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99A−255
差出人:林 正幸
送信日:00年3月14日
件 名:早春のできごと
こんばんは、林です。
3月6日の朝に東京在住の私の妹が危篤との連絡が入り、続いて呼吸が停止したと言うことで、母と家内で病院に直行しました。1月程前に脳こうそくで倒れ、2月27日に見舞ったときは、言葉が不自由なもののかなり回復しており、リハビリで普通の生活に戻れるように見えました。ところが入院中に2度目のこうそくが起こり、意識不明の重体となりました。人工呼吸器と昇圧剤で回復を願いましたが、寝ずの付き添いもむなしく脳死が確認され、家族と私たち身内に厳しい選択が迫られました・・・。
そして11日の朝に心臓が停止しました。遺影を妹が好きだった深紅のばらで飾って冥福を祈りましたが、火葬されてガラガラとした白骨に変わった姿を見るうちに、情けなさが込み上げて来ました。葬儀を終えて昨日(13日)新幹線で一宮に帰りましたが、娘に先立たれた母や残された家族に対する思いが、窓から見える夜景のように、次々に通り過ぎて行きました。
久しぶりに学校に行くと生徒たちが「先生、どうしてたの?」と声を掛けてくれました。高校入試の休みを利用してディズニーランドへ行ってきたメンバーが「先生、おみやげ買って来たよ。私たちも見たいから早く開けてよ。」 それはマジックの道具でした。「先生、やって見せてよ!」 「先生がきっと気に入ると思ったよ!」 私の「おもちゃコレクション」でいつも遊んでいる生徒たちです。
メールボックスを開けるとたくさんのメールです。まず藤田さん、ご指摘のようにべっこうあめではカラメル化反応を考慮すべきですね。生徒に話すときに参考にします。ただ私が一番確認したかったのは、べっこうあめがショ糖のままかどうかですので、どの程度か、そしてどんな反応かは分かりませんが、ショ糖が変化していること、そしてそれが最後の段階で起きることは実験できたと考えています。
次に山本さん、酸化還元反応に係わってですが、私は「電子のやり取り」という表現を使い、その意味で山本さんが言う「電子の移動」とは異なっています。つまり電子の「やり」反応と「取り」反応で構成される反応を、つまり酸化還元電位あるいは標準電極電位で示される「半反応式」(私はこの表現は使いませんが)で書けるような反応を対象にしています。そして山本さんが3月8日づけメールで書いていることを間違いとは思いません。しかし前にも言いましたが、「電子の移動」を酸化数に結びつける教育的意義がよく分からないのです。ちなみに、野中さんの「思い」に対する山本さんの返事も楽しみです。もちろん、私も蚊帳の外に居てはいけないのですが・・・。
夜もふけてきました。今日はこのあたりで。
99A−256
差出人:林 正幸
送信日:00年3月16日
件 名:最後の実験の感想
こんばんは、林です。
やはり疲れていて、脱力感があります。会議などではすっかり眠ってしまいます。今度の連休で元気を取り戻さなくては・・・。
さて今年度最後になった実験(試験後)に対する生徒の「考察or感想」を1クラス分まとめてみました。
[a]シランの発生
ケイ化マグネシウムを合成し、塩酸に投入する。
[b]二酸化窒素と水
メスシリンダーに発生させて、水に倒立する。
「c]赤リンの爆発
マッチのすり面と塩素酸カリウムをたたく。
「aで、ちゃんと量をはかったのに爆発しました。とても驚きました。こわかった!!
塩素酸カリウムとマッチのすり面ですごい大きな音が出て驚きました。こわかった!!
大きな音が出る実験はぞくぞくしておもしろいけど、こわい。」
「aはバチバチなっておもしろかった。くさかったけど・・・。ビーカーの中があわになっていた。
cはバンってなってビビった。でも私は失敗した。」
「びっくりする実験ばかりでこわかったです。とくにcのは本当、こわかったよ〜〜。」
「さいごの実験だった。さみしいです。うまくいった。今回は音がたのしい実験だと思った。」
「シランの臭いがとてもきつく、長い間反応がおこったのに驚いた。リンの爆発ではとても大きな音がするのが分かった。」
「bは、臭かったけどとてもきれいな水になりました。いろいろ実験したけど、cぐらいしかよく分かりませんでした。」
「シランという物質がいつ発生しているか分かりづらい。」
「aは、液体の上で炎が発生するのは不思議。
bの空気を入れたあとの変化が、何がへんかするのかよく分からなかった。
cは体によくない。」
「aもbも両方の実験は、くさい。
cは、あっちこっちの班からすごい音がして、ドキドキしてこわかった。ビクビクしてしまうおそろしい実験は、イヤだった。」
「今日はハプニングの続出でした。試験管が割れたときはびっくりしました。一年生の最後の実験だったけどおもしろかったです。」
「(前略)
1年生最後の実験もやっぱり楽しかったデス。試験管がもったいなァと思いました。」
「bは、成功だったのか失敗だったのか・・・。」
「前の時間に化学室からドン!!という音をきいていたので、実験をやるのがすごくこわかった。」
「今回はどれも実験結果が明快で楽しかった。cに特にびっくりしたけど、aでは水面なのに火が出てきたのが不思議だったし、一緒に入れたガラスは反応しない(?)のだなあと思った。bではあっというまに銅片がとけて、ろ紙をはずしたら、黄色の気体がぶわっと出てきておどろいた。また色が濃くなるのも不思議だった。空気を入れたのに薄まらなかったの?」
「うるせー。」
「きょうの実験を先生はたのしいと言っていたが、こわいのまちがいだったと思う。」
「cは飛び出たり、爆発したりで、びっくりした。」
学年末試験後ですが、多くの生徒がレポートを提出しました。
ではまた。
99A−257
差出人:鬼塚 公志
送信日:00年3月18日
件 名:年度末最後の実験について
こんにちは、鬼塚です。
年度末、みなさんもお忙しいと思います。うちは今日合格発表があり、学年会、追認判定など会議ばかりでした。うちは後期試験があるので多分これからまたその準備等で忙しくなると思います。
最後の実験ということで学年末試験の後に3つほど1・2年生で「黄金シャワー」「活性炭による吸着」「入浴剤作り」をしました。その感想等を書き込みます。
1.黄金シャワー
酢酸鉛6gとヨウ化カリウム5gを混ぜて、沈殿をろ過し、再結晶するものです。再結晶のときにできるヨウ化鉛がきらきらと金色の雪が降るように見えるので生徒には講評のようです。当然、鉛の化合物ですからできる限り沈殿物は回収し、環境についての話もしています。いつも感想を書かせていますが、相変わらず女子の感想は結構書いていますが、男子は1行、1分が多かったようです。
・ろ過するときれいなキラ^2ができた。ろ過に時間がかかった。次の実験はスムーズにいくようにがんばろうと思う。(1年女子)
・二度目のろ過で黄色☆キラキラ☆と光ってきれいだった。不思議なこともおこるんだなぁーと思った。においは臭かった・・・・!おもしろかった。(1年女子)
・何で黄色くなるかととても不思議。でも、とってもきれいでうれしい。ドーム型のヤツにふると雨がふっているように見えるおもちゃにとってもにていると思った。すごいと思った。(1年女子)
・2つの液をまぜたら黄色になってビックリした。ろ過をしたらキラキラがたくさんできた。とてもきれかったです。今回の実験はかなりたのしかったです。(1年女子)
・黄金になった時すごくきれいだった。(1年男子)
・きれいな小さい結晶ができた。(1年男子)
・きれいな再結晶ができてよかった。(1年男子)
・最後の結晶がきれいですごかった。(1年女子)
・どうしてあんなに黄色だったのが、ろ過して黄金(キラキラ)のようになったのか不思議だった。あと面白かった。(1年女子)
・ろ過した後の中をみてるとガラスのような結晶がきれいにみえた。(1年男子)・ビーカーがあつかった。きつかったけど楽しかった。きれいだった(ろ過した後)(1年男子)
・黄色の液体がろ過すると色のついていないだだの水のようになってビックリした。(2年女子)
・今回の実験は失敗したが、他の班を見たところ確かにビーカーの中に黄金色のつぶが見えた。(きれかった。)でも、不思議なのは酢酸鉛とヨウ化カリウムを混ぜて、この黄金色の結晶が見られたのだろうか。(2年女子)〜ちなみにこの班だけが再結晶できませんでした。理由は不明です。
・最初は黄色いペンキみたいだけどあとできれいになった。(2年男子)
・不思議だった。ゴールドメタリック。とてもきれいだった。サイコ〜。キレ〜。黄金のシャワーだった。(2年男子)
・キラキラ光る水ができてきれかった。こんなきれいなのが簡単にできるなんて思わなかった。(2年女子)
・キラキラ光る水ができてきれかった。家できれいにかざっときます。(2年女子)
・きれいだった。今日はいい一日だった。不思議だった。素敵だった。神秘的だった。かいかんだった。(2年男子)
2.「活性炭による吸着」
メチレンブルー、酢酸カーミン、イソジンなどの色水をつくり、それに活性炭を加えてろ過する実験です。 この実験で活性炭の働きとどのような所に利用されているかがわかったようです。
・活性炭はさまざまな使い方がある。活性炭には水をキレイになる働きがあって驚いた。(2年女子)
・色水をこすと不純物が取れて透明できれいな溶液になりました。(2年男子)
・あんまりきれいなんで飲みたかった。(2年男子)
・何でただの水がでたっちゃろかわからんばい。(2年男子)
・すごくキレイになった。(1年女子)
・まっくろだった。たぶん吸収したんだと思う。炭って人間の体にもよく水をきれいにしたりするのはしってたがすごいと思った。(1年女子)
・ろ過はとてもたのしいです。また、じっけんできたらいいなぁ〜。(1年女子)
・黒かったのにとうめいの水がろかされてでてきてすごい。(1年女子)
・活性炭は、いろんなものに使用されてるんだということに気づいた。おもしろい実験だった。(1年女子)
・黒みたいな色からとうめいになった。色がかわってすごかった。(1年女子)
・最初黒いのが透明になって不思議に思った。(1年女子)
3.入浴剤作り
炭酸水素ナトリウム、クエン酸、硫酸ナトリウムをそれぞれ薬さじ1杯乳ばちに加えて擦り、フイルムケースに入れて食用色素や香料を加えて自分だけの入浴剤をつくらせます。このときの香料は100円ショップで手に入れた香料10種類ほどです。自分で作った入浴剤を使うのを心配そうにしている生徒が何名かいましたが、全体的にはこんなに簡単に入浴剤ができることがわかってよかったようです。
・かなりおもしろかった。とても簡単にできるってことがわかった。家で作ってみたいと思った。家で使うのが楽しみだ。作用の目的によって粉の量をかえたりするのはすごいなぁと思った。その特徴をいかすともっといいと思った。(1年女子)
・今日の入浴剤をつかって、お風呂に使いたいと思います。なんかドキドキします。たのしみだー。(1年女子)
・はじめて作った楽しかった。おふろにいれるのがたのしみ。(1年女子)
・ペパーミントの香りがとてもgood!(1年女子)
・いいにおい、クールミントガムのにおいだった。(1年男子)
・いろいろな色やにおいができてよかった。こんなにかんたんにできるなんてすごい。もっといろ2つくりたい。
・いろんな香りと色があっておもしろかった。入浴剤が手作りできるなんておもってもみなかったし、不思議だった。(1年女子)
・はじめて入浴剤を作った。たんなる粉などを入れるだけだったけど楽しかった。(1年女子)
・こなとこなを単純にまぜるだけだったけど楽しかった。ちょっと香りの選択をあやまってしまった。香りが・・・・。(1年女子)
・入浴剤を作るのは楽しかったけど、本当に入浴剤になっているのか不安だな。(1年男子)
・入浴剤作りはとても楽しかったと思うが、自分たちの班の入浴剤はちゃんとした入浴剤になっているのかが心配だ。(1年男子)
・入浴剤を作るのはいいんだが風呂の中に入れてだいじょうぶなのかが心配です。(1年男子)
・とちゅうまでのにおいは、めちゃくちゃよかったけど入れすぎてくさくなってしまった。失敗しました。(2年男子)
・自分で作った入浴剤、今夜のバスタイムはさぞ良い気分でしょう。明日入った感想を報告します。(2年女子)
・色や臭いを調合するのは難しいと自分で作って分かりました。(2年男子)
・いいにおいがするやつとなんともいえないにおいがした。(2年男子)
・あんまり臭いを混ぜすぎると変な臭いになることがわかりました。(2年女子)
・入浴剤はこうやって作るのか知った。でも入浴剤を家庭で作る機会はないと思います。(2年女子)
・夏と冬でバブの作り方が違うとはじめて知った。(2年女子)
・こんなに簡単に作れると思わなかった。もうちょっと難しいと思ってました。においもよかったし・・・・。(2年女子)
・バニラエッセンスは入れない方がいい。なぜなら爆発してしまうからだ。(2年男子)
よく考えると来週の火・水曜日が最後の実験でした。今から何をするか考えたいと思います。ではでは。
99A−258
差出人:山本 喜一
送信日:00年3月19日
件 名:酸化還元反応とは
林さん、妹さんのご冥福を心からお祈りいたします。突然の出来事に、ご家族のみなさまを始め、たくさんの方々が深い悲しみに沈んでおられることと思います。
さて、酸化還元についてですが、まず野中さんの疑問について書いてみたいと思います。
<電子というマイナスのやり取りとプロトンというプラスのやり取りの違いは何。>
電子のやりとりは酸化還元反応、プロトンのやりとりは酸塩基反応ですよね。ですから、両者は別の種類の化学反応として、人間が認識したわけです。しかし、プロトンのやりとりに見える反応でも、よく見ると、電子の偏りも変化しています。例えばつぎの反応。
HCl + NaOH → NaCl + H2O
ここで、O原子に注目してみますと、OH-のOからH2OのOになったわけで、電子雲は変化していますよね。こういうことから、化学反応を統一して理解しようという動きも出てくるのですが、それはまた後にします。
<pHメーターの酸化還元電位は何。>
pHメーターは調べようとする水溶液と、基準となる水溶液で電池を形成して、その電位差を測定するものですね。水溶液はH+の濃度に応じて、その電位が変化します(ネルンストの式)。したがって、基準溶液との電位差がpHになるわけです。
<電荷の偏りが起きるのは電気陰性度の差、酸とアルカリにも電荷の偏りはあるようにも思えるのす?>
酸、アルカリに限らず物質すべてに電荷の偏りはありますよね。その原因はやはり電気陰性度だと思います。
次に、林さんとのやりとりについてです。どうも議論がかみ合わないと思っていましたので、今日、改めてメールを読み直してみました。そして分かったことは、林さんは酸化還元反応を電子のやりとりで統一ようとしていないことです。これは、林さんのメールに何回も出てきていたのですが、私はしっかり認識していませんでした。
3月5日、林さんは次のように書いています。
<私の理解は「電子のやり取りも酸化還元反応と見なすことができる」というこ
とです。実際に電子をやり取りする反応だけなら、酸化数を導入しなくてもイオ
ンの価数の変化(単体に戻ることを含め)で酸化還元反応が論じられるはずで
す。酸化数とは、共有結合もイオン結合のように見なしてその上で形式的に電子
の移動を計算するためのものではないでしょうか。電子やり取り反応も酸素原子
やり取り反応も、そして初期の酸化反応も、あるいは水素原子やり取り反応も、
これらを統合する鍵として酸化数が定義されていると思います。>
林さんは、酸素のやりとりも酸化還元反応、水素のやりとりも酸化還元反応、電子のやりとりも酸化還元反応・・・、と並列で理解しているような気がします。
私は、酸素のやりとりや水素のやりとりは昔の定義であって、今はより深く、電子の移動で定義していると考えます。林さんもそう考えているものの、教えるときには、電子の移動で統一していないということかも知れません。私は、酸化還元反応をすべて電子の移動(酸化数の変化)と理解し、それを全面に出して教えようとしています。
林さんは2月23日のメールで次のように書いています。
<酸素原子のやり取りという酸化と還元の概念も、生徒に分かりやすく使いやす
いものでなければ教える価値が疑われます。そこで私は下のような反応にはこの
概念を使わないようにしようと思います。>
電子の移動と酸化数の変化で酸化還元反応を理解させようと考えている私には、酸素原子のやりとりを教える価値はあまり見いだしていません。むしろ、酸化還元を電子のやりとり、あるいは酸化数の変化として統一して教えることによって、次のようなことを教えられると思います。
(1)酸素のやりとりや水素のやりとりなど、目に見える変化の奥に、より本質的な変化が起こっていること。
これは、身の回りの出来事や社会の変化について考えるときにも、必要なことだと思います。
(2)人間の自然への認識は、時代とともに深まること。
(3)しかし、科学の認識には限界があること。
すべての酸化還元反応で電子の移動が起こるという定義には、条件がありますよね。つまり、すべての化合物をイオン性物質と見なし、電気陰性度の大きな原子に共有結合の電子を割り当てます。これは、自然に反することです。でも、こうしないと、電子の移動という定義は使えません。同じことですが、林さんも書いているように、酸化数というのも形式的な数値です。でも、そういう形式的な数値を使わないと、酸化還元反応とそうでない反応を区別できないわけです。
化合物すべてをイオン性物質と見なす、などという自然をねじ曲げて考える必要があるのなら、酸化還元反応とそうでない反応を区別することをやめてしまっても良いのかも知れません。でも、この区別がなくなると、酸化剤や還元剤という物質の性質も認識できなくなってしまいます。人間が物質を知る上で、酸化還元反応とそれ以外の反応を区別することはやはり、不可欠ですよね。でも、区別しようとすると、自然から遊離し、形式的になってしまう・・・。これが、科学の限界、認識の限界ではないでしょうか。そういう限界を教える意味は大きいと思います。
99A−259
差出人:山本 喜一
送信日:00年3月19日
件 名:炭化物とゴミの混合焼却について
私のメールボックスに次のような質問が寄せられました。みなさんのお考えをお願いします。
<引用開始>
ごみ(主に生ゴミや紙くず、ビニール等)を炭と同時に焼却した場合、ゴミ単体で
焼却した場合に比べて、排出されるガスの一酸化炭素濃度が高い測定結果となりま
した。この原因について私なりに考えてみましたが、化学に関する知識も浅く、あ
まり自信が持てません。専門家の立場からみて、下記のようなことがいえるのかど
うか教えて下さい。
1.不完全燃焼による一酸化炭素の発生
2C+02→2CO
2.炭化物の吸熱反応による炉内の二酸化炭素還元
CO2+C→2CO
3.生ゴミに含まれる水分からの吸熱反応による、水の還元
C+H2O→CO+H2
<引用終わり>
このメールに対して、私は次のように書き送りました。
<引用開始>
難しい質問ですね。私は高校の教員で、化学の深い知識はありませんから、即答しか
ねます。でも、興味のある現象ですから、私の友人たちと考えてみたいと思います。そ
こで一つ質問をさせて下さい。ゴミと炭を一緒に焼却されたそうですが、どのような条
件だったのでしょうか。焼却量や、ゴミと炭の割合、焼却炉の構造などを教えて下さ
い。一酸化炭素の発生は燃焼温度や酸素の濃度などに左右されますから、燃焼したとき
のようすが分からないと、的外れな答になると思いますので。
それから、3月17日付のメールを私の友人たちに転送してもよろしいでしょうか。
<引用終わり>
このメールに次のような返事が来ました。
<引用開始>
ご返事いただき誠にありがとうございました。お送りした内容だけでは確かに即
答しかねるとおもいますので、もう少しくわしくご説明申し上げます。
現在、高速道路から発生する可燃性のごみは、インターチェンジ内にある焼却炉
で処理しています。しかし、昨今のダイオキシンをめぐる環境問題が社会的に大
きく取り上げられ、満たさなければならない焼却炉の構造基準も厳しくなってい
ます。現在のところ、既設炉に対しては、平成14年11月までは適用が猶予されて
いますが、12月以降はバグフィルタ(集塵装置)を設置しなければならない等、
法に準拠した設備を整えるとなると、数千万〜1億以上の投資を余儀なくされま
す。
そこで、従来の「焼却」とは異なるゴミ処理方法として、ゴミを加熱して溶解さ
せ、その際に発生するガスだけを燃焼させて処理する「炭化減容装置」の導入を
検討しております。本装置で処理されたゴミは「灰」ではなく粉末状の「炭」と
して排出されます。
発生した炭化物の最終処分方法として、従来から炭の効能として知られている土
壌改良材や、固形化による助燃材等が考えられますが、選択肢の1つとして他の
焼却炉での焼却処理も検討しております。そこで通常のゴミを焼却しながら、こ
の炭化物を同時に焼却した場合の排気ガスを分析した結果、炭化物を入れない場
合に比べて、わずかながらダイオキシン濃度が高くなる結果となりました。また
排気ガスの一酸化炭素濃度も高くなっており、その原因として炭化物を同時に焼
却したことが考えられ、昨日の質問内容を送付した次第です。
焼却炉の構造はバッチ投入式で、家庭用のゴミ袋(45l)程度の大きさのものを
1回に3〜5袋ずつ5分間隔くらいに投入しました。このとき、ゴミの重量に対して
20%の炭化物を同時に投入します。(燃焼室はおよそ1m3、測定時の炉内燃焼温
度は800〜900℃、平均酸素濃度は19.7vol%でした。)
詳細に調査しなければ断定は難しいかも知れませんが、「可能性として考えられ
る」程度のお墨付きが得られればと思っております。年度末を迎え、ご多忙のと
ころ大変申し訳ありませんが回答をお待ちしております。
なお、知人への相談は一向にかまいません。そうしていただけることで確信に一
歩でも近づけたらと思っています
<引用終わり>
Cを燃焼させたとき、CO2が出るかCOが出るかについては、藤田さんが熱力学的に考察してますね。それによりますと、706℃以上ではCOの方が増えるということですね。単純にそれを上記の燃焼温度(800〜900℃)に当てはめてみますと、COが出てもおかしくはないと思います。でも、炭化物を混ぜてなくても、燃焼温度はそれくらいになるのかも知れません。そうであれば、CO発生の主要因が燃焼温度だとは言えなくなります。炭化物を混ぜないときの燃焼温度を、この会社に問い合わせてみたいと思います。
COが発生するもう一つの原因として、酸素不足による不完全燃焼が考えられます。上の文から考えますと、使っている燃焼炉は学校の焼却炉のようなものではないかと思います。そのような炉で、炭化物の粉末を20%混ぜたゴミを燃やすと、不完全燃焼が起こるのではないでしょうか。これがあたっているかどうかを考える手がかりは、平均酸素濃度が19.7vol%という数値でしょう。これは、不完全燃焼を起こしているときの酸素濃度でしょうか。
以上が現段階での私の考えと疑問です。みなさんはどう思いますか。質問でも意見でもけっこうですから、お寄せ下さい。よろしくお願いします。
99A−260
差出人:林 正幸
送信日:00年3月19日
件 名:酸化・還元に係わって(3)
こんばんは、林です。
メールが来ていると気持が戻って、まず返事を書こう、そして残っていることに取り組もうと思います。
鬼塚さん、生徒が実験を楽しみ、それを通して多くのことを学んでいるのがうかがえます。はやり実験は理科教育の基本ですよね。
山本さんは、酸化数ないし「電子の移動」という概念をベースにした授業展開をしているのですね。私の考え方は、(できるだけ)実験に基づいて初歩的概念を導入し、それを活用しながら次第により高次の概念に発展させるという流れをつくることです。
酸化・還元では、まず中学で学んだ酸化が「酸素と化合すること」で、還元は「化合する前の物質にもどること」であったことを確認します。しかし還元は酸化反応を含んで矛盾があることを指摘し、盛口流の酸化銅(U)の還元反応(集気びんに入った水素を被せる)を実験しながら、一歩進んだ「酸素原子のやり取り」という酸化還元反応の概念を導入します(この部分は並列的ではありません)。ここでその物質が「酸化される」ことと、相手物質を「酸化する」こと(つまり酸化剤)の違いも整理します。そしてテルミット反応(実験する)などの反応や、製鉄でこの概念の有効性を確認します。ただしこの概念は多くの中学校で学んだ酸化反応を枠外にしてしまいます。なお授業では「水素原子のやり取り」は扱いません。
次にこれとは並列的に、あるいは「酸素原子のやりとり」とは無関係に、「電子のやり取り」の概念に導いていきます。その始めは金属樹の実験(アルミ箔と塩酸の反応を含む)です。そしてまず教科書のように陽イオンの交換として捕らえます。つまりイオン化傾向です。次に、これは見方を変えると「電子のやり取り」になることに気付かせます。イオン化傾向は「金属が電子を失う傾向」に置き換わります。そしてイオン化列に「電子得失表」を対置します。これは電子を失う反応式を上から順に並べたもので、次の7つに限定します。
Al,Zn,Fe,Pb,H2,Cu,Ag(すべて金属樹の実験で登場)
そして電子を失う反応と同じだけ電子を得る反応が起こっていることに触れつつ、「電子得失表」から電子を得やすい順番も読み取れることを教えます。
そしてこの概念は、電池と電気分解でゆたかに活用します。ここでの実験は
33円電池
ボルタの電池、ダニエル電池、鉛蓄電池
塩化鉛の融解塩電解
*亜鉛粉末とヨウ素の反応(むらさき色の気体)
*水の電気分解(BTBを加えた硫酸ナトリウム水溶液をろ紙に染み込ませて電解)
です(*は教師実験)。電池の基本は「リード線を電子が流れるためには電極で電子を与える反応と電子を奪う反応が起こればよい」です。電池では能動態の表現を使います。ただし負極では酸化反応などとは教えません。
塩化鉛の電解やヨウ化亜鉛ができる反応を通して、電子を失うものは金属だけでなく、陰イオンも含まれることを導入します。具体的には次の4つを電子得失表に組み込みます。
OH-,I-,Br-,Cl-
電子を得るもので見れば、それは陽イオンと非金属になります。ここで止めれば分かりやすいのでしょうが、水の電解を通して、水分子が、電子を失ったり得たりする反応を追加します。電気分解の基本は「直流電源が電子を強制的に動かすので、陽極では電子を失う反応が、陰極では電子を得る反応が起こる」です。
私は高校生にはここまでで良いのではないかとも考えています。しかし現実がそれを許しません。そこで最後の1時間あまりで、中学で学んだ酸化と還元にも、酸素原子のやり取りにも、電子のやり取りにも共通する特徴はあるだろうか、と問いかけます。そして酸化数を導入するのです。酸化数の本質には触れますが、実際にはそれを見付ける「ルール」を訓練することが中心になります。一部の生徒は酸化数を求めるのをクイズ感覚で喜びますが、酸化数は抽象度が高い概念で実感と結び付きにくいと思います。
ただし酸化数を「自然をねじ曲げる考え」とか「自然から遊離して形式的になる」とは思いません。それは自然のひとつの切り口であり、より多くの反応を統一的に理解する切り口であると思います。酸化数は「自然科学の限界」ではなく、ひとつの発展的見方であると考えます(ただしとびきり優れているとも思いませんが)。もちろん酸化数の概念にも「限界」はあります。だから酸化還元電位(標準電極電位)の方が発展しているのではないかと感じます。しかし酸化数を考えること自身が自然科学の限界とは思いません。
ではまた。
99A−261
差出人:野中 直彦
送信日:00年3月21日
件 名:丁寧な返事ありがとうございました
山本さん、丁寧な返事ありがとうございました。
(後略)
99A−262
差出人:林 正幸
送信日:00年3月21日
件 名:「酸化・還元」の授業
こんばんは、林です。
野中さん、転勤は新たな旅立ちですよね。
山本さんに書いたメール「酸化・還元に係わって(3)」で弾みがついて、今年の科教協大会のレポート「酸化・還元の授業」を作成しました。昨年野曽原さんが酸化・還元をレポートしたのを見て、私もそうしようと思ったからです。私としてもこのテーマにはずい分入れ込んできたわけで、三学期に授業があるので、その時点でレポートを作成しておくべしと決意していたのです。その全文はホームページに掲載しましたので、機会があったら覗いてみてください。
ではまた。
99A−263
差出人:山本 喜一
送信日:00年3月22日
件 名:高校生はアメリカの教科書をどう見たか
こんばんは、山本です。
林さん、「酸化と還元」を夏のレポートに決めたそうですね。これからHPをダウンロードして読ませてもらいたいと思います。
話は変わりますが、「理科教室」3月号はアルケのメンバーが活躍していますね。澤田さんが化学の授業について書き、松本さんがアルケについて書き、そして佐藤さんが「20世紀理科年表」について書いています。松本さんの文章に私が出ていますが、ちょいとほめられすぎですね。逆さコップの理論的な部分は、神奈川の山本明利さんから教わった部分が多いので。
ところで、私も「理科教室」から依頼があって、表題のような実践について書いてみました。そのうち掲載されると思いますが、みなさんに一足先に送ります。ご意見、ご感想などいただければうれしく思います。
高校生はアメリカの教科書をどう見たか
千葉県立柏高校 山本喜一
1.はじめに
昨年の暮れ、ある会議で原子力資料情報室共同代表の山口幸夫氏(法政大学)より、2枚の英文の印刷物をいただいた。それはアメリカの中学生向けの教科書"Physical Science"(Merrill,1989)からのコピーで、"SCIENCE AND SOCIETY"という表題がついていた。多くのアメリカの教科書では、一つの単元の記述が終わると、このようなページが設けられているそうだ。題名のとおり、学習した内容が社会や人間とどのような関係があるのかを考えさせるページである。2枚のうちのひとつはプルトニウムと社会の関係を考えさせるもの、もうひとつは電磁波
の功罪に関するものであった。
私は化学を教えながら、授業内容と関連させてフロンやダイオキシン、核、窒素酸化物、ゴミ問題などを扱ってきた。そういう授業をとおして、これからのライフスタイルや社会の有り様を模索させようとしてきた。そこで、この英文を生徒に和訳させてみてはどうかと考え、冬休みの課題にした。対象は高校1年生の3クラス。課題にはプルトニウムや電磁波についての予備知識を添付し、英文中の専門用語や難しい言いまわしには注釈をつけた。そして、和訳後、簡単なアンケートを取り、感想も書かせた。
2.英文の内容(要約)
(1)プルトニウム:われわれは何をなすべきか?
原子炉の燃料はウランの酸化物であり、その3%はU235、97%はU238である。原子炉ではU235の3分の2が分裂するとともに、U238がPu239に変わる。燃え終わった核燃料には95%のU238、1%のU235、1%のPu239が含まれている。残り3%は他の核分裂生成物である。燃え残りのU235やPu239は他の原子炉の燃料として使えるが、それらを分離するには化学的な処理が必要である。
1.使用済み核燃料から抽出されたU235とPu239は高速増殖炉で使われるはずであった。
2.ウエストバレー工場では1971年までウランやプルトニウムを抽出していたが、その後閉鎖された。他の2つの工場も閉鎖されている。
3.プルトニウムは核兵器にも使われる。テロリストなどからの関心もあるだろう。
4.カーター大統領は1977年、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出しないよう命令を出した。
私達はプルトニウムをどう扱うべきだろう。核拡散に反対する人たちは、使用済み核燃料も埋めるべきだという。他の人たちは埋められた廃棄物による放射能の危険性が500年以上も残り、その間の警備上の問題もあると指摘する。放射性廃棄物は半減期の20倍の時間が経つまで、安全な水準にはならないのだ。 プルトニウムを増殖炉で燃やして取り除くことが、最適な方法だと考えている人もいる。しかし、原子力産業の衰えがウランの需要を少なくしている。だから、燃料を作り出す増殖炉を建設する動機も低下している。その上、フランスの増殖炉で作る電気は、他の原子炉の2.2倍もコストがかかっているのである。
原子炉は私達にエネルギーを供給してくれるともに、プルトニウムも生み出している。プルトニウムを問題なく扱う方法はない。しかし解決法が現れるのを待てば待つほど、問題は大きくなっているのだ。
以上のことを、5人に話しなさい。そして、こう質問しなさい。「Puをどう扱うべきだと考えますか?@埋める、A増殖炉で燃やす、B意見なし。」そしてわかったことをクラスに報告し、議論しなさい。
【参考文献】ScienceやScientific Americanなどの専門誌もあげられている。
(2)電磁波:益か害か
γ線やX線は振動数が大きく、持っているエネルギーも大きいため原子をイオン化させる。これらの放射線によって、もし細胞の再生をつかさどる部分がイオン化されると、ガンを生じることもある。しかしイオン化放射線は、ガンの治療にも使われている。
同じことが非イオン化放射線にも当てはまる。紫外線の浴びすぎは皮膚ガンを作り得るし、強烈な赤外線はやけどを起こす。
遠距離通信に使われていたマイクロ波は、電子レンジに使われている。消費者団体の調査では、法定許容量の半分以上の漏れのあるレンジは見あたらなかった。しかし、ネズミの腫瘍の実験は、マイクロ波の安全性に未解決の問題が残されていることを示している。同じことは、電線から放射される電磁波にも当てはまる。多くの科学者は送電線の近くで生活することも、電気毛布を掛けて寝ることも望まない。
次のような報告によって、数々の議論が巻き起こされた。a)電線からの距離と子どものガンとの関係。b)大電流にさらされる仕事をしている人は脳腫瘍と白血病にかかる頻度が大きいこと。c)送電線のような電磁場にガン組織をさらすと増殖すること。これらの研究は肺ガンとタバコの研究と似ている。しかし、電磁波とガンはタバコとガンほど関係が明確ではない。
電線のまわりの電磁場の影響については、より多くの調査が必要である。もし、あなたが電磁波とガンの関係を納得したら、まわりの人に何を勧めますか。仮に将来、室温超伝導を示す物質が見つかったら、人々の電磁波の影響を減らすために、あなたはどんな提案を考えていますか。
【参考文献】省略。
3.生徒へのアンケートから
和訳後、次のようなアンケートを取った。
┌──────────────────┐
│問1 和訳の難易度はどれくらいか。 │
│ ア,かなり易しい イ,易しい │
│ ウ,普通 エ,やや難しい オ,難しい │
│問2 書いてある内容を理解できたか。│
│ ア,理解できた イ,だいたい理解した│
│ ウ,あまり理解できなかった │
└──────────────────┘
プルトニウムについて
│問1│ ア│ イ│ ウ│ エ│ オ│
│(人)│ 1│ 2│15│20│35│
│問2│ ア│ イ│ ウ│
│(人)│ 2│27│34│
問1でオと答えた生徒のほとんどが、問2でウを選んでいる。逆に、問1でウまたはエと答えた生徒は、問2でイを選んでいた。
電磁波について
│問1│ ア│ イ│ ウ│ エ│ オ│
│(人)│ 1│ 1│ 1│ 8│21│
│問2│ ア│ イ│ ウ│
│(人)│ 3│23│ 6│
問1でオ、問2でイという生徒が目立った。
生徒たちは私の授業で放射性同位体や原発についてはある程度学んでいる。しかし、電磁波についてはあまり勉強していない(物理は2学年)。それでも、原子核や放射能よりは電磁波の方が理解しやすかったようだ。
4.生徒の感想や意見
次に、下のような問いを作り、感想や意見を書かせた。
┌───────────────────┐
│問3 この本は各章の終わりに”SCIENCE │
│ AND SOCIETY"というページをもうけ、科│
│ 学が社会や人間にどんな影響を与えて │
│ いるのかを解説している。これは日本 │
│ の教科書には見られないことである。 │
│ このことについてどう思うか。 │
│問4 その他、和訳して気づいたことや │
│ 感想を書きなさい。 │
└───────────────────┘
問3については、全員の生徒がこういうページを設けた方がよいと答えている。理由はおもに二つであった。ひとつは、学んだ内容が社会でどのように生かされているかが分かるからというもの、もうひとつは理科を学ぶ意欲が出るからというものであった。下に、生徒の感想の一部を紹介したい。
・とても良いことだと思う。ただ原子核がどうのこうのと勉強しても大体の人は、なぜこんな事を勉強するのだろうと疑問を抱いてしまうけど、実際の生活にかかわったり将来にかかわったり、となると、興味が持てるし、学ぶ意味を見いだすことができると思う。
・化学の発展と同時に、人や社会や環境にいろいろ影響が与えられているというところから、目をそらしてはいけないと思います。科学の良さばかりにとらわれていては、環境破壊が進むのではないでしょうか。
・少なくとも、(科学が)自分たちにはどんな影響を与えているのかがわかる。ただ、「ああそうか。」だけでなく、「じゃあどうしよう」というそこから自分で学習していくようなことになっていくだろう。
・「その物質がどのようにしてできるか。」その基本的知識も大事だけれど、自分たちが身近なのはそのことより、「その物質が自分たちにどのような影響を及ぼしているのか。」ということだと思う。
・科学が社会や人間にどんな影響を与えているかを知った方が理解しやすいし、今の状況がしっかりと分かって何とかしないといけないなあと考えるようになって良いと思う。
おわりに
日本の理科の教科書には、学習した内容と社会との関わりを考えさせるページは見あたらない。したがって、電気の単元では回路を作ることとか、オームの法則は学んでも、電気を作っている間にプルトニウムがたまっていることは学ばない。それで良いのだろうか、と思う。プルトニウムは一歩扱い方を間違えば、大惨事をもたらすものだ。そういうものと同居しながら生きているという認識は、これらからの時代を生きていく生徒たちに不可欠ではないだろうか。
科学的な考え方やものの見方を与えておけば、生徒たちはいつしかそういうことを考え始めるに違いないという意見もある。しかし、科学的な考え方の育成にだけ重点を置きすぎると、生きていくために必要な知識を獲得させることが、なおざりになってしまうのではないだろうか。理科では、ものの見方・考え方だけでなく、ダイオキシンやゴミ問題、環境ホルモン、エネルギー問題と温暖化等、生きていくために必要な知識を獲得させる必要があると思う。理科で教えなければならないことは何であるのか。もう一度問い直す必要があるだろう。
99A−264
差出人:鬼塚 公志
送信日:00年3月23日
件 名:最後の実験
転勤の時期ですが、私は残留することになりました。昨年の11月に呼ばれたときには、離島への転勤話があったのですが、離島へは若い人たちの(自分も若いつもりですが・・)転勤希望が多く、今年はありませんでした。
「膨らむ卵」を平成12年3月21日に1・2年生を対象に実施しました。生卵を2Mの塩酸で溶かし、水につけて10分後にどれくらい水が入っているかという実験です。最後に何モルの水が浸透しているかまで計算させましたが、ほとんどできませんでした。全般的に好評でしたが、生徒の中には卵アレルギーのためにこの実験が嫌いという生徒が一人いました。アワを早く出すために卵の表面をガラス棒でこすらせたのですが、2班ほど卵をついて破りました。最後に割った卵はトイレに流しました。誤字脱字はそのまま記載しています。漢字の間違いには(?)をつけています。
・タマゴがわれそうになった。タマゴがやわらかかった。タマゴをとかすときおもしろかった。とかすのに無中(?)になって話しを聞いていませんでした。ごめんなさい。(1年男子)
・卵のからのないやつをさわてみると、やわらかくていまにもわれそうだった。卵の皮は少しはじょうぶそうなかんじがする。(1年男子)
・多分、初めてまともにうまくできた実験だったと思う。2年次からはもう少しまともな実験をしたいと思う。(1年男子)
・まあ、よくできた。卵のからが白いアワなってすごかった。(1年男子)
・誰かさんのせいで失ぱいに終る(?)。だが、卵が半透明になるのはしょうじきかんしんしてしまう。(1年女子)
・卵をさわるととてもブヨブヨしていて気持ちが悪かった。(1年男子)
・卵は嫌い。(1年男子)
・卵がとても軽く(やわらかく)なったのでとてもびっくりした。(1年男子)
・殻のうすれた卵を見てオモシロか。卵が水をすって(太く)大きくなったのかはよくわからない。時間が経つとそのちがいがよくわかる。(1年男子)
・卵のからがとけて中身がでてくると思ったら、うすい膜だけで中身が出ないのがふしぎだった。(1年男子)
・塩酸で卵をとかすとメレンゲみたいな泡ができてすごかった。卵のからをこすりすぎてわれてしまったけどけっこう楽しかった!ゆで卵したときのまくだけがのこっていた。たまごをまぜてもいつもと同じようなかんじだった。(1年女子)
・メレンゲみたいな泡がたくさん出ておもしろかった。ゆでたまごをむいた状態と同じ膜ができてすごかった。われて失敗したけど、膜がぶじだった。中身をかきまぜたら、うすい黄色になった。泡も一緒に入れてまぜると、泡がたった。(1年女子)
・塩酸にタマゴをいれてタマゴのからをとかしたら、アワがたくさん出た。はじめは、じゅんちょうにできていたけど、タマゴがわれてしまった。じっけんしっぱいしたー。(1年女子)
・実験に失敗してしまった。残念だった。でも、おもしろかった。どうしてとけるのかとても不思議。まさか、膜に小さな穴があいてるとはおもわなかった。すげ→。(1年女子)
・かわがとけるときが楽しかった。プルプルしていた。かなりたのしかったョ→。(1年女子)
・卵からあわができたことが不思議だった。あと卵がやわらかくなったのがふしぎだった。(1年女子)
・普通の卵を、塩酸に入れ、かきまぜているうちに、メレンゲのようなアクがいっぱいできた。そのあと、卵をさわってみると、ブカブカしていた。不思議!!(1年女子)
・塩酸に卵をいれたとたんアワが出だしてそれをまぜたらメレンゲみたいになったから不思議だった。まぜて時間がたったらカラがうすくなった。(1年女子)
・卵のからがとけて卵膜をさわるとだん力があった。塩水と水では水に入れた方が重くなった。(6)と(7)では、水をすった分おもくなった。(1年女子)
・とうめいたまごははじめてみたです。(2年女子)
・すごく×2やわらかかった。(2年女子)
・皮がついていないと変だと思った。わけのわからない実験でした。(2年女子)
・すごくやわらかくなった。(2年女子)
・いろいろな液体につけることで重さが重くなったり軽くなったりすることがわかった。(2年女子)
・ぷにゅぷにゅしていた。きもちよかった。(2年男子)
・中身がきれいで透けて見えたけど、ぐしゃぐしゃになって気味が悪かった。(2年男子)
・たまごがわれておもしろかった。(2年男子)
・サンポールなどで卵がやわらかくなるということは不思議だった。(2年男子)
・玉子がやわらかくなったのでとてもおもしろかった。(2年男子)
・からがとけてとてもすごかった。われるのかと思ったけどわれなかったのでよかった。(2年男子)
ではでは。
99A−265
差出人:林 正幸
送信日:00年3月26日
件 名:「メーリングリスト」のリストを紹介します
こんにちは、林です。
今年は春が来るのが遅いですね。
さて前にも少し書きましたが、3月28〜31日の日本化学会春季年会の特別企画「インターネットと化学教育」で、「インターネットで広がる化学教育の研究・交流」という表題で報告(講演)します。
ついては、アルケミスト「メーリングリスト」の件名リストの最近の部分を資料として紹介したいと考えています。それはホームページに掲載している
・番号
・送信日
・差出人
・件名
のリストです。そして本文そのものは紹介しませんが、どんな内容を交流しているかを話したいと思います。
そんなわけで、了解をしてもらいたいとメールを送ります。ではまた。
99A−266
差出人:野中 直彦
送信日:00年3月26日
件 名:ごくろうさまです
日本化学会の話がどんなになるのかまた、聞かせてください。
99A−267
差出人:鈴木 久
送信日:00年3月26日
件 名:RE:「メーリングリスト」のリストを紹介します
林 正幸さん
アルケのMLのリストの件 私の場合O.Kです。
がんばってきてください。
もし全日程参加されるのでしたら、佐藤 学さんの講演をビデオかカセットテープに入れてきていただくことはでききませんか。
99A−268
差出人:山本 喜一
送信日:00年3月28日
件 名:RE:「メーリングリスト」のリストを紹介します
こんにちは、山本です。
昨日、科学技術振興事業団の「サイエンスレンジャー」の研修会というものがあって、参加してきました。サイエンスレンジャーとは、青少年や大人を対象にした実験教室の指導者です。この会で、思いもかけず高橋匡之さん、田中晃二さん、そして杉山剛英さんと会うことができました。高橋さん、杉山さんとは夜遅くまで焼鳥屋で盛り上がりました。
林さんから依頼があったリストの公開ですが、私はOKです。と言っても今日は28日。林さんはもう出かけてしまったかも知れませんね。
99A−269
差出人:高橋 匡之
送信日:00年3月28日
件 名:RE:RE:「メーリングリスト」のリストを紹介します
こんにちわ 高橋匡之です。
山本さん、田中さん、杉山さんご苦労様でした。みなさんからのエネルギーを吸収してだいぶ元気になって帰ってきました。
「ホテル若葉館」というところに泊まって、朝食をとろうとしたら、なんとそこには佐藤琢夫さんがいてびっくり、これだったらミニアルケももう少し大々的にやれたなと思いました。
琢夫さんが年度末に東京へ来る事は知っていました。だから、メールを入れておいたのですが、あわただしく出かけてきたので、読んではいなかったようです。残念でした。
山本さんに教えたテレビの件、今新聞を見ていたら、今日やるようなので、慌ててメールに書くことにしました。みなさんもぜひご覧ください。私はてっきり29日からだと思っていましたので。
NHK教育テレビ「人間講座」に高木仁三郎さんが出ます!
3月28日(火)、29日(水)、30日(木)の23時〜23時半です。
「人間の顔をした科学を求めて」
1.臨界事故から施策する。 2.市民の科学者・宮澤賢治 3.あきらめから希望へ
99A−270
差出人:藤田勲
送信日:00年3月29日
件 名:RE:高校生はアメリカの教科書をどう見たか
こんばんは、藤田です。
山本さんの「高校生はアメリカの教科書をどう見たか」を読みました。生徒に和訳させて教科書比べをさせるとは、相変わらず意欲的ですね。
ただ、「プルトニウムと社会」や「電磁波の功罪」という物理的な話題では1年生には取っつきにくかったかもしれませんね。山本さんは授業で放射性同位体や原発についてすでに授業で学習済みだったようですが、それでも原発が目の前にあるというような環境でもない限り、切迫感をもってこういった問題をとらえることは生徒にとってはかなり難しいことだと思います。これに対して、電磁波の問題は身の回りに電子レンジやパソコンなどの電気製品があふれているわけですから、その功罪を考える方がより理解しやすいでしょうね。
アメリカの教科書が「科学と社会」という項目をもうけて率直に社会生活に及ぼす科学技術の影響を解説している点は評価したいと思います。産業界からクレームが付きそうな、また政治的にも評価が別れそうな問題もタブー視しないで取り上げてこそ、現実生活に役に立つ教科書になるわけですから、このような解説は大切だと思いました。日本では検定を通らないでしょうね。でも、この解説はアメリカの中学生に理解可能なのでしょうか。参考文献も専門誌が上げられているようですね。それから、解説の仕方がいかにも損得を現実的に考えるアメリカらしい思考だなとも思いました。
最後の山本さんの所の生徒の感想は、たいへんにまともでもっともなものですね。『少なくとも、(科学が)自分たちにはどんな影響を与えているのかがわかる。ただ、「ああそうか。」だけでなく、「じゃあどうしよう」というそこから自分で学習していくようなことになっていくだろう。』など、最後の3つの感想は山本さんの日頃の教育活動の成果が現れているような気がして、興味深かったです。
ところで、似たようなスタンスで書かれた高校化学分野のアメリカの教科書が邦訳されているのをご存じでしたか。アメリカ化学会『ケムコム−社会に活きる化学−』(東京化学同人,1993)という本です。これは産業界や政府の協力を得て書かれたもののようです。しかし、日本化学会が編集する高校生や高校教師向けの本は単なる実験書や理論解説書がほとんどですね。日本化学会が「科学と社会」をまじめに正面から解説した本を私はまだ見たことがありません。日本化学会はこのような「科学と社会」の教育に熱心ではないのでしょうか。それとも産業界に何か気兼ねでもあるのでしょうか。環境問題に関心を持ち、これに取り組む市民や科学者を育てる姿勢は、現場の教員だけでは熱意があっても、ふさわしい教材がなければ成果が上がりにくいのは自明のことですね。日本でも化学会に集まる専門家と現場の教員で「科学と社会」の化学版のようなものが作り上げられていけるような環境作りが必要になってきている時期ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
もちろん我々アルケミストの役割もますます重要になってきているわけですね。誤解を恐れずに言えば、今は実験開発より教材開発、実験書より授業書が大切なのではないかと思っています。未来をバラ色に描く新素材などの科学技術紹介のための教材ではなく、今の時代にふさわしいフィロソフィーのある教材が求められているのではないでしょうか。未来を単にバラ色に描いても夢がもてるような簡単な時代ではないし、生徒にもそれが分かるからこそ教科書はつまらなく映るわけでしょうね。そのためには今ある教材にとらわれないで、広くテーマを探る必要もあるかもしれません。実験が大好きな私にとっては何ともつらい時代になってきてしまいましたが、仕方ありませんね。
この後半の部分については皆さんのご意見を伺いたいと思います。では、また。
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