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99A−181
差出人:山本 喜一
送信日:00年1月12日
件 名:溶鉱炉での反応について

こんにちは、山本です。
 藤田さんと林さんのやりとりを読ませてもらいましたが、教科書にはどう書いてあるのだろうと思って、今日、学校で調べてみました。
 溶鉱炉の中で起こっている反応として、「鉄鉱石がCOで還元される反応」と書いてある教科書と、「鉄鉱石がCOやCで還元される反応」と書いてある教科書の両方がありますね。私が見た限りでは、前者の方が多いようです。
 次に、図説はどうだろうと思って何種類か調べているうちに、かなり詳しく書いてあるものを見つけました。浜島書店の「ニューステージ化学図表」’99年度用です。その136ページには、溶鉱炉の図とともに次の5つの反応式が書かれています。式は番号の小さい方が溶鉱炉の上(低温側)、大きい方が下(高温側)です。
<引用開始>
  @ Fe2O3 + CO → 2FeO + CO2
  A FeO + CO → Fe + CO2
  B C + CO2 → 2CO
  C FeO + C → Fe + CO
  D 3Fe + 2CO → Fe3C + CO2
<引用終わり>
 そして、説明文には次のような記述が見られます。
<引用開始>
 コークスは炉の下部から吹き込まれる熱風中の酸素などと反応して一酸化炭素
を生じる。一酸化炭素を含む熱い気体は激しい上昇気流となって炉内を吹きのぼ
り、鉄鉱石を溶かしながら還元する(間接還元)。
 @+A×2 Fe2O3 + 3CO → 2Fe + 3CO2
 溶けた鉄は炉の中を豪雨のように流れ落ちる。
 下部ではコークスの炭素によって還元される(直接還元)。
 @+B+C×2 Fe2O3 + 3C → 2Fe + 3CO
<引用終わり>
 この本を見る限り、藤田さんの指摘のように、高温側ではCによる還元、低温ではCOによる還元が起こっているようです。では、冒頭に書いたように、溶鉱炉の中では「鉄鉱石のCOによる還元反応」が起こっていると記述している教科書が多いのはなぜでしょうか。私は、Fe2O3から間接還元によって生成されるFeの方が、直接還元によって得られる量よりも多いためではないかと思います。ですから、溶鉱炉の中における主反応といえば「鉄鉱石がCOによって還元される反応」となるのではないでしょうか。
 では、また。


99A−182
差出人:藤田 勲
送信日:00年1月12日
件 名:山本さんの返信を読んで(2)

今晩は、藤田です。
 山本さんの返信に改めてコメントしたいと思います。
(1)アルカリをどう教えるのかという点に対する山本さんの見解について
>それ以上のこと(有機化学工業とアルカリの関係まで)をも「酸と塩基」の単元で
>持ち込み、生徒に納得のいく説明ができるかどうか、私には自信がないし、そうす
>べき理由もつかんでいないわけです。
 私は、有機化学工業でアルカリが大事な働きをしているから、学習の初期の段階でもアルカリはタンパク質、油脂、多糖を溶かすと教えるべきだと言っているのではないのです。
 家庭にある有害な酸は主にトイレ用洗剤(10%塩酸)に限られるのに対して、アルカリは乾燥剤(生石灰)の他に、台所用、排水パイプ用、トイレ用(いずれも1〜5%水酸化ナトリウム)という風に広く洗浄剤として使われている事実があります。しかも、酸は組織タンパクの変性による凝固壊死を起こすのに対して、アルカリはタンパクの融解や脂質のケン化による融解壊死を起こすのが特徴です。つまり、酸傷害が接触組織より深くは進みにくいのに対して、アルカリ傷害は組織深部に到達してその障害の程度も強いのです。これはアルカリの性質から理解できることですね。
 事実、新聞などで報じられるアルカリ洗浄剤による家庭内での事故例を見ると、赤ちゃんが換気扇ルックを腿にかけて重度のやけどを負ったとか、同じく赤ちゃんが味付けのりの乾燥剤を乾燥剤をしゃぶっていて手のひらに植皮手術が必要なほどのやけどを負った、というようなひどい例が目立ちます。「アルカリは怖い」からもう一歩進んだアルカリに対する化学的な理解が、こういう事故を未然に防ぐ第一歩ではないでしょうか。私はこういう観点からアルカリの重要性を指摘したつもりです。
(2)岩石は塩か塩基かという点に対する山本さんの見解について
>地殻を作る「塩」が加水分解してアルカリ性を示すのであれば、地殻は塩基といっ
>て良いのではないでしょうか?塩基性岩や酸性岩に希塩酸(希硫酸だったか?)を
>加えて数日おくと、pHが高くなるという実験を野曽原さんがやっていましたよね
 例えば、酢酸ナトリウムという塩は加水分解してアルカリ性を示しますが、酢酸ナトリウムは塩基と言うでしょうか。加水分解して酸性を示す塩化アンモニウムは酸とは言いませんね。同様に、岩石はあくまで加水分解してアルカリ性を示すアルミノケイ酸塩なのです。野曽原さんの実験は、加水分解してアルカリ性を示す程度が酸性岩より塩基性岩の方が大きいと言うことを示したのであって、岩石はあくまで塩として扱っているのではないでしょうか。塩基性岩は酸性酸化物の二酸化珪素が少なく、金属酸化物が多い塩のことですね。岩石は固溶体ですから組成がいろいろ変化しうるわけですね。
 「酸と塩基」に対するその他の部分のコメントは、山本さんの忠告に従って時間がとれた時にしたいと思います。


99A−183
差出人:林 正幸
送信日:00年1月13日
件 名:「黒い炎」など

こんばんは、林です。
 冬休み明けで気ぜわしい毎日が続いています。風邪も流行していますので、お互いに注意したいです。
 「黒い炎」について、改めて1年前の一連のメールを読み返してみて、よく理解できていなかったり、行き違いがあったりしていると感じました。今回の私の問題提起も、正確を期すために自分のメールを引用しつつ、実はその一部を修正して書いていて誤解を与えたようです。
 私が1年前に「分からなくなりました」と書いた最大の理由は、藤田さんの1月10日付メールの次の部分に
<引用>
 D線の光は山本さんの書いているように、Na原子の3p軌道から3s軌道に電子が失活するときにでる光です。3p軌道に励起される時に受け取ったエネルギーが熱エネルギーであれば、3s軌道に失活するときには光としてエネルギーが放出されます。これが炎色反応ですよね。この時、熱を放出して3p電子は失活するでしょうか。答えはノーだと思います。
 これと同様に、D線で光励起された3p電子は失活するときには、同じ波長の光を放出して失活することはなく、熱を放出して失活する、すなわち衝突失活するのだと思います。
<以上>
山本さんが「分かりました」と答えている点でした。いったい光励起された3p軌道の電子が、光励起されたことを「記憶」していて、必ず熱放出で失活するということがあるのだろうか。
 要するにナトリウムランプからろ紙の炎を通過して観察者の目に向かうD線は、炎の中のナトリウム原子を光励起し、その一部は熱的に失活し、残りは再びD線を放出するのでないですか。ただし再放出されたD線は散乱されて目にはほとんど届かなくなる。つまりろ紙の炎はナトリウムランプによってオレンジ色がより明るくなることはほとんどない。
 私が1年前に言いたかったのは、あまりうまく表現していませんが、ろ紙の炎は明るいナトリウムランプを背景にすると、もともと暗いから、そして明るい光が同色であるから、黒く見えるのだ、ということだったように思います。何はともあれ、これが「黒い炎」の本質ではないでしょうか。そういう理解でよいでしょうか。
 次に「製鉄の主反応」についてです。平衡論的には藤田さんの書いていることを受け入れます。ただし、それとは別に反応のメカニズム(機構)からとらえる場合はどうでしょうか。コークスが鉄鉱石と接触して直接的に反応する機会はあまりないように考えます。やはり生成した気体の一酸化炭素が還元反応をして、生成した二酸化炭素がコークスで一酸化炭素に戻されるのではないでしょうか。その意味で一酸化炭素を主たる還元剤として反応式を書くことは許されるなと考えました。
 一度にあれこれ書きますが、山本さんの1月6日付メールの次の部分ですが
<引用>
 こうして2学期のプリントをながめていますと、やはり私の授業は「いかに分かりやすく教えるか」という私なりの工夫の連続だと思えてきました。良く、「分かりやすい授業を心がけるよりも、ものと遊ぶことを大切にして、遊びから生徒が何かをつかめばよい」という声もありますが、限られた授業時間の中で、こちらの意図を伝えるには「分かりやすさ」の追求は必要なことだと考えます。
 「生徒の認識の順序性を考え、学問の系統性を意識して、分かるように教える」と言うと、アルケとは違う教え方のような気がしますが、私は一理あるのではないかと思えてきました。要は分かるように「何を」教えるか、それが焦点でしょう。(後略)
<以上>
「生徒の認識の順序性を考え、学問の系統性を意識して、分かるように教える」が、アルケと違う教え方とは思いません。かって私も「系統性」に批判を加えたことがありました。それはある種の系統性以外は間違いであるような論調があったからです。思えばそれはとくに「学問の系統性」を重視したものでした。授業における系統性は、生徒の学力に応じたり、現代社会の課題に沿ったりする部分も重要です。教師個人の得意分野を中心に系統性を組み立てることも許されると思います。どの場合も「分かりやすく」という工夫は外せません。私自身もそのための努力を怠っていないつもりです。
 しかし他方で「(前略)、ものと遊ぶことを大切にして、遊びから生徒が何かをつかめばよい」という視点も大切です。これは生徒のさまざまなとらえ方を尊重するということにもつながります。
 最後に、高校3年生にメールで「フルオレセインの蛍光と構造の関係が分からない」という質問を受けて困っています。どう説明したものか、誰か助けてください。
 ではまた。


99A−184
差出人:藤田  勲
送信日:00年1月13日
件 名:RE:「黒い炎」など

こんばんは、埼玉の藤田です。
 「製鉄の主反応」についての林さんの見解についてですが、速度論的には賛成です。固体のコークスが固体の鉄鉱石を直接還元するには接触面積が問題になりますね。それよりは、気体の一酸化炭素が鉄鉱石を還元する方がその還元力が高温では落ちるとしても早いでしょうね。
 それにしても、炭素還元するが故に高温融解して炭素を溶かし込んだ鉄(セメンタイトFe3C、炭素分4.3%)を、再び酸化して余分な炭素を取り除いて炭素分0.2%の鋼を作る方法は、何ともエネルギーのロスを伴う無駄な方法のように思えますね。現在、これに替わる製鉄法もあれこれ研究されているようです。確かプラスチックによる還元法も研究されていたはずだと思いましたが、「化学と教育」(1998,9,10月号)には、DIOS法というのと水素による還元法が載っていました。なお、これには山本さんが調べてくれた説明文とほぼ同じ説明文も載っています。
 これに対して、たたら法は砂鉄と木炭を使い、しかも比較的低温で還元するため、収率は悪いがリンや硫黄を含まず、炭素濃度も1.3%と低い鉄が作れたようです。でも、時代が戦争、そして大量生産、大量消費に向かってまっしぐらでしたから、すたれたのでしょうね。この辺りは不勉強でよく分かりませんが、そんな気がします。
 では、今日はこの辺で終わりにします。


99A−185
差出人:山本 喜一
送信日:00年1月13日
件 名:黒い炎について(2)

黒い炎について(2) こんにちは、山本です。
 林さんから、藤田さんの1月10日付メールの引用の後、私が「分かりました」と答えていると言う指摘がありました。「えー、そうだったっけ」と思って読み直してみましたら、私のメールの文章が悪くて誤解を与えていたことに気づきました。
 私が「分かった」と言ったのは、自分で黒い炎についてあれこれ調べてみて納得のいく答が見つかったということで、藤田さんのメールに同意したということではありませんでした。続いて
<引用開始>
私もD線で励起されたナトリウムの3d電子は、光を出して基底状態に戻るので
はなく、熱にしているのではないかと思っていました
<引用終わり>
と書きましたが、これは黒い炎という現象が起こっているとき、炎色反応を起こしているナトリウムにD線が照射されている状態を思い浮かべながら書いた文で、光で励起されたナトリウムは熱で失活し、熱で励起されたナトリウムは光で失活するということを述べているるわけではありません。去年のメールと見比べながらでないと分かりにくいと思いますが、行き違いがあったようですので書きました。
 林さんの黒い炎の説ですが、はやり太陽黒点と同じ原理で説明しているように思えます。炎色反応を起こしている背後から、D線が照射されているわけですから、炎色反応の方が光が弱いから黒く見えるというのは、やはり違うのではないかと思うのですが。


99A−186
差出人:山本 喜一
送信日:00年1月14日
件 名:RE:山本さんの返信を読んで(2)

こんにちは、山本です。
 再び、酸と塩基についての返信です。
(1)アルカリが生物体にとって危険なものであることを強調すべきだ、という点では、私も藤田さんも同じだと思います。ただ、その危険性をどれくらい深く(広く)教えたいか、というところで違いがあるわけでしょう。でも、これはそれぞれの考え方(価値観)の問題で、どちらかが正しくて、どちらかが間違っているというものではないと思います。
 タンパク質だけではなく、脂肪や炭水化物に対するアルカリの作用のことにも触れて、アルカリの危険性を教えようとする藤田さんの考えには、藤田さんらしいこだわりを感じました。藤田さんは、日常生活のどんなところに化学的な知識が顔をのぞかせているのかということを教えることに、化学の授業の価値を見いだしているのだと思います。私は、塩基の危険性についてはポイントだけ触れる程度にして、酸性酸化物のところでNOx問題から見えてくる車社会を考えさせるために、できるだけ時間を残しておきたかったわけです。
(2)ブレンステッドの定義から考えても、アレニウスの定義でも、酢酸ナトリウムを塩基、塩化アンモニウムを酸と言っても間違いではないと思います。でも、教科書の書き方で言えば、前者は「塩基性の塩」後者は「酸性の塩」と言った方が、なじみがありますね。
 酢酸ナトリウムが「塩基性の塩」なら、地殻も加水分解してアルカリ性を示しますから、「塩基性の塩」の仲間と言えると思います。ですから、私が次のようにHPにアップした内容は、これでよいのではないでしょうか?
<HPより>
問2 大まかに言って、我々が生活している環境である大気、海(水)、地殻は
それぞれ何性か。   (空気・・・酸性、海・・・中性、地殻・・・塩基性)
<以上>
 これに対して、藤田さんは1月9日のメールで『私は「空気・・酸性、海・・塩基性、地殻・・中性」という立場です。』と書いていますので、首をひねったわけです。地殻が酸か塩基か塩かと聞かれれば、教科書の書き方で言えば「塩」と言った方がよいと私も思います。でも、何性かと言われたら、やはり「塩基性」ではないでしょうか。


99A−187
差出人:藤田 勲
送信日:00年1月15日
件 名:山本さんの返信を読んで(3)

こんにちは、藤田です。
(1)アルカリの働きに対する教えたい内容の違い、強調したい点の違いは、まさに個性、価値観が現れますね。私は確かに生活の化学を目指しているわけです。化学なんて本の中の学問で、生きていく上で何の関係もないと思っている生徒に、化学の知識を身につけると、生活が少しばかり豊かになり、賢い消費者になれるよ、ということを日常の色々な生活体験の中から見つけだして強調したいわけです。
 このことと社会的な話題を取り上げることとは矛盾するどころか、相互に補いあうものですが、授業時間上では比重のかけ方に違いがでてきて当然でしょう。これは学校の状況などで違ってくるわけです。山本さんの「酸性酸化物のところでNOx問題から見えてくる車社会を考えさせるために、できるだけ時間を残しておきたかった」という考えは理解できます。山本さんが開発したザルツマン試薬を使ったNOxの実験は、私も前の学校でやったことがありますし、生徒に与えるインパクトの大きい実験ですね。
(2)次に、地殻が塩基性の塩か塩基か、ということについてです。物質を「酸、塩基、塩」という分け方をした場合に、地殻はどれに分類されるのかというと、やはり地殻は塩になるでしょう。地殻は水に溶けにくいケイ酸塩だが、長時間かけて少しずつ加水分解して溶けてアルカリ性を示す、と私は答えたいと思います。たとえば、アルバイトと呼ばれるナトリウム長石が雨水で加水分解してカオリナイトができる反応は、次のように考えられています(松尾禎士『地球科学』講談社サイエンティフィク,1989)。いわゆる化学的な風化作用ですね。
2NaAlSi3O8 + 2CO2 + 11H2O
       == Al2Si2O5(OH)4 + 2NaHCO3 + 4H4SiO4
 したがって、何性かと聞かれたら塩基性となります。その意味では「地殻・・・塩基性」という山本さんの指摘は正しくて、私の「地殻・・・中性」は明らかに間違いですね。失礼しました。同様に、山本さんの「海・・・中性」は間違いで、正しくは「海・・塩基性」でしょう。例えば、上記の反応で生じる炭酸水素ナトリウムが地殻から溶け出し、海では炭酸水素イオンが加水分解してアルカリ性を示していると思います。また、石灰岩から溶け出す炭酸水素イオンも無視できないでしょう。いずれにしても、海に多数溶けている塩(陽イオンや陰イオン)のうち、炭酸水素イオンが塩基性を示す原因イオンのようです。なお、海水中の硫酸イオンや炭酸イオンの一部は2価の陽イオンとMgSO4やCaCO3のようなイオン対を作って溶けているそうです。


99A−188
差出人:山本 喜一
送信日:00年1月15日
件 名:鉄鉱石の直接還元

こんにちは、山本です。
 藤田さん、酸と塩基のコメントをありがとうございます。時間がないどころか、毎回いろいろな本から引用を持ってきて、すごいですね。泉のように引用文献が出てきますね。
 溶鉱炉の反応についてですが、私も調べてみようと思ったのは、コークスと鉄鉱石が固体どうしで反応するのではないかと思ったからです。そうであれば、林さんや藤田さんが書いているように、接触面でしか反応しないはずなので、この反応速度は問題にならないくらい小さいはずですよね。
 でも「ニューステージ化学図表」には、『一酸化炭素を含む熱い気体は激しい上昇気流となって炉内を吹きのぼり、鉄鉱石を溶かしながら還元する(間接還元)。』という説明があります。
 これを読んで、間接還元が起こっているところで、鉄鉱石が溶けていることを知りました。ですから、間接還元を受けなかった鉄鉱石は、そこからしたたり落ちて、もっと高温のコークスと接触し、直接還元を受けているのではないかと考えました。つまり、直接還元は、固体のコークスと液体の鉄鉱石の反応だと理解したわけです。
 そして今日、それを確かめるために、藤田さんが紹介してくれた参考文献(「化学と教育」46,582)を読んでみました。そこには次のような記述があります。
<引用開始>
 コークスは炉の下の波口から吹き込まれる熱風や酸素と反応して一酸化炭素や
水素を発生する。このガスは上昇気流となって炉内を吹き上がり鉄鉱石を溶かし
ながら還元していく(日産1万トン)。
 溶けた鉄は下方へ流れ落ちコークスに接触して直接還元される。
<引用終わり>
 私は『溶けた鉄は下方へ流れ落ち』は誤りで、『溶けた鉄鉱石は下方へ流れ落ち』が正しいのではないかと思います。同じページに直接還元反応として、次のような反応式も出ていますので。
     Fe2O3 + 3C → 2Fe + 3CO
 もしそうであれば、やはり、直接還元は固体のコークスと液体の鉄鉱石の反応だと理解できると思います。


99A−189
差出人:藤田 勲
送信日:00年1月16日
件 名:RE:鉄鉱石の直接還元

今晩は、藤田です。
 反応がすぐ返ってくるのは嬉しいですね。がんばって書いている甲斐があります。手持ちの資料にあれこれ当たって調べるのは嫌いではありませんが、それを一つの資料にまとめる作業はなかなか骨が折れますね。これは山本さんも同じでしょうが。
 ところで、溶鉱炉の反応ですが、これは本当に固体のコークスと液体の鉄鉱石の反応でしょうか?鉄鉱石は炉内で融解しているでしょうか?
 還元帯と呼ばれる部分の温度は500〜1200℃程度ですから、鉄鉱石の融点から考えてこれは無理なように思えます。鉄鉱石の融点はFeOが1370℃、Fe2O3が1550℃、Fe3O4が1538℃です。また、Feのそれは1536℃、4.2%炭素が溶けた鉄でも、もっとも低くてそれでも1147℃だそうです。これでは鉄鉱石自身の融解は無理でしょう。
 ここで注目したいのが鉄鉱石を焼結鉱やペレットに前処理してあるという点です。2〜3mmの粉にした鉄鉱石に、同じく粉状のコークスや石灰石を混ぜて焼き固めてから15〜30mmの大きさに粉砕したのが焼結鉱、200メッシュ以下の微粉鉱をこれらの副原料と混合して15〜30mmの大きさ成形してから焼き固めたのがペレットというそうです。
 微粉末同士を混合、焼結してあるわけですから、鉄鉱石とコークスの固相反応は著しく早くなるものと思われます。表面積を小さくしようとして合体する駆動力(表面エネルギー減少)と反応によりもっと安定な化合物に変わろう力(自由エネルギー減少)が同時に働くのが、焼結した場合の固相反応の特徴ですね。溶けた鉄や溶けた鉄鉱石が炉内をしたたり落ちるのではなく、鉄と還元途中の鉄鉱石が混じった多孔質の 粉体が雪や霰のように落ちてくる、というイメージではないでしょうか。その途中でさらに焼結を続けて大きな固まりになるものもあると思われますが。そして、高温の炉下部でコークスによる還元を受けると考えればよいと思います。
 このように考えると、直接反応は鉄鉱石が固体でも十分に速く進行し、鉄鉱石の融解を考える必要はないものと思われますが、いかがでしょか。


99A−190
差出人:杉山 美次
送信日:00年1月16日
件 名:RE:鉄鉱石の直接還元

遅くなりましたが、みなさん、あけましておめでとうございます。 神奈川の杉山です。
 メ−ルへの挨拶は、久しぶりです。いつもみているだけですが、「鉄鉱石の直接還元」の林さん、藤田さん、山本さんのメ−ルの話しが面白く、 感想を一言、書きたくなりました。
 特に、藤田さんのは、話題に入れるように、わかりきったことでも丁寧に解説していただいてあるので、予備知識がなくても、大変興味深く読まして頂きました。大変でしょうが、これからもよろしくお願いします。(もちろん、林さん、山本さんの文章も丁寧ですが)
 感想だけでは、と思って少し調べてみました。

 溶鉱炉内の反応
 上から投入されたコ−クスは、羽口(波口?)の付近に下がると、熱風中の酸素
で酸化され(燃えて)、CO2を発生して高温になる。CO2は熱せられたコ−ク
 スによって還元されてCOとなって上昇する。一方鉱石は下の式のように下が
 ってきて、温度が800℃くらいになるまで間に、COによって還元され鉄とな
 る。
    Fe3O4  +CO  → 3FeO+CO2  (550℃)
    FeO   +CO  → FeO+CO2   (800℃)
 ・1100〜1200℃になると溶融して液状になる。
 ・1400℃ぐないのところでは、SiO2、CaO、Al2O3などと結合して溶融
  したスラグになる。
 共に炉床に落ちて、銑鉄とスラグに分離される。

 よって、固体のコ−クスと溶融した鉱石の反応ではないと思います。
参考文献、30年くらい前に出版して「化学の研究」旺文社、p.208


99A−191
差出人:林 正幸
送信日:00年1月17日
件 名:電池実験に対する感想など

こんばんは、林です。
 山本さん、「黒い炎」どうやらやっと理解しました。いやはや、始めに炎がまわりのナトリウムランプより暗い必要があることにこだわり過ぎて、それが足かせになっていました。そうです、肝心なのは炎が背景のD線を吸収することですよね。
 そして溶鉱炉での還元反応ですが、藤田さんや杉山(美)さんの考えに同意しながら、「直接還元」という用語があることに引っ掛かっています。私もこの用語を鉄鋼の本を調べて見付けていました。あちこちにこの用語が書かれているということは、山本さんの考えを支持するようにも思えます。専門書に当たる必要があるかも知れません。残念ながら化学便覧応用編には鉄鋼関係は載っていませんね。
 今日は「いろいろな電池」という実験に対する生徒の感想などを紹介してみます(2クラス分のまとめ)。取り上げたのは
(a)ボルタの電池
(d)ダニエル電池(ろ紙使用)
(c)鉛蓄電池(ろ紙使用) の3種です。ちなみに、この前に「33円電池の」実験をやり、電池の原理は話してあります。

「(a)の実験で過酸化水素を加える前、ソーラーモーターはまわるのに豆電球がつかないのはなぜ? また、過酸化水素を加えると豆電球がつくのも疑問。
 こんなに簡単に電池が作れるとは思ってなかった。
 起電力が1.082とはどのようなっことを表しているのだろう。」
「電池ってけっこう簡単に作れるものだなって思ったりした。でもこれをはじめに発見した人はほんとすごいって思いました。なんか、この実験をいかして、日常生活にも行かせないものかと思いました。」
「(前略)
 (b)のダニエル電池の実験で最後に犬のおもちゃがでてきておもしろかった。犬のおもちゃは、作ったダニエル電池が3つつないであった。1つだけだとやっぱり動かないのだろうか。」
「私たちが電池をつくって豆電球がついたのはすごいと思った。
 鉛蓄電池で、手まわし発電機でまわしているときとても手がつかれた。でも自分がまわした分だけ自動にまわっているのを見てとてもうれしかった。」
「(前略)
(b)の実験はセロハンが無いとどうなるのだろうか。
(c)の実験はなぜ速く回すと回転数が多くなるのだろう。グリップをはなした時の電子の動きが知りたい。」
「(a)の実験で、豆電球をつけるためには、過酸化水素水を加えるのが、不思議だった。
(b)はろ紙の枚数は関係あるの?
(c)はハンドルをまわしてないのに、かってにまわっているのはすごいと思った。」
「こんなにいろいろな電池があるなんて知らなかった。
(b)の実験で、飽和硫酸銅をつかったのはなぜかしりたい。
(c)はいわゆる充電電池かと思った。」
「(c)の実験で手で回して、かってに回る回数が、10回まわして、9回のとき、19回のとき、24回のときがあって、規則性はなかった。
(後略)」
「同板が正極になったけれど、亜鉛板が正極になることはないんですか。」
「自分たちで電池が作れるなんて、すごいことだなあと思った。
 そしてその自分たちが作った電池を集めて直列につなぐだけでおもちゃまで動かせるなんてすばらしいと思った。」
「(c)の実験で、手回し発電機をまわして勝手にまわっている途中でクリップをはずしたら止まって、つけたらまたまわった。」
「(a)はなぜ過酸化水素水を入れたことによって、豆電球の明かりがついたのか。そのとき一応銅板を取り出したのはなぜか。
(b)はダニエル電池のダニエルって・・・何だろう。
(c)でできた電気はどれくらいもつのか。」
「ボルタの電池は昔中学の技術の時間に見たので、実験が楽だった。
(c)の実験で、何故同種類の金属で反応が起こるのかが不思議だった。」
「金属と溶液で電池ができるなんてびっくりした!!」
「(前略)
(a)の実験では液体が色が最後に変わった。何かがとかたのか?」
「犬のおもちゃがすごく変だった。
 発電機が思っていたよりも多く自分で回ったことにびっくりした。(始めは回した数の1/5くらいと思っていたら、ほぼ1/2だった。)
(後略)」
「乾電池の電池でなく、薬品を使っても電池ができたのでびっくりした。
 なぜプラス鉛板は茶色くなったのか。」
「セロハンはどんなはたらきをしているのだろうか。」
「化学反応でこんなに強い電池ができるなんてすごいと思う。」
「電池にはいろいろあるんだと思った。すごいなあ。」
「こんなにかんたんに電池はできるものなんだと思った。他にも電池を作る方法はいくらでもありそうな気がした。」
「(a)の実験で、過酸化水素水を入れた後、炭酸飲料のようになって、鼻につんとくるにおいがした。」
「手回し発電機はこうつなぐと(図あり)なんで重たくなるのか? で、はなすと、シャカシャカ回った。
(後略)」

 生徒たちの豊かなとらえ方には感動します。そしてとても応え切れません。ではまた。


99A−192
差出人:中台 文夫
送信日:00年1月18日
件 名:RE;小野さんにもメールを!

こんばんは 中だいです。毎日読ませて頂いています。
 大好きな鉄鋼の話で、ぜひ書きたいと思うのですが、書く暇が無くて、失礼をしています。皆さんは、どの様にして時間をつくっているのでしょうか。私は、毎日事務ばかり、日に日に馬鹿になっています。
 鉄の還元は、COによる間接還元とCによる直接還元とあるようですが、藤田さんがおっしゃるように高炉ではCOのようですね。ところが、高殿では、これが違うようなんです。こんな話はどうでしょうか。まあ、調べられたら報告します。
 今日も時間がないので、挨拶がわりにいぜん書いたものを流します。変なことをやっているとお思いでしょうが、いざやってみると、知らないことばかりで大変なのです。どなたかの役に立たないかなと思うのですが。如何でしょうか。
 「千葉県で青少年のための科学の祭典-千葉自主大会」を始めて5年になります。千葉の手配師やら、営業マンやら、何かと有り難くない名前で形容されて久しくなります。別にお金をもらっているわけでもなくいつでも辞められるから気軽に続けていますが、そのような中、知ったことを1つ2つと思いつくままに書いてみたいと思います。つまらない人は読み飛ばして下さい。ほんのちょとしたことですが、実は教えてくれる人は居ないし大変なことなんです。
 神奈川の杉山さんとは、別の方法で開催しているような気がしています。もし、異なっていたらコメントをお願いします。
 イベントを開くに当たっては、まずお金がいります。お金を企業から集めるのに、協賛金と言います。主旨に賛同してお金を出してくれるような企業、団体を探して、協賛金を募ります。当然趣意書(どうしてイベントを開くのか、そのわけ:自分の熱い思いを伝える)、団体の性格やメンバー、予算案などが必要です。場所によっては、メンバーの仕事先、役職や住所も提出を求められたり、団体の規約の提出を求められたりします。また、会社や団体に突然押しかけるわけですから名刺は必需品で出来るだけ自分を証明するものも持っていきます。企業は利益の追求だけでなく、社会的な法人としての性格もあるわけですから、利益を社会に還元するように働きかけることは必要です。とはいっても、営業マンや、総務などの人にたどり着くまでには守衛さんなどの難関があり、いちいち主旨を簡単に説明します。「なんだ金とりか」等と言われてもぐっと我慢します。社会に出るわけですからアポイントは必要ですが、我々教師が動けるのは四時過ぎが多く、この時間のアポは嫌がられることが多いようです。また、相手が会社ですから、その時間に時間を空けて待っていますので、遅刻は厳禁です。学校のように御免御免では済みません。アポを取るよりも、『教師なので昼間に外には出られないので飛び込みました。』と訳を言って総務や、営業に飛び込むのも一つの手です。八割り方の企業では会ってくれました。今アポを取って下さいと、門の前で2時間待たされたこともありました。これも我慢ですね。 お金を頂いたら、領収書を切ります。自分のものになるわけでもないのに丁寧にお礼を言う必要があります。出す必要のないお金を分けてもらうわけですから。当然、イベントが終わったら、お礼状と、ガイドブックなどを郵送いたします。
 協賛の他に、後援というものがあります。教育委員会や、日本化学会などがよく後援に着いていますね。これは、協賛が『お金は出すが、口は出さない』のに対して、『お金は出さないが口は出す』というタイプのものです。イベントの評価や信用を高めるために取れると協賛がもらいやすいと言う側面はありますが、純粋にイベントを行うことだけを考えると、あまり必要ないと言うこともできるものです。小・中学校の先生は、その属す市町村の教育委員会の後援が取れているほうが、動きやすいそうです。日本化学会や物理教育学会の後援なんて言うのもありますね。後援は、一度取ってしまうと、続けて取ることは簡単ですが、初めて取るときは大変です。趣意書、予算書、団体の確認(メンバーの仕事先、役職や住所、団体の規約の提出、過去の業績、他に後援を申請した所)など、結構知らないとアタフタします。必要な人は、見本がありますのでご連絡下さい。但し、各県市町村で用紙の異なり、また、説明に来い等と手間のかかることを覚悟して下さい。
 イベントの終了後は、報告書と、決算書の提出が必要です。(裏情報:収入と支出が0になるようにすることが必要です。)そうそう、監査や、規約の提出を求められることがあります。これは、財団などに協賛金を申請するときにも必要で、まともなところでは、1年前から(1年前が普通だそうです)計画書を提出して、協賛金をお願いします。企業は数カ月前で大丈夫です。学校出入りの業者さんに協賛を頼むのは、たかりのようで本来の形ではないと考えますが、必要悪でしょうか。
 共催は、イベントを行う主催者が2つ以上あるものです。共同で主催するわけです。どちらがメインになるかを相談で決めます。
 イベントの1/3は協賛金集めです。これが我々には、厄介で、社会人とは、話し方から違っている自分に出会います。先生という立場にぬくぬくしていて、お山の大将になっている自分、叩かれることのない立場の危うさを感じます。それで本当に良い教育は出来るのでしょうか。社会と、20年前に見た大学のイメージで大学を眺めていませんか?社会人に、そう、営業マンを相手に、今、千葉県の普通の高校の420人の平均的高校生のうち、何人が3年間で物理を選択すると思いますか?という問を発していて、自分が、20年前の会社のイメージを持って、20年前の大学の、20年前の最先端を引きずっていることに気がつきました。
 協賛は、財団や、協会などに頼むには、1年前からの申し込みが必要ですし、実績や、役員表、内規などが必要で、組織がしっかりとしていることの裏づけが必要になります。半年前でも受け付けてくれるところもありますが、それ以下は見あたらないようです。
 株式会社などの、会社は、税金対策になるということで、バブルがはじけるまではよく協賛を受けてくれたそうですが、今は、20社に1社くらいではないでしょうか。しかも、広告無しの1万円出してくれればよしとしなくてはいけません。というわけで、教科書会社とか、教材やさんなどが、教師の毒牙にかかっています。この場合は、2カ月前でも話が通れば出してもらえるというメリットもある。(でも、少し気がひける)。資金の100万円くらいは集めないと祭典が開けません。先生方の材料費、ガイドブック費、ポスター代、当日の昼食代でもう100万は無くなってしまいます。とてもではないが、全額の協賛金は集められない。
 有料にしてもいいかなとも思うのですが、協賛が取り難かったり、後援が取り難くなったりしないか検討を要すことと、収支の計算をよほどしっかりとしないといけないのではないか、教師の片手間では荷が重すぎるような気がします。ただでさえ、電話やファクシミリが沢山来ますし、使用頻度はものすごくなりますので、兼業願いを出せとか、教育委員会に掛けるとしても、電話はテレカで公衆電話にしてくれとか、注文はいっぱい来ます。祭典の仕事は、できるだけ5時過ぎにやるようになりますし、目立たないようにするのが大変になります(それでも、十分目立ってしまいます)。  つづく。

 ついででなんですが、銅板への錫のどぶ付けが上手く行きません。明日フラックスを使ってみようと思いますが、どなたか、上手い方法を知りませんか?


99A−193
差出人:藤田 勲
送信日:00年1月19日
件 名:バッテリーが上がるとは?

今晩は、埼玉の藤田です。
 小野さんもいよいよメールを始められるんですね。理論及び実践面共にすぐれた成果をお持ちの小野さんの参加、心より歓迎します。これからのメールの発展がいよいよ楽しみになってきました。それから神奈川の杉山さん、お褒めと励ましのメールありがとうございます。さらに中臺さん、多分実際にはここには書けないもっとつらいこともあるのでしょうが、科学の祭典の苦労話おもしろかったです。メールは時間があるときに書きます。
 今日は皆さんに表題の件で質問があってメールを書きました。スキーに行ったときになどに、車のバッテリーが上がってエンジンがかかりにくくなるトラブルが起こることがありますね。このバッテリーが上がるということは、バッテリ−内がどういう状態になっていることを指しているのでしょうか。私の勉強不足ですが、前からの疑問でした。同僚から聞かれたこともあり、いくつか本は調べてみたのですが、ズバリ説明してあるものが見つかりません(1冊ないことはないのですが)。どなたかこの件について情報や文献をお持ちの方はいませんか、教えてください。
 それから、一方的な質問だけでは心苦しいので、林さんのメールにあった「フルオレセインの蛍光と構造の関係が分からない」という高校生からの質問に、とりあえずの回答をしたいと思います。これは一筋縄ではいきません。
 フルオレセインは一般にトリフェニルメタン染料と呼ばれ、もっともポピュラーなのがフェノールフタレインです。そして、フェノールフタレイン合成に使う原料のフェノールをレゾルシンに変えたのがフルオレセインです。この結果、中央炭素原子に結合している2つのフェニル基のo,o`-位置でOH基が脱水縮合してレゾルシンが酸素架橋し、フェノールフタレインにはない新しい環を生じます。この構造をキサンテン環と言い、このタイプの染料を特にキサンテン染料と呼んでいます。中央炭素原子のパラの位置に助色団としてOH基を持つ酸性型のフルオレセインなど以外に、キサンテン染料にはNH2基を持つ塩基性型のローダミンなどがあります。
 フルオレセインの誘導体には、そのNa塩のウラニンの他、ウラニンを臭素化したエオシンやヨウ素化したエリスロシンがあります。さらに、原料の無水フタル酸をテトラクロロ無水フタル酸に変えてレゾルシンと縮合さるとテトラクロロフルオレセインが得られますが、このテトラクロロフルオレセインを臭素化したものをフロキシン、ヨウ素化したものをローズベンガルと呼んでいます。
 さて、肝心の蛍光ですが、これらフルオレセインの誘導体については次のような結果です。
    フルオレセイン       緑色蛍光
    ウラニン          緑色蛍光
    エオシン          緑色蛍光
    エリスロシン        蛍光なし(食用色素赤色3号)
    テトラクロロフルオレセイン 蛍光なし(?)
    フロキシン         蛍光なし(食用色素赤色104号)
    ローズベンガル       蛍光なし(食用色素赤色105号)
 では、フルオレセイン誘導体の化学構造と蛍光の間に何か関係を見いだせるでしょうか。私にはどうも関係が見いだせないという感触がしています。もっともまだ下調べが不十分ですから、はっきりしたことは言えません。蛍光や発光は個人的には大好きで、色々な実験もし、色々な本も買い集めて拾い読みはしているのですが、未だに構造式と蛍光の一般的な関係について論じた本を見たことがありません。これも単にわたしの勉強不足だろうとは思いますが・・・。とりあえず『けい光現象』(徳丸克己、共立出版,1975)が参考になると思います。


99A−194
差出人:野中 直彦
送信日:00年1月20日
件 名:ますますE−mail

本当にすごいいきおいでE-mailが発展しています。
HP(ホームページ)も充実しているようです。
私もHPを立ち上げたいと思ってもう5年もたってしましました。
そろそろ考えなくてはとおもっています。
来週末に山口へ全教全国教研ででかける予定です。
レポートの内容は文化祭です。


99A−195
差出人:藤田 勲
送信日:00年1月22日
件 名:トイレの汚れは塩基性?

今晩は、埼玉の藤田です。
 私は以前のメールで、山本さんの酸・塩基のテキストに対するコメントとして次のように書きました。
>トイレの洗剤に塩酸が含まれているのは、汚れが塩基性だからでしょうか。におい
>はアンモニア臭が主でしょうが、黄ばみなどの固形物はウロビリンや尿酸などの有
>機物の塩、それから硫酸やリン酸などの無機の塩でしょう。塩酸はこれらの塩類を
>溶かすのではないでしょうか。
今日は「トイレの汚れは塩基性?」について、さらに調べたことを書いてみます。
(1)尿の一般的な成分
 尿は基本的にはタンパク質と脂質を除いた血液(血漿)の全ての成分を含む。濃縮と再吸収により血液とその比率は変わり、5〜10%の固形成分を溶かした水溶液になる。その固形成分の60%ほどは尿素、クレアチニン、尿酸そして馬尿酸を主とした有機物で、残りの40%程が塩化ナトリウムの他、リン酸塩、そして硫酸塩を主とした無機塩である。
 有機物の多くや無機成分の一部は、体内で不必要になった代謝物や解毒代謝物、そして必要量を上回る摂取や体内での過剰生産をした場合の排泄物である。また、無機成分の多くは主に血液の浸透圧やPHの維持、調節に関係して排泄された物質である。
 尿素はタンパク質の最終代謝成分で、肝臓の尿素回路でアンモニアから合成される。アンモニアは特に脳にとって非常に毒性が強い。これは、脳内のミトコンドリア内膜を透過したアンモニア分子がα-ケトグルタル酸からグルタミン酸を生成することで、クエン酸回路中のα-ケトグルタル酸を横取りするためである。その結果、脳の主要なエネルギー源であるグルコ−スの酸化速度が低下し、脳はガス欠を起こす。さらに、過剰なアンモニアはグルタミン酸に捕捉されグルタミンとして固定される。この結果、脳に神経伝達物質のグルタミン酸とこれを前駆体として合成されるγ-アミノ酪酸の欠乏をもたらし致死的な精神障害をもたらす。
 クレアチンはクレアチンリン酸になって骨格筋収縮のエネルギー源として働いているが、クレアチニンはこのクレアチンリン酸の最終代謝物である。クレアチニンは腎臓では再吸収されないため、血清中のクレアチニンの濃度上昇は腎不全の的確な指標になる。クレアチンはアミノ酸の一種と考えることができ、クレアチンが分子内で脱水してアミド結合による環化をしたものがクレアチニンである。クレアチニンはクレアチンよりも水溶性で、酸と塩を作り、アルカリ中では加水分解してクレアチンに変化する。
 尿酸は核酸中のプリン塩基であるアデニンとグアニンの最終代謝物である。体内のプリン塩基は食事による摂取と体内の核酸の分解による場合があるが、高尿酸血症の痛風は、過剰生産された尿酸がナトリウム塩として血管や組織内に異常沈着して関節が炎症を起こす病気である。尿酸とその塩は水に溶けにくい。
 馬尿酸は肝臓における安息香酸の解毒代謝物である。薬物や食品添加物などとして摂取された安息香酸はグリシンによってペプチド結合を受け、水溶化されて尿中に排泄される。馬尿酸は熱水には溶けるが、冷水には溶けにくい。
(2)尿の色
 尿の淡黄色は尿細管で生産されるウロクロムという色素による。この色素は分解するとアミノ酸を生じる高分子(構造不明)で、わずかに緑色を帯びたウロクロモーゲンの酸化で生じ、さらに酸化されてウロメラニンになりやすい。
 ウロクロムより排泄量は少ないが、より色の濃い色素にウロビリンがある。死んだ赤血球から遊離したヘム色素は、主に肝臓で酸化的に分解され、4個のピロール環が開環して繋がった青緑色のビリベルジン(胆緑素)を経て、黄褐色のビリルビン(胆赤素)に還元され、胆汁色素成分になって小腸に排泄される。ビリルビンは腸内細菌でさらに還元されて無色のウロビリノーゲンになり糞便中に排泄される。しかし、その一部は小腸で再吸収されて肝臓に入り、再びビリルビンになって胆汁に戻り、続いて腸に排泄される(腸肝循環)という過程を繰り返す。。また、ごく一部は腎臓血中に捕捉されて尿中に排泄される。ウロビリンはこの尿中に排泄されたごくわずかな無色のウロビリノーゲンが再び空気酸化されたものである。ウロビリン、ウロビリノーゲンは、共に水に溶けにくくアルカリに溶ける。
 高ビリルビン血症の黄疸は、ビリルビンの生産過剰や肝臓でのビリルビンの腸肝循環が障害を受けた場合に起こる。血中の過剰のビリルビンは組織に拡散して皮膚や粘膜を黄色に染め、尿は暗赤褐色になる。
 なお、食品から取り込んだ体内のダイオキシン類は、血液中のコレステロールに溶けて運ばれ、脂肪組織や臓器間を絶えず移動している。ダイオキシンは極めて安定で肝臓で解毒、すなわち水溶化されて排泄されやすい代謝物になると言うことがない。このため、腎臓から尿として排泄されることはないが、他の薬物などと同様に腸管循環機構に入り込み、肝臓から胆汁と共に小腸に排泄され、そして再び胆汁と共に小腸から再吸収されるというルートを繰り返す。この時、小腸に食物繊維や葉緑素が存在するとダイオキシンが吸着されて小腸からの再吸収が妨げられるため、結果として糞便中にその一部を排出することができる。本来、腸管循環は肝臓から胆汁成分として排泄されたコレステロールや胆汁酸塩を小腸で再び回収するためのシステムである。しかし、薬物が腸管循環に入り込んで生体内での滞留時間が長くなるという問題を引き起こす一方、ある種の薬物では腸内細菌による代謝を受けて再吸収されたうえで肝臓から尿中へ排泄されたり、ダイオキシンのような毒物では再吸収を免れることで解毒に役立つという側面も持つ。
(3)尿のpH
 尿のpHは6.0ぐらいの弱酸性で、食べ物の種類によってpH4.6〜7.8の間を変動する。尿が酸性化している理由は、肝臓で作られたアンモニアをアンモニウムイオンとして無毒化したためである。生体内は絶えずいくつかのアミノ酸からアンモニアを発生する危険にさらされているので、その防御機構が各組織に発達している。肝臓では尿素回路で尿素に転換されるが、腎臓では直接尿中に排泄されてくる。このため、腎臓では尿細管腔中のナトリウムイオンを再吸収するのと交換で、尿細管細胞から分泌される水素イオンでアンモニアを中和してから尿中に排泄している。このアンモニウムイオンが尿中で加水分解して弱酸性になる。
 ところが、長期に放置しておくと細菌による腐敗が起こり、尿素が加水分解してアンモニアを生じるため、尿は次第にアルカリ性になる。
   (NH2)2CO + H2O = 2NH3 + CO2
(4)尿のにおい
 新鮮尿のわずかな芳香臭はインドール環を持つインジカンとその分解生成物による。食物中のタンパク質の分解で生じたトリプトファンは腸内細菌でインドールに分解された後に腸管から吸収され、肝臓で水酸化を受けてインドキシルになる。そして、硫酸エステル化してインジカンになって血中に入り、腎臓を経て尿中に排泄される。インドール誘導体の中には強い発ガン性を示すものもあり、このように、トリプトファンを硫酸抱合で可溶化して尿中に捨てるという代謝過程は一種の生体内解毒機構とも見なされる。
 インドール誘導体はごく少量では花香があるが、濃縮されると強い糞臭に変わる。藍の生葉に含まれるインジカンはインドキシルの硫酸エステルではなくグリコシドのことであるが、微生物による発酵で加水分解されてインドキシルを生じる。藍発酵時の特有の糞尿臭はインドール誘導体による。インドキシルの黄色の水溶液には緑の蛍光がある。尿がわずかに黄緑の蛍光を発するのは尿中に排泄されたビタミンB2とインドキシルによるものと思われる。
 尿にはもう一つ、ケトン体によるにおいが存在する。ケトン体とはアセト酢酸とその代謝物である3-ヒドロキシ酪酸、およびアセトンの総称で、そのにおいは甘酸っぱい果実臭である。
 脂肪酸酸化によって生じた大量のアセチルCoAは、クエン酸回路で処理しきれなくなると肝臓でアセト酢酸として蓄積し、さらに還元を受けた3-ヒドロキシ酪酸や脱炭酸を受けたアセトンに転換される。アセト酢酸と3-ヒドロキシ酪酸は肝臓から血流にのって末梢組織に移行し、再びアセチルCoAとなりクエン酸回路でグルコースや遊離脂肪酸に優先して酸化されるが、その一部は利用されなければ尿中に排泄される。こ れがケトン体によるにおいを作る。
 糖の供給が不十分になる飢餓時や利用ができなくなる糖尿病では、肝臓はケトン体を盛んに燃料として各組織に再分配するため、血中のケトン体の濃度は非常に高くなる。末梢組織での酸化する能力を超えるほどの、肝臓におけるケトン体の過剰生産は尿中への大量のケトン体の排泄を促す。ケトン体は酸であるため、血中や組織中ではアシドーシスが併発する。
(4)放置による尿成分の変化
 尿は水温低下と水分蒸発により溶解度の低い化合物が沈殿する。有機成分では尿酸とその塩、ウロビリンとその塩、クレアチニンなどであり、無機成分ではリン酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩などである。また、腐敗菌の増殖により尿は濁ってくる。
 淡黄色だった新鮮尿は、空気酸化を受けることでウロビリノーゲンがウロビリンになったり、微生物による腐敗でインジカンがインドキシルになることなどにより濃い黄色に変色する。
 ケトン体とインジカンによるわずかな芳香臭は、尿酸菌や尿素菌の増殖でアンモニアによる刺激臭に変わる。そして、尿は弱酸性から弱アルカリ性に変わる。
(5)まとめ
 したがって、サンポールによる便器の洗浄は塩基性のクレアチニンが塩を作って可溶化するほか、リン酸塩などの無機塩は洗い流せ、アンモニア臭も消せるものと思われます。しかし、尿酸やウロビリンのような酸性の有機物はアルカリ性の洗浄剤の方が洗い落としやすいかもしれません。つまり、黄ばみはサンポールではなかなか落ちないということになりそうです。
 以上、長々書きました。本来なら、構造式と一緒にレポートとして送るべきものでしょうが、とりあえずメールで送ることにします。機会があれば皆さんからの意見も加えて書き直したいと思います。
 今回はずばり尿のことが細かく書いてある本が私にはなく、しかもこの分野は基礎知識があまりないものですから、調べるのにかなり苦労しました。したがって、間違いや勘違いも多々あろうと思います。ご検討ください。星和夫『臨床検査総論』(医歯薬出版,1987)、由岐英剛『臨床化学講論』(廣川書店,1988)、中島邦夫『新生化学入門』(南山堂,1992)、ハーパー『生化学 原書21版』(丸善,1988)、レーニンジャー『新生化学』(廣川書店,1984)、ギブソン『入門薬物代謝』(講談社,1987)、宮田秀明『ダイオキシンから身を守る法』(成星出版,1998)を参考にしました。


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