益をこうむる人が乖離してしまいますね。それに、このような施設では、一度事故を起こすと、たいへん深刻な影響を与えてしまいます。発電所は小さいものをたくさん、それも使う人の近くに作った方がよいと、私も思います。そういう意味では、燃料電池はすぐれていますね。うまく行けば、1軒に1台ずつ発電所を作れます。それがたとえ故障しても、被害は小さいでしょうし。ただ、燃料電池のネックは高価な白金を触媒に使うことですね。3,4日前の日経に東京電力の社長(?)の話が出ていました。燃料電池の研究に何百億円もの研究費を投入したが、触媒の開発が壁になって、コストが下がらないとのことでした。東電が原発を守るために、こんなことを言っているのかも知れませんが。
『柏に豊四季団地に代表されるな大団地が出来て、汚物を沢山未処理で流して、
沼を汚くしてきたんです。今になって、下水道が完備し、自分たちは処理をして
いるからって、まだ処理をしたくても出来ない地区に住んでいるもの(これが
私)に対して、汚染の元凶のような言い方をしている人たちに対して猛烈に腹が
立ちます。』
 昔からこの地域に住んでいて、きれいな手賀沼と生活してきた人たちの考えを代表している意見だと思います。旧住民が住んでいる農村地域と、新住民がいる団地の対立は、行政の怠慢がもたらしたものですね。ベッドタウン化するときに、下水道を作るという発想がなかったんですね、行政に。汚い手賀沼を見るたびに、日本の街づくりの発想の貧困さを思います。
『どう江戸時代を持ってきましょうか。むずかしいと思います。大粛正をして管
理国家を作るしかない。』
 江戸時代が完全リサイクル社会だったとはいえ、もどることはできませんね。でも、大粛正しなければ、循環型社会はできないのでしょうか。甘いかも知れませんが、ドイツのように、プラスチック容器には紙の容器よりも高い税をかけるというような税制にすることによって企業を誘導し、リサイクル社会を作れるのではないでしょうか。法律であれもだめ、これもだめといって人間の活動を禁止して循環型社会にすることはできないでしょう。そうではなく、生産活動を循環型社会に合うように誘導する方策はあると思います。
『食糧と、環境を汚さない自然にもどる高分子やプラスチック、廃棄物をださな
い化学の模索。少なくとも、子供の時代に日本が飢えて苦しまない
世界である必要があると思うのです。』
 循環型社会を作るために、こういう技術開発をする必要がありますね。そして、そういう研究に科学(化学)の夢があると思います。ただ、一度使ったものはエントロピーが大きくなっています(汚れてます)から、再利用するにはエントロピーを小さく(きれいに)しなければなりません。そのためには、どうしてもエネルギーが必要です。あるいは、きれいな水や空気が必要です。ですから、循環型社会の基本は「物質的なぜいたくはしない」という考え方だと思います。いくらリサイクルできるから、あるいは土にもどるからといって、ものを大量に消費していたのでは、環境は良くならないと思います。いかがでしょうか。


99A−297
差出人:林 正幸
送信日:00年4月26日
件 名:ますます高まる社会的監視の重要性

こんばんは、林です。
 日曜の夜9時から、NHKの「世紀を越えて」で、「人体改造時代の衝撃」という番組をやっていました(続きがあるようです)。始めの10分ほどは見られませんでしたが、その内容は「科学のあり方」を深刻に問い掛けるものでした。
 骨髄移植が必要な子どもをもつ親が、なかなか適合するドナーが見つからない中で、もう一人子どもを産むことを決心します。姉妹では1/4の確率で適合するそうで、幸運にも妹が1才になるのを待って移植が行われました。幸い姉妹とも健康に成長しているようです。
 受精後間もない卵は、その細胞(ES細胞)がまだ分化していないので、臓器などあらゆる人体の「部品」になる可能性を持っています。人工受精で余ったES細胞のほかに、豚の卵に人間の細胞の核を入れ替えて電気ショックで分裂させたES細胞も研究に使われているそうです。この細胞を人間の子宮に入れれば、クローン人間ができてしまいそうです。
 2回の腎臓移植に失敗したある若者が、自分の延命のためにクローンをつくり、一方の腎臓を移植してもらうことを強く望んでいます。これなら拒絶反応の心配がないからです。日本を含め多くの国ではクローン人間を造ることを禁止していますが、アメリカでは何の規制もないそうです。
 バイオテクノロジーは今や核兵器を越える威力をもつ存在になっています。「移植のためにもう一人子どもを産む。」「移植のために自分のクローンを造る。」 果たしてこれは人間に何をもたらすのでしょうか。上の事例は止むを得ない面がありますが、他方で慄然として気持にもなります。そしてこれが利潤追求の手段になったり悪用されたらどうなるのでしょうか・・・。
 「どこかで線を引かなくては」と思う一方で、科学はそれをどんどん越えて行ってしまうのが現実だとも考えます。たとえば、現代では人工中絶は普通に行われています。実のところ人類の未来の危うさを感じつつも、私たちが科学を民主的に監視していく重要性、そして科学者の社会的責任がますます高まっていると思いました。
 ではまた。


99A−298
差出人:林 正幸
送信日:00年4月27日
件 名:新規投入実験の「考察・感想」

こんばんは、林です。
 今日は新しく取り入れた「ワインの蒸留とスペクトルの観察」という実験の、生徒が書いた考察or感想を紹介します。蒸留は赤ワインをリービッヒ冷却器なしで蒸留し、蒸発皿でスチールウールの上に塩化リチウムを載せ、留出液を注いで火を点けます。スペクトルは生徒全員に分光器を作らせておいて、それで水銀と水素の原子スペクトルを観察させます。

「今日は、ワインのにおいがプンプンしてよっぱらったっっ!
塩化リチウムはもやすと、情熱の赤色炎が出てきてかっこよかったヨ!」
「アルコールのにおいをかぐと、お酒のにおいがして気持わるくなった。フラスコに入っているワインは消毒のようなにおいだった。気持わるくなったけど、火をつけたらとてもきれいな赤色だったのでずっと見とれていた。」
「ワインの沸とうのしぐあいがむずかしかった。蒸留液はとうめいだったのに、熱すると赤い炎になるのがとても不思議だった。
スペクトルの実験では紫、緑、オレンジははっきり見えた。紫、青、オレンジ、赤が、グラデーションのようにみえてとれもきれいだった。」
「アルコールをなめてみたら舌がぴりぴりした(あとからきた・・・)。
蒸留のやつはたまに逆流するので注意。
スペクトルの方はとてもきれいに見えた。もっと他の色や、もっと多くの色を見たい。」
「アルコールがぬけるなんて知らなかった。しかもアルコールが抜けてもワインの量は変わらないことがわかった。
(後略)」
「なぜエタノールを燃やすとき塩化リチウムを入れるかがわからない。でもきれいな赤色の炎が出てよかった。
赤ワインを沸とうさせたらいかにも実験というかんじがした。」
「(前略)
スペクトルで分光器を使うとなんできれいに見えるのか。
ワインはなぜいきなり沸とうするのか。」
「ふつうの炎より赤い炎が見えた。
いろいろな色が見えて、なぜ光によって色が変わるのかふしぎだった。」
「加熱しているときなかなか温度が上がらす、水を持っている腕が疲れてきたが、何とか耐えて、85℃まで上げ、蒸留に成功した。試験管のにおいがけっこうしたので、本当に蒸留するもんだと実感した。」
「ビックリ、失敗しちゃった!!
火がワイン色になってたのもビックリ、ワインがくさい、くさーっ!!
この実験は、ビックリばかりだ→!!」
「ガスバーナーを離したり近づけたりするのが少し大変だったけど、試験管にワインが入らなかったからよかった。ワインの蒸出液からはアルコールのにおいがして、燃やしたらきれいな赤い炎がでてきた。
人がいっぱいいて、あまりスペクトルが見えなかった。友達にきいてもう一度見たら、たしかに見えたような気がしたけど、こう見えた!とは断言できない・・・。」
「ワインの蒸留で、2回(?)ぐらい失敗して、最後の方はもうやる気がなかった。でも3回目で成功して、赤い炎が出たときは、感動した(火花がでて、ビックリした)。
(後略)」
「こんな風にワインからアルコールが取れるとは知らなかった。
(後略)」
「最初はワインを沸とうさせてワインがふき出してしまった。2回目は火をちょうせつしたのでうまくいった。温度差を利用するなんてよく考えたと思った。
スペクトルはきれいに光ったので、なぜ赤などの色が見えなかったかと思った。」

ではまた。


99A−299
差出人:林 正幸
送信日:00年4月28日
件 名:改良「ヨウ素電池」

こんばんは、林です。
 今日はすこしゆとりがあったので、いくつか実験してみました。数年前に次のような「ヨウ素電池」を紹介したことがありました(ホームページの「私が好きな実験」にもあります)。
  ヨウ化物イオン電池
    (−)C|KIaq:concHNO3|C(+)
  ヨウ素電池
    (−)Zn|NaClaq|I2・C(+)
どちらもろ紙電池です。
 ヨウ化物イオン電池は、それぞれの溶液をろ紙2枚ずつに染み込ませて重ねます。豆電球が点くほどのパワーがありますが、2液間でも急激に反応してヨウ素が生成し、無駄が多い電池です。間にセロハン紙を挟んでも、パワーが落ちるだけであまり効果はありません。  今回はすこしスマートにしょうと、2液の間に食塩水を染み込ませたろ紙2枚を追加し、2枚のセロハン紙を挟んでみました。また硝酸も濃い場合はろ紙がひどくおかされるので、水と1:1に薄めたものを使いました。状況は改善されて長持ちするようになりますが、ソーラーモーターをまわす力しかありません。これは改良とは言えないかもしれません。
 ヨウ素電池は豆電球を点けるパワーはなかったのですが、今回2、3秒は明るく点くことを発見しました。そこで思いついたのが、食塩水を塩化アンモニウム水溶液(20%くらい)に変えることです。ひょっとして亜鉛が電子を与える反応でブレーキがかかっているかもしれない、それなら古い乾電池で使われた塩化アンモニウムならどうであろうか、と思いついたのです。結果は大成功。20分以上、豆電球がそれも明々と点き続けたのです。塩化亜鉛はなかったので、薬品を入手できたら試してみようと考えています。
 それから固体のヨウ素は扱いがスマートでないと、ヨウ素・ヨウ化カリウム水溶液に変えてみました。結果はパワーダウンでした。残念! 
 ちなみに使用後のヨウ素の処理ですが、ヨウ化カリウム水溶液に溶かし、水酸化ナトリウムで無色にしてから大量の水と共に流します。
 放課後は写真部の生徒が外に撮影に行こうと言うので、学校のまわりを1時間あまり散策しました。前にも紹介したように近くに木曽三川の「光明寺公園」があり、田舎の風景も残っていて、被写体が多い環境です。もっとも生徒たちは遠足気分で、おしゃべりの方が多かったようです。
 ではまた。


99A−300
差出人:山本 喜一
送信日:00年5月1日
件 名:ゴミ問題の感想

こんばんは、山本です。
 今年も化学TBのはじめにゴミ問題をやりました。質量保存の法則から「ゴミも消えてしまうわけではない」とつなげて、この話題に入りました。まず、日本人が平均1日にどれくらいの埋め立て処分するゴミを出しているのかを計算させました。これは、私のHPに出ているものです。
 そして、産廃の最終処分場があと1年7ヶ月しか持たないという新聞記事(’99,11 毎日新聞)を見せました。続いて、そのちょうど1年前の毎日新聞を配りました。そこには、産廃処分場があと3年しか持たないと書いてあります。
 生徒に、「今から1年半前の新聞にはあと3年しか持たないと書いてあって、半年前の新聞にはあと1年7ヶ月しか持たないと書いてあるね。」と説明。「この調子だと今年の秋には『処分場がもうない』という記事が出るかも知れない」と話しました。そして、産廃処分場建設に反対している人の考えを読ませました。そこには、ゴミそのものを少なくするしくみを作る必要があることが書いてあります。
 次に、およそ2年前のNHKの番組「クローズアップ現代」を見せました。ドイツと日本のゴミ政策を比較した番組です。ドイツでは、容器包装に税をかけることによって、企業ができるだけ簡易なパッケージを作るように誘導しています。また、ジュースの自動販売機から出てくるコップは、飲み終わったらまたその機械に返され、洗浄され、繰り返し使われていることも紹介されています。
 こういう授業のあと「ゴミを少なくするにはどうすればよいか」という課題を出しました。去年は「感想を書きなさい」という課題だったのですが、今年はより具体的なゴミ削減策を考えさせました。生徒はこういう課題に対し、『みんなで気を付けましょう』とか『私もできる所から少しずつ努力します』という結論を書くことがしばしばあります。そこで今回はそういう呼びかけとか、一人一人の心構えだけを書いてきた場合は、レポートに付ける点数を少なくすると宣言しました。そして、呼びかけや道徳では、環境問題は解決しないことを強調しました。
 そんな風にして書かせたレポートから、まず、平均的なものを紹介します。
・ビデオでドイツと日本を比べて分かったのは、ドイツはリサイクルの制度が整っていて、企業がリサイクルしやすいような商品を作ったり、国民一人ひとりがリサイクルやゴミの減量に関心を持っていることだ。日本は外国に比べてそういう対策が整っていないから、ゴミがどんどん増えていくんだろうと思う。だから日本も国が企業に使い捨て型の企業に高い税をかけたり、産業廃棄物が出ない生産をした方が得になるように制度を作るべきだと思う。
 次のレポートは、ゴミ削減策をたくさん書いてきたものです。
・国が徹底的にゴミを減らすことを目標にする。政府が国民、業者がゴミを減らしできる限りリサイクルするようにいろいろな制度を設ける。
・食物などはパック売りには多くの税をかけ、量り売りなどは安く税をかける。
・ペットボトルやガラス容器など全体で同じ型、大きさにし、何回も使えるようにし、その業者に回収の責任を持たせる。
・会社にリサイクルしにくいものを作るほど税を高くし、リサイクルしやすいものを作る法が利益を得れるようにする。
・ペットボトル、ガラス容器などは売値を少し高めにしておき、消費者が買ったところに返せば、高めにしておいた分が返ってくるようにする。スーパーなどにも同様に回収させ、業者に返せばお金が返ってくるようにする。
・なるべく包装は簡素に、スーパーの袋に値段を付け買い物袋になるものを持ってこさせる。
・消費者が分別などをしやすいようにマーク表示などをしてなるべく単純な方法にする。
以上のことなどを国全体で一斉にやればいいと思う。地域によってリサイクルの進んでるところや、スーパーによって袋に値を付けているところがあるけど、全体で決めてやった方が消費者側も楽だし、ゴミも減ると思う。
 最後に、授業の当日公欠していて、私の説明を聞いていなかった生徒のレポートです。
「ゴミも捨てる前は価値ある資源。まずリサイクルを考え、できるだけ出さない。出すときは分別して・・・」のゴミ問題解決の合い言葉を知っています。僕の住んでいるところでは年間約3500tものゴミが処理されています。「ゴミ戦争」という言葉も生まれている今日、僕のところでは毎年6%ずつゴミが増えているのです。ゴミを減らす一歩としてリサイクルがあります。牛乳パックの回収、不要品のガレージセールなどたくさんあります。皆が住みよい環境にするために、小さい一歩でも初めていけたらと思います。
 これはやはり、一人一人の小さな努力が、やがて問題を解決するという論調になっています。こういう結論は、あまり考えなくても書けて、レポートを作る上で楽なのでしょう。しかもあたりさわりがなく、聞こえの良いものと、生徒は思っているようです。これからも環境問題を考えさせようと思っていますが、こういう結論を書かせないようにしたいと思っています。そうしないと、生徒は本当の意味で考え出さないような気がするのです。これからも、「呼びかけや、心構えだけを書いてきたら点数を下げるぞ」と言い続けるつもりです。いかがでしょうか。


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