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98A−031
差出人:山本 喜一
送信日:98年9月20日
件 名:凝固点降下の授業

こんにちは、山本です。
 私も林さんのように、今、凝固点降下の部分を授業しています。私の場合、まず盛口さんが開発した「塩水と水を見分ける」という実験で、溶液のいろいろな性質をあぶり出しておいて、次に凝固点降下と溶液の濃度の関係を実験させました。この実験は、いつかアルケの資料として送ったことがあるかも知れませんが、ポリ袋に70mlくらいの溶液(1モル/kgの尿素、ブドウ糖、食塩水溶液)を入れ、それを食塩+氷の寒剤で冷却して、凝固点を求めるというものです。「化学と教育」にこの実験を送ったところ、12月号の小中高のページに載せてくれることになりました。
 この実験後、
(1)溶液の凝固点は溶解している分子やイオンの濃度に関係すること
(2)溶液が凝固し始めてから完全に凍るまで温度が下がり続けるのは、凍った部分から溶質が排除されるので、その分、溶液の濃度が上がるためであること
を説明しました。そして、この二つの知識から何が見えてくるか。今はこっちの方に力が入ります。
 まず(1)に関係して、氷温貯蔵の話をしました。資料は朝日新聞社の科学雑誌「SCiaS」の1997年19月17日号です。米や野菜、果物、魚などを0℃以下だが凍らない温度にさらしておくと、生物体が「凍ってなるものか」という反応を起こし、タンパク質や多糖類を分解して、体内にアミノ酸や単糖類などをたくさん作るそうです。それが、人間にとってはうまみや甘みとして感じられるため、この温度にさらす技術(氷温貯蔵)が行われるようになったとのこと。なお、このやり方を見つけた山根昭美さんという人で、20世紀ナシを低温貯蔵しているとき、機械の故障から温度設定が狂ったことによる偶然の発見だったそうです。また、低温にさらされたとき「凍ってなるものか」という反応は鮮度が高い程良く起こる反応なので、収穫したらなるべく短時間のうちに処理する必要があるそうです。
 続いて、凍結と人工授精について、資料は「現代化学」1998年5月号。人間の受精卵を冷凍しておいて、何年か後に子宮に戻し、妊娠・出産させる技術は25%くらいの成功率で確立しているようです。ただここで問題なのは、生命の始まりで冷凍・解凍を経験した生命体に障害が起こらないかどうかというのがひとつです。人間の場合、そういう技術で生まれた人はまだ13歳にしかなっていないため、現時点では何とも言えないと書いてありました。この技術の2点目の問題は、受精卵を冷凍させたあと、離婚などの問題が起こり、妊娠を希望しなくなったときの対策です。英国では、3000個の受精卵が1996年に廃棄処分されたそうです。これに最初に抗議したのはカトリック教会で、尼僧院からは、「私たちにそれを人工授精させよ」という声も挙がったとか。一方、精子を凍結しておくのは比較的簡単で、人工授精には広く使われているようです。ただ、卵子を冷凍保存する方は難しかったのですが、最近、採卵する時期を変えることで成功率が上がっているそうです。卵子を凍結保存できるようになると、女性が若いうちに採卵し、仕事や趣味などが一区切りついたてからそれを使って人工授精し、出産することも可能になるとか・・・。凍らせる、凍らせないというだけで新たな問題を科学はわれわれに与えていますね。
 つぎ(2)に関係しては、まず、ゾーンメルティング法を話しました。これはご存じだと思いますが、高校の教科書の範囲の知識が、ハイテクが支えている例として紹介しました。シリコンなど極めて高い純度が要求されるものを作るときは、まずその一部を溶融した後、となりの部分を加熱、溶融します。すると、はじめに溶融していた部分の温度が下がり、凝固するとともに不純物をとなりの溶融部分に吐き出します。そして、さらにその隣を加熱溶融すれば、2番目に溶融した部分が凝固、不純物を3番目の溶融部分に吐き出す・・・。これを繰り返して、純度を上げるという話です。
 そして、次の話は、凍らせたジュースなどを学校に持ってきて、半分くらい解凍が進んだときに飲むと味が濃いという話。水溶液が凍り始めるときは水の氷ができる。その逆ですから、凍った水溶液が解凍するときは、濃度が高い部分から溶けるという話です。

 林さんから浸透圧について何か実験がないかと質問が出ていますが、私はここは定量的に扱うのはやめて、ナスの塩もみとナスの砂糖もみを演示してすませています。ナスを薄く輪切りにして3つのポリ袋に入れ、ひとつはそのまま、もう一つには塩、残りの袋には砂糖をたっぷり入れ、それぞれよくもんで水分がどれくらい出るのかを比べるわけです。そして、浸透圧から見えるものとして、逆浸透圧法による海水の淡水化技術の話をしたいと思っています。
 では、また。


98A−031’
差出人:山本 喜一
送信日:98年9月20日
件 名:Re:気体はバラバラビュンビュンについて

こんばんは、山本です。
 「気体はバラバラビュンビュン」と、鳥取さんが言ったのかどうか私は知らないのですが、あの人なら言いそうだなあと思っていました。鳥取さんという方は、ボソッと言う言葉が面白い人ですよね。いつかの合宿で、水溶性・脂溶性の話になった時「人間は油性ですよね」という言葉が鳥取さんから出ました。この言い方に、けっこう、ハッとしましたね。それから、今年の合宿では、環境問題のところで「恐竜は1億5千万年生きたとね。人類はたかだか50万年。まだ絶滅するはずはなかね。」と言った鳥取さんの言葉が、今でも耳に残っています。
 鳥取さんは、今年のアルケの合宿の時には、体調が悪く入院しなければならないところを、医者に手術を延ばしてもらったと言って、顔を出してくれました。多少顔色がすぐれなかったものの、夜中の2時まで話につきあってくれて、うれしく思っています。それから、退院して元気になったらインターネットにつないでメーリングリストにも加わってくれると話していました。1日も早い回復をお祈りしたいと思います。
 では、また。


98A−032
差出人:林 正幸
送信日:98年9月23日
件 名:溶解(4)など

こんにちは、林です。
 昨日の台風は一宮市ではかなりのものでした。わが家では鉄骨製の藤棚が風を受けてひし形に傾いてしまいました。取り替えるしかないのですが、これはかなりの損害です。それから突然の停電で、コンピュータで作成中のファイルが消失し、ご飯を炊くことができず、ろうそくのともしびで昔の人々の生活を体験しました。
 鬼塚さん、ビジュアルベーシックで「音を出す」件についてですが、この日曜に「インテク研」というサークルがありそこで尋ねたところ、サウンドレコーダー(ウインドウズ95)で音声ファイルをつくれば、それを貼り付ける形で簡単にできるよ、とのことでした。これで参考になるしょうか?
 山本さん、凝固点降下は「ひとそれぞれ」ですね。私は9月17日付けのメールで書いたように、アセトアニリドの分子量測定の実験を軸にしました。それは気体の密度かここのどちらかで、分子量測定を体験させたいと考えていたからです。気体では「この世の最低温度を調べる(シャルルの法則)」という実験をしたので、バランスからこうなりました。一方のクラスが実験をしましたが、6つのグループのデータが良好で、残りのグループは期待値を大きく外していました。
    純粋な樟脳の凝固点
      178  178  180    平均 178.7℃
    アセトアニリドを溶かした場合の凝固点
      164  165  165    平均 164.7℃
これから降下度は14.0℃となり、アセトアニリドは樟脳1000g当たりに50g溶けているので,分子量は
    40×50/14.0 = 143
と計算されます。アセトアニリドC8H9NOの正しい分子量は135ですから、まずまずの結果ではないでしょうか。
 そして「凝固点降下の身近な例を知っているか」と問いかけました。残念ながら回答がなく、次の4つを示しました。
(1)氷に食塩を加えてかき混ぜると、食塩水の凝固点降下になって−10℃以下の温度がかんたんにつくれる。
(2)凍りついた道路に塩化カルシウムなどの凍結防止剤をまくと、凝固点が低くなって氷が融解する。
(3)自動車のラジエーターに使う水は、冬期に0℃以下になっても凝固しないように、エチレングリコールなどの不凍液を加える。
(4)スズは鉄や銅と合金を作りやすい、つまり接着しやすいが、高価である。スズのの融点は232℃であるが、これに鉛を混ぜるとスズの接着性を損なわずに融点を、それと価格を、低くすることができる。これがハンダで、スズ60%のものはその融点が183℃になる。
 次が「浸透圧」ですが、私は浸透圧には触れず「浸透」という現象を説明しました。半透膜については「水のような小さい分子以外は通過しにくい膜で、膜に小さい穴やすき間があると考えると分りやすい」と教えます。「通過しない」ではなく「通過しにくい」としています。でないと、たくあん漬けができません。細胞膜、玉子のうす皮(内卵殻膜と言うらしい)、セロハン、セルロースチューブなど。そして水のモル濃度の高い方が水分子がよく拡散するとして理解させます。
 身近な例は
(1)ナメクジに塩をかけて殺す(生徒は知っていた!)。
(2)植木鉢に水をやると、しおれかけた花が元気になる。
(3)梅干しづくり(山本さんの「ナスの塩もみ&砂糖もみ」と同じ)
(4)点滴の注射液やスポーツドリンクは水の濃度を体に合うように調整する。
(5)濡れたバンドエードを巻いていると、指がふやけて白くなる。
です。
 そして今、見せ物として「ダチョウの玉子」を作っています。ニワトリの玉子の殻を塩酸で溶かして、あとは水に浸けておく。明日学校へ行って、うまくできているかな。
 ではまた。


98A−033
差出人:山本 喜一
送信日:98年9月23日
件 名:スポーツドリンクについて

こんばんは、山本です。
 林さん藤棚に被害を受けたそうで、お見舞い申し上げます。実は、私の家もひとつ前の台風で屋根瓦が3〜4枚めくれて、雨漏りしてしまいました。さっそく大工さんを呼んでなおしてもらいましたが、やはり台風が近くを通ると悪いことをして行きますね。
 ところで、林さんは浸透圧の例としてスポーツドリンクをあげていますが、あれが体の浸透圧と同じになっているのは、早く胃袋を通すためだと聞いたことがあります。水分が吸収されるのは大腸で、便秘の時から想像できると思うのですが、大腸にはかなり高濃度の溶液から水分を吸収するはたらきがあります。それから、水分を補給するためだけなら水でも良いわけで、浸透圧が同じである必要はないでしょう。スポーツドリンクはもともとは試合の途中で、選手が水分を補給する目的で開発され、飲んだあと短時間のうちに胃から腸に流れるようにしてあるという説明に納得しています。
 では、また。


98A−034
差出人:山本 喜一
送信日:98年11月24日
件 名:ドライアイスの作り方

こんばんは、山本です。
 8月22日付のメールで、佐藤さんからドライアイスを作るときに凝固剤が使われていないかどうかという質問がありました。今日、埼玉の藤田さんの授業プリントをめくっていましたら、その辺のことを書いてある資料が見つかりましたので紹介します。その資料とは、「現場の風景、作る、ドライアイス」という1994年5月20日付けの朝日新聞の記事です。以下、その記事の要約です。

 ドライアイス製造工場は業界最大手の日東化学工業横浜工場の場合で、原料は近くにある日本鋼管の製鉄用高炉からの二酸化炭素。それをパイプで引き込んで、1cm^2あたり100kg重の圧力をかけ、水とアンモニアで冷却、液化。さらに冷やして圧力を減らすと液体二酸化炭素はマイナス30〜50℃になる。それをプレス機内に吹き込んで粉末のドライアイスにしたのち、1cm^2あたり150kg重でプレスして製品にする。

 というわけで、凝固剤は使われていないようです。ただ、原料が製鉄で発生した二酸化炭素ですから、どんな不純物が含まれているのか分かりません。食べるとなるとその不純物の方が心配ですね。
 では、また。


98A−035
差出人:鈴木 久
送信日:98年9月26日
件 名:アルケミスト事務局通信No4

アルケミストのみなさんこんにちは
 昨日、9月25日(金)学校に、岐阜の長野さんから岐阜理科サークル通信no157を33部送っていただきました。これで3人目です。
 昨日、研究授業も終わり、1つだけ肩の荷が下りたのでアルケプレ通信ー印刷版を作ろうと思っています。
 メールを読まれているみなさん、新しいアルケ年度を迎えて、希望されること・決意したいこと・事務局 への要望などどんなことでも結構ですのメールを1本お寄せください。なお、アルケプレ通信に掲載可能かどうかもお書きくださればさいわいです。
 なお、盛口さんと野曽原さんが「人間と科学 とっておきの話」を新生出版から出されたのを今日の新聞広告で知りました。どんな本か楽しみですね。簡単な著者からの広告を次回に入れてくださるとうれしいですね。


98A−036
差出人:山本 喜一
送信日:98年9月26日
件 名:気体の溶解度と潜水病

こんにちは、山本です。
 授業は気体の溶解度になりました。ここはあまり深入りせず、「気体の溶解度は温度が上がると小さくなり、圧力には比例する」と説明して(「これはこういうものだ」という説明のしかたは、林さんに怒られるかも知れませんが)潜水病の治療についての新聞記事を読ませました。「ダイバー救え、潜水病へ救急連絡網」という1996年5月29日の朝日新聞。ポイントは次の3点です。
1.「水中で圧縮された空気を吸って急速に浮上すると、血液中に溶けていた窒素が、水圧の減少で炭酸飲料のビンのふたを開けたときのように泡状に気化する。」と、潜水病の原因を述べたところがあって、気体の溶解度と圧力の関係が現れています。なお、その泡が関節の血管にたまると鋭い痛みがおき、脊髄だと下半身麻痺、脳の血管をふさぐと脳くそくを起こして命を失うこともあるそうです。
2.「治療は緊急を要する。患者を高圧酸素タンクに入れ、もう一度圧力をかけて泡を消し、時間をかけて徐々に血液に溶け込ませて治療する。」ここの部分では、患者を高圧タンクに入れるとなぜ泡が消えるのかと生徒に質問してみました。それから、自分自身疑問に思ったのですが、以前メールで書きましたように、「高濃度の酸素は、長時間吸入すると肺気腫を起こす。」そうですから、この場合、高圧酸素タンクは安全なのでしょうか?
3.「ある主婦の場合は、潜水して三日後に肺こうそくを起こし、呼吸困難で死にかけた。潜水後最低24時間は気圧が下がる飛行機の搭乗はさけるべきなのに、5時間後に乗った。」という部分もあります。ダイバーには守らなければならないことがいいろあるんですね。

 それから、盛口さんと野曽原さんの「人間と科学 とっておきの話」は、二人が授業で使った化学読み物だと思います。本を出すと言うことを野曽原さんから聞いたことがありますから。手に取って、見てみたいですね。では。


98A−037
差出人:山本 喜一
送信日:98年9月26日
件 名:透明と不透明

こんにちは、山本です。
 これからの授業はコロイドです。はじめに、真溶液は透明、コロイド溶液は不透明という実験をします。気体も透明だと説明しますが、考えてみれば液体も透明ですよね。これらはなぜ透明なのか。そして、どんな場合に不透明になるのか、私なりに考えてみました。
 私は「もののなかに界面があると、そこで光が反射されて不透明になる」「界面がないものは光が通って透明になる」のではないかと思います。例えば、氷は透明ですが、かき氷は不透明、雪も不透明。これらには界面があるからでしょう。純物質の気体や混合気体、純物質の液体、真溶液、それと固体の単結晶はいずれも内部に界面がないので透明だといえるのではないでしょうか(もちろん、金属の単結晶や光を強く吸収する物質を除いての話ですが)。そう考えると、不透明なものは全て何らかの界面を含んでいるはずだと思うのですが、どうでしょうか?ちょっと説明不足かも知れませんが、みなさんのお考えを聞かせて下さい。では。


98A−038
差出人:林 正幸
送信日:98年9月27日
件 名:高分子(3)など

こんにちは、林です。
 昨日はMOLの会があり、8名の参加で楽しい交流ができました。山本さん、スポーツドリンクの情報をありがとう。なお、私とて天下り、押しつけはいくらでもやりますよ。思考を引き出すには、知識を提供することが不可欠だからです。大切なのは、何を材料に考えさせるか、そして考えるチャンスを作り続けることです。それから前のメールで書いた「ダチョウの玉子」はうまくいきました。教室に持っていって生徒にまわしました。
 高分子は、デンプンから入っています。デンプンはα−グルコースが縮合重合している。
    nC6H12O6 ―→ (C6H10O6)n + nH2O
グルコースは3つの異性体を書かせましたが、正確に記憶することは要求しません。反応式では分子の端は無視して表現するのが普通だと教えました(枝分れなどもあるし)。そして1、4位の炭素のヒドロキシル基が脱水して糸状分子になり、さらにところどころ1、6位の炭素のヒドロキシル基が脱水して枝分れ状、あるいは網目状になる。前者はアミロース、後者はアミロペクチンと言い、米ではアミロペクチンが75%以上である。デンプンは植物は光合成してデンプン粒として蓄えられる。この固体の小粒はデンプン分子が集まり絡み合い、すき間に水分子が入り込み、どちらもヒドロキシル基をもつので水素結合でしっかりと凝集している。高分子ではこのように規則的な配列の結晶にならないものが多い。
 それでは米を炊いてご飯にするのはどういう意味があるのだろうか。デンプン粒は水を共存させて加熱すると、デンプン分子どうしがほぐれ、より多くの水分子が入り込んだ、α−デンプンと呼ばれる状態に変化する。これは当然消化されやすく粘り気のある歯ごたえをもつ。これを放置すると水分子が再び抜け出してもとのデンプン粒に近いΒ−デンプンと呼ばれる状態になり、固くてまずくなる。かたくり粉のようなデンプン粒そのものを大量の水と加熱すると、デンプン分子はばらばらになって分散してコロイド溶液になる。デンプン分子の糸状部分はらせんに巻いており、ヨウ素・ヨウ化カリウム溶液を加えると、ヨウ素原子がらせんに包接されて青色を示す。
 デンプンはアミラーゼ、マルターゼという酵素によって消化され、グルコースになって吸収される。これは上の反応の逆反応で加水分解である。硫酸などを触媒にしてもこの加水分解を起こすことができる。そしてできたグルコースはフェーリング反応や銀鏡反応を示す。
 ここでジャガイモからデンプンを採り、それを糊化してヨウ素・デンプン反応を確認し、硫酸で加水分解してフェーリング反応を確認する実験を投入しました。試薬でなく、身近なものからデンプンを得ることから始めるのは、意味があるように思います。
 次はセルロースです。これはΒ−グルコースが1、4位で脱水して糸状になる。セルロース分子は直線型で、分子が束になりやすい、つまり横方向には部分的に結晶化しやすい。こうしてセルロース分子は繊維を形成し、細胞壁になって植物の体を支えるはたらきをしている。そして私たちは綿花の綿毛は天然繊維として利用している。
 ではまた。


98A−039
差出人:林 正幸
送信日:98年9月27日
件 名:Re:透明と不透明

こんにちは、林です。
 先ほどのメールにも書きましたが、MOLの会では、分子・結晶模型に狂っている船橋さんが氷のモデルを作ってきました。百聞は一見にしかす、その構造がよく分り、メタン分子がすっぽり入る空間があることも確かめられます。それにしても無極性のメタンが極性の典型の水分子とよく結び付くものだ。これはきっと水素結合で極性を使い果たしているからだろう。それに「無極性」というのは分子を遠くから眺めた話で、水素−炭素結合ひとつひとつには立派に極性があるのだ。
 山本さんの「透明と不透明」については、2つに分けて考える必要があると思います。無数の分子やイオンが集合してできる「界面」では、反射の法則が成り立ちます。例の入射角と反射角が等しいといやつです。もちろんすべての光が反射するのではなく、内部に透過したり、したがって屈折したりもします。もともと色が着いていない物質(ある波長の光を吸収することがない)では、微結晶の集合体になると入射した光はさまざまな向きに乱反射(屈折などのある)され、むこうの景色が透けて見える「透明」ということがなくなり、「不透明」で全体が白色に見えます。
 これに対して分子やイオンなどのより小さい「粒子」では、光子と衝突すると多くの場合「弾性散乱」します。「弾性」とは両粒子の運動エネルギーの一部が他のエネルギーに変換されることがないという意味で、「散乱」とは衝突後の光子の運動の向きが様々であることを意味しています。有名なのはレイレイ散乱です。波長の長い光はより大きい粒子によって散乱されるというやつで、空の色や夕焼けの説明に当てられます。光が散乱されれば「半透明」ないし「不透明」になります。「チンダル現象」というのは弾性散乱が起こることを言うのです。
 たしかにコロイドは界面化学の領域ですが、光に関係しては微妙です。硫黄のコロイドをつくると、始めは粒子が小さくて(散乱光は)青っぽく、しだいに大きくなって赤っぽくなり、それから白くなり、さらに硫黄の色の黄色を帯びてきます。途中で散乱メインから反射メインに移っていくのだと思います。
 ではまた。


98A−040
差出人:山本 喜一
送信日:98年9月27日
件 名:個人データベースができました

こんにちは、山本です。
 4月から、データベース作りをはじめ、やっと作り上げました。内容は主に雑誌や新聞のコピー、そしてアルケの資料のような印刷物に限って、製本されているものは入れませんでした。それらをスキャナーで読み込んで、画像を「アドビ アクロバット」というソフトでPDFファイルに変換して保存。ファイルの名前は資料の題名と同じにしました。こうして作ったPDFファイルは1000近くにもなりました。そして、このファイル管理は「アクセス」で行うことにしました。「アクセス」で題名、キーワード、著者、出版年月日などのフィールドをおいたテーブルを作り、そこにその資料に関するデータを打ち込みました。なお、題名のフィールドはハイパーリンク形式にしました。

「アクセス」で作ったテーブル
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題名 キーワード 著者 本の名前 巻数 ページ 出版年月日
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 資料を探すときには、まずこのテーブルを開いて、「キーワード」で検索します。例えば「燃料電池」などと打ち込んで、「キーワード」の欄に燃料電池と書かれているものを選択するわけです。その中で、自分が読みたいものが見つかったら、題名のフィールドに矢印を持っていくと、そこはハイパーリンクになっているますから、クリックすることによって、目的のPDFファイルが現れて来るという仕組みです。
 実は、最近送ったメールのうち「凝固点降下の授業」や「気体の溶解度と潜水病」などはこうして選んだPDFファイルを見ながら書いたものです。 これから先も新聞や雑誌の記事とともに、いろいろな場面で使った資料をここにためておきたいと思っています。そして、うまく活用していきたいと思っています。では。


98A−041
差出人:山本 喜一
送信日:98年9月27日
件 名:9月は読書の秋でした

岩手の佐藤です。
 山本さん、ドライアイスの件ありがとうございました。インターネットで検索を試みましたが、まだ検索のコツがつかめず、ドライアイスの項目の多さに圧倒され、あきらめていたところでした。水と二酸化炭素を固める。水素結合とファンデルワールス力による固体の形成。調べると何か面白そうなことが出てきそうです。150kg重という力はイメージできませんが多分これだと凝固剤はいらないのかと思いました。排ガスからドライアイスが作られているという事実を知りました。アイスクリーム作り今後見直したいと思います。
 9月もあとわずかです。前回のメールは、8月31日発信で、この一ヶ月が簡単に過ぎたのかという感が強いです。8月以来『近代科学の論理』に拘り続け、『科学はどこまでいくのか』(池田清彦著 筑摩書房)を読み終え、現在『いま自然をどうみるか』(高木仁三郎 白水社)も残す所1/3までとなりました。読み終えたら感想をメールで発信したいと思っています。
 9月の始めの土曜日、岩手の仮説のサークルに参加しました。たまに特集がよければ『たのしい授業』を購入するぐらいで、サークルに参加するというのは始めてでした。発泡スチロールで分子模型作りを行いました。丁寧に作り方を教えてもらい、さらに道具を購入してきましたので、じっくり時間をかけてミクロの世界に挑戦してみようと思っています。
 大学1年の時、有機電子論でSP3混成軌道を始めて学びました。この混成軌道と分子の形との関連を見れずに大学を卒業し、授業を通して、この関連が浮き上がったことを覚えています。直線型、折れ線型、三角錐型、正四面体型の分子の形に一見何ら関連が無い。立体的な分子模型を作らせるとか、分子にある非共有電子対と配位結合を考えさせることを通して、これらの関連に気づかせたいと思っています。今後時間をかけて、メタンハイドレードのモデルを作ることが出来ればと思っていますが。


98A−042
差出人:野中 直彦
送信日:98年9月29日
件 名:修学旅行です

 明日から2年生の修学旅行です。九州方面へ3泊4日です。いままではついていくという感じでしたが、今年は連れていく、安全で、楽しくと考えると大変です。なぜか、服装検査やら、頭髪検査が入ってきて、その後始末にたいへんです。一度やりかけけたら、徹底的とか不平等がないようにという感情を持つものは、教師の宿命?それとも日本の国民性? 私にはよく分かりません。直前に旅行に行かないなどのキャンセルがあり、バタバタしています。台風9号も近づいていて、このマイナスというおもいです。300人が安全に帰ってこれることを祈って出発です。今年は、科教協と2度目の九州です。

98A−043
差出人:林 正幸
送信日:98年9月30日
件 名:思考できる生徒

こんばんは、林です。
 山本さん、よくぞ膨大なデータベースを作りましたね。ただただ敬服します。私なぞは、日刊工業新聞のスクラップも途切れがちです。
 9月になってから、2年の化学のことは一度も書きませんでした。無機の各論で、自分もポイントが不足していると感じている授業です。いま、非金属の炭素酸化物とケイ素を終えて軽金属のアルカリ金属などに入っているところです。そんな中で生徒の素晴らしい「授業ノート」に出会い、勇気付けられました。
 玉腰の場合
「僕もICには興味があったが基板がケイ素でできているとは知らなかった。なぜ、酸素は物を燃やし、二酸化炭素は物についている火を消すのか。20年前のディスプレイの色が緑色だったことは知っているが、処理速度が1万分の1程度だったとは知らなかった。アポロ計画の時、使っていたコンピュータが今と比べてとても(悪い)性能だったということは、今ならふつうの人でもお金があれば月に人を飛ばせるのだろうか。
 なぜ炭酸ナトリウムをホウ酸に代えると、熱に強いガラスになるのだろうか。セメントを手でこねると、水酸化カルシウムに直接さっているのと同じだと言っていたが、ではずっとさわっていると、手がつるつるになるかもしれない。セメントで人間を生き埋めにした事件があったが、そんなことをしたら窒息死はもちろん、外側の皮膚がとけてふつうの速さよりも速く白骨化してしまう。
 陶磁器を加熱するとなぜ固まるかがわかった。
 宇宙のことをもっとくわしく知りたいと思った。もともと天体には興味があって、太陽や金星・火星など、ある程度の事は知っているが、もっと深く天体のことを知りたい。
 最近実験をやっていないので、次にやると聞いて少しうれしかった。」
 私の「脱線」まで含めて、様々なことに頭がはたらいている。最近あまり出くわしていなかったので、これが「思考できる生徒」だと、改めて認識しました。
 後藤の場合
「よく身のまわりにあるガラスは、ダイヤモンドみたいに、何かの同素体だと思っていたけど、実はケイ砂(SiO2),炭酸ナトリウム、石灰石(CaCO3)を混合して加熱融解してできるとは思わなかった。
 アルカリ土類金属をげんみつに言うには、Be(ベリリウム)、Mg(マグネシウム)をはぶくとは知らなかった。
 周期表で対角線の物質がよく似ているとは、ぜんぜん知らなかった。
 今日の前半にやった、ケイ酸塩工業では、身近にあるガラス、セメントがいろいろな物質からできていると知ってとても驚いた。
 周期表の覚え方がたくさんあったので驚いた。」
 こんなに素朴に授業中に頭がはたらいていれば、生徒自身が楽しいだろうと想像できます。

98A−044
差出人:林 正幸
送信日:98年10月3日
件 名:高分子(4)

こんばんは、林です。
 先週は途中に祝日があったり、土・日曜が休みで楽でしたが、今週はその反動もあって長い1週間でした。このところ、雨続きと気ぜわしさでついつい車で出勤していたのですが、今日は久しぶりに歩きました。すこし汗ばむくらいでしたが、学校を出てゆっくりと帰ってくると金もくせいの香りが漂ってきました。わが家に着くと、庭の金もくせいも咲き始めて良い香りを放っていました。天気がよくなるのを待って一斉に開花したのでしょう。
 セルロースは工業原料として大量に利用されている。その最大のものは紙である(なぜか教科書では製紙を取り上げていませんね)。木材を小さく削って「チップ」とし、水酸化ナトリウムや硫化ナトリウムを含む薬液を加えて加熱し(「蒸解」)、リグニンなどを溶かし出して、植物繊維からなる「パルプ」を製造する。リグニンは繊維を接着するはたらきをしている。製紙工場では続いてパルプ(セルロース)を大量の水にけん濁させ、すいて(「しょう紙」)紙にする。
 紙は植物繊維でできているがばらばらにならない。それは繊維を毛ばだたせて絡み合わせていることもあるが、化学的にはセルロース分子がもつヒドロキシル基に起因する。繊維を水にけん濁させた状態では、そのヒドロキシル基は水と水素結合をつくり、繊維は互いにばらばらで紙にすきやすいようになっている。そして、すいた紙が乾燥するにつれて、そのヒドロキシル基はセルロース分子どうしの水素結合に変化していき、繊維は互いに接着することになる。ちなみに、乾燥した紙は水と出合えばそれと馴染み、油と出会えばそれとも馴染むというおもしろい性質をもっている。
 通常の植物繊維は短いので、パルプをそのまま糸に紡ぐことはできない。そこで長い繊維に加工する。これは再生繊維と呼ばれる。それにはまずセルロースが溶解する溶媒を開発する必要がある。そしてその溶液を細かい穴から押し出す。銅アンモニアレーヨンでは、硫酸銅にアンモニア水を加えた、テトラアンミン銅(U)イオンを含む溶媒に溶解させ、これを硫酸水溶液の中に押し出す。すると溶媒は硫酸によって分解してセルロースは凝固して連続した繊維になる。実際には多数の穴からできる繊維をより合わせてそこで糸にする(「紡糸」)。ビスコースレーヨンでは、パルプに水酸化ナトリウムと二硫化炭素を反応させて、セルロースをセルロースキサントゲン酸ナトリウムという物質に変化させると、水に溶解するようになる。この溶液はビスコースと呼ばれ、やはり硫酸水溶液の中に押し出すと、もとのセルロースに分解されて凝固する。なおビスコースを細いすき間から押し出してフィルム状にしたものがセロハンである。
 重要なのは、いずれの場合も連続した繊維にするときに引き伸ばすことである。そうするとセルロース分子は繊維の方向に伸びて束になり、丈夫な繊維になる。これを「延伸」という。
 アセテート繊維は半合成繊維と呼ばれ、パルプを無水酢酸や濃硫酸の混合物に加えてカルボン酸エステルにする。セルロースは単位あたり3つのヒドロキシル基をもつが、その2つがエステル化されたジアセチルセルロースはアセトンに溶解する。これを高温の空気中に押し出してアセトンを揮発させると凝固する。この繊維はセルロースそのものではない。
 パルプを濃硝酸と濃硫酸の混合物に加えて硝酸エステルにする。トリニトロセルロースと言えるようにエステル化されたものは強綿薬と呼ばれ、ニトログリセリンと混合してダイナマイトになる。硝酸エステルは分子内に十分な酸素原子をもち、火薬として利用できるものが多い。ちなみに、ここでは硝化綿を燃やして見せました。
 このあと単糖類と二糖類についてかんたんに触れました(と言っても30分ほど)。次はタンパク質です。
 ではまた。


98A−045
差出人:山本 喜一
送信日:98年10月4日
件 名:透明と不透明(2)

こんにちは、山本です。
 野中さん、修学旅行は無事終わったでしょうか。全員を無事に連れて帰る、ということに気を使いますよね。以前はそんなこと、当たり前にできることではないかと思っていたのですが、学年主任ともなれば、その当たり前のことができるかどうか、プレッシャーですよね。私も2年前を思い出しました。
 林さんの「思考できる生徒」は、無機各論で教科書には書いてないような興味ある話題を、林さんが提供しているから、生徒が思考し始めたのではないか、と思いながら読みました。林さんは「脱線」と書いていますが、そういうところに林さんのものの見方、考え方がでていたのではないでしょうか。

 さて、透明不透明の話ですが、林さんのメールで不透明になる場合は界面による乱反射以外に、光の散乱もあることがわかりました。ただ、次の部分は理化学事典の記述とあわないのですが。
<引用開始>
有名なのはレイレイ散乱です。波長の長い光 はより大きい粒子によって散乱されるというやつで
<引用終わり>
レイレイ散乱 → レイリー散乱 ではないでしょうか。
もしそうなら、 波長の長い光はより大きい粒子によって → 波長よりも十分小さい粒子によって になると思います。
 コロイド粒子は1〜100nmと教科書に書いてあります。また可視光線は1μm程度ですから、チンダル現象は、光がその波長に比べて10分の1〜100 0分の1の粒子に衝突して散乱するために起こるわけですね。私は今まで、この部分を光がコロイド粒子に「反射」されて起こると理解してましたので、勉強になりました。

 ところで、もう一つ疑問がでてきました。それは、過マンガン酸カリウム水溶液のように、強く光を吸収するものは、なぜ不透明になるのかということです。過マンガン酸カリウムも可視光のすべての波長を吸収するのではないと思いす。いくら色が濃くても、吸収されない波長の光は水溶液を通り抜け透明にってもよいような気がするのですが?


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