ひとつ前のメール(99A−135)に戻る。
99A−136
差出人:山本 喜一
送信日:99年12月3日
件 名:東海村臨界事故報告会
こんばんは、山本です。
先週の水曜日、盛口さんからの誘いで、原子力資料室主催「東海村臨界事故報告会」に行って来ました。アルケのメンバーでは、盛口さん、野曽原さん、町井さんの姿があり、日教組理科分科会の助言者山口幸夫さんにも会いました。
また、この報告会には資料室元代表の高木仁三郎氏も顔を見せ、会場からの質問に答えていましたが、印象に残ったことを箇条書きにしてみます。
・科学技術庁は、この事故での被ばく者をJCOの工場内にいた人や消防士などに限定して69人とし、臨界終了作業をした人や、周辺住民を被爆者とはしていない。水抜き等の臨界終了作業をした人たちは「計画被ばく者」と呼び、緊急時には必要な被ばくであるとして事故による被ばくと区別している。また、周辺住民は、被ばく量が少ないために、被ばく者とはしていないらしい。
・臨界事故でどのくらいの放射線が出たのかについてのデータが、すべて公表されているわけではない。科学技術庁は、被ばく者数、放射線量とも低い値を公表し、事故を小さく見せかけようとしているようだ。
・国会では原子力災害が起こったときの対策法が改められたが、それは原発を続けていって、もし被害が起こったときにどうするかというものだ。日本の政府には、原発をやめるという気持ちは全くない。
・スウェーデンでは原発が1基廃炉になった。日本にそういう動きはない。こういう事故が起こっても、大規模な原発反対デモが起こるわけでもない。ヨーロッパ諸国とのこの違いは、日本の議会が弱いことが原因。日本の議会は、官僚主導型だ。
・原発は、下請けの現場労働者の被ばくが必要不可欠だ(被ばく量の合計値は年々増加している)。多くの労働者の被ばくの上に構築された原発というもの、そしてそれが作った電気を使っているわれわれの生活というもの、そこを見直すべきではないだろうか。
・原発を止めても、夏場の数日、時間にすれば十数時間分の電力が足りなくなるだけだ。代替エネルギーや省エネによって、原発は止められるはず。原発を止めてどうするかについては、今月下旬に出る岩波ブックレットに高木仁三郎さんが詳しく書いた。
これらは、今私の頭の中に残っているものを文字にしたものですから、間違いがあるかも知れません。あしからず。
99A−137
差出人:鈴木 久
送信日:99年12月5日
件 名:RE:東海村臨界事故報告会
山本喜一さん こんばんは 鈴木 久です。
貴重な報告ありがとうございました。高木仁三郎さんの岩波新書を読ませていただいていたので余計身近に感じます。
「プルトニウムの恐怖」もよい本でしたが、「市民科学者として生きる」は彼の行きざまがひしひしと伝わってくる読ませる本でした。
ちなみに、最近日本における原子力発電の黎明期を牽引していった「仁科芳雄」を読んでいます。彼がいかに敗戦後の日本に賭けていたか、そのために多くの有為な人材をかばい、敗戦後すぐにスタートを切り始めたか。日本のハイゼルベルグを思わせます。
メールの具合がなかなかよくなくてごぶさたしております。
99A−138
差出人:林 正幸
送信日:99年12月7日
件 名:塩に関してなど
こんばんは、林です。
4日(土)は次男の結婚式でした。「およばれ」なら気軽ですが、自分の息子の結婚式となるとそうは行きません。媒酌は妹夫婦に頼んだので比較的気楽でしたが、受付にお礼を言い、息子の職場の上司や仲間そして新婦の家族や親戚などにあいさつしてまわり、最後に両親への花束贈呈や参列者への挨拶・お礼があり、せっかくのご馳走も半分食べるのがやっとでした。(家内もウエディングケーキを食べそこなったと嘆いていました。)
しかし同時に、息子たちを祝福してくれる人たちに感謝の気持が高まり、なにやら胸に迫るものがありました。そして息子が「私たちが皆さんと共にあることを改めて感じました。」と挨拶したとき、親として満たされた気分になりました。
さてその間にもメールが届いています。山本さん、新教育過程の情報をありがとう。私にとっては退職後のことなのでついつい勉強をさぼっていますが、良い面も悪い面もあると思います。圧力の単位をパスカルに統一するのは賛成ですが、たとえばmmHgは圧力の特徴を反映しています。圧力の概念形成まで抜けてしまわないようにしたいものです。もっとも大切なことは、文部省がいかに切り張りをやろうとも、私たちが化学教育の全体像と視点を見失わないようにすることではないでしょうか。
杉山(剛)さん、東レ応募のうち生物の「音源定位実験」とはどんな実験ですか。
藤田さんが塩生成の楽しそうな実験について書いています。私は中和の実験は現状では中和滴定という計測的なものになっています。もちろんこれも意味があると考えますが、実験としては演示で済ませ、生徒実験はもっと楽しめるのものを投入しています。そして塩の加水分解は化学TBでは深入りしないで、化学Uで取り上げています。その際には、酸性紙・中性紙などの情報は盗ませてもらうつもりです。ちなみに、酸性紙・中性紙の実例を教えてもらえませんか。ついでに、塩生成にもどりますが、「塩化アンモニウム」が金属凝固のモデル実験となるのはどういうことですか。
東海村臨界事故に対する「投げ込みプリント」はすでにメールで送りましたが、私としては「遷移元素の各論」に原子力問題を組み込みたいと考えています。たしかに国民教養として教える必要があると思います。
ではまた。
99A−139
差出人:野中 直彦
送信日:99年12月7日
件 名:買ってはいけない講演会
今晩は、野中です。
あちこちでおこなわれている買ってはいけない講演会
高山市でもあり、聞きにいってきました。
本多勝一さんが人寄せパンダ。
船瀬さんがべらべらしゃべる。
この企画は、週間金曜日に広告欄がないことで、
商品のことを批判できると船瀬さんが持ち込んだ。
かしこい消費者になって、いい商品をつくらせるようにしたい。
あまりにも、派手なコマーシャルに毒されている。
とのことでした。
本筋は納得できるが、いいかげんなことを言うことはいけません。
赤字の週間金曜日の起死回生の運動になるか。
あちこちで始めて講演会が、どんな形になるか。
いろいろと考えさせられました。
99A−140
差出人:杉山 剛英
送信日:99年12月7日
件 名:音源定位実験
この実験の内容は下記にありますのでご覧ください。
世紀の大発明。杉山管{クインケ管に習って}と名付けましょう(^^;;)。
http://www4.justnet.ne.jp/~barkhorn/home44.HTM
99A−141
差出人:野中 直彦
送信日:99年12月8日
件 名:買ってはいけない(2)
週間金曜日
「買ってはいけない」に洗脳された話(その2)
「買ってはいけない」の主旨は、
あれもだめ、これもだめ
ではなく、わけもわからなく、宣伝にあおられて買っている商品はないだろうかという問いかけである。全く効果はないのに、効くだろうと、チョークの粉を飲まされると同じように買ったりしていることがあるのではないか。
例えばリポビタンD、例えば肌水。
その名前や派手な宣伝で飲めば元気がでる、使えば肌がきれいになると思い込まされている。
愚かなる消費者は、それを買わされている。そのことに気がつきなさいよいう警鐘がこの「買ってはいけない」の本の主旨である。
あっ、これもだめなら、あれもだめだ
と買えるものが何もない。と言うことになってしまう。賢い消費者になることで、本当に必要で欲しい物を作らせるようにしたい。消費までコントロールされているようでは情けない。やっぱり、必要で良い物を買うための情報や知識を身につけることが大切なのです。
逆の「買ってはいけない」は買ってはいけない
は、そのままだと本当に消費が落ちてしまい、売れなくなってしまう。それでは、困るので、「買ってはいけない」の言っていることは、間違いや古いデータだ。また、言っていることは、真実をねじ曲げて買わないように無理にあおっているので良くない。と言おうして、内部矛盾を起こして支離滅裂な内容になっている。だから、どうなんだ、その商品は買ってよいのかと問われると、買わない方がいいとなっているのである。
99A−142
差出人:山本 喜一
送信日:99年12月8日
件 名:木炭パワー?
こんばんは、山本です。
林さん、お子さんのご結婚おめでとうございます。私は、先週の土曜日に、教え子の結婚式に行って来ました。何回出ても、結婚式は良いものですね。
今日の毎日新聞に「見直される炭」という見出しで、木炭のいろいろな効果が紹介されています。吸着作用や、水に入れたときのミネラル補給作用は分かるとして、マイナスイオン効果と遠赤外線効果については、理解できません。どなたか、アドバイスをお願いします。
<引用開始>
マイナスイオン効果
炭から放出されるマイナスイオンは疲労の蓄積を抑制し、大脳を刺激して快適
感をもたらす。腐敗抑制などの効果もある。
<引用終わり>
疑問ですねえ。炭からマイナスイオンが放出されているとしたら、プラスイオンが残り、炭はプラスに帯電した物体になってしまうはずですよね。どういうしくみでマイナスイオンが放出されるのでしょうか?そして、そのマイナスイオンとは具体的に何イオンなのでしょうか?さらに、マイナスイオンが大脳を刺激す
るとか、腐敗を抑制するというのは本当なのでしょうか?
<引用開始>
遠赤外線
炭が出す遠赤外線には温熱効果がある。水の分子集団を細かくするため、風呂
に入れれば体が温まり血行をよくする。調理用に使えば、熱の通りが良くなる。
ご飯の黄ばみなどをおさえ、おいしさが長持ちする。
<引用終わり>
これも疑問ですね。炭はなぜ遠赤外線を出すのでしょうか?物体はそれぞれの温度に応じた電磁波を放出しています。常温の物体なら、赤外線を出していますよね。でもその赤外線の波長は、温度に応じたものであって、物質ごとに違うはずはないはずですが・・・。つまり、炭に限らず何でも赤外線を出していると思うのですが。それから、遠赤外線が水のクラスターを小さくすると読めるのですが、そういうことがあるのでしょうか・・・。さらに、小さなクラスターの水は、体を温める作用とか、ナベの中の食材を暖める作用が大きいというのも本当なのでしょうか・・・。ウーム、理解できませんね。
まあ、新聞記事ですから、そう間違ったことは書かないと思うのですが、私には疑問だらけです。
99A−143
差出人:野中 直彦
送信日:99年12月9日
件 名:買ってはいけない(3)
週間金曜日
「買ってはいけない」に洗脳された話(その3)
この講演会を聞いている最中で、ふとまわりを見ると、なぜか年輩の女性が多い(失礼な言い方で、おばさん)。「買ってはいけないですよ」と言われるたびに、「だから、買ってはいけないでしょう」と言われるたびに、うなずいている姿を見て、ゾーっとした。
法の華の「サイコーですか」
「サイコーです」
「幸せを感じていますか」
「幸せです」と同じではないか。
人々に、これもだめ、あれもだめとあおって因果関係のはっきりしないものも、いっしょくたにして、いけない、いけないを連発するのは変です。
ニセホルモンと言われる環境ホルモンが、体に悪いのわかっています。その濃度がプール一杯に目薬を一滴をたらした程度の濃度で影響がでることもわかっています。だから、といって、まだ、因果関係がはっきりしないものまで、目薬一滴、目薬一滴で危ないと、話をすり替えて、危険だけ大げさにあおることはいけないと思う。
お酒や化粧品の話のときは、まだ、話を半分にしても聞けるが、電磁波の話ではとても信用できない。どこに、そんな事実があり、どこにそんなデータがあるのか疑ってしまう。
人を洗脳しようとするとき、本来は何の関係のない事実をも、その人の勝手な話と関係のあるように事実を並べると、その人の都合のいいような事実にすり変わってしまうのだ。真実は1つではなく、真実は見る人、とらえる人によってねじまげられるものだ。そう思わないと、すぐに洗脳されてしまう。その時は、危ないと気がついてほしいと思います。
あれはだめ、これはいいというのではなく賢い消費者になることが大切なんですね。
99A−144
差出人:林 正幸
送信日:99年12月11日
件 名:比例計算の指導
こんにちは、林です。
先週は実質的に休みが無かったので、インターネットの方の仕事が随分たまっていました。それを整理して、どうやら今から自分のメールが書けます。
比例計算については以前にも書きましたが、もうすこし見えてきたようなので、まとめておきたいと思います。比例概念は微分積分にもつながる重要な概念ですが、そして理科教師にとっては当たり前に感じるものですが、多くの生徒には理科の学習で最大の壁になっています。高校数学では「意外」にも比例概念を教えていません。それは小学校の比例関係から中学校の正比例の関係式までに教えられます。それがなかなか習得されていないわけです。どうしたら良いのでしょうか。
比例概念を正比例の関係式から3つに分けてみました。
(1)y = kx
(2)y/x = k = y'/x’
(3)x= y/k
ひとつは(2)の関係式で、いわゆる比例関係です。時速4km/hで進む人を考えます。1時間に4km進むので、2時間では8kmである。それなら3時間では何km進むか、という問に
1[h]:3[h] = 4[km]:x[km]
という比例式を立て(ふつう単位は付けませんが)
内項の積は外項の積に等しいという「公式」から
x = 12[km]
と答えます。ここで重要なのは小学校では比は単位を揃えて取っている点です。要するに正確に言うと
x/x’= y/y’
という関係式を使うのです。これは多くの生徒が習得している唯一の比例概念です。
しかし私たちが高校で教えたいのは(2)の関係式そのものです。そのために分からせるべきは
(a)単位が異なる2つの量の比が一定になっている
(b)その比は割合ないし倍率の意味で分数で表される
(c)分母分子を入れ替えた逆比も同じように使える
の3点です。
いずれも十分に納得させ、よく練習させる必要がありそうです。速度ができるようになったら密度でも平気であるとは行かないのが比例計算です。それぞれに蓄積していって、それがかなりの量になったときにはじめて、応用が利くようになり「単位を見れば分かる」と言えるようになります。
例題 マグネシウム1gを燃焼させると、酸化マグネシウムは何gできるか。また必要な
酸素は標準状態で何[l]か。(原子量:O=16 Mg=24.3 答は少数
2位で)
まず反応式を書くと
( 2Mg + O2 ―→ 2MgO )
Mg(2)個から MgO が(2)個できることが分かる。
したがって Mg (1)molから MgO が(1)molできる。
Mg 1molは(24.3)gであり、
MgO 1molは(40.3)gであるので
Mg(24.3)gから MgO が(40.3)gできる。
当然に反応する Mg の量が大きくなれば
生成する MgO の量もそれに(比例)して大きくなるので、
Mg のグラム数と MgO のグラム数の比は(一定)で
( 24.3[g]/40.3[g] )になる。
だから Mg 1gから MgO がx[g]できるとすると
次の関係式が成り立つ。
( 24.3[g]/40.3[g]=1/x )
x=1.658・・・
答 1.66g
ふたつは(1)の関係式で、いわゆる「当たり量」です。1時間当たりに4km進むから、3時間では、という問に
4×3 = 12[km]
と掛け算で答えるものです。これはこれでよく訓練しないと習得できない概念です。みっつ目と混同して掛けたらよいのか、割ったらよいのか、となります。私は高校時代に近所の中学生を教えて、ほとほと「分からないんだなあ」と実感した経験があります。とくに公式主義で頭を鍛えずに答を出させることが横行していますので、事態は深刻と言えます。1個5円のものを3個買うときに
5×3 = 15[円]
払うというのは慣れていますが、それと同じだと言って簡単に理解できるものではなさそうです。
私も生徒が分からないとひとつ目の比例関係に逃げて教えますが、当たり量はそれはそれとして高校でも引き続き訓練すべき重要な概念です。物理などで公式を使っていかにも難しい問題が解けているように見えても、砂上の楼閣になっていることが多いと思います。
これと関連して、当たり量そのもの求めることがあります。たとえばモル濃度を教えるとき、私は
溶液1[l]当たりに溶質が何mol溶けているかの数値
として、モル濃度は次の公式で計算できる
モル濃度 = 溶質の物質量[mol]/溶液の体積[l]
とは教えないように、そういう覚え方は避けるように生徒に言います。そしてたとえば2mol/lは溶液1[l]に溶質2molが溶けているという表現と、溶質2molが溶液1[l]に溶けているという表現の両方を用いるようにします。これはひとつ目の計算にとっても効果があると思います。
みっつは(3)の関係式で、もっとも考えにくい概念です。20kmの距離を時速4km/hで進むと何時間かかるかという問に
20/4 = 5[h]
と割り算で答えるものです。これは比例概念が習得できていない高校生には遠いゴールです。私としては、未知数を使う方程式は中学校でかなり訓練されているので、ひとつ目の比例関係に逃げて切り抜けてしまうことが多くなります。
最後に公式もときに利用するという話です。生徒は前に学習した比例概念をあいまいなままに次のものを学習することになるのが現実です。たとえばモル濃度では物質量が使いこなせる必要があります。しかしいちいち復習していては混乱するばかりです。こんなときに前のものは公式を利用して計算させ、本題の比例概念の形成を図ります。
問1 次の計算をせよ。
(1)略
(2)0.5mol/lのショ糖水溶液を250ml作りたい。ショ糖を何g準備すればよ
いか。(C12H22O11=342)
(2)水溶液を1[l]=1000ml作るにはショ糖が0.5mol必要
250mlでは
1000[ml]/0.5[mol] = 250/x
x=0.125[mol]必要
ショ糖0.125molは
0.125×342=42.75[g]
答 42.75g
参考:物質量[mol]の復習をしておこう。
・物質量が等しいとは、「物質をつくる粒子」の個数が等しいことである。
・物質量は、質量[g]を分子量(式量)で割って求められる(n=w/M)。
・質量は、物質量に分子量(式量)を掛けて求められる(w=nM)。
いずれにして比例概念は習得に手間がかかるものと心得て、一段ずつていねいに教えていく必要があると考えます。
ではまた。
99A−145
差出人:藤田 勲
送信日:99年12月12日
件 名:ポリフェノール類の抗酸化作用
ここ数年、お茶やハーブ、ワイン、さらにはチョコレートまで、ポリフェノールとしての効用をうたった商品が多数出回るようになりました。しかし、ポリフェノールの効果については、疫学的な調査や試験管レベルでの実験から導き出したものが多く、動物実験の場合でもその効果を分子レベルで解明して、作用機序まで明らかにできた例はまだ非常に少ないのが現状ですね。
ポリフェノールには抗酸化作用や抗アレルギー作用、抗ガン作用、さらには老化防止作用など、様々な薬理作用が期待されています。その作用機序は大変興味がもたれるところですが、最近、お茶ポリフェノールについて興味深い解説を読みましたので、かいつまんで紹介します。
お茶ポリフェノール、すなわちカテキンは6種類知られていています。このうちエピガロカテキンガレート(EGCG)は乾燥した茶に8%含まれていて、この抗酸化活性はビタミンEやC、あるいは酸化防止剤のBHT,BHAなどを遙かに上回ると言われています。化学発ガン剤により誘発されるラットやマウスの咽頭ガンの発生率を、緑茶2%抽出液は26〜53%抑制し、また、EGCGはガンの浸潤や転移に関係するウロキナーゼの阻害を行い、ガンの生長に必要な血管新生を阻害するかもしれないという報告も出ています。ウロキナーゼは一般的には凝固した血液の再溶解に関わる酵素として知られているものですが、ガンでは異常に発現してその生長に欠かせない役割を担っているようです。
現在考えられている、カテキンの発ガン抑制メカニズムは
@抗酸化作用
鉄(U)イオンや銅イオンは過酸化水素分解の触媒になりますね。この時、反応途中でヒドロキシラジカルのような活性酸素を新たに生じています。これはフェントン反応として知られていますが、このラジカルがDNAを酸化して8−ヒドロキシデオキシグアノシンのような塩基を生じるとガン化を促進します。
この時、カテキン中のB環上の隣り合う3',4'位のOH基は強力なキレーターになり、これらの金属イオンと錯体を作ることで、DNAの酸化損傷を抑制するというのです。 過酸化水素は普段の呼吸でも数%生じていますし、鉄(U)イオンや銅イオンは酵素内にありますから、生体は絶えずDNA損傷の危険にさらされているともいえます。このリスクをカテキンは減らしているということのようです。なお、お茶などの植物染料による木綿などの染色は、まさにカテキンなどのポリフェノールが金属イオンのキレーターになるということを利用しているわけですね。
A変異原のトラッピング
ジメチルニトロソアミンのような化学発ガン物質(変異原)は、代謝過程で生じるメチルカルボニウムイオンが主としてグアニン塩基上のN原子(7位)やO原子(6位)を親電子的に攻撃してメチル化することでガンを発生させることが分かっています。
一方、カテキンA環上には5位と7位にフェノール性水酸基があるため、そのC6位とC8位は強い求核中心となっていて、親電子性のメチルカルボニウムイオンはこの炭素上に親電子置換反応を仕掛けることになります。このようにして、DNA塩基がメチル化されるかわりに、協奏的にカテキンがメチル化されることで、変異原を不活性化してガン化を抑制するのであろうと言われています。
一般に、フェノールのニトロ化はニトロニウムイオンによる親電子置換反応ですが、この時共鳴効果によりオルト位とパラ位の電子密度が高くなるため、2,4,6−トリニトロフェノール(ピクリン酸)を生じるのは高校でも扱われていてよく知られています。
カテキンA環上のC6位とC8位の活性化も、まさにその隣のフェノール性水酸基によるわけで、発ガン性物質によるDNAのメチル化とそのカテキンによるトラッピングは高校レベルの芳香族置換反応として十分に説明可能だと思われます。
B発ガンに関する酵素活性の抑制
C腸内クロストリジウム属細菌の生育阻害
この2つについてはまだ分子論的な解析が十分ではないようですので、説明を省略します。
以上、長々書きましたが、私の興味はあくまで高校レベルで分子論的な解釈ができる分野に限られますが、「買ってよいもの」と「買ってはいけないもの」を化学的に解析して健康で安全な食生活を送りたいと思っています。お茶のカテキン効果については高校レベルの知識でもある程度迫れるのではないかと思っています。
参考にした雑誌
富田勲『化学と工業』1997,6,p834;金武じょう『現代化学』1997,9,p44及びp72;
丸尾文治『化学と生物』1999,10,p676;『トリガー』1998,7,p110;
99A−146
差出人:鈴木 久
送信日:99年12月12日
件 名:生徒の質問
アルケミストのみなさん こんにちは 鈴木 久です。
以下は生徒からの質問です。まだまだ聞きたい質問はあるのですが、今回は1つだけにしておきます。
毛と粉とはなぜ燃え方がちがうのか。
あるいは別の聞き方として
砂糖・エタノールはボーボーと燃えるのに スチールウール・鉄粉はメラメラ、パチパチと燃え方のちがうのはなぜか。
1つは酸素との反応の激しさで鉄粉の方がスチールウールより接触面積が多いので同じ鉄でもちがうと言うことくらいは言ってもよさそうだとは思うのですが。前者についてはどうやって中学生に説明すればよいのでしょうか? お知恵を拝見させてください。
99A−147
差出人:藤田 勲
送信日:99年12月12日
件 名:RE:生徒の質問
今晩は。埼玉の藤田です。
鈴木さんの所の中学生の以下の質問、なかなか鋭いですね。どういったときにこういう質問が出たのですか。できれば知りたいです。私の所では高校ですが、なかなかこうはいかないのが現実です。
<引用開始>
毛と粉とはなぜ燃え方がちがうのか。
あるいは別の聞き方として
砂糖・エタノールはボーボーと燃えるのにスチールウール・鉄粉はメラメラ、パチパ
チと燃え方のちがうのはなぜか。
<引用終わり>
この質問、私は「なぜ砂糖、エタノールは炎を上げて燃えるのか」と取りました。この点について考えたいと思います。
これは表面積の大きさの違いによる反応の激しさもさることながら、砂糖、エタノールは分子性の物質ですから揮発しやすく、あるいは熱分解して揮発性の可燃性有機物を生じやすいため、これに火がついて燃えるためと考えられるでしょう。炎はガス(気体)の燃焼形態です。適当な酸素濃度の時に、拡散混合面でガスに着火することで燃焼の境界面が生じて、これが炎を作るのだと思います。
鉄は金属ですから、この気化する温度は2730℃とべらぼうに高く、とても炎は作れません。その点、有機物は気化、あるいは分解温度が低いために容易に炎を作るのです。木炭でも、安いものは炭化が不十分で有機物が残っているでしょうから初めに炎を生じやすく、ほとんど黒鉛化した備長炭では炎は出ないものと思われます。しかし、その分火はつきにくいでしょうが、持ちはいいはずです。
要するに、有機物は熱すると千切れやすいから激しく燃えたり、炎を作ったりして燃えるのだと教えたいと思います。
ところで、同じ有機物でも尿素は大変燃えにくかったように記憶していますが、これは窒素の生体内の最終代謝物であることも関係あるでしょうが、C原子に較べてN原子の電気陰性度が大きいことが影響しているのでしょうか。メタンに較べてアンモニアは燃えにくいですよね。
また、燃焼中の炎に電場をかけると負極に引かれて曲がることがわかていますが、これは炎に正電荷を持つイオンが多く存在しているからだと言われています。考えてみれば、燃焼反応はラジカルの生成、消滅を伴う激しい連鎖反応です。高温ではラジカルから電子が放出されてイオン化することは十分起こり得ることです。文献によると、CHO+やH3O+、C3H3+などの存在が確認されているようです。それから、放出された電子はやがてどこか適当な場所に落ち着くでしょうから、それに伴う化学発光も起こることになり、炎の色は赤からオレンジ、さらには青などに色づくことになるのでしょう。(『気体の燃焼物理』金原寿郎、裳華房,1985;『火の化学』疋田強、培風館,1982)
99A−148
差出人:鈴木 久
送信日:99年12月12日
件 名:生徒の質問へのお礼
藤田さん さっそく返信ありがとうございます。鈴木 久です。
今度のアルケの資料に送付したのですが、今年は、中2の生徒で質問紙授業を行っています。そのときに出された質問です。燃焼のときに、こうしたものを燃やして見せました。その日の授業の質問だと思います。
99A−149
差出人:山本 喜一
送信日:99年12月14日
件 名:木炭の炎
こんばんは、山本です。
鈴木さんの質問に対する藤田さんの解答について、私も基本的には同じ考えです。気体が燃えるときに炎が出るわけですよね。
ところで、木炭が燃えるときに出る炎ですが、子供のころ、先生から一酸化炭素が燃える炎だと言われた記憶があるのですが、どうでしょうか。七輪なんかで炭を燃やして、送風口から風を送ると大きな炎が出ますよね。風を送ったことによって炭から有機物がたくさん蒸発したというよりは、一酸化炭素がたくさんできて炎が大きくなったと考えた方が納得できると思うのですが・・・。
99A−150
差出人:藤田 勲
送信日:99年12月19日
件 名:RE:木炭の炎
今日は、埼玉の藤田です。
山本さんの木炭の炎についてのコメント、参考になりました。この点について補足説明をする前に、手持ちの資料を拾い読みしてろくに調べもしないで書いたものですから、前回のメールの炎の色の部分に間違いがあることに気づきました。まず、その訂正をしておきます。
炎は赤、オレンジ、黄色、そして時に青や緑の特徴的な色を出しますが、これらの光の多くは化学発光によるものだと言われています。すなわち、炎の中にあるラジカル同士AとBが化学反応により別なラジカルCを生成し、この時に発生した余剰エネルギーεが生成したラジカルCを励起してC*にし、これが基底状態に戻るときに可視光を出して発光するというものです。一般に、ラジカルの解離や再結合を伴う発光の場合、そのスペクトルは熱的励起によるNa原子などの炎色反応の場合と違って連続スペクトルになる場合が多いと言われています。
A + B = C + ε = C* = C +hν
例えば、ロウソクなどの炭化水素が燃えるとき、その炎の中に見られる青緑から緑、黄緑の光はスワン帯と言われるC2分子による発光です。また、青白い炎の中には、青から紫のCH帯、紫から紫外の炭化水素火炎帯と呼ばれるHCO帯による発光も含まれています。もちろん、不完全燃焼の場合には、ガス炎にススの熱振動による黄橙色の連続光が含まれます。
CH2 + C = [C2]* + H2
C2 + 0H = C0 + [CH]*
CH3 + H02 = HCH0 + H20
HCH0 +hν = H + [HC0]*
ついでに、これらのガス中のCH2やCH3、OHやOH2どのラジカルがどのようにして生じるのかを考えてみます。炭化水素の燃焼炎中には
H,O,H2,O2,C2,C3,CH,OH,CO,CO2,H2O,HOH,HO2,C2H,C2H2,HCHO,C5,CH4O2
などのガス(化学種)が含まれていることが確認されていますが、連鎖反応の主役になるラジカルはOHラジカルのようです。
メタンの場合はCH3ラジカルとOHラジカルで、ここからHCHOを中間体として次々に活性なHCOラジカルやHO2ラジカルを生じて反応が進行していくと思われています。この過程で、発光に関係する各種のラジカルや分子種が作られていることになります。
O2 = 2O
O + CH4 = CH3 + OH
CH4 + OH = CH3 + H2O
CH3 + O2 = HCHO + OH (= CH2 + HO2)
HCHO + O2 = HCO + HO2
HO2 + CH4 = H2O2 + CH3
それから、木炭の炎についても私は憶測で書いてしまい、いい加減でした。山本さんの指摘通り、木炭の燃焼ガスはCOのようです。
一般に、炭素は低温で燃えるとCO2を発生し、高温ではCOを生成すると言われています。それは,次の平衡が成立していて低温側ではCO2側に、高温ではCO側に片寄っているからです。
C + CO2 = 2CO ー41kcal
圧平衡定数Kp{(pco)2/pco2}は、500℃で0.003、710℃で1、800℃で12であり、1000℃ぐらいに加熱した木炭にCO2ガスを通すと、そのガスの80%以上がCOガスに変わってしまうことになります。言い換えると、低温ではCOガスが強い還元剤になりますが、高温ではCの方がCO2ガスを還元するほどの強い還元剤になると言えます。昔から木炭が還元剤として金属の精錬に使われてきたのはこのためですね。
したがって、強い風を送るほど木炭の燃焼温度が上がり、COガスがたくさん発生しますから木炭は真っ赤に燃えて、その炎は目に見えて青白く燃え上がることになります。COの炎は励起したCO2からの青から紫外のCO炎バンド(連続光)が中心だと言われています。
CO + O = [CO2]*
なお、木炭の燃焼温度は燃えがらの赤い部分でも700℃、盛んに燃えているときは1000〜1200℃あると言われていますから、木炭の燃焼ガス中にはいつでも50%以上のCOガスが含まれていることになります。今の時代、炭を暖房用の燃料に使う人はほとんどいませんが、中毒には気をつけたいですね。
以上は、岸本定吉『木炭の博物誌』(総合科学出版,1984,p.29)、疋田強『火は語る』(青土社,1984,p.134)及び守永健一『酸化と還元』(裳華房,1972,p.166)を参考にしました。
ひとつ先のメール(99A−151)に進む。
アルケミストの会の
ホームページ
にもどる。
林 正幸と主万子の始めの
ホームページ(to our initial Home Page)
にもどる。