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99A−226
差出人:藤田 勲
送信日:00年2月15日
件 名:非金属単体のこと
こんにちは、藤田です。
林先生の「酸化還元の授業アンケート」を読みました。先生の授業が生徒とよく心の通い合っている授業であることが分かるような気がしてきます。
さて、今日は非金属単体のことを話題にしたいと思います。ご承知のように「金属は酸に溶け、非金属はアルカリに溶ける」というような言い方がありますね。この場合、後半の具体例が今ひとつ身近に感じられない、といった問題点があるように思います。そこで具体例のいくつかを紹介したいと思います。
まず、ハロゲンについてです。塩素はよく知られているようにハイターなど塩素系の漂白剤の中に入っていますね。アルカリ性にするのは塩素が次亜塩素酸イオンとして溶けるためです。酸には溶けません。ただし、次亜塩素酸イオンは不安定で、酸素を出して分解したり、中性付近ではさらに不均一化して塩素酸イオンになったりします。
Cl2 + 2NaOH = NaClO + NaCl + H2O
2NaClO = 2NaCl + O2
3NaClO = NaClO3 +2NaCl
石灰水に塩素ガスを溶かしたものがさらし粉ですね。したがって、当然のことながらハイターやさらし粉に塩酸を加えて酸性にすれば、塩素が溶けきれなくなって出てくることになります。もっとも、正確に言うなら次亜塩素酸が強い酸化剤なので塩化物イオンを酸化して塩素ガスを発生する、というべきでしょう。
2Cl2 + 2Ca(OH)2 = Ca(ClO)2 + CaCl2 + 2H2O
NaClO + 2HCl = NaCl + H2O + Cl2
臭素はパーマ液の第2液にやはりアルカリに溶けた形で入っています。一般に、臭素をアルカリに溶かすと次亜臭素酸塩の他に臭素酸塩もできます。臭素酸塩の方は、第1液のチオグリコール酸塩で毛髪タンパク質中のジスルフィド結合(S−S結合)をチオールに還元した後の、弱い酸化剤として使われています。したがって、パーマ液の第2液に酸を加えた場合にも臭素を発生しますので、この第2液は臭素の簡便な発生源として使うことができます。私はセピア写真の漂白剤に使ったりしています。
Br2 + NaOH = NaBrO + NaBr + H2O
3Br2 + 6NaOH = NaBrO3 + 5NaBr + 3H2O
4NaBrO3 + 4HCl = 4NaCl + 2H2O + 2Br2 + 5O2
ヨウ素をアルカリに溶かした場合の次亜ヨウ素酸塩(これは臭素よりさらに不安定でヨウ素酸塩になりやすい)については、私は身近に利用されている商品を知らないのですが、どなたかご存じありませんか。ないとすれば、ヨウ素は固体の弱い酸化剤ですから塩素や臭素ほど取り扱いがやっかいではく、アルカリで固定する必要がないからかもしれません。このままヨウ化カリウムと共にエタノール水に溶かしてヨードチンキに使っているくらいでしょうか。なお、イソジンはポビドンヨード、すなわちポリビニルピロリドンとヨウ素の抱接化合物です。ちょうどでんぷんやポリビニルアルコールと抱接化合物を作るように、ヨウ素はポリビニルピロリドンと弱く結合しているようです。
身近にはなさそうな次亜ヨウ素酸塩ですが、アルコール検出のヨードホルム反応には使われていますね。この場合、次亜ヨウ素酸ナトリウムはアルコールの酸化剤として働き、カルボン酸ナトリウムとヨードホルムを生じます。
I2 + NaOH = NaIO + NaI + H2O
C2H5OH + 4NaIO
= HCOONa + CHI3 + 2NaOH + NaI + H2O
最後に、イオウについて触れておきます。イオウをアルカリに溶かした製品には610ハップがあります。これは主に石灰水にイオウを溶かしたものです。イオウはアルカリ中では硫化物イオンとチオ硫酸イオンに不均一化して溶けます。イオウで汚れた試験管はアルカリで洗うとよく落ちる、という経験則はよく知られているところですね。なお、この溶液に酸を加えれば硫化物イオンからは硫化水素が、チオ硫酸イオンからは硫黄と二酸化硫黄が生じますが、硫化水素と二酸化硫黄からは硫黄と水ができますから、やはりほとんどがもとのイオウに戻ると考えて良いと思います。
4S + 3Ca(OH)2 = 2CaS + CaS2O3 + 3H2O
CaS + 2HCl = CaCl2 + H2S
CaS2O3 + 2HCl = CaCl2 + H2O + S +SO2
ところで、一般にイオウは硫化物イオンに溶けてポリ硫化物イオンになることが知られています。したがって、610ハップや水酸化ナトリウム水溶液中ではイオウはアルカリに溶ける以外に、反応で生じた硫化物イオンにもポリ硫化物イオンになって溶けますので、溶液はいずれもオレンジ色になります。これはヨウ素がヨウ化物イオンに溶けて三ヨウ化物イオンになるのに似ていますね。
XS + S2- = Sx+1~2- (X=1〜7程度)
I2 + I- = I3~-
なお、ポリ硫化物イオンは線香花火の火球中にポリ硫化カリウムとして存在しています。これは通称、硫肝と呼ばれていて、線香花火らしさを示す中心物質だと考えられています。火薬中の炭粉は硝酸カリウムにより酸化、燃焼すると炭酸カリウムを生じますが、この溶融状態のアルカリが硫黄を溶かすことで硫肝は生じます。反応条件により幾つかの反応式が考えられています。硫肝は湿気を吸って加水分解しやすく、またその水溶液は酸化されやすいため空気中の酸素吸収剤として使われることもあります。
2K2CO3 + (2X+1)S = 2K2Sx + SO2 + 2CO2
4K2CO3 + (3X+1)S = 3K2Sx + K2SO4 + 4CO2
3K2CO3 + (X+3)S + O2
= K2Sx + K2S2O3 + K2SO4 + CO2
線香花火中の炭粉が混合した硫肝は、溶融状態では盛んに酸化を受けて硫酸塩やチオ硫酸塩に変化していくものと思われますが、この時に硫肝内部から炭粉が酸化されながら二酸化炭素と共に突出してきたものが松葉花火のもとになるものと思われます。
以上、幾つかの非金属がアルカリに溶ける具体例を書きました。要するに、水溶液中であれ溶融塩中であれ、非金属単体はアルカリ中では不安定なため、不均一化反応(自己酸化還元反応)を起こして分解して溶けるわけです。以下にハロゲン単体の場合を示しておきます。
X2 + 2OH- = XO- + X- + H2O
3X2 + 6OH- = XO3~- + 5X- + 3H2O
ジョリィ『非金属の化学』(東京化学同人,1963)と梅津剛吉『家庭内化学薬品と安全性』(南山堂,1990)を、線香花火については清水武夫『花火の話』(河出書房新社,1976)と「化学と教育」(38,97(1990)米田ほか及び39,683(1991)伊藤秀明)を参考にしました。
99A−227
差出人:野中 直彦
送信日:00年2月18日
件 名:酸化数なるもの
こんばんは、野中です。
少し遅いですが、化学1Bで酸化数を教えています。勝手に考えていた、酸化数は整数と思っていたのですが、プロパンの燃焼の式を書かせて、酸化数の変化を追うとCの酸化数は+8/3は→+4に変化します。原子1つに着目しなさいといいながら、どこかこの分数に違和感を持ちます。どう考えればよいのでしようか。
99A−228
差出人:山本 喜一
送信日:00年2月18日
件 名:RE:酸化数なるもの
こんにちは、山本です。
野中さんから質問があった有機化合物の酸化数についてですが、基本的にはHを+1、Oを−2としてCの酸化数を決めればよいと思います。
つまり、CH4のCは−4、C2H6のCは−3です。そしてC3H8ですが、この両端のCは3個のHと結合していますから−3(両端のCはC2H6のCと同じ結合をしていますね)、そして真ん中のCを−2にすればよいと思います。
こういうふうに決めますと、例えばエタン(C2H6)がエチレン(C2H4)に変わるとき、Cの酸化数は−3から−2になります。つまり、酸化されているはずです。事実、このCはHを奪われていますから、酸化されていますよね。
また、第1級アルコール(−CH2OH)のCの酸化数は−1、アルデヒド基(−CHO)は+1、カルボキシル基(−COOH)は+3になります。この順に酸化が進みますから、酸化数の増加と符合するでしょう。
それから、Cの酸化数が大きいほど(酸化が進んでいるほど)、エネルギーをあまり持っていないと考えられます。すると、油脂と炭水化物のエネルギーの違いも説明できそうです。油脂の場合、多くのCはアルキル基のCですから酸化数が−2。対して、炭水化物では、第2級アルコール(−CHOH)の形になっているCが多く、その酸化数は0です。つまり、油脂のCの方が酸化が進んでいないため、エネルギーをたくさん持っているというわけです。
有機化合物の酸化数の決め方については、確かニフティの方でも話題になりました。そして、上のような考え方で良いような話になったと記憶しています。みなさんは、いかがお考えですか。
99A−229
差出人:野中 直彦
送信日:00年2月19日
件 名:酸化数の解答
山本さん。ありがとうございました。
有機化合物の酸化数は、場所のちがいで数がちがうと考えればよいのですね。
99A−230
差出人:藤田 勲
送信日:00年2月20日
件 名:湯ノ花について
今晩は、藤田です。
湯ノ花についてのご指摘、ありがとうございました。非酵素的に生成する湯ノ花は硫化水素の二酸化硫黄や酸素による酸化で生じるわけでしょうが、酵素的に、すなわち細菌による硫化水素の代謝により生成する湯ノ花もあったんですね。うっかりしていました。失礼しました。
2H2S + SO2 = 3S + 2H2O (非酵素的酸化)
2H2S + O2 = 2S + 2H2O (非酵素的酸化)
イオウ酸化細菌について、私も手許にある資料で調べてみました。この細菌は硫化物、硫黄単体、チオ硫酸そして亜硫酸を最終的に硫酸まで酸化することでエネルギーを得ているようです。酸を排泄するわけですから、酸性(pH=2〜5)の環境を好むことになります。この時の最終的な電子受容体は酸素ですから、イオウ酸化細菌は好気性細菌ですね。イオウが細胞表面に付着しないことには、この細菌はイオウを亜硫酸に酸化するイオウオキシゲナーゼという酵素が働けないわけですから、せっせとイオウを沈積しているのでしょう。酸性という環境は、おそらく負電荷を帯びたイオウコロイドを細胞表面に凝集させるのに適しているものと思われます。
@H2S = S + 2[H] (イオウ酸化細菌による代謝)
AS + O2 + H2O = H2SO3 (イオウオキシゲナーゼによる酸化)
BH2S2O3 = S + H2SO3 (チオ硫酸の不均一化反応)
CH2SO3 + H2O = H2SO4 + 2[H](イオウ酸化細菌による代謝)
D4[H] + O2 = H2O (電子伝達系を経て最後に酸素で酸化される)
結果として、硫化水素、イオウ及びチオ硫酸を代謝する場合のトータルな反応式は次のようになります。
H2S + 2O2 = H2SO4 (@+A+C+Dより、硫化水素の代謝)
2S + 3O2 + 2H2O = 2H2SO4 (A+C+Dより、イオウの代謝)
H2S2O3 + 2O2 + H2O = 2H2SO4
(A+B+C+Dより、チオ硫酸の代謝)
ところで、イオウ酸化細菌が生育しやすい所は温泉もあるでしょうが、他に露天掘りの炭坑やイオウ鉱床を含む鉱坑、それから黄鉄鉱の層などイオウ源を含む水のある所では、酸素があればたいていイオウ酸化細菌が活躍していて硫酸酸性の環境を作っているようです。なお、この仲間には酸素のない条件の時には、モリブデン(Y)イオンや鉄(V)イオンで硫黄を酸化するものもいて、古細菌というのは生き延びるために多様な代謝形式を備えているようです。
2FeS2 + 7O2 + 2H2O = 2FeSO4 + 2H2SO4
(イオウ酸化細菌による黄鉄鉱の代謝)
地表に露出した硫化鉱床の破壊は空気中の酸素により非酵素的に起こるばかりではなく、イオウ酸化細菌によって促進されるわけですね。その結果、黄鉄鉱の鉱山から流れ出る排水は硫酸酸性(pH=2〜4)の鉄(U)イオンを含みますので、きれいな淡緑色になるそうです。よく硫酸鉄(U)の水溶液を作る際に、加水分解に続く酸化を防ぐ目的で硫酸を加えますが、黄鉄鉱の排水中の鉄(U)イオンはこの条件を満たしていますからきわめて酸化されにくいと言えます。
ところが、このような環境に好んで生育し、安定な鉄(U)イオンを好気的に酸化することでエネルギーを得ている細菌がいます。それがイオウ酸化細菌の仲間の鉄酸化細菌です。イオウの代わりに鉄(U)イオンを酸化するようになったイオウ酸化細菌ですね。
4FeSO4 + 2H2SO4 + O2 = 2Fe2(SO4)3 + 2H2O
(鉄酸化細菌による鉄(U)イオンの代謝)
この細菌も電子伝達系はチトクロム系酵素で、この過程でNAD(P)HとATPを生産し、最終的に酸素が還元されて水を生成します。同時に生成する鉄(V)イオンは細胞外へ排泄され、細胞外層に沈着します。鉄(V)イオンは酸性下でも鉄(U)イオンより加水分解しやすいため次第に水酸化鉄(V)として沈殿して、鉱山廃液は赤褐色に変化してくることになります。鉄酸化細菌の中でも繊維状で鞘のあるスフェロチルス属という細菌では、排泄された鉄(V)イオンは酸化鉄(V)として鞘の上に沈着するのだそうです。イオウ酸化細菌と鉄酸化細菌は、自然界ではありふれた元素である硫黄と鉄を栄養源にして共存していることになるわけです。
ところで、これらの好気的な条件で活躍する細菌以外に、酸素不足の還元的な環境ではイオウと鉄を巡って別な細菌が活躍しているようですが、その話は次回にしたいと思います。なお、四ヶ浦さんの疑問点、有機物で鉄(U)イオンを還元できるのかについても次回考えたいと思います。これが可能なら単体の鉄を生成する細菌がいることになりますね。
99A−231
差出人:林 正幸
送信日:00年2月20日
件 名:酸化数に対する考え
こんばんは、林です。
酸化数に関しては、97年9月にもかなり突っ込んだやり取りをしています。それを読み返してみると、酸化数に対する私の考えもさらに変わったなと感じました。当時は現に教科書にもしっかり出てくるから、酸化数を何とか評価できないかという立場でした。しかし今はもっと懐疑的になっています。先日の「酸化と還元、および電子やり取り」の生徒アンケートを紹介したメールでも次のように書きました。
<引用>
大まかに言うと、まず酸素原子のやり取りを酸化還元の概念と結んで扱い、次に電子やり取りをイオン化傾向、電池、電気分解と多様に扱い、最後に酸化数で電子やり取りも酸化還元に組み込む展開です。正直、最後の部分は不必要と考えているので、わずか1時間で終了します。
<以上>
山本さんがアルコール、アルデヒド、カルボン酸に触れています。でもこれは酸化数で言い換えなくとも、アルコールは酸素と反応してカルボン酸になるのですから、その方が分かりやすいと思います。また油脂と炭水化物についても、後者がより多くの酸素原子と化合してすでにその分エネルギーを減らしていると説明すればよいと思います。酸化数に置き換えると抽象度が高くて、かえって形式的理解に留まるのではないでしょうか。
次に藤田さんの「硫黄酸化細菌や鉄酸化細菌」の話は、またまた面白く読みました。しかしひとつ質問があります。
<引用>
よく硫酸鉄(U)の水溶液を作る際に、加水分解に続く酸化を防ぐ目的で硫酸を加えますが、黄鉄鉱の排水中の鉄(U)イオンはこの条件を満たしていますからきわめて酸化されにくいと言えます。
<以上>
酸性下ではなぜ鉄(U)イオンが酸化されにくいのでしょうか。
さて各論「非金属元素の単体と化合物」に随分とてこずり、やっと2日前にホームページ上で1年前のものと入れ替えることができました。結果としてケイ素の部分が相当に多くなりました。そして各論は奥が深くて面白みがある、各論は勝負どころだと思いました。機会がありましたら、読んでみて意見を聞かせてください。
ではまた。
99A−232
差出人:山本 喜一
送信日:00年2月20日
件 名:先週の新聞から
こんにちは、山本です。
藤田さん、相変わらずよく調べていますね。あっちこっちの化学の本を引っぱり出して、メールを書いている姿が浮かびます。私はそんなにたくさんの本は読まないのですが、新聞にだけは目を通すようにしています。目を通すと行っても、学校であき時間に見出しを斜め読みするくらいですが、けっこう面白い記事に出合うものです。今日は、そんな記事を紹介したいと思います。( )は私の感想です。
「池に10万倍濃縮の魚」(2月17日、千葉日報)
土壌に含まれるダイオキシンが、土の微粒子に付着し、エサと一緒になって魚の体内に入り、蓄積されることがわかった。研究したのは愛媛大の脇本教授たちで、5年がかりの調査の結果。土壌のダイオキシン濃度の基準を決めたときは、土壌が直接人体内に入り込むことだけを想定していた。こういう形で魚に濃縮されることは考えてなかった。ただ、土壌はそう大きな発生源だとは言えないというのが、環境庁土壌農薬科の話。
(分解されにくいダイオキシン、いろいろなルートで生体濃縮されるものですね。かつて水田には、ダイオキシン入りの農薬が散布されていました。その土壌から魚へのダイオキシンの移行は、本当に問題ないのでしょうか。)
「家庭用の焼却炉から高濃度ダイオキシン」(2月15日、朝日新聞)
都環境研の調査。家庭用の焼却炉で材木やベニアを燃やしたときは、ダイオキシンが1ng/m^3だったが、塩ビを1%混入すると200ngに上昇。焼却灰中のダイオキシン濃度も高くなった。この実験結果から計算すると、東京ドーム内で塩ビ製の卵パック1個を燃やすと、ダイオキシン汚染は環境基準(0.6p
g)の2倍になる。
(やはりゴミを家庭で燃やすのは問題ですね。特に塩ビはだめでしょう。ただ、塩ビ業界からは、高温で適正に焼却すればダイオキシン発生はおさえられるという反論も出されていますが・・・。)
「ホルマリンで海を汚すな」(2月18日、毎日新聞)
西日本のトラフグやヒラメ、カンパチなどの養殖場で、ホルマリンが使われている。ホルマリンはトラフグのエラにつく寄生虫を駆除できる。しかし、トラフグ養殖場の近くで真珠貝が大量に死滅する事件が起き、その原因物質としてホルマリンが疑われている。またホルマリンは海を汚染し、トラフグに残留するおそれもある。「天草の海からホルマリンをなくす会」という会が実態を知ってもらうため、東京で集会を開く。
(シックハウスの原因にもなっているホルマリン。海でも使われていたとは・・・。そういえば今日、NHKで抗生物質をエサに混ぜた養鶏、養豚農業が紹介されていました。その抗生物質によって、耐性菌が生み出されているという話でした。)
「欧州、脱原発へ一歩」(2月15日、毎日新聞)
スウェーデンで、初めて原発が閉鎖された。しかし、それに対する国民の抵抗も大きい。スウェーデンでも雇用や経済問題を理由に、再三延期された経緯がある。
(日本でも、もんじゅやJCOの事故で、本気になって脱原発を模索する動きがでているようです。2月19日の日経には、日本がこれまで石油に代わるエネルギーとして原発、そして核燃料リサイクルしか考えてこなかったこと。でもこれからは、風力や太陽光などの研究にもっと予算をさくべきであるという意見が載っていました。いずれにしても、エネルギーを湯水のように使いながら生活することなんか目指すべきではないですよね。つつましく、自然を怒らせないように生きて行くべきでしょう。)
99A−233
99A−234
差出人:山本 喜一
送信日:00年2月21日
件 名:RE:酸化数にかんする考え
こんにちは、山本です。
林さんは酸化数をあまり評価しない立場になったようですね。私は逆に、97年のメール交換以来、酸化数を見直しています。あの時にも書きましたが、電子の移動があっても酸化還元と呼ばない反応がありますよね。例えば、ベンゼン環に、ある官能基が置換した場合を考えてみます。その官能基と結合したCは、酸化または還元されたといえるでしょう。でも、他の5つの炭素には酸化還元は起こっていませんよね。だけど、それらの炭素の電子雲は明らかに変化しています。ベンゼン環がオルトパラ配向とか、メタ配向などを持つようになるのですから。
また、
2HBr + Cl2 → 2HCl + Br2
という反応がありますが、このときのHの電子雲もHBrのときよりはHClの方が薄いはずですよね。でも、Hは酸化も還元もされていません。
化学変化が起これば、必ずと言って良いほど、個々の原子の電子密度は変化するのではないかと、私は思ってます。中和反応でも、沈殿反応でもそうでしょう。そういう化学変化のうち、原子の酸化数が変化する反応だけを取り上げて、酸化還元反応といっているのではないでしょうか。
2原子分子の場合、酸化数が変わるかどうかは、相手の原子によります。A−Bという化合物があって、A−Cになったとします。このとき、Aの酸化数が変わるのは電気陰性度がB>A>Cのときか、C>A>Bのときに限られます。B>C>AやA>B>Cなどの時はだめですよね。この場合、ある原子Aが電気的に陽性(陰性)から陰性(陽性)に変わったときだけを酸化還元と呼んでいるわけです。そして、そういう変化をしたとき、酸化数も変わるわけです。
繰り返しになりますが、化学変化が起これば個々の原子の電子密度は必ず変化する。だけど、酸化数の変化という一線を越えた反応だけを酸化還元という。これが、今の私の理解です。いかがでしょうか。
99A−235
差出人:杉山 剛英
送信日:00年2月23日
件 名:東レ理科教育賞もらいました
杉山剛英です。
本年度の東レ理科教育賞本賞をもらいました。
高校生物「音源定位実験」
高校地学「写真によるヘールボップ彗星軌道図作製実習」
の2本です。
賞金も2本分で140万円かと思っていましたらなんと70万円で銀メダルも1個です。賞状は2枚いただけますが。こんなことならヘールボップは来年出すんだったと極悪なことも考えたりしたますが、何はともあれ空前絶後のダブル受賞は生涯の記念になります。
99A−236
差出人:山本 喜一
送信日:00年2月23日
件 名:新聞から
こんにちは、山本です。
杉山さん、東レW受賞おめでとうございます。どんな研究だったのか、次のアルケの資料に入れてもらえれませんか。
前回に引き続き、新聞ネタです。
「缶飲料にデポジット制」(読売新聞、2月19日)
今国会に政府が提案する「循環型社会基本法案」の中に、缶ジュースやビールにデポジット制を導入することが盛り込まれている。自民党はこの制度の導入に慎重。
(空き缶・空きビンに限らず、車や家電製品などにも、購入するとき廃棄処理費用を上乗せすべきだと思いますね。捨てるときに処分費用を負担するやり方では、不法投棄が増えるばかりですから。また循環型社会は、消費者の心がけだけで作れるものではないと思いますので、デポジット制のような社会制度を作る必要があるでしょう。したがって、「環境教育」という名目で、生徒に消費者としてのモラルだけを育てようという教育には首をかしげますね。やはり個々の生活から社会に目を向けさせて、循環型社会を目指すなら、どんな社会制度が必要なのか、そこを考えさせなければならないと思ってます。私はこの前、生徒に炭素税の是非を考えさせました。)
「暗黒物質、証拠見つけた」(読売新聞 2月20日)
イタリアのチームが、宇宙の質量の大部分を占める暗黒物質の証拠を見つけた。その粒子は水素原子の60倍の質量であるが、人間の体をも通り抜けられるものらしい。この物質があたると発光するものを用意し、発光量の季節変動を観測した。地球が暗黒物質の流れの方向に公転しているときと、逆らう向きに公転しているときで、その発光量が異なるはずだという仮説を立てて観測。その結果、夏と冬で5%の差が確認できたというもの。ただ、この結果は観測誤差が原因だという意見もある。
(人間は正しく自然を認識しているのだろうか。人間は自然を本当に理解できるのだろうか。こういう記事を読むと、そんなことが頭に浮かびます。「理科教室」2月号にも、和田純夫さんという人が「近代自然科学はいかなる意味で正しいのか」という文を書いていますね。ともかく、人間が科学的に理解できている世界はほんの一部であることは、生徒に教えるべきだと思います。そして、科学的に決着が付かない問いに対しては、人間が人間として答を出さなければならないことを知らせるべきでしょう。科学では答が出ないもの、いろいろありますね。脳死は人の死か、ダイオキシンなどの環境基準は適切なのか、環境ホルモンの疑いのあるものを使い続けるべきかどうか、アルミナベを使っていても本当に大丈夫なのか、電磁波は本当に無害か・・・。あげていけばきりがありませんね。)
99A−237
差出人:林 正幸
送信日:00年2月23日
件 名:生徒からの指摘
こんばんは、林です。
今日から学年末試験です。生徒の質問にうれしい悲鳴を上げています。先週の土曜日も「カップヌードルを食べる3分だけ待ってくれ。」と下校時刻の4時まで、とうとう今日は昼食が家に帰って4時過ぎになってしまいました。家まで車でなら2分と掛からないのが救いです。
そんな中でひとりの生徒から次のような指摘を受けました。
「 CaO + 2HCl −→ CaCl2 + H2O
この反応がどうして酸化還元反応でないのか。酸化カルシウムが塩酸に酸素原子を与えている・・・。」
私たち教師はこの種の問題は酸化数で片づけて納得していますが、考えてみるとこれは酸素原子のやり取りに見えます。たとえば次の反応とどう区別が付くのでしょうか。
MnO2 + 4HCl −→ MnCl2 + 2H2O + Cl2
確かに上は塩基性酸化物と酸の反応で酸素原子のやり取りではない。それに対して下は次のように酸素原子をやり取りしている。
MnO2 −→ MnO + O
O + 2HCl −→ H2O + Cl2
MnO + 2HCl −→ MnCl2 + H2O
しかしこれは生徒にとっては「ためにする」説明に映ります。上の反応式だって同じように書けます。
CaO −→ Ca + O
O + 2HCl −→ H2O + Cl2
Ca + Cl2 −→ CaCl2
酸素原子のやり取りという酸化と還元の概念も、生徒に分かりやすく使いやすいものでなければ教える価値が疑われます。そこで私は下のような反応にはこの概念を使わないようにしようと思います。つまり酸素原子を失う側がそれ以上の変化をしない次のような例に
CuO + H2 −→ Cu + H2O
H2O2 + H2 −→ 2H2O
あるいは酸素原子を得る側がそれ以上の変化をしない次のような例に
SO2 + 2H2S −→ 2H2O + 3S
SO2 −→ S + 2O
2O + 2H2S −→ 2H2O + 2S
NH4NO3 + Zn −→ 2H2O + N2 + ZnO
NH4NO3 −→ 2H2O + N2 + O
O + Zn −→ ZnO
限定するのです。言い換えると、酸素原子のやり取りが明白で、2段階で書き終えられ、それを積み算すれば全体の反応式が完成する例だけを取り上げるのです。酸素原子のやり取り反応とはそういうものだと教えるのです。
酸化マンガン(W)と塩酸の反応を、あるいは銅と硝酸の反応を酸素原子のやり取りとして説明できなくても、構わないと考えます。
ついでながら、マンガン乾電池の正極は「黒鉛(炭素)と酸化マンガン(W)」になっています。理化学辞典を調べてみると、電極とは「伝導体または半導体」という条件が付いています。ということは酸化マンガン(W)は、とくに電池に使う「電解二酸化マンガン」にはある程度は電導性があるのでしょうか。
ではまた。
99A−238
差出人:林 正幸
送信日:00年2月24日
件 名:ヨードホルム反応に関して
こんにちは、林です。
間接的に次の質問を受けました。
<引用>
生徒から質問を受けたのですが、「ヨードホルム反応において、エタノールから出発する場合、酸化されてアセトアルデヒドになるなら、なぜさらに酸化されて酢酸が生じないのか。」
<以上>
ヨードホルム反応では、ヨウ素・ヨウ化カリウム水溶液に十分な水酸化ナトリウム水溶液を加えて試薬とします。そしてアルデヒドを酸化して検出する銀鏡反応も、フェーリング反応も塩基性で行います。ヨードホルム反応の方が起こりやすいと答えればそれまでですが、反応機構的に説明できないものでしょうか。
ではまた。
99A−239
差出人:杉山 剛英
送信日:00年2月24日
件 名:次号で送ります
東レの内容は次号で皆様にお送りします。
でも東レはお金があるんですね、授賞式は私と妻と娘(5才んので無理に頼みました)と学校長が招待されました。
99A−240
差出人:山本 喜一
送信日:00年2月24日
件 名:Re:生徒からの指摘
こんにちは、山本です。
林さんの所の生徒の指摘は、なかなか鋭いですね。
CaO + 2HCl −→ CaCl2 + H2O
なるほど、この反応は酸素のやりとりに見えますよね。
でも、私はやはり酸化数を付けて、これが酸化還元反応ではないことを説明するでしょうね。高校では、酸素のやりとりから電子のやりとりに定義が変わったわけですから、矛盾も出て来るんだと言って。化学反応を分類するとは、数多くの化学反応を相手にして、どこからどこまでを酸化還元反応にするか、どこからどこまでを酸塩基反応にするか・・・、というように線を引く作業だと思います。酸素のやりとりという線を引いたとき、上の反応は酸化還元に入るのかも知れません。でも、酸化数の変化という線を引いたときは、はじき出されるということ
ではないでしょうか。
酸化還元を酸素のやりとりから電子のやりとりに代えると、何か本質的なことをつかんだような気がします。酸素のやりとりが起こる反応すべてがそこに含まれ、より深い認識を得たような気がします。でも、最近私は、それは本質的をつかんだのではなく、単に酸化還元反応を分類する枠組みを変えただけではないかと思っています。酸素のやりとりという枠を捨て、酸化数の変化を伴う電子のやりとりという枠を持ち込んだだけではないかと。
そう思うようになった一つは、電子が移動する反応すべてを酸化還元反応といっているわけではないことに気づいたからです。例えば、メタンが次のように変化したとします。
CH4 → CH3I → CH3Br → CH3Cl
この一連の変化でCは、どんどん電子密度が小さくなります。つまり、各反応で電子の移動があるわけです。でも、どこかで線を引いて酸化還元反応を指定しなければならないとします。そのとき、エイッとばかりに、酸化数の増減がある反応に線を引いているのだと思います。これは、生物を種類分けすることと似ています。本来、連続的に変化しているものの中で、人間が区別する線を引くわけですから。
二つ目は、電子の移動はルイス酸塩基でも起こるからです。
H+ + H2O → H3O+
この反応では、OからH+に配意結合する電子が渡されていますよね。でも、酸化還元反応には入れていません。こうなると酸塩基反応と酸化還元反応の区別さえあやしくなってきます。
このように、酸化還元を電子の移動と考えても、他の反応と酸化還元反応を本質的に区別することはできません。ですから、とりあえず電子の移動、それも酸化数の変化を伴う反応を酸化還元にしようと決めているだけではないかと思います。もちろん、酸素の移動と考えていた時代より私たちの方が広い視野を得ていますが。
そう考えますと、林さんの生徒が指摘した冒頭の反応に対して、「酸素のやりとりでいえば酸化還元反応でも良いと思う。でも、酸化数の増減という定義になったのだから、酸化還元ではないんだ」という説明でよいような気がします。いかがでしょうか。
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